第1巻 第144話 カイセキ
2017年 10月3日(火) AM:11:00
京都府京都市 守山 黒百合旅館(もりやまくろゆりりょかん)
1階 食堂ラウンジ
山中 「お客様方(おきゃくさまがた)のほんじつの昼食メニューは、懐石料理(かいせきりょうり)になりまーす。」
ガチャガチャ………
鶫 「………!おお!
これが日本の食文化に古くから伝わる、
「懐石料理(かいせきりょうり)」、ですか!
いや〜〜、派手な味は無いですが。
質素な味でこれはこれはいいですね〜〜。」
蒼也 「………味、うっす。
やっぱり日本の食い物は口に合わねーや。」
集 「あっれーー?山中さん、可愛い舞子さんの踊りは無いのー?
確かHP(ホームページ)には、
食事中に舞子さんが踊りを披露してくれるって書いてあったのにーー?」
山中 「ああ、それはね。
夕食の時どす。
昼食ではウチの日本料理人がこしらえた自慢の懐石料理(かいせきりょうり)を、
存分に振舞わせて貰いますさかい。」
集 「へぇ〜〜、そりゃ夕飯が今から楽しみだな〜〜♪」
るり 「………集君、部屋でも行ったけど、
写真や動画を盗撮したり、舞子君が舞子さんに変な事したら、許さないわよ?」
パクッ パクッ ムシャムシャ
ゴゴゴ………
小咲 「アハハ………るりちゃんったら、
たくさん食べながら舞子君に怒ってるよ………」
パクパク ムシャムシャ
羽(ユイ) 「あら〜〜、この焼物美味しー♪」
小咲 「あ、羽先生(ユイせんせい)、こっちの煮物も美味しーですよー。」
ワイワイ ガヤガヤ
千棘 「みんな、楽しそうに食べてるわねえ〜〜」
楽 「そうだな………」
パクッ モグモグ
楽は、千棘が懐石料理(かいせきりょうり)を食べる食べ方を見ていた。
千棘 「?どーしたのよ楽、人が食べてるところ、ジロジロ見て。」
楽 「あっ、いやわりぃ。
何か、この前ファミレスでメシに行った時も思ったけど、
お前、食べ方随分上品になったよなぁ………」
千棘 「ふふーん♪すごいでしょ?
去年のスミレさんとのファッションデザイナーの修行時代に、
ファッションデザイナーの修行の合間に、
淑女としてのマナーは幾つも覚えてからね。
日本式のテーブルマナーもお手の物よ♪」
楽 「そ…そうか………」
千棘 (………ホントは、少しでもあんたに釣り合う女の子になりたかったから、
ファッションの修行だけじゃ無くて、
そういう事も幾つか頑張ったんだけどね。)
千棘 (楽は、私の事少しは、女の子らしくなったって意識してくれてるのかなあ………)
従業員A 「はーい。次のメニューは、弱めのお酒でーす。どうぞー。」
楽 「ああ、どうも。」
千棘 「ありがとうございま………」
スッ
パリンッ
楽 「わわっ!」
千棘は楽の事を考えて恥ずかしがる余り、
力加減を間違えてコップを割ってしまった。
千棘 「ご…ごめんなさい!」
フキフキ
楽 「ったく、何やってんだよお前は………
仕方ねーな、ほら。」
ゴクゴク
スッ
千棘 「え?」
楽は自分のお酒を一口だけ呑んで、千棘に差し出した。
楽 「ほらよ、俺の分呑め。
まだ昼だし、集の話じゃあ夜にはもっと本格的な酒も出るらしーから、俺は一杯で十分だ。」
千棘 「あ…ありがと。」
ゴクゴク………
千棘 (やっぱり楽は優しいなぁ………)
千棘 (ハッ………そういえばこのコップ、楽がさっき一口飲んだんだよね?
コレっていわゆる………間接キス?)
千棘 (………本当の恋人になってから、キスは私からも楽からも何回かしたけど………
間接キスって、普通のキスとはまた違った感じがする………
何だか、直接キスしてる訳じゃ無いから、
逆に恥ずかしい………)
楽 「?どうした千棘。顔真っ赤だぞ?」
千棘 「ドキッ!べ…別に何でも無いわよ!」
楽 「?そうか………」
間接キスの普通のキスとはまた違った感じを噛み締めながら、京都での昼食は幕を閉じました。
第1巻 第144話 完
このSSへのコメント