2016-08-22 12:48:48 更新

概要

すかすかすかの二次創作お題を待ってたんだよ!
以後注意。
キャラ崩壊、設定の相違などにはできる限り気をつけます。警告タグにもあるように、物語の再編成を行っております。
ifです。苦手な方はブラウザバックを。
地の文、台詞回しは原作リスペクトですが、どうしても私よりになるのでご了承くださいませ。
五巻読了後の閲覧をおすすめします。そうでなくとも見れるようにはしておりますが。


前書き

――チーズケーキを、もう一度



「――ただいま」


 数百年もの時を越えて、この世界で生き続けた、たった一人の人間種〈エムネトワイト〉の物語の終わりと始まり。

 そのクソッタレで甘やかなエピローグ。

 ヴィレム・クメシュという準勇者〈クァシブレイヴ〉の、ちっぽけな英雄譚は、ここで幕を閉じる。


――今から語られるのは、もしもの世界

 クソッタレで甘やかなエピローグではなくて、チーズケーキのようでほんのり甘くて、どこか苦い。

 ただ一人生き残った、人間種の準勇者には不似合いなプロローグだ。













「……朝か」


 ヴィレムはゆっくりと身を起こして、窓から外を見る。

 朝靄が薄く広がって、あたかも煙に包まれているかのようだ。

 そう見えない? 見えないか。


「……おはよう。随分と早いお目覚めだね」


 朝一番にこの皮肉。正面を見据えたまま、愉快なジョークをヴィレムにかました少女へ言葉を返した。


「ああ。石化が解けてしまうくらいにはいい朝だからな」


「誰のおかげで?」


 意地の悪そうな笑みを浮かべて、少女が笑う。ヴィレムはそちらに目をやった。

 海のように青い髪の毛に、同じく深い青の瞳。黄金妖精〈レプラカーン〉の生体の一体、クトリ・ノタ・セニオリス。誰よりもヴィレムが大嫌いで、誰よりも大好きな彼女がそこにいた。

 髪が赤みを帯びているということもなく、記憶に不純物が混ざるということもなく。軽い任務を終えて、家に帰ってヴィレムのチーズケーキを食べるだけの毎日。

 平和そのものな妖精の家は、今日も朝を迎えた。朝の掛け声替わりに響いたのは、青年将校と一人の少女が戯れる声だった。


――生きたいと思っても、いいの? 本当に、そんな願いを持ってしまっても、いいの?


 そう嘯いていた彼女は、ここにはいなかった。


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