「提督と秋月」3
「提督と秋月」2の続きで、グルメ試食会で秋月のおにぎりが人気を博し、各鎮守府へとおにぎりの注文が
相次ぐ中、海外艦からある相談を持ち掛けられ・・・
要望があり書きましたぁ~。
グルメ試食会で秋月のおにぎりが評価され、各鎮守府におにぎりの追加注文が多数寄せられた。
秋月が握るおにぎりは格別においしく、握り加減・塩加減は完璧で注文が後を絶たず、毎朝秋月はおにぎりを握っていく。
しかし、彼女は「私のおにぎりを待っている人がいて嬉しいです!」と多忙にも関わらず、自信を持って要望に応えていた。
・・・・・・
「おはようございます、今日注文して頂いたおにぎりをお持ち致しました!」
朝早くに他の鎮守府におにぎりを届ける秋月。
平均で100~300個、多い時は500個と場所によって様々であるが、鎮守府内での遠征組の艦娘たちのための軽食と
出撃の際の戦闘配食の代わりとして重宝されて、とても評判がいいそうだ。
「ありがとうございます! お代は鎮守府へ入金してください!」
更におにぎり1個の値段は全品100円と、注文が多く寄せられるのも理由の1つだ。
秋月にとっておにぎりの配送は「お金を稼ぐため」ではない、皆に「笑顔」を届けるために自ら進んで行っているのだ。
ある日の事、
「ありがとうございました~! またのご利用をお待ちしていますね!」
鎮守府におにぎりを届け、帰還しようとした時、
「あの~すいません。」
誰かに呼び止められ、振り向くと・・・海外艦娘がいた。
「はい、秋月に何か御用ですか?」
秋月が尋ねると、
「おにぎり・・・美味しかったです。」
どうやらおにぎりの感想を伝えたかったようで、
「本当ですか? ありがとうございます!」
秋月は喜ぶ。
「後、こんなことを頼むのはなんですが・・・」
そう言って、秋月にある相談を持ち掛けた・・・それは
”いつも届けてくれるおにぎり以外の別の種類のおにぎりが食べてみたいです”
「・・・・・・」
秋月はそれを聞いて悩んでしまう。
・・・・・・
・・・
・
「成程ねぇ~、別の種類ですかぁ~。」
村雨の店に秋月が来店し、彼女の悩みを聞いていた。
「確かに今握っているおにぎりは ”鮭” ”梅” ”昆布” の一般的な和の具材なんですけど・・・」
秋月は言葉を続ける、
「海外の人って意外に”生”って食べないそうなんです・・・昆布って一応、生の海藻ですから好き嫌いが分かれるようで・・・」
「確かに、海外の方は基本は先に火に通してから食べますからね。」
「だからって全て鮭にすればすぐに飽きてしまいますし・・・」
秋月は悩むが、これといっていいアイデアが思いつかない。
「まぁ、今だと洋食が主流になっていますからね、和食離れが起きつつおにぎりの印象も薄れているのでしょうね。」
「・・・・・・」
少し沈黙した後、村雨からの意見が、
「でしたら、とりあえず思い付きでもいいので、おにぎりに入れる具を考えてみてはどうですか?」
「? 思い付きでですか?」
「はい、それを鎮守府内の皆に聞いて良いか悪いかを参考にして作ってみるんです・・・それで試食してもらって
良ければ今度のグルメ試食会にその新作おにぎりを出す・・・のはどうです?」
約1か月後にグルメ試食会が開催され、もちろん秋月も参加する。
「成程! 確かにそれはいい考えです! 早速鎮守府に戻って探してみます、村雨さんありがとうございました!」
秋月は店から出て行った。
・・・・・・
「まずはノートを用意して・・・」
秋月は思い当たる具をノートに記して行く。
「卵焼きとか納豆・・・そうですね、後はカレーもいいですね♪」
鎮守府内を回って、駆逐艦や戦艦の艦娘たちの意見を聞いて参考にする秋月。
・・・・・・
1週間後、
「いらっしゃいませ~♪ あら、秋月さん。」
「村雨さん、おはようございます! お話良いですか?」
2人は会話を始める。
「へぇ~・・・たくさんの具材についての議論をしたんですね~。」
「はい、村雨さんならどれがいいか選んで貰いたくて。」
村雨はノートに書かれている具の種類を見るが・・・
「う~ん、何と言うかここに書いてある具材ってほとんどが「売っている」物ばかりですよね?」
珍しく村雨は厳しい意見を出した。
「はい、村雨さんの意見を参考にして思い付きや高級に至るまで具に出来そうな物を書いたのですが・・・」
書いてある内容に、村雨が評価し始める。
「”いくら”は確かにおにぎりに入れれば美味しいんですが・・・ちょっと値が張りますよね?」
事前に秋月からグルメ試食会では一律100円で出すと聞かされていたため、村雨は試食会に出せそうな具材を探している。
「カレーですか・・・確かにご飯との相性がいいですが、冷めたら美味しくないと思いますよ?」
村雨がどんどん選んでいくが、
「う~ん、結構出来そうで出来ない物ばかりですね。」
「はい、村雨さんの言う通り冷めたら風味を損なう品や、1つが高値で試食会では多く提供できない物ばかりですね。」
改めて、何でも入れればいいわけではないという事に気づく秋月。
「う~ん・・・そうですねぇ~。」
村雨は考えるが、
「海外艦の方からの要望もありますし、何も定番ばかりでは賛否が分かれますね。」
グルメ試食会まで1か月切った、果たして間に合うのか?
「もう一度、鎮守府に戻って考えてみます。今日はありがとうございました!」
秋月は礼をして店から出て行く。
・・・・・・
グルメ試食会まで後1週間、
秋月は何とかおにぎりに合う具材を検討しているが、中々決まらない。
時間があれば村雨も考えてくれるが、それでも”安価で冷めても美味しい”と言う条件が見つからず、
時間だけが過ぎて行く日々・・・
しかし、意外な出来事で発想の転換が起きる。
「お待たせしましたぁ~♪ こちらがドリアになります~♪」
週末になると店内は忙しくなり、村雨は調理で忙しい。
応援で海風やサラトガが来てくれるが、今回は秋月が応援として来てくれた。
「お待たせしましたぁ~、鮭とシーチキンのおにぎりです!」
秋月も得意のおにぎりを出しつつ、試食会に向けての準備を進めていた。
・・・・・・
深夜0時、
「お疲れ様です、今日はありがとうございます! じゃあこれ今日の日給です♪」
「あ、ありがとうございます!!」
日給を貰って秋月は喜ぶ。
「どうです? 決まりましたか、おにぎりの具材は?」
「・・・いいえ、まだ決まってないです。」
「そう・・・」
試食会まで1週間を切った・・・そろそろ案が出てもいいはずだが、
「ごめんなさい、これから食器洗いや掃除をしないといけないので、秋月さんには部屋をお貸しするので
先に布団を敷いて寝てください。」
「すいません、何から何まで気を遣っていただいて・・・」
秋月は深々と礼をして部屋へと入って行く。
「・・・・・・」
村雨は皿洗いしながら、考えていた。
「そう言えば、お客さんの大半は洋食を注文するけど・・・よく「量が多い」 「味が濃い」とか言ってくるのよね~。」
村雨の味付けが悪いわけではないが、何も全ての客の考えが一致しないのもまた事実。
「・・・もう少し、味を薄めにしようかな。 そして量を少なめに・・・!」
村雨は何かに気付く。
「量を少なめに、半分? それとも一口サイズ? ・・・そうだ、その手があったわね♪」
何かに閃き、村雨は作業を始めた。
翌朝、
「お、おはようございます・・・村雨さん。」
秋月が起きて来る。
「おはようございます、秋月さん!」
村雨は秋月を呼び、
「昨日ちょっと閃いたので調理してみました、味見してくれませんか?」
「? は、はい。」
「何だろう?」と思って村雨から出された料理は、
「!? これって。」
村雨の思いがけない発想に驚きつつも、
「はむ・・はむ・・お、美味しいです!」
秋月は思わず叫んだ。
「どうです? これを試食会に出してもいいと思いますが?」
村雨によると、1つ1つの価格を安く出来るため、大量生産が可能との事。
「はい、お願いします! 秋月も進んで皆に提供できます!」
「よし、じゃあ次のおにぎりネタを考えましょうか!」
再び2人で新作おにぎりを考える。
・・・・・・
その後も試行錯誤して新作おにぎりを作り、そして・・・約10種類のおにぎりの作成に成功。
後はこれを仲間に食べてもらって判定して貰うだけ。
「いらっしゃいませ~♪ ようこそ、サラトガさんに翔鶴さん。」
時間を見つけて、2人に店に来てもらった。
サラトガは料理好きで、過去に何回かグルメ試食会に参加し好成績を挙げた海外艦娘であり、
翔鶴は和風食作りに長け、天ぷらや和膳定食はお手の物である。
「今日はわざわざ招待していただき、ありがとうございます。」
翔鶴は深々と礼をする。
「いえいえ~どうぞ、席に座って下さい。」
村雨が席に案内する。
「今日来てもらったのは、数日後に始まるイベント「グルメ試食会」に出す料理を選出してもらいたく・・・」
村雨が事情を説明する。
「それに伴い、秋月さんが考えた新作おにぎりの感想と評価をして欲しいのです!」
「成程、秋月さんと言ったらおにぎりですよね♪」
「洋食が普及しているこの時代に、おにぎり一筋で勝負する秋月さんの意思には感心しますね♪」
そう言っている内に、
「お待たせしましたぁ~、こちらがグルメ試食会に出す予定の新作おにぎりです! 是非ご賞味ください!」
サラトガと翔鶴の前に新作おにぎりを出す。
「あら、とても美味しそう♪」
サラトガは目を輝かせる、
「・・・な、中々の発想ですね。」
少し驚く翔鶴だが、
「でも、いい発想です。 今度私も参考にして考えてみようかしら。」
そう言って、2人は箸を持って食べ始めた。
・・・・・・
「い、いかがでしょうか?」
感想を聞きたく、秋月はおどおどしながら2人に尋ねる。
「そうですね・・・サラとしてはこの3つのおにぎりはグッドですね!」
サラトガは3つのおにぎりに太鼓判を押した。
「あ、ありがとうございます!」
秋月は喜んだ。
「成程、おにぎりと聞いて鮭や梅干しなどの定番ものばかり考えていましたが、とても美味しかったです。
これなら提督や海外艦娘の方も喜ぶと思います。」
翔鶴も絶賛して、
「ありがとうございます! グルメ試食会で私の握ったおにぎりを皆に食べてもらいたいです!」
おにぎりは決まった・・・後はグルメ試食会に向けて準備するのみ。
・・・・・・
「いらっしゃいませ~♪ あら、秋月さん。 こんにちは♪」
グルメ試食会まで残り1日となった所で、村雨は秋月を店に呼んだ。
「こんにちは、村雨さん! それで、秋月に何か御用ですか?」
「おっ、秋月。 久しぶりだな。」
裏から提督が出て来て、
「司令! お久しぶりです!」
秋月は提督に敬礼をする、
「ははは、オレはもう提督じゃないよ、敬礼なんてよしてくれ。」
「あっ・・・す、すいません。」
秋月は顔を赤くする。
「もう少し待ってくれ、明日に向けての道具が完成する所だ。」
そう言って、また裏口へと戻って行く提督。
「? 何でしょう?」
秋月は首を傾げる。
10分後、
「お待たせ、これを持っていけ。」
提督が持っていた物、それは・・・保冷ボックス?
「・・・・・・」
開けると、通常と比べて広い空間になっており、おにぎりが数100個入るスペースだ。
「保冷ボックスならぬ保温ボックスだ。 温めた物を長時間保温できる優れものだ。」
「す、凄いです。」
「村雨から「おにぎりが冷めてしまう」と相談を受けてね、それなら「保温を維持できればいい」わけだから作成してみた。」
「あ、ありがとうございます! これなら事前に握っても皆に温かいおにぎりを食べてもらうことが出来ます!」
秋月は喜んで保温ボックスを持って鎮守府へと戻った。
・・・・・・
・・・
・
翌日、予定通りグルメ試食会が開催された。
他の鎮守府からたくさんの提督と艦娘が参加、 一部の看板艦娘が鎮守府で一番人気の料理を出し合うイベントだ。
「こっちは浦風特製広島お好み焼きじゃけぇ!」
「お待たせしましたぁ~! リットリオ手作りのピザ、焼きたてですよ~♪」
「ただいま揚げ終わりました、翔鶴の天ぷらですよ~。」
看板艦娘も増えたことで食べ物の選択も上がり、提督と艦娘達が何を食べようかと必死になる。
「いらっしゃいませ~、秋月が握ったおにぎりいかがですか~!」
その中で一際大声で秋月が新作おにぎりをアピールしていた。
前は見向きもしなかった提督たちも、秋月のおにぎりの美味さに立ち寄るようになり、
「おおっ、これ本当におにぎりなのかい!?」
定番のおにぎりの横に置かれた新作おにぎりを見て驚く提督たち。
「はい! こちらは「ドリア風のおにぎり」、こちらは「カレー風おにぎり」にこっちは「肉巻きおにぎり」です!」
秋月と村雨が工夫を凝らして、ありそうでなかったおにぎりを出していた。
「後は、「オムライス風おにぎり」や中心にハンバーグを入れた「ハンバーガーならぬライスバーガー」です!」
秋月は食べたそうな提督を見て一言、
「最初の1個目は無料です、2個目から100円になります! お好きなおにぎりをどうぞ!」
提督から客寄せ言葉を習った秋月、いつもより声掛けが大きく頼もしい。
「おおっ、中にカレーが入ってる。 しかも、温かい・・・これは美味い!」
「はい、温かい状態で食べてもらいたく、秋月が工夫を凝らして温かいままで提供しています!」
冷めたら風味を失うカレーやドリアも保温効果で本来の出来たてを提供でき、提督たちの心を揺すぶらす。
「これとこれ4個ずつ!」
「オレはドリアとオムライスを!!」
秋月のおにぎりがどんどん売れて行った。
「10個ですね、ありがとうございます~♪ はいっ、ドリアと肉巻き2個ずつですね? かしこまりましたぁ~。」
秋月の手伝いに来ていた村雨は接客に追われる。
「・・・あっ、おはようございます!」
そこには、秋月に依頼した海外艦娘が立っていて、
「ドリアとカレーと・・・後は昆布と鮭をください。」
「ありがとうございます~! ・・・(おにぎりを袋に包んで)はい、お待たせしました~!」
秋月が手際よく包装し渡す。
「! 冷たくない・・・もしかして出来たて?」
「いいえ、会場に来る数時間前に秋月が丹精込めて握りましたよ。」
秋月は他の接客をしつつ、笑顔で振るまう。
「数時間経ってもこの温かさ、まるで出来たてを食べているみたい!」
彼女は頬張りながら感動していた。
「いらっしゃいませ~、どうぞお立ち寄りください! 最初のおにぎりは無料で食べて構いません~
2個目から100円です~! どうぞどうぞ~!!」
秋月の挑戦は見事成功し、おにぎりは完売した。
・・・・・・
「お疲れ様です、秋月さん。」
手伝いに来ていた村雨が後片付けをしていて、
「村雨さんの方こそ、秋月のために店を休んでもらって手伝ってくれて・・・本当に感謝です!!」
「いいのよ、秋月さんとは昔鎮守府で一緒に生活した仲でしょう。」
2人が仲良く会話をしていると、目の前に人の姿が、
「あっ、申し訳ありません。 おにぎりはもう完売してしまいました。」
秋月が申し訳なさそうに謝る、
「いえ、おにぎりを買いに来たわけではありません。」
目の前に立っていたのは、グルメ試食会の審査員だった。
「おめでとうございます! あなたの出したおにぎりがグルメ試食会人気トップ3に入りました!」
「!? 本当ですか!?」
グルメ試食会では、各鎮守府の艦娘が得意料理を出して競う・・・食べた提督や艦娘からの投票により、
毎年2回に順位が発表される。
「こちらが賞金と名誉賞のトロフィーになります! おめでとうございます!」
昔はトップ3どころか人気順にも該当していなかったが、秋月のおにぎりへのこだわりがやっと皆に評価されたのだ。
「半年後のグルメ試食会にも是非参加してください、皆がそれを望んでおります!」
「は、はい! 秋月、皆さんのために、これからも頑張っておにぎりを握っていきます!!」
秋月は思わず敬礼をした。
・・・・・・
その後、
「お待たせしましたぁ~! 注文して頂いたおにぎりをお持ち致しましたぁ~!」
いつもと同じように、他の鎮守府におにぎりの配送をしていた。
新作おにぎりを出したことにより、海外艦娘からの要望も多くなった。
「え~っと後は、ローマさんとアイオワさんとガングートさんからの注文があってと・・・」
最近では個人に対しても配送するようになった秋月。
時間を見つけては、新たなおにぎりの開発に取り組んでいる秋月。 出撃や遠征中に閃くこともしばしば。
「よし、もうひと頑張りしますか! 最初は、近い所はローマさんですね。」
秋月は地図を見ながら、ローマがいる鎮守府へと向かうのだった。
「提督と秋月」3 終
ちなみに売り上げの大半は鎮守府に渡し、手伝ってもらった村雨に日給を渡して残りと賞金は
妹(照月・初月・涼月)に仕送りしたんだとか・・・秋月は優しい子ですね~♪
坂崎ふれでぃ『史実で艦これ』シリーズにあった。日本海軍の軍艦の炊事室で如何にして『もっとも美味く』おにぎりを作るか?『おにぎり』一つにしても非常に奥が深い。海軍の軍艦だから大量の『米』を炊き、おにぎりにしても短時間で大量に作る。艦内、食事は乗組員の数少ない『娯楽・楽しみ』の一つである。再度、強調、おにぎり一つ取っても非常に奥が深い。
続編ktkr!!
リクエストに答えて下さったのですね!!キリンちゃん様、感謝です♪
少し前の艦娘を拾う話から楽しませてもらってます。
これからも頑張って下さいね。
2さんへ、
コメントありがとうございます~♪
また要望ありましたら遠慮なくどうぞ~♪
何故だろう? 急におにぎりが食べたくなって来た!!
昆布の入ったおにぎりが食いたくなってきた