「秋月が太った」
食が質素な秋月に皆が食べ物をあげる中、秋月にも深刻な悩みが・・・
「秋月さん、いつもおにぎりだけで足りますか?」
食堂の端でいつもおにぎりとみそ汁しか食べない秋月に、村雨が話しかけ・・・
「あ、村雨さん! はい、大丈夫ですよ。」
秋月はおにぎりを頬張りながら、笑顔で振る舞う。
「そう・・・良かったら、これ食べて見て。 今日新作のお団子よ♪」
「いただけるんですか!? ありがとうございます!」
秋月は村雨に心から感謝した。
それからである、
村雨が秋月に食べ物の施しをした後から、
「秋月さん、唐揚げ余ったの。 食べます?」
「それだけじゃ栄養が偏るわよ、私のおかず少しあげるわ♪」
「今日は新作デザートが出ましたよ、秋月さんも一緒に行きませんか?」
と、他の皆からの施しを受けるようになった。
・・・・・・
数か月後、
「どうしましょう、困りました。」
秋月が部屋で深いため息をつく。
それは出撃のために艤装を装着しようとした時の事である。
「あら? あらら・・・」
いつもなら装着できるはずの艤装が腰にはまらない。
「・・・・・・」
もう一度、装着を試みるがやはり入らない。
「もしかして・・・もしかして・・・」
秋月は気づく、
秋月・・・太ってしまいました!!?
すかさず、お腹をつまんでみると、
「ああ、お腹がつまめる・・・ああ・・・秋月、太ってしまいました!!」
秋月はショックを受けた。
普段はおにぎりとみそ汁の質素な食事から一変して、皆から食べ物の施しを受けるようになり、
秋月の性格(断れない性格)にも拍車がかかり、食べ物を受け取る日々が続き早数か月・・・
結果、スレンダーな体格に余分なお肉がついてしまったのである。
・・・・・・
「本当にどうしましょう・・・これでは表に出られません。」
秋月は1人部屋で悩む。
「こんな体では、妹たちに会う資格もありません!」
考えた末に、
「今日から皆さんからの施し、本当に申し訳ないですが・・・全て断ります!!」
こうして秋月の減量作戦が実施された。
・・・・・・
「近いうちに特別海域が解禁されます! 秋月も参加するので、それまでに減量しないと行けませんね。」
秋月はスケジュールを立てる。
「朝は鎮守府内のランニング、その後に部屋で朝食を済ませて・・・それからトレーニングをして昼食も
皆と会わないようにするために部屋で食べましょう、そして休憩後に・・・」
秋月は1日の日程を立てて行き、
「よし! これなら減量出来そうです! では、明日は早く起きて、ランニングをします!」
自分に言い聞かせ、秋月は就寝をした。
・・・・・・
翌朝(朝5時)、
秋月は着替えを済ませて、鎮守府内をランニングしていた。
「この時間なら誰にも会う事はありませんね! よしよし、これで体の脂肪を徐々に減らしつつ・・・」
最初は順調な滑り出しだったが、思わぬ事態が・・・
「あれ? め、めまいが・・・」
ランニングして2周目でめまいがしてその場に倒れてしまった秋月。
昨日は提督の執務作業の手伝いを深夜2時まで行い、起床したのは午前5時。
当然朝食は摂っておらず、そのままランニングを始めてしまい・・・睡眠不足と栄養不足が一気に襲い掛かって来たのだ。
「・・・・・・」
秋月はその場で気を失ってしまう。
・・・・・・
運よく、朝のウォーキングをしていた艦娘に助けられ、秋月はベッドの上で目を覚ました。
「過労と栄養失調だね、朝と昼はきちんと食事して部屋でゆっくりと休むこと。」
減量するために行った行為がかえって栄養を取らなければいけない事態に・・・
「ううっ・・・秋月、また太ってしまいます。」
秋月はしょんぼりしながら部屋で療養していた。
・・・・・・
翌朝、
昨日の失敗を踏まえ、
「走る前におにぎりを2つ食べます、これで今度は朝食を取ったので倒れる心配はありませんね!」
食べ終わると、鎮守府の外に出てランニングを始めた。
「・・・これで2周! まだまだぁ! 後3周です!!」
秋月は1人で「おーっ!」っと号令を掛けつつ、ランニングに励んだ。
・・・・・・
「ふぅ、秋月頑張りました・・・水が飲みたいですね。」
5週も走り、体中から汗が流れ続け喉がカラカラだ。
「部屋に戻って、お水とおにぎりを1つ食べましょう!」
そう言って、秋月は部屋に戻ったが・・・
「あら?」
扉の前で村雨が立っており、
「秋月さん!? 大丈夫なんですか? 昨日倒れたばかりでしょ!」
秋月の体調が心配で見に来てくれたようだ。
「はい、この通り治りました! 心配かけてすいません!」
秋月は申し訳なさそうに謝る。
「いいのよ、秋月さんが無事なら。 でも、あまり無茶はしちゃ駄目ですよ!」
村雨から念を押され、
「後、これ差し入れです! 栄養失調と聞いたので、栄養豊富な物を取り揃えてきました♪」
村雨が持ってきた物・・・それは、
「!? ケーキ、ですか!?」
フルーツをふんだんに使ったフルーツタルト、秋月は茫然とする。
「はい! ビタミンと栄養と甘味が一度に楽しめる優れものです!!」
「・・・・・・」
本来なら断ればいいのだが、村雨には日ごろ世話になっているせいか、
「・・・ありがとうございます、秋月・・・とても嬉しいです。」
結局断り切れず、村雨からフルーツタルトを受け取る秋月、
「日が短いので、今日中に食べてくださいね♪」
村雨はそれだけ伝えてその場から去った。
「・・・・・・」
運動も空しく、この日も減量には至らなかった(むしろ太った)・・・
・・・・・・
翌日から、
昨日と同じ翌朝からランニングを始め、部屋に戻りストレッチをする秋月。
「なるべく部屋から出ずに運動をして・・・空腹になったらお水をいっぱい飲んでお腹を膨らまして・・・」
秋月の涙ぐましい努力が実を結び・・・
1週間後、
「やりました! 体重が減ってました♪」
目標の体重減に成功、秋月はとても喜んだ。
「後もう少しで元の体重に戻りますね、今日は私へのご褒美として間宮さんの所に行きましょう♪」
秋月は間宮へ向かった。
・・・・・・
少し豪華にわらび餅を注文しようか程度の気持ちだったはずが、
「あら、秋月さん! グッドタイミングですね♪」
先に間宮で新作メニューであろうデザートを食べている村雨に出会った。
「これ、今日出来たばかりの新作メニューですよ♪ 秋月さんも頼んでみたらどうですか?」
村雨に勧められるが、
「いえ、秋月は今日はわらび餅を頼もうと・・・」
秋月は断ろうとするが、
「そんな堅いこと言わないで、ほら1口食べて見て♪ それから決めて見たら?」
そう言って、村雨がスプーンですくって秋月の前に出す。
「・・・・・・」
申し訳なさそうにその1口を食べてみた。
「どうです?」
「お、おいしいです!」
「でしょ! この新作人気になると思うので、今食べておかないと後々食べる機会逃しちゃうかもですよ?」
「・・・・・・」
秋月は悩んだ末に、
「わかりました・・・秋月にも、1つお願いします。」
今日だけなら・・・今日だけなら・・・と思って新作デザートを注文する秋月、
その瞬間、食べ物に対する緊張の糸が解けてしまい、
「お団子1つくらいなら・・・」
「お饅頭1つだけなら・・・」
・・・・・・
・・・
・
1週間後、
「ああ、体重が戻ってしまいました。」
1つだけのつもりが結局何個も食べてしまっていた秋月。
「減量(ダイエット)の意思って、デザート1つで消えてしまうものなんですね・・・(泣)」
身に染みてわかった秋月、
「もう、もう食べません! これからは死ぬ気で・・・死ぬ気で痩せます!!」
そう心に誓った秋月だった。
・・・・・・
それから秋月はそれ以降、間食を一切しなくなり主食もいつものおにぎりとみそ汁のみで過ごした。
昔はこれで生活できたが、今は昔では食べられなかった食物が簡単に食べられるようになり、
ついつい秋月は口にしてしまった。
「私は結局、普段の食事以外の物を食べたら体に悪影響ってことですね。」
食が質素と周りからよく言われていたため、
「今はこれだけ食べ物が豊富なんですから、少しくらいは・・・」と思っていたのが間違いだったと思う秋月。
「私の体に必要なのはやはりおにぎりとみそ汁等が合っているんですね・・・」
と、自己暗示を掛けながら普段の食事だけを摂り、減量に取り掛かった。
・・・・・・
1か月後、秋月の続・涙ぐましい努力で体重が元に戻り、
「やりました! これで今度の出撃が出来ますね!」
秋月は入らなかった艤装を改めて装着出来て安心する。
久しぶりに妹たち(照月・初月・涼月)と再会したが、
「いやぁ~、瑞鶴さんたちと飲む機会が多くって・・・(言い訳)」
久しぶりに会った初月は少しぽっちゃりしていて、
「初月! 自身の体型を維持できない妹は嫌いです!!」
流石の秋月も怒って、
「・・・ごめんなさい、秋月姉さん。」と渋々謝った。
「流石秋月姉! 体型もそのままで皆から何て言われても普段の生活を続けて・・・
照月たちが一番尊敬できるお姉さんです!!」
「・・・・・・」
照月の一言が妙に突き刺さった秋月。
「久しぶりに妹たちににも会えたし、私の頑張って生活しますか!」
自身が妹たちの模範となるよう努力をする秋月。
・・・・・・
秋月は体型を維持し続けているが、
それを察して、(故意かも?)食べ物を勧めて来る子がいる。
「秋月さ~ん! 今月から新発売のデザートがまた出ましたよ♪」
村雨である。
「村雨さん・・・気持ちは嬉しいのですが、今減量中でして・・・」
秋月は説明するが、
「減量中って、何を言ってるんですか? 十分痩せているのにまだ痩せようと?
そのうち体調を崩してしまいますよ!」
村雨から心配の声が出る。
「だ、大丈夫ですよ。 私は昔小食生活をしていたので・・・」
秋月は更に説明するが、
「昔は昔! 今は今! せっかく昔では食べられない物が今になって食べられるようになったのに!
もったいないですよ! それならもう秋月さんには二度と誘いませんからね!!」
村雨は急に不機嫌になる、
「・・・・・・」
秋月は悩んだ、
村雨さんにはいつもお世話になってますし、私が栄養失調で倒れた時も栄養面を考えた食べ物を差し入れてくれて・・・
皆より真っ先に私に情報を教えてくれるのに・・・そんな村雨さんを貶すなんてとんでもない事!
「で、ではお願いします! 今日のデザートを食べてみたいです。」
秋月の言葉に、
「てへっ♪ そう来なくちゃ♪」
村雨は急に上機嫌になり秋月と一緒に間宮へ向かった。
当然ながら、体重は少しであるが増量してしまった・・・
いいんです、秋月は村雨さんの事を尊敬してますから・・・
私の体重が増えるくらい、何でもないです・・・(しくしく)
・・・・・・
せっかく減らした体重も村雨の誘いでリバウンドする羽目になったが、
艤装は普通に装着でき、イベント海域出撃は何の問題なく行えたのだった。
「秋月が太った」 終
拝見させていただいて、生意気ながら、考察を差し上げたいと思います。
基本的に秋月さんのように運動しているのに体重が増えるのは、筋肉量が増える事が考えられます(脂肪より筋肉の方が重い)、この場合は多少体重が増えても筋肉の場合は体形は同じ体重でも脂肪で構成された身体よりスッキリした形になります。
ただ、秋月さんの場合、当初はお腹が摘まめる位とされているので、秋月さんの場合は原因として、旧海軍で良いとされていた早食いのクセがあり、あまり噛まずに飲み込んでしまう為、充分な消化ができていない事が考えられます。
ただ、ランニング等による有酸素運動は脂肪燃焼に効果があるので、秋月さんはまず食べ物を良く噛んでから飲み込む癖をつける事がダイエットへの近道です。
ちなみに良く噛んでから飲み込むのは野球ではイチロー選手やエンゼルスの大谷選手が有名です。特に大谷選手は幼いころから父親にしつけられていたそうです。
良い身体は(身体に)良い行いからという事でしょう。
以上、長々と失礼しました。
コメントありがとうございます~。
いいえ、構いませんよ、今後の物語を書く上での参考や
現実的に勉強になりましたのでむしろ有り難いです(感謝)。