第1巻 第175話 キネンビ
2017年10月6日(金) AM:7:30
今日は、楽と千棘の交際半年記念日
千棘 「ついに、この日が来たわね、楽!」
楽 「ああ、今日は俺とお前の半年記念日だ。」
千棘 「で、今日はどうするの?
いつも通り、どこかにデートに行くの?」
楽 「いや、今日はな………」
AM:8:00 ホテル ラフレシア・凡矢理
千棘 「へー、まさかあんたが、こんな所の予約なんて取ってたなんてね!」
楽 「ああ、先月から春ちゃんに頼んで、バイトのシフトを増やして貰って、
ここを予約する為のお金を貯めてたんだ。
親父(おやじ)や竜達に頼んだら、
金は出してくれただろうけど、
お前との思い出の為のホテルだからな、
自分で頑張って貯めたお金で、
お前に半年記念の思い出を送りたかったんだ。」
千棘 「楽………ありがと!
私、スッゴく嬉しい!」
ラフレシア・凡矢理 408号室
千棘 「へー、キレイなお部屋!」
楽 「ああ、いい部屋だろ?
俺も気に入ったんだ。
じゃあ、改めまして………」
スッ
千棘 「ひゃっ!」
楽は千棘の顎(あご)をつまみ、自分の方を向かせた。
チュッ
楽 「千棘、俺と半年間付き合ってくれてありがとう。
お前と本当に付き合い出してからのこの半年間、
初めて好きな女の子と付き合えて、
本当に楽しかった。
これからもよろしくな。」
千棘 「楽………はい!私こそ、これからもよろしくお願いします!」
ホテル内 屋内プール
千棘 「そーれー!」
バシャ パシャ
楽 「うわっ!やったなー、お返しだー!」
バシャ バシャ
千棘 「楽ーー、一緒にプールに飛び込もうよー!」
楽 「いいけど………なんで2人でなんだ?」
千棘 「いいから、いいから!」
楽と千棘は、プールの飛び込み台の上に立った。
楽 「行くぞー、そーれ………」
千棘 「えいっ!」
ドンッ
楽 「わわっ!?」
千棘は、楽が飛び込む直前で自分も飛び込みながら、楽を押した。
ドバッシャーン
楽 「ぶはぁっ!千棘、お前何を………?」
千棘 「えいっ!」
ギュッ
千棘は楽を、水中で抱きしめた。
楽 「わわっ!?」
千棘 「思った通りだ、楽とくっついてると、
冷たい水の中でも温かい!」
楽 「お前………その為に俺と2人で飛び込みを?」
千棘 「えへへ………まーね………」
楽 (しっかし、コイツの体やっぱりスッゲー温かいし、柔らかくて気持ちいいな。
ここが水中だって事、忘れちまいそーだ。
やっぱりコイツ、スゲースタイルいいなぁ………)
楽 (やっぱり顔もスッゲー可愛いし、
高校の時と違って、俺に相応しい女の子になる様に色々努力してくれるし、
何より高校の時と違って、こうやって俺に積極的にスキンシップもしてくれるし……………
こんな子が、俺の彼女ってだけで、
スッゲー幸せだなぁ………)
ホテル内 屋内庭園
千棘 「わーー!見て楽、こんなにキレイなお花や木が一杯(いっぱい)あるよ!」
楽 「ああ、キレイだな。」
千棘 「ん?見て楽!
これって菊じゃない?
あんたが昨日、京都で私に交際半年記念のプレゼントにくれた、ブローチに付いてた!」
楽 「ん?ああ、ホントだな。」
千棘 「それにこっちにあるの、
99本の薔薇(バラ)じゃない?
あんたが19歳の私の誕生日に、ネックレスで私にくれた。」
楽 「ホントだ。
ここ、こんなのもあるんだな。」
千棘 「楽、私ね、この花達みたいにキレイで、あんたに相応しい女の子にいつか絶対になってみせるから!
あんたもちゃんと、私の事見ててよね!」
楽 「ああ、頑張れよ。」
そして夜、ホテルの食堂
千棘 「うーん、このステーキ美味し〜〜♪」
楽 「お前、ホントに食べる事が好きだよな………」
千棘 「ご飯は命の元だもの!
嫌いな人なんて、いるわけないわ!」
楽 (………まあ、俺は千棘のこういう気取らないところにも惚れたんだがな。)
千棘 「はぁ〜〜、美味しかった〜〜。」
ディナーを食べ終わった千棘は、
口の周りに食べかすが沢山付いていた。
楽 「ん?千棘お前、口の周りが食いカスだらけだぞ。」
千棘 「え?」
楽 「ったく、」
スッ
千棘 「ひゃっ!」
楽はナプキンを手に取り、千棘の口の周りに付いた食べかすを拭き取った。
千棘 「……………」
楽 「お前、お淑やかな女の子になりたいんだろ?
だったら、メシ食う時のマナーくらい、ちゃんとしろって。」
千棘 「え?ああ………うん、ごめん。」
カァァァ………
千棘は顔を赤らめた。
千棘 「あ、ありがとう………」
千棘 「楽……………」
ドキッ
千棘の口の周りを拭き取った礼の言葉に、楽はまたドキッとした。
ホテルの風呂場
楽 「ふーーう、いい湯だな〜〜。」
千棘 「楽ーー!そっちの湯加減(ゆかげん)はどうーー?」
壁の向こう側から、千棘の声が聞こえて来た。
楽 「ん?ああ、千棘か。
いい湯だぜーー。」
千棘 「ふふっ、ホントはここのお風呂が混浴だったら、楽と2人でゆっくり入りたかったんだけどね。」
楽 「おまっ!
いきなり何を………まあ、京都で実際に少しだけ入ったけど………」
千棘 「アハハ………冗談よ、冗談。
私ね、そういうのはもっと後にはやりたいの。」
楽 「え?」
千棘 「だって私たち、本当に付き合い出してからまだ半年でしょ?
キスもまだ何回かしただけだし………
そんなにいきなり私達の関係が進んだらつまらないもの。
もっと時間を掛けて、私たちの恋と関係を進めたいの。」
楽 「千棘……………ああ、そうだな!」
そして、再び408号室
楽 「ふーー。今日一日、楽しかったなー、千棘!」
千棘 「そうね。
楽、本当にありがとうね。
私との半年記念日を、こんな素敵な思い出にしてくれて!」
楽 「いや、俺の方こそスゲー楽しかったぞ。
あとはベッドで寝るだけだけど、他に何かしたい事とかあるか?」
千棘 「そうねえ………あ!そうだ楽、最後に半年記念のキスをしてよ!」
楽 「ああ、いいぜ。
ほら、目を閉じろよ。」
千棘 「うん!」
パチン
千棘は目を閉じた。
スッ
クイッ
千棘 「ひゃうっ!」
楽は千棘の顎(あご)をつまんでしゃくり上げた。
楽 ドキドキドキ………
千棘 ドキドキドキ………
楽が千棘の唇まであと数cm(センチ)と迫った、その時
楽のiPhone 「プルルルル………」
楽 「ん!?何だよ、こんな時に!」
千棘 「あーもう!いいとこだったのに!」
楽 「わりー千棘、ちょっと出るわ!
もしもし………ん?蒼也?」
千棘 「え?蒼也くん?」
第1巻 第175話 完
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