陽炎「なんの変哲もない思い出よ」 前編
『青葉「ずばり!司令官の好みとは!?」』シリーズのサイドストーリーです。
…相も変わらず、方言の誤用があると思います。不自然なところがあったらご指摘願います。
チュン…
チュンチュン…
??「くぁ~」ノビー
ポリポリポリ…
陽炎「ぅぅ、もう朝ぁ…?」
ガチャ
陽炎「うーん…最近日が昇るのが早くなってないかしら…春ねぇ~」ウーン
??「…おはようございます」
陽炎「あらおはよう。今日は晴れよ~」
不知火「…そうですか。テレビつけますね」ポチッ
ケサノニュースデス…
陽炎「あんたまだ眠いんでしょ~?」
不知火「…いいえ。そんなことはありません」
陽炎「そんな寝ぼけ眼で言われても」ケラケラ
不知火「…あさは、あたまがまわりません」
陽炎「顔でも洗ってくれば~?」
不知火「…はい、そうします」
陽炎「~~♪ 今日の運勢は~♪」
バシャバシャ…
黒潮「んん~おはようさん」ネムー
陽炎「おっはー」
黒潮「相変わらず早起きやねぇ」ゴシゴシ
陽炎「なんか目が覚めちゃうのよねぇ。年寄りだからかしら」
黒潮「肉体年齢10代のくせになに言っとんねん」
陽炎「10代にしては老けてないかなぁ。精神的に」
不知火「肉体と精神と、記憶の年齢がバラバラな私たちには、無意味な話題でしょう」
陽炎「お。起きたか」
不知火「起きてはいましたよ。頭は回っていませんでしたが」
陽炎「それは寝てるっていうんじゃ…。じゃ、寝坊助さんたちを起こしますか」
不知火「そうですね。しかし陽炎…」
陽炎「うん?」
不知火「いい加減、下着だけなのはいかがなものかと」ビシッ
………
……
…
陽炎「はい点呼~。おっはー」パンパン
不知火「番号順にどうぞ。おはようございます」
黒潮「おはようさーん」
親潮「お、おはようございます!」
初風「おはざいまーす」
雪風「んにゃぁ…ざぃます…」ネムネム
天津風「おはようございます」
時津風「ざまーす」
浦風「おはようさん」
磯風「おはよう」
浜風「おはようございます」
谷風「おっはようさん」
野分「おはようございます」
嵐「はざーす」
萩風「おはようございます」
舞風「おはざっます!」
秋雲「……zzZZZ」カクンカクン
陽炎「そこの末妹おこして」
磯風「うむ。おい、起きろ」ベシッ
秋雲「あでっ。あ、どーも」
不知火「どーもじゃありません。また夜更かしですか」
秋雲「湧き出るインスピレーションを抑えられなくて…」
不知火「ほとほと理解が出来ません…」
秋雲「いつの世も芸術家は理解されないものだよ…」
不知火「あなたは軍属でしょうに」
秋雲「本性と職業は別です~」
不知火「屁理屈を…」
黒潮「はーい!朝から喧嘩すな。で、長女はん。今日の予定は?」
陽炎「特になし!各々事前に通達された配置で行動してね。オフの人はテキトーにやって。でもくれぐれも鎮守府と司令に迷惑かけないように!以上!」
不知火「では点呼は以上です。皆さん、今日も一日、武運と勝利と、息災を」
黒潮「敬礼ッ!」
ザッ…!
陽炎「じゃーそういうわけで私はご飯行ってくるから~。んじゃね♪」ノシ
不知火「あ、陽炎!またそんな勝手に…!」タッ
タッタッタッ…
嵐「自由だなぁ」
黒潮「じゃ、こっからはいつも通り自由行動や。今日も一日、頑張ろうね」ノシ
………
……
…
陽炎「ん~やっぱ朝は牛乳ね~」
不知火「だからといっていちいちそんなポージングする必要はないのでは…?」
陽炎「腰に手ぇ当てて、飲む!これが粋ってもんでしょ!」
不知火「それは湯上り後のコーヒー牛乳では…?」
陽炎「細かいことはいーの!こういうのは気分の問題なんだから。あ、電ちゃんおっはー!」ノシ
電「おはようございますなのです」
陽炎「牛乳、まだ残ってたよ~」
電「ありがとなのです!」タッ
陽炎「今日はなにしよっかなー。どーせ不知火はまた神通さんとこでしょ?」
不知火「どうせと言わないでください。鍛錬です」
陽炎「じゃあ久しぶりに相手してもらおっかなー。たまにはボコボコにされないと、体なまっちゃうし」
不知火「やられる前提ですか」
陽炎「そりゃね。でも一泡吹かせてやる。……あ、チクらないでよ?」
不知火「はぁ…好きにしてください」
陽炎「ちょっとー!チクらないでよー!?」
不知火「分かりましたから早く食事をしますよ恥ずかしい」
………
……
…
秋雲「幸せは~歩いてこない。だーかーら進んでいくんだねー」
巻雲「…なんです朝っぱらから」
秋雲「いっちにち一歩、みぃっかで三歩」ルンルン
巻雲「あの。なんで裾もつんですか。なんで結び始めるんですか!」
秋雲「さーんぽ進んでワープする♪」
巻雲「歩く意味ない!?」
秋雲「さらばぁ~友よぉ~!!」ガシッ
巻雲「曲変わった!?あと何で掴むんです!?」
秋雲「宇宙~戦艦~まーきーぐー…」ピタッ
巻雲「ちょっと!?なんで止めるんです!?なんで巻雲をカーテンに吊るすんです!?」
秋雲「語呂悪いわ。ごめん巻雲、練り直してくるよ。じゃあね」
巻雲「降ろして!?練り直すのはいいから降ろしてくださいよ!!ねぇ、ちょっと!?あ、待って行かないで!!待って!!秋雲おおおおおおおおおお!!!!」ジタバタ
………
……
…
那珂「那ッ珂ちゃんだよー!!」
嵐「…ウワ」
舞風「おはざまっす!」
萩風「おはようございます!」
野分「おはようございます」
那珂「…今誰かウワって言わなかった?」
嵐「き、気のせいっすよ~」
那珂「なんか声質的に赤い髪してそうなんだけど~?」グリグリ
嵐「声で髪を特定しないでくださいって。……また随分と派手っすね」
那珂「でしょ~?今度のライブで着るんだ~」
嵐「へ、へぇ…」
那珂「イケてるでしょ!?」ズイッ
嵐「は、はいっ!イケてるんじゃないっすか!?知らないけど!」
那珂「ンもう、アラジンもいい加減にファッションセンス磨こうよ~」
嵐「アラジン…」
那珂「ね、のわっちはいいと思うでしょ?」
野分「はぁ…いいんじゃないでしょうか」
那珂「反応がイマイチ…じゃあじゃあ、舞風ちんは!?」
舞風「いいと思いますよっ!」b
那珂「いえーい☆」
川内「え?そう?ダサくない?」ヒョコッ
那珂「あ゛?」
嵐「ン…♡」
萩風(嵐はやっぱりこっちの那珂さんのほうがいいんだ…)
那珂「ファッション知らない人が口出さないでくださーい゛」ニゴニゴ
川内「だってダサいし」
那珂「私服がジャージの人に言われたくない」
川内「過ごしやすいのに」
江風「どっちもどっちだと…」ヒョコッ
那珂「うん゛?」
江風「いえ何でもないですハイ」
那珂「で?なぁんで夜更かし組がここにいるの。那珂ちゃんたち今から遠征なんだけど」
川内「その服で?」
那珂「この服で」
川内「馬鹿じゃない?」
那珂「うっさい!次は野外ライブなの!」
川内「はぁ…ま、地方巡業がんばってね。嵐もらってくよー」
嵐「あ、はーい」テクテク
那珂「待てい」
川内「え?」
那珂「アラジンは那珂ちゃんの願い事叶えるの。那珂ちゃんが擦ったの」
嵐「オレぁランプの精ですかい」
那珂「だから今日一日は那珂ちゃんの照明係なの!横取りしないで!」
嵐「この上なく無駄な使い方してませんかねランプの精」
川内「こっちは昨日から唾つけてんの!べっちょべちょにぬっちょぬちょなの!」
嵐「きったな!そのランプきったな!」
那珂「唾だらけだから擦って綺麗にしたの!だから那珂ちゃんの!」
川内「残念でしたー!中にもぎっしり詰まってますー!」
嵐「じゃあ中から出てきたのランプの精じゃなくてただの唾じゃないっすか汚い」
舞風「やーい唾」
嵐「どっちでもいいから早くしてくれませんかね」
那珂「アラジンもどうなの!?川内ちゃんに流されちゃって!この浮気者!!」
川内「共に夜の海を死ぬまで駆けるとランプに誓ったじゃん!この不忠者!!」
嵐「なぜにここまで言われにゃあかんのか」
野分「あと今更ですけどアラジンはランプの魔神じゃありませんよ」
嵐「え?そうなの?」
野分「アラジンは逆玉男です」
那珂「ねぇ!!どっちなの!?」
川内「ね!!どっちにする!?」
嵐「えええ…」
………
……
…
ガララッ
不知火「おはようございます」
白雪「あ、おはようございます!」
綾波「おはようございます」
不知火「今日の旗艦は…阿武隈さんですよね」
綾波「はい。神通さんは訓練段階の方々の焼入れに行くそうです」
不知火「でしょうね…」
綾波「え?」
不知火「いえ。なんでもありません」
ガララッ
阿武隈「おはよーございまーす!」
不知火「おはようございます」
白雪「おはようございます」
綾波「おはようございます」
阿武隈「さーって!今日も一日、鍛えましょー!」
………
……
…
陽炎「どーもー!」バーンッ
提督「どーもー」
妙高「ノックをしてください」
陽炎「今日も朝からお疲れ様!司令!」
提督「司令の朝は早いのです。まったく、やることが多くて嫌になっちゃうよね」
陽炎「なんかお仕事できたの?」
提督「戦線維持、兵站管理、物資輸送、グラビア鑑賞、セクハラ研究、下着ソムリエ。仕事は山ほどあるぞ」
陽炎「半分いらなくない?」
提督「あと、可愛い娘とのお喋りもね」バチコーン
陽炎「ンもう!すぐそう言う」
妙高「そろそろ本題に入ってください。提督はこう仰っていますが、今日は本当に忙しいんです」
陽炎「あーっとね、そのさ…」モジモジ
提督「うん?愛の告白?お友達から始めましょ?」
陽炎「ちゃうわい!今日さ、神通さん演習に出るでしょ?」
提督「あー、そう言えばそうね。またやるのか」ニヤ
陽炎「そ!今日こそ一泡吹かせてやるんだから!」
提督「あいつ毎回驚いてるけどな」
陽炎「でも!まともにダメージ与えたいの!」
提督「分かってる分かってる。その意気や良し。それで?いかような要求を?」
陽炎「あれ頂戴!この前使ってた煙玉!」
提督「煙玉?ああ、あれね。いいよぉ」ガサゴソ…
妙高「そういえば提督。その煙玉はいったいどこで…」
提督「ちょっと端材で作ってみたんです。ほれ、これじゃろ?」
コロン
陽炎「そうそう、それそれ」
提督「使い方はいたって簡単。強い衝撃を与えると割れて、中から煙がボン。見ての通り、防犯用のカラーボールをいじった代物じゃが、こっちは逃走用。煙は無味無臭。粗い粉瘤と小さく薄いアルミニウムの切れ端が混ざってるから、煙内のトランシーバーくらいなら無効化できるし、レーザーサイトも乱反射する」
陽炎「ふむふむ」
提督「長時間の吸い込みは危険だが、短時間ならさほど問題は無かろう。だがこれは逃走用だぞ?攻撃力はない。それと海上で使うなら湿気もあるし、粉瘤は沈みやすい。効果はさらに短いと心得たほうがいいかも。とりあえず一個あげる」コロッ
陽炎「どーもー♪」
提督「さて、それをどう使うのか…。結果を楽しみにしているよん」
妙高「提督。そろそろ」
提督「はーい。じゃあ陽炎、こんなんですまんが、期待しているぞ」
陽炎「はーい♪ ありがとね!」
提督「ご武運を」
ガチャ
パタン
陽炎「よしよし…♪」ニシシ
………
……
…
時津風「おっとっと…」フラフラ
天津風「ちょっと時津風。落とさないでよ?」
時津風「ま~え~見えなーい!」フラフラ
天津風「あんたがやるって言ったんじゃない…」
時津風「こんなかさばるとは思わないじゃん」
天津風「キャベツはかさばるものよ。あ、三歩先に段差よ」
時津風「あい~」フラフラ
天津風「ふぅ。いい風ね。やっぱり朝の風は気持ちいいわ」
朝風「そ。嬉しいこと言ってくれるじゃない」ヒョコッ
時津風「うわっ」ヨロッ
松風「大丈夫かい?お手伝いするよ」ガシッ
時津風「わぁ…ありがと」
松風「どういたしまして。無茶するねぇ、前見えるの?」
時津風「見えない」
松風「だろうね」
天津風「まったく、持てるからって視界をふさいじゃ意味無いじゃない」
時津風「うぅう…。雪風なら迷わず着いたのに」
天津風「あれはあの子が特別なのよ」
松風「彼女の「幸運」…だっけ?ボクは見たことないなぁ。なんでも砲弾が避けていくんだって?」
天津風「そうね。そう言えば恰好がいいけど…実際は見ててヒヤヒヤするだけよ」
松風「そうなのかい」
天津風「なにがどう転べばあんなに幸運が転がり込んでくるかは分からないけど、どっちにしろあの子だけの特性よ。だから時津風?そんな確証もない運に頼るなら、技術を磨きなさい、技術を」
時津風「あーい」
朝風「技術って言えば、潜水艦さんの探知力よね!」ピョコン
天津風「あら。おはよう」
朝風「おはよう!今日もいい風ね!」
天津風「ええ、そうね」
時津風「…潜水艦?」
松風「ああ、反響定位のことだね?」
朝風「そ!音の反射で距離を測る、「耳で視る」測量法よ!」
時津風「ほえー」
松風「ボク達なんかよりはるかに暗い海中を泳ぐ彼女たちには、目よりも耳のが探知に役立つんだよ。海中…そう、ボク達と違って前後左右上下、全方位に気を配らなきゃいけない彼女たちは、死角の暗がりだって気を抜けないんだ。海上よりも過酷な環境に身を置くには必須のスキルなんだよ」
時津風「へぇ~」
天津風「私たちも似たようなのやってるわよ。対潜で」
時津風「そだっけ?」
天津風「まったく…。経験則だけで「体」使ってるのね」
時津風「ムズカシイこと分かんない」
天津風「あんたは…」
時津風「でもそっか。だから曲がり角でぶつかんないんだ」
朝風「ん?うん、まぁ…そうだろうけど。普通曲がり角でぶつかる?」
時津風「ぶつかるよぉ。潜水艦以外の艦種ならたぶん全部ぶつかったよ」
天津風「それは曲がるときも全力疾走してるからよ」
時津風「ちゃんとドリフトしてるもん」
天津風「そうじゃなくて」
朝風「それ衝突事故っていうんじゃ」
松風「ははは!ファンキーだね、ときつんは」
天津風「笑いごとじゃないんだけどね…」
朝風「でねでね?反響定位のすごいところは、これって機械よりも生物のが優れてることなのよ!」
時津風「そなの?」
朝風「私たち…艦娘じゃなくって、「昔の私たち」だったら、「そこにいる」ってことしか分かんなかったじゃない。時代も進んだ今じゃ、もっと鮮明になってるって聞くけど、でもイルカやコウモリは「いる」だけにとどまらず、複雑な地形でもスイスイ移動できるのよ!」
松風「ただの反射にとどまらず、それが空間認識にまでつながってる、ってことだね」
朝風「そ!人間でも訓練すればできるようになるって聞くけど、潜水艦さんたちはそれをはるかに凌駕してるらしいのよ!」
松風「「第二の目」、とか言ってたもんね。イクさん」
時津風「はー…だから爆音苦手なんだ」
松風「うん?うん、そうだと思うよ」
天津風「何かやったわね?」
時津風「うん。寝耳にクラッカー。死ぬほどビビってた」
松風「うわぁ」
天津風「鬼か」
朝風「それって別に潜水艦じゃなくてもビビると思うの」
ワイワイキャイキャイ…
間宮「あら。楽しそうですね」
時津風「ありゃ。もう着いちゃった」
天津風「はやいものね」
松風「間宮さん、仕入れのお野菜持ってきたよ」
間宮「ありがとうございます。そこのお野菜が集まってるところに置いておいてください」
松風「はぁーい…随分な量だね」
間宮「一週間分ですからね。いっぱいありますよ」
時津風「これの半分くらいが戦艦空母のお腹に入るのかぁ…」ウヘェ
伊良湖「皆さん体が資本ですからね」ヨイショット
神風「ほらー、まだまだあるわよ。止まらないでー」ヨイショット
春風「…ふぅ」
旗風「春姉さん、持ちすぎですよ」
春風「い、いえ…いつも皆様の方が動いてらっしゃいますから…。これくらい、できないと…!」グググ…
松風「やぁ姉貴。あとどれくらいあった?」
神風「あとトラック三分の一」
松風「おっけ」
………
……
…
伊19「……クシュン!」
伊168「なぁに?風邪?」
伊19「違うのね。きっと誰かが噂してたのね」
………
……
…
風雲「あ、あのさ…」
秋雲「ん?なーに?」カキカキ
風雲「このカッコさぁ…ホントに需要あんの?」ポージング
秋雲「あるある!ロリっ子の水着姿とか王道よ?」
風雲「そんなんが王道とか世も末ね……。待て。ロリっ子だと…?」
秋雲「少なくともボディは」
風雲「ス・レ・ン・ダーですぅ!!無駄な脂肪のない洗練された姿ですー!!」
秋雲「おっぱいは男を落とす武装だから無駄じゃないよ?ほれ」ムニッ
風雲「うっさいわよ!!持ち上げんな見せつけんな!!そんなんバルジとどう違うのよ!?」
秋雲「乳首があるか無いか」
風雲「うっさいッ!!」
………
……
…
親潮「黒潮さん黒潮さん」
黒潮「ん?どないした?」ゴシゴシ
親潮「どうしてそんなに砲塔を磨くんですか?ピカピカで鏡みたいになってますよ」
黒潮「ああ、これね?ほら、うちらって目が二つしかないやん?空母はん達と違って視界が一つやん」
親潮「はい」
黒潮「だからどうしても視野に死角が出来るんよ。具体的には後ろやな。それをフォローするために……ほら、こうやって構えると反射で後ろが見えるんよ」ガシャコン
親潮「おお…」
黒潮「別に必須技能やないけど、まぁ工夫やな。うちはどうしても戦闘中は目の前の敵を集中しがちやし。後方不注意で大破とか、アホらしやん」
親潮「なるほど工夫ですか」
黒潮「並の深海棲艦、艦娘はいいんやけど…うちの上位陣には気配消すの上手いの多いし、演習中に襲ってくる神通さんはだいたい後ろから来るんや。親潮もそのうち強襲されるやろうから、気をつけてな」
親潮「はい。あ、じゃあ私も磨こうっと」ガサゴソ
ガシャコン
ゴシゴシゴシ…
親潮「…これ、鏡をくっつけたほうが早いんじゃ…」
黒潮「……砲雷撃戦の最中でも割れない欠けない鏡があるなら、貼っとき」アハッ
………
……
…
ザザーッ…
嵐「……はぁ」
那珂「なぁにぃ~?まさか夜戦バカのほうに行きたかったって言わないよねぇ~?」
野分「もう遠征に出てますから駄々をこねても意味無いですけどね」
嵐「こねてないって。お仕事優先だよ…」
萩風「夜戦は趣味なんだ…」
舞風「そんなに行きたいなら帰ってから行けばいいじゃん。ちょうど日が沈むころだろうし」
嵐「やだよこっちも疲れるんだから」
チラッ
那珂「~♪」
嵐(絶対一曲歌うだろうし)ハァ
舞風「この速度なら現地に早く着くでしょーし、向こうで何曲かやります?」
那珂「お。いいねぇ~」
嵐「ハジメカラソノツモリダッタクセニ」ボソッ
那珂「え?なに?」
嵐「いえ何も」
舞風「いい加減さぁ、嵐も歌うなり踊るなりしようよ。せっかく人の体になったんだから、有効活y」ピクッ
野分「……那珂さ…いえ、隊長」スッ
那珂「ん。来ちゃったかぁ」
野分「7時の方向、感ありです。索敵は出されますか?」
那珂「見た感じ、艦載機飛んでる?」
野分「いえ…視認できません」クルッ
萩風「反応、強くなってます。近づいてます」
嵐「っしゃあ、やりますかァ!」
那珂「振り逃げるよー」
嵐「ええっ」
那珂「今回は「手荷物」だけだもーん。逃げた方が早いよ」
野分「向こうが遅いことを願いましょう」
那珂「じゃあ総員、最大船速!早く着いてアルバム一曲分歌うよ!」ザッ
嵐「曲数増えてるぅ!!」
ザザーッ…!
………
……
…
ザザーッ
球磨「ッ!!雷跡!!回避行動!!」
シャーッ…
谷風「ちょ、うわぁっ!?」
ボカァァァン…!
谷風「っくしょぉ…」タイハ!
浜風「谷風!」
球磨「馬鹿!寄るな!!次来る…ッ」ゾクッ
ズドンッ!!
ズドンッ!!
球磨「ックソッ…二人がかりで一人狙いクマ?モテる旗艦は辛いクマ!!」ザザッ
阿武隈「やっぱり当たんないかぁ」
綾波「……ふふっ♪」
浜風「球磨さん…!」
不知火「判断が遅いですよ。浜風」ガシャンッ
浜風「ッ」
ズドンッ!!
浜風「あっ…!?」
ズドンッ!!
ガキィィン…!!
不知火「……チッ」
白雪「そうはさせませんとも!」フフン
浜風(砲弾を…砲弾で相殺した……!?)ポカーン
白雪「浜風さん。体勢を立て直してください」ガシャンッ
荒潮「浜風さぁん。ボーっとしてると、やられちゃいますよぉ」ガシャンッ
不知火「いっそやられて、鍛えなおしては?」
荒潮「させると思う~?」
不知火「させますともッ!!」ザッ
浜風(た、戦いについてこれない…!艤装のスペック的には問題ないのに…!)
不知火「ッ!!」ズドンッ!!
白雪「ッ」ズドンッ!!
浜風(判断力と、即応力。それと肉体の使い方。これの差ですね…。やはり演習システム以前に「現場」で鍛え上げた方々は違いますね)バシャッ…
ガシャン
浜風「勉強になります…!!」ザッ
不知火「一対三ですか…。これは不利ですね」
白雪「ええ。羨ましいです。感謝してくださいね♪」
不知火「はい。さらに自分を追い込めます…ッ!!」
チラッ
球磨「……うっわぁ。あそこにもちっこい神通がいるクマ」ザザーッ
綾波「ッスゥ…」ジャキンッ
ズドンッ!!
球磨「っ」ヒョイッ
綾波「普段なかなかやり合わないですから、こういう機会は嬉しいです。隊長♪」
球磨「愛情表現が怖いクマ」
阿武隈「大好き、です☆」パシュン
シャーッ
球磨「っと。だから愛情を物理で届けようt」ヒョイッ
ズドンッ!!
球磨「ッ!!」ヂリッ…!
綾波「惜しかったですね…」
球磨(回避先を狙ったか…くっそ)
阿武隈「やっぱり球磨さん、強いですね」ガシャンッ
綾波「そりゃあ、隊長ですから」ジャキンッ
球磨(阿武隈に綾波…。どっちも秘書艦様のお気に入り。加えて綾波とは遠征部隊で長い付き合い。動きは読まれて当然か)ハァ
チラッ
浜風「当たれッ!!」ズドンッ
荒潮「逃げるわねぇ」ズドンッ
白雪「まだまだいきますよ…ッ!!」ズドンッ
不知火「……ふふっ」
球磨(谷風はダウン。浜風は動きが鈍いし、せめて荒潮と組みたいところだが…)ザッ
阿武隈「えいっ」ズドンッ!!
球磨「なかなかどうして、上手くいかないクマァ!!」
阿武隈「え?」
綾波「逃げ…?」
球磨「戦闘狂二人は荷が重い!!」ザーッ
阿武隈「ちょっと!?どこ行くんですかー!?」
球磨「決まってるクマ!!このままじゃジリ貧確定!!手を打つしかないクマ!」
綾波「逃げて………ないっ!!そういうことですかッ!!不知火さんッ!!」
不知火「?」
球磨「よぉ」ズォ…ッ
不知火「ッ」
球磨「お前からだ」ニヤッ
ズドオオォォォン…!!
………
……
…
スタ…
スタスタ…
陽炎「よっ」ヒョコッ
黒潮「よっ」
陽炎「やっぱここにいた」
黒潮「なんや?うちにお話?」キュッキュッ
陽炎「んーん。今日は違う。うちの妹は?」
黒潮「……どの妹や」
陽炎「親潮」
黒潮「ああ、親潮はん?えっと、ちょっと前に演習場…」ハッ
陽炎「おっけ~」ニヤッ
………
……
…
ズドンッ!!
パキャンッ
親潮「よしっ…!」グッ
Nelson「お見事」
Gotland「当てるわね~。じゃあ、次は私、っと!」ガシャンッ
ジッ…
ズドンッ!!
ヒュゥゥゥゥ…
Gotland「あ、あれ!?」
砲弾「」ドコイクネーン
Nelson「あっははは!盛大に外したな!」
Gotland「ちょ、ちょっと失敗しただけよ!笑うんならあなたもやりなさいよ!」
Nelson「ああ。もちろんだ。見ていろ…!」ガシャンッ
ジッ…
ズドンッ!!
バキャッ
Nelson「むっ…」
Gotland「ちぇ~。当たった…わね…」ムゥ
親潮「すごいです!」
Nelson「芯は得なかった…。まだまだか。親潮が一番上手だな」
親潮「そ、そんなことはないですよ」テレテレ
Gotland「やっぱりお姉さんたちが教えてくれるの?実力派ぞろいって聞くじゃない」
親潮「ええ、ずっとお世話になりっぱなしです。妹たちも…私なんかよりもずっと…」
Nelson「ここでは小さな問題だろう?Admiralは「過去」に興味を示さない。実力さえあれば「旧型艦」など構わず登用する。返せば、親潮も相応に鍛えれば評価をしてくれるという事さ」
Gotland「そうよ。機会はいくらでもあるわ。一緒に頑張りましょ」
サ、ツギハオヤシオダ
ガンバリマス…!
五十鈴「……」ウデグミ
パキャンッ
五十鈴(浮標への射撃はまぁまぁ。…いえ、もう少し精度を上げたいわね。狙う時間が長すぎる。あと3秒くらい短く…)ゾクッ
五十鈴「調整する暇もなし、ね…」
Nelson「凄いじゃないか!二度連続で当てるだなんて」
親潮「え、えへへ…」
??「じゃあ。次は私にお願いします♪」
Nelson「っ!?」
Gotland「ど、どこから…っ!?」
??「背後を取られるとは、まだ甘いですよ」カチャン…
親潮「え……?」クルッ
ズドンッ!!
親潮「ア゛…ッ!?」
グシャッ…!
バシャバシャバシャ…!!
親潮「ウ…クゥ……」タイハ!
神通「さぁ。演習のお時間です」ニコッ
Nelson「ひ、卑怯だぞっ!」
Gotland「そうよ!新人相手に背後からだなんて!」
神通「……」ジロッ
ゾッ
Nelson「……ッ」ビクッ
Gotland「ヒッ」ビクッ
神通「立ちなさい親潮。奇襲とは、された側が悪いんですから。軍属でありながら気を抜く方が「卑怯」というものでしょう?」
パシャン…パシャン…
親潮「う…ぐ…」ヨロ…ッ
神通「演習システム…。提督の考案なさった画期的な育成案ですが。やはり、「温室育ち」はお行儀は良くていけませんね。「卑怯」だの「ルール違反」だの。戦争はスポーツじゃないんですよ」
五十鈴「……やるの?」
神通「ええ。教官殿も一戦いかがです?」
五十鈴「パス。どうせ曳航するのは私なんだし」
神通「そうですか。……それで、戦艦Nelson。軽巡Gotland」パシャンパシャン…
Nelson「っ」
Gotland「っ」
神通「あなたたちの弱々しい根性は後で叩き直してあげます」ニコッ
パシャン…パシャン…
神通「……あなたたちも後ろから撃ってもいいですよ?どのタイミングであろうと、私は不平を言いませんとも。それが、「平等」というものでしょう?」クスッ
五十鈴「鬼…」ボソッ
Nelson「……動けん……ッ!?」ガクガク
Gotland「な、ん……で…?」ガタガタ
五十鈴「それが恐怖ってやつよ。運がいいわね」
Nelson「いいっ…だと…??」
五十鈴「ええ。絶対強者による威圧。身がすくむ、っていうのはこういう事よ。よかったわね?実戦で姫級から「教えてもら」わなくって」
Nelson「……ッ」
五十鈴「この先の海には「ああいうの」が一定数いるわよ。……それも、こっちより確実に多く」
親潮「……スゥ。……ハァ…スゥ……」フラフラ
神通「敵前で深呼吸しますか」ズドンッ!!
親潮「ウグッ」グシャッ
神通「演習弾と言えど、当たりどころが悪ければ死に至りますよ。ちゃんと見て、予測して、回避なさい」
親潮「は、い…」
神通「見ろ、と言ったでしょう。下を向いて何になるんですか」ズイッ
親潮「エッ…」
Gotland「肉薄した…」
バシッ
デシッ
ゴリッ
親潮「ぅぅぅぅ…!!」
神通「やられっぱなしですよ。逃げるなり転がるなり反撃するなりしなさい」
親潮「うぅっ」ザッ
神通「敗走するのに背を向けて直線で逃げる阿呆がいますか」ズドンッ!!
キラッ
親潮「…ェいッ!!」バッ
バシャン!
バシャバシャ…
Nelson「避けた…」
親潮「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
キラッ
神通「…なるほど。砲塔を磨いて鏡面に。たしか……黒潮さんの工夫でしたか。ふふっ」ザッ
親潮「…ゥンッ!!」ガッ
バシャン!
ゴロゴロ…
ベシャン
神通「小細工、搦め手、付け焼刃。おおいに結構。そういう強かさもまた、生き残る確率を上げるでしょう。素晴らしいです」ガンッ
親潮「ア゛ッ…!」
五十鈴「評価して殴るとか鬼か。鬼だったわ」
ヒュンッ
親潮「ッ」ゾクッ
バッ
Gotland「避けた…」
神通「そうです、その調子です。逃げなさい。転げまわりなさい。恐怖を知り死に怯える無様を覚えなさい。そしてそれを克服なさい。それが強くなる、最短のやり方です」
親潮「ハァ…ッ!!ハァ…ッ!!」
ゾクッ
親潮「ンッ…!!」バッ
ズドンッ
ズドンッ
ズドンッ
親潮「あ゛…ッ!?」ガッ
バシャッ…ゴロゴロゴロ…
神通「……まだ反応が遅いですね。それでは被弾しますよ?今のように」ゲシッ
親潮「ウッ」
五十鈴「……相変わらずね…」
Gotland「うわぁ…お腹蹴った…」
Nelson「容赦がないな…」
神通「さ、次いきますよ」ガシャン
Gotland「ね、ねぇ…本当にこれは訓練なの?いきなり襲い掛かってくるだなんて…」
Nelson「弱いものをいたぶっているようにしか見えないぞ」
ガシャンッ
ズドンッ
Nelson「あがッ!?」チュウハ!
Gotland「ヒッ…!?」
神通「ここは海。海底含めて制圧したとはいえ、戦場です。いつなんどき、奇襲があるともしれません。訓練中だからといって、敵は見逃してはくれませんよ?ぼーっと突っ立ってると、今みたいに撃たれます。…ね?」
ズドンッ
ズドンッ
Gotland「ウグッ」チュウハ!
五十鈴「私にまで飛ばすの?」ヒョイッ
神通「当たっていたら教官失格でしたね♪」
五十鈴「厳しいわねぇ」ケラケラ
Nelson「ったた…。なるほどな…」
神通「常在戦場です」
シャーッ…
神通「ッ。………魚雷?」ヒョイッ
??「じゃあ…ッ!!突然狙われても文句は言えないわよねェ!?」ザッ
神通「……フフッ。ああ、またあなたですか…♪」
陽炎「陽炎ッ!!参ッ上ぉッ!!」バッ
Gotland「え!?」
Nelson「どこから…」
五十鈴「同じ事してる…」
バシャッ
バシャバシャバシャ…!
陽炎「んだらああああ!!」ウガー
神通「今度はいきなりインファイトですか?この体格差では得物なしのあなたが圧倒的に不利でしょうに」ガシッ
陽炎「うぎゃっ」ガシャン
ズドンッ
神通「ゼロ距離射撃…捨て身上等の突撃ですか。……私の大好きなスタイルですね♪」ヒョイ
陽炎「んにゃろおおおおお」ジタバタ
神通「残念でしたね。今回はここまd」
陽炎「なんちゃってぇ!!」
ボフンッ
モクモクモク…
神通「……。煙幕…?」
陽炎「司令から貰った煙玉よっ!っへへ!これで見えないでしょ!」
神通「あなたを掴んでいるからもはや視界など意味が無…」
ヒュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ…
神通「ッ」ポイッ
陽炎「チィ…ッ」
ズドオオォォン…!!
Gotland「上から…魚雷!?」
Nelson「艦載機は無かったぞ」
親潮「ど、どこから…」ケホケホ
五十鈴「……手品。煙幕はった瞬間に魚雷を真上に投げただけ。インファイトでわざと捕まって「座標」を固定しておけば、時間差で上から魚雷が落ちてくる…そんなとこかしら?ただし…」
モクモクモク…
神通「自爆覚悟、ですか」
Nelson「無傷…だと…」
Gotland「当たったと思ったのに…」
五十鈴「神通の反応が一瞬早かったわね」
陽炎「捨て身上等って言ったのはそっちでしょ」
シャーッ
神通「そうでしたね。……さすがにもう慣れました」ヒョイッ
ズドンッ
神通「だから慣れたと言ったでしょう」ヒョイッ
陽炎「チィ…もう効かないかぁ」ガシャン
神通「あなたのその奇想天外な作戦には毎度驚かされますね。どこからそんな発想が…」
陽炎「そりゃ私たちの上司を見習えばいいのよ」
神通「……深く理解しました」
陽炎「あの変態に比べれば、私はまだまだよ」
神通「当たり前でしょう。変態さ一つとっても、あの人は私たちをはるかに凌駕していますから」フフン
五十鈴(それは…褒めてるの……?)
神通「常在戦場云々の件はもういいでしょう。そろそろ幕引きにしましょう」
陽炎「やってみなさいよこの…ッ」
ヒュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ…
神通「あなたの技で」
陽炎「え?」
カッ
ズドオオォォン…!!
陽炎「うきゃあああああああああああああ!?」タイハ!
神通「足止めして注意をそらすだけなら、会話でも十分でしょう」
陽炎「ぅ……へぇ…」ケホッ
Gotland「うわ…」
Nelson「なんと…あっけない」
五十鈴「結局はボコボコにされるけど、ああやって勝負挑めるくらいの根性がもてれば、一人前ね。どんな格上だろうと負けじと噛みつけなきゃ、私たちは敗北するんだから」
Gotland「一人前への道が遠すぎない…?」
Nelson「でなければ海を渡ってきた甲斐がないだろう…!」
親潮「姉さん…すごい…」
陽炎「ぅぅ…くっそぉ…」ボロッ
神通「さ、訓練の続きをしましょうか。可能なら、反撃してきても構いませんよ♪」
Gotland「え!?」
Nelson「む!!」
親潮「え!?」
………
……
…
提督「…で。ボロクソに負けたと」
陽炎「ちっくしょー!」
提督「あはははははは!!いやー、そうかそうか。上から魚雷をね。また面白いことを思いついたなぁ」
妙高「笑いごとですか。危険すぎます!何のために艦種による行動制限があると…!逸脱した艤装の使用は、とても危険で…!!」
提督「投げたんでしょう?腕で。じゃあとくに艤装に問題はないんじゃない?」
陽炎「そうよ。危ない橋はわたっていないわ!」
妙高「そうではなく、逸脱した行為を躊躇なく行えるその心掛けが…!」
提督「まぁまぁ。だからこそこうして報告してるんでしょう?手綱はしっかりと握っています」
妙高「しかし…!」
提督「陽炎の試みは非常に興味深い。既成概念にとらわれないスタイルは、革新的なアイデアにつなげる可能性なんです。多くの艦娘がやっていれば秩序の乱れと正す必要がありますが、しかし都合のいいことに陽炎の試みはいつも高難度で彼女にしかできないことばかり。だったら好きにやらせてあげるのが、最も有効的といったもんでしょう」
陽炎「ふっふーん♪」
提督「そうか、駆逐艦が疑似的な爆撃をね。駆逐艦なら空を警戒しなくていいという慢心を突く、挑戦的な試みだ。火薬量の多い魚雷は、「当たれば」非常に高い効果が見込める。戦術的欠陥は…時間差によって命中率が低いことと、しっかり注意をそらしておかないとネタバレしちゃうことか」
陽炎「神通さんは煙幕なしでやったわ。会話で引き付けたって言っても、晴れた視界でどうして気付かなかったのかしら…?」
提督「あいつにはえげつない妹がいるからな。その類とやり合うコツは心得てるんだよ」
陽炎「ちぇ~。地味に那珂ちゃんさん強いからなぁ~」
提督「川内型は総じて頭がおかしい。……いい意味でも悪い意味でも。お前は、あそこまで逸脱しなくていいよ。それより引き続き独創的な試みをやってほしい」
陽炎「対神通さん専用だけどね~」
提督「そこそこ勝負になっているあたり、すごいじゃないか。それにいくつかの技術はすでに上位層の必須スキルにもなっている。直角ターン、セルフイージス…。どれも単に「船」や「人間」では成し得られず、ゆえに発想すらされなかった「艦娘」独自のスキルだ。ある意味、最も「艦娘」してるのは陽炎なのかもしれないな」
陽炎「んっふ~。凄いでしょ♪」
提督「ああ、見事だ。今後も、新たな試みを楽しみにしているぞ」ナデナデ
陽炎「っしゃあ♪ じゃあ、私は戻るわね」
提督「うん。お疲れさん」
陽炎「じゃあね~」ノシ
パタン
妙高「はぁ。危なっかしい…」
提督「さっきのあれ……那珂が覚えたらとんでもない攻撃力になりそうだな」
妙高「また変な技を仕込むんですか…?あまり賛同はしたくないのですが…」
提督「あれは適性がありすぎた…。まさかあそこまで出来るようになるとは…」
妙高「提督も出来るのでしょう?いつぞやのように」
提督「あそこまでは無理。あれに関しては、完全にオレを超えたよ」
妙高「そうですか…」
………
……
…
陽炎「くそーっ!!」ガララッ
Nelson「お」
Gotland「ん」
親潮「あ」
間宮「いらっしゃいませー」ニコニコ
陽炎「あら。みんないたの。訓練後は甘いのをかじるにかぎるわねー」
親潮「ね、姉さん…もう、よろしいんですか?」
陽炎「なにが?」ケロッ
Nelson「元気だな。あんなにやられたのに」
陽炎「慣れよ慣れ。みんなすぐにこうなるわよ」ヒラヒラ
Gotland「その未来が見えないんだけど…」
Nelson「さすがだな。先ほどのも、見事だった」
陽炎「勝てると思ったんだけどなぁ。また次のを考えないと」
Nelson「そのPotential、見習おう」
親潮「姉さん、お強いんですね」
陽炎「ン。なぁに~?弱っちく見えたぁ~?」
親潮「いえ!そういうんじゃなくて…」
陽炎「なーんてね。その通り!私もまだまだ弱いわよ。神通さんはもちろん、摩耶さん北上さん加賀さん比叡さん…天龍さんもだっけ?「最上位層」は雲の上よ」ドレニシヨウカナー
Gotland「最上位層…」
陽炎「勝手に言ってるだけよ。大規模作戦で主力になるような、すごい人たち。あれはもう踏んできた場数が違うわ。上位層には川内さん那珂ちゃんさん球磨さん龍田さん綾波ちゃん夕立ちゃん…遠征とか通常戦闘で隊長や副隊長、隊長補佐になる人たちよ。あ、もちろん五十鈴さんもね?」
Gotland「へぇ…」
陽炎「あの人たちも大概おかしいわよ?最上位層の動きについていけるんだから。私はもっと下だし、言うまでもなく新人のみんなもね?だから今日のは気にしなくていいわよ。洗礼よ、洗礼」ケラケラ
親潮「そう…ですか…。せっかく黒潮さんに教えてもらったのに…」シュン…
陽炎「そんなもんよ。工夫一つで勝てるなら、もっと世界の海は平和だもん」
Gotland「それは…そうね」
陽炎「でもよく頑張ったじゃない。最後にはちょっとだけ先が「視えた」みたいだし。大事よ?そういうの。実戦はもっと激しく混雑化するんだから」
親潮「はい…」
Gotland「訓練は、いつもああだったの?」
陽炎「そうねぇ。忘れたころにまた来るわね。やっぱり鉄は熱いうちに打て?って言うの?や、三つ子の魂かな?……とにかく、訓練段階から「不測の事態」に対応できるようにするのが、神通さんのイベント。背後からの奇襲、不意遭遇、有無を言わさぬ蹂躙。こんなの、無法状態の海じゃ日常茶飯事」
Nelson「ひどい海だ」
陽炎「まったくね。だからこそ、それにすぐ動ける即応力や、そもそもを事前に回避する危機管理能力が求められるのよ。遠征部隊や、哨戒部隊には必須ね。「やられた!物資を奪われた!」「なんて奴らだ!」って言い訳は通じないし、それで迷惑するのは私たち以上に武器持たぬ国民の皆様方。力ある私たちがパワープレイしなきゃ、本当に弱い人たちは為す術ないわ」
Nelson「耳が痛いな」
陽炎「普段はどんなにおちゃらけててもいい、でもいざって時に決めるとこは決める方針なのは、うちの司令を見れば分かるでしょ?」
Gotland「ふむ、ふむ」
陽炎「ま、卑怯なのはもっともなんだけどね。でもそんな正論だけで勝てる戦じゃないし。神通さんのあれは、高性能の艤装でピノキオになった艦娘にこそ、よく効く薬なのよ。ちなみにあれはどんなレベルの演習にも起こるイベントだから、きっとまたあるわよ」
Gotland「そっか…」
陽炎「だから今日は運のいい日ね。心構えを勉強できたんだから!最強が最強たる根幹を見せてくれた!これだから神通さんとやり合うのはやめられないわ!」ビシッ
Nelson「はは…そうか、それはLuckyだった。たしかに、「ああ」なりたいというのが、この国に来た所以だった。な?」
Gotland「そっか…そうね。そうだわ!」
親潮「頑張ります!」
陽炎「はいっ!反省会おーしまいっ!食べてパーッと散財しましょ。新作あるかなぁ~」
Nelson「……素晴らしい姉上だな」
親潮「ええ。頼もしいです」
陽炎「みんな決まった?」
Gotland「いいえ。あんまり来たことないのよ、ここ」
陽炎「じゃあテンプレでいいか。いいわ、今日は私が出すわ」
Gotland「えっ」
親潮「いいんですか?」
陽炎「私は大家族陽炎型の長女様よ?いまさら「妹三人」の食事代くらい、わけないわ。黙って奢られなさい」
Gotland「あ、ありがとう…」
Nelson「これはこれは…。ありがとう、かたじけない」
親潮「いただきます」
陽炎「間宮さーん!いつものー!四つー!」
間宮「はーい!」
………
……
…
はい、こんな感じで。
いつものシリーズのサイドストーリーです。
登場人物が多い(たぶん200人超)シリーズのため、メインストーリーでは取り上げられない側面もあると思い、サイドストーリーを作ってみました。陽炎型の日常をメインにしたので、オチは無いです(言い訳)。
まだ試験段階なので、とりあえず前後編です。
(味を占めたら)今後また別のサイドストーリーに手を出すかもしれません。
………いい加減、別タイトルを作ってみたかったのが本音です(笑)。
陽炎リクエストした者です、ありがとうございます!
読んでいただきありがとうございます!
後編もそうかからずに出せそうです。少々お待ちください!
寝耳にクラッカーとはやりおる
陽炎はおねぇちゃんで頭のネジが外せるやなって
こんばんは~♪
サイドストーリー楽しいですね♪
陽炎姉さんが実戦で無双する日も近いかもですね!
それにしても巻雲さんが不憫でならない(笑)
寝耳にバズーカじゃないだけマシか...
川内さんはあれかな?夜だと化け物だけど昼がダメダメだから上位層に留まってる感じなのかな?
応援、評価等を下さり、ありがとうございます!
いずれ本格的な戦闘描写にも挑戦したいと思っています(あとエロも)。
川内と龍田は歯止めが利かないという点や無視できない短所でマイナスがある感じです。逆を返せば、特定の条件下では…。
色々書きたいものがありすぎて、終わりが見えなくなってまいりました。自粛期間を利用して、ペースアップして投稿します!
次は筑摩編です。もうちょっとだけお待ちください!
ちなみに、最上位層、上位層で挙げた例はごく一部です。金剛、蒼龍、瑞鶴、陸奥、足柄 etc…。書く書かないは別として、一応設定はしてあります。