吹雪「私が艦娘になった理由?」
完結しました
お題です・・・こちらはゆっくり気ままにやってきます
世界観は名無し提督と共通です・・・キャラ崩壊具合も共通。時系列は第9提督が始まる少し前のつもりで書いていきます。
吹雪「私が艦娘になった理由・・・・ですか?」
執務室に呼び出された私を待っていたのはこんな質問だった。正直言ってわざわざ執務室にまで呼び出してこんな事聞くなんてふざけているのだろうか?だが上官である提督の質問だ。無碍には出来ない。
吹雪「えっと・・・それはですね」
提督「いや・・・私には言わなくて良いよ」
吹雪「・・・・それでは何故あんな質問を?」
提督「その疑問も最もだ・・・」
その時ふいに執務室のドアがノックされた。なんとタイミングの悪い、どうせ時津風か島風だろう。あの二人はいつも提督にべったりだ・・・よくわからないがじゃれあって楽しいんだろうか?
提督「・・・誰だ?」
青葉「青葉です、取材の件で参りました」
青葉?・・・たしか広報部に所属する艦娘だったか。しかしなんだって広報部が最前線の第7鎮守府に?
提督「青葉か・・・入ってくれ」
青葉「失礼します」
青葉は礼儀正しく執務室に入ってきた。確か青葉の方が私によりも先任だったはずだ・・・ここはちゃんと挨拶をしなければ。
吹雪「青葉さんはじめまして、私は特型駆逐艦1番艦の吹雪です」
青葉「はじめまして・・・あなたが吹雪さんですか?よろしくお願いしますね」
吹雪「はい、こちらこそお願いします」
提督「では簡潔に話そう・・・艦娘の生い立ちの特集を組んで艦娘達のイメージアップを図ろうとする計画が大本営で挙がっているらしくてな」
吹雪「イメージアップ?・・・それでわざわざこんな事を?」
何を言っているのだ?私達は兵士だ、わざわざ兵士のイメージアップに生い立ちの特集など必要なのだろうか・・・CMでも適当に流しとけばいいだろうに。
青葉「・・・世間一般には私達は機械かモンスターかと思われているんですよ、那珂ちゃんがいくらテレビに出ても艦娘役の売れないアイドルだとしか思われていませんし」
提督「それで艦娘と言うものを正しく理解してもらうために様々な方法で情報を発信していくのさ」
吹雪「なるほど・・・・」
まぁ・・・たしかにそうなのかもしれないが・・・しかし何故私が選ばれたのだろうか?
吹雪「しかし、それでしたら旗艦の雪風さんの方が適任かと・・・」
提督「・・・いや人選に関しては大本営からの指示でね」
大本営からの指示?・・・余計に意味がわからないな。
青葉「理由に関しては気にしないほうがいいですよ?今の時代不幸な生い立ちは普通ですから」
確かに・・・艦娘になろうとする人間に幸せな奴なんていない。生い立ちを書かれたところで迷惑する人も居ないのだ・・・さっさと終わらせてしまおう。
吹雪「そうですね・・・了解しました、この任務受けさせていただきます」
敬礼し提督に伝える。提督もまた敬礼を返す。これで話は終わり、わたしは青葉と共に執務室を後にした。
私と青葉は食堂に移動した。隅の席に二人で向かい合って座り取材の始める。
青葉「それでは・・・取材を始めますね?」
吹雪「はい・・・改めてよろしくお願いします」
青葉「では・・・まずは名前と年齢・・・聞いてもいいですか?」
吹雪「・・・木村 愛理です、年齢は今年で24になりますね」
青葉「24?・・・じゃあ私より年上ですねぇ」
吹雪「そうなんですか?・・・でも着任は私よりも先でしたよね?」
青葉「え?・・・吹雪さんて何期組ですか?」
吹雪「3期組ですよ・・・有名な方だと最上さんと同期ですね、青葉さんは?」
青葉「私は日本近海海戦の直前でしたから」
吹雪「へぇ・・・」
青葉「話が逸れましたねぇ・・・えっとでは艦娘になる前は何をされていたんですか?」
吹雪「艦娘になる前ですか?・・・そうですね深海棲艦が出現する前は普通の生活をしてましたよ」
青葉「普通・・・ですか?」
なにか不満そうな顔でこちらを見つめる・・・確かに普通と一言で言われたら記事にするほうも大変になってしまう。ここはもう少し話してみようか。
吹雪「普通ですよ・・・高校受験に部活・・・淡い初恋とか今考えると楽しかったんだろうなぁって」
青葉「それが普通なんですね・・・・」
吹雪「ん?何か言いました?」
青葉「あぁ・・・いえいえ」
吹雪「あぁ・・・そうそう私の地元は海の近くでしてね、父親は漁業組合に勤めてたんでよくおいしい魚とかもらってたんですよね」
深海棲艦が現れる前の思い出を振り返ることなんて無かったから思いだせるか心配だったけど意外とおぼえているものだった。それもそうか・・・まだ私24歳だしボケるような年じゃないんだから。
吹雪「家族は5人家族で、両親と3人兄妹立ったんです・・・わたしですか?私は一番下ですよ」
近所のおばさんと仲がいいとか、裏手のおじさんは怖かったとか、果てには幼稚園時代はすごくモテたとか・・・・私以外からしたらすごくどうでも良い話ばかりなってしまった。
青葉「・・・ほうほう」
吹雪「青葉さん・・・こんなのでいいんですか?」
青葉「ん?・・・いいと思いますよ?なんか親近感沸きますし、平和だった時を思い出せますし」
さすが広報部といったところか、取材は手馴れているし聞き上手だからついつい話してしまう・・・青葉新聞が人気なのは青葉さんのこういう面も関係あるんだろうな・・・
吹雪「そうですか・・・ならよかった」
青葉「・・・ええ」
ふと青葉さんの表情が暗くなる・・・そうか艦娘の身の上話には欠かせないところがある。それは10年前の深海棲艦出現・・・それによる混乱と悲劇だ。
吹雪「次は・・・10年前の話ですよね?」
青葉「はい・・・無理ならかまいませんよ?」
吹雪「大丈夫ですよ?・・・つらいとか悲しいって言う感情はとっくに麻痺してますから」
青葉「・・・確かに」
吹雪「では10年前は・・・・」
10年前
吹雪「あーもう・・・うるさーい!!」
となりの部屋から大音量で音楽が流れてくる・・・全くこちとら必死に勉強している言うのにいい御身分だ。
吹雪兄「なんだよー吹雪こそうるせーんだよ!!」
向こうで壁をどんどん叩きながら叫んでいる・・・・だが大音量の音楽のおかげで何をいってるかわからない。
吹雪「あ?・・・静かにして欲しいよ」
こんな状況では勉強も見につかない・・・少しコンビニにでもいってお菓子でも買ってくるか。
吹雪「・・・財布は・・・あ、ここだ」
服は何でもいいか・・・さぁてさっさと行こう。
吹雪「・・・いってきまーす」
・・・・誰もいないか、だからあんなこと出来るんだろうけど。
吹雪「んん・・・っと」
ひとつ伸びをする・・・・よし歩きはメンドイからチャリにしよう。
吹雪「ふっふふーんっと」
コンビニまでは1分もかからない・・・なら歩けって?メンドイからいいじゃん。
吹雪「よっと、ふふーんちょうど近くにコンビニがあってラッキーだなぁ・・・」
こんな田舎では珍しく家の近くにコンビニがあるのだ。そのおかげで常連客となってしまい店員さんとも仲良くなった。
店員「あー吹雪ちゃんまた来たの?」
吹雪「うーん・・・ちょっとうるさくてねぇ」
店員「あはは・・・大変だね」
そんな何気ない会話・・・・ただその時だった。轟音と揺れ・・・・あまりのことに私は転んでしまった。
吹雪「え?・・・・」
店員「うう・・・・吹雪・・・ちゃん?」
吹雪「・・・大丈夫ですか!!?」
店員「なんとかね・・・これは一体?」
ウー・・・ウー・・・警報だ・・・しかも聞いたこと無いものだ。この不快な音のせいで余計に何があったのか不安になる。
吹雪「・・・見てきますね!!」
私は走って外に出る・・・・なんだ?いつもと雰囲気が違うぞ?悲鳴と怒号・・・これじゃまるで・・・テレビでやってた戦争みたいじゃないか・・・
吹雪「あれは?・・・何?」
すると上空から小さい物体が降りてくる・・・飛行機?・・・と言うよりはドローンみたいだ・・・・
吹雪「・・・!?何か落とした!!」
身の危険を感じた私はそのまま前に向かって走り出す・・・その直後丁度コンビニがあったところから轟音とともに衝撃と熱波が襲い掛かってきた。
吹雪「うう・・・なんとか無事?・・・!?」
ふと我に帰り振り向くとコンビニがあったところはただの瓦礫の山になっていた。
吹雪「ひ!?・・・はぁはぁはぁ・・」
あの状況では店員さんは・・・怖い・・・怖いよ・・・
吹雪「はぁはぁはぁ・・・死んだ・・・・私も?・・・・はぁはぁはぁはぁ」
だめだ・・・恐怖で・・・呼吸が・・・息を吸わなきゃ・・・苦しくなる・・・・吸わなきゃ・・・吸わなきゃ・・・・!!・・・あれ?・・・どうして?意識が・・・・だんだんとこれは・・・まず・・・い・・・・・
現在
吹雪「・・・とまぁこんな感じでしたね」
軽く回想を終えるうと一本吸いたくなってきた。青葉さんの吸っていいか聞くと二つ返事でどうぞどうぞと火まで用意してくれた。軽く吸うと青葉さんが話始めた。
青葉「・・・1番被害が多かった静岡市の生まれでしたか」
懐かしいな・・・今は第7鎮守府にずっといるため地元がどうなっているのか全くわからない。おそらくある程度は復興しているだろうが・・・
吹雪「ええ・・・まぁその後はよくわからないうちにたくさんの避難所を転々としましたね」
青葉「ほう?・・・それは何故ですか?」
吹雪「そりゃあ・・・避難所には物資がたくさんあるから襲撃されるんですよ」
青葉「・・・人間同士の争いですか」
吹雪「ええ・・・その当時は日本政府自体もあまり機能していなかったので末端の避難所まで意識は向かなかったんですよ」
吹雪「治安なんて・・・ありませんでした」
青葉はひと言そうでしたかと言うとペンを机において少し考えごとをはじめた。
青葉「・・・・ふーむ」
吹雪「どうしました?」
青葉「え?・・・いやぁ少しね?じゃあ続きをお願いできますか?」
私は青葉さんに促されると・・・ひとつ思い出したことがあった。
吹雪「あ、そういえば避難所に入ったときある女の子と出会ったんですよ」
過去
吹雪「ん・・・うん?」
此処は?・・・私はさっきコンビニの近くで・・・?でもここは体育館の様だけど。
男「目覚めたか?・・・・」
吹雪「あなたは?・・・あなたが助けてくれたんですか?」
男「ん?ただの通りすがりさ・・・それに君を助けたのはこの子だよ?」
そういって手を差し向けた先に女の子が眠っていた。見た感じ年は小学生くらいで・・・ピンクの様な髪色だった。
吹雪「そうですか・・・あの子が」
男「まぁ・・・お礼は明日でいいだろ?今日はゆっくり寝るといいさ」
吹雪「あ、はい・・・それでは」
そういうと男は軽く腕を振りながら離れていった・・・寝よう、まだ色々と混乱しているし・・・もういちど横になった。寝れないかと思ったけど予想以上に疲れていたようで数分もしないうちに眠りに落ちた。
吹雪「んん・・・・」
朝か・・・それでもよく寝られたようだ。上半身だけ起こすと助けてくれた女の子へと目を向ける。
吹雪「あれ?・・・いないなぁ」
毛布はあったが肝心の女の子がいなかった。何処にいるのだろうか・・・避難所の把握も兼ねて探しに行こうかな。
吹雪「・・・っしょっと」
昨日は夜だったからわからなかったが今見回すとあまり人は居ない様だ・・・これなら探し出せるだろう。
吹雪「・・・名前聞いてなかったな」
・・・名前がわからなくっちゃ探せないな。予定変更・・・外に出て新鮮な空気を吸いに行こう。
吹雪「んー・・・結構気持ちいいなぁ」
???「・・・おねぇちゃん?」
吹雪「?・・・あなたは私を助けてくれた?」
???「うん・・・」
目の前に居たのはピンク色の髪の毛で光を失った瞳が印象深い女の子だった。
吹雪「名前・・・聞いていいかな」
???「・・・・」
ダメだったか・・・確かに助けてくれたけど私とは初対面だ。さすがすぐには心を開いてはくれないか。
???「・・・不知火」
吹雪「へ?・・・不知火?」
不知火「・・・最近見る夢でそう呼ばれているの」
・・・・?夢だと?何を言っているのだろうか。名前を言いたくないにしても他に理由などつけられるはずだし・・・だが今の不知火ちゃんが嘘をつけるような状態にも見えないの確かだ。
吹雪「そっか・・よろしくね不知火ちゃん」
不知火「・・・うん」
現在
青葉「へぇ・・・不知火さんでしたか」
吹雪「はい」
青葉「・・・しかしあの時すでに艦娘としての適正があったんですね」
吹雪「ええ・・・でもまだあの時は名前しかわからなかったらしいんですよ」
青葉「ほうほう・・・なんか興味深いですね」
吹雪「・・・まぁ話を戻しますとね」
過去
吹雪「・・・不知火ちゃん助けてくれてありがとね?」
不知火「うん・・・」
吹雪「・・・あ、私はね?愛理って言うのよ」
不知火「・・・あいり・・おねえちゃん?」
吹雪「そうよ・・・仲良くしましょ?」
不知火「・・・うん」
一瞬・・・ほんの一瞬だが不知火は笑顔になった。・・・なんだろうその瞬間すごく嬉しくてふいに抱きしめたくなったがその思いはすぐに消えうせた。轟音だ・・・この音はあの爆弾の音だ。
吹雪「不知火ちゃん!!避難所に・・・・!?」
その瞬間避難所に爆弾が1つ落ちっていく・・・マズイ!!身を隠さなければ!!私は不知火ちゃんの手をとり避難所から出来るだけ遠くに逃げ出した。
不知火「おねぇちゃ・・・!!」
轟音と衝撃・・・・またか、またここも襲われたのか・・・・!!
吹雪「うう・・・不知火ちゃん?」
不知火「・・・・ぁ」
吹雪「!・・・不知火ちゃん!?」
意識はある・・・だがパニックに陥っている。このままでは危険だ・・・まずは安全を確保しなければ。
吹雪「・・・くっ!!」
周囲を見渡す・・・ダメだ逃げよう。どこかなんてわからないけど今はここにいたら危険すぎる。私は不知火ちゃんを抱えて走った・・・・
現在
閉じていた目を開けるといつもの風景になった・・・ここまで鮮明におぼえているとは思わなかった。音も温度も本当に存在するみたいで、後1秒開くのが遅ければ恐怖に押しつぶされていたかもしれない・・・・
青葉「・・・その後はどうされたんですか?」
その声に何故思い出していたのかに気づく・・・そうか取材だった。
吹雪「え?・・・しばらくは二人でいろんな避難所を転々としてましたよ」
青葉「しばらく?」
吹雪「ざっと2年ほど・・・そうですあの日までですよ」
青葉「あの日?」
吹雪「あの日ですよ・・・人類が始めて勝利した」
青葉「・・・あぁ艦娘が始めて戦った?」
吹雪「はい・・・あの時の扶桑さんと山城さん・・・・憧れましたよ」
あの日・・・そう艦娘と言うものが初めて公表された日・・・そして人類が深海棲艦に初めて勝利した日、そして私が艦娘となるきっかけとなった日だ。
過去
吹雪「不知火?・・・どうしたの?」
不知火「あ・・・おねえちゃんこれ見てよ」
そういって不知火は1つの新聞を持ってきた・・・なんだろう艦・・・娘?
吹雪「ん?・・・え?・・・深海棲艦に勝ったの?」
不知火「そうだよ!・・・これでみんなの・・・」
吹雪「不知火?」
不知火「ううん・・・そうだこれ見て・・・艦娘ってのは在りし日の軍艦の記憶を持った女の人がなれるのよ!」
吹雪「・・・え?」
不知火「おじさんに教えてもらったの・・・不知火は・・・軍艦なんだって」
吹雪「・・・ねぇ吹雪は?」
不知火「おねぇちゃん?」
吹雪「あ・・・ううん、なんでもないよ?」
不知火「うん?・・・それでね」
最近夢に見る吹雪という船・・・あれもまさか軍艦なのだろうか?もしそうなら?私もあの艦娘に?
不知火「この場所にいけば試験を受けられるって・・・?聞いてるの?」
吹雪「うん・・・ねぇ私も一緒に行っていいかな?」
不知火「おねえちゃんも?・・・うん!一緒にいこ!」
満面の笑み・・・不知火は艦娘になることの意味をわかっているのかな・・・・正直私もわからないんだけど。ただ・・・なれば何かが変わる。犠牲になった人達の仇をとれるかもしれない。
現在
青葉「それで艦娘に?」
吹雪「はい・・・まぁしばらくは艤装が与えられませんでしたけど」
あの時艦娘は実用化されていた・・・だがそれはまだ一部の艦だけで艦霊との契約が出来てもそれに対応する艤装の開発が遅れていたのだ。
吹雪「ですから私が艤装を与えられたのはそれから2年後なんですよ」
青葉「2年?・・・それはそれは」
吹雪「仕方ありませんよ、駆逐艦吹雪はそこまで活躍した艦ではありませんし」
青葉「はぁ・・・」
それは不知火も一緒だったかな・・・あの時は簡易艤装で訓練に明け暮れていたっけ・・・
過去
吹雪「・・・・ふぅ」
不知火「吹雪ねぇちゃん!お疲れ!」
吹雪「ふふ・・・不知火もお疲れさま」
私は艦霊との契約で身体が艤装にあわせて幼くなり、不知火は逆に成長した形なったため見た目では同い年にしか見えなくなっていた。だがそれでも不知火の精神年齢は幼いままであるので今までの関係どおりだが、傍から見たら奇妙に写っていることだろう。
不知火「あーまた艤装開発は別の子だったねぇ」
吹雪「ええ・・・天龍と・・・赤城、金剛か」
不知火「んーまぁ強そう名前だよねー」
吹雪「そうねぇ・・・」
なんとも歯がゆい、艦娘となって深海棲艦をやっつけれるとも思っていた私は、今のこの現状が実に歯がゆかった。
吹雪「ねぇ不知火」
不知火「ん?」
吹雪「いつになったら戦えるのかな?」
不知火「・・・」
・・・そんなこと聞いたって意味なんて無いのだけど・・・それでも聞いてみたかった。何か・・・答えてくれるんじゃないかってそう思ったから。
不知火「私ね?・・・このままでもいいんじゃないかって思っているの」
吹雪「え?」
不知火「だって・・・戦いに出なければ、お姉ちゃんが死んじゃうことも無いでしょ?」
吹雪「不知火・・・」
不知火「それにわたしだって・・・」
吹雪「・・・他の子ならそれもいいかもしれない」
不知火「?」
吹雪「でもね?私は・・・そんなのは絶対にいやなの」
不知火「おねえちゃん・・・」
吹雪「・・・ごめんね?へんなこと聞いちゃって・・・」
不知火「・・・大丈夫」
吹雪「・・・うん」
現在
青葉「へぇ・・・そんな状況だったんですね」
吹雪「・・・青葉さん貴女」
青葉「はい?」
吹雪「・・・いえ何でもありませんよ」
おかしい・・・彼女は一体何者なんだ?あの当時日本にいたのなら知らない筈はないし・・・着任時期もおかしなタイミングだ。
青葉「・・・?」
いや・・・気にしないほうがいいのかもしれない。経歴や出自のおかしい奴にろくな奴はいない・・・ここは何も無かったことにしよう。
吹雪「えっと・・・その後は」
過去
不知火「おねぇちゃーん!」
吹雪「・・・・」
不知火「おねぇちゃん?」
吹雪「・・・」
不知火「?・・・おーい!!」
吹雪「わ!?・・・あぁ不知火ちゃん」
不知火「もー・・・どうしたの?」
吹雪「ん?・・・いや少し疲れちゃったみたい」
不知火「・・・あそうだ!」
わざとらしく思いついたようなジェスチャーをとると不知火は1枚の紙を取り出した。
不知火「おねぇちゃんの・・・艤装開発できたんだって!」
吹雪「え?」
不知火「ん?・・・嬉しくないの?」
吹雪「いや・・・びっくりしちゃって」
不知火「ふふーん・・・まぁそうなるよね」
まるで自分の事の様に喜んでいる・・・不思議な子だ。こんな時代に子供らしさを持っているなんて・・・そんな子がこれから艦娘として戦えるのだろうか?
吹雪「・・・」
不知火「・・・おねえちゃん?」
吹雪「ねぇ・・・不知火は」
不知火「?」
吹雪「なんで艦娘になりたいの?」
不知火「・・・わかんない」
吹雪「・・・は?」
不知火「うーん・・・皆とも話すんだけどやっぱわからないんだよね」
吹雪「・・・そう」
不知火らしいと言えば不知火らしい・・・屈託の無い笑顔が余計にそう感じさせるのだろうか。
不知火「じゃあさ」
吹雪「?」
不知火「おねぇちゃんはどうして艦娘になりたいの?」
吹雪「・・・え?、私は・・・・」
現在
青葉「・・・で?」
吹雪「・・・答えられませんでしたよ」
青葉「・・・」
吹雪「・・・あの時の私には深海棲艦への憎しみが生きる支えになっていました、もし他の人に聞かれたのであれば復讐のためとためらわらず答えたでしょう」
青葉「・・・」
吹雪「でも・・・不知火の前ではどうしても言えなかった!・・・軽蔑されるんじゃないか・・・悲しむんじゃないか・・・色々考えて」
青葉「・・・吹雪さん」
吹雪「・・・でもわかったんですよ?本当は不知火に嫌われたくなかったんじゃないって」
青葉「・・・え?」
吹雪「不知火と一緒にいることで深海棲艦への憎しみが和らぐことが・・・何よりも恐れていた・・・生きる支えが無くなることが・・・怖かった」
頬を一筋の何かが通った・・・これは涙?・・・久しぶりだな涙なんて。私は・・・いま悲しいのだろうか?・・・それとも自分の心の闇の部分を吐露できて安心しているだろうか・・・わからない。
吹雪「・・・それから私は不知火の前から姿を消しました・・・配属も最前線にしてわざと避けるように・・・」
青葉「・・・」
吹雪「以上です・・・これが私の半生ですよ」
青葉「・・・ありがとう御座いました」
数週間後・・・・
吹雪「ふぅ・・・」
午後のひと時・・・同僚の霧島さんからいただいた紅茶をのんで一息つく。・・・今日は出撃もないしゆっくりしているかな。
北上「おーいブッキー」
吹雪「あ、北上さん・・・なんですか?」
北上「お客さんだよぉー・・・えっと青葉って人」
吹雪「青葉さん?・・・はぁ」
どうしたのだろうか・・・あぁこの前の取材の件かな?まぁ丁度いいこちらも用事があったし。
北上「ほいじゃね・・・あ、応接室にいるから」
だるそうに手を振るとだらだらと歩いていった・・・そうだ私も青葉さんのところに行かないとだ。
応接室
吹雪「どうも青葉さん・・・どうされましたか?」
青葉「先日の取材の件で」
吹雪「そうでしたか・・・」
・・・沈黙。耐え切れなかったのか青葉さんが口を開いた。
青葉「吹雪さん・・・来週の広報誌で吹雪さんの生い立ちが掲載されることになりました」
吹雪「そうですか・・・では」
青葉「大丈夫ですよ・・・記事にあのことは書いていません」
吹雪「そうですか・・・」
また沈黙・・・今度は私が耐え切れなくなって口を開いた。
吹雪「青葉さん・・・・実は」
青葉「?」
ポケットにしまっていた一通の封筒を取り出す。
吹雪「もし・・・不知火がいる鎮守府に向かうことがあったら・・・この手紙を不知火に渡してもらっていいですか?」
青葉「吹雪さん?・・・」
吹雪「なんていうか・・・今伝えなきゃいけない気がして」
青葉「そうですか・・・あの」
その時・・・緊急出撃を伝える警報が鳴り響いた。こんな時に敵襲なんて・・・仕方ないすぐに出撃しないと・・・
吹雪「青葉さん・・・すみませんが行かないと」
青葉「・・・わかりました」
応接室をでると出撃ポートに向かう・・・緊急出撃とはめずらしい、最近は深海棲艦の攻勢も落ち着いていたのだが・・・
出撃海域
雪風「各艦状況は?」
北上「こちら北上さまぁ・・・敵影なーし」
霧島「こちらも敵影なし・・・」
他の艦も次々に報告をしていく・・・次は私の番かな?
吹雪「こちら吹雪・・・異常ありま・・」
ドォン・・・轟音が鳴り響いた・・・あぁ懐かしいな10年前の時と同じ音。あの時もこの音で襲撃に気付いたっけ?
時津風「吹雪!?」
吹雪「え・・?」
なんで?・・・なんで時津風はそんな驚いた顔しているの?だって私は・・・私・・・痛い・・・あれ?すごく・・・痛い?
雪風「時津風!!どうなってんの!?」
時津風「深海棲艦の奇襲です・・・その攻撃で吹雪が負傷・・・今応戦しています!」
雪風「チッ!!」
北上「・・・まじかい」
霧島「応戦します!」
痛い・・痛いぃ・・・痛い・・・あぁ血が・・・血が流れて・・・止めなきゃ・・・止めないと死んでしまう。
島風「吹雪!!・・・今行くよ!」
吹雪「ぁぁ・・・」
声が・・・出せない?・・・島風・・・私・・・どうなって・・・いるの?
島風「吹雪!!・・・・これは」
雪風「島風!・・・状態は?」
島風「下腹部に直撃・・・貫通した弾によって破壊さてた艤装で・・・喉が・・・貫かれて」
雪風「・・・島風は吹雪を保護して撤退!残りでアイツを仕留める!」
霧島&北上&時津風「了解!」
あぁ・・・私死ぬんだ。もっと・・・もっと死ぬときって嫌だとか悲しいとかの感情が出てくるもんだと思ってたけど・・・なんていうか穏やかというかそんな気持ち・・・
島風「吹雪!!・・・大丈夫よ!助かるから・・・絶対!助けるから!」
島風・・・わかっているよ?私は多分ダメだ・・・もう死んでしまう。だからそんな必死にならなくてもいいのよ?
島風「吹雪!?・・・あなた」
島風「なんで・・・笑っているの?」
え?・・・笑っている?・・・私が?
島風「吹雪死ぬのよ?・・・すごく痛くて・・・悲しくて・・・・つらい筈なのに・・・・」
死ぬ・・・でも悲しい?・・・つらい?・・・いや違う。私は今・・・
島風「何で・・・そんなに嬉しそうに・・・幸せそうに笑っているのよ!!」
そうだ・・・そうだそうだそうだそうだ・・・私は今・・・嬉しいんだ・・・幸せなんだ。
吹雪「ぅぅ・・ぁぁぁ」
・・・痛い・・・下腹部と喉辺りに鋭い痛みと焼けるような痛みを感じる・・・この痛み・・・この痛みこそが私の望みを叶えてくれるもの。わたしは・・・死にたかった・・・10年前のあの日家族がみんな死んじゃって・・・その次の日には助けてくれた人たちが死んじゃって・・・それからすっと毎日いろんな人が死んでいった。やさしかったお爺さん・・・綺麗なお姉さん・・・無邪気なあの男の子・・・頼りになりそうなおじさん・・・みんなみんな
・・・死んだ
だから・・・私は深海棲艦を憎んで!
・・・違う
・・・深海棲艦なんて憎んでいない
・・・そう
・・・なら私はなぜ艦娘に?
・・・そうか
・・・そうだったんだ
私が艦娘になった理由・・・それは
・・・死にたかったからなんだ
島風「吹雪?・・・吹雪!!」
あぁ・・島風そんなに泣かないでよ?
北上「・・・クソ」
私は大丈夫だから・・・北上さんそんなつらそうな顔しないでください
時津風「そんな・・・そんなこと」
時津風?・・・あなたも泣いているのね?悲しむことじゃないのに
霧島「私が・・・あの時・・・」
霧島さん・・・私今願いが叶って幸せなんですから・・・そんな自分を追い詰めないでください
提督「・・・」
提督まで・・・皆さんどうしてそんなに悲しい顔をしているんですか?もっと笑顔で見送って欲しいのに
だって・・・
私・・・すごく幸せなんですから
数年後 第1鎮守府 医療病棟
不知火「お姉ちゃん・・・今日は5匹の深海棲艦を殺しましたよ」
吹雪「・・・」
不知火「ふふふ・・・わかっています。おねえちゃんの代わりにもっと・・・もっと深海棲艦を殺してあげますからね?」
吹雪「・・・」
不知火「・・・おねえちゃんの憎しみは私がちゃんと晴らしますから」
青葉「・・・失礼します」
不知火「青葉さん・・・お久しぶりです」
青葉「はい・・・不知火さんもお元気そうで」
不知火「ええ・・・おかげさまで」
吹雪「・・・」
不知火「・・・すこしお手洗いにいってきます」
青葉「あ・・・はいどうぞ」
吹雪「・・・」
青葉「貴女はあの時とても幸せそうな顔をしていました・・・・まるで」
吹雪「・・・」
青葉「夢が叶ったみたい・・・でした」
吹雪「・・・」
青葉「あなたは・・・もしや」
吹雪「・・・」
青葉「いえ・・・やめときましょう」
吹雪「・・・」
青葉「もし私の予想が正しければ」
吹雪「・・・」
青葉「意識不明のまま生き続けているなんて・・・・あまりにも悲しすぎます」
完
完結です
今回はこういった暗い話にチャレンジしてしまいました。どうだったでしょうか?ご意見があればコメントいただけるとうれしいです。
おお!
続き楽しみにしてます!
アテナさん
コメントありがとうございます
楽しみにしていただいて光栄です・・・更新がんばります。
吹雪好きの自分からしたらとても楽しめました!
更新待ってます!
3の名無しさん
コメントありがとうです
元の吹雪のイメージとは変わってしまいますが・・・・(・_・;)
更新がんばります