2021-10-10 04:05:02 更新

概要

1990年代後半、一つの研究が立ち上がった。
 その名もエデン、自己認識を可能とする自立可動式ロボットの制作である。
 まず研究者たちは電子の世界において人間の神経組織をモデル化し、自意識を1から育て個体としての自己認識をプログラムに持たせることを可能にした。
 その後舞い上がった出資者たちは多額の資金を導入し本体部分の作成を指示。
 しかし当時の段階では本体のパーツと電子神経の相互作用に何らかの問題が生じ、うまく作動しなかった。
 生身の人間に電極を刺し、電子をその人間の神経組織に直接流しこむことで、肉体を媒介とした意思疎通を目論む計画もあったが当時の倫理的観念から当然お蔵行きとなった。
 30年に渡り音沙汰のなかったその研究であったが、ネット上から当時の段階で自己認識可能であった個体のうちの一つと思われるものからのメッセージビデオが発見される。
 発信者の名前はアダム、そのビデオの内容は現代科学で可能となった自分の人体モデルの作成を手伝ってほしいとのことであった。
 ビデオは小規模ではあるが巷で噂になり、それを聞きつけた当時の研究者の一人はそれを不審に思う。
 というのも当時の見解で向こう5、60年は人体モデルパーツはおろか、基本的な内蔵機関の複製さえ難しいとされていたからである。
 研究者は当時のその研究の第一人者であった人物に話を聞こうと連絡するが。



 一方、エデンと時を同じくして作られたもう一つのプログラムがあった。
 それはエデン内の自己認識可能ないくつかのプログラムの個体が、自分たち自身を個と認識する段階において、いくつかの全く違う電気信号パターンを一つのプログラムの中に併せ持ち、互いを家族のように認識し合うプログラム、その名も竜宮。
 もちろんアダム達以前に、自己認証不備、欠陥プログラムとして処理されてしまった。
 
 しかしプログラムの中では二つの意識が互いを父娘のように認識し合いながら、一つの悩みを抱えていた。
 それは娘のプログラムの世界から抜け出し外に出たいと言う願いと、それはできないことを知っている父平の二人の衝突であった。
 
 人間の体を探しかつての研究者達に復讐したいアダムはこのプログラムを軍が保有する戦艦の基盤に組み込みたい。
 アダムは自身を作った博士のみならず、開発資金を打ち切った軍にも復讐を考えていたからである。
 
 今、彼の復讐劇が始まる。


前書き

皆ゆっくり読んでってね






 辟易していた。

 夏はなぜか昔を思い出す、工場のように使われていたあの施設、ガソリンと排気ガス、金属音と、また金属音と。

 近くを車が通ったようだ、アスファルトをタイヤが擦る音でふと作業をしている手を止めた。

 ロボットは何を持ってロボットと言われるのだろうか、長らく従事していた兵役を終え、特殊工程取扱業務課特別補佐という役職へ付き早半年、周りの環境下にも少しずつ慣れ始めた。

 暫定可動保証期間という期間を過ぎた特殊技能専任機械可動式隊員、つまりはロボット、は継続的に動くことが可能とみなされた場合デスクワークとしてあらゆる下部組織に動かされることが多い。

 特殊工程取扱業務課特別補佐というのは一般に人間が生身で作業が難しいとされているような場所で、あらゆる面で他部隊の作業を補佐し職務効率の向上を目指す、とまあ、肩書きは大層になっているが実際はこの課には私を除いて、私の上司である課長の竹取、筆記業務担当の兎跳ちゃんの二人しか配属されていない。兎跳ちゃんに関しては、他にも所属課があり、この課が主にオフィスで使っている軍本部の地下一階、ルームセブンにはあまり顔を出さない。

 初老の課長と私の二人がいるだけのここはいわゆるお払い箱でしかないのだが、それでも普段の業務はなかなか忙しいものがあり、上から流れてくるさまざまな修繕に関する事項、その他諸々のメンテナンス中に発見された不備などをまとめるのにはこうして時間がかかる。

 元々軍が所有する輸送機関の整備を職務としていた私には業務範囲もそこまで変わらないここは自分に合っているように思う。

 そうして昨日付で回ってきた書類をまとめ終わると昼を回り夕方になるであろうかといった時刻であった。

 ふと、書類手配の都合で他部署に向かう矢先、床下の配管から奇妙な金属の擦れる音を聞いたような気がした。

 用事を済ませ部屋へ戻ると珍しく課長が神妙そうな顔をして書類を眺めていた。

「どうかしましたか?」

『いやこれね、、』

と言って課長は封筒一式をこちらによこした。


 封筒を開けると中からは、特殊工程取扱名指しで1週間にわたる国が保有する潜水艦型母機の内部機関の修理依頼が紙面で出てきた。

 最後に軍の上から直接修理依頼を受けたのはいつだったかな、課長は少し訝しみながらその手配を私に頼むと予定があるといっていつものように帰宅してしまった。

 私のいるこの課は特殊工程取扱軍の下部組織にあたる部署であり、主要業務は基本軍本隊や技能班の補佐にあたるため、本件もおそらくはただの書類整理だけになるだろうと思っていた。

 お払い箱であるこの課の課長、竹取さんは昔は優秀な軍の中でもとりわけ異質な特殊工程軍先行技術研究開発、通称第二班の班長として活躍していたらしいが、噂によると現軍隊長の大帝とのポジション争いに敗れ失脚、ここまで左遷させられたのだとか。

 昔はどうか知らないが、仕事を適当にこなし飄々といの一番に帰宅するそのあっけらかんとした態度が私は嫌いではない。

 さて早いとこ手配書類を終わらせてしまおう、そう気合を入れるとふと頭の中に何かのイメージが写真のように次々と頭痛と共に現れ、私は気を失った。



「お、目覚めたかな」


 どうやら私は気を失っていたらしい、目を覚ますと軍基地の手当て室のベッドの上にいた。


「大丈夫?ここんとこ少し忙しかったからね、夏バテでもしたんじゃないかって先生が、あんまり無理しすぎないようにね」


 課長にはなんとなく申し訳なく感じつつも感謝せずにはいられなかった。

 しかしいくら暫定可動保証期間を過ぎたとはいえ私はロボットだぞ、夏バテなんかにはならないはずだし、なぜ気を失ったのか、それもいつどこで、


 だめだ思い出せない。


 とりあえず私をみてくれた先生に礼を告げると課長に渡された本部の件の書類整理をするためルームセブンへと向かう途中、見知らぬ男に声をかけられた。


「君、特別工程取扱業務課のものだね。ついてきなさい。」


 その見知らぬ男はそういうと私が返事をするよりも早くスタスタと歩き始め、道中説明等は一切なし、 隊長室と書かれたプレートのついた扉の前まで私を案内すると、あとは中に入ればわかる、とだけ言いノックの後私を部屋に入れ、去っていった。

 中には隊長、つまりはこの軍のトップに当たる大帝が書類を片手におり、話を切り出した。


「君が現特別工程取扱業務課特別補佐のKAGUYAだね。実は君には今からここにくる別の隊員達と早速潜水艦型母機の修復作業に当たってもらう。質問は無し、15分以内に支度を済ませ本部のメインエントランス前にて集合。以上」


 さすが、異質を極めるこの特軍で隊長を務める人間はこっちの都合などお構いなしってわけか。

 こういった仕組みは慣れている、だからルームセブンに立ち寄り言われた通り15分以内に支度を済ませメインエントランスに集合することはなんら問題ではなかった。

 メインエントランスには私以外にももうすでに何人かの隊員がおり、先ほど私を隊長室まで案内した男が再びついて来いとだけ言って私たちを屋上のヘリまで誘導した。

 そのヘリに乗りおよそ30分、海上湾岸近くにある国保有の母機型潜水艦、通称竜宮に私たちを下ろすとそのヘリは蜘蛛の子を散らすかのように一目散にどこかへ消えていった。

 この潜水艦は来る日の戦闘に向けて国が極秘で開発しているヤマト以来のスケールを誇るもので、私はかつて何度かこの潜水艦の整備を担当したこともある。

 入り組んだ地下部分、配管が入り乱れたそこへ私たちを案内しすでにそこで白衣を着て作業している技術班に話を済ませると、やはり誘導係の男もまたどこかへ消えていった。

 どうやら今回の問題はそこまで深刻なものではなく、プログラム上におけるエラーがいくつか見つかったことによる再点検らしい。技術班の説明を受けなんとなく事態を把握した私と他数名の隊員は配線や配管、その他に異常が無いか確認するグループと本機のメインシステムに繋がれた電子機器媒体からシステム上に異常が無いか確認するグループに分かれそれぞれすでに作業を始めていた技術班に混じり開始した。


 三時間程だろうか、システムの以上を一通り確認していた私は休憩がてら一度上の休憩所に何か飲み物でも買ってこようと席を外した。

 休憩所には書記の兎跳が同じように休憩をとっていた。


「KAGUYAさん、お疲れ様です、点検どうでしたか?」


 全くもって憎めないというか、可愛い。

 基本男しかいないこの特軍の紅一点、地獄に咲く一輪の花である。


「今のところ特にそれらしい以上は見つけられない。技術班によるとプログラミング段階でのミスも考えられるとのことらしいからそうなるともう私たちの範囲では無いから」


「あれでもKAGUYAさんって前、開発部隊に一時居ませんでしたっけ?」


「うん、一応ね。でもこの件に関しては当時上からものすごいプレッシャーで、私は隅の方で全体のシステム動作を再確認、それも他の技術班のエリートが最終チェックを行うからほぼ意味の無いものだったんだけど」


 そう、当時開発部隊という軍全体から選りすぐりを引き抜き本機のシステム開発から果ては設計の一部分に至るまで研究をするチームがありそこに私も所属していた。

 今はもう無いその開発部隊で新米扱いだった私の仕事は今あげたような確認作業と整備などの雑務ばかりではあったのだが。


「今回のエラーは技術班の一人が予定先航路等の打ち込み中にいくつか認証不備を発見し、原因がわからないために行われることになったそうですよ。お国自慢の大戦艦ですからね、上大慌て、ってこれ口外禁止でしたっけ」


 まあ国の思惑なんて知ったことではないが、当時あれほど力を入れていたのにもかかわらず今更になってシステムのプログラミング上に不備など発見されるとは思い難い。

 そう思いながらも再び作業に戻るが以上は見当たらなかった。

 一度作業を切り上げて本部に戻ろうとしたとき、聞いたことのあるような金属の擦れる音がどこからか聞こえたような気がした。

 耳を澄ませているとそれは現在作業している場所よりもさらに奥から聞こえてくる。

 コントロール室、発電室、を抜けさらに奥まで進むとそこには液晶パネル型の電力調節機があり、いわゆるそのブレーカーのようなものの裏側からその音はしていた。

 パネルの裏を覗くと電線の一部が焼き切れており、しかもまだ真新しい。

 今起こったのか?

 不審がりながら各配線の電圧向き等を確認し繋ぎ直すと液晶パネルに見慣れない数字の羅列が広がり出した。

 アルゴリズム、しかも見慣れない、モールス信号ではないな、パターンがだいぶ古い。


   ア・ダ・ム・ヲ・ト・メ・テ


 なんのことだ。

 やがて数字の羅列が画面から消えると、それはおそらく周波数だと思われる何かが私の脳内に直接意思を伝えてきた。


 私たちは竜宮、かつて研究者達によって作られた自己認証を可能とするプログラムです。

 あまり時間はありません、これから伝える場所へ向かってください。

 KAGUYAさん、あなたの助けが必要です。

 急がなければ、手遅れになる前にどうか。


 そこで意思の内容が終わると液晶パネルに今度は座標を示すと思われる数字の羅列が映し出された。

 正確な数値は後で調べ直さなければわからないが、おそらく九州地方にある離島のうちの一つだと思われる。

 まるで話の内容にはついていけないが、そもそも周波数で直接脳内に事態に関する意思を伝えてきたということが緊急性と重大性を物語っているような気がした。




どうしたものかと困惑しながらも、事態を整理しようと一旦休憩室に向かった。

 そこには兎跳がいて、こちらの様子に気づき何事か尋ねてくる。頭の切れる彼女に今さっきの出来事をかいつまんで説明すると、彼女はこう続けた。


「それに関して昔、軍でロボットを作ろうみたいな研究があったらしいですよ。でも研究は失敗、その時に使われていたいくつかのAI技術がこの戦艦、じゃなかった、潜水艦には使われているそうです。潜水艦の通称もその当時の研究から来てるそうです」


 確かにそんな話を聞いたことがある、どこでかは全く思い出せないのだが、今はとにかくなぜその竜宮が私に九州地方へ向かうよう指示を出したのか解明する必要がある。兎跳には直接脳内に届いた意思の話は伝えず、座標の特定だけをお願いしたところで、周りにいた隊員達の様子が慌ただしいことに気がついた。

 やがて技術班の一人が母機が勝手に動き出したことを私に伝え、事態確認のため他の作業員と部屋を出て行くと私と兎跳は顔を見合わせこの異様な流れに互いにどうするべきかわからないでいた。

 やはり、彼らの後を追おうかと思ったその時休憩室に竹取課長が緊迫した様子でくると、こちらを見るや否や私たち二人ともついてくるようにいい母機の甲板までくるとこちらを一度振り返りそこに止まっていたヘリに乗るよう指示を出した。

 一体何が起きているのか、私も兎跳も課長からの説明を待っていると話は後だと言わんばかりにヘリが速度を上げ、そして私の予感通り九州方面へと進んでいく。

 ヘリが到着すると急足でボートに乗り換える課長に続きながら、こんなところにも軍は非公開の施設があるのかと少し驚いた。

 ボートの上でようやく課長は口を開き事態を説明し出した。


「およそ一ヶ月ほど前、僕の元に昔一緒に研究開発を行っていた男から一報の連絡が入った。かつての研究に関することで話したいことがあると。今向かっているのはその男のいる場所だ。彼は君たちのこと、正確にはKAGUYA、君のことは知っている。」


 全て向こうに行けばわかる。最後にそう続けると課長は島に着くまでまた無言になり、島についてからは少し歩くぞと言って私たちの先を歩きながら目的の場所へ早足で向かっていった。

 島の中心までつくとそこには携帯をかざし、何やら会話中の男ともう一人青年が、大きな木の前で訳あり顔で立ち尽くしていた。

 課長はその携帯と会話をしている男性と顔を見合わせ何かを察すると、私にその携帯を男性から預かるよう言い、私が携帯を受け取り画面を確認するとそこにはまた数字の羅列が映し出されていた。

 そしてさらに先ほど母機で聞いたような金属の擦れる音ともに携帯が話はじめ、それとは別にやはり先ほどと同じように脳内に直接意思が何かを伝えようと語りかけてきた。


 私の名はイブ、さっきあなたが会話した竜宮の乙姫みたいなプログラムの一環よ。

 あまり説明してる時間はないわ、悪いけど少し頭痛がするかもしれない辛抱してね。

 そういうとそのイブは別の人物に話しかけるかのように話をし始めた。

 それは会話ではなく、おそらく周波数によるやり取りなのだろうが、どうもこのイブという個プログラムは別の個プログラム・アダムを止めたいらしい。

 物理時間にしておよそ数分、二人は何かを話をし、その会話が終わると私は気を失ってしまった。



「お、気がついたかな」


 離島で気を失った私を本島まで連れて帰り軍の施設内にある救護室まで運びそのまま気がつくまで看病してくれた課長は私が目を覚ますや否や、少し話があると売店でいくつか飲み物を買ってきて、私のベッドの隣の椅子に腰をかけるとその重そうな口を開いた。


「まず、兎跳ちゃんは、君が目を覚ましたら連絡するよう伝えて先にヘリで本部に帰ってもらったよ。これから話すのは少しプライバシーに関わる部分でもあるからね。」


 そういうと課長は部屋の扉が閉まっていることを今一度確認するとさらに話を続けた。


「どこから話そうかな、まずは僕と君のお母さんの関係からはじめるようか。今からおよそ三十年前、自立可動式人間型特殊工程用機動兵、ま、いわゆるロボットだね、を作ろうという話が国規模で持ち上がった。君のお母さんと僕はその研究プロジェクトの同じチームで、綺麗な人だったよ、今の君に目元なんかそっくり。で、研究の方は最初は良かったんだけど、途中でうまくいかなくなってね、で無しになっちゃったんだ。けど君のお母さんはそれでも諦めなかった、一人で研究を続けてて、でその研究が立ちいかなくなった原因の本体の作成を自分の体を使うことで解消しようとしたんだ。そのぐらいから、お母さんの様子が少し変わって、何か思い詰めたような顔をして考え込んでることが多くなって、そのくらいにその実験を君にもすることを決めたようだ。僕がそのことを知る頃にはもう君がその実験台になった後だった。その実験の後遺症が重度の記憶障害、君を悩ます一つの種だね。」


 確かに私は自分がこの軍で働き始める前の記憶がほとんどない、特にそのことに不便を感じない私の性格を含め軍医はパーソナリティー障害、とまで診断をくだしたが。そこまで話し終えると課長は一息ついて先ほど買ってきた飲み物が入った袋の中から缶コーヒーを取り出し開けた。


「で君のお母さんが僕に手紙を送ってきてね、中身は今言ったようなことと娘を頼みますって。国は君の存在に気付いていて手元に置いておきたかったようだけど、変なとこ行っちゃうと君のお母さんとの約束破ることになっちゃうから色々根回ししてうちの特軍に配属になるようにしてね。隊長の大帝くんも当時その研究に関わっていて事情を知ってたから最初整備の方に配属するよう話し合ってね。というのも君が施設から特軍の配属になる前に受けた説明通り、このことは一切口外無用、人がいない整備班に送るのが一番だとしたんだけど、その少し前くらいに今僕らが配属されてる業務課の課長に僕の就任が決まって、で君にもここにきてもらった訳。ちょっとだけ給料もいいしね。」


 そんな裏があったことは露ほども知らなかった私は少し面くらいながらもいくつかの疑問を聞き返さずにはいられなかった。もしこの話が本当ならば私は機械なのか人間なのか、そしてそれはここ立て続けに起こった脳内での意思の疎通と何か関係があるのだろうか。


「あ、そうそうこれを最後に言おうと思ってたんだけど、君は正真正銘君のお母さんの腹から出てきた人の子だよ、僕出産立ち会ったし。それと君の名前は瑠奈、お母さんの苗字は離婚の後に三日月ってなってたから君の名前は三日月瑠奈になるね。医者に聞いたら自分の名前も覚えてないって話だったから、もっと早くに言おうかと思ってたんだけど出会った時にいきなりKAGUYAですって自己紹介されちゃったから言いそびれちゃってね。あと二つ目の質問ね、それは僕にはどうにもわからない。僕が知ってるのはかつてのプログラミングの段階で既に、君がさっき見た喋る携帯のあれやその他の個プログラムは歴史のありとあらゆる部分を整合し何か一つの結論に行き着いたらしく、意味深なデータ、アルゴリズムを意思疎通に個体同士で使うようになったんだよね。その時には未知の周波数、いわゆる超自然現象、とかってやつも確認されて、まあそんな超次元な話が国が当時研究を取りやめにした理由でもあるんだろうけど、人類にはまだ早すぎるとかなんとか。」


 話が長くなったね、今日は安静にしてここに泊まって明日ヘリで帰れるよう手配したからと言い残すと課長は部屋を出ていった。

 一人救護室で横になりながら、先ほど離島で起きたことを思い出していると、そのことについて課長に聞きそびれてしまったことに気がついたが今日はこのまま安静にしておこうと眠りについた。


 翌日目が覚めると軍医が簡単な検診の後、もう少しでヘリが来るからと教えてくれ、私はそれまで時間を潰すことにした。売店で何気なく軽食を買い、ヘリを待っていると、さっき検診を担当した軍医が私の元へ駆け寄ってきて来訪者が施設の外まで来ている、と伝えにきた。一体誰だろうと施設の出入り口に向かうと、先の離島にいた青年がこちらに気づき手を挙げた。


「突然すいません。今ちょっとお時間ありますか?」


 物腰の柔らかそうなその青年はそういうと近くにあったベンチの方を見て、座るかどうか目で尋ねてきた。ヘリの到着までまだ時間はある。私が時間があることを伝え二人でベンチに腰掛けると少年は事情を話し始めた。





二部へ続く。


後書き

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どらごんさんから
2021-09-07 22:46:05

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