第1巻 第220話 フンスイ
2017年10月21日(土) PM:18:45
凡矢理ウォーターパーク
千棘 「それでさあ、そん時綾ちゃんったらさあ………。」
楽 「そんな事があったのか。
ウチの大学では、冬吾と蛍(ほたる)が………。」
ダキッ
溺れた千棘を助けた楽は、
プールのほとりで、千棘と2人で座って腕を組みながら、たわいない話をしていた。
アハハ………
楽 「………今は18:57か、
よし、もうすぐだな。」
千棘 「?どーしたの、楽。
さっきから、時計ばっか見てるけど………。」
楽 「まあ、見てろよ。」
千棘 「?」
係員C 「間も無く、午後7時でーす。
当ウォーターパークの仕掛けが始まりますので、
お客様は、各プールの噴水口(ふんすいこう)から
離れて下さーい。」
千棘 「え?」
ザワザワ………ザワザワ
ウォーターパークの客達は、
各プールの下にある穴から離れだした。
千棘 「何コレ………
そう言えば、私達が回った水中アトラクションのどのプールにも、
プールの真ん中くらいに黒い穴があったけど………。」
楽 「お前はここに今日初めて来たから知らないだろうけど、
このウォーターパークには毎日午後7時になると、ある仕掛けが起こるんだ。」
千棘 「仕掛け?」
楽 「今は18:59分、55秒。
56,57,58,59………来た!」
千棘 「え?」
ドピューー ドピューー
千棘 「わあっ!?」
ウォーターパーク中のプールの黒い穴から、
一斉に噴水が噴き出した。
千棘 「なにコレ?」
楽 「このウォーターパークでは、
毎日午後7時に、全てのプールから一斉に噴水が吹き出す仕掛けがあるんだ。」
ピューー
噴水は、各プールの穴からとめどなく噴き上がり、まるで花のようだった。
千棘 「キレイ………。」
楽 「お前との久々のプールデートだったからな、
お前に見せてあげたかったんだ。」
千棘 「楽………」
グスッ
千棘は、目に涙を浮かべていた。
楽 「わっ!
なんだよ千棘、泣いてんのか?」
千棘 「泣いてないわよ!
その………ありがと。」
ドキッ
楽はまた、ドキッとした。
楽 「………気に入ってくれたなら何よりだぜ。
さて、噴水も見たし、そろそろ帰ろーぜ。」
千棘 「あ!
待ちなさいダーリン。
私にプレゼントしたいんなら、
この噴水もスッゴく良かったけど、
その………他にもあるでしょ?」
楽 「なっ!」
楽はまたドキッとした。
千棘が求めてるものが、口にされなくても楽には分かっていた。
楽 「………今しても、水の味しかしねーと思うけど。」
千棘 「………大丈夫よ。
水の味は嫌いじゃないから。」
スッ
スッ
チュッ
水の味がするキスをして、
楽と千棘のウォーターパークでのデートは幕を閉じました。
第1巻 第220話 完
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