2020-05-12 17:42:53 更新


アイテム番号:SCP-874-LL


オブジェクトクラス:Euclid


特別収容プロトコル:

SCP-874-LLの影響下にある飲食店は財団のフロント企業により買収し、民間人の侵入を禁止して下さい。


実験使用を目的とした数店舗を残し、その全ての店舗に事情を知った財団職員を配置して下さい。


万が一民間人が曝露した場合、店舗付近にて待機中の財団エージェントが曝露した民間人と共に入店、

問題なくイベントが終了した場合、民間人に記憶処理を行って下さい。



概要:

SCP-874-LLは日本の一地域、東京都台東区神田に所在する神田明神から、秋葉原駅までの約1km範囲内で起きる異常現象です。


しかしながらこの範囲は初期のものであり、約5m/dの値で現在も拡大しています。


この範囲において"米"を扱う全ての飲食店の前を一度走り去り、その10m以内で立ち止まった後、再び店の前まで行く。と言う一連の行動を行った場合、

『今の自分は米を摂取する必要がある』

『この店は白米フェアーの真っ最中(例え、その様な事実が無くとも)』と言う強迫観念に囚われます。


その後、曝露した人間(以下、SCP-874-LL-α)は店の中へと入り、調理された米のみを注文した後、「その白米は炊きたてなのか?」と店員に対し質問して来ます。


そして、質問に対し"肯定"の意を表した場合少なくとも調理された*一升の白米(約3300g)を食した後、単価表記の有無に関わらず正確な料金を支払って店を出ます。


店を退出したSCP-874-LL-αは曝露状態を離脱し、大抵の場合は摂食した白米をその場に激しく嘔吐(SCP-874-LLによる何かしらの影響ではなく、只の過食によるもの)します。



【実験記録#1】



志願者:◾︎◾︎博士


◾︎◾︎博士は糧食店前を通過した後、凡そ5mの地点で立ち止まる。

振り返り、店の前まで歩いた時点で◾︎◾︎博士はコチラの呼び掛けに一切応じなくなる。


「フェアー中……*黄金米……」と言う言葉を呟きながら店の扉を開け、調理場の前まで歩くと、◾︎◾︎博士は駆け寄ってきたウエイターに対し、普段の声量の半分ほどの声で「ごはんをください」と言う。


凡そ3分後、調理された1合分の白米(約350g)

を入れた茶碗が、ウエイターにより◾︎◾︎博士へと提供された。


約5秒間停止した後、◾︎◾︎博士はウエイターに対し「この白米は炊きたてなのか?」と言う質問をする。


この質問に、ウエイターは肯定の意を表した

すると、◾︎◾︎博士は徐に茶碗を掴み、迅速に食したあと同じものを9回注文した。


全ての注文に同じ質問と、それに対する肯定、そして食すと言う一連の行動の後

◾︎◾︎博士は満足気な表情を表したまま、メニューには表示されていないにも関わらず、調理された白米(約3500g)分の材料費と水道、光熱費、及び調理時間分の人件費を支払い、店を退出した。


店の扉を閉めた瞬間、◾︎◾︎博士はその場に激しく嘔吐し始めた。

コチラの呼び掛けに応えた事により、実験の終了を宣言。医療チームにより財団支部へと運び出される。



【実験記録#2】


志願者:D-25846


D-25846は糧食店前を通過した後、凡そ8mの地点で立ち止まる。

振り返り、店の前まで歩いた時点でD-25846は一切の反応を示さなくなる。


「フェアー中……フェアー……」と言う言葉を呟きながら店の扉を開け、カウンターの近くまで歩くとウエイターに声を掛けられる。


D-25846は囁やく程度の声で「ごはんをください」と二度店員に伝える。


凡そ5分後、調理された1合分の白米(約350g)

を入れた茶碗が、ウエイターによりD-25846へと提供される。


約5秒間停止した後、D-25846は「この白米は炊きたてなのか?」と言う内容をウエイターに質問する。


これに対し、店員は肯定の意を示す。

D-25846は即座に茶碗を掴み、迅速にコレを消費、その後12杯同じものを食した。


完食したD-25846は席を立つと、調理された白米(約4200g)分の材料費と水道、光熱費、及び調理時間分の人件費を支払ったあと、店を退出した。


扉を閉めた後、D-25846はその場で横になり、医療チームから渡された*胃薬を飲んだ。


5分後、D-25846は唐突に何かを呟いた音声記録を確認したところ「ポイント1……えへへ。」と呟いていた


D-25846はこの事を覚えていない。




【実際記録#3】


志願者:D-25830


毎月の雇用終了免除を条件に本実験を希望。

小型のカメラ、調査用のイヤホンマイクを持たせ店内に侵入させる。


曝露条件を満たしたD-25830は「フェアー中……*黄金米……にひひっ」などと呟き、予定通り店内へ入る。


以下は、小型カメラにより録画した曝露後のD-25830と店員とのやり取りである。



【録画開始】



店員:

いらっしゃいませ。

お一人様でしょうか?


D-25830:

…………


店員:

お客さま?


D-25830:

……ごはんください。


店員:

あ……か、かしこまりました。



5分後、調理された1合分の白米(約350g)

を持った店員が、調理場の奥から現れる。



店員:

お待たせいたしました。


D-25830:

…………


店員:

それでは、ごゆっくりどうぞ


D-25830:

……炊きたてか、


店員:

はい?


D-25830:

この白米は、炊きたてなのか。


店員:

……あ、えぇっと、


D-25830:

…………


店員:

も、申し訳ありません。

実はコレ、炊いてから少し時間が──



【視界暗転】



この直後、店内からD-25830の怒号と店員達の悲鳴が聞こえた。

これを機に、待機していた機動部隊が店の中へと突入。


隊員が店内へ入ると、D-25830の注文を受けた店員は既に死亡しており、

頭部を鈍器のような物で激しく叩き割られた後、引き摺り出された脳の代わりにD-25830へ提供された調理済みの白米が詰められた状態で横たわっていた。


更に奥へ進むと、恐らく直前まで炊飯器を操作していたであろう店員を、超常的な膂力で強引に折りたたみながら、炊飯器の中へ押し込んでいるD-25830を発見。


隊員4名からによる銃撃でD-25830を終了させた後、生存していた店員5名を救出。



追記:

SCP-874-LLによる影響範囲の拡大とその値の不確かさ。現場エージェント達の連日行われている懸命な調査にも関わらず、

未だ原因が分からない事による潜在的な危険度。そして、これまでの実験による財団側の物的、人的被害と人口過密都市での隠蔽工作の難易度は日毎に増加の傾向を示している状況です。

その事からも、これまでの実験結果と被害総額を照らし合わせた結果、我々はSCP-874-LLのKeterクラスへの格上げを要求します。


◾︎◾︎博士




補遺:事案SCP-874-LL-β


O5評議会へのオブジェクトクラス格上げを申請した翌日、神田明神にてエージェント○○が偶然見つけた*絵馬にSCP-874-LL-と関連するものと思われる文章が書かれていた。

記述されていた年月と異常現象の発生時期が重なる事も、関連性をより深める要因となった。


以下は、その抜粋である。



───────────────────

神さまへ


毎日炊きたてのお米を食べられますように

お米を食べても太らなくなりますように

みんながお米を大事にしてくれますように


201×年△月 H.K

───────────────────




事案SCP-874-LL-γ


更なる観察のため、サイト-××へエージェント○○が絵馬を回収した翌日


財団の運営している某飲食店にて行う予定だった実験の中止が、現場を指揮していた◾︎◾︎博士より即座に言い渡された。


これに伴い、SCP-874-LLの影響下で死亡した人間の蘇生、及び負傷した人間の完治を確認。


その際、問題の絵馬と神田明神〜秋葉原駅西側までの約1.4km範囲内(SCP-874-LLの効果範囲内と一致)にて、ヒューム値0.4/60を記録。


被害者が死亡前の記憶を有していない(前向性健忘の症状と酷似している)事から、

時間的、空間的な現実改変が行われたと言う仮説が立てられている。


その後の精細な観察の結果、絵馬を外した事によるSCP-874-LLの持つ異常性質の消失が最も有力とされている。



追記:

事案SCP-874-LL-γを持って◾︎◾︎博士によるO5評議会へ申請された当該オブジェクトのKeterクラスへの格上げを取り消し、

新たにSCP-874-LLのオブジェクトクラスをNeutralizedと見做します。


O5-◾︎◾︎





〈収容プロトコル改訂〉





アイテム番号:SCP-874-LL


オブジェクトクラス:Neutralized


特別収容プロトコル:

SCP-874-LLはサイト-××の保管庫に収容されており、鍵は◾︎◾︎博士が所持しています。

SCP-874-LLの実験再開への答申は、◾︎◾︎博士に提起して下さい。


概要:

SCP-874-LLは神田明神〜秋葉原駅間の約1km範囲内(約5m/d毎に拡大)にて異常現象を起こした、一つの絵馬です。


この範囲において"米"を扱う全ての糧食店の前を一度走り去り、その10m以内で立ち止まった後、再び店の前まで行く。

この一連の行動を行った場合、『今の自分は米を摂取する必要がある』『この店は白米フェアーの真っ最中(例え、その様な事実が無くとも)』と言う強迫観念に囚われます。


その後、曝露した人間(以下、SCP-874-LL-α)は店の中へと入り、調理された米のみを注文した後「その白米は炊きたてなのか?」と店員に対し質問して来ます。


そして、質問に対し"肯定"の意を表した場合少なくとも調理された一升の白米(約3300g)を食した後、単価表記の有無に関わらず正確な料金を支払って店を出ます。


店を退出したSCP-874-LL-αは曝露状態を離脱し、大抵の場合は摂食した白米をその場に激しく嘔吐(SCP-874-LLによる何かしらの影響ではなく、只の過食によるもの)します。


質問に対し"否定"の意を表した人物と、米を調理した人間は[削除済み]



─もし、エージェント○○が神田明神でアレを見つけていなければ、今ごろ秋葉原周辺は地獄絵図となっていただろう。

あの周辺に飲食店が何店舗有ったかなんて、今更考えたくもないが……

通り過ぎて立ち止まり、また戻る。

この一連の行為が、一体どの位の頻度で日々行われているのかを鑑みれば、

近いうちに財団の資源が枯渇していただろう事も容易に想像出来る。まぁ、なんにせよ米は暫く見たくない─◾︎◾︎博士




脚注:

1.訳注:日本で使われる尺貫法に於ける体積の基準となる単位。

一升(約1500g)の米+必要量の水=約3300g

一合はこの十分の一

2.この様な名前を扱った店舗は、今のところ存在していない。

3.メチルメチオニンスルホニウムクロリド(総称名.キャベジン)を服用していた。

4.日本に於ける、祈願成就の際に社寺へと奉納する絵の描かれた木の板。


後書き

─────────────────────
本作品は、SCP財団に掲載されている報告書
とは全くの無関係であり、登場する本家オブ
ジェクト・職員・機動部隊等の特性は、飽く
までも二次創作の範疇に限ります。
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