姫鶴一文字「刀剣これくしょん?」
艦隊これくしょんの世界の数年後、今度は陸地に新たな敵が現れた話です。艦娘がでてくるかは未定
某ブラウザゲームみたいな世界観です。妖精さんとかはそのまま引用しています。
SSを描くのも投稿するのも初なのでいろいろ間違いがあるかもしれませんがよろしくお願いいたします。
毎日少しずつ更新していく予定
最初に少し世界観の紹介で長い文章がはいります
登場人物紹介
殿 (主人公)
本作の主人公。まとまりのない癖ッ毛の持ち主でいつも掻いて整えようとしている。みる人によっては美形とも言えなくはない容姿をしており、家事スキルは極めて高い
総司令
殿の父親、一応軍で一番偉い人。
三日月宗近
日本刀でもっとも美しいとされ、その刀娘である彼女もまた美しい。透き通った黒髪と夜空をうつしたような瞳に心を奪われた士官は数知れず。総司令の筆刀をしている
銘 一 ・ 号 姫鶴一文字
腰までとどく美しい黒髪を持つ、性格は極めて控えめで誰に対しても腰が低い。好きな言葉は「第一義」その昔上杉謙信に削らないで欲しいとお願いしたらしいが本人はイマイチ覚えていない
「行きましょう殿、義は我らと共に、我が身は殿と共にです!」
小狐丸
白髪に狐耳を持つ刀娘。背丈が小さく本人はかなりそれを気にしている。人を励ましたり助けたりするのが嫌いではないが気分屋なのでよくわからなかったりする
「自信を持ちなさい。あんたなら大丈夫よ、それに私たちもいるわ」
時は遠くもなければ、近くもない未来。宇宙への進出が未だに叶わない人類は地に足をつけた生活を続けていた。
しかし、人類の生活の舞台である地球になにも変化がなかったわけではない。
それは突如として現れた正体不明の侵攻者魔刃(まじん)の存在である。容姿こそ人に近いものもいる魔刃だがその身体的能力は人間を遥かに凌駕しており、なぜか身体の一部に日本刀や西洋のサーベルのようなものがついていることからその名がついた。
彼らがなぜ人類を攻撃するかは一切不明だが少なくとも人類の敵であることに違いはないそう考えた人類は魔刃の討伐に乗り出す。しかし、結果は悲惨なものだった。出撃した兵士は二度と母国の地を踏むことはなくどれだけの戦力を投資しようとも結果は変わることはなかった。
理由は魔刃の身体能力の高さにある、人類の持つ兵器が魔刃に対して無効なわけではない、ただ当たらないのだ。
頭を抱えた軍はあることを思い出す、それは数年前に現れた深海棲艦を撃退した艦娘と呼ばれる存在である。近年姿を見なくなった妖精さんだが絶滅したわけではない、この作戦に全てをかけた軍は各地にある鎮守府に調査を依頼し妖精さんの発見に成功、そして人類の希望を造りだすことに成功する。
その身に刀を宿した少女たち、刀娘の誕生である。
ーーーー 第壱話 殿になりまして ーーーー
総司令官「突然だが君には刀娘を率いる殿になってほしい」
殿「総司令官殿改め我が親父殿、些か急すぎやしませんかね?」
総司令官「不思議なことではあるまい、今日は何の日だ?」
殿「軍学校の卒業式だけど・・・・・・」
そんな大切な日に俺は第壱連隊総司令官こと親父殿になぜか中央司令部に呼び出されていた
総司令官「その通りだな、だからこそなわけだ」
殿「ごめん、もう少し言葉のキャッチボールしようぜ親父、変化球すぎてキャッチできないわ」
総司令官「難しい話ではあるまい。軍学校を卒業した、だから殿になる。自然な流れじゃないか」
殿「だからって普通は卒業してすぐに殿になるなんてのはエリートの特権だろ、どうして俺なんだよ」
別に軍学校の成績は悪いほうではなかったが自分より上位の成績の奴らは嫌ってほど沢山いたはずだ
総司令官「とにかくだ、私は忙しい。詳しいことは先に到着しているお前の筆刀(ひっとう)に聴いてくれ」
殿「この流れから俺が素直に出発すると思ったか?」
総司令官「・・・・・・三日月!」
三日月宗近「了解いたしました」
殿「いつの間に後ろに!?」
三日月宗近「若殿、参りましょう」ヒョイ
殿「離せ!・・・・・・すいません離していただけないでしょうか?」
抵抗を試みるが鋭い眼光に射ぬかれる、相手は刀娘、力で敵うわけがない。しかも相手は現段階での最高戦力と言われる天下五剣の一人だ。ないとは思うが挽き肉にされたっておかしくない。
総司令官「可愛い娘ばかりだからっててを出すなよ、手首がおちるからな」
殿「チキショー親父、おぼえてろ!!」ジタバタ
三日月宗近「・・・・・・」
殿「すいませんでした」
こうして俺はさながら荷物の入った段ボール箱のように中央指令部から運び出されたのだった。ちなみに三日月さんのいい香りがしたのはまた別の話である
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
殿「そんなわけなんだが、どうしたらいいと思う?」
姫鶴一文字「私に聴かれても困ります!」
殿「おや・・・・・・っ総司令官の話しだと君が詳しい事情を知ってるって話しなんだけど」
姫鶴一文字「私だって今日から新しい殿の筆刀になるってことしか聴いてません」
親父のヤツ、適当なこと言いやがって
殿「とりあえずもう一度確認しよう、俺は殿。姫鶴一文字さんが聴いた新しい殿ってのは多分俺のことだと思う」
姫鶴一文字「私は姫鶴一文字です、姫鶴か鶴とお呼び下さい。」
そう言って口元に笑みを浮かべる姫鶴に一瞬返事も忘れてみとれてしまう
殿「いまいち事態は読み込めないが俺は殿になって、君が俺の筆刀をやってくれるってことで間違いはなさそうだな」
姫鶴一文字「姫鶴もそれに違いないと思います」
殿「それじゃあ、これから宜しくお願いするよ姫鶴」
目の前の少女に向けて手を差し出す、友好とか信頼の証といえば昔からコレと相場は決まっている
姫鶴「こちらこそ未熟者ですが宜しくお願い致します」
綺麗な笑みを浮かべながら俺の手を握った彼女の手は温かくて、やっぱり俺には彼女が人類の希望なんて呼ばれる兵器だなんて俺は思えそうもなかった。
そんなわけで軍学校の卒業式に卒業式に首席できなかった俺はクラスの誰よりも早く殿になって、姫鶴と出会った。
ーー 殿の不思議な基地内 ーー
殿「二人してここで呆けてても始まらない、とりあえずこの基地の中の案内を頼んでいいかな?」
姫鶴「・・・・・・それが殿、私もここに来るのは初めてでして」
殿「まじか」
姫鶴「ちゃ、ちゃんと前持って調べておこうと思ったんですよ、ただあまりに急な話しだったので。申し訳ありません」
殿「謝らなくてもいいさ、だったら二人で覚えながら回ればいいだけだろ」
見たところあまり広い基地でもないみたいだし地下とかさえなければそこまで時間もかからないだろう
殿「とりあえず、妖精さんがいる工房でも目指すか」
姫鶴「了解しました」
このあと二人して迷子になって、やっとの思いで工房にたどり着いたのですが・・・・・・なぜこの基地地下にこんなに複雑な通路があるのでしょうか?
あと途中にパンが落ちてるのを見て「ト○ネコか!」っと殿が叫んでいましたが姫鶴にはさっぱりわかりませんでした。
ーーー 鎮守府は衰退しました? ーーー
殿「ここが工房か」
妖精さん「そのとおりさ!」
殿「うわっ、びっくりした!」
姫鶴「妖精さんこんにちわ」
妖精さん「「「こんにちわー」」」
殿(・・・・・・増えてる)
先ほどまでは自分の足元に一人・・・・・・一匹?しか居なかったのに姫鶴が声をかけた時には数十人になっていた
妖精さん「あんたがここの提督かい?」
殿「て、提督?」
妖精さん「ああ、ごめんね。ついこの間までの職業柄ね、今は殿様なんだっけ?」
妖精さん「ってことはそっちのお嬢さんが刀娘かい」
姫鶴を見て一人納得する妖精さん、先ほどまてでは沢山いた妖精たちもすでにあっちこっちに散開して今は最初に出会った一人だけが偉そうにこちらを見上げている
殿「刀娘を見たことがないのか?」
妖精さん「聴いてはいたが実際にみたのは初めてさね、なんせつい最近まで毎日この寂れた鎮守府だけが私たちの世界だったもんでね」
姫鶴「ここはもとは鎮守府だったのですか?」
妖精さん「なんだ知らなかったのかい、賑やかだったんだよ。毎日忙しかったが楽しい職場だったね」
殿「用が済んだから解体されたってわけか」
妖精さん「人間ってのはずいぶん勝手なもんだね、数年前にいきなり音沙汰無しになって放置されたと思ったら今になって急に叩き起こしてくるんだから」
殿「悪いな、身勝手で」
妖精さん「別に殿様が悪いわけじゃないだろう、私はむしろ殿様に感謝してるんだよ」
殿「感謝?」
妖精さん「そうさね、なんせ毎日退屈だった私に仕事をくれるって言うんだ」
姫鶴「働き者なんですね」
妖精さん「お代はもらうがね」
胸をはって言わなきゃ格好良かったのにな、まぁ仕事に対しての対価を貰うのは当たり前のことだが
殿「パンくうか?」
妖精さん「残念、私はおにぎり派なんだ」
姫鶴「わ、私つくってきます!」
妖精さん「気にしないでいいよ。さて、そろそろ仕事を始めるとするかい殿様」
殿「代金はどうする?」
妖精さん「もうもらったさ、久々に人と話しができて楽しかったよ」
それにあとでおにぎりも持ってきてくれるんだろう?っと付け足す妖精さん、なにこの人?格好いい!
殿「それじゃあ鍛錬をお願いしていいか?」
妖精さん「ほい、きた!資材はどうするよ?」
殿「任せるよ、なんせまだ新米なもんでね」
妖精さん「オールMAXでいいかい?」
姫鶴「ッと、殿止めてください!」
殿「ま、なるようになるさ」
妖精さん「気が合うね、まあ今回は最低限の資材を使うとするよ。みんなー踏み鞴の準備だー!」
妖精さんたち「「「おー!!」」」
姫鶴「どんな娘がくるか楽しみですね」
殿「俺は美人がいいな」
・・・・・・姫鶴さん、無言で脛に蹴りをいれるのはやめてください
銘切り完了まで後20分
ーーー 楽しいクッキング ーーー
姫鶴「新しい刀娘さんができるまであと20分くらいだそうです」
殿「そうか、少し時間がかかるんだな」
20分というのは短いようで体感的には長く感じられる微妙な時間だ。このまま工房で待ってもいいが、さてどう時間を潰したものか
姫鶴「あ、あの殿」
殿「どうした姫鶴?」
姫鶴「お腹空きませんか?良かったら私に作らせてもらえませんか?」
殿「ん?」
空腹というものは他人に指摘されると途端に襲ってくるものだ、朝から様々なことが起きすぎてどうやら忘れていたようだ
殿「たしかに腹は減ったが・・・・・・厨房の場所がわかるのか?」
姫鶴「はい、先ほど妖精さんから地図をもらいました。道案内は姫鶴にお任せ下さい」
殿「それじゃあお願いしよう姫鶴」
姫鶴「任せて下さい!」
殿「ただし、料理は作らなくていい」
姫鶴「・・・・・・ご不満でしたか?」
そんな表情を浮かべないでほしい。美人の涙目は心臓に悪すぎる
殿「不満なんてあるわけないだろ」
姫鶴「?」
殿「今日は私に作らせてくれないか?こう見えて料理には結構自信があるんだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの後食い下がる姫鶴をなんとか説得して俺は一人厨房に立っていた。
彼女の言い分は「殿に料理を作っていただくなんて恐れおおいです」とのことらしいが、俺から見ればこれから色々と命令しなければならないのに料理まで作らせるなんてそれこそ恐れおおくて気が引ける。最終的にこれからは当番制で厨房に立つことがお互いの妥協点だった。
姫鶴「あ、あのー、なにか手伝いましょうか?」ソロー
先ほどから一分ごとに姫鶴がこちらの様子をうかがってくるのだが・・・・・・背後から小声で近づいてくるのはできれば遠慮してほしい。男子ばかりの学校生活を過ごした俺としては耳元にかかる吐息は刺激が強すぎる
殿「姫鶴」
姫鶴「は・・・・・・っんぐ!?」モグモグ
返事をした隙をついて姫鶴の口の中に作っておいた卵焼きを突っ込む
姫鶴「・・・・・・甘い」モグモグ
殿「甘いのは苦手だったか?」
姫鶴「すごく美味しいです!でも少し悲しいです」
殿「わ、悪い。殻でも入ってたか?」
姫鶴「いえ、どうやら私は殿に料理で敵わないようです」ショボン
殿「安心しろ、俺はお前が作ってくれた料理ってだけで美味しい食べれるさ」ニコ
姫鶴「は、はひ!精進します!」
このあと姫鶴は黙ってしまったが箸がしきりに動いていたところを見るとどうやら味付け自体は気に入ってくれたらしい。しかし、俺はなにか気にさわることを言ってしまっただろうか?
女心を学ぶのも殿をやるうえで重要だと深く考えさせられるのだった。
銘切り 完了!
ーーー新たな仲間ーーー
妖精さん「遅かったじゃないか、とっくに完成してるよ」
殿「悪かったよ、飯を食べてたら遅れた」
妖精さん「まあ、遅かったって言っても少し前に終わったとこなんだけどね。刀娘を打つのは初めてだったから予定より時間がかかったんだよ」
殿「大丈夫なんだろうな?」
妖精さん「妖精を見くびるんじゃないよ」
・・・・・・そういった台詞は是非こちらの目を見て言ってほしいものである。
殿「とりあえずご苦労様。ほら握り飯」
妖精さん「本当に持ってくるとはね、美味しくいただくとするよ」
姫鶴「あの、それで新しく打たれた刀娘さんはどちらにいるのでしょうか?」
妖精さん「ほれならほっちであんはらのこほままっへるお」モグモグ
殿「食べながら喋るな」
何を言っているのかはイマイチ理解できないがとりあえず指差された扉へと向かう
姫鶴「このなかにいらっしゃるのですね。な、仲良くなれるでしょうか?」
殿「姫鶴なら大丈夫だろうよっ・・・・・・と」
意外と硬い扉を開ける。ところで妖精さんたちはこの扉をどうやって閉めたのだろうか?
?「あなたが私の殿なの?」
殿「そういうことなんだろうな。君の名前は?」
小狐丸「私は小狐丸よ。よろしくお願いするわねお殿様」
そういうと彼女の白髪の中から狐耳がピョコンっとたつのだった。
ーーー 出撃 ーーー
殿「着任してすぐ悪いんだが二人には早速ある任務をお願いしたい」
姫鶴「頑張ります!」
小狐丸「任せなさい」
やる気満々な二人の顔を見て軽く頷く。 別に戦闘とかじゃないんだけど・・・・・・言いにくいなぁ
殿「まずは二人はお互いのことをよく知ること。戦場では背中を任せるわけだしな、これが最初の任務だ」
小狐丸「なんか拍子抜けね。気合い入れて損した気分だわ」
姫鶴「でも殿の言うことも重要なことだと思います」
殿「そう思ってくれるとありがたいな。それにあまり気は向かないが明日には出撃してもらうことになると思う」
小狐丸「なんで今日じゃないのよ?」
殿「小狐丸、君は戦いがしたいのか?」
小狐丸「そ、そういうわけじゃないわよ」
無意識の内に声に力が入ってしまったのか返事をする小狐丸の声が震える
小狐丸「ただ、私たちの仕事は戦うことでしょ。仕事をしようと会社に来たとこで今日は働かなくていいよーって言われたら誰でも少しは不安になるし、理由が気になるじゃない」
殿「なるほどな・・・・・・」
姫鶴「私たちだって恐いのは嫌です。でも、戦わなくていいって言われると少し不安になるんです」
殿「わかった、俺の言葉が足りなかったな。正確には出撃しないんじゃなくて、出撃できないんだ」
小狐丸「出撃できない?」
殿「そうだ。出撃に必要な物がまだこの基地に届いてないんだ。なんせ俺が殿になったのがついさっきのことだしな」
小狐丸「なるほどね、そういうことならこの初任務を完璧にこなしてやろうじゃない」
殿「結構なことだ。なら俺は夕食の買い物と支度をしてこよう。二人とも何か食べたいものはあるか?」
姫鶴「私は殿の作ったものならなんでも」
小狐丸「私は肉じゃがが食べたいわ」
殿「了解だ、姫鶴もそれでいいか?」
姫鶴「是非、今から楽しみです」ニコ
まさか美少女二人に手料理を振る舞う日がくるとは、人生とは不思議な物である
小狐丸「あ、あとアレね。油揚げがはいったお味噌汁」
殿「了解」
勿論悪い気分はしないわけで、俺も思わず口元に笑みを浮かべた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
殿「二人とも揃っているな?」
小狐丸・姫鶴「「はい!」」
次の日、俺は二人を執務室へと呼び出していた。いよいよ俺たちの初陣がせまっていた
殿「今朝、例の物が到着した。これより一時間後に出撃をする」
小狐丸「いよいよってわけね」
姫鶴「姫鶴は大丈夫です」
殿「安心しろとは言えない。なんせ俺だって緊張して昨日は、あまり眠れていないんだからな。ただ、肩の力を抜かないと出来ることも出来なくなるもんだ」
姫鶴の肩にそっと手をのせる
姫鶴「は、はひ!姫鶴頑張ります!」
おかしい、緊張を解くための言葉だったはずなんだが余計に力が入ったような?
殿「それともう一つ、これだけは約束して欲しい」
小狐丸「内容によるわね」
殿「絶対に生命を懸けるな、危険だと思ったら逃げろ。お前たちが生命を懸ける場所は戦場であってはいけないんだ」
小狐丸「安心しなさいな、元々死ぬ気なんて微塵もないわ」
姫鶴「殿がそれを望むなら私はその望みを全力で叶えるだけです」
殿「よろしい、それでは各員出撃まで準備なりゆっくりしててくれ」
小狐丸・姫鶴「「了解!」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
執務室から出ていく二人を見送ったあと俺は妖精さんの元へと向かった
殿「どんな感じだコレは・・・・・・」
妖精さん「凄いの一言に尽きるね、これが鎧装かい」
鎧装、それは刀娘のみが纏うことができる最強の剣であり最硬の鎧の名前だ。
妖精さん「艦娘の艤装はつける物だったけどコレはまさに着る武器だね 」
なるほど、金属独特の光沢を放ち刀娘の持つ身体能力を損なわないようある種芸術的に組み上げられた装甲と牽制用の機銃それはまさに着る武器の一言につきるだろう
殿「綺麗だな・・・・・・」
妖精さん「?ああ、まだ鞘に入れてなかったんだっけ」
しかし、それよりもさらに心を奪うのは一筋の光。刀娘の象徴であり同時に彼女たちの最大の武器
刀
彼女たちを戦場へと誘うそれに俺は不謹慎にも一瞬心を奪われた
妖精さん「あの娘たちにもそう言ってやりな、きっと喜ぶよ」
殿「機会があったらな」
面と向かって女の子に綺麗だなんて言えるわけないだろ バーカ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
殿「さて、二人とも準備はできたみたいだな」
小狐丸「当たり前じゃないの!」
姫鶴「問題ありません、それより殿」
殿「どうした姫鶴?」
姫鶴「えっと、後ろにある電車みたいのは一体なんですか?」
姫鶴が指差す俺の背後にはたしかに電車1両とちょっとの大きさの乗り物があった
殿「名前はいまいち決まってないんだが・・・・・・とりあえずコレは鎧装と俺たちを作戦場所まで運んでくれるもんだ。ちなみに俺はこの中の臨時作戦室からお前たちに指示をだすわけだ」
運転手妖精「任せな!」
小狐丸「なんとなく便利な物であることはわかったけど、名前がないのは不便ね」
殿「じゃあ仮の名前でユリシーズとでも呼んでおくか」
姫鶴「ゆりしーず?」
殿「ああ、俺が知ってるなかで一番の幸運艦の名前だな、まぁ架空の宇宙戦艦なんだがな」
運転手妖精「準備できたぞーい!」
改めて二人の顔を見る、勝てなくてもいい・・・・・・絶対生きて帰ろう
殿「さあ、出撃だ」
ブオォーーン!
どこから取り出したのか妖精さんの吹いたホラ貝の音が空高く響き渡った
ーーー魔刃ーーー
サポート妖精「そろそろ目標地点ですよ」
殿「早いな・・・・・・姫鶴、なにか見えるか?」
姫鶴「今のところ異常はありません」
殿「そっちはどうだ」
小狐丸「平和そのものよ」
基地を出発して40分ほどの地点、基地からもっとも近い魔刃の反応が探知された地点だ。
姫鶴と小狐丸の二人にはユリシーズの上から鎧装を纏った状態で索敵をしてもらっているのだが反応はない
殿「居ないのなら居ないにこしたことはないんだがな 」
姫鶴「どうなさいますか?」
殿「どうしようもないな、暫く辺りを探索したら帰投しよう」
小狐丸「はぁ、ずいぶんと気の張ったピクニックになりそうだこと」
殿「そういうな・・・・・・!」
姫鶴「殿、どうかなさいました?」
悪寒、外にいるわけではないがはっきりとそれを感じた。背筋にはしる恐怖に唇が渇く、なにかいる? 否これは・・・・・・
なにかくる!!
殿「姫鶴、小狐丸!すぐに戦闘体勢をとれ!」
小狐丸「っは?」
姫鶴「え?」
索敵妖精「距離4000地点から高速で此方に接近するモノあり!」
四人の声はほぼ同時に響いた
殿「数は!?」
索敵妖精「高速で接近する反応は1,遅れて13の反応があります」
姫鶴「13って・・・・・・そんな」
殿「遅れているほうの反応が此方と接触するまでの時間は?」
索敵妖精「現時点のままの速度ですと約20分後です」
殿「よし、ここは引くぞ!数が違いすぎる」
小狐丸「どうやら無理みたいよ・・・・・・」
殿「どうした?」
小狐丸「魔刃「香車型」確認、第一陣様のご到着よ」
ー初陣ー
小狐丸「なによこのスピード、デタラメじゃない!」
殿「あれは魔刃香車型、スピードに特化したタイプの魔刃だ・・・・・・まさか初陣で歩型以外の魔刃を相手にすることになるなんてな」
小狐丸「やるしかないで、ック!」
姫鶴「小狐丸さん!下がって!」
姫鶴が振るった刀と魔刃の右手についた爪とも刃とも呼べるソレがぶつかりあい、火花と耳障りな金属音をあげる。
殿「大丈夫か!」
小狐丸「私は問題ないわ。問題なのは目の前の敵よ」
姫鶴「もうあんなところまで・・・・・・」
魔刃「・・・・・・」
姫鶴の視線が体勢を崩した小狐丸に移った一瞬の隙に魔刃は既に姫鶴の間合いを大きく外れた場所に立っていた
殿「第二陣に到達されたら勝ち目はない、一撃で決めるぞ」
小狐丸「どうするつもり?」
殿「小狐丸、機銃でヤツを狙えるか?」
小狐丸「狙うだけなら狙えるけど当てる自信はないわね」
殿「それでいい、左右にばらまくように撃ってヤツの進路を制限してくれればいい」
小狐丸「りょうかい!」ジャキン
殿「姫鶴、お前はヤツの癖を見抜け。ヤツが生物である以上、左右への切り返し、此方へ飛び込む為の踏み込みの前には必ずなにかしらのモーションが入るはずだ。お前はそれを見抜きソコに攻撃を合わせるんだ」
姫鶴「了解!」チャキ
魔刃「・・・・・・」
殿「来るぞ・・・・・・ファイエル!」
小狐丸「当たってくれたっていいんだからね!」ガガガガガガ
魔刃「・・・・・・」
小狐丸「ッチ!避けながら向かってくるなんて」ガガガガガガ
殿「安心しろ、作戦通りだ」
姫鶴(速い・・・・・・でも来るとわかっていれば追いきれないわけじゃない!)
思考の波と共に擬似的な静寂が姫鶴に訪れる、機銃の音も殿の指示さえも届かない。聴こえるのはただ己の手を通して伝わる刀の鼓動のみ。
一度瞼を閉じてからゆっくりと開けば心なしか魔刃の動きが先ほどよりも鈍ったように感じられる
姫鶴(切り返しのタイミングじゃない、狙うのは此方を狙った一撃の前の踏み込み)
小狐丸「・・・・・・嘘、ジャム(弾づまり)った!?」カチカチ
殿「んなぁ!?」
小狐丸の言葉とほぼ同時かやや速くか魔刃の足元の小石が跳ねる
姫鶴「ここです!」
魔刃が駆けるより速く姫鶴の剣撃が走る。勝負は決したように見えた
魔刃「・・・・・・」ッサ
姫鶴「ッ!?」
姫鶴(あの姿勢から身体の軸を逸らすなんて!?)
姫鶴の一撃は空を切ったわけではない、ただ奴らを殺すには浅かった
魔刃「!!!!!?」ドス!!
姫鶴の視界の隅を光が走ったと同時に魔刃の表情に驚きの色が浮かぶ
小狐丸「鬼さん、足が止まってるわよ?」
光の正体は小狐丸が投げた刀だった。一瞬の隙を狙って放たれた刀は魔刃の左足を的確に捕らえていた
小狐丸「姫鶴、これで貸し借りなしだからね!」
姫鶴「これで終わりです!」ブン!
姫鶴の二度目の剣撃、その光が今度こそ魔刃に刺さる
リィィイーン
何が砕けるような音と共に魔刃の身体が消えていく。待たずしてその場に残ったのは静寂とそして魔刃の名の由来となった折れた刃だけだった
殿「終わった・・・・・・のか」
殿の言葉から一拍おいて訪れたのは安堵と喜びの津波だった
姫鶴「殿、殿!姫鶴やりました!勝ちましたよ!」
小狐丸「一瞬嫌な汗かいたじゃないのまったく・・・・・・」
悪態をつきながらも小狐丸の口元にも微笑が生まれる
殿「二人ともよくやってくれた!さあ、次のお客様が来る前にさっさと帰ろう」
姫鶴・小狐丸「「了解!」」
三人を乗せたユリシーズが脱兎のごとくその場を離れる。 幸運艦ユリシーズ伝説はまだ始まったばかりである。
ー帰還ー
運転手妖精「とーちゃくー」
殿「ご苦労様」
妖精と軽い会釈を交わしユリシーズ後部ブロックにある姫鶴たちの休憩室へと向かう
殿「姫鶴、小狐丸。無事に戻ってきっおっと」
姫鶴「すぅー、すぅー」
小狐丸「zzzz」
初めての戦闘でよほど疲れたのか、あるいは張っていた緊張の糸が緩んだのか、あるいは両方ともか休憩室には二人の小さな寝息だけがこだましている。
殿「姫鶴、小狐丸」
二人の名前を呼んでみるが返事はない。どうやら眠りは深いらしい
起こしてもいいのだが二人肩を並べて寝息をたてる美少女の眠りを妨げるのは野暮というものだろう。そんなことが許されるのはおそらく白馬に乗った王子様の特権である。
だが、お姫様をベッドまで届けるくらいなら多分冴えないモブにでも許されるだろう
殿「しかし、どっちから届けたものか・・・・・・」
結局俺は小狐丸から届けることにしたのだが、特に深い意味はない。発育のよさとかは全然関係ない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次に私が目を覚ましたとき、そこには見馴れた部屋が広がっていた。見馴れたと言っても実際つかい始めたのはつい最近のことだし、まだ家具だってまともに用意はしていないのだがそれでも戦場と装甲列車の中よりは心が安らぐ光景だ。
小狐丸「ん、目覚めたのね姫鶴」
姫鶴「小狐丸さん?」
小狐丸「他に誰がいるって言うのよ、疲れてるのはわかるけど記憶喪失とかやめてよね」
疲れる?そうだ、私初めて出陣してそれで疲れてユリシーズの中で寝ちゃったんだっけ・・・・・・あれ?じゃあ私なんでここに?
姫鶴「もしかして、ここまで運んでくれました?」
小狐丸「私じゃないわよ」
姫鶴「小狐さんじゃない?・・・・・・ま、まさか」
小狐丸「そのまさかが多分正解よ」
姫鶴「妖精さん」ゴクリ
小狐丸「ごめん、多分違うわ」
姫鶴「やっぱり殿ですよね」
小狐丸「前者と比べたら間違いなくそっちでしょうね」
姫鶴「・・・・・・わ、私少し出かけてきます!」 ダッシュ
小狐丸「いってらー」
顔を真っ赤にして飛び出していく姫鶴を私は笑顔で見送った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
殿「さて、報告書はこんなもんか」
軍の上層部(というか父親)に畏まった書類を書くのなんて初めての経験だったがお手本片手に時間をかければ中々様になるものである
殿「魔刃か・・・・・・」
手にしていたペンを机の上に置いて思考を働かせる
実物を見るのは初めてだったがあまりに異形でそしてあまりに人に・・・・・・否、刀娘に近いとそう感じた。
殿「一体何者なんだ・・・・・・」
姫鶴「と、殿!!」バーン!
殿「どうした姫鶴?扉が悲鳴をあげる勢いで突撃してきたからには何かしらの用事があるんだろう?」
姫鶴「えっと・・・・・・きょ、今日はお疲れ様でした」
殿「頑張ったのはお前達だ、俺じゃないだろ」
姫鶴「でも、私達が生きて帰ってこれたのはきっと殿のお陰です」
殿「そんなもんかね?」
姫鶴「そんなものです」
殿「しかし、わざわざそれを伝える為だけに訪ねて来てくれるとは姫鶴は可愛いヤツだな」
姫鶴「感謝を言葉にするのは大切なことです。想いがどれだけ強くてもそれは形のないものですから・・・・・・」
殿「どうだかな、無償の愛というものは形が無くとも伝わるものらしいが」
愛というものを感じたことがない人間が言うとなんとも滑稽である。
姫鶴「殿は意外と乙女なのですね」クス
殿「誉められたと思っておくよ」
姫鶴「では、私はこれで」ペコリ
殿「用事はそれだけなのか?」
姫鶴「はい、姫鶴の用事はそれだけです」
笑みを浮かべながら部屋をあとにした彼女の背に俺はある言葉がでかかった。しかし、それを口にすることはなく俺も彼女に笑みを返す。
殿「乙女なんかじゃなくて、臆病なだけかもな」
一人残った部屋で呟いた。
ーーーーー 父襲来 ーーーーー
総司令部
?「ただいまー」
三日月宗近「長光さん、お疲れ様です」
小豆長光「号で呼んでくれよ、そのほうが可愛いかろう?あずきちゃんとな♪」
三日月「そうですね宗近さん」
小豆「お主、喧嘩を売っておるのか?」
三日月「天下五剣に敵うとお思いで?」
小豆「・・・・・・ふん、やめじゃ、やめじゃ。それよりも総司令殿はどうしたのじゃ?姿が見えんようじゃが」
三日月「外出中です」
小豆「ほー、珍しいのう。あやつがお主を置いて出掛けるとは」
三日月「仕事がありますからね、誰かがやらねばなりません」
小豆「素直に付いて行きたいと言えば可愛げもあるのにのぉ」ハァ
三日月「なんの話です?」ギロ
小豆「寂しそうな顔で睨んでも迫力に欠けるぞ」
三日月「さ、寂しそうなどっ!!」///
小豆「ふふ、妾は寝る。天下五剣にも可愛いとこがあるでわないか」
それだけ言うと私の悪友は部屋を後にする。
自分の言いたいことだけを言って帰る、嵐のような人だ。迷惑千万である
三日月「寂しいだなんて・・・・・・」
私は兵器だ。そう思っているし、そうあることになんの疑問もない。ただ、ただ時々あの人の顔を、瞳を見ると言葉にはできないような形容し難い感情に襲われるのだ。
三日月「殿の傍にありたいと願うことはきっと醜いことなのでしょう・・・・・・」
なぜなら私は兵器なのだから。最後の言葉は口にはしない、口にはしたくなかった。たとえ私が兵器でも想うことくらいは許されるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
窓の外には良く晴れた景色が広かっていた。季節は芽吹きの季節春。我が基地内にも埋められた桜が風に優しく揺れている。
殿「平和だな」
小狐丸「外の景色より現実を見なさいよ」
部屋の中に視線を戻せば書類の山がさながら花弁のように舞っている
殿「なあ小狐、少し散歩に出掛けないか?」
小狐丸「あら、デートのお誘いかしら?残念だけど私は現実逃避するような男は苦手なの」
殿「善処します」
渋々手元の書類と対峙する。どれもこれも似たような内容の代わり映えのない書類だ。こんなものと長時間にらめっこできる人のほうが異常だと声をあげたいものである。
小狐丸「ねぇ、殿」
殿「んー?」
まったく、紙も貴重な資源なのに無駄遣いしおって
小狐丸「あんたはさ、私達のことをどう見てるの?」
殿「どうって・・・・・・」
小狐丸「わからないわけじゃないでしょ?貴方は兵器である私達をどう見てるの?」
殿「・・・・・・」
小狐丸「答えて」
殿「俺は・・・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
姫鶴「ときめきーとーまどい♪・・・・・・ん?」
二人が書類と格闘してるなか、姫鶴は基地入り口の掃除に勤しんでいた。日本人の心と目を楽しませてくれる桜だがいざ花びらが地面に落ちるとかさばるものである。
姫鶴「車?一体誰かしら」
そんな花びらを鼻唄まじりに掃除していると一台の車を視界がとらえた。
前線ではないが一応軍の施設である、普段なら車どころか関係者以外人の姿すら見ないのだが
玄関の少し離れた場所で停止した車から一人の男性が姿をあらわす。
?「君が姫鶴くんかな?」
姫鶴「・・・・・・どちら様でしょうか?」
?「あぁ、これは失敬した。私はーーー」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小狐丸「・・・・・・っぷ、あははははは」
殿「な、どうしたんだよ」
小狐丸「なるほど、それがあんたの解答かー」
先ほどの質問に答えたところ小狐丸が急に笑いだしてしまった。
殿「真面目に答えたんだ、笑うのは酷いだろ」
小狐丸「馬鹿にしてるんじゃないわ、いい意味でよ」
殿「いい意味って・・・・・」
殿「まぁ、満足してくれたならよかったよ」
小狐丸「ええ、とってもいい気分よ」ピコピコ
耳が動いているところを見ると本当に上機嫌らしい。
姫鶴「と、殿、大変です!」バーン!!
殿「お前は扉になにか恨みでもあるのか?」
姫鶴「今、外に総司令官閣下が!」
殿「あ!?」
総司令「ふむ、どうやら上手くやっているようではないか息子よ」
父きたる、その存在感はある意味魔刃に匹敵するかもしれない。
季節は春。空とは異なり俺の心は大きく荒れていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
姫鶴「どうぞ」ッス
総司令「ああ、ありがとう」
殿「で、なんの用だ親父」
俺たち親子にお茶をだした姫鶴がそそくさと部屋を後にする。会話の内容は気になる。しかし、部屋の中には居づらい空気が充満していたので退散したのだろう。
総司令「軍に身を置く以上お前も言葉ずかいを覚える必要があるな」
殿「生憎と俺は軍人ってヤツが嫌いなんでね、口調が強くなるくらい見逃してくれよ」
この言葉に偽りはない。俺は別に親父が嫌いでも苦手なわけでもない。ただ軍とか政治家とかそういった輩が好かないのだ
総司令「成る程、本題に移ろう。まずは魔刃香車型の討伐よくやった」
殿「恐縮です総司令官閣下」
総司令「誰にでもできることではないんだ、もう少し喜べ」
殿「魔刃が倒せるのは俺の力じゃない、姫鶴達の力だろう」
俺の返答に親父の表情が初めて変わる
総司令「それは違うな」
総司令「球技においてプレイヤーを褒める者はいてもボールを褒めるものは誰一人としていない。褒められる者は道具を使う者であって道具ではないということだ」
殿「・・・・・・姫鶴が刀娘達は道具だって言うのか?」
総司令「兵器とはそういうものだ」
殿「俺はあんたを尊敬したことはあった。だけど軽蔑したのは初めてだよ親父」
沸き上がる怒りを抑えながら声を絞り出す
総司令「用件は済んだ、今回の活躍から後日新しい刀娘を一人配属する。今後も励め」
椅子から立ち上がった総司令官はそのまま部屋を後にするかと思いきや扉の前で立ち止まる。
総司令「殿、はやく大人なれ」
それだけ言うと俺の返答を待たすに親父部屋を後にした
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妖精さん「おや、提督。もう帰るのかい?」
総司令「用は済んだからな」
妖精さん「ふーん・・・・・・榛名は元気かい?」
総司令「彼女はもういない、お前だって知っているだろう」
妖精さん「でも生きてるだろう?」
総司令「・・・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
姫鶴「総司令官閣下はお帰りになったようです」
殿「そうか」
姫鶴「なにかあったのですか?」
殿「大丈夫だ、俺の問題だよ」
姫鶴を安心させる為に自然と言葉がでる。
姫鶴「そう言えば殿は私達を魅力的な女性だと思っているそうですね♪」
殿「っな!?」
戦場ではどうしても俺はお前達の能力を見なければならない・・・・・・でも、それ以前にお前達は魅力的な一人の女性だよ
小狐丸の質問に対する俺の答えだった。
姫鶴「でも、それを小狐さんにいうなんて姫鶴少しおこです」
俺をからかいながら笑う姫鶴は誰がみても兵器なんかじゃないただの女の子だ
小狐丸「とーのー、お腹が空いたわ」バーン
またまた扉が凄い音をたてながら開けられる。壊れる日も遠くはないかもしれない
殿「わーったよ、今作る」
悩んでいてもしょうがない。出来ることを一つずつやろう。
俺は立ち上がると二人のほうへ向かった。季節は春、俺の殿様生活はまだまだ始まったばかり
続く
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補給班「以上が今回の支給資材となります」
殿「遠路遥々お疲れ様です」
軽い会釈をしつつ書類を受けとる。正式に軍の施設として機能し始めた今、我が基地にも一週間に一度物資が支給されるようになっていた。
この支給の量は基本的な数に部隊の大きさ、戦果の大きさにより量が増える加算方式をとっており、我が部隊は規模こそは小規模だが戦果のほうは上々でどうやら今週も余裕のある運用ができそうである。
補給班「では我々はこれで・・・・・・」
搬入を終えて空っぽになったトラックと共に補給班たちは去って行った。無愛想にもとれる態度だがこの後にも各地の部隊への補給が控えているのだろう、物資を消費する側としては頭が上がらない。
殿「さて、俺も仕事を始めるかね」
欠伸混じりに俺はゆっくりと執務室へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
姫鶴「あら?殿、少しいいでしょうか?」
殿「どした?」
筆刀として一緒に書類の討伐を協力してくれていた姫鶴から声がかかる
姫鶴「補給物資の明細なのですが、ここ間違ってますよね?」
姫鶴が指差した欄を見てみると
殿「保有刀娘数3・・・・・・たしかに間違ってるな」
現在我が基地にいる刀娘は今隣にいる姫鶴一文字と現在絶賛昼寝中の小狐丸の二人だけである、知らないうちに幻の三人目が銘切りされていない限りはこの二人しかいないはずだ
殿「間違いで減らされていたら困るが、どうやら多く支給されたみたいだしスルーでいいだろう」
姫鶴「スルーですか?」
殿「そ、それよりさっさと片付けて昼飯にしよう、腹が減ってきた」
姫鶴「了解です」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妖精さん「んー、三人目を打った記憶はないね」
殿「だよな、急に悪かったな」
先ほど姫鶴にはああ言ったもののやはり気になった俺の足は工房へと向かっていた。しかし、結果は予想通りのものでやはり三人目はいないというものだった。
妖精さん「まあ、これを機会に三人目をお出迎えしてもいいんじゃないかい?」
殿「考えとくよ」
手のひらを宙でヒラヒラと踊らせながら俺はその場を後にした。
ーーー 食堂 ーーー
小狐丸 「ふーん、そんなことがあったのね」
殿「自分の基地、しかも命に関わる物資関係の話だぞ、少しくらい興味をもて」
食後、姫鶴が淹れてくれたお茶をすすりながら小狐丸に例の話をしてみるも反応はあまりにも素っ気ないものだった。
小狐丸「殿も言ってたけど別に減らされた訳ではないのでしょう?なら問題ないじゃない」ズズ
他人の失敗なんて気にするだけ無駄よっと小狐丸。
殿「それもそうか」ズズ
来週も間違えていたらその時にまた考えることにしよう、言葉にこそしなかったがとりあえずこの話は結論に至るのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なってみてわかったが軍人(特に司令官)なんてのは普段は暇してるように周りからは見えるが実際はそうではなかったりする。さながら水面を漂うアヒルが優雅に見えても水中では必死のばた足をしているように殿様なんかも見えないところで書類の山に頭を悩ませているのだ。
そんな激務の間である早朝の時間を俺は基地内の探索に使っていた。探索といえば聞こえはいいが実際はただの散歩と変わりのないものでただなんとなく彷徨くだけのものだ。
我が基地はあの艦娘もいた鎮守府として機能していた時代もあり、なかなか普段は目にしないような物も多々視界に入ってきたりもするのだが、その日俺の視界に飛び込んできたものはある意味とびきりで珍しいものだった。
殿「ん、なんだあれ?」
それはある程度の大きさのあるもので布のような物がかかっていて遠目から見ると人のようにも見える
殿「・・・・・・」
というか近づいて見てみても人だった、みた感じは少女、いわゆる幼女にみえる
殿「お、おーい大丈夫か?」
こんな軍の施設のど真ん中で倒れている時点で色々と大丈夫ではないのだが、一応この基地の殿として、以前人として無視するわけにもいかず恐る恐る声をかける
?「う?」
殿「どうした?どこか痛いのか?」
?「痛い?どこも痛くはないよ。でも」
殿「でも?」
?「少しお腹が空いたみたいだよ」
殿「お、おう?」
?「あとね、なんだか少し眠いの」
殿「う、うむ?」
?「だからね、おやすみなさい」
それだけ言うと謎の少女は猫のように丸くなってしまった
殿「お、おい!?起きろ、起きろ!おーい!」
少女の静かな寝息と俺の叫びが基地の空に響きわたった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小狐丸「・・・・・・で、なによそれ?」ジ
殿「そ、そこで拾った」メソラシ
その場に一人寝かせておくわけにもいかずとりあえず少女をおぶって部屋に戻った俺を出迎えたのは小狐丸さんだった
小狐丸「もといた場所に捨ててきなさい」
殿「鬼かお前は!」
小狐丸「冗談よ、ただどうするのよ?ちゃんと 面倒みれるの?」
殿「とりあえずお前の中でこの娘は捨て猫か、なんかと同じ感覚なんだな」
いつまでも背中に乗せているわけにもいかないのでとりあえず傍にあったソファに少女を寝かせる
小狐丸「よく見たら面白い髪型してるわね、それこそ猫の耳みたいじゃない」
殿「お前がいうのか・・・・・・」
小狐丸「私はいいのよ、自前だから」ピコピコ
?「うーん」
小狐丸「あら、起きたみたいよ」
先ほどは困惑していたためよくわからなかったがよく見れば少女の左右の瞳の色は異なっていた。左目は代わり映えのない黒だが右目はまるで宝石のトパーズのように鈍い黄色をしている
殿「起きがけに悪いんだが少し質問に答えてもらってもいいか?」
?「いいと思うよ」
殿「なんで此処で倒れてたんだ?」
?「倒れてたんじゃないよ、お日様があたって気持ちがいいからお昼寝してたんだよ」
先ほど会話をしていた時からなんとなくは予想していたがこの娘、電波ってやつかもしれない
殿「なにしに此処に来たんだ?」
?「僕はね、そーとくふ?からお殿様に会いに来たんだよ」
今何やらとても大切なワードが聴こえた気がするのだが、あえて追及はせずに次の質問へと移る
殿「君の名前は?」
?「僕?僕の号は獅子王、平安時代の刀娘だよ 」
こうして俺たちの前に三人目の刀娘 獅子王 が現れたのだった
ーーー その名は獅子王 ーーー
殿「つまり、獅子王は元々は親父のとこに居たが新人部隊の戦力補強という名目のもとこっちに左遷されたわけか」
姫鶴 「筋は通っていますが小規模部隊の補強に第一大隊から戦力が派遣されるのは珍しいですね」
獅子王 「正確に言えば総司令官に銘切りと同時にこっちに行くように言われたから所属してたとは言い難いんだよね」
殿「理由はともあれ歓迎するよ獅子王」
獅子王「よろしくね、殿様」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
殿「さて、晴れて我が部隊に新たな仲間が入ったわけだが一つ問題が発生したわけだ」
食堂で軽い自己紹介を済ませたのち俺たちは場所を執務室に移して話を始めた
小狐丸 「しつもーん」
殿「小狐丸さんどうぞー」
小狐丸「問題ってなによ?」
殿「それを今話すところだ」
殿「獅子王が配属されるにあたり我が部隊に支給される資材の量は増えた」
獅子王「いいことだねー」
姫鶴「ですね」
殿「しかしだ、増えた資材の量はあくまでもこの人数を運用していくうえでの最低限の量でしかないわけだ」
小狐丸「つまり?」
殿「必然的に今までよりも遠征による資材回収と出撃による戦果のどちらかを、あるいは双方を増やさざるおえないわけだ」
姫鶴「姫鶴は問題ありません」
獅子王「ぼくも別に構わないよ」
小狐丸「むしろ今までが楽すぎたくらいじゃないかしら」
殿「そう言ってもらえるとこちらもありがたいな、説得の方法も考えていたがどうやら無駄になったみたいだ」
出撃の回数が多くなればそれだけリスクが大きくなる、それ故に不満がでるのを覚悟していたのだが予想外である
姫鶴「それでは出撃の準備をしたほうが宜しいでしょうか?」
殿「いや、今日は・・・・・・っというよりは暫くは今まで通りで大丈夫だ。貯蓄がないわけではないし少しずつ増やしていくさ」
殿「少し俺の言い方が悪かったかな、少なくとも部隊が貧困に喘ぐわけではないから安心してくれ、あくまでも保険程度にって話だ」
獅子王「のんびりとした基地(とこ)だねー」
小狐丸「否定はしないわ、でも悪くはないところでしょ?」
殿「質問がなければ解散だ、各自好きに過ごしてくれ」
「「「はーい」」」
とくに質問もなかったようで姫鶴たちが部屋を後にする、それを確認して一度大きく息をつく。なんどやっても他人に指示をだすという作業は疲れるものだ、あらためて自分が殿に向いていないことを実感させられる
獅子王「殿様、殿様」
殿「どうした獅子王?」
獅子王「この基地内に湯殿はあるのかな?」
殿「ああ、勿論あるぞ」
獅子王「場所を教えてもらってもいいかな?」
殿「あー・・・・・・了解した」
この基地はどういうわけだか道が以上に複雑でさながら不思議なダンジョンを連想するほどだ、着任当時は俺も姫鶴も地図を片手に右往左往したものだ
獅子王「地図でも書いてくれたら自分でいくよ、そこまで殿に手間をかけるわけにはいかないからね」
殿「そこまで気を使わなくてもいいんだぞ、それじゃあとりあえず地図を渡しておくからまたわからなかったら俺のとこに来てくれ」
獅子王「ありがとう殿様、それじゃあぼく先に行ってるね」
殿「おう、また後でな」
地図を受け取り部屋を後にする獅子王を見送る。最初は少し戸惑ったがどうやら悪い娘ではなさそうだ
殿「ん?」
殿「先に行ってる?獅子王たちと俺の風呂場は違ったはずだが・・・・・・」
話の流れからして獅子王は風呂場に向かったのだろう、ならなぜ先に行ってるなのだろうか?
殿「まぁいいか、さーて仕事仕事」
この時の俺はまだ獅子王の言葉に秘められた意味を理解していなかった・・・・・・
ーーー つづく ーーー
更新遅くなりました。申し訳ありません。
次回は刀剣コレクション初のサービスシーン?を予定しています
剣娘だと思って開いたら違った
面白いからどんどん書いてください
ありがとうございます!そう言っていただけると凄く嬉しいです。
ttp://www.dmm.com/netgame_s/tohken/
こいつか
続きがきになる。期待してます!
次回も楽しみだ
更新マダー?
親父は提督だったのか
その辺りがこの物語の鍵になる予定です。
艦娘はどこに消えたのか?そして榛名はどこに? 早くストーリーの本筋を進めて行きたいのですがなかなか構想してる設定ごとのつなぎの話が思いつかない次第です。
コメントありがとうございました!