2019-04-21 19:05:41 更新

概要

はじめまして。拙作を読んで下さってありがとうございます。

この作品の概要はと言うと、大分キャラ改変した艦娘たちが一人の人間に辛くあたります。
つまりキャラ崩壊、設定ぶっ壊れ多目です。

胸糞悪い場面が多いでしょうが、大好きな艦娘が悪態をついたり、悪口を言うのが見たくない人は多分ブラウザバックした方がいいです。

最初だけ地の文になってますが、この作品は台本形式(ss)で進めていきます。

暖かい目でお願いします。


何の前触れもなく、奴等は海から現れた。

そして人類は、持てる最高戦力で奴等に戦争を挑んだが、戦っても戦っても数の減らない奴等に物資は次第に乏しくなり、劣勢に立たされていった。


人類は絶望した。


そしていよいよ奴等が戦線を越え、自分達の生活圏にまで侵攻を開始した時。全ての人は世界の終焉を悟った。


だが事態は思わぬ展開を見せた。


人類の生活圏を脅かすほど侵攻してきていたはずの奴等が突然その姿を消したのだ。人々は奇跡が起きたと歓喜に湧いたが、一体なにが起きたのか?


その答えはすぐに判明した。


「可愛らしい女の子が奴等と戦っている」


そんな情報に誰もが耳を疑った。

だがあらゆるメディアを通してどんどん明るみに出てくる謎の女の子の存在。その目撃情報は留まることを知らなかった。


それだけではない。

その女の子に限らず、奴等と互角以上に渡り合う少女または女性の姿が世界各国で確認されたのだ。


そしてある時、彼女たちは人類に対話を求めてきたのだ。人類は快くその救世主たちとの会談に臨んだ。もうその頃になると、奴等の姿はほとんど見られなくなり、全滅したのではないかという噂も流れ始めていた。海はかつての平穏を取り戻し始めていた。


そしてその歴史的な会談後すぐに彼女たちは、たくさんのフラッシュに囲まれながら声明を発表した。


「我々は人類と共にある」


人間と固い握手を交わしながら、彼女たちは語った。人類とは異なる存在…「艦娘」ではあるが、その垣根を越え、共に奴等…「深海棲艦」の殲滅を行う…と。


人類は大いに湧いた。


そしてこの日を境に、人類は艦娘との共存の道を歩み出すことになった。


―――


あれから一体どれほどの月日が経ったのだろうか。今や深海棲艦の姿はほとんど見られなくなった。海を漁船や貿易船が自由に行き来するという光景を誰が想像出来ただろう。


そう、奴等が居なくなったということは間違いなく海に平穏が戻った証だった。


だが人類には喜ぶに喜べない事情があった。


海を眺める親子連れ。

海鳥に餌をやり、嬉しそうな表情を浮かべていた子どもが、ふとした瞬間――あるところを指をさし、隣にいる両親に話し掛けた。


「…あれはなーに?」


海水浴客で賑わう海辺の砂浜。

漁船の往来が激しい漁港。

そんな人の多い場所からそこまで遠くない距離に、ポツンと巨大な建造物。それはただ静かに海上に存在していた。


いや、建造物と言うのは些か表現が不適切か。

巨大な白い壁に囲われ、外からはその内部を伺い知ることは出来ない。そして何よりその大きさ、面積は広大で、都市と言っても遜色ないほどだ。


だがここは都市ではない。

謂わば一つの「国」だ。その海を領有している国とはまた別の「国」。


人類不可侵の「国」が何故だが、人類の生活圏の目と鼻の先に樹立していた。

そして人々はその存在に畏怖の眼差しを向け、口を揃えて言った。


――あれは海上の帝国だと。


――


上司「…本当に大丈夫かね?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


上司「…うーむ、君のような人格者を…いや、君のような人にしか頼めないのだな…」


上司「…一応、言っておく。あの帝国に入った者のほとんどがすぐにその任務を放棄し、体調を崩したのだ。そんな任務を君は引き受けてくれるのだな?」


「はい」


上司「…分かった。ではすぐにでも君をあの国に送りとどけよう」


「感謝します」


上司「…すまないな、本当に。そして覚悟してほしい。あの国には君以外の人間はいない。白い壁に隔てられているだけだが、あそこでは君は孤立無援だ」


「はい」


上司「そして任期は約一年を要求されている。あちらも不甲斐ない者ばかりを送ってくるなと怒りを露にしていてな…それならば、あちらも誠意をもって迎え入れてもらいたいものなのだがな…本当にすまない」


「いえ。ですが…そこまで私たち人間を嫌っているのに、何故提督を彼女たちは欲しているのでしょう?」


上司「…それについては海軍もよく分かっていないのだ。だが彼女たちにとっては提督という存在がどうも必要らしい…。実際は形だけの、飾り提督なのだがな」


「……」


上司「…すまないな。着任前から不穏なことばかり伝えてしまって…。だがこれだけは言っておこう。もし君がどうしても任務を放棄したくなったら、無理せず放棄するんだ。…事実、多くの者がこの任務を挫折しているし、それだけ過酷な場所なのだ。君も無理をすることはない、限界を迎えそうだったら迷わず私に連絡を寄越すように!」


「はい」


上司「…では、君を海上帝国――FLEETへと移送しよう。準備をしてくれたまへ」


「はい」


――


帝国FLEETの母港にて。


上司「…ではここまでだ。とにかく体調には気を付けるんだぞ?」


「はい。ありがとうございました」


?「おい、話はそこまでにしろ!荷物をおろしたらすぐにここから立ち去れ!」


上司「…チッ!別れの時だというのに…!心のない奴等だ」


?「あぁッ!?てめぇ喧嘩売ってるのか!?」


「…私のことはいいですから。どうかお気をつけて」


上司「…すまないな。では何かあれば連絡をくれ、すぐに対応する」


?「だから無駄口を叩くなと言っただろ!さっさとこの国から出ていけ!」


上司「…では、また」


「はい」


そのまま彼の上司は数名の艦娘に囲まれながら、帝国が用意した船に乗船すると行ってしまった。


?「…ッたく、手間をかけさせやがって!オラ、お前もそんなところで突っ立ってないでとっととこっちに来い!」コイコイ


「…すまないね。これからよろしく頼む」スッ


?「…あぁッ!?なんだこの手は!?」


「何って握手だよ。これからしばらくお世話になるからね。お近づきの印に…」


?「気色わりーな!握手なんかするわけねぇだろ!?ただでさえ俺は人間のお守りは嫌だってのに!」


「…すまないね」


?「オラ、分かったらとっとと行くぞ!…ちゃっちゃか歩けよ?俺は早く帰りてぇんだから」


「…名前」ボソッ


?「あぁん?」


「君の名前はなんて言うんだい?」


?「ハァー!?なんで俺がおめぇに名前なんか!?」


「私は○○というんだ。これからよろしく頼むよ」スッ


?「…いや、お前話聞いてた?俺は握手しねぇつってんだろ!?」ツカツカ


そう彼女は怒鳴ると私の側まで歩み寄ってきた。


?「これだけは言っておく!俺はお前らが嫌いなんだよ!!だから馴れ合いもしない!…なんで皇帝は人間なんかいちいち呼び出すんだろうなぁ!?俺にはいまいちわかんねぇ!!」


「…そうか。それは悪いことをした」


?「ッたぁーく!俺の手を煩わせるんじゃねぇ!お前は黙って俺に付いてくりゃいいんだよ!」


彼女はそう言うと、私の差し出したままだった手を叩いた。そして背を向けると足早に行ってしまう。


(…ふむ、機嫌が悪いようだね)


私はその後を追うことにした。


――


?「…とりあえず皇帝への謁見には許可が下りるまで時間を要する。だからお前はこの宿屋でしばらく待機してろ!許可が下りたら俺が伝えにいくから!いいな!?」


「…了解した」


?「…じゃあ俺は行くから」クルッ


「…待ってくれ」ガシッ


?「うおぉい!?急に肩掴むんじゃねーよ!?びっくりするだろうが!?」


「…す、すまないね」ヒョイ


?「…あー人間に触れられるとは一生の不覚だな。…後で球磨姉になんて言われるか」ボソッ


「人間に触れられるのはそんなに不味いことなのかい?」


?「お前には関係ないね」


「……」


?「…とりあえず俺は行くからな!」


「…名前は?」ボソッ


?「…お前、馬鹿だろ?…ハァ、呆れたわ。もう無視すっから、お前のこと」


「…すまない」


?「すまないすまないうるせぇんだよ!お前はとりあえず話を聞けよな!?」


「あぁ、そうしよう。それで名前は?」


?「バーカ!あーあッ!お前ほんと話聞かねぇのな!…仕方ねえ、とりあえず宿屋の中までは一緒に行ってやるから感謝しろ!」


そのまま彼女は私の顔を睨み付けると宿屋の中へ入って行ってしまった。

私はその後を追う。


?「…あら?木曾ちゃん、おはよう。今日はどうしたの?」


?「…だあああぁぁぁぁッッ!!鳳翔さん、シッーーーー!」


「木曾というのか…以後よろしく頼むよ」ペコッ


木曾「…ああああッ!?俺の名前を呼ぶな、馬鹿ぁ!」


「可愛らしい名前だね、木曾って」


木曾「…っざっけんなあああぁぁぁッ!」


そのまま踞ってしまった木曾を尻目に、私は目の前で顔をしかめている女性に声を掛けた。


「はじめまして。この度この国へお招きに預かった…」


鳳翔「…結構です。人間と会話をする筋合いはありません」


「…厳しいね、鳳翔さん」


鳳翔「…ッ!なぜ名前を!?」


「さっき木曾が言ってたじゃないの」


鳳翔「……」


「…ふう、どちらにせよ。しばらくは厄介になるんだ。よろしく頼むよ」


鳳翔「……」


私が黙って手を差し出すと、彼女は私の顔を睨み付けながらそっと鍵を手渡す。


鳳翔「…ルームキーです。部屋は二階を上がったところにありますから、どうぞご勝手に」


彼女はそう私に言い放つと、背を向け行ってしまった。


「…ふぅ。ではお邪魔させてもらおうか」


「…っとその前に」


「大丈夫かい、木曾?」


木曾「気安く話しかけんな、名前を呼ぶな!」


私の差し出した手を乱暴に払うと、木曾は立ち上がりなからそう叫んだ。


木曾「お前は本当に無神経というかなんと言うか…呆れを通り越して尊敬するぜ。その顔の厚さにな!」


「ふふっ、よく言われるよ」


木曾「…笑うな」


「…ん?」


木曾「俺を…俺を笑うなッ!」グッ


彼女はそう言うと、私の胸ぐらを掴む。


木曾「俺はな、お前みたいにヘラヘラした奴を見ると無性に苛つくんだ!何もしねぇ癖に、ヘラヘラヘラヘラ!男の癖になよなよしてんじゃねえよ!」


「…すまない。何か気に触ってしまったようだね」


木曾「…チッ」パッ


「…ただ」


「笑うってことは…大事なことだと私は思うよ」


木曾「…あぁッ!?」


木曾「お前ッ!なに勝手に喋ってんだ!?俺はお前の言葉なんか…」


「笑顔でいれば…!」


木曾「…!?」


「笑顔でさえいれば、どんな辛いことも乗り越えられる…それが私の信条だったりする」


「…まぁ、受け売りだけどね」


木曾「…ハァ。わけの分からないことばっかり言いやがって…俺はもう疲れた。帰る」


「…送ろうか?」


木曾「…黙れ」


「…ふふっ、冗談だよ」


木曾「…おい」


彼女の声のトーンが一段と小さくなったと私が思った時、彼女は腰に差していた刀を素早く抜くと、その切っ先を私の首元に突きつけた。


木曾「…俺の前では二度と笑うな。俺は笑顔なんて大嫌いだ」


「…笑うよ。なんと言われようとも」


木曾「……」


「……」


木曾「……」


「……」


木曾「…チッ。興醒めだ。斬る価値もない」


彼女はそっと刀を鞘におさめる。


木曾「…とりあえず一つだけ教えといてやる。お前の言った信条?だっけか、あれはこの国では最もつまらない考えだ。そして…」


木曾「その甘さは自分に不幸を及ぼす」


「…ご忠告、感謝する」


彼女はそのまま宿屋を出ていった。


(…優しい娘じゃないか。口ではあんなことを言いながら、私を気遣って忠告までしてくれるとは…)


木曾(…嫌な奴だ。俺の最も苦手とするタイプだな)


―――


照り付ける太陽が、きらびやかな満月に変わった頃――


?「お、珍しいのがいる」


木曾「…ん?なんだ川内か」


川内「なんだとは失礼な!」


木曾「…悪いな」


川内「…というか珍しいね。木曾が酒場に来るなんて」


木曾「…あぁ、そうかもな。…なんか今日は少しだけ飲みたくて」


川内「へぇ~~~!!」


木曾「…なんだよ?」


川内「いーや、なんでもないよ」グビグビ


木曾「…嘘をつくな、なんで笑ってる」


川内「いやー私たちってさ、同じ帝国の遊撃部隊に所属してるでしょ?ほとんど毎日顔を合わせるんだから、ちょっとした顔色の変化にも気付くわけよ!?」


木曾「…何が言いたい?」


川内「なーんかあったでしょ?」


木曾「ないよ、別に」


川内「ふーーん?」グビグビ


木曾「…なんもねぇよ」グビグビ


川内「…ま、いいや。あ、お勘定よろしくね」ドロン


木曾「」


木曾「…あいつ、許さねぇ」


―――


木曾「ふぅ…さすがに飲み過ぎたかもな」


木曾「……ッ!気持ちが悪い」


木曾「…うぅ、目が回るッ。ちょっと休むか」


木曾「…うぅぅ」チョコン


(笑顔でさえいれば、どんな辛いことも乗り越えられる…それが私の信条だったりする)


(笑うよ。なんと言われようとも)


木曾「―――ッ!」ブンブン


木曾「なんであんな奴の言葉なんか…」


木曾「…ッうぅ!」


木曾「…気持ち悪い」


木曾「クソッ!帝国の誉れ高き遊撃部隊に所属するこの俺が地べたに寝転がる日が来ようとは――ッ」ゴロン


木曾「……」


木曾「……」


木曾「……」


木曾「…う、なんか腹も冷えてきたせいか一層具合悪くなってきた」


木曾「ど、どうする?ここから兵舎まで距離があるぞ…」


木曾「…吐き気が、波のように…」


木曾「…辛い」


木曾「…もう、もう酒は飲まねぇからな」


「…おや?」


「…!」


「大丈夫か!?」


木曾「…んあっ」


「大丈夫かい、木曾?」


木曾「…な、なんでお前が!?」


「…いや、ちょっと買い物に。というか、顔色が悪いぞ!本当に大丈夫か?」


木曾「…いい!俺に触れるな!!!」バシッ


「…し、しかし真っ青だぞ」


木曾「…う、うるさい。俺は人間に介抱されるほど柔じゃねぇんだよ!」


木曾「…うぅぅ」ピクピク


「…無理に立ち上がらない方がいい。少しお酒臭いみたいだが…大分飲んだんだな?」


木曾「――ッ!」


「ならこんなところで腹を出して寝ているのは体に悪い。部屋で暖かくして安静に…」


木曾「…う、うるせぇんだよ!俺に構うな!お前に優しくされる筋合いはないッ!とっとと失せろ!!!」


木曾「…う」クラッ


「あ、危ない!」ギュッ


木曾「…んッ!…お、お前。は、離せ!」ジタバタ


木曾「…!」ピタッ


木曾「…ウグッ」


「…大丈夫か!?」


木曾「ウウウゥッ」


「…そうだ。そのまま出してしまった方が少し楽になるはずだ」サスサス


木曾「…や、やめろ。背中をさするな」


「…無理をするな」サスサス


木曾「……ウグッ」


木曾「く…クソォッ!この俺が…人間に…」


木曾「…う」


「…よしよし」サスサス


木曾「…お前、服に……」


木曾「……」


木曾「…悪い」ボソッ


「…気にするな。辛い時はお互い様だ。それに酒の失敗でよかったよ、何か大きな病気とかじゃなくて」


木曾「…」


「落ち着いたかい?」


木曾「…あぁ」ボソッ


「それならとりあえず木曾の家まで送ろう」


木曾「…ッ!だ、ダメだ!!!」


「…なぜ?」


木曾「…ひ、一人で大丈夫。大丈夫だからぁ」


「…この状態の君を一人には出来ないよ」


木曾「…で、でも。兵舎には…兵舎には行けない」


「…どうして?」


木曾「…」


「…言いたくないかい?」


木曾「…ね」


「…?」


木曾「…ね、姉ちゃんたちにバレるとヤバイんだよぉ。こんな醜態を、しかも人間に晒したと知られたら…俺は…!」


「…そうか」


木曾「…だから兵舎には帰れねぇ」


「…なら」


木曾「…?」


「私の部屋へ来るといい」


木曾「…な、何を…言って…!」


「このまま吐物にまみれた木曾を放ってはおけないからね。…とは言え、お家に帰れないならもう私の部屋しかないだろ?」


木曾「」


木曾「…そ、それはダメだ」


木曾「…に、人間の部屋に行くなんて、そ、そんな…」


木曾「ダメだ…絶対」マッカカ


「さ、行こうか」


木曾「…は、話を聞けってぇ!」


「歩けるかい?」


木曾「い、行かねえぞ…俺は」


「……」


木曾「…俺に…俺に構うなぁ…」クラクラ


「…ならば」


「…ほら」セナカサシダシ


木曾「…な、何の真似だ?」


「歩けないんだろ?なら私が背負うから早く乗りなさい。…それとも抱っこの方が」


木曾「…だ、だからぁ!俺はお前の家に行くつもりも、背負われるつもりもないんだよぉ!俺は一人で…」


木曾「…ウゲェ」クラクラ


木曾「俺はなぁ、俺は人間の手は絶対借りないッ!」


「…分かった」


木曾「…や、やっと分かったか。ならさっさとぉ…」


「じゃあ肩を貸すから頑張って歩くんだ」


木曾「」


―――


結局、彼の熱意に押され、木曾は背負われることになった。そして彼らは今、宿屋へと向かっていた。


木曾「…ち、畜生ぉ。なんで俺がこんな目にぃ…」


「まぁたまには酒に呑まれるのも悪くはないんじゃないか?」


木曾「俺は遊撃部隊…誉れ高き遊撃部隊なんだ…これが、こんなことがあっていいはずがない…」ブツブツ


木曾「…う」


木曾「…ッぐあぁっ」


「…!」ビチァ


「…おっと」セナカビショビショ


木曾「――あぁっ…」


木曾「わ、悪い…戻しちまった」


「…気にするな。帰ってシャワーでも浴びよう」


木曾「…」


木曾「な、なんで…」


「…?」


木曾「…」


木曾「いいや、何でもない」


「…そうか」


―――


ガチャ


「…さ、着いたよ」


木曾「…あ、ああ」


「先にシャワーを浴びといで?私は汚れたものを洗っておくから」


木曾「…わ、わかった」


…木曾シャワー中。


木曾(…はあ)


木曾(なんでこんなことになっちまったんだろう?)


木曾(…シャワー浴びたら大分酔いが覚めたな)


木曾(…暖かい)


木曾(俺…)


木曾(…どうしちまったんだろう?)


木曾「…もう出よう」


木曾「…あ」


木曾(着替え…)


木曾「…と思ったら真新しい服がご丁寧に畳まれて置かれてるじゃねぇか」


木曾「…」


木曾「こ、これを着るのか…?」


木曾「…」


木曾「このまま裸でいるよりはましか」


木曾「…結構サイズでかいな」


木曾「というか…」


木曾「…いいにおい」


…木曾シャワー終了。


木曾「お、おい」


「…ん、浴びてきたのかい?」


木曾「あ、ああ!」


「…大丈夫か?今度は顔が赤いぞ?」


木曾「…そ、そうか?」


「…どれ?」キソノオデコニテヲペター


木曾「」


木曾「―う、うわぁぁぁぁぁッ!?」


「…うわっ!?」


木曾「きゅ、急に何しやがる!?」


「…いや、熱があるのかと」


木曾「や、やめろ!熱なんかない!」


木曾「俺に触るな!」


「…それだけ元気があれば大丈夫だな」


「…さ、もう夜も遅い。私もシャワーを浴びてくるから、木曾は少し休んでいなさい。もし帰るなら、私が送るからね」


木曾「…なっ!?勝手に決めるな!俺一人で帰れ…」


「酔っぱらいをそのまま帰すわけにはいかないよ。シャワーを浴びていくらか酔いが覚めたようにも見えるけど…まだ心配だからね」


「…あ、それとも早く帰りたいのかい?それならこのまま…」


木曾「…うえっ!?い、いいッ!シャ、シャワー浴びてこい!」


「…しかし」


木曾「い、いいって…。あの…その、ま、待ってるから…お前のこと。…だ、だから浴びてこいよ!」


「…ふふ」


木曾「な、なんだよ…」


「そんなにシャワーを浴びてこいと言われるとね…。ふふ…これだとどちらが男性か女性か分からなくなるな、と思ってね」


木曾「」


木曾「な、なに想像してんだッ!?バカ!!」ブンブン


「…おっと」ヒョイ


木曾「この変態野郎!俺を馬鹿にするのもいい加減にしろぉッ!」ブンブン


「…ふふ、意外と木曾はおませさんなんだな」


木曾「ンなぁッ!?」


木曾「って、てめぇ!ふざけ…」


木曾「う、うわぁッ!?」ヨロッ


「…あ、あぶない!」


木曾「…ッ!!」


木曾は勢い余って躓いてしまったのだが、不思議と痛みはない。そして彼女はすぐに気がついた。なんと提督の手が彼女を体を抱き締めているではないか。木曾は驚きの余り目を丸くした。


「大丈夫かい、木曾!?」


木曾「」


木曾「な…」


「どこか痛むのかい?」


木曾「…な!?」


「…木曾?」


木曾「うわああああああぁぁぁぁ!」バチーン


「…ッ!」


「き、木曾…」


木曾「…ハァ、ハァ」


木曾「…お、俺に!」


木曾「俺に触れんなあッ!!!」


木曾「…ハァ、ハァ、ハァ!」


「…」


「…すまない。女性に対して軽率だった」


「許して欲しい…」アタマサゲー


木曾「…う」


木曾「お、俺は…」


木曾「別に…頭下げて欲しくなんか…」


「本当にすまなかった」


木曾「も、もういい!頭上げろ、バカ」グイッ


木曾「…あ」


木曾の目には頬を赤くした提督の姿が映る。


「…すまない」


木曾「…」


木曾「その頬…」


木曾「…ッ!」


「…木曾?」


木曾「…あああッ!もうッ!!」


木曾「…っててやる」


「…?」


木曾「待っててやるってんだ!早くシャワー浴びてこいッ!!」グイグイ


「…おっとと」


「分かった。早めに浴びてくるからくつろいで待っててくれ」


提督が風呂場へ。


木曾「…」


木曾「…クソッ!」


木曾「…なんで」


木曾「なんでこんなに焦ってんだ、俺?」


(大丈夫かい、木曾!?)


木曾「」


木曾「~~ッ!!!」


木曾「なんであんな野郎の顔が…」


木曾「…」


木曾「……」


木曾「殴っちまった…」


木曾「…」


木曾「…謝らねえと」


木曾「…」


木曾「…いや」


木曾「…な、なんで俺が謝んないといけないんだ」


木曾「お、俺は…別に悪く…」


木曾「…」


木曾「悪くねぇ…」


木曾「…そ、そうだ…俺は悪くねぇ…悪くねぇ!」


頬を赤く腫らした提督の顔が木曾の頭に思い浮かぶ。


木曾「……」


木曾「…クソッ」


木曾「クソッ!クソッ!クソォッ!!!」


木曾「くそぉ…」


…提督シャワー終了。


「ふぅ…おまたせ。さ、木曾の家まで送ろう」


木曾「…あ」


「…?」


木曾「あ、あのさ…」


木曾「さ、さっきは…その、何て言うか…そ、その…」


木曾「殴っちまって悪かった…」キエイルヨウナコエ


木曾「…謝る」


「……」


「何を言うかと思ったらそんなことか…」


「気にするな。私が女性に対して軽率だっただけだ」


「木曾は悪くないよ」


木曾「う、うぅ…」


「律儀な娘なんだな、木曾は。端正な顔立ちも相俟って…本当に素敵な女性だよ」


木曾「」


木曾「な、な、なッ…!!!」プルプル


「おっと…また失言してしまったかな…。いやはや、私もついつい思ったことを口走ってしまって…面目ない」


「…とは言え、あまりに木曾の顔が綺麗でね。それも踏まえて、失言も少しは勘弁してくれないか?」ハッハッハ


木曾「お、お前は、すぐそうやって…」プルプル


木曾「~~~~ッ!!!」プルプル


「…ふふ」


「…さて、そろそろ行こうか?」


木曾「…あ、あぁ」


木曾「言われなくても…!」グゥーー


木曾「」


「……」


木曾「」


「お腹が減ってるのかい?」


木曾「そ、そんなわけないだろッ!?」グゥーー


木曾「」


「…ちょっと待ってなさい」


木曾「な、なにを…」


「まだ少し時間があるだろう?何か食べていくといい」


木曾「な!?」


木曾「勝手に話を進めんな!俺は…別に腹なんか…」グゥーー


木曾「…うぐッ!!」グゥーーグゥーーグゥーー


「食欲があることはいいことだ。さっき戻して腹も減ったのだろう…。ふむ、お粥なんかがいいかな」


木曾「や、やめ…」


「木曾はそこのソファーでくつろいでいなさい」




























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