2017-07-29 23:27:39 更新

概要

戦闘で負傷し、出撃できなくなった蒼龍のお話。


「痛っ!!」


敵の砲撃を受けた直後に感じる激痛・・・


反撃するために弓を引こうとするが・・・


「ああっ・・・指が・・・」


被弾によって、指が欠損し弓が使えなかった。


「・・・・・・」


運よく、飛龍がその場に居合わせたため、私は助かり帰還できた。



・・・・・・


欠損した指は入渠では治療できず、私は弓が使えないことで出撃が出来なくなってしまった。


皆が出撃する中、私はただ一人鎮守府で待機していた。


最初は心配してくれた提督も、次第に離れて行って・・・最終的に移動命令を受けた。


提督は「この鎮守府で活躍を期待する」と言っていたけど、嘘が下手ね。 本当は役立たずな私を追い出したかっただけ・・・


未練はあったけど、戦えない自分の無力さと皆に迷惑を掛けたくない気持ちから素直に諦めた。



・・・・・・


たどり着いた場所は鎮守府ではなく、「障害艦娘施設」・・・


私のように、欠損したことで出撃できなくなってしまった艦娘や暴力を受けて心に傷を負った艦娘たちが集まる施設だった。


主な収入源は障害手当で、傷害の艦娘が多いほど多くもらえる仕組みだった。


そこを統括している提督・・・ではなく憲兵は私を見ると部屋に案内した。


部屋に入ると、そこには私と同じ境遇の艦娘たちがたくさんいました・・・


片目を失って詮索能力が低下したため捨てられた艦娘、性的虐待を受けて心に深い傷を持った艦娘と事情は様々でした。


簡単に切り捨てられ・・・皆「提督が憎い・・・憎い」と口に出していました。


私も指が欠損して出撃が出来なくなった身ですが、それだけの理由で捨てられたことに憎しみを抱いていました。


それなら・・・


「皆で協力して提督達に復讐しよう!」


と、私の意見に皆賛同したのです。


今思えば、なぜそんな恐ろしいことを考えてしまったのかはわかりません。


その時は、ただ私を捨てた提督に対する憎しみや、皆の気持ちに同情していたのがあったのかもしれません。


最初にこの施設に滞在していた憲兵たちを追い出すのは容易な事だった。


皆で協力して憲兵たちを脅したり、食事に毒を盛ったりして憲兵たちに恐怖を植え付けた。


その結果、提督命令で滞在している憲兵たちは自分たちの命を優先に逃げ出したのである。


その時は皆で喜んだ。


「私たちは勝った・・・勝ったんだって。」


本当は勝ち負けなんてないのにね・・・


その後、元々この施設を統括していた提督がやってきて私たちは同じように行動。


提督は命乞いしながら、施設から去った。


この時も、「勝った」とばかりに皆で喜んでいた。


本当は悪いことなんだけど、「私たちは復讐を成し遂げた」と言い聞かせていた。


出張で食事作りに来ていた鳳翔さんも「皆さん、もう復讐はやめましょう。」と止めようとしてくれたけど、


それどころか私は鳳翔さんに今度は「提督の食事に毒を盛って下さい」と頼んでしまう。


私たちの境遇を知って同情していたところもあって、鳳翔さんは私の頼みを聞いてくれた。


それからは、出張で提督が来るたびに私たちの熱烈な歓迎や鳳翔さんの食事で提督達を苦しめ追い出す・・・それの繰り返し。


本当は復讐をしたかったわけじゃないけど、捨てられた私たちの苦しみを味合わせたくて提督達を痛めつけた。


次第にこの施設に提督が来なくなり、私たちはしばらく平和な生活が続いた。


・・・・・・


それから少し経ってからかな・・・あの提督がここに出張しに来たのは・・・


私たちは同じような態度で提督に怒号や中傷で叫び、追い出そうとしたけど、提督は気にもしなかった。


次に鳳翔さんがいつもの食事を振る舞うが、これも失敗。 今回の提督は厄介な相手だった。


その後も皆でさらにきつめの誹謗中傷やら武器を突き出しての脅しをしたけれど・・・提督は全く動じず逆に皆が


提督を恐れて何も言わなくなった。


鳳翔さんも提督に説得されたようで、今まで毒を盛ったことも全て白状していた・・・



そして・・・最後に私。


理由を問われて、私は提督に指を見せた。


同時に指を見た瞬間に欠損したせいで出撃できなくなり、挙句に捨てられた気持ちが頭によぎり私は提督に問いた。



ねぇ・・・何で!!  何で私を捨てたの!! ねぇ何で!!



提督は無言で口を開こうとしない・・・私は更に叫び・・・



私たちを捨てた提督達に復讐して何が悪いの!  ねぇ!  何が悪いの!!



提督の表情は興ざめしたかのような冷ややかな顔つきで、私に言った。


「欠損して出撃できないお前たちがなぜ生活できる?」


その言葉に私ははっとした。


「この施設に支給される障害手当と提督の給料があるからだろう?」


「・・・・・・」


「つまりお前らは、出撃もしないのに生活してるってことはただの給料泥棒ってことだよな?」


「・・・・・・」


「そんな給料泥棒のお前らがなぜ復讐を考えられるんだ?」


「・・・・・・」


「お前らはただ欠損したことをいいことにこの施設に寄生しているってことだ。」


「・・・・・・」


「それなのに、憎いから復讐をするとは・・・哀れだよ、あ・わ・れ。」


私は何も言い返せなかった。


そんなことを言われるなんて思っても見なかったし、むしろ正論だったから・・・


「都合のいい復讐の代償はさぞ重いことだろうね。」


それだけ言って提督は施設から去った。


・・・・・・


皆はどうなるんだろう・・・


鳳翔さんも処罰されるのかな? でも、私が頼んだことだから鳳翔さんに罪はない。


皆だって憎いとは言っていたけど、提案したのは私・・・だから皆は悪くない!


悪いのは私、私なの!!


無意識に気づいた時には、提督の前で土下座をしていた。


「私が全て悪いんです! ですから皆は見逃してください!」


私が・・・私が・・・捨てられてやり場のなかった私が皆を利用して起こしたこと・・・


「私が処罰を受けます。 皆は・・・皆は許してください!」


私に必死の願いに提督は、


「ならば、オレについてこい。」


提督の命令により、私は後についていくことに・・・どんな罰が来ても覚悟はしていました・・・



・・・・・・


あれから、月日が流れて・・・


皆はどうしているかしら・・・


あの施設で静かに生活しているのでしょうか・・・


噂では鳳翔さんは元の鎮守府に帰還、処罰はなしで今では皆においしい食事を提供しているとか・・・


施設にいる皆はカウンセラーの方たちによって治療を受けているとか・・・


そして私は・・・



「蒼龍、出撃準備が整いました!」



私はまた出撃をしています。


指は元通りにはなっていないけど・・・提督が私に指を使わなくても矢を放てる弓を作ってくれました。


数か月間のリハビリと訓練をしてまた海に戻ることができました。


あの時、私には意地が無かった・・・欠損していても、出撃する意地を持てばよかったはず。


それも持たずに全てを提督のせいにして、挙句復讐なんて考えて・・・私はバカだった。


今の提督が私の目を覚ましてくれなかったら、今でも復讐を起こしていたのかもしれません。


提督には感謝してもしきれない恩をいただきました。


その恩に報いるため、私は海を駆け巡ります。







航空母艦、蒼龍! 抜錨します!!







「提督と蒼龍」 終







後書き

ちなみに私の鎮守府では蒼龍はレベル100超えです(笑)


このSSへの評価

4件評価されています


トキヤですさんから
2019-01-27 11:47:17

SS好きの名無しさんから
2017-10-15 14:39:24

SS好きの名無しさんから
2017-08-30 20:54:32

Abcdefg_gfedcbAさんから
2017-07-31 23:14:30

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Abcdefg_gfedcbAさんから
2017-07-31 23:14:28

このSSへのコメント

3件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-07-16 07:16:46 ID: xXQEphlp

此処で殺されかけた提督達の
復讐もみてみたいな。
人を呪わば穴二つよ

2: Abcdefg_gfedcbA 2017-07-31 23:14:22 ID: bw2_aCLd

中々気になるものが多いので、贅沢を言うなら短編で終わらず長編でしっかりと見てみたいです...

3: キリンちゃん 2017-07-31 23:37:00 ID: _zXsqq6t

艦これSSの上位のお方から評価していただき光栄に思います。いつも1時間程度の遠征時間の合間をSSで書いているので、どうしても短編としてまとめてしまいます。要望をしていただき長編も時間を見て書いてみようと思います。コメントありがとうございました。


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