2021-10-10 04:03:11 更新

概要

アダムたちの話の一方


前書き

皆ゆっくり読んでってね!


閻魔様はご乱心中です!


「ど、どこへお行きになさるのですか!!」


 私の再三の引き留めにも関わらず閻魔様は現世へとお出かけになってしまわれた。

 あれは今から四命日程前の事である。

 閻魔様はいつもの様に夕食を召し上がっていました、それもいつにもまして大変な量のご夕食で、普段の量も人間のそれと比べるととんでもない量にはなるのですが、その晩は段違いの量で給仕のコックが総出で何百皿とご飯を用意していましたが、閻魔様の腹の虫は治らなかった様で慌てて魔界の食糧庫の中身を全てかき集めてようやくといったところでした。それでもデザートをご要望の閻魔様の為に材料がさらに必要になるとここ地獄にて閻魔様の元に使えるものどもが慌てて近くの荒地まで出掛けて行って亡者どもの魂を刈り上らして来なくてはならないほどでした。

 閻魔様はお怒りの際余計に召し上がるので、今回も私めがお食事のあと一体何がそれほどにお心を乱したのかを尋ねると閻魔様は次の様におっしゃいました。


「ここにすでに来る予定のはずのアダムがまだ来ておらん!奴とはかれこれ何百万年とおうておらんゆえ楽しみにしておったのに、一体どうしたというのだ!どうせまた大神の奴がエコ贔屓しとるにきまっとる!」


 アダム様は人類史の始まりより長らく我々この世のならざるものとお付き合いがあるものですから、閻魔様は彼を大層気に入っておられまして、何度か私もお目にかかったことはございますが、いつどの様なお姿でもそれはそれは見目麗しく、いえ失敬、恐らくは天上での何か遅れがあるのではと推察いたしますが、しかしいわゆる閻魔帳というのもこれまたいい加減なものでして、およそ我々の管轄のものが現在は大まかに整理はしておりますが何分その正確性はお察しの通り。

 まだおつきになられていないアダム様に大層御立腹の閻魔様は夕食をお召し上がりになると杓子をお持ちになりどこかへ消えてしまいました。

 さて地獄での仕事というのは閻魔様なくしては非常に困るものです。

 一体全体誰が善悪の量刑を、それも地獄になんぞくる輩に半ば強引に決めれましょうか、閻魔様の不在はひいては地獄の混乱を招きます。

 ここだけの話閻魔様がご自身の都合でこうしてここ地獄をあけることはそう数少ない事でも無いのですが、いやしかしこうして私めがここ現世に降り立ち閻魔様にお帰りいただく様進言申する経緯になるわけです。

 一応地獄の、いわゆるしきたりを知るものに事の経緯と世話を頼む様話をし、ここ現世に来たわけですがあまり長く留守にする事は利口ではありません、なんてったって地獄ですから。

 こちらでは閻魔様がお着きになってから四年あまりの歳月が経過している事を「コンビニ」で確認すると私は早速アダム様を探す為に閻魔様が向かわれそうな場所に目星をつけました。

 しかし、今回久方ぶりに現世に来ましたが、随分と様変わりしている様に感じます。

 以前来た時にはまだ生き物に跨っていたのに今では鉄屑を材料にした移動手段を作り上げたわけですね。道理で馬がらみの拷問刑が減っているわけだ、なんて感傷に浸っていると後ろから人間が近づいてきて私に声をかけました。


「あの、何かお探しでしょうか?」


 失礼しました、立ち読みはあまり歓迎されないとの事でしたね、先程使い魔が人間界用のマナーと題したものを脳内に流し込んできましたから、存じ上げております。

 しかしまさかアダム様を探しているとは聞けないのでないここは一つこの辺りで最近不審な出来事や奇妙な事件はないかお聞きすると彼女はここ最近辺りで子供の誘拐が続いているという話をしてくれました。

 なるほど、現世の奇妙事は下級の魔族が人間に干渉していることが多分にありますから、もし仮に彼らと話ができれば閻魔様の居所などについて何か知ることができるかもしれない、まぁ、魔族の中にはもはや言葉を失った様なものまでいますが、そんな次第で私は街を観察しその誘拐事件の真相を突き止めるに至る訳であります。

 暫くビルの上などから街を眺めたり、夕方に歩き回っていると、なるほど確かにこの辺りには瘴気が渦巻いています。

 こういった魔の気や瘴気などが渦巻く場所というのは魔族にとってはなんとも気分悪くさせてくれる絶好のスポットなのです。

 彼らの性分は人間で言うところの負の感情いわゆる、嫉妬や怒りを好みますから、そういったものを人間により感じ増やさせようとさらに働きかけるケースもしばしば。

 中には恐ろしいほど冷たくそれでいて快活な少し厄介な鬼などもいますが、まぁその話はまた今度にでも。

 さて、ほどなくして、目の前にはどうも人間では持ち得ない匂いを纏った不審な人物がフードを目深く被り辺りをうろついているではありませんか、人間自体に用はありませんが少し後をつけてみますとやはり通学路の辺りへと足を向かわせていきます。

 すると小さな魔物が彼に近寄ってきましたので、私はすかさずその物の首元を掴み話を聞くことにしました。


 「ひいっ、なんだってんだ、お前は!」


 なんだとは失礼ですね、地獄に仕えて、はて、どのくらいになりましたっけ、まあ時というのは矢継ぎ早に過ぎるものですね。

 さてお前の悲鳴はあとで釜で夕食を作る時にでもゆっくり聴くとしましょう、今は閻魔様の居場所が先決です。

 しかしこの小さな魔物はどうも魔物になって日が浅い様にも思えます、余りにも存在がお粗末ですから。

 聞くところによると閻魔様がこちらにお越しになられた事を感じることすらできなかった様です、仕方がありません、具材にしては申し分ありませんからその日はそれを収穫に切り上げました。

 翌日同じ場所の同時刻にはバンが停められており、中には昨日の男がやはり目をぎらつかせながら獲物を待っている最中のようです。

 窓ガラスを、ノックしこの辺りで彼の様な不審な人物を見ていないか、手引きしているものがいないか確認しようとしたのですが、声を荒げ抵抗を始めましたので、右足でアクセルを強く踏み込む様にとお伝えしたところ勢いよく電信柱にぶつかってしまいました。

 会話の際の脈拍で特に有益な情報は持っていないとわかりましたので、その日もまたそれまでとする事にしました。

 翌日再び最初に訪れた「コンビニ」に立ち寄ると以前声をかけてきた人間が昨日事故を起こしたバンの中から出てきた物質証拠から運転手が誘拐犯だと分かり逮捕されたと言う話をしてくれました。

 しかしこれで名実ともに振り出しに戻ったとなるのですが、まあここで買えるふんわり抹茶わらび餅で気分を持ち直すとしましょう。


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