青葉「ずばり!司令官の好みとは!?」 筑摩のしりごみ編!
過去編・筑摩です。
ちくまー。ちくまー。
パチン…
パチン…
パチン…
利根「うーむ…勝てんの」
提督「いいとこまで行ってたんだけどね。さっきのところ金じゃなくて銀で詰めればよかったと思うよ」
利根「そうか…」ウーム
提督「流れは悪くないんだけど、ちょっと分かりやすい。定石通りって感じ」
利根「そういうものじゃろう、将棋とは」
提督「卓上ゲームは完全なる情報開示ゲームだから、必勝法が必ず存在する。人工知能が相手ならまだしも、こういう面と向かった対人戦ではもっと分かりづらくしなきゃ。どこ見て何考えてるのかはっきり分かるぞ」
利根「む」
提督「もっと捻りをいれなきゃ。いい手が思いつかなかったら、会話で逸らしたり、視線を別に移させたり。意識を盤面に向けさせないようになされ」
利根「ルール違反じゃろう、それ」
提督「別にプロ目指してるってわけじゃねーんだ、気楽にいこうぜ?」
利根「これが本当に訓練なのかのぉ…?ただ遊んでいるようにしか思えんのじゃ」
提督「遊びの中に修業あり。真四角の木盤の上ですら策を練れないなら、どうして海の上で練れよう。歴史に名を遺した智将たちも、少なからず名プレイヤーだったそうだぞ」
利根「そういうものか」
提督「そういうもんだ」
利根「…それにしても、今更ながら不思議な立ち位置じゃな。吾輩とは」
提督「参謀役?」
利根「そうじゃ。本来、艦娘とは最前線で戦うための存在じゃろ?それが兵器であれ、軍人であれ。だのに吾輩は後衛職に座しておる。改めて考えると、面妖じゃなと」
提督「前衛職だからといって考えなくていい、ってわけにもいかないだろう?深海棲艦と艦娘では、純粋な膂力ではあちらに軍配が上がる。さすれば頭脳労働役は必要不可欠だ。もちろんお前の重巡としての力量にも期待はしているが、正直なところ最前線でパワープレイができる重巡はすでにいる」
利根「…摩耶か」
提督「ああ。あれはすでに戦力として完成しつつある。他にも、純粋な火力戦に秀でた人材も、あらかた揃ってきた。お前にも参加してもらったアレもあるしな」
利根「演習システム」
提督「そう。まだシステムに穴があるとはいえ、おおかた、艦娘を短期間で最低限の戦力に育て上げる環境も整えた。もう間もなく、我が鎮守府の戦力は大幅に強化される時が来る。加速していく戦況に合わせてな」
利根「……なるほどの。じゃから、吾輩が必要だと。増えていく戦力を管理するには、提督一人では足りなくなってくる。すでにいくつかの役職を司令部で分割しているように、いよいよ戦闘面でも分割すると?」
提督「指揮こそオレが執ることに変わりがないが、この部隊の数だ。裏で策を練る時間も少なくなっていくだろう。今はまだ見習いとして側に置いておくが、いずれは本格的に献策してもらう」
利根「それができる自信がないんじゃがの」ハァ
提督「自信は結果からついてくる。はじめから根拠もなく自尊する輩なら、オレはお前を登用していない」
利根「……そうか」
提督「さ!分かったらもう一局だ。せめて一回くらい王手かけてみろ」
利根「それが出来れば苦労はしとらんのじゃ…」
パチン
………
……
…
妙高「よい…しょっと!」ドサッ
長門「…ふぅ」ガコン
妙高「すいません、手伝ってもらっちゃって」
長門「構わんさ。ちょうどいい息抜きになった」
妙高「熱心ですね」
長門「ふふっ、「成長する」というのが楽しくてな。「肉体」が完成され改装することでしか戦力を増強できなかった「かつて」では味わえなかった喜びだ。暇さえあれば訓練をしているぞ」
妙高「逞しいですね」
長門「しかし、一向にあいつらに追いつける気がしない…」
妙高「神通さんたちですか?」
長門「ああ。神通、北上、摩耶…あいつらはどうなっているんだ」
妙高「俗に、ああいうのは「天才」と言われる部類ですよ。良質な艤装を性能だけで満足せず、でたらめなほどに磨き上げ、使いこなしています。とくに神通さんのあれは…見ていて異様でしたからね」
長門「もっと追い込まねばならんか…」
妙高「どうでしょうか。提督はそれを望んでおられないように思います。いえ、もちろん研鑽を積むことに否やはありませんが、簡単に逸脱することを良しとはしないかと」
長門「だがそうでもしなければ勝てんだろう?」
妙高「それよりはより効果的な連携を必要としていらっしゃいます。作戦行動の平均的な質を上げ、劇的な勝利より損害軽微な堅実な勝利を掴もう……そういった方針です」
長門「それは分かるが…」
妙高「敵戦力の総数が未知数なんです。一発屋なやり方では、容易に形勢逆転されてしまいかねません」
長門「……」
妙高「だから、提督は長門さんの鍛錬を高く評価なさっていましたよ?ほどよく追い込み、着実に積み上げていく。理想的な成長の仕方であると」
長門「それは光栄…だな」
妙高「じゃあ、では、私はこれを倉庫に持って行きますね」
長門「ああ。私も訓練に戻るとしよう」
妙高「では。ご健勝を」
長門「そちらもな」
スタスタスタ…
………
……
…
神通「……スゥ。…ッ」ガシャンッ
ズドンッ!!
摩耶「…くっそッ」チッ
天龍「ダメだ。もうこの陽動じゃ引っかかんなくなってきた」
神通「…。おまかせしますよ」
北上「あいよっ」パシュン
天龍「おわっと!?」
ズドンッ!!
ズドンッ!!
ギャース
ギャース
蒼龍「…うっへぇ」
飛龍「うわぁ」
漣「やべーっすね」
時雨「気が狂ってるとしか言いようがないんだけど」
漣「ぎゃーぎゃー騒いでるわりに、ものごっつハイレベルな事やってませんかね」
時雨「砲雷撃戦なのになんであんなに近づいてるんだろ」
蒼龍「北上ちゃんなんか魚雷手で投げちゃってるし」
飛龍「危なくて離れてるしかないよ…」
蒼龍「……」
飛龍「……」
蒼龍「そういえば、さ」
飛龍「うん」
蒼龍「私たち、今は対抗チームだよね」
飛龍「うん」
蒼龍「……やろっか」スッ
飛龍「……そだね」スッ
漣「やっちまってくだせぇ!姐さん!」ダッ
時雨「君とボクも戦うんだよッ!!」ガシャンッ
………
……
…
羽黒「…よい、しょっと」ガサッ
筑摩「あ。羽黒さん」
羽黒「こんにちは、筑摩さん。新しい装備が入りましたよ。これは…中口径主砲ですね」
筑摩「最近多いですね、新装備の開発」
羽黒「「艦娘産業」って言うらしいですね。強敵も増えてきましたし、ありがたいですね」
筑摩「強くなったといえば…すごいですね、みなさん」チラッ
ギャース
ギャース
羽黒「ああ…神通さんたちですか?ええ、本当にすごいですよね。アクロバティックというか、なんというか…。異次元な動きですよね」
筑摩「同じ艦娘とは思えませんね」
羽黒「なんだか自分が足手まといのように思えてきて…」シュン
筑摩「そ、そんなことないと思いますよ!?ほら、お姉さんのように提督の補佐を務めるやり方もありますし、活躍の仕方は一つではありませんよ」アセアセ
羽黒「妙高姉さん…どうやって提督と…」ボソッ
筑摩「えっ?」
羽黒「そ、そういえば利根さんも司令部の役職に就かれましたよね?おめでとうございます」
筑摩「ありがとうございます。作戦立案の役を仰せつかったと。正直、艦娘の身には重責かと思うのですが…」
羽黒「そんなことないですよ。利根さんが頭脳明晰なことは周知の事実ですし。納得の採用でしたよ」
筑摩「そうでしょうか…。けっこう抜けてるところも多いんですけど…」
羽黒「身内だからですよ。うちの妙高姉さんだって、私生活はモテないアラサーOLみた」ガシッ
妙高「だ・れ・が。アラサーですって?」ミシッ
羽黒「ひっ」ビクッ
妙高「精神年齢はいざ知らず、肉体年齢はまだ若いです。筋力もほら…♡ まだまだあなたには劣りませんよ…?」ギャリギャリギャリ…!
羽黒「いたっ、いたたたたたっ!!?」
筑摩(モテない点は否定しないので…?)
妙高「最近デスクワーク続きでろくに動いていないんです。どうです?「運動」、しますか?」オォ?
羽黒「はひっ!?い、いえいえいえいえいえ!!!だ、大丈夫ですっ!!」
妙高「…まったく」ポイッ
羽黒「うぅっ」ドサッ
妙高「ああ、筑摩さん。丁度良かったです。ちょっとお話がありまして」
筑摩「私にですか?」キョトン
妙高「正確には、利根さんに。彼女がどこにいるか分かりませんか?」
筑摩「利根姉さんなら…たしか今日は提督から座学の手ほどきを受けられる日だと…」
妙高「提督も。ああ、ならなおさら丁度いいです。どこで会われるか聞いていますか?」
筑摩「教室…だったはずです。何かあったんですか?」
妙高「いいえ。これから起こるんです」ニコッ
筑摩「これから…?」
妙高「悪いお話ではありません。むしろ良い…。利根さんに、改二改装のお知らせです」
………
……
…
利根「お、おお…」
提督「おめっとさん」
妙高「おめでとうございます」
利根「しかしこれは…急な話じゃの」
提督「今までの武勲を讃えるのと…今後ののびしろに賭けてな。ささやかだが、オレからのご褒美とでも思ってくれ」
利根「役職を下ろす気はないと、そういうことじゃな?」
提督「はっはっはっ!その通りだ。対外的にも、オレ直轄の艦娘が最先端の技術を搭載していないと、他への示しがつかんのでな。他の皆にはすまんが開発局には融通させてもらった」
利根「政治か。それはいいんじゃが…しかしそんな融通が利くとはの」
提督「まぁな。あちらさんとは長い付き合いなんだ。多少のわがままは聞いてくれるのさ」
利根「……そういった世界に、身を投じるということか」
提督「安心しろ。「そっち」の世界は海戦よりも簡単で、複雑だ。気軽に最前線に放り込むようなことができん」
利根「よく言うの」
提督「ともあれ、改二のお話だ。妙高さん」
妙高「はい。これがその書類になります」スッ
提督「利根型重巡の改二改装…の、計画書だ。改装することは決定しているが、まだいくつかの点は未定でな」
利根「ほう」
提督「具体的には戦闘服だな。どんな衣装を着たいかリクエストあればどうぞ。あ、ちなみに採寸はもう終わってるから」
利根「されとらんぞ」
提督「オレがいつもしてるだろ」
利根「……」
提督「……」
妙高「……」
利根「……いやそれでもされとらんぞ」
提督「そうだったな、あんまり触ってなかった。よし、ちょっとこっち来い」
妙高「提督」ジトー
提督「なんです邪魔しないでください」ジトー
妙高「これから提督の部下になる艦娘ですよ!?そんなことしたらうちがどんな所だと誤解されるか…!!」クワッ
提督「採寸だけでそんな目くじら立てなくても」
妙高「あなたは絶対それだけで済まさないから問題なんです!」
提督「でも妙高さんにはやってないじゃないですか」
妙高「……っ!そ、それは…そうですけど」ムスッ
妙高(それはそれで腹が立ちます)
利根「吾輩は別に構わんぞ」
妙高「えっ」
利根「採寸じゃ。最後にはデータとして必要じゃろうし、早いか遅いかの違いじゃろ」
提督「そんな性にだらしない女子高生みたいなこと言うなよ」
利根「何の話じゃ。一度は触られておる。今さら乙女じみたことは言わんわ」
提督「乙女だよ!?ねぇちょっと大丈夫?だらしないどころか荒んでるよ?なにか、心に傷でもあるのか?オレに言えないようなことだった妙高さんにでも…」
利根「ないわ!はよせい!」
提督「お、おう」
妙高「えっとメジャーは…ありませんね。すいません、少々お待ちください。取ってきますので」
提督「や、いいよ。直で測る」
妙高「は?」
提督「利根、立って」
利根「ん」スクッ
スッ…
プニッ
利根「ンッ」
提督「身長は154.…6か7、バストは79.…2から3」ペタペタ
妙高「ちょちょちょちょちょっ!?あの、私!メジャー取ってきます!」アセアセ
ドタバタ
提督「…いらん言うたのに。ウェスト61・5」ペタペタ
利根「端から見たらいかがわしい行為じゃぞこれ」
提督「分かってて動じない君も相当だね」
利根「不思議と不快じゃないんじゃ。何をしとる?」
提督「触られての通り、採寸。ヒップ85.…3?」ペタペタ
利根「ふむ…。意中でもない男に胸やら尻やらを触られると不快な思いをすると聞くが…。そうでもないということは、吾輩はお主のことが好きなのか?」
提督「オレに聞かれても。触られて不快じゃないっていうのはアレだ、オレがそういう触り方をしていないからだ。腕のばして」
利根「ほう?」ピッ
提督「どこぞのお洒落重巡に諭されてな。コミュニケーションとして触るのであれば、触り方にも品を持たせるべきだと。性感マッサージなんて単語がある通り、体の触り方によっては相手をリラックスさせる。その逆パターンが原義の「セクハラ」だな。しからばそれを極めんとせずになんとする?将校たるオレに妥協は許されんのだ」
利根「よく妥協してるようにも思えるけどの。つまりは人を触って癒しを与えたり、無機質に思わせたり、あるいは不快にさせたり。自在だと?」
提督「それだけで完璧にコントロールはできんが、ま、ツールとしてな。肩リラックスして」ポスポス
利根「恐ろしい人じゃの」ハァ
提督「何が武器になるか分からん世界だ。資格は多いほうがいいんだぜ。ン、肩幅はこんくらい、っと」ピッ
利根「そういうものか」
提督「そういうもんさ」
利根「……さも当たり前のように流しておったが、よく触るだけで測れるの」
提督「あー、これも技術だ。こうやってほら、手を広げて親指かr」
妙高「戻りました!」ガタンッ
提督「ドアは静かに開けましょう?」
妙高「そういうわけにもいかないでしょう…!?」
提督「それにだいたい測っちゃったし」
妙高「目分量で測れるわけないじゃないですか!ちゃんとメジャーを使って…」
提督「じゃあオレのと照らし合わせてみる?」
カンムスソクテイチュウ…
妙高「あ、あってるっ…!?」
提督「な?」ドヤァ
………
……
…
カァ…カァ…
利根「戻ったぞ筑摩よ」ガチャ
筑摩「あら利根姉さん。お帰りなさい」
利根「けっきょく夕方まで手ほどきをされたのじゃ。吾輩は疲れた。ちと寝るぞ」ガサッ
筑摩「ええ、お疲れさまです…」ジッ
利根「この書類か?……説明するのも面倒じゃ。好きに読めい。お主にも大いに関係のある話じゃ」
筑摩「改二…ですよね?」
利根「なんじゃ聞いてたか。それはそうなのじゃが、まだ決まってない部分があるというか……読め。吾輩が起きるまでに読んで理解しておくのじゃ」
筑摩「はい…」
利根「グゥ」ドサッ
筑摩「ああ、そんな床で寝なくても…」
利根「……」スピー…
筑摩「こんなにお疲れになって…よほど詰めたご教授だったんでしょうね…」ヨイショット
ポフン
筑摩「姉さんはこれでよし…。それでこの書類、ですか…えっと…」フム
筑摩(利根型重巡洋艦1番艦および2番艦の段階的改装計画…改二改装のことですね。これは…航巡?そう…次の改装は航空巡洋艦なんですね。それで、変更点は…あれ?これ、まだ戦闘服のデザインが決まっていないみたいですね…)フムフム
筑摩「それからこの走り書きのメモ…。利根姉さんの採寸でしょうか。それと、簡単なデッサン。なるほど、実装までにデザインを決定しておけということですね。私にもかかわりがある、と言うのはこういう意味ですか」
チラッ
筑摩「私は別に…このままでも構わないと思うのですが。利根姉さんのお好きなように決めてもらって大丈夫です」
………
……
…
提督「うーん」
ガチャ
鈴谷「て・い・と・く♡」
提督「な・あ・に♡」
妙高「ノックをしてください」
鈴谷「ね、ね!提督、ご飯食べよっ?」ズイッ
提督「えー?提督さん今お仕事してるんだけど」
鈴谷「うそつきぃ。グラビア見てるくせに」
提督「ファッション雑誌じゃい。女の子なんだから違いくらい分かりなされ」
鈴谷「人の写真が載ってる本は全部エロ本」
提督「肌面積以前に男女差も関係なく…!?」
鈴谷「でもあるでしょ?男が被写体のエロ本」
提督「ニッチだよ…」
鈴谷「じゃあエロ以外だったらなんで雑誌なんて見てるの?」
提督「提督さんをなんだと思ってるんだい?」
鈴谷「なんにでも欲情できる節操なし」
提督「オレお前らに手ぇ出してないやん」
鈴谷「鈴谷なら手ぇ出してもいいよ?ほれ」ピラーン
提督「見慣れたパンツだ」
鈴谷「この野郎」
提督「あまり若い子がそういうことを言うもんじゃないぞ。戦場に身をおいているとはいえ、体は大事になさい」
鈴谷「処女のまま死にたくない」
提督「そうか、ならお前は死なんな。オレはお前を抱かないし、死なせるような指揮も執らん」キラッ
鈴谷「さらっとフられたね」
提督「それにこうとも言う。戦場の処女は弾の方から避けていく、と。ゲン担ぎにちょうどいいじゃんか」
鈴谷「そんな迷信よりエッチしたい」
提督「思春期かよ」
鈴谷「思春期だよ」
提督「湧き上がる性欲を性交渉で満たしてたら、ろくな大人にならんぞ。もっとこう、他のもので解消しなさい。運動とかスポーツとか体育とか」
鈴谷「すでに運動してんだけど。すごく激しい運動を海の上でやってるんだけど」
提督「じゃあ妹よろしくお洒落で自分を磨くとか。ああ、そうだ鈴谷。今の若い子はどういうファッションが心に刺さるんだ?意見が欲しい」
鈴谷「鈴谷べつにお洒落に興味ないよ」
提督「その見た目で?」
鈴谷「この見た目で。髪色派手なのは認めるけど…これ地毛だし。え、提督はお洒落に興味ある女の子って、好き?」
提督「そりゃ嫌いよりは好きさね」
鈴谷「……ふぅん。ふぅん!そっかそっか。りょーかい提督。じゃあちょっと勉強するねっ」ダッ
ガチャ
バタン
提督「……あいつも積極的だな」
妙高「自業自得ですよ、提督」
提督「え、オレ?」
妙高「日頃の行いを省みてください」
提督「……。ってか、あいつ飯に誘ったんじゃないの?」
ガチャ
鈴谷「忘れてたっ!!ご飯食べよっ!!」バーン
提督「うん、いいよ」
妙高「忙しい人たちですね」ハァ
………
……
…
ア、テイトクダー
コンバンハー
オイスー
ガヤガヤ
鈴谷「でふぁ、どういうのがいいの?」モッシャモッシャ
提督「口にものがあるときは喋らない」
鈴谷「ン」モッシャモッシャ
提督「どういうの…ファッションか?それはオレが聞きたいんだが…。あ、おいそこな重巡」
足柄「はぁい?このイケてる重巡に何の用かしらぁ?」
提督「イケてるとまでは言ってない。最近のお洒落について一言どうぞ」
足柄「お洒落?そうねぇ…高級ブランドは必須よね!」
提督「お前に聞いたオレがバカだったよ」
足柄「ちょっと何よ?安物で身を包んでたら、品性まで安っぽくなるわよ」
鈴谷「その発言がすでに安っぽい…」ボソッ
足柄「なにか言った?」
鈴谷「うぅん、なんでもない」フルフル
提督「安易に妥協すべきでない、ってのは理解できるな。素材は何であれ、出来うることは全てやろうという心意気は大事だ」
鈴谷「だいぶ好意的な解釈だね…」
提督「センスは別だが」
鈴谷「うん」
足柄「また変なこと考えてるの?ほどほどにしときなさいよね~」ジャアネ
提督「あいつはダメだ…。こういう時は…む。おいそこな雷巡」
大井「はい?……私ですか?」ウゲー
提督「そうそう、そこのいい感じに女子成分のあるお前だ。おっぱい元気?」
大井「ごきげんよう、では」プイッ
提督「待て待て待て待て。ほら大井、座って座って?ぜひとも雷巡の見地をおたずねしたいのよ。なんならご飯奢るから」
大井「……なんですかまったく。はいこれ、特上海鮮丼」
提督「高いの選んだね君…」
大井「なにか?」
提督「いいけどさ。でさ、大井。最近のファッションについて聞きたいんだg」
大井「私北上さんのところに行きますね。ごちそうさまです」
提督「待て!奢ってやるんだから待て!」
大井「だって雷巡関係ないじゃないですか!!」
提督「雷巡だって女だろ」
大井「語弊のある言い方やめてくれませんか!?」
提督「ほら、前の件もあることだし」
大井「……またお化粧する気ですか?提督」
提督「や、今回はオレじゃなく鈴谷。あ、じゃねぇ、利根だ」
鈴谷「えっ。鈴谷のお話じゃないの」
提督「メインは利根型なんだ。すまんの」
鈴谷「ちぇっ」グヌヌ
大井「利根「型」…。なんのお話です?」
提督「だからファッション」
大井「改装?」
提督「ありゃご明察」
大井「やっぱり」
提督「利根型の改二実装が確定してな。だがまだ概要どまりで未定の部分もある。とくに戦闘服は白紙状態で、できれば現場の声を反映させたいという開発局の体のいい匙投げを食らったところだ」
大井「ふぅん。本人たちには言ったんですか?」
提督「通達済み。向こうでも考えては貰うけど、オレが考えなくていい理由にはならんからな」
鈴谷「これって提督のお仕事なの?」
提督「オレの部下だぞ。オレの仕事だ」
鈴谷「唐突にかっこよくなるのやめて」
大井「かっこいいかしら?」
鈴谷「少なくともダメ上司よりは」
提督「褒めてねぇ」
鈴谷「命くらいは懸けてもいいかなって」
大井「はいはい。お熱いことで」ハッ
鈴谷「えー…?」ジトー
大井「な、なによ」
鈴谷「大井さんがそれ言うか、って」
大井「…フンッ」プイッ
鈴谷「そう言えばさ、これ聞いていいのか分かんないんだけどさ」
提督「なに?スリーサイズ?今食事中だから後でね?」
鈴谷「え、なにそれ気になる。…それは後で聞くけど、ほら、大井さんも作戦立案で司令部入りしてるじゃん。役被りじゃない?」
大井「ずけずけと…」
提督「別に一人って制約はない。むしろ、視点は多いほうがいいし、ダブルチェックにもなる。オレ一人でなんでも解決できるとは思っていないさ」
鈴谷「そっかそっか」
提督「それに大井と利根では役割を違うものにしようと思ってな。大井は一つのないしは短期の作戦の遂行、利根はマルチタスクを絡めた大局的な作戦。戦術と戦略と言えば分かりやすいか」
大井「私が戦術、と」
提督「ああ。お前はここでそこそこ長い。出てる海戦では利根の比にならん。さすれば、より経験を活かせる立ち位置にしたいと思ったんだが…どうだ?」
大井「どうって…別に不満はないわよ。海には出れるのかしら?私」
提督「そのつもり。お前が立てた作戦でお前が指揮する…なんてこともあるかもな。場所と装備と人員の指定はあるが、それ以外はお前の自由にできるようにしたい」
大井「楽したいの?」
提督「うん。オレも一人で向き合う「盤面」の数は減らしたくてな。多面打ち多面差しには慣れてはいるが…負担は軽いほうがいい」
大井「もっともね。いいわよ、それで」
提督「サンクー。助かるよ」
大井「それで?利根さんの戦闘服?」
提督「そ。利根型改二。艦種は航巡」
鈴谷「あれ。じゃあうちのお姉ちゃんに聞けばいいじゃん」
提督「あいつか。今晩暇?」
鈴谷「鈴谷はオールでオッケーだよ」
提督「お前じゃない」
鈴谷「ちぇっ」
大井(油断できない子ね…)ムッ
………
……
…
ガチャ
提督「たでーまー」
長門「む?提督か。ノックはしたらどうだ」
提督「ん」コンコン
長門「開けた後でなくてだな…それで、どうしたのだ?代理の任は順調だぞ」
提督「そっかそっか。ありがとな」
陸奥「提督お茶はいかがかしら?」
提督「えっと、ベンティバニラクリームフラペチーノノンバニラアドホワイトモカシロップアドヘーゼルナッツシロップウィズチョコレートチップウィズチョコレートソースエクストラホイップブラべミルクで」
陸奥「呪文唱えないで。コーヒーでいいわね?」
提督「フラペチーノ」
陸奥「ないわよそんなハイカラなもの。ホット?アイス?」
提督「アイス」
陸奥「はーい」
提督「ちょっとここ使うけどよろし?」
長門「ああ、勿論だ。私は必要か?」
提督「たぶん大丈夫」
長門「そうか、了解した」
提督「えっと~たしか雑誌はここに~」ガサゴソ
長門「なんで執務室からグラビアが出てくるのか問いただしてもいいか?」
提督「執務室は万能なんだよ。パーティーも出来れば料理も作れる、酒も飲める、お医者さんごっこも出来る、風呂にも入れる」
長門「またそんな見え透いた冗談を」
提督「あっはっは!」
陸奥「コーヒー入ったわ。応接机に置いとくわね?」カコン
提督「あざま。あ、そうそう陸奥。お前はこの中だったらどんな服がいい?」
陸奥「あら?えーっとそうねぇ。これなんて開放的じゃない?」ポスン
提督「やっぱ開放的なの選ぶなお前」フニッ
陸奥「セクシーじゃない?」
提督「セクシーだけれども」フニフニ
陸奥「不満?」
提督「なんかお前の将来が心配になってくる」サワサワ
長門「妹の体をまさぐってるお前が言うことではないと思うぞ」
提督「長門はどうよ?この中だったら」
長門「いや゛…そういうのは分からん。一番上の奴とかいいんじゃないか」
提督「姉妹で趣味が正反対だな」フム
長門「同型とはいえ、違う身だしな」
提督「そうか…。ならやはり筑摩にも聞かねばならんか」
陸奥「どういうこと?」
提督「利根型改二の話さ。利根を改二改装しようと思ってるんだが、まだ戦闘服のデザインが決まっていなくてな。ちょっとその資料あさりだ」
長門「…こちらから指定できるものなのか」
提督「ある程度は。やっぱり艦娘にフィットして動きやすいものにしなきゃだし、支給品とは別にまた戦闘服用の独自の生産ラインを整えるから、決まるまでは作れないんよ。……まぁ、他鎮守府よりはオレの意見が取り上げられやすい、ってのはあるが」
長門「そうか。これも積み上げた戦果のおかげだな」
提督「そうそ。信頼は実績で示すもの、っと」
コンコン
提督「はーいー」
最上『最上だよ。入っていいかな?』
提督「おお来たか。どーぞー」
ガチャ
最上「こんばんは提督。どうしたの?」
提督「お前に話があってな。まぁ座ってくれ」
最上「……提督の隣に?」
提督「どこでもいいけど。なんで?」キョトン
最上「なんか陸奥さんの肩に腕回しておっぱい鷲掴みにしてるから」
提督「お望みならお前にもやるけど?」フニフニ
陸奥「まるで私が望んでるからやったみたいな言い方やめて」
提督「拒絶しなかったやん」
陸奥「セクハラ親父の言い訳ね」
最上「かなり悪い人に見えるよ」
長門(その割にはくっつき過ぎじゃないか陸奥よ…?)
最上「じゃあ遠慮して反対側に」ポスン
提督「最上、お前は航巡だったな」
最上「うん?うん、そうだね。航巡だよ」
提督「実は利根が改二改装することになって、それが航巡なんだ」
最上「おお、おめでとう」
提督「しかしまだ計画段階で、未定なところも多い。そこでお前には、うちでただ一人の航巡としてアドバイスを貰いたくてな」
最上「そういうことね。うん、ボクでいいなら」
ガチャ
鈴谷「ただまー。連れてきたよー」
利根「失礼するぞ」
筑摩「失礼します」
大井「来たわよ」
鈴谷「結局来たのね」
大井「なによ悪い?」バチッ
鈴谷「ううん?別に」ニコニコ
利根(変な火花散っとるの)
長門「大人数になってきたな…」
提督「うん、揃ったか。さて、会議のお時間だ。概要はみんな知ってるとは思うが、利根型改二改装の計画が持ち上がった。拍手」
パチパチパチ…
利根「かたじけないのじゃ」
筑摩「もったいないお話です」ペコリ
提督「筑摩はもちろん、利根の実装までにまだ時間があり、いくつかの点で未定な部分がある。ここでは、戦闘服のデザインに焦点を当てて意見を集いたい」
利根「よろしく頼むのじゃ」
提督「今現在唯一の航巡である最上をアドバイザーに招いた。手っ取り早いのが、最上の戦闘服を参考にすることだしな。最上、その服について語ってくれ」
最上「語る…?」
提督「なんでもいいよ。着心地、見た目、素材…」
最上「なかなかに無茶ぶりが過ぎるね。……ボクのこの服は見ての通りショートパンツスタイル。重巡から航巡になるにあたって変わったのはカタパルトかな。瑞雲とか飛ばせるようになったのが大きな変更点だね」
利根「カタパルトの。吾輩も持ってはいるが…不調なのかなんなのか。役立たずなんじゃ」
提督「その辺の改良はあるとみていいだろう。航空戦艦も台頭するようになってきたんだし、カタパルトのデータも集まってるはず」
最上「着心地とかどうなの?今の服に不満とかある?」
利根「そうじゃの…脚が動かしづらいのじゃ」
大井「脚?」
提督「じゅうぶん開けてませんかね」
利根「これ、妙にぴっちりしとるから開脚しづらいんじゃ。こうやってほれ、脚を広げるとずり上がって尻が出る」プリンッ
筑摩「ね、姉さん…!?」
大井「ここにはセクハラ野郎がいること忘れてない?」
鈴谷「というか…わざと?」
利根「曲解じゃ。こんなんで鼻息荒くするほど女に飢えてはおらんじゃろ」
提督「うん。色気の欠片もねぇ」
陸奥「それもそれで傷つく反応ね」
鈴谷「ねぇ。さっきから思ってたんだけどなんで陸奥さん侍らせてるの」
陸奥「悪の幹部ごっこよ」ウフッ
大井「……」ムスー
鈴谷「……いっらァ」ピキピキ…
利根「邪推の好きな娘じゃの」
筑摩「……っ」ソワソワ
利根「…??」
鈴谷「じゃあ鈴谷反対側座るからっ」グイッ
大井「あ、ちょっ」
筑摩「あっ…」
ポスン
鈴谷「ふっふーん」
利根「続けていいかの」
提督「うん、いいよ」
長門(蚊帳の外だぞ陸奥よ…)
利根「願わくば腰回りの自由度を上げたいところじゃ」
提督「ほいほい。腕とかいいの?」
利根「少し成長したようじゃから、その手直しはしてほしいの。じゃがそれ以外には特にないの」
提督「ほむほむ。コンセプトカラーはそのままでいい?」
利根「そんなのあるのか。緑か?別に構わんぞ」
提督「おっけー。じゃあ腰回りが開放的なの…。どんなのがあるかな。おい、そこなお洒落さんども。出番だぞ」
鈴谷「ン」ピクッ
陸奥「あら」ピクッ
大井「っ」ピクッ
鈴谷「腰ねぇ。袴とか?隼鷹さんみたいな」
陸奥「スリットで可動範囲ひろげたミニスカート?摩耶ちゃんみたいな」
大井「スリットでひろげなくても、元からゆったりしたのでいいでしょ。比叡さんみたいな」
提督「ミニスカね。みんなミニスカだよな」
大井「濡れるのよ」
鈴谷「え?変態?」
大井「ち、違うわよッ!!そっちじゃないわよ!!あなたも分かるでしょ!?」クワッ
鈴谷「鈴谷女の子だから分かんな~い」
大井「女の子だから分かれって言って…何言わせてんのよ!?」
長門(なんと低レベルな争いだろう…)
陸奥「スカート長いと湿気て脚に貼り付くのよ。ちょっと不快なの」
提督「あーね。分かる気がする」
陸奥「飛鷹さん隼鷹さんが凄いわ。さすが、根がお嬢様なだけあるわね」
提督「忘れがちだけど隼鷹も育ちはいいんだよな」
陸奥「最近は本当に忘れるわよね。酒乱のせいで」
提督「あいつに酒を覚えさせたオレがバカだったよ…」
利根「うーむ、どれがいいか…。筑摩よ、お主はどう思う」
筑摩「え?私ですか?私は…姉さんの好きなのでいいですよ」
利根「お主はそればかりじゃの」
提督「今すぐに答えを出せとは言わんさ。なにせお前の勝負服になるわけだから。持ち帰ってじっくり考えてもらっても構わない」
利根「そうさせてもらおうかの。参考資料は貰ってもいいかの?」
提督「どうぞどうぞ。ファッション雑誌はそこら辺に溜まってる」
利根「なんであるんじゃ…」
長門(本当にな)
最上「ボクも相談には乗れるよ。……何をしていいのか分かんないけど。あ、これ資料ね」ドサッ
利根「かたじけないの」
筑摩「ありがとうございます」ペコリ
大井「……」
利根「これ以上お邪魔するのも無粋じゃの。吾輩らは戻る。みな、すまんの」
筑摩「わざわざありがとうございました」
ガチャ
パタン…
陸奥「気になるの?」
大井「っ。別に」プイッ
鈴谷「え?何が?」
大井「なんでもないわよ。いい加減そこ退きなさいよ」
鈴谷「えー?提督の隣が羨ましいの~?」ニヤニヤ
大井「違うわよ!!もう会議終わったでしょ!!座ってる必要ないでしょ!!」
提督「うん、そうだね」スクッ
鈴谷「えっ」
大井「あっ…」
陸奥「あらあら」クスクス
提督「じゃあ長門、引き続きここを任せるよ」
長門「ン。任された」
提督「さーって。酒乱の話出したから隼鷹が心配でならないぞい。鳳翔さんのとこ行ってくりゅ」
陸奥「そう言ってまた飲むんでしょ」
最上「飲みすぎないでね」ノシ
パタン
鈴谷「……で。やっぱり大井さんアレだよね?提督狙ってるよね?」ニマー
大井「うるさいわね。あなたはどうしてそんなに色ボケしてるのよ」
鈴谷「んー。もし死ぬなら恋の一つでもしておきたいから?」
大井「…呆れた」
陸奥「でもそれが真理かもしれないわね」
………
……
…
隼鷹「うぃ~っぷ!あ゛!提督ぅ~!呑んでる~?」ノシ
提督「ほれ見たことか!」
………
……
…
利根「これ…いや、これもなかなか…」ヨミヨミ
筑摩「……」
利根「しかしこれは合わんな…。洋風なのは吾輩の趣味に合わん」
筑摩「……」
利根「筑摩。筑摩はどうなのじゃ?」
筑摩「私は、姉さんの」
利根「待った。筑摩よ、お主それでいいのか?」
筑摩「え?…ええ、私は姉さんさえよければ、それで満足です」
利根「……。それは、言い訳に過ぎんの」
筑摩「そ、そんなことはないですよ?」タジッ
利根「服だけでない。他のことも、色々じゃ」
筑摩「………っ」ピクッ
利根「話してみぃ」
筑摩「……姉さん。姉さんは、提督の…あの人のことを、どう…思っていますか?」
利根「提督?ふむ、おかしな奴じゃ。お世辞にも軍人気質とは言えん、「昔」ではありえん奴じゃの。軟弱、軽薄、怠惰…。見方によっては、そう捉えられてもおかしくはないの」
筑摩「おまけに、女好きです」
利根「そうじゃの。ああまで露骨とは。尻を追いかけるどころか、尻を掴んで離さん。まッこと、遊び人じゃ」
筑摩「……」
利根「じゃが。あれは本物じゃ。「やる」となれば世界をひっくり返してでも「やる」人間じゃ。お主、提督と一局差したことはあるかの?」
筑摩「将棋ですか?いいえ」
利根「やり合えば分かる。あれは化け物じゃ。「将棋が上手い」などというレベルではない。恐ろしいまでの思考能力を内に秘めておった。温和で子供じみた面の下には、狡猾以上に獰猛な、あるいは悪魔と称せるほどに計算高い一面がある」
筑摩「悪魔…ですか」
利根「他意はない。化け物、悪魔、魔王…。人の世界では、不気味なほどに優秀な人間を、そう呼ぶこともあるそうじゃ。この国を、崩壊まで秒読みだったこの国を救っているのは、吾輩ら艦娘ではない。あやつじゃ」
筑摩「……」
利根「吾輩はこれから、そんな提督の「手駒」となる。はてさて、吾輩は「桂馬」か「香車」か、それとも「歩」か。碁石のように、いくつもある無価値な「石」かもしれんの」アハハ!
筑摩「そんな。謙遜しすぎです…!利根姉さんは、優秀だから、司令部に抜擢されたんでしょう…!?」
利根「どうでもよい。あやつが吾輩をどう思おうと、どうでもいいのじゃ。ただ…ただ、あやつの睨んでいる「盤面」の、「駒」となれる。類稀なる「名手」の「一手」となれる。それがただ、嬉しいのじゃ」フフフ
筑摩「よく…分かりません」
利根「どうあがこうと、艦娘は艦娘。己の中には「利根」がおる。「かつて」を駆けた、勇み争い武勲を挙げんとする「利根」がおる。それだけのことじゃ。……なるほどの。そういう意味でも、あやつは艦娘の「使い方」を心得ておるわ」
筑摩「…では、私は間違っているんでしょうか?」
利根「うむ?」
筑摩「私は…私は、あの人の、隣にいたいんです。あの人の背を、支える存在になりたい。おこがましくも、そう考えてしまうんです」
利根「……」
筑摩「あの人の、「特別」でいたいと…願ってしまうんです」
利根「色恋か」
筑摩「これがそうなんでしょうか?」
利根「さあの。吾輩はそれに疎い。そういう体質なのか、それともこの未熟な肉体が性を知らぬだけか。いずれにせよ、吾輩はあやつをそういう目では見れん」
筑摩「……あの人と会話すると言葉が詰まるんです。軽薄で締まりのない人なのに、目が離せなくなって。他の誰かが寄り添っていると、胸が苦しくなって」フルフル
利根「あー分かった分かった!分かったからもう止めるのじゃ。腹いっぱいじゃ」
筑摩「……。どうしたらいいでしょうか…」
利根「うーむ。いっそ、抱き着くなりしてみてはどうじゃ?あれは来るものを拒まん。なんなら触り返してくるぞ」
筑摩「そんな…!そんなはしたないこと…」ソワソワ
利根「重症じゃの。いっそ、鈴谷のように吹っ切れればよいものを」
筑摩「そんな。私は若くないですし…あんな過激な…」
利根「姉の前で言うことか。まだお主は「生まれて」間もない身じゃろうに」
筑摩「……すいません」
利根「よい。お主のその引っ込み思案、どうにかせねばの。今のところ、あれらの土俵にも立てておらんぞ」
筑摩「うぅ…」
利根「まずは意見を示すところからじゃ。せめてまともな返答をせい」
筑摩「はい」
利根「さ。では服の話に戻ろうかの。筑摩はこれをどう思う」
筑摩「えっと…」
………
……
…
チュンチュン…
コンコン
提督「はーいー」
妙高「おはようございます提督」
提督「おはざいます。今日もお天気ですってー」
妙高「それはいいですね。あとは「雨」が降らないといいですけど」
提督「物騒な…。もっと朗らかにしましょうや。お洗濯もの干しやすいですねとか」
妙高「じゃあ敵の物資を干上がらせましょう」
提督「怖いよー。朝から部下が怖いよー」グスグス
妙高「あなたの部下ですから」クスッ
神通「提督。朝のお飲み物は何になさいますか」
提督「トゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノ」
神通「コーヒーですね」
提督「誰も乗っかってくれねぇ…!」
妙高「どこで覚えたんですかそんな呪文」
提督「魔術研究所。またの名をスターバックヌ」
妙高「コーヒー、そんなにお好きなんですか?」
提督「嗜みだ嗜み。任務で護衛対象になった貿易会社おぼえてます?あそこの重役と「お話」するのに、ちょっと付け焼刃で」
妙高「本来はあなたのお仕事ではないのですが…」
提督「「話の分かる奴だ」って認識させるのが目的ですから。うちで誠意ある対応を見せることは、ひいては国の利益につながります。オレが顔出してお茶会を楽しむだけでプラスになるってんなら、利用しない手はないでしょう」
神通「それにしては俗すぎますけどね」
提督「幅広くカバーしてるんですー。若い子たちにチヤホヤされるために流行とか調べてるんですー」アッカンベー
神通「そうです、か」フフッ
提督「あいつ母親面しましたよ」
妙高「あなたは理屈っぽいだけで根は子供じみてますから。お守りが一人では足りないくらいです」
提督「ばぶー…」
妙高「気持ち悪いです」
コンコン
シツレイスルノジャ
提督「利根か。いいぞい」
利根「おはようなのじゃ」
提督「おはよう。早起きだな」
利根「総員起こしはもう過ぎておろうに」
提督「そうだったな」
利根「さて、昨日の今日ではあるが…」
提督「決まったと?」
利根「うむ!我ながら傑作じゃぞ!」
提督「おお、それは期待だ。さぞ映えるんだろう?ささ、図案を見せておくれ」
利根「う、うむ。これになるんじゃg」
ピピピピピッ…ピピピピピッ…
大淀『緊急。緊急。近海にて敵艦隊に動きあり。近海にて敵艦隊に動きあり』ザザッ
妙高「「雨あられ」ですか」
提督「っとォ。ほらぁ、妙高さんがフラグ立てるからぁ」
妙高「私のせいですか?」
提督「悪い、利根。その話はまた後でな!」
利根「勿論じゃ」
妙高「あ!その書類、私のデスクに置いておいてくださいね」
ドタドタドタ…
利根「……了解じゃ」
………
……
…
提督「そうか、そんなことも…あったなぁ」
秋雲「唐突に回想にするのは色んな人を困らせちゃうから悪手だよ」
提督「そんなこと言われても。ここまで遡らなきゃ筑摩と接点なかったんだもん」
秋雲「……本人の前で言っちゃダメだと思うよ」
筑摩「……っ」ピクッ
提督「えっと、筑摩。遅ればせながら改二おめでとう。これで利根型は二人とも改装したことになるな」
利根「待ちわびたぞ」
筑摩「…これでより一層、提督と、提督の……お力に………。……~~」ゴニョゴニョ
提督「……??うん、よろしくね?」
筑摩「はいっ!よろしくお願いします!」
利根(…あれから、吾輩の改二改装は滞りなく行われた。計算外だったのは、吾輩らの草案が手違いで提督の目を通さずに開発局まで届けられてしまったこと。おかげでお披露目は実装後のサプライズ形式になったのじゃ。……まぁ、むしろ計画通りで嬉しい計算違いになったのじゃ。なぜなら…)
提督「いやしかし、利根はともかく…利根も相当なんだが、筑摩のこれは…やべーな」
妙高「……」ゼック
筑摩「……///」モジモジ
提督「筑摩が恵体すぎて前掛けから腰が半分出てる…つかウエストとヒップの差がすごいのか。服としてはもしかしたらマトモでも、着てるお前がなかなか…」
妙高「…コ、コホン!提督、あまりそういうのは…」
筑摩「い、いいんです。大丈夫です」
妙高「え?」
提督「後ろ向いて?……うお、やっぱり尻が一部見えてる…」ワキワキ
妙高「……提督。その手はなんでしょうか?」
提督「触診」
妙高「へぇ…??」ジトー
提督「しかし…これはどっちのセンスなんだ?それとも話し合った結果か?目を通さなかったオレが悪いんだが…なぁ?」
秋雲「いやー。デッサンが捗るわ~」カキカキ
妙高「あなたまで…また不埒な絵画ですか」
秋雲「芸術ですー。あ、そうだ筑摩さん。受けと攻め、どっちがいい?」
筑摩「は、はい?」オロオロ
利根(……そう、吾輩の計算通り、筑摩はとんでもない恰好になった。やたらと際どく、自然と視線がいく。吾輩が着てもただ恰好いいだけじゃが、成熟した筑摩でこそ真価を発揮する服じゃ)
提督「これで上半身はしっかりとしているのがギャップになって一層エロく…。うーん、破廉恥」
筑摩「そ、そんな…。私はふしだらな女では…」オロオロ
提督「分かってる。お前の姉への献身を見ていれば、しっかりした倫理観の持ち主だとは分かっている。分かってはいるんだが…うーん」
秋雲「まともなくせにエロい恰好するのがいいんだよ。ね?」
提督「巻き込むな。その通りだけど」
利根(筑摩は致命的なまでに奥手じゃ。うっかりすると、すぐに吾輩を盾にする。これまでの日々を振り返っても、いっこうに提督との関係に進展がない。むしろ、増えてきた押しかけ女房志願どもに先を越され続け、「提督レース」では下位争いじゃ。世話焼きなところでは、そうそう引けを取るものではないんだがの…)ハァ
筑摩「…///」モジモジ
利根(が。この改二の戦闘服なら。周りよりも派手であれば。これなら、嫌でも目立つ。暇さえあれば女の体をまさぐる提督が、目をつけんわけがない。提督に近づく絶好の機会になる…!)
筑摩「その…提督は、こういうの、どう…思いますか?」モジッ
秋雲「うおっ。破壊力」
利根(そうじゃ筑摩…!それを武器に近づくんじゃ…!!)
提督「好きか大好きかで聞かれれば間違いなく大好き」
筑摩「そう…。ヨカッタ…」ホッ
利根(よいぞ、よいぞ…!)ワクワク
筑摩「じゃ、じゃあ…」ドキ…
ドキドキ…
ゴクン
筑摩「わ、私…」ドキドキ…
提督「?」
利根(言えっ!!言うんじゃ!!触っていいですよと言うんじゃ!!)
筑摩「と、利根姉さんと約束があるのでっ!!これでっ!!」グイッ
利根「え゛っ!?」グイー
バタンッ!
ドタドタドタ…
提督「……行っちゃった」
秋雲「あっちゃあ…失敗かぁ」
妙高「…ふぅ」ホッ
提督「???」
ドタドタドタ…
筑摩「ふぅ…!ふぅ…!!」ハァハァ
利根「なぜそこで攻めぬのじゃ!あれはまたとない機会じゃったろう!?」
筑摩「で、でもそんなこと言われても…!!」
利根「惜しいことを…。本当に惜しいことをしたの…」
筑摩「……ぅ、ぅぅ…」グスッ
利根「泣くくらいなら恥を捨てるのじゃ」
筑摩「……ぅぅ」
利根「…ハァ。さいわい、素行は良好じゃ。提督からの評価も、そう悪いものではあるまい。今後はその恰好なんじゃし、機会を狙っていくぞ」
筑摩「はい……」
利根(……幸先不安じゃの)ヤレヤレ
………
……
…
はい、こんな感じで。
あんまり無さそうなお話だったので。最後中途半端でごめんなさい。続きは本編で…。
過去編の中でも、発展期にあたる時期のお話です。時系列とナンバリングについてですが、ネタバレ回避のために本編を一通りやった後に開示いたします。夏までには必ず開示しますので、読みにくいでしょうがもう少々お待ちください。
利根姉さんが原作と違うのはデフォです。改めてボイス聞いたらとんでもなく明るくてびっくりしますた。
………。もっとカオスなの書きたい(^ω^)。
こんばんはー♪
筑摩さんの奥手ぶり…破天荒な艦娘が多い中で尊いですな(笑)
本編が楽しみです♪
なるほどなるほど?
つまり筑摩はムッツリスケベって認識でいいんですね?ね?
良いぞ、もっとやって下さい
お気に入り、評価、応援等をくださりありがとうございます!
筑摩はいわゆる「水面下組」です。やっぱり、鈴谷などのはっきりしたタイプもいれば、それに押されて踏み出せないタイプもいるのでは?と思いいたりました。
筑摩以外にもたくさんいます!ホントにたくさん…(把握しきれてるか怪しくなってきました)。本編にて色々やるつもりですので、お待ちいただけると嬉しいです!
次は海防艦です!よろしくお願いします!
初めて筑摩改二の格好見たときギョっとしたのを思い出したわ