第1巻 第195話 キセカエ
2017年10月16日(月) PM:13:00
LAB(ラボ) デザイン学園
千棘と鶫は、その日の講義が終わった後に、
食堂で2人で昼食を食べていた。
ガツ ガツ ガツッ
千棘 「んーー、このお弁当美味し〜〜♪」
鶫 「はぁ〜〜。」
ションボリ………
千棘 「ん?どーしたのつぐみ、あんたなんだか、元気ないじゃ無い。」
鶫 「いえ………実は、今度の学祭でやる出し物の練習が、上手く進まなくて………。」
千棘 「そーだったんだ。
あんたのクラスのモデル科は、何をやるんだっけ?」
鶫 「私達のクラスは、ファッションショーをやります。」
千棘 「ファッションショー?」
鶫 「はい。
一人一人が、自分に合ったと思った服を自分で持って来て、それを着てショー会場に改造した教室でファッションショーをやるんです。
凡矢理高校の2年の文化祭でポーラが出た、
あのミスコンみたいなものですよ。」
千棘 「そんなのやるんだ………。」
鶫 「ウチの担任の先生によれば、
将来ファッションモデルになった時の予行練習も兼ねているんだそうです。
しかし、私は自分に合った服というのが、
いまいち思い浮かばなくて………。」
千棘 「なーんだあんた、
私専属のモデルを目指してるのに、
自分に似合う服も分からないの?
仕方ないわね、それなら………。」
鶫 「はい?」
LAB モデル科 試着室
千棘 「私が、あんたにピッタリな服を選んであげるわよ!」
鶫 「結局、こうなるんですか………。
お嬢にされている事、高校時代から何も変わってないじゃ無いですか………。」
千棘 「まあまあ、そう言わないで。
あ!コレなんかどう?」
鶫 「え?」
千棘 「それっ!」
ガバッ
千棘はカーテンの中で、鶫の服を脱がして、
自分が選んだ服に着せ替えた。
鶫 「ちょっ、やめて下さいよお嬢〜〜!
自分で着替えますから〜〜!」
そして………
千棘 「かっわいい〜〜。
やっぱりあんた、素材はいいからスッゴく似合うわ〜〜!」
鶫 「うう………何ですかこのズボンは………
短過ぎです。」
千棘が選んだのは、いわゆる冬物のホットパンツだった。
千棘 「何言ってんのよ、ホットパンツは短すぎるのがいいんじゃない!」
鶫 「そうは言われましても………。
ふともももこんなに出てますし………
お嬢はともかく、私なんかには似合いませんよ。」
千棘 「そんな事無いわよ!
あんたは私よりスタイルがいいんだから、
むしろあんたの方が似合うわよ!」
鶫 「そ、そうですかね………?」
鶫の顔は真っ赤だった。
千棘 「あ!次はコレなんかどう?」
ヌギヌギ………
鶫 「お、お嬢……これは更に、恥ずかし過ぎです………。」
千棘が次に鶫に着せたのは、胸元が大きく開いた服だった。
鶫は胸がE以上でとても大きいので、
胸元が嫌でも強調されてしまう。
千棘 「あんたは胸の大きさが1番の自慢なんだから、それを生かした服を着るのが1番よ!」
鶫 「そ、そうですかね………?」
千棘 「そうよ!
あんたは好きな男が出来た時、
適当に選んだ服で、その人の前に行くの?
自分に合った魅力的な服を着て行った方がいいに、決まってるじゃない!」
鶫 「す、好きな男………?」
千棘 「そうよ!
私だって楽とのデートの時は、いつも服に気を使ってるんだから、
あんただって、その内好きな人ができるかもしれないでしょ?」
鶫 (私の、好きな男………。)
鶫 (今の私を、一条楽などが見たらどんな反応をするだろう………。)
ドキドキ………
鶫 (ハッ!何を考えてるんだ、私は!
一条楽の事は、もうとっくにお嬢の為に身を引いて諦めたでは無いか!
私は新しい恋を探して、
その者の為に女を磨けばいいのだ………。)
千棘 「?どうしたの鶫、ボーっとしちゃって。」
鶫 「!いえ、何でもありません!
今日は私の為に、ありがとうございました!」
千棘 「そう?ならいいんだけど………。」
そして後日………。
蒼也 「それで、ここ最近の楽の訓練での記録はこうだ。」
鶫 「なるほど。
一条楽め、中々頑張っているな。」
蒼也 「………それはそうと、誠士郎。」
鶫 「なんだ?」
蒼也 「お前、なんで今日は女物の服なんだ?
しかも、大分派手な。」
鶫 「!こ、これはだな………。」
蒼也 「まあ、お前は女なんだから、
考えてみたらそんなおかしな事じゃ無いのかもしれないが、
お前は小さい頃から見てきたが、
お前がそんな格好を自分からしてるのは、
初めて見た。」
鶫 「LAB(ラボ)のモデル科の生徒としての勉強の一貫だ。
気にするな。」
蒼也 「そうか………?」
鶫 (………私もその内、
お嬢の様に服を自分で選んで会いに行きたい男ができるだろうか………?)
第1巻 第195話 完
このSSへのコメント