第1巻 第145話 コイヅリ
2017年10月3日(火) AM:12:00(正午)
守山 黒百合旅館(もりやまくろゆりりょかん)
庭
千棘 「えっ!?鯉釣り(こいづり)?」
山中 「はい。当旅館では、庭の観賞用に飼っている鯉の他にも、
裏庭の釣り堀に食用の鯉の池もありますどす。
皆さんの本日の二泊三日旅行の昼食後の最初の日程は、そこで鯉釣りを楽しんで貰う事でありやすどす。」
千棘 「へーえ!この旅館、釣りも出来るんだ〜〜。面白そ〜〜!」
楽 「山中さん、そこで釣った鯉(こい)って、食べれるんすか?」
山中 「勿論どす。
本日の夕食に、それぞれ釣った人にウチの料理人が鯉料理(こいりょうり)にして振舞わせて貰うどす。」
千棘 「わぁ〜〜!鯉料理だって、美味しそ〜〜!」
るり 「これは5匹、いや、10匹以上は釣っておかなきゃね………」
ブツブツ
集 「アハハ、るりちゃんは相変わらず大食感(だいしょっかん)だなあ。」
るり キラーン
ガスッ
集 「げふうっ!」
鶫 「釣り、ですか………
私は今まで一度もやった事が無かったのですが、
日本では一般の大人の大衆的な趣味として定着してると聞きましたし、
一度やってみたいと思っていました。」
蒼也 「………まあ、任務や楽の戦闘訓練と教育の息抜きには丁度(ちょうど)いいか。」
山中 「みなさーん!裏庭の釣り堀はこっちどすー!」
守山 黒百合旅館(もりやまくろゆりりょかん)
裏庭 釣り堀(つりぼり)
千棘 「楽ーー!一緒にやろーよー!」
楽 「ああ、いいぜ。」
千棘 「にしても、良かったじゃない。
あんた、釣り好きなんでしょ♪?」
楽 「まあな………まさか京都に来てまで出来るとは、思わなかったぜ。」
千棘 (楽との半年記念旅行で、楽の趣味を一緒に出来る………嬉しいな♪)
そして、楽と千棘の鯉釣り(こいづり)が始まって約十数分後………
千棘 「ムッキィ〜〜、全然釣れないじゃない!」
楽 「お前なあ………そんなに、糸が引いた瞬間に力強く思いっきり引っ張ったら、そりゃびっくりして逃げられるだろ………
千棘 ショボン………
千棘 「やっぱり私、あんたみたいな繊細な趣味は似合わないのかなぁ………」
楽 「………別に、お前は最初はそんなもんからでもいいんじゃねーのか?」
千棘 「え?」
楽 「誰だって、苦手な物や相性が悪い事の1つや2つあるだろ?
元々、俺らなんて合わない事ばっかだったじゃねーか!
お前が、俺の為に女の子らしくなろうとしてくれるのは嬉しいけど、
そんな無理すんなって!
1つずつ直して、変わって行こーぜ!」
千棘 「楽………」
ウルウル………
楽 「それに俺は、今のお前を良い所も悪い所も全部含めた上で好きになったんだ!
苦手な事が1つあったからって、そんなんで嫌いになんてならねーよ!」
千棘 「楽………うん!うん……!」
楽 (ホッ、良かったー。機嫌なおしてくれたみたいで………ん?)
ビィィンッ
千棘の釣竿(つりざお)が、力強く引いていた。
楽 「!お!千棘、引いてるぞ!」
千棘 「あ!ホントだ!えーっと………」
楽 「落ち着けよ!いいか?力任せじゃなくて、魚が竿(さお)を引く力と対等くらいの力で一気に引き上げるんだ。」
千棘 「こ…こう?」
グイッ
ザバーァンッ
千棘は大きな鯉(こい)を1匹、見事に釣り上げた。
千棘 「やったぁー!」
楽 「やったな、千棘!………ん?」
楽は千棘が釣り上げた鯉の腹に、何かが書かれているのを見つけた。
楽 「おい千棘。
その鯉、腹に何か書いてあるぞ?」
千棘 「え?あっ!ホントだー!」
鯉の腹には、黒い字で丸の中に「良縁」と、書かれていた。
千棘 「何…コレ?」
楽 「良縁(りょうえん)?」
山中 「あらまあ、お客さん達、
「良縁鯉(りょうえんごい)」を釣り上げたんどすか?」
楽 「あっ、山中さん!」
山中さん 「お客さん達………お二人の雰囲気で何と無くそうでは無いかと思ってはったが、もしかして2人は付き合ってはるんですか?」
千棘 「ええ、そうですけど………」
山中さん 「やっぱり!
お二人はいい恋を出来はりますわよ〜〜。」
楽・千棘 「え?」
山中さん 「その鯉は、良縁鯉(りょうえんごい)言いまして、
ウチの巫女が、良縁のおまじないを水で消えない文字で書いて掛けたものどす。
それを恋人のどちらかが釣り上げて、
恋人同士で食べると、
素敵な恋が出来ると言われてるんですわ!」
楽 「そんな恋が………」
千棘 「やったぁ!そんな鯉を釣り上げて、楽と2人で食べれるんだ!」
第1巻 第145話 完
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