ラビットハウス・訳あり人の夜酒場
ごちうさ短編シリーズ。全2作です。
ゲストが誰か分からない仕様になっていますが、読んでいるうちにわかると思います。
さて、ラストの種明かしまでに見破ることができるかな?笑
~ラビットハウス・バータイム~
カランカラン・・・
タカヒロ「いらっしゃいませ」
老人「ゆっくり飲みたいのだが構わないかね?」
タカヒロ「大丈夫ですよ、宜しければカウンターへどうぞ」
老人「済まない。では梅酒をロックで頼むよ」ガタ
タカヒロ「かしこまりました」
ティッピー(この爺さん、ワシに似た声をしておるのう・・・)
老人「・・・美味い。この梅酒はどこのものかね?」カラン
タカヒロ「徳島の美郷(みさと)という、瀬戸内一の梅の産地で漬けられたものです」
老人「梅というと、やはり和歌山の『紀州梅』が一番に浮かぶが・・・うん、いい味だ」グビ
タカヒロ「有難うございます」
ティッピー(当たり前じゃ、ワシの息子が選んだものじゃからのぉ)フンス
老人「・・・お代わり、いいかね?」カラン
タカヒロ「・・・少しペースが速いようですが、どうかなされましたか?」
老人「・・・・・・」
タカヒロ「私のような者で良ければ、お話をお聞きいたしますが・・・」
老人「・・・気分の悪い愚痴だが、構わないかね?」
タカヒロ「お構いなく。商売柄、そうした話には慣れております」
老人「・・・私の勤め先は今、深刻な経営難に陥っている」
ティッピー(その歳で勤め人じゃったのか・・)
老人「きっかけは、とある事故だった・・・」
老人「それを理由に政府から仕事を凍結され、我々は最初の危機を迎えた・・・」
老人「この危機を乗り切るために天才少年を雇い、私と『あいつ』も自ら極寒の地へ出向いたりもした」
タカヒロ(・・・どんな仕事なんだ・・・)
老人「だが、多くの部下に見限られ、離反されてしまった・・・今では彼らは我々の『抵抗勢力』になっている」
タカヒロ(・・・訴訟でも起こされたのだろうか?)
老人「残ったものはトップのあいつと私、『パイロット』が2名・・・」
ティッピー(LCCでもやっていたのかのう?)
老人「あとは老朽化した施設と人手不足を補う無人システムくらいだ」
タカヒロ(そこまで追い込まれているのか・・・)
老人「ああ、あとモノリスに知能を移した『老人達』がいたか」
ティッピー(SFでも見ているような気分じゃのう)
老人「だが先日、元部下達とひと波乱起き・・・」
老人「その過程でパイロット2名を失ってしまった」
タカヒロ(引き抜きでもあったのだろうか?)
老人「おまけに・・・」
老人「あいつは何を考えているのか我々を支えていた『老人達』を処分した」
タカヒロ(・・・『OB会』を解体したのだろうか)
老人「・・・私達はついに『二人きり』になってしまったよ」ハァ
老人「『彼女』を失ったあいつを支えていくと誓ったが、さすがに不安になってきたよ」
タカヒロ「・・・随分と苦労をされてきたんですね」
ティッピー(一からこの店を始めたわしに比べりゃまだまだじゃわい!)フンス ※成功のきっかけはタカヒロさんです
老人「・・・あとこれは個人的な感想なのだが・・・」
タカヒロ「何なりとどうぞ」
老人「あいつ・・・老いてからサンバイザーを掛けるようになった」
老人「元々サングラスを掛けるような男だったが・・・さすがにあれはダサい」
タカヒロ「・・・そうですか・・・」
ティッピー(一体どんなマダオなのかのう?)
老人「・・・久し振りに心が晴れたよ、長々と済まなかったね」
タカヒロ「お気になさらず。またいつでもいらして下さい」
老人「・・・あの梅酒、美郷の梅酒だったか。あれは美味かった。また飲みに来るとしよう」カランカラン・・・
タカヒロ「お待ちしております」
カランカラン・・・
ティッピー「色々な人生があるものじゃのう」
タカヒロ「そうだね。父さんのようにうさぎになってしまった人もいるしね」
タカヒロ(しかし、今のご老人、少し気になるな・・・あいつに聞いてみるか)
~翌日・天々座邸~
リゼの父「・・・それはきっと、特務機関『NERV』のことだな」
タカヒロ「・・・確か、箱根の方で極秘作戦を展開していたという・・・」
リゼの父「ああ、その老人は副指令をやっている男だろう」
タカヒロ「今、そのネルフが内輪揉めで大変なことになっているらしいが・・・」
リゼの父「その通りだ、もう国家組織としては機能しなくなっている。今に消滅するだろう」
タカヒロ「・・・そうか・・・あの老人も苦労が絶えないな」
リゼの父「いや、そうでもないんじゃないかな?あの老人、あれでも引く手数多らしいから」
タカヒロ「・・・どういう事だ?」
リゼの父「・・・なあ、タカヒロ」
リゼの父「・・・ネオアトランティスって知ってるか?」
~Fin~
<2作目>
というわけで、ティッピーと魂を同じくするネルフの副指令・冬月コウゾウ先生でした。
このシリーズのきっかけは2作目を思いついたことだったのですが、それにあたり1作目を誰にしようかというので悩みました。
冬月先生は割りと早くに思いついたのですが、膨らみすぎてつまらなくなるので一旦はボツにしました。
しかし、書く内容を絞れば面白くなるかもと思い立ち、実際書いてみたら思った以上に纏まったのでこれで通すことにしました。
書いてるうちにアンジャッシュみたいになったのはご愛嬌。
ちなみに、梅の産地が「ミサト」だったのは偶然です。
お気に召していただけたでしょうか?2作目も読んだ上で、感想などありましたらよろしくお願いします。
このSSへのコメント