これが本当のクソ提督
提督「ああ"?チビ、今なんつったぁ?」
霞「化物っていったのよ」
提督「上司に向かって化物とわなんだ!」
霞「口が裂けてる化物じゃない」
提督「化物はテメェらだろ」
霞「性格はクズの中の本当のクズだし」
提督「クズ豆が」
霞「ッ、私は出撃にいってくるわ。せいぜい金剛さんに殺されないようにするのね」
提督「ご忠告どうも、そっちもできるだけ絶望してから沈んでくれよ?深海悽艦の引き付け役」
霞「死ねクズ」扉バタン
提督「…………」
§
金剛「テートクー!今日こそ殺してやるデス!!」ナイフ
提督「生憎何度も言うが、俺は元帥になるまで死なねぇよ!」ナイフ避ける
金剛「テートクー!さぁ今日こそ榛名の恨み、晴らすデス!!」
提督「しつけぇな、そもそも榛名?えーっと…………あぁ!あの役立たずの鉄屑か!いやー兵器としても使えねぇ、俺の道具としても使えねぇ鉄屑で邪魔だったんだよ!あいつが沈んだお陰で新しい鉄屑が来ることになって本当に居なくなって助かったわ!」
金剛「ッ!?お前!」
提督「そもそも榛名が沈んだのテメェのせぇじゃねぇか?テメェが弱いから死んだんだろ?それを俺のせえにしてんじゃねぇよ、テメェみてぇなのを日本じゃ馬鹿って言うんだよ。わかったか?金剛姉様」
金剛「」ブチィッ!
霧島「姉様!ダメです!」取り押さえる
金剛「霧島!?離せ!今日こそ殺して榛名の仇を!!!」
提督「ギャッハッハッハッハ!!!妹はお前より賢いみたいだぞ?クックック、早くその猿を外に出せ。ギャーギャーうるさくてゆっくりお茶も飲めねぇ」
霧島「…………金剛姉様、行きましょう。この男を殺してもなにも変わりません、何より榛名も悲しみます」
金剛「ッ、何時か必ずお前をこの手で!!!」扉バタン
提督「…………」
§
天龍「よぉ」
提督「…………あの第六駆逐隊のクソガキどもはどうした?」
天龍「テメェの顔を見たくねぇと、つか俺もてめぇのクソ塗りたくッたような化物面なんて見たかねぇよ」
提督「で?帰ってきたのか?ならば下がれ」
天龍 ツカツカツカ
バン!
天龍「何時になったら俺を出撃させるんだ!?もう2ヶ月、遠征も出撃もさせないってどう言うことだ!?えぇ!?」
提督「あ?ザコのテメェを出撃させてもいつも大破して帰ってくる使えねぇ正真正銘の鉄ゴミにようわねぇ。それともあれか?やっと解体される気になったか?解体申請書出せ、ハンコ押してやっから」
天龍「んだと!」首根っこ掴む
提督「おいおい!良いのかよ!?俺を殴ればテメェだけじゃねぇ!龍田や第六駆逐隊のガキどもだって皆解体させることなんて簡単なんだよ!!」
天龍「ッ、テメェ…………」
提督「ヒッヒッヒ、なぁどうすんだよ、優しい優しい天龍ちゃんよぉ」マジ鬼畜スマイル
天龍「クソが!!」扉バタン!
提督「………」
§
長門「帰還した。同じく駆逐艦の第三艦隊も帰還し入渠している」
提督「そうか、入渠から出たらまた出撃だ」
長門「…………」
提督「いやぁーお前は他の鉄屑たちと違って聞き分けもいいし言い訳も口答えもしない、さすがビッグ7…………いい部下をもったよ」
長門「…………」
提督「どうした?出撃する海域は分かっているだろ?さっさと行け」
長門「…………一つ聞こう」
提督「ふん、私は暇ではないが………お前はこの鎮守府で一番使える道具だ…………まぁ、使えなくなったら解体するが………………」
長門「次に来る娘は誰なんだ?」
提督「?そんなかとか、…………球磨型五番艦、木曾改二と大和らしい。球磨型達と武蔵が喜びそうだなぁ。まぁ球磨型と大和型はうちにいないが…………まぁ写真で見たが、あの顔を夜にベットの上で泣かせるのを想像すると、クックック、楽しみだ」
長門「…………そうか……提督」
提督「今度はなんだ?暇じゃないと」
長門「駆逐艦の第三艦隊のかわりに私が出撃しよう」
提督「…………それは、お前が第一艦隊を抜けて単独で出撃する……ってことで良いんだな?」
長門「構わんよ」
提督「…………好きにしろ、どんせあんな駆逐艦どもは豆鉄砲くらいにしか役に立たん。しかし、お前が大破して帰ってくるようなことがあれば…………」
長門「分かっている」
提督「…………ふん、好きにしろ」
長門「それでは好きにさせてもらおう」扉バタン
提督「…………」
提督「……」
§
雷「あ、長門さん!」
長門「?なんだ、雷か」
雷「今日はもう出撃はなしじゃなかったの??」
長門「悪いな、この後出撃命令が出てな」
雷「でも弾薬や燃料がもうなわよ。電達がまた後で遠征にいくそうだから…………」
長門「安心しろ、私も弾薬や燃料なしに出撃するほど馬鹿ではない、その間は少し休ませてもらうとしよう」
雷「そう、それじゃぁね」
雷「…………」
雷「…………」つ携帯
雷「もしもし」
§
歴史は嫌いだが、思い出は好きだ。
国は嫌いだが、人は好きだ。
兵器は大嫌いだが、艦娘は大好きだ。
どっかの馬鹿で無知なガキはそうほざいていた。
この世は思い出より歴史が大事だ。
人より国が優先だ。
艦娘は人間ではない、兵器だ。
元帥の口癖は、『私は犯罪者だ、地獄に堕ちるべき人間だ』よく俺の前で言う言葉だった。
艦娘
孤児、親に捨てられ名前すらもない子供、深海悽艦に家族を奪われ復讐に燃える子供。
その他様々な理由で人間であることを捨て、『改造』を望み、艦娘となった少女たちの行き着く姿。
そして人間の体に、艦という型をあてがい整形し、人間を兵器へと昇華する技術。
故に己の記憶と艦としての記憶。二つが入り交じる。
元帥はいつも悔しそうに語っている。
『私はたくさんの人を助けたい。それが何人犠牲になろうと、私が悪魔だの、人でなしと言われようとも、非人間と言われようと、世間にどう思われようと、私が死のうとも、私は少ない方より多い方をとる』
しかし、ここ日本はその技術をもってしても、艦娘と言う存在が多く不足している。
艦娘になるには様々な条件がある。
本人の身体能力。
あてがう艦との相性。
その他、様々な条件を満たさないとなれるものではない。
日本は他のくにと比べ人工も少ない。
人手不足になるのも当然だ。
故に艦娘になれる存在は希少なのだ。
出きることなら、この海を護る為に戦いたいと言う人を艦娘にしたい。しかし、誰しもがなれるものではない。
それに、どちらかと言えばなりたくない者の中に艦娘になれる存在は多い。
ならば
【ならざる終えない状況にする】
簡単なことだ。
そう、簡単、簡単なんだよ。
だって、
それをしていたのは俺なんだ。
俺の担当だった、だから俺は現実から逃げ続けた。
海を護るため、国を護るため、日本を護るためだと、現実から逃げた、不幸な人間から目を背けた。
子供みたいに自分のやっていることは正しいと正当化し、正しいことだと駄々をこねた。
借金、仕事を辞めさせる、親が事故死になる、倒産、その他様々な理由でいろんな家族を不幸にした。
息をするほど簡単なんだよ、人を殺すのも、人を不幸にするのも。
元帥は語った。
『すまない、私は地獄行きだろう。君も、私も…………だが!私は、それでもこの国を!世界を護りたいんだ!!』
いいや違うぜ、元帥。
『地獄行きの船に乗るのは俺だけだ』
殺したのも、不幸にしたのも俺。
元帥の命令だからやったんじゃない、俺がやりたいからやったんだ。
俺は口も裂けてる、片方の目もねぇ、体は古傷が絶えない。
見た目通り人を何人も殺した。
正真正銘の化物。
だから最後に不幸になるのも、地獄に行くのも、化物だけだ。
『あんたは人間だ』
そう、
俺は化物。
元帥は人間。
化物は地獄に行く。
化物が死ねば皆喜ぶ。
化物が死ねば、皆ハッピーエンド。
な?簡単だろ?
『だから元帥が地獄に行く必要はねぇ。そもそも行かせねぇ』
『…………すまない、すまない!』
おいおい、元帥とも人が、俺なんかに頭を下げんなって。
いいんだよこれで。
あんたは誰よりも苦しんでいる。
誰よりも自分の辛い道を選んでいる。
心を鬼にしても、悪魔になろうとも、それでもこの国を守ろうとして居る。
世間はあんたを、元帥を『非人間、人間失格、非人道的、道徳無視、人権侵害、残酷、非道、外道』そんな言葉を言われても、守ろうとして居る。
この国を。
でも、それでも元帥はいつも苦しそうで
他の誰よりも辛そうで
悲しそうだった。
だから、【人間失格】の【化物】は俺一人で十分なんだよ。
それから俺は、ある鎮守府の提督の席が空いているらしく、その席を埋める提督が見つかるまで、俺がかわりになることになった。
俺は今は普通だが、毎日欠かさず精神安定剤を十条ほど飲んでいる。
でなけりゃ気が狂って自殺しちまうからだ。
死
ぬ
の
は
た
だ
の
逃
げ
道
だ
俺はできるだけ苦しんで、叫んで、絶望して、激痛の中、一人で、誰にも助けてもらえず、できるかぎり惨たらしく殺されたい。
俺は今生きるこの世が地獄なのなら、もっと苦しい地獄を、できるだけ永く、永く、苦しまなきゃ。
それほどのことをしたのだから。
それが俺の義務。
そして俺は、このゴミのような命で、この鎮守府の娘達を護りたいのだ。
しかし、優しく、正義感も強く、艦娘思いの提督が所属すると、決まってその鎮守府の艦娘が死んでしまう。
理由は簡単だ。
一つはストレス
艦娘にされ、見ず知らずの艦娘たちと一緒に戦わされ、相手がどんな艦娘か、どう戦ったらいいか。
優しい提督はいつも『また次がある』『たまたまだ』『もっと頑張れば…………』かえってそれは、マイナスだ。
それはただの同情に過ぎない。結果を残せない艦娘は解体されるのだと勘違いし、先走って死んだ艦娘も居る。そしてその一人の【死】で艦隊が壊滅した例なんて、五十回めでもう数えるのをやめた。
二つ目、期待
艦娘は世間からしたら完全な【人ならざる化物】自分と同じ見た目なのに、何十倍も頑丈で強いやつらは人間の皮を被った化物にしか見えないらしく、あまりいい評判ではない。
提督はそんなことは気にせず、艦娘に優しくする。
だからこそ褒められたい。提督の為に戦いたい。提督の役に立ちたい。
例えこの命が尽きようとも、提督の為になるならと、そして艦娘が死んでいく様を見るのが苦しくなり自殺した提督も数知れず。
三つ目、別れ
もちろん艦娘には家族、友達、恋人が居る者も居る。
しかし、艦娘は消して年を取ることができない。
艦娘は中身こそは人間だが、そのほとんどは一度改造され、深海悽艦の攻撃を受けても多少は防げるように、その肉体、臓器は強化されている。
その為年を取ることがないのだ。
自分は年を取らずに家族、友達、愛した者が先に死んでいく。
また、強ければ仲間が死んでいく。
一人残された世界。
そんな一人の孤独の世界で生きていけるか?
ならば自殺しかない。
それしか逃げ道は無いのだから。
四つ目、仲間意識
もしも、いきなり知りもしない鎮守府で知らない提督『今日からよろしく、一緒に、仲間と共に海を取り戻すために戦ってくれ』
そんなこと言われても、知らない相手と一緒に戦え?相手がどんな攻撃をするか、どういったスタイルで戦うのか、どんな性格なのかすら分からない相手と仲良く一緒に戦え何て無理な話だ。
しかも一つ間違えれば死ぬような戦場。
一人が失敗すれば仲間も道連れとなる、だから嫌でも誰かが失敗すれば、心配よりも、愚痴を言ってしまう。
そうして戦いどころでは無くなり、最後には自滅だ。
終いには、指揮を執っている提督にとばっちりが来る。
『お前は戦ってもいないくせに』『ただ見てるだけだろ』『お前の指示や作戦が悪い』『お前のせいだ』
こうして、勝手に自滅していくのだ。
ならば俺は、逆になればどうなるか。
簡単だ、全てが逆になる。
つまり、艦娘達が協力し合い、共に戦い、共に助け合い、共に笑う。
幸せな鎮守府の出来上がり。
その代わり俺が【人間失格】と言う称号を手に入れる事になったが。
ネットでは、この鎮守府のことはよく書かれている。
『あの鎮守府の艦娘はしっかりしてる』『とても優しい』『カッコいい』『憧れる!』『素敵❤』『日本のために頑張ってくれ!』『さすが日本の英雄!!』『今日も加賀さんメチャクチャクール』『応援してる』
もちろん俺のこともたくさん書かれている。
『あそこの提督はマジでクズ』『頭がいかれてる』『絶対に頭の方がおかしい』『最低』『提督やめろ』『知ってるか?あそこの提督夜な夜な艦娘を連れ出して襲ってるんだって』『あ、私前提督が艦娘を無理矢理ホテルに連れ込んでるところ見た!』『うわぁ』『マジでドン引き』『提督としてどうなんだよ』『しかも提督になったのも上官のことでコネらしいぜ?』『心までクズ』『クズの極みですね』『顔も裂けてて怖い』『てか化物』『艦娘可哀想』『そう言えばあの提督金剛さんの妹の榛名さんを単独出撃させて深海悽艦の餌にしたんだって』『最低のクズ野郎』『そう言えば新しい艦娘が二人あの鎮守府に行くんだって』『可哀想過ぎる』『死刑とおんなじ』『誰か二人だけでも助けてあげて』『しかもその二人は優秀な木曾さんと大和さんなんだって』『おいおい海軍は何考えてんだよ』『マジのクズ』『ゴミ』『カス提督』『死ね』
『『『『【人間失格】!!!!』』』』
っとよく書かれている。
てか手紙も届く。人気者は辛いねぇ。
どれどれ
『クズ!』『ゴミが!』『死ね死ね死ね死ね死ね死ね』『艦娘に手を出すな!』『提督辞めろ!』『人殺し!』『お前の見方はいない』『苦しめ』『艦娘に謝れ』『提督辞めろ!提督辞めろ!』『ロリコン』
…………しまうか。
雷「司令官?」
提督「」ビクゥ
俺は、手紙をしまおうとすると、雷が提督室に入ってきた。
俺は驚いてすぐに手紙を閉まった。
提督「お前、ノックをしろと何度も言わせるな」
雷「ごめんなさい。それと司令官、その……?…………」
すると、雷が下を向いて黙り混んでしまった。
俺はゆっくりと、雷の目線の方向を見た。
『人殺し』
それは、俺宛の手紙だった。
どうやら急いでしまいすぎて、一枚落としてしまったのだろう。
雷は優しい子だから、こう言うのをあまり見せたくないんだ。
ほら、今にも泣きそうな顔してる。
雷「司令官、もっと私を頼ってよ!こんなの、こんなのあんまりよ!!司令官は私たちの為に…………!」
雷は両目から涙を少し流していた。
やめろ。
てめぇらの為じゃねぇ。
変な情がわいたわけでもねぇ。
てめぇらを助けてぇだとか護りてぇわけでもねぇ。
俺がやりたいからやってる。
そうだ、【自己満足】なんだよ。
だからとことん否定する。
それに、【人殺し】…………嘘なんて全く書かれてない。
本当のことなんだからよぉ。
提督「クックック。なんだ?同情のつもりか?」
雷「ッ!そんなつもりは…………」
雷は提督の目を見れず、目線をずらして床を見てしまう。
提督はわざと口の包帯を外して口の裂け、まだ縫いあとのある、異形の恐ろしい口を見せて、ニタァ、っと笑う。
提督「良いかチビ?てめぇは一生俺の出世の道具として働いてればいいんだよ。わかったか?」
雷「……………はい」
雷は、どこか悲しそうに小さく頷いた。
しかし、その代わり悲しそうな顔は、心の底から誰かを心配するような、とても寂しそうな顔だった、そしてそのまま雷は提督室を出ていった。
俺はそれを確認すると、下に落ちた『人殺し』と書かれた手紙を手に取り、ただ見つめた。
提督「…………ハハッ、人殺し……か、正に俺にピッタリの名前じゃねぇか」
なに言ってんだよ、『人殺し』?
そんな生易しい言葉で表せんのかよ!?!?
人間のクズが!いいや、それすら俺より価値が上だ、…………そもそも俺に価値があると思ってんのか!?
人間じゃねぇ。
正に人間失格。
正に化物。
正真正銘の【人間以下のクソ野郎】じゃねぇか!!!
…………苦しまなきゃ、苦しまなきゃ。
もっと苦しまなきゃ、もっとおかしくなって、心も体も壊れるまで苦しまなきゃ。
死にたいならもっと苦しまなきゃ。
だが、ダメだ。
心も体も壊れるのはもう少し後からだ。
まだ、…………まだ、あの娘達を、護らなきゃ。
おっと、安定剤飲まなきゃ。
俺は、引き出しから、医者に言われた相当強い安定剤を取り出して飲んだ。
提督(…………マズッ、てか苦い)
正直生の苦虫と塩を混ぜたような味だ。
あのやぶ医者。
………………
提督「………………」
俺は、何時になったら死ねるんだ?
雷を苦しめ、榛名を殺し、【あの子】までも殺した。
俺はもう、死にてぇ………………。
何で俺って生きてんだろ。
§
翌・日
木曾「ここが新しい鎮守府か…………」
時刻、6∶00丁度
鎮守府の前に、帽子をかぶり、大きなマントを羽織り、片方の眼には眼帯が付けられ、セーラ服着て、腰には軍刀が携わっていた。
見るからに男らしい雰囲気を出す彼女、それは球磨型 5番艦 軽巡洋艦 木曾改二。
彼女は丁度、自分の異動した鎮守府についたところだ。
元々彼女はその優秀さ故に、北海道の極寒の戦場で戦っていたのだが、司令官である提督が【自殺】。
その為、送られた鎮守府がここと言うわけで、元帥の命により、この鎮守府に異動。
艦娘によれば、ここには地上最低最悪、悪逆非道のクズ野郎の提督が居るそうで、姉達も、この鎮守府に行くのは猛反対。
しかし、それでも誰かが行かないと行けないため、率先して木曾がこの鎮守府を選んだのだ。
そもそも、司令官である提督が自殺、または事故や死んでしまった場合は、自動的にその鎮守府から異動になる。
しかし、艦娘には日本各地の鎮守府の異動先を決める権利が与えられる。
しかし、どこかの鎮守府に艦娘が最低でも一人異動しなければならない為、誰かがこの鎮守府を選ばなくてはならなかったのだ。
木曾(そう言えば異動は自腹と聞いたが………ホテル代や交通費はとっくに支払われていたが…………一体……?)
異動先は決められるが、交通費は自腹。
まぁ艦娘の給料は物凄く高い。
一年で結果を出せれば1億は稼げるだろう。
木曾は幾つもの結果を残したいわばエリート。
どんな戦場でも、どんな状況でも冷静沈着な判断力。
そしてその刀を使った剣術で数々の深海悽艦から海を取り戻した。
大和「あ、木曽さん。来てたんですね」
しかし、そのエリートの中でもずば抜けて凄いのが、大和型一番艦 戦艦大和。
世界最強の艦娘だ。
世界最強の戦艦と呼ばれた大和、それを主に改造された艦娘。
世界でも大和の適合者はこの娘一人だ。
いわば人間国宝。
何より、艦娘になる条件と大和を移植する条件が完璧に揃っている。
愛称も最高、何よりその性格。
日本の戦艦の象徴に申し分なしと言うほどの言葉遣い、態度、礼儀作法。
誰にでも優しく。
誰にも弱さを見せず。
絶対に仲間を見捨てず。
どんな敵も恐れず。
必ずや海を取り戻す。
世界の希望だ。
大和はキス島近くの鎮守府に居たのだが、偶然にもその提督は【自殺】。
そして木曾と同じく、この鎮守府に来たのだ。
もちろん武蔵に猛反対されました。
しかし、大和はこの鎮守府に異動させられたのだ。
それは、この鎮守府付近で、サーモン海域でよく確認されていた深海悽艦が目撃されている。
しかもその深海悽艦は恐ろしく強い。
元々深海悽艦は、沈んだ船の怨念の塊。
沈んだ艦娘の生まれ変わりとも言われているが、何にせよ、その怨念が強ければ強いほど強い深海悽艦が産まれると言われている。
それが本当ならば、今回の深海悽艦は正に【怨念そのもの】とも言えるだろう。
それほどに強い。
実際に、大和の姉妹艦である武蔵改二が、撃沈寸前まで追い詰められた。
その後武蔵は今も入院中。
しかもその鎮守府の全て艦娘を導入したにも関わらず武蔵以外の艦娘は全て全滅したのだ。
それ以来武蔵の傷は癒えたが、心は…………。
大和「こんにちは、今日から一緒に頑張りましょう」
木曾「こちらこそ」
木曾と大和はあいさつをすると、そのまま鎮守府に入っていった
~鎮守府の中~
大和「今日からここに異動になった大和型一番艦 戦艦大和と言います、以後よろしくお願いします」
木曾「俺は木曾だ、これからよろしく頼む」
木曾と大和は入ってまず宮間にあってから、食堂に案内されると、この鎮守府の艦娘が集まっていた。
そして大和は礼儀正しく、御淑やかに、その雰囲気は、一言で表すならば大和撫子。女性の憧れのような艦娘だった。
次に、女の子と言うより、どちらかと言うと男勝りな口調は、何処か天龍に似ていて、どこか頼りがいのある艦娘だった。
そして木曾と大和は本題に入る。
木曾「そう言えば提督の姿が無いが…………提督はどこだ?」
まず上官である提督に顔を見せてから挨拶する。
これはルールであり礼儀である。無論そんなことを知らない宮間たちではない。そして明るかった鎮守府の空気が一気に暗くなった。
それは、殺意、軽蔑、怒り、憎しみ、空気は艦娘たちの憎悪で塗りつぶされていた。
これまでいろんな鎮守府や艦娘を見てきた木曾と大和。
そのなかには提督を恨む艦娘も居たが、ここまで殺意を剥き出しにするほどの艦娘は見たことがなく、二人とも正直驚いている。
すると、前に加賀がゆっくりと二人の前に近づいた。
加賀「分かりました。確かに提督に顔を見せるのは礼儀ですからね。そして先に言っておきます、ここの提督はゴミの中のゴミ、顔は裂けててまるで化物のような人、そのくせして性根は腐っててクズを人間にしたようなクズ提督です」
木曾・大和「「そ、そうですか…………」」
木曾と大和は、加賀の噂はよく聞く。凛々しく、口数も少ない、そして美人で礼儀正しく、とても優しい艦娘だと。
しかし、その一言一言には殺意が込められ、その他ていたを語っているときの加賀のような顔は、深海悽艦に向けるそれとまるで同じなのだ。
これには驚き、木曾と大和はついつい引き気味の苦笑いを浮かべた敬語になってしまった。
すると無言で加賀は歩きだし、そのまま提督室に向かった。
一方その頃提督室では…………
暁「………………」
提督「おいガキ。俺はテメェみてぇなションベン臭いガキはNGだ。とっとと失せて部屋で牛乳飲んでろ」
暁「なっ!私は立派なレディよ!」
提督「そうですかそうですか」
珍しい。
非常に珍しい。
この提督室に来るのは報告の時か、もしくは好き好んでくる馬鹿(雷のこと)くらいだから、こう言う弱虫で、すぐに泣くような、臆病なガキが来るのは本当に珍しい。
と言うか朝起きたばかりなので、口に包帯を巻いていないから傷がさらけ出されていて、普通のガキ…………だけじゃなく老若男女問わず俺を怖れてチビるのに、泣くどころか、普通に座って俺の顔をガン見している。
だってあの暁だぜ?
かれこれ三十分、ようあ気もせずよぉ…………。
朝早く訪ねてきて無言で俺の前に椅子おいて座って俺の顔をガン見している何て…………頭が狂ったか?
いや、さっきの反応を見るなり正気なのは確かだ………………つかまだいるよこのガキ。
書類や請求書書きずっら。
そしてまた沈黙が流れるなか、今度は暁の方から話を振ってきた。
暁「"提督"にとって私たちはなに?」
提督「………………」
はっきり言うと俺はこのガキが苦手だ。
いつもはただの大人ぶってるガキのくせして、たまに"大人"らしくなりやがる。
クソッ、完全に不意を突かれた。
言葉が詰まる。
だが、俺は裂けた口でニヤリと笑い、こう淡々と答えた。
提督「お前らは所詮兵器であって道具でしかない、つまり俺の出世の為の道具なんだよ。まぁ、たまにたまった性欲をぶちまける道具としても使うが」
そして俺は暁に殺意を向けながら睨んだ。
この顔で、しかも殺意を込めているのだ、確実に泣いているだろう。
暁みたいなガキだ、ションベンでも漏らしたかな?
っと俺は思い、暁を睨んでいると…………
暁「ぷっ…………」
提督「は?」
俺は心の底から「は?」っと思った。
暁は怖がるわけでも、逃げるわけでもなく、笑った。
確かに笑った。今もニッコリと無邪気に笑っている。なんだ?何がそんなに可笑しい?分からん、全く分からん。
笑う要素あったか?
そう俺が困惑していると、暁は俺に話しかけてきた。
暁「へったくそ」
提督「あ?」
何が?何がへたくそなんだ?
暁「嘘はつくくせにへったくそな嘘」
提督「!?!?」
は?今こいつなんて…………
俺は心の底から驚いた。まさかこんなガキに遅れをとるなんて、あり得ねぇ、ハッタリに決まってる。そうだ、出任せだ。
いやそんなことはどうでもいい!
提督「なんで、なんで俺が嘘ついてると思った…………?」
暁「?だって提督が嘘ついてるんだもの」
提督「は?いやだから、なんで嘘と思ったかと…………」
暁「?だって提督の言ってたこと全部嘘だらけで分かりやすかったわよ?…………え?」
提督「え?」
首をかしげる暁。
無意識に俺が嘘を言ってると思ったか?それとも本当に俺はこいつに遅れをとったのか?
なんにせよ訳が分からん。これじゃぁいつもの"暁ちゃん"じゃねぇか。
え?なんで?ほんとなんで??
提督「え?ちょっと待て。どこをどう見て俺が嘘ついてると思った?」
暁「?」
暁は首をかしげ頭にはてなマークが浮かぶ。
またさっきのループだ。
俺は諦めてため息をはいて暁を部屋に戻すことに専念することにした。
そうして俺が口を開くより先に暁が口を開いた。
暁「…………どうして榛名さんを殺したの?」
………………このメスガキ。
いっちょまえに俺を睨んでやがる。
少し教育が必要だな。
この世には言って良いこと悪いことがあるってこともわかんねぇのかよ、このガキが。
提督「邪魔だからだよ、アイツが無駄死にしてくれたお陰で新しい艦娘がくるんだからよぉ。それに、テメェらが必死こいて戦っても、第四駆逐隊も、天龍型の奴らも他の艦娘も使えなきゃみーんな解体してやるさ」
暁「嘘」
提督「それに、解体されずとも、お前らは所詮兵器だ。この戦いで海を取り戻してもテメェは皆殺しだ。平和な世界に兵器は要らないからな。まぁ、精々足掻いてくれよ?死ぬなら俺が主席してからにしてもらわないと」
暁「嘘」
提督 ブチッ
俺もいい加減キレたわ。
さっきっから聞いてりゃうそうそうそうそと、こう言うガキには少し恐怖ってもんを教えてやんねぇとなぁ。
………………いや、こう言うガキだからこそおどしがきかねぇ…………。
クソッ、どうしたもんか。
提督「テメェは何か?俺が我欲や自分勝手な判断で榛名を殺してないと?」
暁「うん」
暁はコクリっと頷いた。
提督「何を根拠にそんなことが言える?」
暁「だって…………」
暁は座っていた椅子から立って提督の座っている椅子の横で立ち止まり、提督の顔を指差した。
すると、いつものドヤッた顔で笑いながら、当たり前のように答えた。
暁「だって酷い人は誰かのために泣いたりしないわ」
提督「…………あ"?」
つまりなにか?こいつは俺が酷い人じゃねぇと?
馬鹿にしてる通り越して喧嘩売ってんだろ
提督「このメスガキ…………!」
暁「とうっ!」
提督「なッ!?」
ドガッ!!
提督が心の底から込み上げてきた一瞬の怒り。その怒りを暁に向ける前に、暁が思いっきり提督に飛びかかってきた。いや、抱きついてきたと言う方が正しいだろう。
そのまま提督は頭から椅子から落ち、暁は提督がクッションになって無傷だった。
提督「てッッめ、何しやがる…………!」
提督は頭を押さえながら暁を睨むと、暁は提督の胸板に顔をうづくめて、さっきの笑顔とは裏腹に、今度は暁にしては珍しい悲しそうな顔をしていた。
提督は心底、本当になんなんだよこいつは、っと思った。
暁「私は絶対沈まないわ」
提督「………………それは無理だ。テメェは弱い」
暁「私は絶対この戦いに勝つわ」
提督「勝ッてもお前らは解体される」
暁「私は貴方の味方よ」
提督「ッ…………黙れ」
やめろ
暁「今まで辛かったよね」
提督「黙れ!」
やめろ、やめろやめろやめろ!!
暁「もう我慢しなくて良いのよ」
提督「黙れっていってんだよ!!!!」
それ以上言われたら、"後悔"しちまう。
今までの自分に………………。
俺は暁を無理矢理引き剥がした。
提督「テメェになにが分かる!?俺の苦しみが!俺の辛さが!!化物と言われ続けた俺の何が!?今さら後戻りなんてできねぇんだよ!!分かったように言いやがって!榛名?あぁそうだよ!!死んでほしくなかった!助けたかった!!あの時もっと俺がちゃんとしてればこんなことにはならなかった!!榛名は死んでいなかった!!だがよぉ、俺が悪いんだよ!俺が弱いから、俺がもっと強けりゃぁ榛名を護れた!榛名が死ぬこともなかった!!!!
金剛を悲しませることはなかった!!!!!!」
俺は初めて心の底から叫んだ。
榛名を護りたかった気持ち。
自分の無力さ。
金剛への罪悪感。
全部を心の底から叫んだ。部叫んだら今度は全部どうでも良くなって、俺は物凄く弱い人間になってた。
提督「俺は榛名を助けたかった、でも無理だった。俺が弱いから榛名は死んだ。金剛を泣かせちまった…………!、俺が弱かったから!なんで!なんで榛名が死なないといけないんだよ!?大して生きる価値もない俺が生きて、なんで!なんでなんだよ!?どうして!?どうしてなんだ!!こんな生きる価値もない俺が!!艦娘一人守れない俺が提督?ふざけんなよ!!俺は、俺なんて………………
『人間失格』だ」
俺は部屋の壁にもたれかかりにがら、はを食い縛った。
自分の無力が悔しくて悔しくて、本当に悔しかった。
パァン!!
すると、顔を平手うちした音が大きく部屋に響いた。
俺はの裂けてない方の頬がみるみる赤くなっていった。
そこには、今度は、怒った顔をした暁が仁王立ちしていた。
俺はあまりにも急だったので、一瞬思考が停止して、頭が真っ白になった。
暁「そんなこと知らないわよ!!」
そんな言葉が俺の頭のなかを駆け巡った。
暁「貴方がなんでそんなに苦しんでるのか何て知らない!貴方がどれだけ寂しいのか何て知らない!貴方がどれだけ悲しいのなんて知らない!」
なんだよ、知らねぇくせに口出ししてんじゃ…………。
暁「だけどそんなに自分を攻めないでよ!何時見たいなナルシストのクソ提督に戻ってよ!!そんなに泣かないでよ!!何時もみたいな悪のボス見たいな笑顔に戻ってよ!!嘘でもいいから笑ってよ!…………嘘でも、嘘でもいいから笑ってよ、私は、私は嘘でも
笑った提督が好きだから…………!!」
暁「ウグッ……エグッ、ウゥゥゥ……!」
なんなんだよマジで。
笑ったと思えば悲しそうにして、悲しそうにしたと思えば怒って、怒ったと思えば泣いて、本当になにがしてぇんだよ。
これじゃぁただのわがままなガキじゃねぇか。
泣くんじゃねぇよ。
泣きてぇのはこっちだって一緒だチキショー。
くそが
提督「…………悪かったよ。だから泣くな、暁」
こいつなら、こいつになら正直になっても………………。
そう思いながら、俺は両目から涙を流し、すすり泣く暁に手を伸ばした。
だがその手が届くことはなかった。
その暁に伸ばした腕には矢が貫通する。
その突然の痛みと激痛に俺はその腕を押さえながら声に出ない叫びを上げる。
提督「~~~~ッ!?」
暁「提督!?」
腕から血を流す提督を見て、さっきまで泣いていた暁は顔を真っ青にした。
そして矢が飛んで来た方を見ると、そこには弓をもった加賀と深海棲艦を斬るために造られた刀を鞘から引き抜いた天龍が立ち、それを確認した瞬間、俺に天龍が斬りかかってきた。
天龍「クソ野郎が!!」
俺は反応できず、そのまま肩にかけて袈裟斬りをくらい血が吹き出した。
提督「ガアァァァアアアア!?!?」
天龍「本性表しやがって。今日と言う今日はぶっ殺す!!」
加賀「暁、こっちに来なさい」
暁「ぇ、え?何で?何で提督が…………?」
大和「何事ですか!?」
木曾「……………これは………」
加賀「二人とも、一緒に来てください!」
暁は急なこと過ぎて混乱している。
そんな暁を加賀は無理矢理連れ出し、木曾と大和を連れてどこかに行ってしまった。
提督「…………テメェ………!」
天龍「無様だよな。…………やっと、やッとだ!!テメェを殺せる。覚悟しろ!!このクソ野郎!!」
そう言いて、天龍が俺に刀を降り下ろした瞬間だった。
金剛「待つデス」
天龍「金剛………どういうつもりだ?」
止めたのは金剛だった。
あと少しで提督を殺せると言うのに、金剛に邪魔された天龍は殺気をむき出しにして金剛を睨んだ。
天龍「まさかこいつを庇うのか?だったら…………」
金剛「勘違いするなデス。こいつは榛名を殺した、だからその無念を、仇を、私に取らせてくれないデスカ?天龍」
天龍「…………あぁ、それもそうだ。テメェは妹をこいつに奪われたんだもんな。いいぜお前の好きにしな」
金剛「ありがとうデース」
そう言って刀をしまってどこかにいってしまった。
金剛「さて、提督」
提督「…………あ"?」
金剛「お前は結局なんなんデスか?」
提督「…………なんのことだ」
金剛「とぼけるな、さっきの話、全部聞いていた。教えろ、何で榛名は死んだのか」
提督「教えない、っと言ったら?」
金剛「知るか、私は姉として知る義務がある」
提督「…………良いぜ、教えてやるよ」
金剛「………………」
提督「だがその前に」
金剛「…………?」
提督「俺の命が…………もた……ん、ゴボァ」
金剛「ッ!?」
提督は口から大量の血液を流す。
金剛は急だったので一瞬訳がわからなかったが、多分、いや絶対にさっきの腕に刺さった矢と、自分の上半身を袈裟斬りした天龍の攻撃だろう。
血は今も流れている。
金剛「起きろ!死んだら許さないデスヨ!まだ、まだ榛名のことを聞いてないデス!!」
提督(………………うるせぇんだよ、こっちとら意識がそろそろやべぇ…………榛名………それに□□□□□、お前との約束、俺守れるかなぁ………………)
そして提督の意識はそこでブツリとテレビが消えるように、そこで無くなった。
§
提督~数年前~
提督「どういうことだ!?あの海域には深海棲艦なんてほとんどいないはず、しかも空母の加賀や赤城や戦艦の金剛たちまで…………」
ん?これはあの時の俺か?
…………嫌なもの見せるな、夢や幻覚ってのは。
提督「どうする、長門を出撃させるか?しかし長門は連続での出撃で放ろうがまだ残っている。未知の深海棲艦と戦わせるのは無謀に等しい」
あぁ、そう言えばこの時期は異常に深海棲艦が出てきて仕方なく長門を連続で出撃させてしまい、最後の出撃では、大きな傷をおってしまって、今は休ませていたんだっけ?
提督「かといって駆逐艦を出撃させても足止めにもならない…………クソッ!!他に、他に何か手はないのか!?!?」
そうして俺は思いっきり拳をテーブルに叩きつけた。
すると、電話が鳴った、それは同じく連続での出撃できずや疲労が完全に治っていない榛名からだった。
榛名は俺の理解者の一人だった。
俺はこんなときに、っとイラつきながらも電話にでた。
すると、ケータイから聞こえてきたのは、榛名の声ではなく、波の音だった、そして波とともに、遠くから聞きなれない笑い声。
俺の顔から血が一気に引いて、顔が真っ青になった。
提督「お、おい、榛名…………今どこにいる?お前…………まさか………」
あぁ、あの時もっと早くに気づくべきだった。
榛名『…………提督、私に命令してください』
提督「な、なにいってんだ?」
愚かだった、現実逃避なんてするもんじゃねぇな。
とっくに気づいていただろう。
榛名が皆を逃がすための単独で出撃したなんて。
榛名『提督、貴方もわかっているんでしょう、お願いします。最後は艦娘として、提督の指示の元で戦わせてください』
提督「やめろ、やめてくれ!!提督命令だ!!今すぐ戻れ!逃げろ!!そいつはお前の勝てる相手じゃ『提督!!』ッ…………」
榛名『お願いします』
その時の榛名の声は、今にも泣きそうな、震えた声をしていた。
そして俺は判断を謝った。
提督「…………頼む、逃げてくれ…………!」
榛名『提督…………ぁ……』
ブツッ
提督「榛名?榛名、榛名!!返事をしろ榛名!!」
次の瞬間、榛名との電話が途絶え、その時、俺の走馬灯?も途切れた。
§
~暁~
天龍「暁!大丈夫だったか!?」
え…………
長月「話は聞いたぞ、提督に何をされたかは知らないが、もう大丈夫だ」
ちがう
加賀「もう大丈夫ですよ」
ちがう
「もう怖くない」「泣いて良いのよ」「もう大丈夫」「あなたは私たちが守わ」「あのクソ提督…………!」
この人たちは何を言ってるの?
私は
「あの提督は必ず私たちで殺しますから!」
な
ん
で
同
情
さ
れ
て
る
の
?
こんなはずじゃ…………私はただ、いつも嘘をついてる提督が苦しそうで、悲しそうで、辛そうで、そんな提督を見ているだけで私も胸が苦しくなって、だから少しでも笑ってほしくて、少しでも助けになると思って…………あれ?
これじゃぁ余計に提督を苦しめて、提督に迷惑をかけて、提督を傷つけて、提督を苦しめて………………私がお節介だったから?
全部私が悪いの?
私が余計なことしなければ提督を余計に苦しめなかった、全部全部
私のせえ?
響「暁!」
暁「ひ、びき?」
すると、響は暁をつれてどこかに行ってしまった。
§
暁「ひびき?」
響は暁の手を引っ張って無言で歩き進む。
暁がいくら響の名前を呼んでも響振り向くどころか返事もしない。
すると、響はある部屋の前で止まった。
そして響はそのまま少しだけドアを開けて、暁に部屋の様子を見せた。
すると、中では二人の女性と、ベットの上で体を起こして座っている人が何やら大声で叫んでいた。
提督「殺せよ!!憎いんだろ!?憎くて憎くて仕方ないんだろ!?今なら俺を殺してもお前にはなんのお咎めなしだぜ?おら、せっかくの大チャンスだぜ!テメェが恨んできた相手を、やっと殺せるビックチャンスをみすみす逃すのかよ!それともなにか?俺に同情のつもか?ええ!?」
金剛「………違います、私が本当に憎かったのわ………」
それは始めてみる提督の荒々しく取り乱している姿だった。
その顔は怒りと悲しみが混じりあった、なんとも幼い者の顔だ。
それを目の前で見ている金剛、金剛もそれは怒りと悲しみと、もう一つ、憐れむような顔だった。
その横では、電が、悲しそうな顔で提督を見守っていた。
提督「ふざけんな!!テメェら化け物なんかの同情なんていらねぇんだよ!それともなにか?榛名への恨みなんてそんなもんなのかよ!?ふざけやがって!それとも俺が本当はいい人だとか勘違いしてんじゃねぇのか!?俺はなぁ、榛名だけじゃねぇ、他にもガングートだって、いろんなやつを殺してきた!そしてガングートの死を利用して響を騙して金をたかってるクソ野郎だよ!」
金剛「…………」
提督の言葉に金剛はなにも言えなくなり、ついには黙り混んでしまった。
すると
バン!
金剛・提督・雷「「「!?」」」
部屋にはドアが勢いよく開かれる大きな音が響いた。
そしてそこには響が拳を震わせながら立っていて、その横には暁が立っていた。
提督達はいきなりのことで頭が整理できておらず、ポカンとしている。
しかし、響はそんなのお構いなしに、ツカツカと提督の元へ早歩きで近づいて行く。
そして提督の前でピタリと止まり、提督に
パァン!!!
渾身の一撃とも言えるほどのビンタが、これでもかと言うほど強く、痛々しい音をたてて、部屋に響いた。
下をうつ向いている響、それは誰がどう見ても怒っている。
その後ろで暁は目を反らすことなくこちらを見つめている。
響「……ざ……るな」
響は体を震わせていた。
響「ふざけるな!!!!!!!!!!!!!」
いつもは無口でおとなしい響だが、今の響はそんな無口でおとなしい響ではない。
すぐさま提督の首根っこを掴みあげて提督を睨んだ。
提督は、そんな響を見て、露になっている避けた口と、失われた左目が露になった状態でニタァっと笑う。
不気味だ。
不気味でしかない。
否
化け物だ。
提督「そうだ、それでいい、それでいい!!!憎いか?憎いだろ!?自分の姉とも言える存在を俺の命令の元で殺したんだからよぉ!!それだけじゃねぇ、てめぇが必死こいて夜も眠らずに書いた手紙は今もガングートに届いてねぇ、死んだんだからなぁ!!テメェの同士はいねぇ!」
響「………………」
響は黙ったまま提督を見る。
また、近くにいた他の電たちも、黙って、ただただ黙って。
提督「テメェに言ったあの言葉、『お前の同士は生きてる』『今もある病院で治療を受けている』『俺が手紙を送ってやるよ、有料だがな』『ガングートから手紙が来たぞ』、あの言葉はぜぇーーーーーーーーんぶ嘘なんだからなぁ!!!」
響「………………」
響はなにも言わない。
金剛たちも、黙って、提督を見続ける。
提督「殺せ、殺せ!俺が生きていることが一分一秒だって許せねぇはずだぜ!?なぁ!!次は同士だけじゃねぇ、お前の姉である暁が「うるさい」あ?」
そこで響が口を開いた。
響「知ってるよ」
提督「…………ぇ」
響の言葉に提督は、口をへの字にする。
響「君が渡してくれたガングートからの手紙…………気づかないと思ったかい?」
提督「…………ぇ?え?じゃぁなんで?何でわざわざ偽の手紙なんぞ…………」
完全に混乱している。
提督は混乱した頭を整理する前に、今ある疑問を優先して響に聞いた。
響「ガングートは沈んだ、事実だ。あの手紙も偽の手紙だ、私の書いたガングート宛の手紙何て絶対に届くことのない、それでも、それでも、それでも、私は
嬉かった」
響は提督の首根っこを強く掴みながらも、響は泣いていた。
しかし、それでも響は話すことをやめなかった。
響「聞いたよ、元帥に」
提督「…………何をだ」
提督は、目を反らすことはなかった。
まだある右目で。
響「暁と雷と私で、聞いた。君は、『誰かに愛されることを知らず、誰かを愛すことも知らない』まま育った、可哀想で誰よりも弱虫な、優しい『化け物』だってね」
そこで雷が口を開いた。
雷「もうしってるのよ?提督、あなたが子供の頃から誰からも愛されず、愛を知らずに育って、それでも誰かに愛されたくて、愛したくて」
そして今度は暁が口を開いた。
暁「本当はみんなと仲良くしたいって、一人が怖くて、自分の顔が怖いからいつも鏡を見る勇気もなくて、顔や口に包帯巻くのが大変で、いつも部屋で一人すすり泣いて、苦しくて、それでも死ねなくて、それでも「うるせぇ!!!」…………」
提督「うぜぇんだよテメェら全員!テメェらになにが「愛されたかったんだよね」…………ッ」
それは金剛の言葉だった。
数時間前まで提督を心のそこから恨んでいたとは信じがたい程に、優しい声だった。
金剛「私は、本当は分かってたんデス、提督は榛名が死んで、心の底から悲しくて、苦しくて、『私と一緒』で、『自分が許せなかった』」
提督はうつむいたまま拳を震わせていた。
金剛「同じだったんです、私も、提督も、本当は自分が許せなかった。そして私はそれを認めることができなかった、本当は自分が弱いから、榛名は私たちを助けるために戦って、私を守るために死んだ」
金剛は一歩ずつ、ゆっくりと提督に近づいた。
金剛「私が本当に憎かったのは、恨んでいたのは、自分自身なんです」
そして、提督の目の前まで来ると、そこで立ち止まり、膝をついて提督に抱きついた。
金剛「だからわかるんです、どれだけ苦しいか、どれだけ悲しいか、どれだけ悔しいか、痛いほど、わかるんです
だから、少しでいいから、私たちに愛されてみてください」
その手を、その差し伸べられた手を提督は。
提督「やめろ」
振り払った。
提督「テメェら化け物の分際でうざったらしいんだよ!!!」
そうして提督は金剛を振り払った。
提督「同情かよ、馬鹿馬鹿しい、実に馬鹿馬鹿しい!!それどころか屈辱だ、屈辱の極みだ!!!」
提督は大声で叫ぶ。
提督「本当は家族が殺されて憎いんだろ?金剛!響!本当はいつも罵倒されて影では俺のことを恨んでんじゃねぇのか?雷!極めつけは、暁!!テメェのお節介のせぇで俺はこんな大ケガだ!!本当は俺がこんなふうになることを狙ってたんじゃねぇのか!?」
提督はただ大声で叫ぶ。
しかし、ここにいる全員が、暁さえも気づいている。
『本当はこんなことを言いたいわけではないと』
提督「あーーー!!!クソクソクソクソッ!クソガァ!!!」
提督は頭をかきむしる。
その片目には、ビー玉サイズの、大きな大きな涙が溢れて、そして暁たちを見て
提督「屈辱だ、屈辱だよ!!!これまでにない程になぁ!!!テメェらみてぇなやつらに、今までずっと罵倒してたやつらによぉ!本ッッとぉに屈辱だ!!テメェらにテメェらごときに!『理解されるなんて』!!!」
金剛たち『………………』
本当に俺は弱虫で弱いままだ。
提督「クソガ、クソガクソガクソガ、もうみんなクソだ、俺を蔑むやつらも、俺をバカにするやつらも、俺を迫害するやつらも、俺を化け物だって恐れる家族も!!!俺を見捨てるやつも、バカにするやつらも、全員全員全員クソだ!!!世の中クソだらけだチキショウ!!!そんなかでも俺は一番の『やめて』…………ッ」
そこで、金剛たちが提督に抱きついて、『やめて』と耳元で呟いた。
もう提督の顔は涙で一杯になっていた、自分を追い詰めている提督を見るのが辛かった
提督「クソ、クソガクソガクソガ、クソガァ…………!何で、何でだよ!寂しくなんかねぇ、怖くなんかねぇ、何で、何で、何で涙がとまんねぇんだよ!止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ!!!」
金剛たち「…………」
提督は次々にボロボロと大粒の涙を素手で拭う。
しかし、いくら拭っても拭っても、涙が止まることはなく、ただただ泣き続けた。
提督「情けねぇ‼いい笑いの種だぜ。自分より年下の女に、化け物とか言われてる大の男が泣くなんて、…………クソガ…………!何で、何でこんなに涙がとまんねぇんだよ、チキショウ、チキショウ…………!」
金剛たちは、泣いている提督を静かに抱き締め続けた。
§
~翌日~
提督(やべぇ、めっちゃ恥ずかしい)
大人が、大の大人が、しかも全員自分より年下の相手に泣きじゃくりながら慰められるって、旗から見たら憲兵もんだぞ。
いや、そもそも何で今の今まで『艦娘を夜な夜な襲ってる』『艦娘に虐待してる』などなどとヤバイ噂ばっか流れてんのに何で憲兵が来ねぇんだろ。
提督「なぁぼのたん」
曙「…………」無視
提督は近くにいた曙に聞くが、無視された。
まぁ当たり前だ。
昨日も、いろいろ理由をつけて俺は殺されない言い訳を言ったが、全員隙あらば俺をナイフかなんかで刺そうとするし、まぁいっか。
提督「曙、聞こえてますかぁー?」
曙「…………チッ」
そして俺は曙が無視できないような条件を出した。
提督「…………俺の質問に答えたら俺の顔面一発殴っていいよ?」
曙「…………!?…………嘘じゃないわよね?クソ提督」
提督「なんなら先に殴るって『バキッ』ごべぶっ!?」
そのまま俺のほほを曙は蹴り飛ばした。
提督「いっつっぅ~~」
…………この頃俺の顔何回もビンタされたことはあるが、蹴られるのは初めてだなぁ。
てか容赦ねぇな。
提督「さぁて、答えてもらうぜ」
曙「…………早くしてくれる?」
提督「俺ってキモいか?」
曙「キモい。答えたは、じゃあねクソ野郎」
そのあと、バン!!っと思いっきりドアが閉められた。
すると、提督はグルリと椅子を180度動かして窓の外を見た。
提督「で、覗き見か?木曾」
木曾「バレていたか」
そう言うと、窓の外から木曾の姿が現れる。
丁度俺の真後ろだった。
提督「俺を殺しに来たかぁー?それとも雷を心配してきたのか?それとも俺への愛の告白か?」
木曾「いいや違う」
キッパリと否定されました、はい。
木曾「提督のことに関して一つだけ調べたいことがあってな」
提督「なんだ?俺のエクスカリバーのでかさか?縦がたしか「言うな」…………ヒェ」
俺がエクスカリバーの大きさを教えようとしたら、木曾が窓を開けて、窓の外からその軍刀を、俺の首筋に当てる。
俺は恐怖で冷や汗を流す。
提督「わかったわかった、言わないから殺さないで」
木曾「全く、品性がお前にはないのか」
そう言いながら木曾は軍刀を鞘に戻す。
提督「ベットの上の品性は保証しするぜ?」
木曾「俺を抱きたいと?」
提督「yesyes、なんだ、回りくどく紳士的に言った俺がばっかみてぇ」
提督は顔面や体がミイラのように包帯でグルグル巻きにされた上から提督服を着ていて、素顔はあまり見せず、しかし、裂けた口はよく見せてくる、よくわからない野郎だ。
しかも、そこが知れない。
何を間が笑めてるか、どこまでが本気か。
わざと隙を見せて俺たちを解体する理由を探っているのか?
提督(カレー食いてぇ…………)⬅こいつの脳にそう言う小難しいことは搭載されてない。
木曾「何でこの鎮守府には憲兵が来ないんだ?」
提督「知るか」
木曾「…………貴様が買収してるのでは?」
提督「そんな金うちの鎮守府にあると?」
木曾「…………ないな、資料を見る限り鎮守府の金が必要な時以外に使われたことはまずないな」
提督「だろ?つか寒くねぇの?さすが化け物。人間を捨てた娘だ」
木曾「…………俺は少しお前の過去を調べてみたんだ」
提督「…………で?」
木曾「お前はここの鎮守府に異動する前は空軍に居たみたいだな。しかも、この鎮守府に異動する前と空軍をやめた頃、一年近く空いている。いくら調べてもお前のその一年間何をしていたのか、全く情報がない、そこで俺はお前にかんする面白い噂を耳にした」
提督「…………噂ぁ?」
木曾「あぁ、どうやら噂では艦の適合者を『艦娘にならざる終えない』状態にする、それがお前の仕事…………悪く言えば殺し屋、ってところか?」
提督「面白い噂を知ってるな」
木曾「俺は少しこの噂を信じているんだ」
提督と木曾は顔こそは笑っているが、提督の笑みこそは目が笑っていないが、木曾は本当に笑っているように見えた。
提督「おいおい、冗談よせよ、俺が何でそんな血生臭い仕事するんだよ」
木曾「ならその一年、何をやっていたんだ?教えてくれよ」
提督「人のプライベートを探るなんて悪趣味だな」
木曾「どうしても気になることがあると好奇心を刺激してしまうんだ」
提督「なら俺から忠告、好奇心は猫を殺すぜ」
木曾「食えない男だ」
提督「食えねぇ女」
そう言って二人は笑顔のままお互いを睨み、数秒、木曾はなにかを思い出したのか、走り去ってしまった。
提督は、深く溜め息を吐き、まだ飲みかけのコーヒーが入ったコップを持ち、コーヒーを飲もうとした時、ピタリと、コーヒーを飲むのをやめた。
提督「…………龍田か」
龍田「あら?バレてた?」
提督「バレバレだ、ついでにこの毒入りコーヒーもな」
龍田「まぁこっちも提督命令だから、恨まないでね」
提督「なんだ?そんなに殺したければ殺せばいいだろ?わざわざこんな回りくどいやり方なんてしなくても」
龍田はこの鎮守府の艦娘ではなく、他の鎮守府の艦娘だ。
しかし、この提督は他の鎮守府の艦娘だけでなく提督にまで嫌われているため、その中の一人が、龍田に提督を殺すよう命じたのだ。
しかし、提督は疑問に思っていた。
龍田がその気になれば自分を殺すなど造作もない。
なのに、いつも回りくどく殺そうとする。
龍田「んー、天龍ちゃんとお話できなくなるのは寂しいのよねぇ」
その上なに考えてんのか全くわからない。
提督「それこそ俺を殺して天龍をお前の居た鎮守府に異動させれば良いだろ?」
龍田「んーでもこの鎮守府気に入っちゃって」
提督「まぁいい、テメェら鉄屑ごときが一人や二人「提督ーーー!!!」ごるぱぁ!?!?」
話している途中で扉を物凄い勢いで開けて入ってきたのは暁だった。
暁はその勢いで提督に抱きついた。暁も艦娘、提督より力は強い。そんなのが思いっきり腹に抱きついてくれば(抱きつくというなの突撃)それは痛い。
暁「司令官!MVPとったわよ!暁だってやればできるのよ!褒めて!褒めて!」
提督「が、ぼばべ…………」
龍田「その前に生きてるかしら?」
暁「え?」
提督は白目を向いて泡を吹いている。
§
長門「暁を知らないか?」
明石「?こちらには来てませんが……」
長門は、今暁を探していた。
なぜかと言うと、出撃して、暁が珍しくMVPをとり、すぐに鎮守府に帰ってしまったのだ。
普通なら、その場メンバーに『ふふん、私だってやればできるんだから!』とか言うはずなのに、何も言わず、すぐに鎮守府に帰ったのだ。
長門「ここに居ないとすると、後は提督室か」
明石「…………あ、そう言えば……」
長門「…………?どうした?」
明石「実はですね、───────」
すると、明石は、長門の耳元で誰にも聞かれぬように、小さな声で長門に話すと、長門はニヤリと笑った。
長門「それは面白そうだな、是非見せてくれ」
明石「どうぞどうぞ」
すると、二人は近くにあった、小さなテレビの前に座り、テレビをつけた。
§
提督「………………知らない天井だ」
龍田「おかしいわねぇ、ここは提督室のはずだから知ってる天井のはずですよ?」
提督が目を覚ますと、隣には龍田が座っていた。そして、提督の懐には、暁が抱きついて寝ていた。
龍田「化け物、人殺し、殺人鬼、人間失格と言われ続けた提督が、まさか第六駆逐隊の暁ちゃんに好かれてる何てねぇ」カシャッカシャッ
提督「オイゴラ、今すぐ写メすんのやめろ」
龍田がさっきッからスマートフォンで俺に暁が抱きついて居る所を撮りまくってる。
龍田「…………やっぱり根は優しいのね」
提督「…………あ?今なんつった」
龍田の一言に、提督は眉をピクッと動かして、龍田に殺気をとばす。
龍田「天龍ちゃんの解体処分を聞いたときは殺してやろうと思ったけど、よくよく考えれば、近々改二になることが決まったんでしょ?」
提督「…………なんの事だ」
提督は顔を下に向け、暁を見ながら、暁の頭を撫でた。すると、暁は嬉しそうに提督の腹に顔をうずくめた。
龍田「改二になる条件は簡単であって少し難しい。
一つ目、その艦娘が改二になるに値するか、つまり強くなければいけない。
二つ目、それは改二になる当日に、『傷一つない状態でいなければならない』つまりいつも出撃させれば無茶して怪我をして帰ってくる天龍ちゃんを出撃させれば改二になる前に大怪我をおい、改二になる当日に、万全な状態でこれない可能性がある。しかも遠征中に深海棲艦にちょっかいかける天龍ちゃん、そんな娘を遠征に出すわけにもいかず、そのまま鎮守府でおとなしくさせておくのが一番。そう考えるのが普通じゃない?」
提督「…………チゲぇよ。いちいち大破されてもこっちが「ならなんでそのまま放置しないの?」…………」
龍田「私が言うのもなんだけど、そんなに大破されて困るならほっとけば良いじゃない。そうすれば何も困ることなんてないわよ?もしくは今すぐ解体処分しちゃえば?」
提督「………………」
提督は反論するわけでも、認めるわけでもなく、ただ黙って龍田を見た。
龍田「それができなあのが貴方。いつも天龍ちゃんが朝から夜までずっと剣術を学んだり、少しでも皆の足を引っ張らないように勉強したり、兎も角出撃や遠征が行けなくなってからずっと努力してる。知ってるんでしょ?それに、天龍ちゃんの改二の話が来てから提督は天龍ちゃんを出撃や遠征に出さなくなったじゃない?」
提督「…………わりぃが、俺は腹が減ったから飯を食べてくる」
龍田「あら、逃げるの?」
提督「…………言ってろ」
龍田「ふふ」
そう言って提督は暁をかついでそのまま提督室を後にした。
§
暁「…………ん、ん~~!…………しれいかん?…………お墓?」
暁が起きると、そこは墓地で、あるお墓の前で、提督が花を持って立っていた。
しかし、この墓地は普通の墓地とは何かが違うような…………?
提督「起きたか…………まだ寝てても良いぜ?飯はあとで買ってやるから」
暁「…………墓参り?」
提督「そうだ」
暁「司令官が良いなら私もお墓参り付き合っていいかしら?」
提督「…………こっちだ」
提督は車から出て、花を持って歩き出す。暁はその後ろをトテトテと追いかける。
提督「面白いことなんて一つもねぇぞ?」
暁「なに言ってるの?お墓参りなんだから当たり前じゃない」
提督「…………そうだな」
提督の当たり前の質問に、暁は首をかしげた。
しかし、さっきッから提督は一切こっちを見ない。話すときも、いつもは目を見て話す提督は前以外どこも見ない。暁が話しかけてもこっちを見ないで前ばかり見ている。
その時の暁に向けられた背中は、どこか提督は機嫌が良さそうだった。
暁「…………機嫌、良いのね」
提督「…………まぁな、と言ってもここにはあいつは埋まってねぇが………」
暁「…………」
提督「暁も知っての通り、ここは艦娘の墓だ」
暁はここに来て一番疑問に思ったのが、青葉、天津風、金剛、どれも同じ名前がいくつも並んでいた。しかし、その下には名前らしきものがあった。
他にも、一個のお墓に幾つもの名前がかかれていたりと。
その時すぐに気づいたが、ここが艦娘の墓だと。とすると、提督は艦娘のお墓…………とは言いっても、提督の家族だろう。
暁(…………そう言えば司令官の家族って…………)
提督「俺の親は俺が物心つく前から殴る蹴るっつう虐待して、そのあと六歳の時に俺は捨てられた」
暁は心を読まれたのか、ドキリとした。
提督「頬の裂けた傷、これは生まれつきでよぉ、親は俺を忌みの子だーって言って怖れてたんだよ。それで、二年間自力で生きて、その後元帥に拾われた。その後は、元帥が俺の親代わりに俺を育ててくれた。っと、ついたぞ」
そうして提督はそこで止まる。そのお墓には大きく『雷』と書かれていた。名前は何もかかれておらず、ただ横にはガングートと、英語?の横にひらがなで書かれていた。
暁「…………雷?」
提督「俺の…………娘?」
提督は、自分の出した答えに腕を組んで首をかしげた。
すると、胸ポケットから、写真をだして、暁に見せた。
それは、雷そっくりな少女であった。
提督「…………親に捨てられたらしい、名前もなかった、だから勝手に俺が雷って名前をつけた。一応お前の妹の方ではないかんな」
暁「………………」
提督「まぁ、俺とおんなじで虐待されてたらしい。最初は俺もあいつも何で拾ったのか、わからなかった、そん時の俺は提督になる前で、空軍に入ってた」
§
雷「…………同情のつもり?」
提督「知るかんなもん」
少女「…………同情するなら「金をよこせ、寝床をよこせ、食い物んよこせ」…………」
少女が言う前に、提督が心を読み取ったかのように言った。
少女は図星だったのか、なにも言わずに、そこで黙った。
提督「俺も同じさ。ガキの頃、自分に同情する奴らを見るとヘドが出そうで腸が煮えくり返りかえりそうだった」
少女「………だからなに?」
さっきッから少女は無愛想に答える。
それどころか、殺気すら飛ばしている。
提督「縁だよ縁」
少女「は?」
提督「俺は、あそこで元帥に拾われた、そして俺は生きることができた。どうだよ、親に捨てられたもの同士、仲良くするってのは」
少女「…………馴れ合う気なんてないから、働けるようになればこんなところ出ていってやる」
提督「好きにしろ、んじゃ風呂だ風呂、そんな汚い体でうろちょろされても困るからな、…………雷」
雷「………………いか、づち?」
雷は、物凄い片言で答えた。
提督「名前がねぇならそれで我慢しろ。後俺の名前は名無(ななし)だ」
雷「…………ふん」
§
提督「それから俺と雷は最初こそは仲が悪かったが……それなりに家族としても仲が良かった…………いや、お互い心を許せる大事な『家族』だったよ」
暁「………………」
提督はそんな事を話ながら墓の花を、持ってきた花と取りえる。そして、タバコケースをポケットから取り出して、その中の一つに火をつけたて墓の前におく。
そして、自分もタバコをくわえて火をつける。
提督「あいつとはよく港でタバコを吸ったっけ…………暁、お前も吸うか?」
暁「…………一本もらうわ」
そう言うと、提督は、タバコを一本出して暁に渡して、暁が加えると、提督がタバコに火をつけた。
提督、暁「「ふーー…………」」
二人は人差し指と薬指でタバコを挟み、一度口からはなして、肺に入ったタバコの煙を出す。
提督「お前、その見た目な上に『暁』だからタバコ買うの難しいんじゃねぇか?」
暁「ほとんど売ってくれないわよ。実年齢なんてとっくに二十歳越えてるのに…………」
提督「最近はご無沙汰か…………響たちは?」
暁「吸ってないわよ。前に響がタバコ吸ったけど蒸せてたわ。電は今他の鎮守府だけど論外よ。タバコの煙だけでもダウンしちゃうわ」
提督「まだあのガキどもにはタバコは早いか」
暁「響に前タバコ吸ってて怒られたわ。タバコは控えるようにって」
提督「普通逆な気もするがな」
そうしてタバコを吸いながら、二人はそんなくだらない話を五分から六分続け、お互いタバコを二本ずつ吸い終わった所でタバコを近くにあったごみ箱に捨てて、ガングートの墓をもう一度見ると車に戻った。
暁「このあとは?」
提督「今日は資料とかは終わらせてある。だから、今日は夜までなら鎮守府を出てても大丈夫だ、それとも飯食ったら帰るか?」
暁「…………ううん」
暁は頭を左右にふった。
提督「んじゃ行くか」
暁「でもいいの?」
提督「あん?」
提督が車のエンジンをかけようとすると、暁が提督の服の裾を掴んで聞いてきた。
提督「あー…………MVPとったご褒美だと思っとけ」
提督は腕を組んで、首をかしげながら、少しの間考えてから答えた。
暁「そう…………ありがとう」
暁は少し間を開けてから礼を言った。
提督はそれを聞くと、少し解れたのか、口元の包帯を直す。
しかし、耳が少し赤いことに、暁は気がつく。
そして、提督はすぐに車にエンジンかけて、墓地を後にした。
提督「飯はお子さまランチにするか?」
提督は、面白半分冗談半分で質問する。
暁「ん~、お子さまランチは瑞鳳さんや間宮さんのところでよく食べてるから大丈夫よ」
提督「…………食ってんのかよ」
暁「私がお子さまランチ以外を食べると変でしょ?」
提督「…………まぁ……」
そんな話をして居ると、ついたのか、提督は車を止めた。
そこは、どうやら寿司屋のようだ。
提督「皆には内緒にしろよ」
暁「分かってるわよ」
§
一方鎮守府では
天龍「暁ーーーー!!」
龍驤「暁やーーー!!」
摩耶「うるせぇよ!!何事だよ!?」
天龍「暁がいねぇ!」
龍田以外に出かけることは言っておらず、暁が鎮守府に居なくて今鎮守府では大パニックになっていて。
§
提督「回転寿司もたまには良いな」
暁「そうね、あ、サーモン取って」
提督「はいはい」
プルルルルル
提督「ん?わりぃが席外すぜ」
暁「ん、分かったわ」
そう言うと、提督はケータイを持って外に出た。
???「…………」
§
提督「はいもしもし」
???『許さない』
提督「人違いでーす」
ピッ
俺はすぐに電話を切った。
提督「さーめしめし」
プルルル
提督「はいもしもし」
???『あ、あの、元空軍で今は提督をやっている名無さんでしょうか?』
めっちゃヒビってんな。
提督「人違いでーす」
再び切る
プルルル
???『あの「るっせぇ!!取り込み中だ!!」ひっ、す、すみません…………』
今度はあっちから切った。
§
提督「ただいま~」
???「うぐっ、えっぐ………ひっく」
暁「大丈夫よ、お姉ちゃんが居るからね」
そこには茶色い髪を後ろで束ね、暁と同じセーラー服を身に纏い、目から溢れる涙を裾で拭う。
暁はそんな少女を頭を撫でながら慰めている。
俺はこの娘に見覚えがある。たしか、電とか言ったなぁ?
なんかすごい続きが気になる作品だな
更新楽しみにしてます
冒頭部分の会話どこかで見たことあるな
すっごく続きが気になるんだが...。
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期待して検索から来たけど、これ書いてる人は別人だよね?
作りが荒いし、ひねりも無いし、ファンが真似して書いた感が凄い。
正直、期待してた分、落差が凄い。