午前10時

提督「暇だなぁ」

満潮「……」

提督「……」

満潮「……」

提督「満潮、こんな話があるんだが」

満潮「何よ、急に」

提督「俺の地元に○○病院っていう病院があってな。今は潰れちゃったんだけど」

満潮「で？」

提督「その病院が潰れた理由ってのが面白いんだ」

満潮「へぇ」

提督「なんでも、幽霊が出るらしい。それも夜だけじゃなくて朝方や夕方にも」

満潮「空気の読めない霊ね」

提督「しかも１体じゃないそうだ。首がねじ曲がった男とか血塗れのナース服を着た女とか腸が飛び出てる子供とか」

満潮「霊も群れるのね」

提督「…あんまり怖くない？」

満潮「怖くないわよ。私たちが毎日何と戦ってると思ってるの？」

提督「あー、そりゃそうだ」

ｺﾝｺﾝｺﾝ

満潮「っ！」ﾋﾞｸｯ

大淀「失礼します」

提督「大淀か。どうした？」

大淀「はい。実は先程、遠征に出ている天龍さんから連絡が入りました。遠征先の天候が悪いので帰投を１日伸ばさせてほしいそうです」

提督「天龍の艦隊は、天龍と朝潮と大潮と荒潮だったな。わかった。許可する」

大淀「ではそのように伝えておきますね。失礼します」

ｶﾞﾁｬ ﾊﾞﾀﾝ

満潮「……」

提督「そういうことで、今晩は満潮１人になるけど平気か？」

満潮「子供じゃあるまいし、何も心配いらないわ」

提督「そうかそうか。ま、何かあったら何でも言ってくれ」

満潮「……」ｺｸ

※

午後１時

提督「昼飯も食べたし、午後も頑張るぞー」

満潮「午後は何をするの？」

提督「特にやることありませーん」

満潮「…はぁ？」

提督「新戦術でも考えてみるか。潜水艦が混じった編成に対しての勝率がよろしくない」

満潮「ああ、あのウザい編成ね。それでも勝率は９割近いけど」

ｶﾞﾁｬ

提督「誰だ、ノックもせずに入ってくるイタズラウサギは」

卯月「うーちゃんはイタズラウサギなんかじゃないぴょん」

提督「どの口が言う」

卯月「今日はいつもお仕事頑張ってる司令官にプレゼントを持ってきたぴょん」

提督「へぇ、なんだろうね」

卯月「お菓子の詰め合わせぴょん。どーぞ」ｺﾞﾄ

提督「えらくデカい箱だな」

卯月「ついでに満潮も一緒に食べるといいぴょん」

満潮「はいはい、ありがと」

提督「早速開けてみるか」ﾊﾟｶｯ

ﾊﾟｰﾝ ﾋﾞﾖｰﾝ

満潮「っ！！！」ｶﾞﾀｶﾞﾀｯ

提督「うお、ビックリ箱か。クラッカーもだが、この飛び出てるやつは悪趣味だな。やけにリアルな男の生首って」

卯月「冷静に解説されると面白くないぴょん。もっと満潮みたいなリアクションをしてくれなきゃ」

満潮「あ、あんなの誰でもびっくりするでしょ！」

卯月「我ながらいい出来…って痛い！満潮、グリグリは止めるぴょん！」

満潮「自業自得よ！」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

提督「満潮の言うとおりだぞ。あ、チョコも入ってたわ」

※

午後４時

満潮「まったく、資料を忘れるなんて。司令官、最近ぼんやりしすぎね」

間宮「……」ｽﾀｽﾀ

満潮「あれは間宮さん？こんな所にいるなんて珍しいわね」

間宮「あら？」ｸﾙｯ

満潮「こんにちは、間宮さ…ひっ…！」

間宮「こんにちは、満潮ちゃん」

満潮「ま、間宮さん、その服は…」

間宮「ああ、これね。実は夕食の準備をしていたらケチャップをこぼしちゃって。今着替えに行く所なの」

満潮「そ、そう。なら急いだ方がいいわ。その格好だと怪我してるように見えちゃうから」

間宮「そうね。ありがとう、満潮ちゃん」

満潮「うん…」

間宮「じゃあ、後で。夕食、期待しててね」ｽﾀｽﾀ

満潮「……」

※

午後７時

満潮「…久しぶりに１人で夕食か」

提督「俺もいるんだが」

満潮「なんでいるのよ」

提督「俺がいつも秘書艦と食べてるのは知ってるだろ」

満潮「そうだったわね」

テレビ『次のニュースです。今日の午後、○○で車５台を巻き込む大規模な交通事故がありました』

提督「酷い事故だな」

テレビ『この事故で、６歳の男の子を含む３人が死亡。１人が重体。８人が重軽傷を負いました。現場は海に近い所でしたが、深海棲艦によるものではないとのことです』

提督「うわ、車がぺちゃんこ。あの男の子、これに乗ってたのかな。だとしたら…」

満潮「食事中にそういう話はやめて。食欲がなくなる」

提督「悪い悪い」

満潮「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

※

午後11時

満潮「……」

満潮「寝られない」

提督『首がねじ曲がった男とか』

ビックリ箱『！』ﾋﾞﾖｰﾝ

提督『血塗れのナース服の女とか』

間宮『ケチャップをこぼしちゃって』ﾁﾏﾐﾚ

提督『腸が飛び出てる子供とか』

男の子『痛い…痛いよ…』ｸﾞﾁｬ

満潮「っ！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

満潮「怖くない。怖くないったら…」

満潮「……」

提督『何かあったら何でも言ってくれ』

満潮「……」ｺﾞｿｺﾞｿ

※

ｺﾝｺﾝｺﾝ

提督「ん？誰だこんな時間に」ｶﾞﾁｬ

満潮「……」

提督「満潮か、どうした？」

満潮「…今日アンタが怖い話したから寝られなくなった。責任取りなさい」

提督「それでわざわざ執務室に？時雨や海風の所の方が近いだろ」

満潮「もう夜遅いし、迷惑でしょ」

提督「俺はいいのか」

満潮「アンタのせいだからいいの」

提督「そうっすか…」

満潮「で、こんな時間まで何してるのよ？」

提督「明日の分の仕事を少しやってた。もうそろそろ寝ようとしていたとこだ」

満潮「だから昼間は暇だったのね。何のための秘書艦なのよ」

提督「ははは。で、先に俺の部屋に行ってるか？」

満潮「…一緒にいる」

提督「…可愛いなコイツ」ﾎﾞｿｯ

満潮「何か言った？」

提督「何も」

※

提督「ベッドとソファ、どっちがいい？」

満潮「…ベッド」

提督「じゃあ俺はソファ…」

満潮「別に一緒でも私は…」

提督「それは流石にマズいだろ」

満潮「何？もしかして、アンタはロリコンなの？」

提督「違うわ」

満潮「ならベッドでいいでしょ。ソファで寝て体調を崩されでもしたら困るわ」

提督「…しょうがないな」ｺﾞｿｺﾞｿ

満潮「……」ｺﾞｿｺﾞｿ

提督「……」

満潮「……」

提督「…眠れそうか？」

満潮「……」ｺｸ

満潮(緊張して寝られないかと思ったけど、暖かくて心地良い。これじゃ…すぐに…)

満潮「ｽｰ…ｽｰ…」

提督「…おやすみ」

※

午前５時

天龍「思ったより早く帰投できたな。報告はオレがしに行くから、お前らは部屋に戻ってろ」

朝潮「了解しました！」ﾋﾞｼｯ

荒潮「ちょっとだけ仮眠取りたいわー」

大潮「大潮もー」

ｿﾞﾛｿﾞﾛ

天龍「さて、この時間は執務室にはいないだろうから、提督の私室だな。流石に起きてんだろ」ｽﾀｽﾀ

天龍「朝潮に言われて夜遅くの出発だったからねみぃ。満潮が心配なのはわかるけど、ちっとばかし過保護なのがな」ｽﾀｽﾀ

ｺﾝｺﾝｺﾝ

天龍「提督、邪魔するぞ。天龍水雷戦隊、遠征から帰投…した…ぜ」

提督「ん、おはよう天龍。早い戻りだな」

満潮「ｸｰ…ｽｰ…」

天龍「なんで満潮がここに…」

提督「あー、それはだな…」

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

朝潮「司令官！満潮が部屋にいません！」

提督「おはよう。満潮ならここにいるから大丈夫だ」

朝潮「…へ？」

大潮「おー…」

荒潮「あらあら…」

満潮「ん…うるさい…」ﾑｸｯ

提督「満潮、おはよう」

満潮「ん…え？なんで朝潮たちがここに…？」

朝潮「あなたがいないから司令官に報告しに…」

荒潮「まさか司令官と一夜を共にしてるとは思わなかったわー」ﾆﾔﾆﾔ

天龍「お前ら、そういう関係だったのか」

提督「違うわ」

満潮「……」ｶｵﾏｯｶ

提督「…満潮？」

満潮「１回全員出てって！！！」ﾏｯｶｯｶ

※

満潮(噂というものは広がるのが早い。もう鎮守府全体に広がってしまった)

満潮「はぁ…」

金剛「満潮！どうやってテートクのハートを射止めたデスカ！？白状するデース！」

加賀「私にも是非聞かせてほしいわ」

満潮「だから私たちはそんな関係じゃないから。いい加減にして」

金剛「じゃあどんな関係！？あと、思いきり顔緩んでるヨ！」

加賀「くっ、やはり提督はロリコン…」

提督(満潮、楽しそうだなー)ｺｿｺｿ

この噂のせいで、提督は駆逐艦からの猛烈なアプローチにてんやわんやするのだが、それはまた別のお話である…