2019-04-21 05:57:12 更新

2017年10月13日(金) PM:13:00

LAB(ラボ)


千棘は、午前中だけの授業後にLAB(ラボ)の学祭で出す自作の服を作っていた。


千棘 「む〜〜。今までの授業で、基本的な裁縫や合う色同士は学んだけど、

色んなお客さんが買いたいと思う服となると、中々難しいわね………。」


皆川(みなかわ) 「あら、いきなり行き詰まってるみたいね、桐崎さん。」


千棘 「ムッ………、み、皆川さん………」


皆川 「まあ、それもそうよね。

あなたみたいに、好きな男の子に好かれる事しか考えてない色毛虫(いろけむし)に、

沢山のお客さんの心を掴める様なデザインの服なんて、思い付く訳が無いわ。」


千棘 「な、何ですって!?」


皆川 「あら、そんなに悔しいんだったら、

あなたもお客さんの気持ちをちゃんと考えて、売れる服をデザインしたらいいんじゃない?」


千棘 (ムッキィ〜〜。く、悔しい………)




そして、LAB(ラボ)からの帰り道、


千棘 「でねー綾ちゃん、皆川さんったら、

また私に突っかかって来たのよ!」


綾 「ああ、何だかあの人、入学当初から千棘ちゃんを何かとライバル視してるよね………。」


千棘 「何でそんな事するのかな?

私、あの人に何かした?」


綾 「彼女は私と同じで、

子供の頃からずっと服が好きで、

ファッションデザイナーを目指してたみたいだから、

高3からいきなりファッションデザイナーを目指し始めたのに、

スミレさんの弟子になれた千棘ちゃんが気に入らないんじゃ無いかなぁ………」


千棘 「だからって、それだけで一方的に嫌われる理由にはならないわよ!」


綾 「まあ、千棘ちゃんからしたらそうだよね………。」


千棘 「全く………あの挑発的な態度、

高1の夏休みの前に転向して来て、

私と楽を取り合う恋敵になった、警視総監の娘の子にそっくりだわ。」


綾 「そんな子がいたんだ………」


千棘 「………まあ、その子はしばらく接する内に、変な子ではあるけど、

高校時代の私なんかよりずっと頑張り屋さんで、根はいい子だって分かったから、

向こうはどうかは知らないけど、私の方は今は何だかんだ言っていい友達だと思ってるけどね。」


綾 「そうなんだ………」


千棘 (楽に告白する勇気をくれたのも、

わざわざ病気の治療中にヘリコプターで日本に来たあの子だったしね。)


綾 「それはそうと千棘ちゃん、

学祭で出す服のデザイン、中々思い浮かばないんだって?」


千棘 「うん………何だか、色んなお客さんが興味を持ってくれる様な服のデザインってのが、中々思い浮かばなくて………」


綾 「………それなら、無理しないで、

千棘ちゃんの好きな人や身近な人に似合いそうな服のデザインを考えてみたらいいんじゃない?」


千棘 「え?」


綾 「千棘ちゃんも、

幼馴染(おさななじみ)の男の子の格好ばかりしてる子に、女の子っぽい服装をさせてあげる事から、服が好きになったんでしょ?」


千棘 「え?う、うん………」


綾 「だって私たち、

まだプロのファッションデザイナーなんかじゃ無くて、ただのファッションの専門の1回生でしょ?

そんなにいきなり無理して背伸びして、何100人何1000人というお客さんに売れる様な服なんて作らなくても、

身近な大切な人に似合う服を考えればいいんじゃない?」


千棘 「身近な大切な人かぁ………。」




その日の夕方、スペクトル凡矢理 705号室


千棘 ジーー………


千棘は、無言で楽の方を見つめていた。


楽 「………なんだよ千棘、黙ってこっちの方を見て。」


千棘 「………ねえ楽、ちょっと私の方を見て座ってくれない?」


楽 「あ?こうか?」


スッ


ドサッ


楽は千棘の方を向いて座った。


スッ


千棘は、服のデザインを書くためのスケッチブックを出した。


カキカキ カキカキ………


千棘 「えーっと、あんたは大体暗い系の色の服や、ボーダーを着てるから………

よし!出来た!」


楽 「出来たって、何がだよ?」


千棘 「LAB(ラボ)の学祭で、私が出す服のデザイン画よ、

あんたにモデルになって貰ったの!」


楽 「それならそうと、先に言えよな………」


千棘 「ありがとう、楽!

私、まだ色んな人に似合う服は分からないけど、

いつも一緒にいるあんたに似合う服のイメージなら、スラスラ書けたわ!

あんたのお陰よ!」


第1巻 第187話 完








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