2021-10-04 09:01:44 更新

概要

前書いたやつは会話主体だったので文体に、ちょこちょこ書いていくので皆ゆっくりしてってね


天使なんかじゃなくても



 エイミー:不登校気味のポッチャリ女子、ドラムを幼い頃から続けていてそれだけが唯一の生き甲斐。

 

 由香子:お金持ちのお嬢様、学園で好きな男子を落とすため、エイミーを誘いバンド結成を決意、ボーカル担当。

 

 おかまん:そんな二人が行ったバンドスタジオ「ジャクソンジャンクション」のスタッフ、由香子とエイミーに将来性を感じベースとして参加。あのたまに見かける巧い人。


 





 学校なんて大嫌いだった。

 自分の容姿は、可愛いーー!!!と言われても、綺麗と言われることはない。

 いつも、自分が何を言ってるかわかってるんだろうかこいつらは、そんな風に思ってた。

 鏡に映る自分は、面白いポッチャリなら自分の居場所はいわゆる陽キャグループなのだと中学に上がる前には教えてくれた。

 そうしているのが嫌になり、部屋で一人隠キャアニオタ街道まっしぐらでもいいやと振り切ったのは中学に入学して夏休みという人をダメにする長期休暇をもらってからだったと思う。

 家に引きこもってても、たかが学校くらいとパパもママも何も言わなかった、そのうち高校にでも入れば友達ができるわよって、でもそんなことはなかった。

 卑屈にしかし快活にオタク道を極めていた私は秋葉原から池袋まで幅広く推しのグッズ収集からイベントに人生を費やし、気がつけば高校に入って2回目の春休みも終わりが近づこうとしていた。

 うちの学校は強制で部活に入ることが義務付けてられており、しかしおよそ私のような何一つ学校行事に関わりたくない人の為の救済措置として軽音楽部が用意されていた。

 真面目にやっている人もいるが、幽霊部員の存在を寛容に受け止めてくれるこの高校で唯一の部活だ。

 一応小さい頃からドラムを習っているので入部当初は圧倒的なリズム隊の希少性からバンドの誘いを受けてはいたがやんわりと断ると向こうもなんとなく私のヒッキー体質を察したように思う、今では誰も声をかけては来なくなったし、ラインのグループって多分入部当初にできたやつ以外にあるんだよね、それが通知をすることはなかった。

 こうしていると基本悲しい人生に見られがちだが、別にアニメという趣味がある以上そんなことはなく、オタクのあなたは共感してもらえるのでは無いかと。

 一応おしゃれにも興味はある、だからこうして休日に服を買いに出掛けているわけだが、私の場合、地味にある身長と、この、腹回りの、その、ふくよかな裕福さの象徴が原因で基本市販のお店UNI@LOなどではサイズがないこともあり、私服ぐらいは可愛いものが着たいという願望も合わさって行きつけの海外輸入ブランドが置いてある服屋、「ハッピーブルーベリー」で服を買っている、そこそこ値が張るのでいつもではないが。

 まあ春休み最後のお出かけだ、貯金を崩そうじゃないか。

 

 


 どれにしようかしら。

 春先のことも考えてトレンチコートなんて、でももしかしたらあいつとデートなんてあるかもしれないしもっとカジュアルな方がいいかしら。

 春休みの終わりに学校が始まると面倒になるからと私由香子は夏に向けての服を探しに行きつけの服屋「ハッピーブルーベリー」に来ていた。

 服を選ぶのはいつも大変ね、といつものように思いながら物色していると、入り口の方にみたことのある顔の女の子が私と同じように服を買いに来ていた。

 確かあれ、隣のクラスのエイミーさんじゃなかったかしら、入学以来あまりお見かけしないように思うけど、私と同じ服屋なんてなかなか見る目があるわね。

 そう思った私は服を選ぶのをやめ少しの興味本位とともに彼女に話しかけることにした。


「おほんっ。(咳払い)

 こんにちは、確か葉山エイミーさんよね?

 私霧谷由香子、由香子でいいわ」


 彼女は驚きを隠せないようで慌てふためいている、一体なんだというのかしら、別に構わないけど。

 彼女もよくここに足を運ぶらしい、なんでも他の店の可愛い服は基本サイズが合わないのだとか、お気の毒に。

 気がつくと話が弾み意気投合した私たちは二人で服を選びあったり、なんで今まで出会わなかったのか不思議ねなんて言い合ったり、さらには二人で斜向かいにあるご飯屋さんでお茶することになった。エイミーさんによるとこの店はハンバーガーが美味しく有名でテイクアウトする人も多いんだとか、確かに今テイクアウトして出てった妊婦さんも常連のような感じがした。

 



 全く、なんでったって私が休日に同級生と関わり合わなければならないのか。

 そう思ったのは最初の方だけで、店先で偶然出会った彼女、霧谷さんは話し出してみると意外と話しやすく、私を愚かな加糖生物が如く見下してくる他の同級生みたいな嫌な感じもしない。

 むしろ今まで他の同級生たちとは服の趣味があまり被らなくてつまらなかったと嬉しそうにしている、まあ私とサイズは似ても似つかないんだけど。

 ちなみに彼女はその容姿と桁違いのお嬢様ぶりから入学初日から男子をはじめとする全校生徒の注目を一身に集めていた。

 そのあとは知らない、なぜなら学校に行ってないから。

 しかしお会計の時に金に輝くカードで会計をしている姿を見てその口ぶりなどの全てを理解した、本物だ。

 何気なくこのあともし時間あるならと、私が買い物の後に元々行く予定だったこの服屋の斜向かいのご飯やさんに誘うとそんなところがあったとは知らない様子で驚いていた。

 その店のハンバーガーを一度でも食べたのなら某ピエロのハンバーガーはもはや食べられなくなるという、いつもここの服屋に来た際必ず立ち寄る私のおすすめの場所である。

 ほら、今出てきたシロガネーゼ風の妊婦さんもご機嫌でテイクアウトしている、あれ?あの人前も見かけたことある? まあいっか。

 そうして二人でその店に入ると私は葉山さんが量を食べれないというのではんぶんこする用に特大サイズのハンバーガー、霧谷さんはオニオンリングとポテト、それとそれぞれドリンクを頼んだ。

 二人で注文した料理を美味しくいただきながら、あれこれ話していると、たまたま勉強の話になり、未だに宿題の終わってない私がそのことを愚痴ると彼女が勉強を私に教えるといってきた。

 しかし学校にほとんど行っていない私はもはやどこの何がわからないのかもわからない、ので流石にその私に勉強を教えてとはいえないでいると、彼女は彼女の家庭教師が人に勉強を教えるのは自分の理解度を把握しさらに体系化するにあたって非常に役立つと言っていた、とサラッといった。めっちゃサラッと。

 しかも学年5番以下になったことないとか、まじかよ。

 彼女の金持ちプラス優等生ぶりを垣間見ると、その日はもういい時間だったのでそれで切り上げ、翌日私は霧谷さんのうちを訪ねることになった。

 うちに帰り、今日あったことと明日その彼女のうちに勉強を教えてもらいに行くことになったことをママに話すと、神はいらっしゃったと大はしゃぎしている、いやオーバーオーバー。


 


 普段あまり私が友達をうちに呼ばないので、うちに帰って今日会ったことを話すとお母さんはご機嫌で、これから明日のためにケーキでも焼こうかしらなんて言っている。

 まあケーキは嫌いではないのだけれど。

 勉強を教えるという目的のためとはいえ家に友達を呼んだのは小学校の時以来だったので私も明日が楽しみだ、といつもより早めに就寝し、翌日パラパラと過去の部分を遡って復習していると呼び鈴が鳴ったので彼女を出迎えるために玄関まで降りて行った。

 葉山さんは昨日の服屋で買った服を早速着てきていた。

なんでも家に服を干す習慣はなく乾燥機をいつも使うので糊抜きして次の日着て行きたい時は非常に便利らしい。

 彼女が手土産でカステラを持ってきてくれていたがちょうどうちの母がケーキを焼いてしまっていることを話すとどっちも食べるから安心したまえと嬉しそうにしていた。

 部屋に案内して早速勉強を教えていると、なるほど英語以外はなかなか壊滅的ね。英語はお母さんがオーストラリア生まれなので教えてくれるらしい、それ以外は、まあなんとかなるわよ。多分。

 そうして二人で中学生の教科書を引っ張り出してきて勉強を一通り終えて、二人でカステラ、葉山さんはケーキも一緒に食べながら、中学時代の話をした。

 葉山さんは小学校の終わりからアニメに没頭しだし、学校にもあまり行かなくなったらしい。

 でもお父さんもお母さんも何も言わなかったらしく、暖かく見守ってくれたそうだ。

 唯一の趣味は子供の頃から習い続けているドラムらしくて、それがあればたとえお父さんお母さんと喧嘩して気まずい雰囲気が続いても全てを忘れさせてくれるのだとか。

 ちょっと待って!!??

 ドラム!!??



 由香子のお母さんが作ったケーキはいちごの乗ったショートケーキでお店のやつみたいに美味しかった。

 うちのママが持たせてくれたカステラは、せっかくそんなお嬢さん家に行くのだからと百貨店で買ってきた少しお高めなやつでそちらもなかなかお上品な味わいだったと言っておこう。

 不意に自分たちの中学時代の話をする流れになり、由香子は習い事漬けであまり思い出はないと少し寂しそうに言った。

 私の方はというと見ての通りヲタ街道まっしぐらのヒッキーなのだが、小さい頃から唯一続けているドラムが自慢だと話すと、珍しく由香子が驚いた様子でさらに何かを考え込んでいる。

 訳を聞くと由香子はどうもバンドがしたいらしい。

 部屋に入った時から気になってはいたのだが、部屋の隅には買ったばかりであろう、レスポールの高そうなギターが置いてある。

 由香子はギターボーカルをやりたいらしく、最近ためていたお小遣いで自分で買ったのだとか。

 私が各家庭におけるお小遣いの格差について疑問を抱かざるをえなければならない事態についてはさておき、なぜ由香子はバンドなんて始めようと思ったのだろう、お嬢様ってバンドとか興味あるもんなのか。

 それにこんな言い方はあれだが、それなりにドラムをやっている経験から言うと、素人のギタボなんて聞けたもんじゃない。

 教室のイベントにごくたまに参加した時などお目にかかる彼らにはいつももっと仕上げてこいよと思わざるを得ない。

 そんなわけでなんとなくバンドの話に消極的にしていると由香子が赤面がちになぜバンドがしたいのか訳を話してくれた。

 なんでも他のクラスに好きな男の子がいて、どうアタックしていいのかわからず学祭でバンドとして演奏すればとりあえず存在に気づいてもらえるのではないか、とのことらしい。

 何それ、可愛い。

 というかそんなことしなくても向こうは確実に由香子のことは知ってはいると思うのだが。というか皆知ってる。

 しかし、そんな理由を言われちゃおしまいだ、ここで彼女を手助けしなければ家に帰って無惨様にお叱りを受けてしまう、いや失敬、なんでも無いですすいません。

 由香子がステージで歌うところを想像するとなかなか絵になるものがあるななんて思いながら、演奏を聞かせてもらった。

 うん、練習は必要だな。



 私が最近練習している曲を弾き語ると葉山さんはバンドをやるかどうかはひとまず置いといて練習には付き合ってくれるという。むしろ食い気味に練習しようといってきた、なんだか知らないけど、乗り気になってくれたのはよかったわ。

 そんなこんなで次週は私が葉山さんちにお邪魔することになった。

 彼女は自分のドラムセットがうちにあるらしい。

 翌週葉山さんちを訪ねると早速私たちは葉山さんがドラムセットを置いているガレージで練習をすることになった。

 そこにはギターと、アンプもいくつか置いてあり、アンプはうちにあるやつよりも一回り大きいものだった。

 葉山さんのふたつ年上のお兄さんが使っていたものらしい。

 音が小さいとドラムで聞こえなくなるからと葉山さんは私のギターをそれに繋ぐと細かい設定もしてくれた。

 えっと、ベースを少し抑え目でトレブルとミドルを少し多めに、リバーブとアンビエンスをかけて。

 そうして葉山さんのドラムの音に合わせて小一時間ほど練習すると、葉山さんはお腹が減ったと言って二人で葉山さんのお母さんが用意してくれたお菓子をいただくことになった。

 なんだか耳鳴りが少しすると話すと、初めてドラムとかと音合わせをして大きな音を聞き続けているからで、すぐに治るし、問題ないと葉山さんは説明してくれた。

 それにしてもよく食べるわね葉山さん。



 由香子と練習を終えると最高に腹が減ったってやつだ、ったので二人でうちのママが用意してくれたパンケーキをおやつに食べることにした。

 由香子はギターを弾いていると歌声が安定しないし、時々私のドラムともズレているのでまだまだ練習が必要だなんて話すと、本人は根が真面目なのかメモまで取っている。

 そして今度は彼女が勉強を教える番になった。

 全くこんな記号だらけの文、一体いつどこで使うと言うのやら。

 由香子は一度勉強を教え出すとスパルタモードに入るのか容赦がない、口調もいつものお嬢様風からもはやザマス系にまで進化してしまっている。

 ちょっと面白いからあえては言わないけれど。

 それにしても同級はこんなことを毎日学校でやっているのか、大変だなこれ、何この因数分解ってやつ、カロリーも分解しろよ。

 そんな感じで私と由香子のバンドセッションが一ヶ月ほど続いたある日、うちの兄貴がいつか渡してきたバンドスタジオのスタンプカードの事を不意に思い出した。

 何度かスタジオを利用すると無料で一回スタジオが使えるのだがなんでも兄貴は店員の態度が気に入らなかったらしくもう二度と行かないとのことで私にそれをよこしてきた。

 せっかくなので由香子も誘ってみることにし、電話をかけると、面白そうねと言って乗り気だった。

 私たちは週末にスタジオに出かけることになった。

 




 私はおかまん、ここ、バンドスタジオ「魔のスタジオ」で働く美しき受付スタッフ。

 地下一階がライブバーとなっているこのスタジオではいい感じの渋いイケメンが顔を出すこともあり、私にはいい目の保養スポットでもある最高の職場となっているの。

 いつもみたいに店の掃除を終えると、おっといつもは夕方までお客さまは来ないのにこんな昼下がりから、二人組の女子高生?中学生くらいかしら、ポッチャリに、これはお嬢様系ね。

 受付を済ませ、遠目に二人の様子を観察しているとなぜか二人に興味が湧いてきてしまい、それとなく二人が休憩がてらスタジオから出てきたタイミングで声をかけた。


 「あなたたちは一体どう言う組み合わせなの? 初めまして、私はおかまん、ここで受付とサポートでベースもやってます、ヨロシク


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