2020-07-09 21:49:42 更新

前書き

補遺:
SCP-JPとほのパパとほのママと海未ママのお話をします、
幕間劇です。
全てのSCiPの設定は、話の都合上ある程度の改変が施されています。
加えて、ほのパパとほのママと海未ママも普段以上の性格になっています。

宜しくお願いします。



「もしも〜生まれ変わって〜も〜♪」



ほのママ「またわ〜たしにうまれ〜たぁ〜い♪」


ほのママ「このか〜らだとこのい〜ろぉで〜♪」


ほのママ「いきぬっ……ぬっ!?」ガッ


ほのママ「くっ……と、届いたのにっ、何か引っ掛かってる……っ!」グイッ


ほのママ「ぐぬぬぬっ!も、もうちょっと〜っ!!」グググッ


グラッ



ほのママ「うわっ!?」ヨロッ


ガシッ



ガタンッ!



ほのママ「〜ッッッ」



ほのママ「……あれ?」




ほのパパ「……」


ほのママ「あ、あなた!?」



ほのパパ「……」スッ


[大丈夫か?]


ほのママ「え、えぇ。ありがと」


ほのパパ「……」スッ


[椅子に乗って騒ぐな。危ないだろ]


ほのママ「さ、騒いでなんかないわよ!ちょっと探し物をしてたの!」


ほのパパ「……」スッ


[そんなとこ、もう何年も開けてなかっただろう。何を探してたんだ?]



ほのママ「それなんだけど、お客さんのお茶出しで使ってた急須が壊れちゃって」


ほのママ「で、もしかしたら、代わりのやつがここに有るかなぁって」


ほのパパ「……」


[そんなとこにある訳ないだろう。近くの瀬戸物屋で新しいの買ってこい]


ほのママ「えぇ〜、探せば有りそうじゃn──」


ゴトッ


ほのママ「え?」


ほのパパ「?」



……。


ほのママ「……なに?コレ」


ほのパパ「……」


[なんだ?]


ほのママ「いえ、何かの箱が転がって来たみたい」スッ


ほのママ「ん〜?」カパッ


ほのパパ「……」


[──あぁ、コレは、]



[熱燗器じゃないか?]


ほのママ「あ、そうそう!こんなの家にあったんだ」


ほのママ「──あら?徳利と盃もあるのね」


ほのパパ「……」


[ほぉ、こんなもの家にあったんだな。もしかして婆さんのか?]


ほのママ「どうだろう。……あ、盃になんか書いてある」


ほのママ「……"ど燗酒"?」


ほのパパ「……」


[なんだこれ、見た事ない銘柄だな]


ほのママ「……」


ほのママ「ねぇねぇ」


ほのパパ「?」


ほのママ「お店閉めたらさ、久しぶりに一杯やらない?」



ほのパパ「……」


[んっ、季節も丁度いいし、家で熱燗ってのも悪くはないな」


ほのママ「よし、決まりね♪」


ほのパパ「……」


[熱燗なんて久しぶりだな。去年の暮れに飲んで以来だ]


ほのママ「そうねぇ。あ〜♪なんだか楽しみ♪」


ほのパパ「……」


[……単純なヤツだ。]


───




「──さて、じゃあ飲みますか!」



ほのパパ「……」


[なぁ、穂乃果と雪穂は?]


ほのママ「穂乃果は部活で遅くなるって。雪穂は部屋にいるみたい」


ほのパパ「……」


[そりゃ静かでいいな]


ほのママ「ホントねぇ〜。穂乃果が居たらこんな事出来ないもん」


ほのパパ「……」


[まぁな。]



ほのママ「それじゃあ、カンパーイ!」チンッ


ほのパパ「……」


[盃を当てるな]


ほのママ「まぁまぁ、取り敢えず頂きましょ?」スッ


ほのパパ「……」スッ


グイッ


ほのママ「ッ、……はぁ。美味しい〜♪」


ほのパパ「……」フム


[あぁ。この季節には丁度いい]



ほのママ「はむっ」


ほのママ「ん〜!漬けホタテも美味しい〜♪さすが私ね!」


ほのパパ「……」


ほのママ「ん?どうしたの?」


ほのパパ「……」


[……いや。ちょっと前なら、こうして晩酌してると直ぐ穂乃果が寄ってきて、食わせろ食わせろって煩かったな。]


ほのママ「あはは、そうねぇ」



ほのママ「あの子に釣られて、雪穂までちょうだ〜いって起きて来るし、穂乃果は食べてる途中で寝ちゃうし」


ほのパパ「……」


[喧しくて、酒も満足に飲めなかったな]


ほのママ「ホント、懐かしいわねぇ」


ほのママ「……まぁ、今も偶に来るんだけどね」


ほのパパ「……」


[穂乃果がか?]


ほのママ「うぅん。雪穂が」



ほのパパ「……」


[ホントか?なんでまた]


ほのママ「勉強してるとね、無性にお酒のツマミが食べたくなるんだってさ」


ほのパパ「……」


[なんだそりゃ]


ほのママ「この間なんて、酒盗とカラスミ食べて『美味しいー!』なんて言ってたのよ?」


ほのパパ「……」


[ハハ、将来は飲んだくれだな]


ほのママ「あの子、意外と飲みそうよね?」



ほのママ「──あ、おつまみ冷めちゃうわ。早く食べましょ」


ほのパパ「……」


[そうだな。どれ、先ずはナスの揚げ浸しでも食うか]スッ


パクッ


ほのママ「……どぉ?」


ほのパパ「♪」


[うん、美味い。コレなら旬に関係なくいつでも食えるな。飯のオカズにもピッタリだ]



ほのママ「……」


ほのパパ「……?」


[なんだ?]


ほのママ「ううん。珍しく褒めるなぁって思ったの」


ほのパパ「……」


[そうか?]


ほのママ「ふふっ。そうなの♪」


ほのパパ「?」


ほのママ「……はぁ、いい夜風」



ほのパパ「……」カタッ


ほのママ「……」



ほのパパ「……」


[しかし、なんだな。」


ほのママ「へ?」


[この熱燗器、面白いな]


ほのママ「面白い?どこが?」



ほのパパ「……」


[見てみろ。ダイヤルの数値の部分だ]


ほのママ「ふん?」



(常温)【冷や】


33℃【日向燗(ひなたかん)】


37℃【人肌燗(ひとはだかん)】


40℃【ぬる燗】


45℃【上燗(じょうかん)】


50℃【熱燗(あつかん)】


55℃【飛び切り燗】



ほのママ「……なんか多いけど、普通じゃない?」


ほのパパ「……」


[ここまでは、普通の熱燗器と大体同じだ]


ほのママ「でしょ?」


ほのパパ「……」


[その下を見てみろ]


ほのママ「したぁ〜?」



100℃【や燗】


180℃【天ぷら燗】


700℃【アルミ燗】


1600℃【スチール燗】


--℃【---燗】



ほのママ「……」


ほのパパ「……」


[な?変だろ?]



ほのママ「──プッ」


「アッハッハッハッハwwwッ!!!」


ほのパパ「!?」


ほのママ「あ、アルミ燗にスチール燗ってぇwwwッ!!」


ほのパパ「……」


ほのママ「なにこれーっww!1600℃とかあり得ないでしょーっwww!!」


ほのママ「アッハッハッハッwwwッ!!」


ほのパパ「……」


[コイツの笑い上戸は相変わらずだな]



ほのパパ「……」


[しかし、擦れて読めないが、一番下は一体なんて書かれていたんだろうな]


ほのママ「ヒィーッwwお腹いたぁーいっwww」


ほのパパ「……」


[……聞いてないな。]


ほのパパ「……」


[きっと、冗談で表記したんだろうが、ここまで回すと本当にその温度になるのか?]


ほのパパ「……」


[試してみるか]



ほのパパ「……」グリグリッ


ガキッ


ほのパパ「!」グッグッ


[一番下には回らないのか]


ほのママ「イッヒッヒッヒィwwwッ!!」


ほのパパ「……」


[なら、ここはどうだ?]グリグリッ



180℃【天ぷら燗】



ほのパパ「……」


ほのママ「おー、天ぷら燗!面白そうね!」


ほのママ「コレで天ぷら作れるのかしら?」


ほのパパ「……」


[そんな訳ないだろう。大体、間口が小さ過ぎる]


ほのママ「そうよねぇ。プチトマト位しか入らなそう」


ほのパパ「……」


[トマトの天ぷらなんてあるのか?]



ほのママ「さぁ?なんなら、今度作ってみよっか?」


ほのパパ「……」


[俺は食わん。穂乃果にでも食わせてやれ。アイツならなんでも食うだろ]


ほのママ「分かった♪そうするわ。──ん?」


………グツグツグツ グツ グツ ッ!


ほのママ「うわっ!沸騰しちゃってるじゃない!」


ほのパパ「……っ」グリグリッ


[と言うか、沸くのが早過ぎないか?まだ3分も経ってないと思うんだが]



グツグツグツッ


ほのママ「ひぇ〜っ、こ、こんなの飲めるの?」


ほのパパ「……」


[一応、徳利に移してみるか]スッ


ほのママ「あ、熱いから気を付けてね?」


ほのパパ「……」ガシッ


ほのパパ「……?」


ほのママ「どうしたの?」



ほのパパ「……」


[……見た目の割には、全然熱を感じないな。断熱性は優れているみたいだ]


ほのママ「ホントに?すっごいグツグツ言ってるけど」


ほのパパ「……」スッ


トクトクッ


ほのママ「……手、大丈夫?」


ほのパパ「……」


[大丈夫だ。それに、熱かったら直ぐ置くだけだ]



ほのママ「そ、そう」


ほのパパ「……」


[どれ、今度は盃に]スッ


チョロチョロ


ほのママ「どう?熱くない?」


ほのパパ「……」


[……何故かは知らんが、徳利も大して熱くない。良くて熱燗程度だ。コレなら飲めるかも知れないな]


ほのママ「の、飲めそうだってっ……さっきまであんなに沸騰してたのを?」



ほのパパ「……」グッ


[よし、行くか]


ほのパパ「っ」グイッ


ほのママ「あっ!」


ゴクンッ


ほのママ「そんな一気に……」


ほのパパ「……」


ほのママ「や、やけどしてない?」


ほのパパ「……」



ほのパパ「♪」


[美味い!]



ほのママ「ほ、ほんとに?」


ほのパパ「〜♪」


[あぁ。飲んだ感じも、熱燗と大して変わらない温度だったが、旨味と風味がかなり増してる。コレは本当に美味い]


ほのママ「〜っ」


ほのパパ「♪♪」


[いやぁ、いいもん見つけたなぁ]


ほのママ「……っ」ゴクッ


ほのママ「わ、わたしも飲む!」スッ



チョロチョロ


ほのママ「……」


ほのパパ「……?」


[どうした?飲まないのか?]


ほのママ「い、いえ。なんだか怖くて」


ほのパパ「……」


[じゃあ寄越せ。俺が飲んでやる]


ほのママ「……やだ、私が飲む。」



ほのパパ「……」


[無理するな。お前は普通の熱燗で──]


ほのママ「んっ!」グイッ


ほのパパ「!」


ゴクンッ


ほのママ「──ッ!」


ほのパパ「……」


[どうだ?]


ほのママ「……」



ほのママ「美味しいーっ!!」



ほのパパ「……」


[ハハッ、だろ?]


ほのママ「なにこれぇー!?味が全然良くなってる!」


ほのパパ「……」


[なんでなんだろうな。何か、特殊な熱し方でもしてるのか?]


ほのママ「ねぇねぇ、」


ほのパパ「?」


ほのママ「来週さ、あの子も呼んでみない?」



ほのパパ「……」


[あの子って……園田さんの奥さんか?いきなり呼んだら迷惑だろ]


ほのママ「大丈夫よ。あの子の暇な時は、私だいたい分かってるから」


ほのパパ「……」


[ま、呼ぶだけ呼んでみたらいい]


ほのママ「オッケー♪じゃあ、アルミ燗とスチール燗は来週のお楽しみね」


ほのパパ「……」


ほのパパ「?」



ほのママ「なに?どうしたの?」


ほのパパ「……」


[気のせいか……お前、なんだか熱くないか?]


ほのママ「へ?なにが?」


ほのパパ「……」


[酒飲んだからか?]


ほのママ「ん〜、よく分かんないわ」


ほのママ「あ!それより、早くあの子に連絡しなきゃ!」スッ



タッタッタッタッ……、



ほのパパ「……」


[やっぱり、俺の気のせいか]


ほのパパ「……♪」


[しかし、確かに楽しみだな。]



「ただーいまぁー!」ガラガラッ



穂乃果「お父さんただいま!」


ほのパパ「……」


[おぅ。]



穂乃果「あ、美味しそうなの食べてる!」


ほのパパ「……」


[お前はまず風呂入ってこい]


穂乃果「ナスもーらい!」ヒョイ


ほのパパ「!?」


[あっ、俺の食いやがったな!?]


穂乃果「にっひっひ〜♪」


「お姉ちゃ〜ん?」スッ



穂乃果「ただーいま!」


雪穂「おかえり。──ん?」


ほのパパ「……」


雪穂「あー!お父さんだけずるーい!」


穂乃果「美味しいよ〜♪」


雪穂「お姉ちゃんも食べたの!?」


ほのパパ「……」


[……ハァ。やっぱり、昔と変わらんなぁ]



<穂乃果帰ったのー?


穂乃果「いるよー!」


雪穂「あ〜あ、私も食べたかったなぁ」


ほのパパ「……」


[別なのやるから、それで我慢しろ]


雪穂「やったぁー♪」


ほのパパ「……」


[ほれ、ここ片すぞ。雪穂は手伝え。穂乃果は風呂入ってこい]


穂乃果・雪穂『はーい!』



【一週間後】



「ごめんください。」



……。



海未ママ「……」


海未ママ「ごめんください」


……。


海未ママ「……」


海未ママ「……どうしたんでしょう。いつもなら出てくるのですが」


……。


海未ママ「……」スッ



ドタッ


海未ママ「!?」


「あ〜、いらっしゃ〜い」


ほのママ「あははは〜」


海未ママ「だ、大丈夫ですか!?どこか怪我でも──」


ほのママ「ちがうちが〜う、飲んでただけぇ〜」///


海未ママ「……もう、嗜んでらしたのですね」



ドタッ


海未ママ「え!?」


ほのパパ「……」///


[申し訳ない、ほんとうは素面で出迎えるつもりだったんですが、]


海未ママ「……マァ。」


ほのパパ「……」


[試しにチビチビやってるうちに、段々と止まらなくなってきて]


[気付けばまぁ、今はご覧の有り様で……ハハ、]


海未ママ「だ、大丈夫ですか?」



ほのママ「それより聞いてよぉ〜っ、コレ、ホントに美味しいのよぉ〜?」///


海未ママ「……あの、」


ほのママ「こぉ〜れぇ〜。このお酒〜♪」


ほのパパ「……」


[この熱燗器が、なかなか凄いんですよ]


ほのママ「そぉなんですよぉ〜」///


海未ママ「……きぃちゃん。貴方、少し飲み過ぎではありませんか?」



ほのママ「まぁまぁ〜、一口飲んでごらんあそばせぇ〜」


海未ママ「その前に、上がらせて頂いても宜しいでしょうか」


ほのママ「上がって〜、ほら、早く早く〜!」///


海未ママ「お邪魔致します。」


ほのパパ「……」


[狭い所で申し訳ないが、今日はゆっくりしていって下さい]



海未ママ「あ、ありがとうございます」


ほのママ「はい、どぉ〜ぞぉ〜♪」///


海未ママ「……」


海未ママ「では、頂きます」スッ


海未ママ(ど燗酒?)


ほのママ「美味しいわよぉ〜?」///


海未ママ(……これは、後でお説教ですね。)



海未ママ「……」


ゴクッ


海未ママ「……」


ほのママ「どぉ〜?」


海未ママ「……」




海未ママ「……感激、ですっ」プルプル


ほのママ「ほぇ?」



海未ママ「この、ほんのり温かい、そして優しく舌を撫でる様な感覚……」


海未ママ「呼吸をする度に、花の香りを携えた春風が、鼻腔をそよぐ様な……なんとも言えない心地よさ……」


海未ママ「それでいて、しっかりとした濃厚な……まるで、数多の食材から抽出した出汁の様な、奥深い味わい……」



海未ママ「……私、感激していますっ、」



ほのママ「美味しいでしょ〜?ほら、おつまみもあるからねぇ〜」///


海未ママ「いえ、お酒を頂きます!」


ほのママ「飲んべぇね〜」


ほのパパ「……」


[おぅ、そろそろ次試してみないか?]


ほのママ「あ、いいわねぇ〜♪」///



海未ママ「次?次とはなんの事でしょう?」


ほのママ「この熱燗器ねぇ、面白いのよぉ?」///


海未ママ「熱燗器が……面白い?」


ほのママ「ホラ!」



100℃【や燗】


180℃【天ぷら燗】


700℃【アルミ燗】


1600℃【スチール燗】




海未ママ「……」


ほのママ「ね?」


「……ぁ、あはっ、」


海未ママ「アッハッハッハッハ!」


ほのママ「ほらぁ〜、やっぱり面白いのよぉ〜」///


海未ママ「あっ、アルミ燗にぃwスチールぅwwwっ!」バシバシッ


ほのママ「アッハッハッハッwww!!」



ほのパパ「……」


[よし、次はアルミ燗だ]


ほのママ「おぉ〜♪」///


海未ママ「アルミ燗……っw」


ほのママ「まだ笑ってるぅwwwっ」


ほのパパ「……」グリグリッ



700℃【アルミ燗】



ほのママ「……ふぅ〜、」


ほのママ「ところでさぁ」


海未ママ「wっ……は、はい?」


ほのママ「海未ちゃんって、あなたと旦那さんのどっちに似たの?」


海未ママ「え、えぇ。あの子はどちらかと言うと、私よりも亭主に似たのだと思います」


海未ママ「そのお陰か、最近では、何かと細かいところに気が付く様になりまして」



ほのパパ「……」


[海未ちゃんは、うちのと違ってしっかりしてますからな]


海未ママ「……いえ。ああ見えて、あの子はとても寂しがり屋なものですから」


海未ママ「穂乃果ちゃんやことりちゃんが、いつも傍にいてくれるからこそ、本来の自分を保てているのでしょう」


ほのママ「……」


海未ママ「……そうですね、」



海未ママ「小さい頃のあの子は、何かというと直ぐに泣きついて来て、私のそばを離れなかったものです」


海未ママ「未知を知る事を怖がる余り、当時、あの子の世界は家の中だけでした」


ほのパパ「……」


海未ママ「ですが、穂乃果ちゃんやことりちゃんと出逢ってからは、少しずつ、その世界を広げて行く事が出来る様になり……」



海未ママ「気が付けば、もうすぐ私の元を巣立って行く。……そんな年齢が近づいて来てしまいました」



ほのママ「……もう、そんな歳なのよねぇ」


ほのパパ「……」チビ


[早いもんだ]


海未ママ「……えぇ、」


海未ママ「──あっ、ご、ごめんなさい。折角楽しい雰囲気でしたのに、」


ほのママ「なぁ〜に言ってんのよ!こう言う楽しみ方も、大人の醍醐味でしょ?」



ほのパパ「……」


[思い出語りなんて、酒の絶好の肴ですよ]


海未ママ「……ふふ、ありがとうございます」


海未ママ「お二人を見ていると、穂乃果ちゃんがあんなに素敵に育った理由が、とてもよく分かります」


ほのママ「アハハ、そ、そうかしら?」


ほのパパ「……」


[頭は少し足りないけどな。誰かと似て]



海未ママ「うふふっ、そんな事ありませんよ」


ほのママ「ちょっと〜?誰かってだれぇ〜?」


ほのパパ「……」


[頭が足りないのは、お前に似たんだと言ったんだ]


ほのママ「このぉ〜!饅頭おとこぉ〜!」


……ゴボゴボゴボッ



海未ママ「あら、沸いたようですね」


ほのママ「そうみたいね」


海未ママ「……」ジッ


海未ママ「!!?!?」


ほのパパ「……」


[どうです?]


海未ママ「あ、あのっ、」


ほのママ「へ?」



海未ママ「こ、コレは……見るからに不味い、と言いますか……」


ほのパパ「?」


[不味い?飲んでもいないのに?]


海未ママ「い、いえ。その不味いではなくて……」


海未ママ「その……、熱燗器の中が、燃え盛る溶鉱炉の様になっているのですが……」


ほのパパ「……」チラッ


グツグツグツグツッ



ほのパパ「……」


[……確かに。コレは不味いかもな]


海未ママ「ど、どうしましょう……」


「大丈夫ぅ〜」


ほのママ「取り敢えず徳利に移すわねぇ〜」スッ


ほのパパ「!」


[お、おいっ!!]


海未ママ「ちょっと!?」


トクトクトクッ


ほのママ「〜♪」



ほのパパ「〜っ」


[お前……っ」


海未ママ「あ、あなた……熱くないのですか?」


ほのママ「なにがぁ〜?」


海未ママ「なにがって……」


海未ママ(……昔から鈍感な子だとは思っていましたが、まさか、ここまでとは……)


ほのパパ「……」



ほのママ「よし。ハイ、注いであげる〜♪」


海未ママ「い、いえ!わたしはっ」


ほのママ「さぁ、アルミ燗をどぉーぞ!」


海未ママ「〜っ」チラッ


ほのパパ「……」フルフル


海未ママ「……くっ、」


海未ママ「い、頂き……ます。」スッ



ほのママ「召しあがれ〜♪」


海未ママ(……触った感じは、何故か先ほどと大差ない様な……コレなら、もしかすると)


ほのパパ「っ」


[無理しない方が……]


海未ママ「ふ、不肖、園田!参ります!」


ほのパパ「!」


ほのママ「いっけぇ〜♪」



海未ママ「──ッ!」グイッ


ゴックン!


海未ママ「〜っ」


海未ママ「」



海未ママ「!!?!?!?」ズガンッ



海未ママ「オーイシィイイイィイイイイィイイイイィイイイッッッ!!!!!!!!」


ほのパパ「!?」


ほのママ「うわっ!?」



海未ママ「なんですかコレ!!?なんなんですかっ!!?!?」


ほのママ「そ、そんなになの!?」


海未ママ「そんなにですっ!!!」


海未ママ「天上より滴り落ちた至高の滴っ!!!神々だけが口にする事を許された奇跡の雨垂れっ!!!」


海未ママ「楽園は人の世にあったんですっ!!!!」


ほのママ「ッッッ」



海未ママ「──ッ!」ゴクンッ


海未ママ「……幸せっ!!!幸せの繰り返しですぅっ!!!」


ほのパパ「〜っ!」スッ


[お、俺も飲む!]


ゴックン!



ほのパパ「」




ほのパパ「うんめぇえええええぇえええええええええっっっ!!!!!!!!!」


ほのママ「!!?」



ほのパパ「♡♡♡」


[嘘だろオイ!?今までの酒はなんだったんだ!?腐ってたのか!?]


海未ママ「あぅ〜っ、こ、この世にこんな美味しいお酒があったなんてぇ……っ!」


ほのママ「〜っ」


ほのママ「わ、わたしも飲むっ!」バッ


ゴックン!


ほのママ「」



ほのママ「キャアアァアアアアァアアアアアアアアァアアアアッッッ!!!!!!!!」



ほのママ「なによコレ!!?なんなの!?なんでこんなに美味しくなってるの!!?」


ほのパパ「♪♪♪」


[あぁ〜うめぇ。呑んでも呑んでも止まらねぇ♪]


海未ママ「うぅっ、感激ですぅ……っ」


ほのママ「もう私!徳利で呑むからっ!!」


ほのパパ「──ッ」


[熱燗器からジャバ〜♪]



海未ママ「……うぃっ、」///


海未ママ「わたし!燃え上がって来ました!」///


ほのママ「わたしもっ!」///


海未ママ「うふふふ〜♪きぃちゃんと二人で燃えあがろう〜♪」///


ほのママ「わ〜い♪」///


ほのパパ「〜♪」グビグビ


[うんめぇ〜。一生飲んでられんなぁ〜]///



……プスッ



ほのママ「うへぇ〜……てゆーかさぁ」///


ほのママ「なんかぁ、この部屋あっつくなぁ〜い?」プスップスッ


海未ママ「そ、そうですねぇ。もう帯取っちゃいますぅ」プスップスッ


ほのパパ「……」モクモク


[うまいっ!]


ほのママ「あっははは〜、それになんか煙くさぁい♪」プスップスッ



海未ママ「きっとぉ、わたしたちの情熱がぁ、アレになってるんですよぉ」プスップスッ


ほのパパ「〜っ!」ボッ


[旨すぎる……っ!]


ほのママ「ちょっとぉ〜、アレってなによぉ〜?」モクモク


海未ママ「アレはアレでぇ〜す」モクモク


ほのパパ「♪」メラメラッ


[もっと寄越せ!]



ほのママ「てゆ〜かぁ〜、貴方の服燃えてなぁ〜い?」モクモク


海未ママ「心が燃えてますからねぇ〜、心理的なアレですよぉ〜♪」モクモク


ほのママ「またアレって言ったぁ〜♪」ボッ


海未ママ「アレってなんか破廉恥ですよねぇ〜♪」ボッ


ほのパパ「〜♪」メラメラッ


[最高だっ!!!]



ほのママ「うへへ〜。……ねぇ、そろそろアレ行かなぁい?」メラメラ


海未ママ「アレってぇ〜、きぃちゃんまた破廉恥ワードですぅ〜♪」メラメラ


ほのママ「うふぅ♪違うのぉ、コレよコレ〜」メラメラ


ほのママ「スチール燗〜♪」メラメラ


海未ママ「す、スチール燗っwww」メラメラ


ほのパパ「!」メラメラ


[待たせたな!]



ガラガラッ



穂乃果「ただいまぁー!」


バタンッ


穂乃果「お母さーん!帰ったよー!」


海未「お邪魔します」


海未「すみません。夕飯時にお邪魔してしまいまして」


穂乃果「いやいや、海未ちゃんのお母さんも居るんだしさ、どうせならみんなでご飯食べようよ」



穂乃果「──ん?」クンクン


海未「え?」


穂乃果「……なんかさ、焦げ臭くない?」


海未「……確かに、」クンクン


穂乃果「茶の間から臭いがする様な……」スッ


穂乃果「お母さん、いるー?」


海未「お母様、迎えに来ましたよ?」



ほのママ「レッツスチールかぁ〜ん♪」メラメラ


海未ママ「ホントマジスチールゥww」メラメラ


ほのパパ「〜♪」メラメラ


[いざ、楽園へ♪]




穂乃果「」


海未「」



───




「──で?」



穂乃果「なんでこんな事になったのか、説明して貰えるかな?」


海未「……」



ほのパパ「……」


ほのママ「……」


海未ママ「……っ」





穂乃果「ねぇ、」


ほのママ「そ……それはぁ……その、」


ほのパパ「……」


穂乃果「それは、なに?」


ほのママ「え、えっとぉ……っ」


ほのパパ「……」


海未ママ「ッッッ」


海未「お母様。ダンマリを決め込んだ所で、何も進みはしませんよ」


海未ママ「〜っ」



スッ


「さっきから何騒いでるの?」


海未「おや、雪穂」


雪穂「あ、海未ちゃん。こんばんわ」


「──て、何これ!!?」


雪穂「畳真っ黒コゲじゃんっ!!!なんでっ!!?」


ほのママ「あ、あら雪穂、やっほー」


雪穂「お母さん達の服……ソレなに!?なんであっちこっち焦げてるの!!?ずぶ濡れだしっ!!」



穂乃果「……お母さん。」


ほのママ「っ!」ビクッ


ほのパパ「……」


海未ママ「あ、あの!」


穂乃果「……なんですか、」


海未ママ「わ、私から説明させて下さいっ」


海未「……」


雪穂「え?えっ?」



〜5分後〜



海未ママ「……以上です。」


海未「お母様。いくら何でも、少しばかり羽目を外し過ぎではありませんか?」


海未ママ「……ごめんなさい。」


海未「たまのお休みに、旧友と一献嗜む。それ自体は決して、悪い事とは思いません。」


海未「ですが、やはり物事には、全て限度と言うものがあると私は思います」


海未ママ「……はい、不覚でした」



雪穂「……」



穂乃果「大体さ!いい大人がこんなになるまで飲み過ぎるなんて、みっともないよ!」


ほのママ「……」


ほのパパ「……」


穂乃果「てゆーかっ!!なんで服とか畳とか燃えてるの!!?もしかして火遊びでもしてたのっ!!?」


穂乃果「もう少しで火事になるとこだったんだよ!!?分かってるのっ!!?」


ほのママ「……す、すみませんでした」


ほのパパ「……」


[申し訳ない]



穂乃果「いくらお酒が美味しいからって、コレは酷すぎるよっ!!!」


穂乃果「私はさ!二人のこと心配して言ってるんだからねっ!!!ちゃんと反省してよっ!!?」


ほのママ「(……ま、まさか、二人揃って穂乃果にお説教される日が来るだなんて……)」ヒソヒソ


ほのパパ「……」


[…………歳だな。]ヒソヒソ


穂乃果「ちょっと!聞いてるの!?」



雪穂「……」




雪穂(……なんだろう。今見てる絵が珍し過ぎて、焦げ臭いとかボヤ騒ぎだったとか、そんなのどうでも良くなってる)



穂乃果「──ッ!」ギャンギャン


ほのママ「っ」


ほのパパ「……」



海未「〜っ」クドクド


海未ママ「……」




雪穂「……」


雪穂(……小さい頃から、お酒のおつまみは好きでよく食べてたけど)


雪穂(お酒って、そんなに美味しいのかな)


雪穂「……」チラッ


雪穂(おつまみがあんなに美味しい上に、お酒まで美味しかったら……)



雪穂(──それって、最高じゃない?)




雪穂「っ」ゴクッ


雪穂「……ほんのちょっとだけなら、」スッ


カタッ


雪穂(た、たしか、この入れ物から、この小ちゃいお皿に注ぐんだよね?)クイッ


チョロチョロ


雪穂(つ、注いじゃったっ)


雪穂「……見てない、よね?」チラッ




穂乃果「二人とも!当分お酒は禁止っ!」


ほのママ「ぇえーっ!?」


ほのパパ「……っ」


[勘弁してくれ]


海未ママ「あ、あの……海未さん?出来れば今日のこと、お父様には……」


海未「言います」


海未ママ「そ、そんなぁ〜っ」



雪穂「〜っ」



雪穂(せーのっ!)



グビッ



雪穂「……」







「うまぁあああぁあああぁあああああああああぁああああいっっっ!!!!!!!!!」




【おわり】


後書き

SCP-1538-JP【ど燗酒】

ほのパパとほのママと海未ママ

〈本家〉
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1538-jp


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