第1巻 第99話 セカンド ザクシャ イン ラブ
PM:4:00 凡矢理市内のスペクトル凡矢理への帰宅路
楽と千棘が集から新しい鍵とペンダントを受け取ってから約2時間後、楽と千棘はやっと手に入った喜びと、鍵と錠が7組もあった予想外による驚きを感じながら2人で歩いていた
千棘 「あーもー、重いわね!楽、あんたコレ持ってよ〜〜〜!」
楽 「あーもう、分かったよ!。」
スッ ガシッ
楽は千棘から箱を受け取った
楽 「………にしても、意外だな。」
千棘 「え?何が?」
楽 「お前の事だから、「あんたが持ちなさいよー」って、俺に持たせるとばかり思ってたんだが。」
千棘 「な…何よソレ!?私があんたをパシリにする為に付き合ってるとでも思ってんの!?」
楽 「いや、そういう訳じゃあねぇけど、意外だなーって………」
千棘 「……………大事に運びたかったんだ。自分の手でね。」
楽 「は?大事に?」
千棘 「あんたに持たせたらまたホントのオレンジの鍵を、私じゃなくて小咲ちゃんに渡しちゃうかもなぁ、って……………」
楽 「な!?」
スッ
千棘は両手を後ろで組み、左下を向いて素直じゃ無いが故に楽の顔を見ずに話す姿勢になった
千棘 「だってだって、あんたはずっと小咲ちゃんが好きだったんでしょ?
13ヶ月前、天駆高原で小咲ちゃんより私を
選んでくれた時は本当に嬉しかった………
でも………」
楽 「………でも?」
千棘 「………私なんかやっぱりヒドイ女の子だよ。スミレさんのファッションデザイナーの修行を頑張って、家事も少しはマトモに出来る様になって、何処か楽の彼女に相応しい女の子になった気分だった………
でも、日本に帰って来ても小咲ちゃんは自分からアンタを奪った私を許して友達のままでいてくれた………
万里花はあんたから逃げようとした私を泣きながら励ましてくれた………
なのに……………なのに……………」
グスッ
ポロッ ポロッ
楽 「!おい、千棘!?」
千棘は左下を向いたまま、淡い綺麗な青い瞳に涙を浮かべ始めた
千棘 「あたし………あたし………小咲ちゃん達に嫉妬してる………」
グスッ
千棘 「やだ………私やっぱり、1年前までと何にも変わってないよ………
あんなに優しい小咲ちゃんや頑張り屋の万里花に嫉妬してる………
最低だよ………恥ずかしいよ…………」
楽 「…………………………」
スッ クイッ
千棘 「ひゃっ!?」
楽は右手の人差し指で千棘の顎を触り、地面に伏せて泣いていた千棘に自分の顔の方を向かせた
楽 「…………………………………………」
楽は千棘の顔を真剣な眼差しで下目線で見ていた
千棘 「ら…らく?」
コチョコチョコチョコチョ
千棘 「ふぇっ!?ぷっ、あははははっ!」
そのまま楽は千棘の体をくすぐり出した
千棘 「あははははっ!ちょっ、楽!?いきなり何すんのよあんた!?私は真面目な話をしてたのに………」
楽 「………バカなヤツ………」
千棘 「えっ!?」
楽 「お前そうやって、自分の弱い所受け止めれるようになったじゃねーか。」
千棘 「!」
楽 「昔のお前だったら、すぐに拗ねてイジけて相手に当たってた。
でも今のお前は、そうやって自分の弱さを受け止められてる。」
千棘 「…………………………」
楽 「お前十分カッコよくなったぞ、千棘。」
ジワッ
千棘は楽の自分の成長を讃(たた)えてくれた言葉に目に嬉し涙を浮かべた
ギュッ
千棘 「ふぇぇぇん、うぇぇぇえん………」
千棘は楽に抱きついて泣きついた
楽 「よーし、いい子だいい子だ。
泣け!甘えろこの野郎!
俺の胸でずーっと受け止めてやる!」
楽 (お前は俺の………1番大事な子だもんな。)
数時間後 夕方 天駆高原
ザッ
楽と千棘は、13年前に小咲と楽が相合傘を掘り、ザクシャ イン ラブを誓い、
そして13ヶ月前にその約束の前の錠と鍵を楽が小咲では無く千棘を選んだが故に埋めた岩の前に来ていた
楽 「ふーー、疲れた。ここは凡矢理から離れ過ぎてるからなーー。」
千棘 「でも仕方ないじゃない。やっぱりここでやった方がロマンチックなんだから。」
楽 「そうだな。よし、やるぞ千棘。」
千棘 「うん!」
スッ スッ
楽は新しいオレンジ色のペンダントを、千棘はそれを開けるオレンジ色の鍵先に月の文様が描かれた鍵を出した
楽・千棘 「ザクシャ イン ラブ」
千棘は13年の時を超えて、幼い日に楽が小咲と交わした約束を再び少年となり交わした
千棘 「やっと出来た………この約束!
楽にとっては2回目の、でも私にとっては始めての、永遠の愛の約束。」
楽 「そうだな。」
千棘 「私、去年の夏にこの岩の相合傘を見て、楽に選んで貰えてからずっと夢だったんだ。
この約束を楽とするの!」
楽 「そうなのか?」
千棘 「うん………」
千棘は13年前、自分がつい数十秒前に交わした約束を5歳時の楽と小咲がしていた事、そしてそれを岩場の陰から見ていた5歳時の自分を思い出していた
千棘 「子供の頃、あんたが好きだったのは小咲ちゃんだった、そしてつい1〜2年前までも………そりゃそうだよね、あんなに純粋で女の子らしいいい子だもんね。
好きにならない方がおかしいわよ!」
楽 「まあ、小野寺はいい奴だし。
でも、今の俺はお前も……………」
楽は一瞬迷った。自分が今でも小咲の側にいると幸せだという気持ちが、千棘を選んだ今でも消えたわけではないという事を………
そしたらまた、さっき道端で泣き崩れた時の様に泣いてしまうかもしれない
千棘 「いいんだよ、楽。」
楽 「え!?」
千棘 「私、とっくに分かってたんだ。
私は小咲ちゃんみたいには簡単に素直になれないし、小咲ちゃんみたいに普段から優しくも出来ない。
私はヒドイ女の子だもんね。」
楽 「 いや!、今のお前はそんなんじゃあ………」
千棘 「でも、だからもうそれを気にするのは止めたの。」
楽 「え?」
千棘 「私がヒドイ女の子でもいいの、私には私で、小咲ちゃんや万里花には出来ない事も一杯あるもの!
小咲ちゃんみたいになれないなら、私は私なりに楽を幸せにしてあげればいいって!」
楽 「千棘、お前………」
千棘 「だから、まださっきの約束が永遠に続く自信なんて正直無いわ。
私は「ニセモノ」だもの。
でも………」
楽 「でも?」
千棘 「私は楽とさっき交わしたあの約束を永遠にしたい。その気持ちだけは間違いなく「ホンモノ」よ!」
楽 「!」
千棘 「永遠に続く自信が無いなら、今からもっとあんたと楽しい思い出を作って思いを強くしていけばいい。
そしていつしか、永遠の愛にするわ!」
楽 「千棘………そうだな!先の事は分からないけど、これからずっと一緒だぞ!」
千棘 「うん!」
ニコッ
第99話 完
あとがき
ちょうど99話で上手くこの話を書けました。
「99」というのは、お気付きの人もいると思いますが、千棘の19歳の誕生日で楽が千棘にプレゼントしたあの金色の99の数字が入った薔薇のネックレスと同じく、
99本の薔薇が意味する花言葉は「永遠の愛」,
この話数にザクシャ イン ラブをする事で、本当の「永遠の愛」になって欲しいという僕の気持ちが篭(こも)っています。
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