時雨という女
艦これの掌編その1
時雨と提督の甘やかで腐った関係。
「雨は、いつか止むさ」
彼女はそう言って、窓にその手をピタリとくっつける。編み込んだ黒い髪が、しっとりとした柔肌にくっついて扇情的だ。
日本海軍の鎮守府……それの最高峰。およそ凡人では想像のつかないほどの搦手を使い、それで初めて挑戦権を得ることの出来る役職。
元帥というその役職の現担当者である私は、目の前の少女に弱みを握られている。……スキャンダル、と言った方がいいのだろうか。
艦娘はその性質上、女子高校生のそれに近い体つきをしている。そして鎮守府はそんな艦娘を集めた施設。……よほどの理性を持っている人間か、玉無し棒なし……ゲイでなければ、まともな任務もできまい。
それは置いといて。
「……時雨くん」
「なんだい、提督」
「この関係をいつまで続けるつもりかね」
時雨は、顎に手をあてがってさも悩むようなふりをしている。だが私は知っている。その姿はあくまで「ポーズ」であり――。
「永遠に」
――考えることなど、彼女にはミリ単位の可能性すら残っていない。
ゆっくりと白い指を薄桃色の唇にあてがって、あでやかな笑みを浮かべる時雨。そのまま白濁とした線をたどって、胸部……やがて自分の秘部へと這わせる。ぷっくりとした恥丘に白くたおやかな指をねじ込む。
白磁の肌は桜色に色付いて、青の瞳はその中に私の怒張を捉えている。それは紛れもなく、行為を行う時の表情だ。
「やめてくれ……」
「やめたら憲兵に話す。もしそうなったら……結婚指輪を渡した夕立にも、内地の奥さんにも伝わっちゃうよね」
「っ!」
自分がいかに不埒な行為をしているかは身に染みて理解している。……だがやめられない。やめることが出来ない。
時雨の思うがままにされることで、どこか安堵している自分がいることも恨めしい。
怒張が巧みな指の動きで何度欲望を吐いたかわからない。何度彼女の身体に栓をしたかわからない。
ただ、一度彼女の中で吐き出す度に、時雨という女の沼にはまっていっている。それだけは理解していた。
やがて行為が終わる。朝靄がヴェールのように鎮守府全体にかかる。
その頃には、内地の妻や、契を交わした夕立のことなど、既にどうでもよくなっていた。
白濁とした思考と、欲望。それだけが今の私を象徴する唯一のものだった。元帥という栄誉は既に私の中からすっぽりと抜け落ちていたのだった。
期待