「霧島とビスマルク」
生前、提督が言っていた言葉がずっと気になっていたビスマルク。
霧島に尋ねると、彼女は清霜と一緒に行動することを提案。
ビスマルクは疑問を持ちつつ清霜と行動をすることになるが・・・
参考までにキャラ紹介。
霧島:提督の意志を継いで、提督に就任した艦娘。
提督と艦娘の両方をやっている。
ビスマルク:ドイツが誇る戦艦(らしい)。生前、提督に言われた言葉が頭から離れないでいる。
清霜:戦艦になることを夢見る駆逐艦。今回はビスマルクと行動を共にするが・・・
私はずっと気になっていることがある・・・
提督に言われた言葉・・・それは、
お前は、恵まれているよ
言われた時はそんなに気にもしなかったけど、提督が死んでからその言葉が妙に頭に残っていた。
普通なら最後に意味を教えてくれるんだけど、肝心の提督は答えを言う前に名誉ある死を遂げてしまった。
今更、答えを知る方法がない・・・
・・・・・・
簡単に考えるなら、この鎮守府の生活基準は高く、何も不自由しない・・・その点では確かに恵まれている。
私がここにいることが恵まれているというなら全く否定しない・・・でも、
それはこの鎮守府全員に言えることである。
それにも関わらず、提督は私にその言葉を投げかけた・・・それは違う意味があるのかもしれない、
その意味を提督が死んだ今もずっと探している。
・・・・・・
結局考えても答えが出ず、途方に暮れていた私に一つに考えが浮かんだ。
「霧島なら何か知っているかも。」
提督の死後、艦娘である霧島が自ら提督に就任した・・・それだけ提督の事が好きだった彼女なら何か知っているかもしれない。
・・・・・・
「司令は謎めいたことを言いますからねぇ・・・」
残念ながら期待していた答えは出なかった・・・
「でも・・・司令が何を言いたかったのかはわかりますよ。」
それなら教えてよ! と聞いたけど、
「それでは、司令がビスマルクさんにわざわざ伝えた意味がありませんよね?」
と返された。
「そうですねぇ・・・では、こうしましょう。」
霧島が何か提案をした。
「今日からしばらくの間、駆逐艦の清霜さんを同行させます。 一緒に行動すれば何かしら答えが出るかもしれません。」
・・・・・・
清霜? ・・・あの元気な夕雲型の末っ子かしら・・・
その後、清霜が現れ・・・彼女は提督の指示を受け、私と一定期間一緒に行動することになった。
・・・・・・
「ビスマルクさんを間近で見たの初めて!」
清霜は私を見て、はしゃいでいた。
「武蔵さんも強いけど、ビスマルクさんもすごく強そう!」
ふふん・・・もっと褒めてくれてもいいのよ・・・
「私も一杯ご飯食べて、いっぱい出撃して・・・いつかは戦艦になるのが夢なんだ。」
・・・・・・
さすがに無理でしょ・・・と思ったけど、そこは言わないでおこうかしら・・・
「司令官の考えはわからないけど、少しの期間よろしくお願いします!」
「ええ・・・私こそ、よろしくね!」
この子は素直でいい子ね・・・
・・・・・・
それから・・・
一緒に出撃したり・・・一緒に食事・・・一緒に入浴したりして・・・
近くで心配そうに様子を伺う夕雲型の姉妹艦たちが見守る中、私と清霜は一緒にいた・・・
あら、お姉さんたちが心配そうに見ていて・・・この子はお姉さんたちに愛されているのね・・・
清霜が就寝した後、ドア越しに様子を伺っていた姉妹艦に私は話をして・・・
安心したのかそれ以降は私に任せてくれて・・・何の問題の無い生活を送った。
・・・・・・
それでも、提督が言ったあの言葉の意味はまだわからない。
「私は恵まれている・・・か。」
考えても答えが出ず、そのまま就寝をした。
・・・・・・
今日は清霜と新海域へ出撃、「頑張る!」と元気よく発して私たちは皆と出撃した。
・・・・・・
新海域だけに敵の情報や敵の編成は全く分からない・・・皆はいつ襲撃が来るかわからない状況下の中、
周りを警戒しつつ、進軍した・・・
・・・・・・
突然砲撃音が響き、清霜が負傷した・・・敵戦艦・空母の編成。
すぐに旗艦である私が皆に合図、砲雷撃戦を開始、両者ともに撃ち合いが続いた。
幸いにも私たちの方が戦力が高く、敵空母を全て大破、戦艦も全て撃沈でき、勝利を収めた。
でも、大破した清霜は進軍させれない・・・今回は仕方なく、皆に撤退命令を出した。
・・・・・・
帰還途中で清霜がずっと下を向いていた、
「清霜、今回は運が悪かっただけ・・・そんなに気にすることはないわ。」
私が慰めると、周りの皆も声を掛けるが・・・清霜はその場で泣いてしまった。
「ごめんなさい・・・ひっく・・・私が弱いせいで・・・」
そんなことない、と声を掛ける皆。
「一生懸命頑張って・・・戦艦を目指して・・・皆を守りたいのに・・・」
清霜がなぜ戦艦に憧れるのかがわかる・・・戦艦であればあの程度の被弾なら小破で済むから・・・
その後の清霜の言葉に私は言葉を失った。
「私は・・・私は・・・好きで駆逐艦になったわけじゃないのに!」
「どうして私は戦艦じゃなくて・・・駆逐艦に生まれてしまったの!!」
・・・・・・
私を含む皆は声を掛けられなかった。
運命って残酷なものね・・・
望んで叶えられることなんてほとんどない・・・あるのは、決まった運命のひいたレールの上をただ渡ることだけ。
この子は戦艦になって皆を守りたい・・・でも、この子は駆逐艦である以上、その願いが叶えられない。
なりたくてもなれない・・・清霜は可哀そうな子ね・・・
・・・・・・
そこで気づいた・・・提督に言われた言葉を・・・
「お前は、恵まれているね」
私が霧島や大和と平等に扱われているのは、戦艦と言う理由だから?
生まれながら戦艦として生を受けた私はそれが当たり前だと思っていた、でももし私が戦艦ではなく駆逐艦として
生まれていたら? 同じように皆に上から目線な態度を取っていたら・・・?
当然だけど、皆離れていくわね・・・「駆逐艦が偉そうに」なんて思われて・・・
私が今こんな態度を取っていられるのは戦艦としていられるから・・・戦艦であるがゆえに、周りに頼りにされているから・・・
・・・・・・
それに気づいたとき、提督の言いたかったことが分かった。
・・・・・・
答えが分かった今、私がこの子に掛けられる言葉は・・・
「清霜・・・私を見て。」
「・・・?」
「あなたは十分役に立っているわ。」
「・・・・・・」
「弱くなんかない。 こんなになっても皆を守りたいって言うんだから。」
「・・・・・・」
「あなたは強い! あなたならいつか絶対戦艦みたいに頼りにされるわ! だから泣かないで!」
「・・・本当に? 私・・・弱くない? 役立たずじゃない?」
「本当よ! だから泣くのをやめて・・・今日は、鎮守府へ帰還しましょ。」
「・・・うん。」
泣き止んだ清霜を連れて私たちは鎮守府へ帰還した。
・・・・・・
帰還後、清霜は姉妹艦に運ばれて入渠・・・
私は今回の撤退理由と敵の情報を霧島に伝えた。
「わかりました・・・ビスマルクさん、ありがとうございます!」
「・・・・・・」
「では、次回の編成はビスマルクさん旗艦の戦艦・空母編成で行ってみましょう・・・
今日は体を休めて明日に備えてください!」
「・・・・・・」
「? どうしました?」
「・・・霧島は自分が戦艦として生まれた時、どう思ったのかしら?」
「・・・・・・」
少し考えた後、
「皆の盾として生まれたことを誇りに思っています。」
「・・・・・・」
皆の盾・・・ね・・・
「・・・ありがとう。 私の中の靄が晴れたわ。」
私はそのまま部屋に戻った。
「あらあら・・・どうやら、答えを見つけたようですね。」
霧島は確信した。
・・・・・・
翌日、
「これより、旗艦ビスマルク続く、戦艦・空母部隊! 新海域に突入! 敵を撃破しつつ、新海域を制圧する!」
私は皆と出撃を開始した。
清霜とは昨日で期間が終了し、お互いいつも通りの生活に戻った。
清霜が無事に夢を叶えて皆を守るための盾となることを願う。
そして私も・・・皆の盾となってこれからも海を駆け巡るわ!!
「霧島とビスマルク」 終
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