ラビットハウスの珍客②~とにかく『凄い』客~
~前回のあらすじ~
マスターより店番を頼まれたココア達は、早速『号泣議員』に戸惑いながらも無事に乗り切ることができた。
しかし、安心したのもつかの間、今度は外国人がやって来た!
<前回>
カランカラン・・・
ティッピー「・・・やれやれ、せいせいしたわい・・・」
ココア「数分間が長く感じたね~」
チノ「・・・相手するこっちの身にもなってください・・・」
ティッピー「まあしかし、これ以上ああいう厄介な客が来ることはないじゃろう」
チノ「・・・だといいんですけどね」
ココア「まあまあ、もうすぐリゼちゃんも来るし、大丈夫だよ!」
チノ「もう!他人事だと思って・・・」プクッ
カランカラン・・・
ココア「あ、お客さんだよ!いらっしゃいませ~!」
プラシド・ドミンゴ『お、なかなかいい雰囲気の店だね』
ホセ・カレーラス『言っただろ?何回も来日してるけど、一度入ってみたかったんだよね』
ルチアーノ・パヴァロッティ(デディベア)『お、バーもやってるのか。なあ、ここ夜になったら貸し切りにしない?腹いっぱい食って酒飲みたいよね』
ココチノ「」
ドミンゴ『口も無いのにどうやって飲み食いするんだ?あ、このテーブル『3人』ね』
ココチノ(どうしよう、外国の人来ちゃった(来ちゃいました)~!!)
《②~とにかく『凄い』客~》
ドミンゴ『・・・しかし、突然電話を掛けてきて『ジャパンで会おう』なんて言うから何かと思ったら』
ドミンゴ『未だに信じられないよ・・・奇跡だね』
カレーラス『俺もいきなりデディベアが喋りだしたときはびっくりしたよ』
パヴァロッティ(デディベア)『何だ、そんなに俺が『帰ってきた』のが不服かプラシド?』
ドミンゴ『何を言ってるんだ、俺達はもう和解したじゃないか』
ドミンゴ『それに俺は最後に会ったとき、きちんと別れを告げられなかったのを後悔していたんだ。もう一度会えて嬉しいよ』
パヴァロッティ(デディベア)『・・・そうか・・・俺も嬉しいよ』シミジミ
カレーラス『ところで、ジャパンはいい選択だっただろう?こっちじゃA○Bっていうのが流行ってて、マスコミはもう俺達への関心は薄いみたいだからね』
ドミンゴ『ああ。おかげで静かに過ごせる』
ワイワイガヤガヤ・・・
ティッピー(とにかく良く喋るのぉ・・・)
ティッピー(それに引き換え・・・)
ココチノ「」ガクブルガクブル
ティッピー(ここは自分らのホームじゃというのに、情けないのう)
ココア「(チノちゃんもう一回ジャンケンだよ!)ワナワナ
チノ「(何言ってるんですかもう5対3でココアさん負けてるんです、さあ行ってきてください)」ガタガタ
ココア「(いやまだだよ、もしかしたらこれから3連勝するかもしれないじゃん!!)」ワナワナ
チノ「(どんな屁理屈ですか!?)」ガタガタ
ドミンゴ『それにしても、あのルチアーノがホセの膝に乗っかっているのが滑稽だよね』
カレーラス『昔だったら逆だったのにな』HAHAHA
パヴァロッティ(デディベア)『そろそろ机の上に乗せてくれ、前が見えない』
カレーラス『これでいいかい?』ヒョイ
パヴァロッティ(デディベア)『うん、良い眺めだ。女の子が見える』
カレーラス『おいおい。・・・そういえば注文取りに来るの遅いね』
ドミンゴ『そうだな、ちょっと呼んでみるか』
Excuse me!
チノ「ほら呼ばれてますよ『街の国際バリスタ弁護士』への第一歩ですさあ行ってきてください」グイ
ココア「それ関係あるの『国際』ってとこだけだよね!?チノちゃんの薄情者ー!!」
三大テノール「・・・・・・」
ココア(どうしようすごい優しそうだけど視線が全くブレないよプレッシャー半端ないよあと何でデディベア!?)バクバク
ドミンゴ『・・・注文を取ってもらっていいかな?』
ココア「(うわ何て言ってるのかわからないよ!!)え、え~っと・・・」
ココア「び、ビーフ オア フィッシュ?」
三大テノール「・・・・・・?」
ココア「・・・・・・」
ココア(や、やっちゃったー!!!)ガビーン
チノ(何やってるんですかココアさんそれ飛行機の中で聞くことです)アワワ
チノ(仕方ないここは助け舟を・・・)サッ
チノ「ココアさん、メニュー見て指差してもらってください、それで通じるはずですから」ボソ・・・
ココア「ありがとうチノちゃ~ん、持つべきものは妹だよ~」パカ
※昼のメニューには日本語しか書いていませんでした。
ココチノ「・・・・・・」ダラダラ
ココチノ(詰んだあああああ!!!)ズガーン!
ココア「どうしようこれじゃ注文取れないよおおおおお!!」ワタワタ
チノ「落ち着いてくださいココアさん策はきっとあります逃げちゃダメです逃げちゃダメです逃げちゃダメです・・・」ブツブツ・・・
三大テノール「・・・・・・」
カレーラス『・・・ひょっとして、彼女達は英語が分からないんじゃないか?』
ドミンゴ『ああ成程。ジャパンでは外国語教育が遅れているとは聞いていたけどね』
パヴァロッティ(デディベア)『だからジャポネーゼにはいい歌手が少ないのか』 ※自身も英語以外は得意ではありません。
カランカラン・・・
リゼ「遅くなってすまない!店は大丈夫か?」
チノ「リゼさん・・・」
リゼ「・・・ん?どうした??」
ダダッ
ココア「リゼちゃーん!!待ってたよぉ~!!!」ダキッ
リゼ「いきなりどうしたんだココア!?(そんなに私がいなくて寂しかったのか?///)」
チノ「・・・」チラッ
三大テノール「・・・・・・」ニコッ
リゼ(ああ、なるほど・・・)
リゼ「・・・大丈夫だココア、私に任せてくれ」スッ
ココア「リゼちゃん・・・」グスッ
リゼ「チノ、きれいなエプロンはあるか?」コツコツ
チノ「はい、カウンターの裏にあります」タタッ
リゼ「ここで手を洗わせてもらうぞ、コートはここに置いてもいいか?」ヌギッ
チノ「大丈夫です。エプロンここに置いておきますね」スッ
リゼ「ありがとう。ココア!あの人達が来てからどれくらい経つ?」ジャー
ココア「うーん、ジャンケンでけっこうあいこになったから5分以上は経ってるかな・・・」
リゼ「許容範囲はオーバーしているな・・・分かった、すぐ行く!」キュッ!
ココア「・・・リゼちゃん、ごめんね?」
リゼ「いや、私が来るまでよく保(も)たせてくれたよ。二人ともよく頑張った」
ココア「リゼちゃん・・・」ウルウル・・・
チノ「・・・ありがとうございますリゼさん、後はお願いします」ペコ
リゼ「おう、任せておけ!」ビシッ
コツコツ・・・
リゼ『・・・大変お待たせして申し訳ありませんでした、ここからは私が応対させていただきます』ペコ
ドミンゴ『いや、すぐに気付かなかった私達も悪かった。申し訳ないと彼女達に伝えてくれ』ニコ
リゼ『ありがとうございます・・・ご注文はいかがなさいますか?』
ドミンゴ『ここにはランチを食べに来たんだ。メニューにある食べ物を人数分、そこのデディベアにも同じものをお願いするよ』
リゼ(デディベアの分も!?どういう事だ!?てかチョコンと座ってるし!!)
デディベア「Ciao」チョコン
リゼ(喋った!!?)
ドミンゴ『・・・気にしないでくれ、あと飲み物は食後にしたい』コツン Auch!
リゼ『かしこまりました・・・お飲み物は何になさいますか?』
三大テノール「「「Espresso」」」
ワイワイガヤガヤ・・・
チノ「・・・古いエスプレッソマシーンがウチにあって安心しました・・・」ゴシゴシ
ティッピー「たまに頼むヤツがいるんで裏メニューで出していた時があったんじゃ。今はそんな客もいなくなったがの・・・」
チノ「それにしても、エスプレッソが食後の飲み物なんて初めて知りました」キュッキュッ
ティッピー「ヤツらにとっての習慣じゃ。おかげでマシンを洗う時間も確保できたがな」
ティッピー「あと豆はコロンビアあたりを出してやれ、ヤツらの故郷の味じゃ」
チノ「・・・あの人達の出身がわかるんですか?」
ティッピー「わしも言葉までは分からんが英語のなまりでなんとなく分かる」
ティッピー「・・・いい機会じゃ、ヤツらを良く見ておけ、色々と面白いと思うぞ」
チノ「はい」ゴト
ティッピー(今回は『イタリア人』とスペイン人で助かったのぉ、他の国のモンならこうはいかんかったぞい)
ココア「リゼちゃん!パンケーキできたよ!」
リゼ「わかった!取りに行くからお盆に乗せてカウンターに置いておいてくれ!」
ココア「は~い!」ゴト
三大テノールと話すリゼ
ココア(リゼちゃん、かっこいい~!)キラキラ
チノ「・・・ココアさん、次ケーキお願いします」ガチャッ
ココア「・・・あ、うん!分かってるよチノちゃん!」タタッ
~ケーキを出し終えて~
リゼ「・・・ふう」
チノ「お疲れさまですリゼさん。これ、汗拭き用のタオルです」スッ
リゼ「ありがとう」
チノ「大急ぎでナポリタンを作った後ずっと接客でしたからね。まさにフル稼働です」
ココア「サンドイッチはココアが一手に引き受けてくれたからな、ホント助かったよ」フキフキ
ココア「えへへ~」
チノ「パン作りに関してはココアさんの右に出るものはいませんね。・・・そういえばリゼさん、あの人たちは一体何者なんですか?」
リゼ「ああ、どうも聞いた話だと2人とも『歌手』らしい」
リゼ「左の小柄な人がホセさんで右の背の高い人がプラシドさん。あと1人の3人で『The Three Tenors』っていうユニットとしても活動していたんだって」 注)カレーラスでも170センチ
ティッピー(『三人のテノール』か・・・聞いたことがあるのう・・・)
ココア「でも今来ているのは2人だけだよ?」
リゼ「・・・残念ながらあともう1人・ルチアーノさんは8年前に他界してしまったらしい」 ※ちなみにパヴァロッティで184センチ。意外なことに187センチのドミンゴより低い
ココア「そうなんだ・・・」ウルウル
ティッピー(・・・いや、感動しているところ悪いが・・・)チラ
パヴァロッティ(デディベア)「 Bene 」
ティッピー(ルチアーノ、今ここにいるぞい)
チノ「ちなみにあのデディベアは何なんですか?喋るみたいですし・・・」
リゼ「ああ、ホセさんの持ち物で、会話プログラムが入ってるらしいな。『アイボアイボ』言ってたけど、ありゃ分かってないな」
チノ「そうですか・・・」
ティッピー「・・・さて、そろそろエスプレッソを入れる準備をせんとな」
ジョボボボボ・・・
チノ「・・・すごく濃い匂いです」
リゼ「ああ、こんなの飲んだことないよ」
ココア「苦そう~」
チノ「・・・用意できました、リゼさんお願いします」カチャ
リゼ「了解!」
ドミンゴ『・・・そう言えば、『うさぎになったバリスタ』は知ってる?』
カレーラス『それなら俺も読んだよ。同じ作者の『カフェインファイター』も良かったね』
パヴァロッティ(デディベア)『何それ、俺ついていけないんだけど』
カレーラス『今度見せてやるよ。映画にもなってるから、ウチで一緒に観よう』
ドミンゴ『あと噂じゃ、作者はこの街に住んでるらしいね』
カレーラス『ぜひ会ってみたいよね』
リゼ『お待たせしました、食後のエスプレッソでございます』カチャ
ドミンゴ『少し聞きたいんだけど、アオヤマ・ブルーマウンテンという作家がこの街に住んでいるというのは本当かい?』
リゼ『ええ、ウチにも時々いらっしゃいますよ!』
ドミンゴ『そうなのか!でも今日は来ていないみたいだね』
リゼ『そうですね、毎日いらっしゃる訳ではないので・・・』
カレーラス『残念だよ、会えたらぜひサインをいただきたかった』
リゼ『本人が来たら伝えておきます。きっと喜ぶと思いますよ』
デディベア(すごい俺空気)
リゼ『・・・ご注文の品は以上ですね、ではごゆっくりどうぞ』ペコ
ドミンゴ『ここまでどうもありがとう』
サー
チノ「・・・本場では砂糖を入れて飲むんですね」シラナカッタ
カチャカチャ
ココア「ホセさんはミルクも入れたよ!」
チノ「勉強になります」カキカキ
カレーラス『・・・さて、ひととおり落ち着いたところで』
ドミンゴ『ルチアーノとの再会を祝して』
2人『乾杯』チン!
リゼ「?」
ズズ・・・
ティッピー(それにしても、食べ物の臭いが充満しとるのぉ)
ティッピー「・・・チノ、空気の入れ替えをしておくれ」
チノ「わかりました」タタ・・・
ココア「私も手伝うよチノちゃん!」タタッ
ガチャ ガチャ
サワ・・・
カレーラス『・・・いい風だ』
ドミンゴ『ああ、ヴェネツィアを思い出す』
パヴァロッティ(デディベア)『・・・・・・』
Ma n'atu sole cchiu bello i ne.
'O sole mio sta nfonte a te!
ティッピー「い、いきなり何じゃ!!?」
チノ「びっくりしました・・・」ドキドキ
ココア「あのデディベア歌も歌えるんだね!!」
リゼ「いや驚く所そこじゃないだろ!!」
'O sole, 'O sole mio,
ドミンゴ・カレーラス『・・・・・・』ハァ
sta nfronte a te,
sta nfro~~~~~~nte a te~~~~~~~~~~~~!
パヴァロッティ(デディベア)『何だお前らハモりかよ』
カレーラス『いきなりはもうムリだよ』
ドミンゴ『俺に至っては今バリトンだし』
カレーラス『死んで肉体から解放されたお前とは違うんだよ』ハハッ
パヴァロッティ(デディベア)『いいぜ~喉の調子は気にしなくていいし、体も軽い』HAHAHA
リゼ「!!?」
ドミンゴ『今日は心地良いランチタイムだったよ』
リゼ『そこまで言っていただいて恐縮です』
ドミンゴ『カードは使えるかな?』スッ
リゼ『はい、こちらでお支払いですね(やっぱり凄いな・・・)』ピッ
ココア「・・・ねえねえリゼちゃん、1つ聞いてもらっていいかな?」
リゼ「なんだ?あまり失礼なこと聞くなよ」
ココア「プラシドさんとホセさん、いくつなのかな~って」
リゼ「・・・まあ、それくらいなら良いんじゃないか、聞いてみるよ」
リゼ通訳中・・・
リゼ「・・・・・・」
ココア「・・・どうだったリゼちゃん?」
リゼ「・・・プラシドさんが74歳、ホセさんが69歳だって。ルチアーノさんは71歳で亡くなったそうだ」
ココア「うそ!!?ぜんぜん見えないよ!!!」
ティッピー「そんなバカな!!?わしが死んだときより若く見える!!!」ガーン
チノ(おじいちゃんがショック受けてます!)
ドミンゴ『・・・日本語は分からないけど、彼女達が驚いているのは分かるよ』ニッ
HAHAHAHAHA・・・
カレーラス『ではこれでおいとまするよ』カラン・・・
リゼ『はい、またのお越しをお待ちしております!』
ドミンゴ『・・・本当にいい店だ、ジャパンに来た時のランチはここにするよ』
カレーラス『・・・プラシドの方がこの店を気に入ってしまったらしい』HAHAHA
カレーラス『でも、本当に最高のランチタイムだった、ありがとう』
パヴァロッティ(デディベア)「 Grazie 」
リゼ『~///私も皆さんとお話できて楽しかったです!ありがとうございます!!』
カレーラス・ドミンゴ『・・・』ニコ
カランカラン・・・
ココチノリゼ「「「ありがとうございました~!!!」」」
三大テノール『・・・・・・』コクッ
「「「 ド ウ モ ア リ ガ ト ウ 」」」
カランカラン・・・
ココア「・・・最初は大変だったけど・・・」
チノ「・・・とても気持ち良いお客さんでしたね」
リゼ「言葉の壁なんて脆いもんさ!打ち解けてしまえばみんな友達だよ!!」
チノ「・・・でも私は、最後まで皆さんと距離を置きっぱなしでした」
ココア「これから少しずつ慣れて行こっ!私も協力するから!」ニコッ
チノ「ココアさん・・・」
リゼ(良かった、2人とも異文化交流に前向きになってくれて・・・)
カランカラン・・・
青山ブルーマウンテン「こんにちは~」
ココア「あ!青山さん!!」
チノ「・・・本当に僅差でしたね・・・」
リゼ「そこで外国の方と会いませんでしたか?」
青山「ええ、少しお話をしていました」カランカラン・・・
ココア「へ~、どんな?」
青山「・・・背の高い方が、『お美しい方ですね』、と言ってくださいました~」テレテレ
ココチノリゼ(((・・・プラシドさん、お歳を召してなおナンパ!!?)))ドーン
~今までにあった事を説明~
青山「・・・そうですか~あのお2人は私の本を読んでいてくださったのですね~」
リゼ「海外の人にまで読まれていて凄いですね青山さん!」
青山「ゆっくりお話できず、本当に残念です~」
チノ「大丈夫です。ここを気に入ってくださったので、きっとまた会えますよ」
ココア「そうだよ青山さん!それまでに新しい本出して2人に読んでもらお!」
青山「そうですね~でも、」
青山「ここに来たのは、作品のアイディアが尽きてしまったからなのですよ・・・」ズーン
ココチノリゼ(((ああ、突いてはいけないところを突いてしまった・・・)))
カランカラン・・・
リゼ「あ、いらっしゃいませー!」
つづくっ!
<次回>
というわけで今回のゲストは、かつて世界を震わせたオペラ歌手グループ『三大テノール』の面々でした。
今回登場した彼らの『設定』にはけっこうな元ネタがあります。割と集めやすいのでぜひ調べてみてください。
また、三人が喫茶店で膝を突き合わせるこの状況は、彼らの『事情』を知る人には感慨深いかもしれません。
もっとも、彼ら世代のオールドオペラファンなんてこのサイトに来るわけがありませんが(笑)。
書いてて気付いたけど、青山さんも『凄い』客になってね!?
さて次回は、みんな大好き『あの人』の登場です!
さあ熱くなれ!!!
このSSへのコメント