2017-03-16 16:58:24 更新

概要

少しおかしな鎮守府日誌のサイドストーリー的な作品です。こっちはのほほんとした旧窓際鎮守府を書けたらいいなーと思っています。

※ 試験的に書き始めたものなのでお見苦しいと思います。申し訳ございません


瑞鶴「演習おわったわよー」

いつも通り司令室の扉を開けるとそこにはいつもいるはずの人物の姿はなかった。


榛名「瑞鶴さん、お疲れ様です」

瑞鶴「あれ?榛名さん1人?」

榛名「提督は今日は大本営にお呼び出し中です」

瑞鶴「え、なにかやらかしたの?」

榛名「身に覚えがありすぎて検討もつきませんね」


微笑む榛名さんを見て私は失笑した。まだまだココに来てから日の浅い私でも提督が偉い人達に嫌われるタイプなのはなんとなくわかる。否、偉い人達は別になんとも思ってないのかも知れないが提督自身が上官という人種を毛嫌いしている以上双方の間柄になんらかの歪みが生じるのは致し方ない話だろう。


瑞鶴「提督は昔からあんなのだったんですか?」


榛名「さあ、どうでしょうか?私も昔のことはよく知らないので」


瑞鶴「え!?」


榛名さんの返答は予想外のものだった。なぜなら榛名さんと提督は傍から見ても上官と部下という枠を超えた信頼関係を築いているのはよくわかったし、何より秘書艦を勤めているのだから当然付き合いは長いものだと思っていたのだ


榛名「あの人はあまり自分の過去を話したがりませんからね。聴けば教えてくれるような気もしますけど」

瑞鶴「本人に貴方の過去を教えて下さい!なんて言ったら勘違いされそうじゃないですか」


私の反応を見て榛名さんは笑った。


榛名「瑞鶴さん、これがなんだかわかりますか?」


そう言うと榛名さんは手元から1冊のノートを私のほうへ差し出した。


瑞鶴「ノートですよね?なにが書いてあるまでは流石にわからないけど」


榛名「これはこの鎮守府の活動記録です。と言っても大本営に提出するような形式張ったものではありません。そちらのほうは提督が書いてますからね。」


瑞鶴「じゃあそれは一体?」


榛名「簡単に言ってしまえば日記みたいなものです。前は私の姉が書いていたものを私が引き継いでるんです」


瑞鶴「へー・・・ん?」


私はようやく榛名さんがこのタイミングで鎮守府日誌の話を持ち出したのかを理解した。


瑞鶴「もしかして昔の日誌を見れば提督の過去がわかる?」


榛名「提督がどんな人だったのかは十分にわかると思いますよ。多少美化されてるとは思いますが・・・」


瑞鶴「美化されてる?」


榛名「こればっかりは実際に見ていただくほうが早いかと。記録室の場所はわかりますか?」


瑞鶴「うん、この間出撃したときにあの辺りの海図を見る時に使ったから場所はわかると思います」


あの少し埃っぽい場所にそんな物があったなんて


瑞鶴「ありがとう榛名さん。お昼を食べたら早速探しにいってみるわ」


他人の過去の詮索をするというのはなんとも気が引けるものだがそんな背徳感も好奇心の前には容易く膝を屈するのであった。


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同日 記録室


瑞鶴「相変わらず埃っぽいわね」

翔鶴「ねえ瑞鶴、やっぱり止めておいたほうが」

瑞鶴「翔鶴姉だって気になるっていってたじゃん」

翔鶴「でも」

瑞鶴「翔鶴姉、まだ着任してから日の浅い私たちに必要なのは信頼関係だと思うのよ。そして信頼関係を築くための第一歩は相手を知ることだと私は思うわけよ」

翔鶴「瑞鶴、貴女言い訳というか建前を言うのが上手くなったわね」

瑞鶴「誰かさんのおかげよ」


搜索を開始するとそれは意外にあっさりと発見された


瑞鶴「第6鎮守府活動記録1デース!?これかしら?」


それは司令室で榛名さんが見せてくれたものと瓜二つだった。


翔鶴「1デース!って書いてあるしこれが1番古そうね」


瑞鶴「読んでみればわかるわ、提督の弱みの1つでも書いてあると面白いんだけど」


私はゆっくりと埃を被った日誌をめくり始めた


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提督「日記帳がほしい?」


金剛「そうでーす!」


提督「朝一番に司令室に乗り込んで来たと思え ばまたくだらないことを・・・」


金剛「くだらなくなんかありません!この鎮守府の素晴らしさと鎮守府運営のノウハウを後世に伝える至高の1冊を作るために必要なのです」


提督「わかったから落ち着け。記録をつけるのは悪いことではない。許可する」


金剛「さっすが提督!話がわかるねー!」


提督「話が終わったなら早くでていけ。仕事の邪魔だ」


金剛「了解ですねー」


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扶桑「おもしろいことですか?」

金剛「はい、この鎮守府の活動記録をつけ始めたので何かありませんか?」


翌日、朝一番で提督から日誌帳をもらった私は食堂にいた扶桑に声をかけたのです


扶桑「たまに提督もおっしゃっていますが私たちになにもないということは大変平和でいいことじゃないかしら」

金剛「それじゃあ面白い日誌にならないねー!」


ここで私達の様子を微妙な距離でみていた加賀が口をひらいた


加賀「さっきから聞いていれば・・・だいたい活動記録というものはそんな面白おかしく書くものではなくしっかりと規律にのっと」

金剛「はいはい、お小言はいりませんねー、これだから小姑艦は困るねー」

加賀「誰が小姑ですって・・・?」

金剛「おー、怖いですね。他をあたるとします」


加賀「まちな・・・」

扶桑「いってしまいましたね。ほんと嵐みたいな人ね」

加賀「嵐とは無秩序に力を振りかざし周囲に不利益をもたらすものです。あの人にはぴったりだわ」

扶桑「嵐だってたまには良い風をもたらすものよ。あの人が来てからここもずいぶん賑やかになったもの」

加賀「騒がしくなったの間違いでは?」

扶桑「そうして眉間にしわばかりよせているとそのうち提督にまで小姑なんてよばれちゃうわよ」


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 北上「おもしろいことかい?」

 金剛「そうでーす」


 寡黙な人の多いこの鎮守府ですが当然明るい人だっている。その中の筆頭ともいえる北上に私は声をかけた


 北上「ないねー、逆にこっちが聞きたいくらいだよ。なんかないかい?」

 金剛「質問に質問でかえされても困りマース」


基本的に私はこの職場を気に入っている。環境だって悪くないし、最前線という立地条件ではあるが司令官に恵まれているので特に気にならない。

気になることといえばその司令官のことだろう

19歳で閣下と呼ばれる彼を初めて見たとき私は恐怖した。

まるで深海のように暗く深い瞳を今でも覚えている。今でこそ深海を思わせる彼の瞳が悲壮や悲しみによるものだと知った私は恐怖こそしないが逆に新たな使命感に燃えていた。


 北上「残念だがね金剛さんや、うちの能面笑わせるような面白いことなんてそうそうないよ」

 金剛「デスヨネー」


提督に笑ってほしい。それが私の目標だった。


 北上「そうだねー、いきなり数え切れないほどの敵が攻めてくるってのはどうだい?感情が一周して提督も笑うんじゃない?」

 金剛「笑えない冗談ですね・・・」

 北上「そうかなー?上からの指令書を見てるときよく笑ってるけどなー提督」

 金剛「あんな頬が引きつってるものは英国では笑顔とはいいませーん」

 

 この人に聞いたのは間違いだったと気づいたときにはすでに多く時間が過ぎ去っていたのでした。


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 金剛「っと、いうわけでていとくぅー!なにかありませんか?」

 提督「帰れ」

 

 文字通りに鎮守府内を一周して司令室に戻ってきた私を待っていたのは提督の無慈悲な一言でした


 金剛「なにかないんですかー?たとえばもうすぐ提督の誕生日だとかー」

 提督「よく知ってるな。明後日だぞ」

 金剛「reaiiy?」

 提督「こんな嘘をついてもなんにもならんだろう」

 金剛「どうしてもっと早くいってくれないんですか?加賀は?扶桑さんとかは知っていたんですか?」

 提督「教えてないからな、知らないだろう」

 金剛「すぐにパーティーの準備をしないと間にあいません」

 提督「パーティー?一体なにのだ?」

 金剛「もちろん提督のbirthdaypartyね」

 提督「俺たちは軍人だぞ。そんなことをしてる暇なんてない」

 金剛「ドンパチなんていつでもできるね、でも提督のbirthdaypartyはその日にしかできないね。どちらを優先するかなんて火を見るよりも明らかね」

 提督「前者だな。よって却下する」

 金剛「No!絶対に後者ね!」

 提督「わかった、ただし条件がある。ここは軍だ一個人の意思で動くわけにはいかない。この鎮守府にいる全員に許可ももらうこと。できなかったらなしだこれでいいな?」

 金剛「おーけい、高速戦艦のスピード見せてあげるね!すぐに許可をもらってきてあげるんだから」

 

 提督は名将だ。用兵に疎い私でもそれはわかる、だがこのときばかりは読みが甘かったことを私は内心で笑みを浮かべながら確信した。


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   1時間後 司令室


 金剛「てーーぇとくぅ!」

 提督「ノックをしろ・・・なんだその手に持った紙の束は」

 金剛「承諾書ね!」

 提督「承諾書?いったいなんのだ?」

 加賀「もちろん提督の誕生日会のですよ」

 提督「加賀、お前はもう少し真面目なヤツかと思っていたよ」

 加賀「真面目ですよ。だからこそ貴方の誕生日を祝いたいのです」

 

 加賀の返答に対しての応対を探したようだが見つからなかった提督は例の引きつった笑顔をみせるとこういいました。


 提督「やれやれ、私が一つ歳をとって屍に近づくのを祝ってなにが楽しいのやら・・・」


 そうぼやいた提督は私の持つ承諾書を一枚さらうと右隅に判を押したのでした。

 

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 金剛「提督へのプレゼントはなにがいいですかね?」

 扶桑「なぜそれを私に聞くのかしら?」

 金剛「そんなの扶桑が秘書艦やってるからに決まってるじゃないですか」

 私の言葉に扶桑は少し困ったような表情を浮かべた

 扶桑「秘書艦と言ってもほぼ書類上のものよ。提督が「秘書艦?そんなもの必要ない」っていうからとりあえず形だけ

   でも私が務めているだけだし」

 金剛「なら変わってください!」

 扶桑「私は構わないけどここの秘書艦の仕事には毎日加賀さんの小言を聴くって業務が含まれているけど大丈夫

    かしら?」

 金剛「おー・・・遠慮しときます」

 扶桑「話を戻すけど提督へのプレゼントだったかしら?」

 金剛「なにかいい案があるのですか?」

 扶桑「ええ。休暇とか喜ぶと思うわよ」

 金剛「この鎮守府、艦娘に対してはホワイトなのに提督に対してはブラックだからねー・・・」

 

 思い返せば私がここに来て以来提督がまともに休息しているのを一度も見ていないかもしれない。時々、部屋に仮眠中

 という札がかかっていることは目にするものの数分経ってからドアの前を通るとすでに札の姿はないし、朝食や夕食の

 時間に食堂で提督の姿を見かけたことも無い。実際のところ鎮守府での提督の業務なんて9割が自主性に任されてい

 るところがあるのでブラック企業とはまた少し違うのだけれどそれでも現状ほぼ不眠不休で提督が仕事をしているのは

 周知の事実ではあった。


 扶桑「もっともあの人が受け取るかと聞かれたら首を横に振るしかないのだけれど」

 金剛「好きでやっていることだ、気にするなとか言われて終わりそうですね」


 提督の承諾を得た、準備もできた、ただまさかプレゼント選びで難航するとは思っても見なかった。

 









後書き

次回「提督の誕生日!」
は本編更新後の予定です。


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2016-02-04 01:55:15

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2016-01-19 20:24:07

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