ほっぽちゃん小説~いつか優しい海で~ 後編
※艦隊これくしょんの二次創作SSです。
※深海提督とか妄想設定多めです。
※矛盾も多いかも。
※前編はこちらからhttp://sstokosokuho.com/ss/read/3676
「…攻撃目標視認!繰り返す、攻撃目標視認!」
「それホンマかいな!?よっしゃ、いっちょいったるで!」
「さぁー!ぱあっといくかっ」
「ちょい待ってーな準鷹!まだ目標との距離が分からんから、先遣隊の報告を待つんや!」
「だー悪い龍驤。さっきまで潜水艦や夜戦が多くてまともに攻撃隊を発艦出来なかったから、気持ちが先走ってるんだよ」
「その気持ち、よう分かるけどな。でももう少しの辛抱や。発艦準備だけさせて、その時を待つんや」
「わーった」
「敵泊地見ゆ!白髪の幼い少女が我が軍の攻撃対象と見る!距離200海里!」
「ようし!第一次攻撃隊、発艦開始や!」
「いよっしゃああ!頼むぜェ、加賀さんの搭乗妖精さん達!」
「」ビシッ
「無線封鎖解除、全艦、突撃せよ!」
ほっぽ「…」ヒュー
ほっぽ「…ナカナカ…トバナイ…」
ほっぽ「…テイトクハ…ウマク…トバシテ…イタノニ…」
ほっぽ「…モウイチド」ヒュー
ほっぽ「…ヤッパリ…トバナイ」
ほっぽ「…カエッテ…キタラ…オシエテ…モラオウ」
ザッザッザ
憲兵「お疲れ様であります!将官殿!」ビシッ
ほっぽ「…!」
将官「ああ、そのままで良いよ」
ほっぽ「…ショウカン」
将官「やあ、久しぶりだね。北方棲姫。変わりはないようだね」
ほっぽ「…」コクン
将官「北方棲姫。早速で悪いけど、私と一緒に来てもらえるかな」
ほっぽ「…ドコニ?」
将官「君が本来居るべき場所だよ」
ほっぽ「…テイトク…ハ?」キョロキョロ
将官「ん?」
ほっぽ「…テイトクハ…ドコ…?」
将官「…ああ」
将官「いいかい、北方棲姫。残念だけど、もう深海提督とは一緒に居られないんだ」
ほっぽ「…ドウシテ?」
将官「先程、偉い人からお達しがあってね。彼は異動させられたんだ」
ほっぽ「…テイトク…イッタ…イッショニ…ゼロヲトバスッテ…ヤクソク…シタ」
将官「ごめんよ。私も再度上告したのだが、聞き入れてくれなかった」
ほっぽ「…」
ほっぽ「…ドコニ…イッタノ?」
将官「…遠い遠い鎮守府だよ。そこは人類側と一進一退の攻防を行っている激戦区だから、ひょっとしたら今後一生会えないかもしれない」
ほっぽ「…」
将官「……でも、北方棲姫の頑張りようによっては、この先、また彼に会えるかもしれないね」
ほっぽ「…ホントウ?」
将官「ああ、本当だ。約束するよ」
ほっぽ「…」
将官「その頑張りは、とても苦しいものになるだろうけど、頑張れるかい?」
ほっぽ「…」
ほっぽ「…ガンバル」
将官「……そうか」
将官「私について来なさい。案内してやろう」
「敵編隊発見!迎撃します!」
「のこのことやってきたか。よし、手筈通り出来るだけ粘って引きつける。悟られないように、程々に迎撃しろ」
「了解!」
「…」
「さあ、北方棲姫。こっちに来なさい」
「…」
「君の出番だ。分かるね?」
「…」
「どうしたんだ、北方棲姫。戦いたくないのか?」
「…」コクン
「君の大切な提督や将官を殺した奴らだ。敵を討ちたくないのか?」
「…」
将官「…北方棲姫。今から話す事をよおく聞くんだよ」
ほっぽ「…」コクン
将官「先刻、深海提督君が殺されたらしい」
ほっぽ「……」
ほっぽ「…シンダ…ノカ…?」
将官「…艦娘達に鎮守府を襲撃され、戦死したそうだ」
ほっぽ「…」
将官「……勇敢に亡くなったらしい。仲間を逃がそうとして、一番先に逃げるべき彼が陣頭指揮を執って…」
ほっぽ「……テイトク」ギュッ
将官「辛いのは分かる。私だって悲しい」
将官「だが悲しんではいられん。人類側が南方海域を抑えたということは、艦娘達が次に狙うべき所は、我が本土の最前線たる、ここAL泊地に他ならない」
将官「そのAL泊地の重要な要が君だ。どうか分かってくれないだろうか」
ほっぽ「…コレガ…カナシイ…」
将官「……限られた時間でいかに戦力を補強できるかにかかっている。一緒に敵をとろう。北方棲姫」
「敵泊地から迎撃機が来ます!」
「応戦するんや!第一次攻撃隊!準鷹隊と協力して制空権を確保するんや!」
「敵も新型機で応戦かー。ちょっとてこずりそうだなぁ。こりゃあ帰ったら、提督に酒保で色々と奢ってもらわないと割に合わないねぇ」
「何を想像してるんや!今真面目にやらんと、ウチらがやられるで!」
「ほら、妖精達!元一航戦の誇り、見せたれや!」
トテトテトテ
ほっぽ「ショウカン…?」トテトテ
トテトテトテ
ほっぽ「…ショウカン?」トテトテ
トテトテトテ
ほっぽ「…ドコ?」トテトテ
トテトテドンッ
ほっぽ「…」
中将「おっと、失礼……ん?」
ほっぽ「オジサン…ダレ…?」
中将「なるほど、君が北方棲姫だな」
ほっぽ「…」コクン
中将「将官は殺されたのだよ」
ほっぽ「……エッ」
ほっぽ「……ドウシテ」
中将「昨日、突如、本国の西海岸に潜水艦娘が現れ砲撃を行った。その砲撃が、本国に召喚された彼の宿舎に運悪く直撃し、殉職したのだ」
ほっぽ「……」
中将「北方棲姫。艦娘に復讐を行わないか?」
ほっぽ「…フクシュウ?」
中将「そう、復讐だ。目には目、歯には歯をっていうやつだ」
中将「憎しみの連鎖はどちらかが滅ぶまで続く。片方が残る限り、もう片方の怒りは収まらんだろう。そんな自然界の法則に倣うだけだ」
中将「北方棲姫。お前の弔い合戦に協力してやろう」スッ
中将「この手をとれ、北方棲姫」
ほっぽ「…ショウカン」
ほっぽ「……テイトク」
ドンドンッ
「……」
ヒュルルルルル
「…ゼロ」
バチャーン
「…ツイラク…シテイク…ゼロ…」
ドンドンッ
「……」
ドンドンッ
ヒュルルルルッ
「…テイトク」
ドンドンッ
「…ヤッパリ…ゼロハ…カワイイヨ」
「第一次攻撃隊、及び羽黒より報告!「制空戦不利、第二次攻撃の支援を要請する」」
「なんやて!こうなったら直掩機も出すしかないやんけ!」
「んなことしたら、あたし達の護衛はどうすんのさ!」
「肉を斬らせて骨を断つや!ほら、隼鷹!」
「だーわかったよ!こうなりゃヤケだ!後で何か奢ってくれよな!」
「わーってるって!一番良い酒奢ったる!ほら、とっとと発艦!」
「よぅーし!燃えてきたよー!」
深海提督「今なんと仰ったのです!」
将官「なに、聞こえなかったのか。いいか、もう一度言うぞ」
将官「北方棲姫と共にAL方面へ行き、敵AL攻略部隊を迎撃せよ」
深海提督「そんな事聞いてません!全体的な作戦の概要について、反論を述べさせていただきたい!」
将官「……なんだ、そっちの方か」
深海提督「なんだ…って…将官殿ッ!」
深海提督「理解した上で仰られているのですかッ」
将官「はぁ…。いいか。二度は言わない。心して聞くように」
将官「今回は二正面の海域で展開する、大規模作戦だ」
将官「人類側は陽動部隊をAL方面に、そしてMI方面には主力艦隊を出撃させ」
将官「MI救援の為に派遣されることになるだろう「我々の主力機動部隊を撃滅」することが目的だ」
将官「我が軍はそれを利用し、易々と敵の策略に乗せられたように見せかけ、軍を展開する」
将官「敵主力艦隊をAL/MI方面へ誘引を行うことで、防備が手薄となった敵本土に、我が主力艦隊を送り込み、艦砲射撃を敢行。撃滅を図る」
将官「君達には、その作戦成功のために、礎になってもらいたいのだよ」
深海提督「……将官殿」
深海提督「……それはつまり――」
深海提督「ほっぽを見殺しにしろ。ということですよね」
将官「見殺しなんて人聞きの悪いことを言うな」
深海提督「私にはそう聞こえました」
将官「君は北方棲姫を一人の生物として認知しているな?」
深海提督「当たり前ではありませんか。彼女は我々と意思疎通できます」
深海提督「それに…。他者を思いやる、優しい心も持ち合わせてます」
将官「君は大きな勘違いをしている」
将官「あれは”兵器”だ。断じて我々と同じ生物ではない」
深海提督「…!」
将官「ただの道具と変わらん。我々と違い、あれの一つや二つ、喪失した所で代用が効く。そんな消耗品の一つに過ぎん」
将官「むしろ、破壊されることで我々の大きな利益になりうる」
深海提督「今までのほっぽに対する、あの笑顔や発言は嘘偽りに過ぎなかったのですね」
将官「兵器に余計な情はかけられん。あれを使役するには、感情を利用することが最適解だっただけだ」
深海提督「…将官殿」ギリッ
将官「君は私を恨むかね」
深海提督「…」ギロッ
将官「ふむ。悪くない目つきだ」
将官「だがな、私が恨まれるのは見当違いも甚だしいぞ」
将官「作戦を立案し、その下準備のためにあれを作ったのは軍上層部だ。私ではない」
深海提督「…」
将官「それに、不憫だとは思わんかね」
将官「兵器としてこの世に生を受けながら、戦場で戦う事無く、一生を終える」
将官「兵器の責務を全う出来ないことは、すなわち自らの存在意義に苦悩し、やがて自我の破滅をもたらす」
将官「君は、そんな生き地獄同然の苦しみを、あれに味あわせるような人ではないはずだ」
深海提督「そういう意味で意を呈したわけではありません」
将官「では何だというのだ」
深海提督「「ほっぽは兵器である」ということは百も承知です」
深海提督「彼女も兵器として死ぬことは本望でしょう」
将官「ふむ。君も理解しているのではないか」
深海提督「ですが」
深海提督「彼女は兵器である以前に、一つの固体であり生物であります。我々と同様に」
深海提督「そんな彼女が、わざわざ死ぬということが分かっていて、出撃したいとは思う訳ないでしょう」
深海提督「出撃しても、少しでも生き残れる算段があるのであれば、私共は喜んで任務を遂行致します」
深海提督「ですから、今回の玉砕に等しいこの作戦は、お引き受けすることができません」
将官「……そうか」
将官「つまり、どうしたとしても聞き入れてはもらえないという訳だな」
深海提督「ここばかりは譲る訳には参りません」
深海提督「作戦を再考してもらえるように、上申していただけませんか。将官殿」
将官「……ふぅ」
将官「全く君は…」
将官「いつも通り真面目で」
将官「…安心したよ」スチャッ
深海提督「銃を向ける相手が違うのではありませんか。将官殿」スッ
深海提督「我々が真に銃口を向ける相手は人類側のはずです」
深海提督「あなたは、深海の未来と繁栄を共に誓い合った仲間を手にかけるのですか」
将官「一つ、君は大きな勘違いをしているようだ」
深海提督「勘違いとは?」
将官「君は深海側の者ではない」
深海提督「…は?」
将官「聞こえなかったのかね。君は深海の者ではないと言ったのだ」
深海提督「それは一体どういう意味ですか」
将官「君は海岸に流れ着いていた所を軍が保護したのだよ」
将官「ゼロ戦の模型を両腕で、大事そうに抱えてね」
将官「それを見て、一目で君が人類側の人間だと分かったよ」
深海提督「ではどうして、私を今まで生かしておいたのですか」
深海提督「その時に殺しておけば…」
将官「利用価値があったからだよ」
将官「万が一裏切られたとて、家族も血族もいない君が、唐突に兵役が抹消されたとしても、何ら問題はない」
深海提督「…そんな私にどうしてほっぽを預けたのですか」
将官「だからこそだ。北方棲姫を君に預けた」
将官「あれは、人に近しい感情をプログラムされた兵器だ」
将官「愛は引き裂かれることで、憎悪が増大する」
将官「感情に勝る力なんぞ、この世に存在しない」
将官「北方棲姫が親愛する君が、艦娘に殺されたということにすれば、憎しみを背負って戦うだろう」
将官「その時、あれは本来のスペックを超えた大きな力を発揮するはずだ」
将官「だから君を選んだ。いついかなる時にも殺されても構わない君を、選任したのだ」
深海提督「…この外道!」
将官「外道とは失敬な」
将官「戦争とは非情だ。君もこれまでに携わってきた作戦で、その手を汚してきただろう」
深海提督「…」
将官「もう後戻りはできないのだよ。勝利には何らかの犠牲がある」
将官「勝利を望み、散っていった数多くの犠牲を無駄にしない為にも、何が何でもこの戦争に勝利せねばならないのだよ」
将官「それが私の責務だ」
深海提督「…将官」
将官「…長話が過ぎたな」
将官「深海の勝利の為、君にはここで死んでもらうよ」
将官「最後に何か言い残すことはあるかね」
深海提督「…?」
将官「あれに何か言い残すことはないのか。と聞いているのだ」
将官「人の温情だ。何かあれば伝えてやるぞ」
深海提督「…何もありませんよ」
将官「ほう。本当に何もないのか」
深海提督「あなたに、私の言葉を歪曲する可能性がない訳ではありませんから」
将官「信用されてないものだな」
深海提督「あんな話を聞かされて、あなたの何を信じろというのですか」
将官「それもそうだな。一理ある」
深海提督「それでも、あなたには感謝していますよ」
将官「感謝?私は君をだまし続けていたのだぞ。感謝される所以はない」
深海提督「偽りの愛情だったとしても、あなたと一緒にいた時間や記憶は、私の中で色あせることはありません」
深海提督「ここまで、私を育ててくれて本当に感謝しているのです」
深海提督「長い間、お世話になりました」
将官「…」
深海提督「それに…」
深海提督「ほっぽには、もう別れを告げてきましたから」
将官「…そうか」
将官「君は本当に……」
将官「真面目だな」パンッ
「羽黒より伝令!「制空有利!攻撃隊発艦を求む!」」
「よっしゃ、制空戦を制した!さあ、第二次攻撃隊、元気良く発艦するでー!」
「さー見せ場だぞー!攻撃隊、全機発艦用意!」
「行くでー!攻撃隊…」
「「発艦!!」」
憲兵「動かないで下さい、将官殿」ゾロゾロッ
将官「これは…一体…」
中将「将官、君に反逆罪の容疑がかかっている」
将官「…!」
将官「どういう意味だ!」
中将「北方棲姫を使い、クーデターを行うという計画は、既に露見している」
将官「それは誤解だ!私は軍司令部の意向を受けて、任務を遂行していたまでだ!」
中将「申し分は軍法会議の下で聞こう。同行を願えるだろうか?」
将官「断る。申し開きはここでする。軍司令部へ連絡すれば、すぐにでも私の無実が証明されるはず……」
パンッ
将官「…ぐっ」
将官「なぜ、だ…」ドサッ
中将「察しの悪い男だ」
中将「犠牲の数は一人より二人の方が、より効率が良いに決まっておるだろう?」
将官「……そう、か」
将官「私もまた…」
将官「……利用されていた、という…訳だな…」
ほっぽ「…ワカラナイ」
ドウシテ…ドウシテ…
ほっぽ「…ショウカン」
ドウシテ…ドウシテ…
ほっぽ「……テイトク」
ドウシテ…ドウシテ…
ほっぽ「…ドウシテ…シンデ…シマッタノ」
ドウシテドウシテ…
ほっぽ「…ドウシテ…イナクナッテ…シマッタノ」
ドウシテドウシテドウシテ…
ほっぽ「…ワカラナイ…」
ドウシテドウシテドウシテドウシテ…
ほっぽ「…ダレカ」
ヒュルルルルッ
ほっぽ「……オシエテ…」
ドーンッッッ
ほっぽ「…イタイ…イタイ…」
ブオオオオ
ほっぽ「…カラダモ…ココロモ…」
ほっぽ「…イタイ…」
ブオオオオ
ほっぽ「……コナイデッテ…イッテルノ…」
深海提督「良いか、ほっぽ」
深海提督「我々深海側と人類側は本来、同じ生き物だ」
深海提督「五体だってあるし、私とほっぽが意思疎通出来るように会話だってできる」
深海提督「それに心だってある」
深海提督「だから本来、私達が争っているこの状況はおかしいんだ」
深海提督「軍人が何を言っているんだ、という顔をしているな」
深海提督「でも本来、軍人というのは戦わない事が何よりの仕事になりうるんだ」
深海提督「残念ながら今現在、我々深海側と艦娘側は戦闘状態に陥っているがな」
深海提督「少し前までは安全に航海できた海も、現在では各国の潜水艦や軍艦が哨戒し」
深海提督「海は一層激しさを増している」
深海提督「でもいつか、いつか戦争が終わって、それでこそ静かで、優しい海になったら」
「ほっぽと一緒に、この海を巡れたらいいな」
「敵攻撃目標損害認む!夜戦に移行し、目標の破壊を遂行します!」
「あたし達はここまでだねぇー」
「おっしゃ、頼むで!羽黒達!」
ドンッドンッ
「十分に敵艦隊をひきつけたな」
「はっ!MI海域でも同様に敵主力艦隊を誘引することに成功した模様!」
「よし、撤退する!各員、重要書類を焼却後、速やかに撤退せよ!」
「「了解!」」
「…ふぅ」
「さて、北方棲姫」
「私たちが撤退するまで、くれぐれも破壊されるなよ」
「お前は、”囮”、なのだからな」
ドンッドンッ
「…カエレ」
ドンドンッ
「…イタイ」
ドンドンッ
「…イタイヨ…」
ドンッドンッ
「…」
パパパパッ
「…シヌノ…カ…」
パパパパッ
「…ショウカン」
ババババッ
「……テイトク」
ガガッ
「…イッショニ…アソビ…タカッタナ…」
フワッ
「……ア」
「…バクフウ…デ…」
「……ゼロガ、トンダ……?」
「……テイトク…」
「……ゼロ…トンダヨ…」
「…ムカエニ…キテクレル…カナ…」
将官「では帝都で待ってるよ」
ガチャッ
深海提督「……」
深海提督「やはり、そうきたか」
深海提督「将官殿もあちら側だったという訳か」
深海提督「将官殿の話や、上層部がひたむきに秘匿する反攻作戦……」
深海提督「これらの情報を基に、彼らが行おうとすることは容易に想像がつく」
深海提督「ほっぽは、敵艦隊を誘引するための道具として前線に配備され、その任を全うするだろう」
深海提督「……彼女の命を賭して」
深海提督「……」
深海提督「ほっぽは殺されるために、この世に生を享けた」
深海提督「こんな事実、ほっぽが知ったらどう思うだろうか」
深海提督「軍に引き渡せば、確実にほっぽは殺される」
深海提督「かといって、引き渡しを拒めば、邪魔者である私が、彼らに抹消されかねん」
深海提督「私が死んだら、誰がほっぽを守るんだ」
深海提督「……一体、どうすれば良い」
深海提督「……」チラッ
ほっぽ「Zzz」
深海提督「……」
深海提督「…私も、情が移ったものだ」
深海提督「…無駄死にだけは、私が居る限り、決してさせるものか」
深海提督「ほっぽの死が、逃れられない運命であるのならば」
深海提督「……せめて、その死を意味のあるものにしないとな」
深海提督「……ほっぽ」
深海提督「お前を守ってあげられなくて、ごめんな」
「イツカ…ヤサシイウミデ……いつか…」
羽黒「…目標の破壊を確認!」
羽黒「AL作戦、完遂いたしました…」
龍驤「よっしゃあ!終わったで!」
隼鷹「なんだ。意外とあっけなかったじゃないか」
隼鷹「こりゃあ、祝杯はそんなに美味しくなさそうだなねぇ」
龍驤「こら隼鷹!誰の金で酒を買うと思ってるんや」
隼鷹「だーれだっけなぁ」
龍驤「人の金で飲む酒やろっ!美味しくないとか言うたら、うちが許さんからな!」
隼鷹「ただで酒が飲めるのは確かに美味しいが、趣向がちょっと違うからねぇ」
龍驤「図々しいやっちゃなぁ。全く」
隼鷹「ともあれ勝てたんだ。帰ったら派手に飲もうぜー!」
ワイワイガヤガヤ
羽黒「……」
龍驤「どないしたんや、羽黒。浮かれない顔をして」
羽黒「あ、あの…ごめんなさいっ。せっかく盛り上がっている所なのに…」
龍驤「言うてみい。心のもやもやは、口に出して吐いちゃえば、少しは気が晴れるかもしれないからね」
羽黒「…」
羽黒「私、敵目標にとどめを刺す時に見ちゃったんです」
羽黒「あの娘が泣いている所を…」
龍驤「…」
羽黒「その時、私は躊躇ってしまいました」
羽黒「本当に、あの娘を破壊してもいいのかって」
羽黒「でもこの娘を倒さないと、今度は私たちに被害が及んでしまう…」
羽黒「そう自分に言い聞かせて、引き金に指をかけ、あの娘を破壊したんです」
龍驤「……羽黒、あんたは正しいで」
龍驤「敵さんへの情よりも、ウチらの友情や利害を取ってくれて、ホンマ、ありがとうなぁ」ナデナデ
龍驤「で、羽黒。あんさんが持っている物はなんや?」
羽黒「あ、これは…あの娘が死の寸前まで、大事に抱えていた物です」
羽黒「作戦海域から撤退する際、近くに浮いているのを見かけたので、あの娘の供養にと拾いました」
龍驤「どれ、貸してみい」ヒョイ
龍驤「これ…ゼロ戦の模型やないか」
龍驤「どうしてこんなのが、こんな所に…」
龍驤「そして、どうして深海棲艦が持っていたんや?」
羽黒「もっと不思議な物があります」ピラッ
龍驤「…紙?」
龍驤「えろうみっちりと文章の書かれた紙やなぁ。小さくてよう見えんわぁ」
羽黒「そのゼロ戦の操縦席にくくりつけられていました」
羽黒「何だと思います?」
龍驤「極秘資料か何かかいな?」
羽黒「…それ、私たちが先ほど破壊した敵目標の成長日記なんです」
龍驤「…なんやて?」
龍驤「それってつまり、こういうことかいな!?」
龍驤「”深海棲艦にも家族がいる”という……」
羽黒「分かりません。深海棲艦は依然として謎に包まれていますから」
羽黒「どこから来て…どこへ帰るのか…」
羽黒「この日記だけじゃ全てを把握しきる事は出来ません」
羽黒「ただ一つだけ…一つだけ分かることがあります」
龍驤「言うてみ」
羽黒「彼女も生きているんだ。私たちと違う所なんて何もないんだ」
羽黒「そして、あの娘も私達と同様に、誰かに愛されてこの世に生を授かったんだ」
羽黒「と考えてしまったら、どちらも苦しむ戦いを一刻も早く終わらせてあげたい」
羽黒「と考えてしまいました」
龍驤「羽黒。あんさんは優しいんやな」
羽黒「そんな事は…」
龍驤「いいや、羽黒は優しいんや。優しいからこそ、羽黒は戦っていられるんや」
龍驤「いつか争いの無い世界を作りたい為、羽黒は戦っているんやろ」
羽黒「…はい」
龍驤「だったらその為に力を振るうんや。羽黒の目指す世界の為に」
羽黒「…はい!」
龍驤「なんか、辛気臭い話になってしもうたなぁ」
龍驤「ウチ、こういう話は余り好きじゃないんよ」
龍驤「ウチは盛り上がるの担当だしなぁ」
羽黒「ご、ごめんなさい!」
龍驤「…」フフッ
龍驤「だから、ウチはウチらしく、これを彼女への手向けとするよ!」
龍驤「…さあ発艦!」
ブウゥウゥゥン
羽黒「白い翼…」
羽黒「ゼロの編隊…」
羽黒「…綺麗」
羽黒「あの娘もこの光景を見ていててくれているかしら…」
龍驤「ああ、きっと見ているで」
龍驤「きっと、あの雲の向こうから…」
ブゥウゥゥン
龍驤「敬礼!」サッ
原作
艦隊これくしょん-艦これ-
お話を作った人
オヤッチ
全てのきっかけ
エロゲー目線で艦これ実況プレイのほっぽ回
「あ」
「ゼロ飛んだよ」
「見ててくれた?」
「ちゃんと見たから、迎えに来てくれたんだよね」
「……痛くなかったかだって?」
「うーん」
「確かに痛かったけど…」
「提督とまた会えたから、ココロがいっぱいなんだ」
「あとね、提督…」
「少し恥ずかしいけど」
「あの時、言えなかったから言うね」
「…今まで、ありがとう」
「幸せだったんだよ。提督と過ごした時間」
「とっても充実してたから、もう後悔は無いんだ」
「だから、そんな顔しないで」
「これからは、ずっと一緒だから」ギュッ
「もうこの手を離さないでね」
前回の投稿から気がつけば6ヶ月経ってました。誠に申し訳ありません。
二件のコメント、及び400人を超える閲覧数、本当にありがとうございます。
基本史実に沿ってますが、話の流れ的に那智→羽黒に変えております。ご了承下さい。
以下コメントの返信
>1ひまな人さん
・深海の町ってどんなのだろ
個人的には人類側とそんなに変わらない風景だと思っています。
・日記と動画について詳しく教えてください!
日記はこちらから
http://blogs.yahoo.co.jp/ayato048
動画は某議長さんの艦これをエロゲー視点で実況するシリーズのほっぽ回です。
妄想が捗りました。
>2コメさん
・深海提督や将官の外見はやっぱり怪物なんですかね・・・?
やはり個人的には、人間と大差変わらないものだと思っています。深海棲艦はともかく、指導者は普通の人間かなぁと。
このSSへのコメント