園子はその子とその後を過ごす
『結城友奈は勇者である』は乃木園子という少女の執筆作品だとしたら
バーテックスや大赦、神樹が全て彼女の設定だとしたら
そうなると乃木園子はどういった立ち位置で暮らすことになるか
勇者部は勇者部と名乗る必要がなくなるのではないか
そういう想像で書きました
うちのクラスはみんなかわいいなあ
お昼休みも終わりに近づいた時に改めて思う
東郷さんに結城さん、三好さん。他の子もみんなかわいい
だから、色々と妄想が捗る
私の趣味は小説を書くこと
小説といっても、とても短いいわゆるSSというジャンルになってしまうこともままある
昨日、この学校のボランティア部を題材にした小説をアップロードした
反応はいつもどおり、ぼちぼちといったところ
ボランティア部は東郷さん、結城さん、三好さんに加えて犬吠埼さん姉妹の5人で活動している
校内でも有名で困っている人がいたら依頼されていなくても手伝ってしまう良い人たちの集まりだ
『結城友奈は勇者である』
このボランティア部を題材にした小説だ。先程言ったアップロードした小説はこれのこと
誰にも許可は取っていないけれど誰も気がつかないはず。まさか自分達が元ネタにされているなんて思わないはずだし大丈夫
評価やコメントが来ていないか楽しみだ。帰ったらすぐに見よう
そう思いながらまどろみ、昼休みどころか午後の授業も寝てしまった
目が覚める
周りを見渡すと、誰もいなくなっていた。
大量のお札、小さな鳥居のようなもの
そればかりの部屋
体は動かない。けれどこの場所もこの状況も知ってる
「ああ。そっか」
思わず声が漏れる
「これ、夢だ」
自分の書いた小説が夢に出てきた
「誰か~おーい」
誰かいないか呼んでみる
仮面を被った神官が恭しく礼をし、部屋へ入ってくる
「今ってどういう状況~?」
「どのような状況、とは?外の天気についてでしょうか?
勇者様のことでしょうか?それとも、別のことでしょうか?」
やっぱり、私が書いた小説の中みたい
「勇者のことだよ~、大丈夫そうかな~?」
「勇者様は問題ないかと、先日、無事バーテックスを初撃破なされました」
えっと、勇者部は大丈夫みたい。ならこっちを聞かないとねー
「違うよ~、調整中のー」
「夏凜様は次の襲撃までには調整が間に合う予定です。こちらも問題ありません」
「そっかー、みよっしーは大丈夫なんだね。なら、それまでは暇かなー?」
深く頭を下げる。多分大丈夫ってことだよね?
「なら、私の話し相手として呼んで欲しいなー」
再度、頭を深く下げる。大丈夫みたい
-****-
ノックが聞こえる
「開いてるよー」
「失礼します」
うーん、硬いなあ
大赦の人に何か言われたかな?
「そんなに硬くなくていいよー、自然体でー」
「で、でも!」
「でももなにもないよー、私達は同じ勇者なんだからー」
「えっ......」
あーあ、絶句しちゃった。この姿で言うと怖がらせちゃうよね
「ああうん、こんな身体でも勇者ってできちゃうんだよ」
「敵にやられたってわけじゃないの?」
「そうだよ。勇者システムは足りない部分を自動で補完してくれるから」
嘘は言ってない
「勇者システムってそんな機能もあるのね......あっ敬語が」
「今のままでいいよー、距離感があると寂しいー」
「そ、そこまで言うなら......」
素の三好さんと話すのは初めてだからとっても楽しみ
「それじゃあ、みよっしーのことについて聞かせてよ」
「み、みよっ!?」
「あっ、嫌だった?」
なれなれしかったかな?
「い、嫌ってわけでは」
「なら、みよっしーだねー」
初めて他人をあだ名で呼べる!嬉しくて飛び跳ねそう!
「なにから話せばいいわけ?」
「そうだねぇ、じゃあどうやって勇者に選ばれたのか教えて欲しいなー」
みよっしーとは時間の許す限りたくさんお話をした
「じゃ、また」
「またねー」
まだまだ話し足りないけれどみよっしーにも都合があるから仕方ないよね
また来てくれる日が楽しみ
-****-
目が覚める。周りを見ると誰もいない
時計を見ると下校時刻を過ぎていた
「あぁー、そっか」
夢かぁ
それから、眠るたびに話は進んでいった
私が書いた内容とはちょっと違ったけれどみよっしーが勇者部と合流したり
勇者部としての活動をしているところを聞いたり、楽しかった
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
【上の部分、蛇足ならここカット】
「みよっしーみよっしー!他の勇者、どうだったー?」
「とんだトーシロよ。ろくな訓練もしてないようだし、正直期待はずれだわ」
「でも、1体は倒したんだよね」
私の時では、追い払うのがやっとだったから
「そうね、私一人でもできることを数人がかりでやっただけ。無駄が多いわ」
「みよっしーは訓練された勇者だから」
みよっしー、ちょっとツンツンしすぎじゃないかなぁ?
「でも、トーシロにしてはよくやった方だとは思うわ」
あ、デレきた。んー、絶妙なツンデレですなあ
「あまり責めないであげてね?彼女達は何も知らなかったんだから」
「えぇ、次会った時はもう少し手加減するわ」
チャイムの音で目を覚ます。時計を見るとお昼休みの時間だった
またお昼まで寝ちゃってたみたい。寝ててもお腹は空くんだよ
今日のお弁当はなにかな
いただきます
喋ることなんてないんだよ
誰も私を見ていない
ごちそうさま
おやすみなさい
-*****-
「あっ、みよっしーだー。おはよー」
目が覚めるとみよっしーが隣に座っていた
「今日はずっと寝てるんじゃないかと思ったわ」
もしかして待たせちゃったのかな
「あはは、起こしてくれてもよかったのにー」
「気持ち良さそうに寝てるんだから、起こす気も失せたわ」
「そっかー、じゃあ早速」
「はいはい、前に話した樹っていたでしょ?」
いっつんだよね、なら歌についてのお話かな
私は知っているよ、けれどみよっしーから話してもらえることが楽しいんよ
「それで喉にいいものを進めようと思ったんだけれど」
「うんうん~、みよっしーならサプリを沢山勧めそうだー」
「なっ!なんでわかったのよ......」
「みよっしー、サプリとにぼし大好きだから」
「私、まだ園子にそのこと言ってないんだけど」
あっ
「大赦の人が話してたんだよ~」
「大赦の人ともそういう話、してるのね」
バレたら嫌われるかな?気持ち悪がられる?
嫌だなあ
「ま、いいわ。どこまで話したっけ?」
ほっ、よかった
「いっつんをサプリ漬けにしようとしたところだよ~」
「聞こえの悪い言い方すんな!」
ずっと、平和な日常が続けばいいのに
でも、それは叶わないって知ってるから
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
バーテックス12体を倒し終えたと聞いた時はとても嬉しかった
けれど、散華もバーテックスのことも知っているから喜びきれなかった
ああ、私に勇気があったら、満開を引き止められたらどんなによかったか
「園子、なんか最近ぼーっとしてない?」
「んー?私、いっつもぼーっとしてるよ?」
「そうじゃなくて、上の空っていうか......いつもとは違うような」
「あはは、やっぱりわかっちゃう?みよっしー、私のこといっつも見つめてるもん。キャー」
「見つめっ!?そうじゃなくて!......悩みがあるなら相談しなさい」
「勇者部五箇条?」
「そう、悩んだら相談。園子も勇者なんだから、実質勇者部みたいなものよ」
「フッフッフ、勇者部のごく一部の人間しか知らない影の勇者!ダークネスソノコォ!」
「はいはい、そんだけ逸らすなら話しにくいことでしょ。話せるときになったら相談しなさい」
「うん、それじゃあ、話せるときになったら絶対に話すから」
全部打ち明けてしまいたかった。けれどそれはできないよ
散華で機能を失ったことを聞いた。みよっしーは治ると信じているみたい
まだ、あと1体残っているから
その時に東郷さんと結城さんに伝える。それまでは、みよっしーにも打ち明けられない
お話、私が考えた内容と少しだけ変わってるから
変わってしまったら、散華した後の機能が帰ってくる保証がないんだよ
だから、それまではごめんね
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
自分の部屋、お気に入りのパジャマを着てベッドの前に立つ私
次に夢を見たら、それはきっと東郷さんと結城さんと話すことになる
私の想像だけで創り上げられた二人はきっといい人だと思う
だからこそ、きちんと話せるかが不安だ
よしっ
おやすみ
-*****-
「待っていたよ」
きちんと話せるだろうか
不安だなあ、この後もみよっしーに話さないといけないんだよ
お腹が痛いや
「ずーっと、会いたかったんだ」
東郷さんに結城さん、どちらもとてもいい人だね
疑問には答えて、話したいことも話した
この話を犬吠埼先輩に伝えてもらって、東郷さんが色々試してくれれば
私の知ってる物語として終わる
私の夢は終わる
「二人を送ってあげて」
-*****-
目が覚める
今何時だろう?
まだ4時
もう一眠りできそうだけど目が冴えちゃった
たまにはお散歩でもしようかな
近所の砂浜までちょっとだけお散歩をしよう
明るくなってきたけれど朝日はまだ昇らないね
初めて歩いて知ったけれどこの辺りはランニングする人も多いみたい
時々すれ違ったり追い抜かされたりしてる
こういう人達を眺めてたら何かいいネタにならないかなー
私の知ってる人だともっとネタにしやすいんだけれど
そう思ってたら正面から三好さんが走ってきた
その姿が私の夢で見たみよっしーとそっくりで
「みよっしー」
思わず声に出ちゃってた。聞かれちゃったかな?
こちらに気がついてたみたいだけれどそのまま走っていった
聞かれてないなら大丈夫、きっと大丈夫
焦燥感なのか罪悪感なのかよくわからないけれど急に胸が痛くなってきた
早足で家に帰ってそのままベッドで二度寝した
学校は休んじゃうことになると思ったけれどそれよりも三好さんと顔を合わせるのが怖かった
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「あれ?」
気がつくとベッドの上だった
ああそっか、また寝ちゃったんだ
「でも、どこの時間かな?」
ここの時間を知らない。きっと初めて来た時と同じようにしよう
物語がどう進んでいるのか教えてもらいながら
この時間を壊さないように注意しなきゃ
扉の開く音がした
「あっ、みよっしー」
みよっしーが来てくれた。けどなんだが俯いてる
「......園子」
「みよっしー?」
「ねぇ、教えて。風の目は治るの?樹の声は治るの?表には出してないけど友奈や東郷も多分......っ!」
この展開は想定してなかった
どうしよう、どうやって誤魔化せばいいんだろう
まだきっと知らされてないから、教えちゃダメだよね?
「えっと......だ、大丈夫!」
「何が大丈夫なの!」
ど、どうにかして落ち着いてもらわないと
「ほ、ほら。私、こんな身体だけど前は勇者やってたから、声とか片目とかでも支障はな「そういうことじゃない!」い......」
「樹はね、歌うのが好きなの。けどね、今は声が出せないの」
ええと、好きなことができないことがつらいってことか......な?
「風だって、表には出してないけどきっと不安でしょうがないのよ。姉として部長として自分を奮い立たせて虚勢張ってるのよ」
そういうのって、本人が来るものじゃないかな?
なんでみよっしーが言ってるんだろう?
私がみよっしーに何を言っても結局は本人に声は伝わらないのに
けど、なにか言わないと。大丈夫だってことを伝えないと
あっ、そもそもこれは私のお話なんだから何も心配しなくてもいいんだった!
「ええとね、みよっしー。この世界はね、私が考えて私が書き上げた世界なんよ」
あれ?なんでみよっしーはポカンとしてるんだろう
「だからね、フーミン先輩もね、いっつんもね、元に戻るんよ。私、この先に何が起こるか知ってるから「園子、あんた頭おかしいんじゃない?」え?」
「これがあんたの妄想なら!わた……勇者部の苦労は、犠牲は、悲しみはなんなのよ!」
えっ、なんで私が怒られてるんだろう
んー、あっ、そっか。やっちゃった
みよっしーは私の創作人物だった。わかるはずなかった
「ああ、うん。みよっしー、私もね、これはかなり参ってるんだ。だから変な事言っちゃったんだと思う。今日は帰ってくれると嬉しいなあ」
これ以上何を言えばいいのかわからないから帰ってもらおう
どう元気付ければよかったのかな
わからないや
けど、これじゃいけないんだよね
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「お昼」
時計を見てそうぼやく
リビングへ降りるとお弁当が置いてあった
いただきます
ごちそうさま
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
夢を見なくなった
お昼寝をしても夜寝ても気がついたら時間が経っているだけ
みよっしーにおかしなことを言った手前、きちんと謝らないとって
思うけれど、どうにも気まずくて会いたくない
そんな自分の心を表すように夢を見なくなった
今まで誰とも話すことはなかったけれど、夢の中では色々な人と話したりしてきた
夢の中ですら誰とも話すことができなくなったのは思ったよりも辛いね
寂しいよ
「みよっしー......」
「なに」
「えっ?」
三好さんが隣にいた
なんで?
「私を呼んだわけじゃないの?そもそもみよっしーって何?アンタとそんなに仲良くなった覚えはないんだけど」
そういえば斜め後ろの席は結城さんの座席だった
結城さんと話す為にここまで移動していたみたい
「夏凜ちゃんが可愛いからきっとそう呼びたくなっちゃったんだよね!」
「かっ、かわっ!」
結城さんがフォローしてくれている
「それに、乃木さんには乃木さんの考えがきっとあるのよ。夏凜ちゃんの呼び方を考えていたら口に出ていたのでしょう」
東郷さんも優しいなぁ
少しだけ優しさに甘えることにする
私のイメージを変えずに円満に終わるように
「あはは、クラスのみんなのことを呼んだ事ないから逆にあだ名をつけるならどうなるかなーって考えてたんよ」
「あだ名!?私にはどんなの考えてたの?教えて教えて!」
結城さんが食いついた。適当に話して三好さんに軽く謝って話を切り上げれば大丈夫だよね?
「えっとね、ゆーゆってあだ名を考えてたよ」
「ゆーゆ!かっわいい!じゃあ東郷さんは?」
「わっし......みもりんっていうんよー」
東郷さんだからこっちだよね。わっしーは私の考えた設定だから
「乃木さん、もしかして同じ小学校に通っていましたか?」
「え?」
「わっしーと言いかけていましたが、それは本家の苗字です。小学校の時に知り合ってなければ知らないはずですが?」
本当にびっくりだよ。私の妄想が現実と一致している
「ぐ、偶然だよ偶然!あははー。あと、三好さんごめんね?変なこと言っちゃって」
「別に、でもそういうのやめた方がいいわよ。友達でもないクラスメイトから突然あだ名って、結構引くから」
「うん、そうだよね。気をつけるよー」
きちんと話せてたかな?変なこと言ってないかな?
「夏凜ちゃん、その言い方はちょっと......」
「なによ友奈、思ったことを正直に話しただけよ。お互い様じゃない」
「そうかもしれないけれど」
「それに、東郷も知らない人に自分の過去を探られたようでいい気はしないでしょ?」
「まあ、否定はしませんが」
「ほらね?友奈が優しいのはわかるけど、ちょっとぐらい自分の気持ちを優先してもいいんじゃないの?」
「んー、そういうものなのかなぁ?」
3人は私が話題にならなくなった後も話を続ける
私は話題に上がってもすぐに誰とも話さなくなる
この違いってなんだろうね
なんだか寂しいや
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
あれからまだ夢の続きを見ていない
曖昧で少しだけ感じていた寂しさだったけど
今は凄く大きく感じる
とっても寂しいね
夢の中でずっと話してたみよっしーと三好さんを重ねちゃって
三好さんを目で追うことが増えた
目が合いそうになると逸らしているけど
きっとバレてる
気持ち悪がってるだろうなあ
「乃木さん」
ぼーっとしていたら目の前に三好さんがいた
「三好さん、一体何の用だい?」
みよっしーと言わなかっただけまだ抑えられている
「放課後、下校時刻になったら部室棟まで来て。話があるから」
ぶっきらぼうにそう言うとどこかへ行っちゃった
下校時刻まで時間はあるからもう一眠り
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「おまたせー、話って一体なんなんだぜ?」
「それ、その話し方」
なにかおかしかった?
「アンタの言う『みよっしー』に対する話し方よね」
どういうことだろう
「どういうことかなー?」
「とぼけないで。これ、全部知ってるんだから」
私の小説がスマホに映ってる
「え?」
「私が所属してるボランティア部を題材にしてるでしょ。この活動内容も部員の名前も全部同じ。言い逃れはできないしさせないわ」
「どうして?」
どうやってここを知ったの?
「しゅ、趣味でネット小説を巡ってるのよ。それでこれを見つけたわけ」
「ど、どうして私が筆者だと思うのかな?」
「『みよっしー』って呼んだことがなによりの証拠よ。ランニングですれ違ったときにも呼んだじゃない」
「聞こえてたんだ」
「で、どうして他人の日常を晒すような小説を書いたわけ?」
「なんでだろうね?」
「バカにしてる?」
「してないよ、なんでか私もわからないんよ」
「本人がわからないわけないじゃない」
「わからないんだよ!」
怒鳴っちゃった。もういいや。いいたいことまとまらないこと全部話しちゃおう
「だってね、私ね、仲良かった友達いないんだよ?誰かと話したくても距離感がわからないんだよ。話しかけても失敗しちゃって二度と話しかけれない。三好さんは勇者部の優しい人たちと友達になれて幸せだよね!こないだも私がみよっしーって呼んだときも優しくフォローしてくれもん。こんな友達がいたら私も幸せだなって思ったよ!そんな気持ちがいっぱいあってね、どうにかしたくて小説を書いて、書いて、書いて、思ったことを投稿して反応を貰って、それで嬉しかったよ?その嬉しさがもっと欲しくて、もっと書きたくて、私はボランティア部を題材に小説を書いたんだよ!」
ああ、終わったよ。もう誰とも話すことはなくなったよ
「要するにボランティア部の仲良しっぷりが羨ましいってこと?」
「え?ああ、うん」
あれ?引かないどころかなにかすっきりしてる?
「なんだ、なら簡単じゃない。ボランティア部、入る?」
「なんで?」
なんでそういう話になるの?
「アンタが羨ましいのは素の自分でも受け入れてくれる居場所があるってことでしょ?だったら入ればいいだけじゃない」
「みんなに迷惑だよ」
「私が入ってる時点で十分迷惑かけてると思うけど?建前も話せないし。それでも、受け入れてくれたのよ。あいつらは」
本当に、入ってもいいの?
「誰かを勝手に題材にして小説を書く私でも、受け入れてくれるのかな?」
「当然よ。むしろ文章を書きなれてるという点では即戦力じゃない?丁度そっち方面の戦力が足りてないのよ」
入りたい!
「入りたい!」
「決まりね!ようこそボランティア部へ!ってなに泣いてるの?!もしかしてキツく当たりすぎた!?」
嬉しくてね、涙が止まらないんよ。けどね、しゃっくりが止まらなくて言えないや
「ひっ、うっ、うわあああああああああ」
「のっ乃木っ!と、とにかく落ち着きなさい!」
10分ぐらい全然収まらなくって、結局ボランティア部の全員が来ちゃった
「の、乃木、乃木園子、です」
「アンタがアタシ達の武勇伝を小説にしてた乃木ね!ようこそ!歓迎するわ!部長の犬吠埼風よ!」
あはは、想像してた通りの人だ
こうして、私はボランティア部に入って、大切な友達ができた
結局、夢の続きを見ることもなかった
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「ここでお別れだね。じゃあね、三好さん」
ボランティア部の帰り道、三好さんと途中まで家の方向が同じなので一緒に帰るようになった
「......みよっしー」
「え?」
「みよっしーって呼んでもいいわよ。なんか他人行儀で落ち着かないわ」
「!!! みよっしー!」
「抱きつくな!乃木と私はここで別々でしょ!」
「あはは、そうだった」
「それと」
他にも何かあるみたい
「思いっきり怒鳴って悪かったわね。勇者部も私の大切な日常だったのよ。じゃあね、園子」
私はみよっしーを見送ることしかできなかった
園ND
ぶっちゃけにぼそのが書きたかった
このSSへのコメント