2016-12-03 08:37:57 更新

概要

後藤隊長の招集を受け、大洗戦車道メンバーによる「あんこう小隊」がついに「特車二課」に配属された。が、配属先は東京の僻地で…。


「ガールズ&パンツァー 劇場版」と「機動警察パトレイバー」のコラボSSです。

前日譚「【ガルパン】後藤隊長「特車二課 あんこう小隊、か…」【パトレイバー】」を冒頭ダイジェスト掲載。本作のみでもお読み頂けます。


前書き

祝!「ガールズ&パンツァー 最終章」製作決定&「機動警察パトレイバーREBOOT」発売記念

・「ガールズ&パンツァー 劇場版」と「機動警察パトレイバー」のコラボSSです。

・あんこう小隊 誕生までの経緯を記した前作、
【ガルパン】後藤隊長「特車二課 あんこう小隊、か…」【パトレイバー】を冒頭ダイジェスト形式で掲載しましたので、本作のみでもお読み頂けます。

・約50000字(空白が多いため、実質 約25000字)予定。長編が苦手な方にはお勧め出来ません。

・元ネタ先の時系列、設定のご都合独自設定あり。

・パトレイバー漫画版 第一巻の再構成となります。

以上となります。

では前作ダイジェストから始めさせて頂きます。何卒よろしくお願い致します。


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〈 第1~4章. ダイジェスト 〉


(一~七日目)



ハイパーテクノロジーの急速な発達と共に、あらゆる分野に進出した多足歩行式大型機械「レイバー」。

しかしそれは、レイバー犯罪とも呼ばれる新たな社会的脅威をも産み出した。


続発するレイバー犯罪に対抗すべく、警視庁は本庁警備部内に特殊機械化部隊を創設した。

通称「特車二課」…パトロール・レイバー中隊、パトレイバーの誕生である。


特車二課は、才女「南雲警部補」が隊長を勤めるエリート部隊の「第一小隊」と、曲者「後藤警部補」が隊長を勤める愚連隊「第二小隊」の、計二小隊で構成されている。


夏、七月。

その特車二課 南雲隊長と第二小隊の留守を狙いすまし、事件は静かに幕を開けた。

第二小隊 後藤隊長のもとに、刑事部捜査一課の「松井警部補」から、とある一報がもたらされたのだ。


後藤 「…東京・大阪で、過激派環境保護団体による同時破壊活動計画?」


松井 「特車二課が手薄な頃合いを見計らって、今までの恨み辛みを一気に晴らそうって腹みたいだな…で、どうする?」


後手に回った後藤は即座に行動を開始。とある奇策を以て来るべき事件に対応すべく、関係各位を帆走する。


松井 「流石のカミソリ後藤も、今回に関しては『超法規的措置』すら取れないか…?」


後藤 「まあそれは、先方も戦車という『特殊車輌』を扱う『同じ穴の狢』という事で」


南雲 「…それじゃあ何?後藤さんは、普通の女子高生をレイバー隊にでっち上げるつもりなの?!」


後藤 「その通り。特に無名校だった大洗を優勝に導いたあの西住って子、あれは本物だ。それに彼女が搭乗している戦車は、他の奴らと動きの次元が違う」


古くから大和撫子の嗜みとして、華道・茶道と並び称される武芸「戦車道」。


今年度限りの廃校が決定していた「大洗女子学園」の「角谷 杏 生徒会長」は、「文部科学省 学園艦教育局担当官」との交渉により「優勝すれば廃校撤回の可能性有り」との言をとり、戦車道を復活させる。


名門「西住流」の名を持ちながら戦車道から遠ざかっていた転校生「西住みほ」は、杏からの依頼により大洗のチームリーダーとして戦車道に復帰。「あんこうチーム」の精神的支えもあり、大洗の快進撃を支え、見事優勝へと導いた。が…


事ここに至り、当の文科省担当官から「先の言葉はあくまでも可能性でかつ口約束であり、廃校撤回成らず」と告げられてしまう。


杏 「廃校最終日の8月31日までに廃校措置を止め、復活まで道筋を作らないといけないからね。でも…そのためには、もう1つやっておかなきゃならない事があるんだ」


再び、最大の危機に直面していた大洗女子学園に対し、後藤は…


後藤 「この話を受けてくれれば、世間により『大洗危機』をアピール出来る。更に暴走レイバーを討ち取ったとなれば、こちらからの感謝状で『文科省』は無視その物が出来なくなる。…大洗復活の気運を高める大きな力になるはずだ。そういう『取引』を俺から提案したって訳」


途中、誤解の生じた大洗 生徒会長と西住との「細やかな」いざこざもあったが、最終的に協力を取り付けた後藤は、西住以下あんこう及びカモさんチームの特車二課招集に成功する。


杏 「手放しで承認はしかねるよ?さ、頑張って私を納得させるだけの安全策を提示してよね?!」ニカッ


みほ 「ふふっ…後藤隊長のお話は分かりました。ご期待に添えるかは分からないけれど…私、今回の件、頑張ってみようと思います!」


そど子 「…少なくともここにいる内は、私達にも居場所や立場や責任ややる事があるんでしょ?ならやるわよ…やってやるわ…やるしか、ないじゃない…」


かの道の達人とは言え、レイバーに関する知識を持たないメンバーに対し、後藤は通称「レイバーの穴」と呼ばれる特車専の「佐久間教官」にその全てを託す。


佐久間 「教官の佐久間だ。お前達に事前に受けてもらった特性試験の結果を基に、こちらで割り振ったポジションを今から発表する」


・1号 フォワード (レイバー担当)…冷泉 麻子

・1号 バックス (98指揮車担当)…武部 沙織

・1号 キャリア (レイバー運搬車担当) …園 みどり子(そど子)


・2号 フォワード (レイバー担当)…五十鈴 華

・2号 バックス (98指揮車担当)…秋山 優花里

・2号 キャリア (レイバー運搬車担当) …後藤 モヨ子(ゴモヨ)


・総合指揮車 コマンド (小隊指揮)…西住 みほ

・総合指揮車 バックス (97指揮車担当)…金春 希美(パゾ美)


ナカジマ 「レイバーをはじめとする皆さんの車輌全てに、例の特殊カーボンによる追加装甲を施すよう依頼があったんですよー」


優花里 「97式レイバー指揮車に98式特型指揮車!あっちには四菱製 98式特殊運搬車も…!」


後藤 「『AV-98Tドーファン』…ウチの98式の試作機みたいなもんだ。パワーは劣るが、練習用だから扱いやすい上、機動性も高く、実戦使用に充分耐えうる」


研修期間五日という限られた時間の中で出来る事には限りがある。後藤と佐久間は一計を案じ、レイバー運用における各々の要素に一つの「型」を用意。ただそれのみを反復練習させ、メンバーの身に付けさせる事にした。



後藤 『いいか?短期決戦を望むなら、近接接近で縦横無尽な動きで相手の隙を誘い、死角から的確に相手の関節に電磁警棒を叩き込め!』ガピー


麻子 『このっ…す、好き勝手な事を…』ハアッハアッ



後藤 『お前は、相手が攻められずこちらが攻めれる中距離を保ち、照準を合わせ続けてプレッシャーで押し潰せ!相手が焦れて射線を走り出したなら、射撃百発百中という必殺技があるんだからな!?』ガピー


華 『は、はい!』



後藤 「『レイバー×2 & 移動式バリケード×2』…第一小隊でも第二小隊でも試した事の無い、お前さん達だけの戦術幅を拡げる『ユニット構成』の『型』だ」


みほ 「…あ、あはは…(体よく降って沸いた難題を、ただ押し付けられただけという気も…)」


そど子 「…ちょっと!いきなりこんな大型車輌押し付けられても、扱いに困るんだけどっ?!しかもバック移動前提だし!!」


ゴモヨ 「全然簡単じゃないです!それに荷台に振り回されて、車が浮いてスゴく怖いんですが…」



みほ 「私は作戦指揮にかかりっきりになっちゃいそうだから…総合指揮車の方は金春さんに任せるね?」


パゾ美 「わ、私が、西住隊長のサポート役…?」



後藤 「さて…何だかんだ言ったが、三人とも優先順位は間違えないでくれよ?

・第一に人命優先。(チームメンバー含む)

・第二に犯人を取り逃がさない事。

・第三に周辺被害を最小限に食い止める。

最終決定権を持つのは、隊長代理の西住、お前だ。第二は秋山、第三は武部が、それぞれ西住を支えてやってくれ…これが『命令指揮系統』の『型』だ」


沙織 「え?わ、私が…あの、何の冗談で…」


優花里 「?!…わ、私、参謀役だったんですかあ?!」



佐久間による熱心な指導と、メンバーの必死の努力の甲斐もあり、次第に形を成していく新レイバー隊。それは、新たな小隊の誕生を意味していた。


みほ 『…これが、私の、私たちのレイバー隊…あんこう小隊」


後藤 「特車二課 あんこう小隊、か…」


そして今日、綱渡りの教習を終え、佐久間からのお墨付きを得た「あんこう小隊」が、ついに約束の地「特車二課」に降り立つ。


沙織 「…どんな所なんだろうね?特車二課って」


蝉時雨にひぐらしの声が目立ち始めた、八月も終わる頃の出来事である…。



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※以降、本編となります。

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第五章 栄光の特車二課


~八日目



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ーー大洗女子学園 臨時滞在地 生徒会室



…ミーンッ,ミーンッ,ミーンッ,ミー…ッ…


ガヤガヤ…



桃 「ふう。問題が山積みだな…ん?どうかしたか?」


柚子 「…桃ちゃん頑張ってるなぁって。もっと泣き叫ぶかと思ったのに…『廃校だぁ、もうお仕舞いだよ柚子ちゃあん?!』って」


桃 「そっ、そんな暇は無いっ!…今頑張らねば、何時頑張ると言うのだ…」


柚子 「そうだよね…会長はどこ行っちゃったんだろうね?」


桃 「…会長には、会長のお考えがあるはずだ。きっと今頃、大洗の行く末を良い方向に導く何かしらの方策の目処を立てているはずだ」


柚子 「うん。…そう言えば、あんこうチームとカモさんチーム。今日から特車二課に配属よね?」


桃 「たった二日戻っただけで、カモさんチームの連中は地元の生徒とケンカまでするとは…全く!風紀委員の名が泣くぞ?!」


柚子 「とても警察に行く前の素行とは思えないよね?…あんこうチームの皆は相変わらずの様子だったけど、向こうでも大丈夫なのかしら…」



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--特車二課棟 屋上 日傘下



カッ!


…ンジーワッ,ジーワッ!ジーワッ!ジーワッ!ジー…ッ…


ゴォォ…



後藤 「…南雲さんとアイツ等は、今日から大阪か。お土産屋、買ってきてくれるかな?」


榊 「遠く大阪に思いを馳せるのは結構だがな後藤さんよ。そろそろ例の連中が来る頃合いなんじゃ無えのかい?」アイスパクパク


後藤 「そのはずなんですがね?どうも荷物の到着が遅れてるみたいで…時に、おやっさん。アイツ等のレイバーって、今どうなってます?」


榊 「レイバー関連車輌含め、警光灯をはじめとする艤装・各種調整も全て終了。訓練でも出動でも何でも来いよ」


後藤 「それじゃあお手数ですが、訓練の用意をしておいてもらえますか?ついでに、マイクとテントの準備も」


榊 「そいつぁ構わねぇが…一体何おっ始める気なんだい?」


後藤 「いや…どうせマスコミも来ますし、特車二課の連中にアイツ等を紹介するには、演習形式が一番かと思いましてね?」


榊 「…違ぇねえや。んじゃ早速、ハンガーに行ってシゲに一通り用意させとくわ。…面白え見世物になると良いが、な?」


後藤 「ま、それはアイツ等次第と言う事で…お?荷物がようやく来たみたいだな…」



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--特車二課棟 正面入口前広場



ブロロ…



沙織 「…何、ここ?!」


そど子 「暑い!」


ゴモヨ 「セミがうるさい!」


パゾ美 「そして…何も無い!」


優花里 「…バビロンプロジェクト開発途中区域のため、携帯のGPS地図情報が未更新なだけなのかと思っていましたが…」


麻子 「ここに来る途中、余りに何も無いので変な笑いが込み上げて来たぞ?」


華 「…途中最寄りで見掛けた物と言えば、上海亭と書かれた中華屋さんだけです。それも、バスで通過したのは10分以上前でした…」


みほ 「ゆ、優花里さん…さすがにコンビニは、30分も歩けば何処かには有るよね。ね?」オロオロ


優花里 「…残念ながら西住殿。どう見ても車で20分以上はかかりそうです」


みほ 「そ、そんな!?…サンダースの皆さんにお願いして、Ⅳ号持ってきてもらえないかな?」


優花里 「ただコンビニ行くためだけに戦車呼ぶのは止めてください?!」


後藤 「…うぉーい、待ってたんだぞ。お前さん達、何やっとんの?」


沙織 「東京の海岸沿い埋め立て地って聞いてたから、お台場とか幕張のイメージだったんですよ?!それが、まさかこんな…」


後藤 「今時シーサイドベイシティみたいな物言いも無いもんだが…見ての通り、シティは海の向こうの遥か彼方だ」


沙織 「せめて事前にどんな所か教えておいて下さいよ!…ううっ、こんなの聞いてないよ…」


後藤 「そう俺だけを責めるなよ。今時の若い子はネットで事前に調べてくる物だとばかり思ってたわ…何か、済まなかったな?」


沙織 「…そう言えば、誰も気が付かなかったの?」


優花里 「…(あまりにお約束&不憫過ぎて、つい言うのを躊躇してしまいました…)」


麻子 「…(第一、恋愛脳時の沙織は、全く話を聞かないじゃないか)」


華 「…(正直、このお約束がちょっと面白くなってました)」


みほ 「…(確かに迂闊だった…まさかコンビニが無いなんて)」


後藤 「ここの評判なんて、東京の出島、東京辺境への島流し、絶海の孤島とまあ、散々な言われようだ。ついこの間までは自販機すら無かったんだぜ?」


沙織 「…ハァっ、早くも終わってしまった。私の花の東京ライフが…」


後藤 「はいはい。特車二課お約束の儀式はここまでにして。皆、付いておいでー?」パンパンッ


ハァーイ…ゾロゾロ


沙織 「お約束?…あー!隊長やっぱ知ってて黙ってたんですね!?…やだ、もう!」



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--特車二課棟内 2階 隊長室



みほ 「…これより西住みほ 以下八名。特車二課に着任します!」カッ!(ケイレイ)


あんこう小隊 「「「よろしくお願いします!」」」カッ!


後藤 「はいご苦労さん。んでこちら、第一小隊隊長代行の五味岡さん」


五味岡 「特車二課にようこそ。第一小隊隊長の南雲警部補に代わり、現在第一小隊の隊長『代行』を務めている『五味岡 務(ごみおか つとむ)』巡査部長です!」カッ!


みほ 「特車二課 第二小隊 予備員として、本日よりお世話になります。『あんこう小隊』隊長『代理』の西住みほです!よろしくお願い致します!」カッ!


沙織 「…!(やだ素敵…東京ライフは敢えなく消えたけど、私の恋はこれからが本番かも…!)」ポッ


華 「立ち直りが早過ぎます」


麻子 「それが沙織ズムだからな」


五味岡 「こちらこそ。お噂は兼々…大洗は、今年の戦車道の台風の目だったね?僕ぁ昔から正々堂々正面から挑むサンダースが好きでねえ…」


優花里 「…(王道ながら意外とミーハーでありますよ?)」


沙織 「…(て事は、チアガールや大胆な水着とかストレートな魅力攻め?私だって中々の物を…)ムネニテヲアテ


麻子 「考えてる事が丸解り過ぎる」


華 「沙織さん?ここ一応警察ですから」


みほ 「あ、あはは…」


五味岡 「…南雲隊長と後藤隊長から事情は聞いてるよ。これから五日間の短い間だけど、お互いの任務をしっかり務め上げよう」


みほ 「…はい。頑張ります!」


後藤 「…」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



後藤 「初日と言う事もあり、予定はパンパンだ。まずマスコミ対応と特車二課の面々への顔見せも兼ねて、お前さん達が普段からやっている訓練を、演習形式で見てもらおうと思ってる」


みほ 「普段と言うと…例の練習の『型』を、ですか?」


後藤 「ああ。佐久間のお墨付きと戦車道のヒーローという点から『特車二課にしては』好意的に見られちゃいるが、それでもお前さん達の資質を疑問視する奴は少なからずいるんでね?」


みほ 「はあ…(…あれ?後藤隊長が話した人以外は、私たちが実際に暴走レイバーと対峙するのを知らないはずじゃ…)」


後藤 「でな?こういう時に大事なのはインパクトってヤツだ。それを効果的にするには『プロレス』が必要不可欠って訳」


みほ 「プロレス?テレビでやってる格闘技の?」


優花里 「この場合は、お客さんが喜ぶ戦いの流れを先に決めておいて、その流れに添って行うって意味での『プロレス』ですね」


みほ 「あ、あの後藤隊長?私、人前で何かをするの、本当に苦手で…出来れば、別の人に変わってもらう、とか…?」オドオド


後藤 「あのな?今年の優勝校の隊長がそんな情けない事を言うんじゃないよ。でもま、そこん所も考慮して秋山と武部は、西住のフォローに回ってもらおう。で、こんなのはどうだ…」ニヤッ






(※『プロレス』内容確認中)






みほ 「…え?い、嫌です!そんなの…は、恥ずかしいッ…」カアッ


優花里 「…これ、本気でやるんですか?」


麻子 「無茶を言う…」


華 「私は、隊長の仰る『一撃必殺』を目指してここまで来ましたのに…また軽薄な事をさせられるなんて…」ハァ…


後藤 「まあまあ。これなら皆、演習中で目立ててテレビ映えもするぞ?だろ、武部」


沙織 「私、やります!見ててくださいね?五味岡巡査部長!」


五味岡 「?…あ、ああ。楽しみにしてるよ…何の事だかよく分からないけれど」


麻子 「うわ、沙織を焚き付けたよ」


華 「これで断れなくなりました」


後藤 「何よりも、今までのお前さん達の努力の『過程』と『結果』を皆にしっかり認めさせたい。…やってくれるな?西住」 キリッ


みほ 「!…もう。どうなっても知りませんからね?」 プイッ


優花里 「ダメ押しです」


麻子 「あんこう小隊は、既に後藤隊長の手に墜ちたな」


そど子 「もう、どーでもいーわよ」


ゴモヨ 「大洗に戻って、荒みっぷりが戻った私達」


パゾ美 「むしろ、何でもドンと来いと言った心境」


優花里 「…(…そういえば、墜落と堕落って言葉は似ているでありますなー…)」



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特車二課棟 演習場(棟前広場急拵)



ザワザワ…


パシャパシャ


整備班員共 「おいおい、スゴいマスコミの数だな?」


整備班員共 「一体何が始まるんだ?」


整備班員共 「ほら、例の大洗の…」


整備班員共 「ああ…連中もこんな地の果てに島流しかあ…」


整備班員共 「若い娘さん達なのに、可哀想になあ…」



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特車二課棟 演習場(棟前広場急拵)~テント内



優花里 「…それでは私が演習中の司会進行を務めて行きますので、武部殿には私から振られた際の解説をお願いします」


沙織 「分かった。私はこの流れに沿って、各項目説明のナレーションを入れていけば良いのね。…それにしても、ゆかりん手馴れてるよね?」


優花里 「えへへ…。アルバイトで少々、戦車紹介ビデオ等のナレーションやった経験が生きました。意外と好評だったりするんですよー?」



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特車二課棟 演習場(棟前広場急拵)



シゲ 「おやっさんに言われるがままに一式用意しましたけど…一体何がおっ始まるってんです?」


五味岡 「やあシゲさん。例の大洗戦車道の面々によるマスコミ向けの演習だよ。我々へ向けての自己紹介も兼ねてとの、後藤隊長のお言葉だがね?」


シゲ 「はぁー…やっぱ後藤さんの差し金かあ」


五味岡 「…はてさて。まずはお手並み拝見と言った所かな?」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



優花里 『…皆さん、おはようございます!私、大洗戦車道で、Ⅳ号戦車の装填手を務めております「秋山 優花里」と申します。

本日よりこの特車二課に、あんこう小隊 二号機バックスとして配属となりました!』ガピー…


沙織 『あ!…私もⅣ号戦車で通信手を担当している「武部 沙織」と言います。ゆかりん…秋山隊員と同じく、一号機のバックスを務めさせて頂く事になりました!』ガピー…



…ワアッ!


パチパチパチ…


オオアライノカツヤク,ミテタゾー?!


イイゾネーチャン!


カワイイー!



優花里 「!(警察関係者なのに、ここの人達はずいぶんとノリが良いですね?!)」


沙織 「!(か、可愛いですって?やだ私、ここだとひょっとしてモテモテ?…よーし、張り切っちゃうんだからね?!)」



優花里 『さて!本日このバックスコンビでお届けするのは、我が「あんこう小隊」の普段の練習内容を皆さんにご覧頂く事で、よりご理解ご協力頂けるよう準備したスペシャルプログラム!』ガピー


沙織 『それでは早速、その演習指揮を務める私たちの隊長をご紹介しますねー?』ガピー



ザワザワ…



整備班員共 「あれ?どうして出てこないんだ?」


整備班員共 「演出だろ、演出」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



みほ 「何でそんなに二人ともノリノリなの?!…やっぱり嫌です後藤隊長!こんなの恥ずかし過ぎますよぅ…///」 ヒソヒソ


後藤 「何だぁ?せっかく秋山と武部がお前さんのために、ただ『突っ立って』一言二言話せば良いようにしてくれたってのに…」 ヒソヒソ


みほ 「で、でも、こんなに人がぁ…///」 グスグス


後藤 「…こらこら、そんな泣きそうな顔でこっち見てもダメだってば。お前さん達の会長が言う『大洗廃校阻止大アピール作戦』の一環としてわざわざ準備したんだから…言われた通り、はい!頑張って?」


みほ 「///…~っ!!」 グルグル



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



優花里 『…あの弱小校 大洗女子学園を、様々な奇策と大胆な戦略を持って見事全国優勝にまで導いた、名家 西住流戦車道の異端児!その名も…「軍神」 西住 みほーっ!』ガピー



ザン…ッ…!



みほ 「…///…!(…ダメダメダメ恥ずかしくって死んじゃうっ…!)」カアッ



ザワアッ…


ザワザワ…


整備班員共 「お、おい…」


整備班員共 「あれって…」


整備班員共 「あ、ああ。」


整備班員共 「あの伝説の『プラウダ戦』にて、奇跡の大逆転を決めたと言われるあの…」


整備班員共 「…軍神…」


整備班員共 「『軍神立ち』じゃないかっ?!」



ザワアッ!



ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ー゛ー゛ッ゛!!



ニッシズミッ!ニッシズミッ!ニッシズミッ!…


チョッ?!ミ,ミナサンッ,ハズカシイカラヤメテ,ヤメテクダサイッ…!


アッンッコウッ!アッンッコウッ!アッンッコウッ!…



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



パシャパシャパシャパシャッ!


ニシズミサン,アンコウオドリノポーズデ,メセンクダサイッ!


ヒャアッ!ゼ,ゼッタイ,オドリマセンカラネッ?!



華 「あらあら~」


麻子 「…何と言うカリスマ性」


パゾ美 「それにしても…この悪ノリ」


ゴモヨ 「西住隊長、可哀想…」



そど子 「…ここにいる人たちって、バカばっかじゃないの!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



シゲ 「西住ちゃ~んっ!黒森嶺の頃からのファンだよっ?あの試合ももちろん見てたよーっ!!」ヒャッハーッ!


後藤 「何度見ても…凛々しいねえ…」 ニヤニヤ


榊 「ったく…どうしてウチの若ぇ奴ァ、こうバカばっかなんだ?全国ネットで大恥晒しやがって!! 」


後藤 「…さあ?」


シゲ 「何ででしょかね?」


榊 「…」



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ーー大洗女子学園 臨時滞在地 生徒会室



…ミーンッ,ミーンッ,ミーンッ,ミー…ッ…



(※テレビ生放送鑑賞中)



桃 「に、西住…」


柚子 「何これ」



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特車二課棟 演習場(棟前広場急拵)



優花里 『さあ!興奮冷めやらぬ中、着々と進行して行きますよ?本日ご覧頂く項目は「想定案件205。街中で発生した暴走レイバーの鎮圧」!』ガピー


沙織 『暴走レイバーを演じるのは、あんこう一号フォワード「冷泉 麻子」隊員!大洗ではⅣ号戦車を縦横無尽に乗り回す操縦手を担当しています!』ガピー


ギッチョン


麻子 『やあどうも。よろしく』キョシュ



優花里 『それを防ぎます我らがパトレイバー役は、あんこう二号フォワード『五十鈴 華』隊員。華道の家元 五十鈴家の後継者でありながら、Ⅳ号砲撃主として類い稀なる射撃精度を誇ります!』ガピー


ギイッ


華 『よろしくお願いします~』イチレイ



優花里 『我が小隊最大の特徴は、従来の「レイバー×2」のみならず、同じ特殊車輌を扱う戦車道の利点を活かした「キャリア×2」による「移動式バリケード」が上げられます!』ガピー


沙織 『その新要素を担うのがこの二人!大洗ではルノーB1bisに搭乗、戦車長・操縦手を担当していた「園 みどり子」隊員、「後藤 モヨ子」隊員が、風紀委員としてのプライドをかけ、難しい任務に挑みます!』ガピー


キキィッ


そど子 『おっ、大洗風紀委員を舐めないでよねっ?!』ガピー


ゴモヨ 『そ、そんな大層な者では~…』ガピー



優花里 『隊長指揮車操縦担当は、同じく風紀委員でB1bisの主砲砲手を担当している金春 希美隊員が、西住隊長の手足となり現場を駆け巡ります!』ガピー


パゾ美 『よ、よろしくお願いします~…』ガピー


沙織 『メンバー紹介も終わった所で早速、隊長指揮者に乗り移った西住隊長自ら、演習開始の号令をお願いします!!』ガピー



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ザワザワ…



整備班員共 「やっぱ…例のアレ?」


整備班員共 「いや…アレは戦車だからダメだろ?」


整備班員共 「じゃあアレじゃなくて、レイバーフオゥッ!って感じ?」チェケラー


整備班員共 「昔の芸人かよ。でもやっぱアレじゃねーとなー…」


整備班員共 「アレな…細かい事は気にしなくていいのに」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ザワザワ…



みほ 「もうっ…優花里さん、煽りすぎっ…///」カアッ


後藤 「ほれ西住?号令号令」ヒソヒソ


みほ 「…後藤隊長?絶対この状況楽しんでますよねっ?!」ヒソヒソ


後藤 「無い無い。そんな事ある訳無い。さ?西住。皆さんお待ちかねだから。ちゃっちゃと済ませちゃおう」ヒソヒソ


みほ 「…~ッ///!」カアッ



みほ 『…そっ!それでは皆さんッ、え、演習っ、始めっ!!』ガピー



ウ オ オ オ オ ー ー ッ!!



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



後藤 「…さすがにマスコミの前でアレはまずいでしょ。一応警察なんだし」


沙織 「でも皆、みぽりんなら何でも良いのねー」


優花里 「それが西住殿のカリスマ性でありますよ?!」フンス


沙織 「何でゆかりんの方が誇らしげなのよ…本人は頭に血が昇ってオロオロしてるのに」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



優花里 『…さあ、演習が始まりました!武部隊員?現在の『状況』を報告して下さい』ガピー



ズシュン,ズシュン


麻子 『…やあっ』


ゲインッ!


華 『くっ!』


ギュインッ



沙織 『はい!現在、固い防御体勢を取ったあんこう二号に対し、あんこう一号が攻めあぐねている状況ですね』ガピー


優花里 『あんこう二号はただ防御するだけで無く、中距離を保ち、攻撃を受け流しています。いわゆる「捌き」の体勢。これは長時間粘られるとあんこう一号としては堪らない!』ガピー



華 『!今ならっ…!』


バンッ!


麻子 『ちっ』


バスッ…



オオオッ…!



沙織 『あんこう一号の僅かな停滞時間の隙に、あんこう二号からの射撃!先読みしたあんこう一号は楯を使い防ぎました!…あ、麻子?住居エリアは踏んじゃダメだからね!』


優花里 『良いですよ五十鈴殿。ただし体の中心線狙いは相手に読まれやすいです。少し外して狙うようにして下さい!…失礼しました、弾丸は水風船型模擬弾を使用。万が一にも人命に影響はありませんのでご安心下さい!』ガピー


沙織 『しかしこれでは演習としては埒があきません!我らが西住隊長の采配や如何に?』チラッ



みほ 『…~ッ、ま、麻子さんっ?!りっ「リミッター解除」っ!!』ガピー



沙織 「…みぽりん、緊張のあまり何時もの呼び方になってるよ?」ヒソヒソ


優花里 「私たちもですけどね?」ヒソヒソ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



麻子 「…えー、本当にやるのか?まあ、やるけども」



チュインッ

…ヂュイイインッ!


ギンッ!



麻子 『…ほいっ』ガピー



ズシュズシュズシュズシュ,ズザアッ!


ブウンッ…バキャアンッ!



華 『キャアッ!?』



優花里 『あんこう一号による超高機動モード「リミッター解除」!戦車道で身につけた操縦テクを存分に発揮した、冷泉隊員ならではの技!その動きはまるで「黒いレイバー」を彷彿とさせますっ!』ガピー



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



…オオオッ!



五味岡 「…速い」


シゲ 「…おやっさん」


榊 「ム…」


後藤 「…まだまだ」ニヤリ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



華 「…来るのが分かっていても、受けるのは難しいですね、やはり」



ギュインッ


ズシュズシュズシュズシュ…!



沙織 『おおっと?ここでその勢いのまま、あんこう一号がエリア外に向けて走り出しました!このまま演習終了なのでしょうかー?!』チラッ



みほ 『…~ッ、そ、園さん後藤さんっ?!かっ「カメさんガード」っ!!』ガピー



ゴウーッ!


優花里 『その行動を妨げんと、あんこう一号の前にキャリア組二台が左右から猛スピードで挟み込む!しかし間に合うのでしょうかっ?!』



そど子 『行くわよゴモヨ?!タイミングは任せたわ!!』


ゴモヨ 『分かったそど子!!行くよ、せーのーでっ?!』


ギャギーッ!



優花里 『向い合わせでダッシュしてきたキャリア二台が同時に力任せの大迫力ドリフトターン!』


ガーッ!


バッカーンッ!


優花里 『末端にそそり立った「荷台」同士が激しくぶつかり合い、あんこう一号の前に突如、巨大なレイバーサイズのバリケードが「エル(L)字」に形成されたーっ!』


ズシュズシュズシュ…


沙織 『唐突に前方バリケードが形成されても、あんこう一号の勢いは止まりません!このまま衝突、ジ・エンドなのでしょうかっ?!』



みほ『まっ、麻子さんっ?「ウサギさんアタック」!!』ガピー



ズシュン…ッ!



麻子 『あいよ』


ダンッ


ダンッ


ドンッ!



優花里 『こっ、これは!「エル(L)字」に形成された壁の内側を飛び移り、そのままあんこう二号に向けて蹴りを放つ…いわゆる「三角飛び蹴り」だーっ!!』ガピー


みほ 『華さんっ?回転レシーブからの「アヒルさんアタック」!!』ガピー


華 『はいっ!』ガピー


ガギィッ!…グンッ…ズシュウンムッ


ズザアッ!


優花里『あんこう二号!あんこう一号からの高い位置からの飛び蹴りを楯で受け、そのまま斜め後方回転受身!!着地後硬直したあんこう一号の一瞬の隙を付き、方膝着座姿勢からの…?』ガピー



華 『レシーブ・トス・スパイクッ!!』


バン、バン、バンッ!!!


バシャ,バシャ,バシャッ!



沙織 『頭・胸・腰のレイバー三大弱点を確実に射抜く「三連射撃」が決まりましたーっ!!』



麻子 『…やーらーれーたー…』ガピー


ズシュン…


みほ 『…そっ、そこまでっ!!』ガピー



ウ オ オ オ オ ー ー ッ!!



沙織 『演習終了ー!見事、暴走レイバーの取締に成功しました、我らが特車二課「あんこう小隊」』ガピー


優花里 『今週五日間の短い間ではありますが、何卒暖かい目でのご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます!!』ガピー



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



…ワアッ!


パチパチパチ…



みほ 「…ふうっ。凄く恥ずかしかったけど、やっと終わってくれたあ…」ハァ~ッ…


優花里 『それでは最後に、西住みほ隊長より締めの言葉をお願いします』ガピー


みほ 『…ふ、ふぇっ?!あっ、あのっ…///』ガピー



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


パシャパシャ


みほ 『…ミッミナサンゴゾンジノトオリ,ワレワレハイマハイコウノキキニタッテイマス.キキトイエバ,ボコラレグマノボコ!ボコハサイコーナンデス!ミンナボコヲミテクダサイ!…』ガピー…


沙織 『み、みぽりん…』ガピー


ザワザワ…


ワイワイ…


五味岡 「…どうやらこれで終わりみたいですね。私はこのまま待機に入ります」


後藤 「おや…もう行っちゃうの?」


五味岡 「何かあったらすぐに出られるようにしておかないといけませんからね?…では」


カッカッカッ…



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



後藤 「…で、どうです?」


榊 「へっ…見たか?シゲ。一号のセッティング、従来のやり方じゃダメだな。全体的にもっと固めて、膝と足首を柔らかくしねえと。あれじゃ思った通りに踊れねえだろ?」


シゲ 「重心移動に体捌きがどっちもまだおっ付いてませんね。腕の振りが余計な慣性を生んじまってる。残念ながら、圧倒的な練習時間不足が祟ってますね」


榊 「二号はとにかく丁寧な動かし方が気に入った。普段なら絶対にやらせねえが、お前の方で少しズルしてやれや。な?」


後藤 「…助かります。佐久間も喜ぶと思いますよ。さて、そろそろマスコミを帰らせるか…」


シゲ 「…一号は201号機から体捌きと体術のパッチを充てとくか。二号は銃撃タイプか…202号の銃扱いバターンを幾つか。ただ動きのガラが悪くなるから、あんま使いたくないんだよなあ…」ブツブツ


後藤 「…あ、シゲさん?今日アイツ等の練習は無しで良いからさ。ここの紹介ついでに『ここでのやり方』って奴も伝授しておいてやってくれないかな?」


シゲ 「そりゃ構わないけど、いつも通り後藤さんが相手してあげれば良いんじゃないの?」


後藤 「俺、今日は一日忙しいの。忍さん、お仕事やっといてくれないんだもの」


シゲ 「うら若き女子高生の皆さんには、ちょいと『ここでのやり方』はキツすぎるんじゃない?」


後藤 「なあに、ほっときゃ勝手に野営始めるような連中だ。伊達に戦車道履修してないよ。下手な遠慮は無用さ」


シゲ 「了解。じゃあ普通に『働かざる者食うべからず』の方向で良いわけね?」


後藤 「ああ。…連中には客じゃなく仲間として、本当の意味での『居場所』を作っておいてやりたくてね?じゃシゲさん、連中の事頼んだよ」


シゲ 「あいよ…渕山ぁ?取り急ぎ整備班の方の面倒を頼むわ。後、連中への『ここでのやり方』は貴様に一任するからそのつもりで!」


淵山 「ウスッ!!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



榊 「…これから一週間分の溜まった仕事片付けるんだろ?ご苦労なこった」


後藤 「全く。おやっさんも連中の事、どうかよろしくお願いします」


榊 「ああ、気にかけとくわ。さて、と…

オラァ野郎共、余興は終わりだ!とっとと持ち場に戻りやがれ!!モタモタしてる奴ァ海ん中に叩っこむぞ?!」



整備班員共 「「「 ウ ス ッ !! 」」」



榊 「それからレイバーに『プロレス』やらせたバカはどうしたぁ?!」


みほ 「ひゃ、ひゃいっ?!ど、どうもゴメンなさいっ!!」


榊 「…後で雁首とデータディスク揃えて、俺ん所に持って来い」


みほ 「は、はいっ!」



榊 「…へッ!」 ニヤッ



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特車二課棟 演習場(棟前広場急拵)



ザワザワ…


ヨーシテッシュー


ブロロ…



みほ 「ううっ、叱られちゃった。後藤隊長ったらひどい…」


優花里 「肝心な時にどこかにいなくなっちゃいました」


麻子 「あのお爺さんは、整備関係の偉い人なのか?」


華 「整備班員の皆さんが忙しそうで、私たち何かお邪魔みたいです…」


沙織 「私たち、この後どうしたら良いんだろうね?」



?? 「ハァ~イお嬢ちゃん達?後藤隊長から話は聞いてるよん。この後はしばしこの私目にお付き合い頂こうか?!」



ゴモヨ 「うわ?!」


パゾ美 「び、びっくりした…」


そど子 「あ、あなた、一体何者なのよ?!」



シゲ 「よくぞ聞いて下さった!特車二課整備班主任『シバ・シゲオ』!!ちなみに、好きな戦車道チームはドイツ戦車尽くしの黒森峰女学園でい!」



華 「整備班主任という事は、偉い方なのですね?」


シゲ 「その通り!この整備班の「若頭」的存在であり、特車二課の実質ナンバー4たあ俺の事よ!!」


麻子 「スゴいテンションだな」


シゲ 「お宅の事は黒森峰副隊長の頃から注目してたんだ。当時のグッズも持ってるぜ?これからよろしくな!あ、後でサインもらえる?」


みほ 「…は、はい。わ、私ので良ければ…」


優花里 「あー!私も持ってます。黒森峰時の西住殿グッズ。発売期間が短く、相当なレア物なんですよね?」


みほ 「ゆ、優花里さんも持ってたの?!は、恥ずかしい…」


沙織 「今明かされる事実」


麻子 「だが、納得し過ぎて全く衝撃的では無い」


シゲ 「おお、この価値が分かるたあお目が高い!お宅も相当の好き者だね?」


優花里 「はい!戦車に限らず、戦車に関係する物全て。軍事関連全般に興味があります!」


シゲ 「嬉しいねえ!やはり戦車道履修者ともなると皆興味を持つものなのかね?」


沙織 「…ゆかりんクラスは中々いないんじゃないかな?」


華 「戦車道履修で最低限必要な知識はあると思いますが…戦車その物に愛着がわく程度と言った所でしょうか」


シゲ 「ガックシ。そうだよねー?うら若き乙女たちが皆が皆率先して軍事関係に興味を持つとは思えないもんなー…」


優花里 「…然り気に私、ディスられてませんか?」


シゲ 「ま、何はともあれ『撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し』。特車二課の事に関しては、この俺にドーンと任せといて頂戴よ!」


優花里 「鉄の掟、鋼の心、これぞ西住流。でありますな」


みほ 「あ、あはは…」



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--特車二課棟 広場



スタスタ…



シゲ 「まずは我が特車二課の裏にして真のボス、榊整備班長に挨拶してもらおうか。俺たちは尊敬と畏怖を込めて『おやっさん』て呼んでる」


華 「先ほどドスの効いた声で怒鳴られていた方ですね?」


シゲ 「戦後日本をスパナ一丁で渡り歩いてきた『整備の神様』よ!」


麻子 「戦後って…」


優花里 「…凄く恐そうな雰囲気でした」


シゲ 「そりゃあもう!機械に対するその姿勢は正に真剣勝負その物。愛する機械を蔑ろにする輩には一切容赦しない、厳格かつ恐ろしいお方だよ…。オタク等も言動には十分注意しなよ?」



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--特車二課棟 ハンガー内



ガガガ…


ドリュリュ…


ピー…ピー…



シゲ 「ありゃ?整備の陣頭指揮執ってるはずなんだけど…どこいっちゃったのかな、おやっさん」キョロキョロ


沙織 「…それらしい人、見当たらないねー?」キョロキョロ


シゲ 「おやっさんも忙しい人だからね?整備だけやってれば良い立場じゃない。何たってこの特車二課の実質ナンバー1なんだから」


みほ 「あれ?…着任直後にご紹介された福島課長じゃないんですか?」


シゲ 「あの人はどちらかと言えば本庁への体面の方が気になる方でね…。この中でのヒエラルキーといえば、おやっさん、第一小隊隊長の南雲警部補、大分落ちてアンタ等の面倒を見てる第二小隊隊長の後藤さんてのが、特車二課のナンバー3かな?」


麻子 「後藤隊長は大分落ちるのか…」


シゲ 「ま、その後すぐ後ろに付いてるのがナンバー4が、このシバシゲオ様って訳!」


みほ 「そ、そんな…後藤隊長は立派な人です!」 ガバッ


沙織 「急に何を言いだすの、この子は」


華 「みほさん。今そういうのはいいですから」


みほ 「あ、はい…」 シュン


シゲ 「無視しないで、少しは俺の方もイジって頂戴よ」


?? 「…んな大層な代者じゃねえ。俺ぁただの機械バカよ…」


シゲ 「おやっさん!一体何処行ってたんスか?!」


榊 「ちょいとお前さん達の隊長の後藤さんと話をしてたんだ…よく来てくれたな?俺がここの整備班長の『榊 清太郎』だ」 ニッ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



みほ 「あ、あの、先ほどはレイバーや車輌に無理をさせてしまい、申し訳ありませんでした…」


榊 「ん?ああ『プロレス』の事か。後藤さんの差し金でやらされた事だろ?気にしちゃいねえよ、あんま気に病みなさんな」


華 「でも、さっきはあれほど…」


榊 「ああ。ありゃあな?ウチのバカ共への示しと、マスコミ通じてのウチの上層部へのささやかなアピールって奴よ」


優花里 「アピール、ですかあ?」


榊 「特車二課は何かと風当たりが強くてな?こういう時にわざとらしい位に厳しい所を押し出しておかねえと」


麻子 「…あれだけバカやってアピールも何も無いもんだが」


沙織 「こ、こらっ、麻子?!失礼な言葉使いしないのっ!」


榊 「へへっ確かにな。大方、後藤さんから『お前さん達の資質を疑う奴等を見返すため』なんて言われてやらされたんだろうが…」


みほ 「違うんですか?」


榊 「担がれたんだよ、お前さん達は。『機械が好き』でこの世界に入ってきた『若ぇ連中』が、『戦車道の英雄』を…ましてや『佐久間のお墨付き』を嫌う道理は、まあ無いわな?」


華 「…やっぱり」


優花里 「またですか」


ゴモヨ 「そんな事だろうと思った」


パゾ美 「やってらんないわ」


そど子 「会長と変わらないわね」


榊 「『猪・鹿・蝶』どころか『四光』揃い踏みな連中に、可哀想な事を。…好きな娘に悪戯する中坊じゃあるまいし。ま、済まなかったな?」 アタマグシャグシャ


麻子 「うおお…」 アタマグラグラ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



沙織 「…(渋いお爺様ね…)」


榊 「ほう?…お前さん、俺の連れの若い頃そっくりだ。大和撫子ってえのかな?それに、芯の強さを秘めている感じがな…」


華 「あら♪ありがとうございます」


沙織 「…(華ったら、やっぱりモテるのねー…)」


榊 「…大和撫子に戦車道っていやあ、俺は昔から知波単一択よ。戦後の混乱をスパナ一本で渡り歩いてきた身としては、日本戦車中心の知波単がどうも他人事に思えなくてな?」


優花里 「何か分かる気がします」


榊 「敢闘空しく破れちまったが、黒森峰との試合で、相手さんの主将を包囲したのはそりゃあ見事だった…。最後は燃料切れ起こして敢闘空しく敗れちまったけどな ?で、どうだい。新しい隊長さんは」


みほ 「え?えーと…まだ良く分からない、です、ね…」


榊 「突撃して潔く散る『知波単魂』ってのがあるが、ありゃ融通が聞かなくてダメだな。突貫・突撃だけじゃあ、遅かれ早かれいずれ壁にブチ当たる。機会があったらお前さんの方からも言っといてやってくれや」


優花里 「…(まさについこの間の練習試合で目の当たりにしました)」


みほ 「…(私、隊長の西さんに突貫突撃傾向の件、注意するように言ったかな?)」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



榊 「で、小っこいお前さんがさっきの一号機の操縦手か」 グシャグシャ


麻子 「…や、やめろー」 グラグラ


榊 「佐久間から話はよく聞いてるよ。機体ブン回してる奴がいるってな?」


麻子 「ううーっ…佐久間教官からは、無茶するなって怒られた…」


榊 「曲げちゃいけねえ方向に、無理矢理こじらせたりすりゃあ流石に怒るが…お前さん、機械の能力をフルに発揮させたいだけだろ?」


麻子 「…おお」パアッ


榊 「お前さんの機体は、全体的に満遍なく負荷が分散されて良い馴染み具合になってる」


麻子 「…おおっ!」パアッ!


榊 「どうやら機械に好かれる子みたいだな、お前さんは。まあ好きなように動かしてみな?何度だって修理してやるからよ」 グシャグシャ


麻子 「…~っ///」 グラグラ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



榊 「で、早速だがお前さん達のデータディスクを預かっとこうか」


みほ 「あ、はい。これが皆の分のデータディスクになります」


榊 「悪いな。データのバックアップ取っとかねえと、ズルも出来ねえからな…」


みほ 「…『ズル』?」


榊 「後藤さんからどこまで話を聞いてるか分からねえが、コイツみてえな『人型の格闘戦用レイバー』は、理屈の上じゃ人間と全く同じ動きが出来るんだそうだ」


みほ 「話のかじりだけ、ちょこっとお話を聞きました」


榊 「どっちかと言やあ、フォワード二人の領分だ。よく話を聞いとくと良いや」


華 「… はい」コクリ


麻子 「わかった」コクリ


榊 「で、時間さえかけりゃあコイツは、打撃・投げ技・間接技・あや取りまで、所謂『特殊動作』を覚え込ませる事が可能ときてる」


沙織 「レイバーがあや取り、ですか?」


榊 「おおよ。201…第二小隊の一号機なんざ、器用に縄であや取りするぞ?指先ばかり器用になって行きやがる。殴り合いのコツ覚え込ませる方が先だってのにな」


優花里 「AVシリーズの器用さは分かりましたが、実戦でどれだけ役に立つかは判断しかねますね…」


榊 「まあな。だがそんな『特殊動作』ですら、一旦覚え込んじまえば、後はコンピューターの方で勝手に判断して最適なタイミングで『発動』してくれる。…人を運び上げるための担架を縄で固定化する時とかな?」


そど子 「レイバーにそんな事が出来るの?」


優花里 「何か面白いですね!」


榊 「これを『動きの効率化』と言うんだが…嬢ちゃん?」


麻子 「?」


榊 「逃げる目標を追いかけて動きを止める場合、レイバーをどう動かす?」


麻子 「…『走る』『飛び付く』『抱え込む』『そのまま乗っかる』『抑え込む』…この五動作」


榊 「レイバーの基本動作の範囲で行えるのはその位だよな。…シゲ、これに201号機のパッチを充てる事で、今の一連動作からどんな『動きの効率化』が『発動』する?


シゲ 「…相手に追いすがり様『脇固め』で極め。ですかね」


麻子 「ほう…」


華 「スゴいですね…!」


榊 「…とまあ、偉そうに講釈かましてみたが、ご覧の通り詳しい所は俺にもさっぱりでな?俺に出来るのは、立場上の権利を活かしたデータ管理…バックアップと『ふっかつのじゅもん』発動位なもんだ」


シゲ 「そんな!おやっさんは…」


榊 「それが事実さ。基本はもっぱらシゲや整備班員の若え連中に任せっきりよ。ハードはともかくソフトじゃ到底敵わねえ…」


シゲ 「…おやっさんは概要を把握して判断してくれりゃそれで良いんですよ。細かい所は俺たちがやりますんで、後はいつも通りドーンと構えてて下さいって!」


榊 「へへっ。…という事で、お前さん方のデータに少し『ズル』をして、第二小隊の動作パターンから幾つかパッチを充てる事にした。これは佐久間からも相談されてた事でな?」


みほ 「佐久間教官が…」


榊 「『ズル』によって、お前さん達の機体は格段に操作性が増すはずだ。ただ一から丁寧に育ててる訳じゃねえ。何かしらがトリガーになって、予想外の『特殊動作』が『発動』するかもしれん。だからこそ、普段なら絶対許可はしねえんだが…」


華 「…どうにかします!」


麻子 「もちろん。どうとでもして見せる」


榊 「…『ズル』には必ずリスクが伴う。特に機械にはその傾向が如実に出る。問題を起こすのは常にそれを扱う人の方。機械は決してワルさをしねえもんだ…そこん所、呉々も忘れねえようにな?」


華 「…はい」


麻子 「わかった…」


榊 「隊長さんよ、お前さん所の戦車もそうだろ?丁寧に整備をし、一生懸命訓練して、手足のように使いこなせば、機械はそれに必ず答えてくれる。機械ってのはそういうもんだ。そうでなくちゃならねえ…」


みほ 「…はい」


榊 「…おおっと、長い間引き留めて悪かったな?シゲ!コイツ等が命預ける事になる機材関係一式、改めて見せておけや。『銃』の閲覧も特別に許可する!」


シゲ 「へいっ、おやっさん!」


優花里 「『銃』?!『リボルバーカノン』の事ですね?!」


華 「話には聞いていましたが…実際に見るのは初めてになりますね。…『リボルバーカノン』ですか…」



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--特車二課棟 ハンガー内



ドカカッ


グイイーンッ…


シゲ 「んじゃハンガー内を移動がてら、取り敢えず簡単に特車二課の間取りから説明しておくよー?」


みほ 「はい、お願いします!」


シゲ 「まず建物自体は、事務関連や会議等を執り行う中央棟を真ん中に、左右両翼にガレージが長く張り出す形になってる」


華 「レイバーサイズを考慮してか、かなり大きな建物ですよね?」


シゲ 「元は大型機器生産工場だった場所を、倒産と同時に安く買い叩いた所だからね。これも金食い虫のレイバー隊ならではの倹約術と言った所かな?」


麻子 「はあ…(だから古い感じなんだな…)」


シゲ 「んで、正面玄関向かいに見て右側が第一小隊、左側が第二小隊に割り当てられてる。オタク等は第二小隊の予備人員扱いだから、左のガレージが主な活動エリアって事になるね」


優花里 「私たちが常在する場所というか、仕事部屋はどこになるのでしょうか?」


シゲ 「普通なら『隊員控室』ってのが、ハンガー内部中央棟寄二階にあって、そこに常在する事になるんだけど…ほらあそこのガラス張りの所」


沙織 「何か鉄板が張り出してる…」


シゲ 「連絡通路だよ。普段はあそこに整備の終わったレイバーを立たせておいて、隊員がすぐに乗り込めるようになってる訳」


沙織 「そうなんだあ…」


シゲ 「で仕事部屋の件なんだけど、残念ながら予備隊員のオタク等には席が無い。実際には宿直室とハンガー定機中の自機との往復になりそうだね」


そど子 「えーっ?この暑い最中に…?」


シゲ 「贅沢言いなさんな。俺たちゃこの環境の最中で日夜首都圏の平和を維持してるんだから…第一、他にやらなきゃいけない事がここにゃ山積みだからねえ…」 ボソッ


そど子 「?何か言った?」


シゲ 「いいやー別にー?…ああ、西住ちゃん。オタクには隊長室に臨時席が用意されているはずだよ。後で後藤さんに確認しといてねー?」


みほ 「…あ、はい!(後藤隊長と同じ部屋に席があるんだ…)」



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--特車二課棟 ハンガー内 あんこう小隊 車輌定機エリア



シゲ 「…とおやっさんに言われた物の、普段から訓練で嫌になる位に見て触っているだろうから、今更聞きたい話も無いもんだけどね?」


優花里 「そうですかあ?私はぜひ現場ならではのお話をお聞きしたいんですけど」


シゲ 「…さっきからお嬢ちゃん…秋山ちゃんだっけ?中々嬉しい事を言ってくれるじゃないの」


ゴモヨ 「…98式特型指揮車の事なら、秋山さんからの説明だけでもうお腹いっぱい…」


パゾ美 「私も…97式レイバー指揮車のスペックやら何やら…」


優花里 「そ、そんなぁ!いつも、これからが面白くなるって所で…」


シゲ 「ちなみにどんな説明をしてたの?お兄さんにちょこっと話してみそ?」


みほ 「あ…だ、ダメ~っ!!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



(※お話には何の影響も有りませんので、読み飛ばして頂いて構いません)



優花里 「はい!この篠原重工製『97式レイバー指揮車』。パトロール・レイバー専用僚車として初めて開発された車輌で、警光機・投光器・拡声器・レイバー擱座時に使用するウィンチ等を標準装備。後にAVシリーズとの運用情報統合システムが搭載されました。西住殿も利用されている通り、内部に狭小ながらも作戦ルームが用意されているのがその最大の特徴で、移動しながらの情報収集、状況検証が可能となっています。更に運用情報統合システムにより、リアルタイムで関係機への情報共有が可能なため、現場に急行しながらの作戦立案が可能。過去の膨大な事件記録を引用し、仮想状況下でのシミュレーションも行う事が出来ます。言わば移動式の基地のような物。それ故車体は程々の大きさとなってしまい、特に直接視認による状況判断と指示を出すために特化した車体の高さが生む独特の癖によって、レイバーと共に機動しつつ指示を出すような行動は困難を極め、後藤殿の苦労が偲ばれます。故に本車輌はコマンドとドライバー二人体制での運用が必要不可欠と言えるでしょう…っ!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



優花里 「…ふうっ!」 キラーン


華 「終わりましたか?」


ゴモヨ 「ほらね?」


パゾ美 「これだもの…」


そど子 「もう、うんざり…」


麻子 「なぜ、誰も止めなかったんだ」


みほ 「だから止めようとしたのに…でも優花里さん、スッゴい良い笑顔…」


沙織 「もう何言ってるか全然分かんない」



シゲ 「…うん、イイね?」 キラーン



麻子 「良くないぞ」


優花里 「次はぜひ現場ならではの『98式特型指揮車』の説明をお願いしたい所ですっ!」


シゲ 「お、そうかい?そう言う事なら…うおっほんっ!んっ、ん…」


そど子 「続けないでよっ?!」


ゴモヨ 「何だろう…」


パゾ美 「凄く、嫌な予感がする…」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



(※お話には何の影響も有りませんので、読み飛ばして頂いて構いません。むしろ好き勝手に書きすぎたので、率先しての飛ばしをお願い致します)



シゲ 「パトレイバーといえば、まずは機体・車輌の諸元から入らないとらしくないでしょ?いつもは遊馬や太田ちゃんにやられちゃってるから、今日は俺もやれば出来る所を存分にアピールしちゃうからね?!…四菱自動車製『98式特型指揮車』。分類、装甲車。所属、警視庁。全長 3.45m。全幅 1.62m。車両重量 957kg。出力 80ps。最大速度 145km/h。…篠原重工に特殊車輌分野にまで範囲を拡げられまいと、四菱がプライドをかけて開発した装甲車輌。本来レイバー指揮車は、足元周辺、特に後方の視界の確保が容易では無いレイバーの補完及び補佐役を務めるために開発された物で、指揮・バックアップ用電子機器や投光器、外部拡声器、ウインチの他、警視庁との運用情報統合システムを始めとする多彩な情報通信設備が搭載され、現場と特車二課などとの中継役もこなしている。運動性能に問題のあった『97式レイバー指揮車』を反面教師とした結果、小回りの効く小型バギータイプとなった訳だけど、その運転座席は極めて狭く、基本一人乗り。助手席と言っても補助椅子程度の簡易装備しか無いからね?実は運用情報統合システム自体は『97式レイバー指揮車』と全く同じ物が採用されていて、スペック的には同等なんだけど、最大の違いは操作環境によるインターフェース。現場で必要とされる情報・指揮・機動の全機能を一人の乗員のもとに集約させるという思想で製作されているため、指揮担当者は現場での柔軟な対応が可能…とは言われている物の、極めて狭いコクピットのせいでその操作環境は劣悪その物。基本停車しながらでの指揮が前提だね。ああ運転中のシステム使用は御法度だぜ?建前上は。携帯スマホの『ながら運転』と同じになっちまう。大きい声じゃ言えないが、この車輌は走りながらの作戦立案を無言で推奨してるから、かなりの矛盾を孕んだ車輌とも言える訳。陸上自衛隊にも同モデルが試験採用されていて、搭載装備の違いにより、多彩なバリエーションが用意されているんだけど、秋山ちゃんがバックスとしてこの車輌に乗れる事を喜んだのには、こいつがれっきとした軍用車輌の一種だったからなんだな。隊員の足としても使用される「戦闘指揮車」が主な車種だけど、50mmカノン砲を装備した駆逐装甲車 俗称「猟犬」なんてのもある。こいつはドイツ軍の軽駆逐戦車ヘッツァーを模したものとなっているんだ…っ!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



シゲ 「…ふうっ!」キラーン


華 「終わりましたね?」


ゴモヨ 「ほらね?」


パゾ美 「これだもの…」


そど子 「こういう人は秋山さんだけで充分よ…」



優花里 「…シゲ殿?」


シゲ 「…秋山ちゃん?」


ガシイッ!


シゲ 「やるじゃな~い?」


優花里 「そちらこそっ!」


シゲ 「気に入ったぜ?レイバー関連で何かあったら遠慮せずに俺に相談しな?」


優花里 「頼りにさせて頂きますっ!」



沙織 「…出た!ゆかりんお得意の無意識人心掌握術。ただし、天然か濃い人限定」


麻子 「何だか良く分からない絆が生まれたな」


みほ 「良い話なの、かな?」


沙織 「そんな訳無いじゃない」


シゲ&優花里 「じゃあついでに98式特殊運搬車の説明も…」


あんこう小隊 「するなーっ!」(※優花里・華 以外)



華 「…私は、一体何時になったら、リボルバーカノンがみれるのでしょうか…?」 ショボン


優花里 「ああっ?!五十鈴殿、ごめんなさいっ!!私も楽しみにしてたんです、今すぐシゲ殿に連れていってもらいましょう?」


シゲ 「…いっけね!あんま騒いでるとまたおやっさんにドやされちまうよ…」



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--特車二課棟 ハンガー



ガガガッ…


ドリュリュッ…


スタスタ


シゲ 「いやあ、ごめんごめん。中々女の子に理解されにくい話なもんだからさ?分かる子が来るとつい嬉しくなっちゃうんだよ」


優花里 「私も同じ趣味を持つ方と知り合いになれて嬉しいです!」


シゲ 「くうっ!泣ける事をっ…。同じ趣味といやあ、こっちは車関係だったけど、オタク等の自動車部の連中も面白かったな」


みほ 「自動車部の皆さんともなんですか?」


シゲ 「おおよ。例の特殊カーボンの件では本当に世話になった。腕も確かだったし…約束したレースが出来るようになるといいけどな?ま、おやっさんの車だけど」



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--特車二課棟 ハンガー内 あんこう小隊 レイバー駐機エリア



シゲ 「リボルバーカノンは、すぐにレイバーに携帯させる必要から、利便性を考慮し、レイバー駐機場のすぐ脇に設置されてるんだわ」


華 「?大きなロッカー…みたいな物しかありませんが」


シゲ 「これがレイバーサイズの『拳銃』を仕舞っておく『ホルダー』って訳さ」


優花里 「これは第二小隊と同じ物なんですか?」


シゲ 「おうよ!…日進月歩で進化するレイバーに対し、同じくレイバーの性能だけで対抗するのはキリが無い。何かしら別次元の『抑止力』は必要不可欠。そこでAVシリーズから採用されたのが『リボルバーカノン』てわけ」


優花里 「第一小隊には無いのですか?」


シゲ 「第一小隊の旧型パトロールレイバー『バイソン』には、この手の飛び道具は一切搭載されていないんだ。それでも高い成績を上げている第一小隊は大したもんなんだよ」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



華 「…ずいぶんと厳重に保管されているんですね?」


シゲ 「さっきはああ言ったけど、警察の『抑止力』としては過ぎたる代物だからね、っと…」


ピッピッピッ…


ガチャンッ…ゴグンッ


沙織 …(大洗じゃずいぶんと気軽にガレージに出入りしてたけど、学生と社会人じゃずいぶんと意識に差があるもんなのねー…)


麻子 「鋼鉄製のロッカーに、厳重な認証式ロックと手動式キーの二重構造か…」


シゲ 「管理にはものスゴく気を使ってるよ。整備の関係上、俺らがコレを検査したり弄ったりする必要があるんだけど、その際には必ず直属の最高クラスの上司、おやっさんの許可が必要になる」


沙織 「私たちの見学許可もそれと同等なんですね?」


シゲ 「そういう事。実際の使用時にはもっと厳しい条件になるよ?福島課長を含めたナンバー3の内、最低二人以上の許可が無いとここを開ける事すら出来ないんだから」


ガラララ…ッ


ガコンッ


シゲ 「お待たせ。さ、これが『リボルバーカノン』だ。名前の由来通り、形状はリボルバー型拳銃を模した物となっている。機構はそのままに、人からレイバーサイズに拡大しただけの代物…と言えない事もない」


華 「鉄のギミックの塊を見ると、戦車を思い出して少しホッとします…」


みほ 「『銃』自体には、電子機器類は一切使用していないんですね?」


シゲ 「AVシリーズのセンサーは優秀だからね。多少の誤差なら自己修正しちまうし。第一、アンタ等 戦車道みたいな長距離使用をほとんど想定していないし」


華 「そうなんですね」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



シゲ 「…アンタ等 戦車道履修者にとっては釈迦にに説法という事になるのかな?見ての通り、口径は37mm… 」


優花里 「ちょっと待ってください。見ての通りと言うのであれば、これはどう見ても我がⅣ号の…」


シゲ 「37mmったら37mmなの。良いね?…で、リボルバーカノンの弾丸は、貫通の危険性が低く、レイバーのストッピングパワーを期待できるホローポイント弾が採用されている」


華 「強ければ良いってものでも無いんですね?」


シゲ 「基本FRPを使用する民生用レイバーに対して、アンタ等の使用している戦車での攻撃なんか絶対考えちゃダメ。だって威力が強すぎて、貫通して後ろの施設自体を破壊する事になっちゃうでしょ?」


華 「…威力が高いと言えば、98式AVに比べて各部モーター出力が弱いドーファンの場合、両手撃ちが基本と言われ、そのようにしてきました。模擬用のペイントガンなら片手撃ち出来ましたが…」


シゲ 「実際のリボルバーカノンの衝撃には、確かにドーファンの非力さでは片手撃ちには耐えられないだろうねー」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



優花里 「…私、どうして自分がリボルバーカノンに興味があるのか、実際に見るまで気が付かなかったのですが、今 見て分かりましたよ」


シゲ 「戦車と比べりゃ小さいかもしれないけど、一応『砲』だからじゃないの?」


優花里 「いえ!もちろんそう言う意味での興味もあったのですが…モデルガンサイズだと気が付かなかったのですが、リボルバーの機構って、私が担当してる装填手の動きその物なんですよね」


沙織 「砲弾を持ち上げて、セットするって、あの流れ作業の事?」


優花里 「はい。弾を砲塔まで運んで装填する…しかもそれを、地面に直置きすると私が直立した面積と同じ位で実に器用にこなすじゃないですか」


華 「その上、撃鉄まで追々して動きますし」


優花里 「現代戦車は、装填も自動化が進んでいます。ちょっと機構は違いますが、こんな感じなのかなあ?って考えると感慨深い物がありますね」


みほ 「…私は、優花里さんのいないⅣ号は嫌だけどな…」


優花里 「ふえっ?!に、西住殿?…ふ、不意討ちは止めてくださいよう…」 グスッ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



シゲ 「…さてと、整備班に係わる事柄は説明しきったかな?」


みほ 「そうですね、多分」


シゲ 「実はここ特車二課は、任務以前にやらなきゃいけない事が結構あるんだ。昼飯食い終わったら『ここでのやり方』をあんこう小隊の諸君に教えるから『覚悟』するように」 ニヤリッ



みほ 『…覚悟?』



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)裏敷地内



カッ!


…ンジーワッ,ジーワ,ジーワ,ジー…ッ…!



そど子 「…暑っつい!」


みほ 「…お昼ご飯食べたら、皆、麦わら帽子に体操服&ジャージに着替えてここに待機。って言われたんだけど…」



ガランッ,ガランッ,ガランッ!


シゲ 「…やあやあ、お待たせっ!」


優花里 「高らかな高下駄の音と共に来られたのはどなた様でありますか?」


シゲ 「…おいっ?」


淵山 「押忍っ!…俺は特車二課整備班副長『淵山 義勝(ぶちやま よしかつ)』。特車二課整備主任のシゲさんに次ぐ副長だ。戦車道では、圧倒的物量で敵陣を押し潰すプラウダに傾倒している」


そど子 「…ここでは、自己紹介で好きな戦車道チームを言わなきゃいけないルールでもあるわけ?」


シゲ 「悪のりに便乗するのが、我が整備班員のモットーだからね?それはともかく、これから諸君には、特車二課で生きていくため…いや、生き残るための『ここでのやり方』って奴を教授していくっ!」


淵山 「そこでこの俺様の出番って訳だ。俺ぁ主任のように優しく無えぞ?ビシビシ行くからそのつもりでいるようにっ!」


そど子 「ハッ!無駄に大声張り上げちゃって…今時下駄にバンカラな出で立ちなんて流行らないわよ」 ボソッ


淵山 「…聞こえてるぞ?園とか言ったな、お前。風紀委員だか何だか知らんが『ここの風紀』はこの俺が一手に任されている。一(いち)女子高生風情が、あまりのキツさに後で吠え面かくんじゃねーぞ?」


そど子 「あぁん?アンタこそ大洗風紀委員をあまり舐めないでよね!」



淵山 「…おぉう?」


そど子 「…あぁん?」



ゴモヨ 「…ほんと私たち」


パゾ美 「ガラが悪くなったよね?」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



淵山 「おおっと…それから、そこの長髪のアンタ」


華 「?私の事ですか?」


淵山 「ああ、アンタだ。五十鈴とか言ってたな?極めて個人的な理由だが、アンタの昼飯時の大食いっぷりに、ウチの若え連中が恐れを為しちまってな?」


華 「大食いだなんて…。女性に対して失礼とは思わないんですか?皆さんもそう思いますよね?」


あんこう小隊 「「……そうですね」」


華 「…今一つ歯切れが悪いように感じるのは気のせいでしょうか?」


淵山 「互いにこのままじゃ示しが付かねえ所で、だ…。夕飯時、どちらが恐ろしいか若え連中に知らしめるため、悪いがこの俺と一勝負付き合ってもらおうか?」


華 「…貴方が負けたら、先程の言葉を取り下げてくれますね?」


淵山 「もちろん。男の約束だ」


優花里 「どんな会話のやり取りで何をかけて言い争っているのか、今一つ理解に苦しんでいます…」


麻子 「…この勝負に勝ったら、より大食いだって事を知らしめる事になるのだが、それは良いのか?という点だな」


沙織 「華って時々よく分からない言葉や価値基準が出てくるのよね…」


そど子 「と言うか、すっかり私は置いてけぼりじゃないの!」


みほ 「あ、あはは…」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



淵山 「…おいっ!外部スピーカー用マイクっ!」


整備班員共 「ヘイッ!淵山先輩!!」


淵山 「うむっ…」 カチッ


淵山 『…待機中の全隊員及び整備班員へ。606用意。装備03にて、裏敷地内に集合。繰り返す…』ガピー


優花里 「装備03て…」


淵山 「『…に集合。以上。』…これだ」 ガランッ


沙織 「金バケツに…」


みほ 「…手鎌?」



-----------------



--特車二課棟 裏敷地内



…ミーンッ,ミーン,ミン,ミン,ミン,ミン,ミーン…ッ…


ザクッ,ザクッ,ザク…



麻子 「…暑っつい!」 ボタボタ


優花里 「606って…特車二課周辺にボウボウに生えまくってる…」


みほ 「雑草の芝刈りだったんだね…」


淵山 「オラ、無駄口叩いてる暇なんざ無えぞ?!口動かす前に手ぇ動かせっ!ここの雑草生い茂んの、芝刈りより早いんだからなっ!!」


そど子 「うっさいわね、やってるでしょーが!…ゴモヨとパゾ美はここまでをお願い。私はあそこをやるわ!」


ゴモヨ 「りょーかーい」


パゾ美 「わかったー」


麻子 「真面目か」



ザクッ,ザクッ,ザクッ…


華 「フフッ、ウフフッ、フフフフ…」


ザク,ザク,ザク,ザク,ザクッ!



沙織 「華?何か怖いからそれ止めて?!」



-----------------



--特車二課棟 裏敷地内



スタスタ



シゲ 「さ?次はこっちー」


優花里 「また606ですかあ?」


シゲ 「んにゃ」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)裏敷地内 ビニールハウス&鶏小屋



…コケーコッコッコッ…



優花里 「…卵は全部回収して良いんですよねー?」


みほ 「畑仕事に…ニワトリの世話?」


シゲ 「あっちの小屋では、海産物の干物作りに精を出してるよ。ネットで見た事ない?特車二課名産物『ハゼの干物』。中々評判の一品なんだけど」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



淵山 「オラ、無駄口叩いてる暇なんざ無えぞ?!口動かす前に手ぇ動かせっ!市場に出荷するわけじゃねえんだから、収穫するトマトは赤く熟したのだけにしろよな?!」


そど子 「ほんっと口喧しいわねー!…ゴモヨとパゾ美はここまでをお願い。私は冷泉さんとあそこのエリアをやるわ!」


麻子 「そど子も似たようなもんだぞ?」


そど子 「じゃ始めるわよー」


ゴモヨ 「りょーかーい」


パゾ美 「わかったー」


麻子 「だから自然に無視するな。悲しくなるだろ」


ザク,ザク,ザク,ザク,ザクッ!


華 「ウフフフフフフ…」


沙織 「華?ここまで草むしりしなくても良いからっ!あとそれ枝豆だからっ!!」



-----------------



--特車二課棟 裏敷地 東岸壁 船着場



カナカナカナカナカナ…


ミャー…ミャー…ミャー…


ボーッ…トットットッ…



…チャポンッ



優花里 「そして、総出で釣り…」


みほ 「…あ、来たっ…えいっ!」



ンピシッ!…ピチピチピチ…



みほ 「やったっ!」


優花里 「…あー、大物ですねー。それにしても随分と慣れてませんか?」


みほ 「エヘヘ。田舎じゃ池や川でだけど、お姉ちゃんと一緒によく釣りしてたの」


沙織 「…やだコレ付けるの?私ムリ…」


華 「エサですよね?付けてあげますから、ちょっと竿貸してください」


沙織 「華、ありがとー」


麻子 「…夕暮れの一時。都会の喧騒を離れ、私は釣糸を垂れ、しばし安らぎの刻を得る。この静かな魚との思考戦…私は嫌いでは無い」


沙織 「…ちょっと麻子!お願いだから現実逃避しないで帰ってきて?」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



そど子 「…何なのコレ?訓練と事務仕事以外は、ほとんど一日中備品の保全と食料調達じゃない!」 バシーンッ!


シゲ 「ウチが貧乏だって話、後藤さんから聞いてない?これも大事な特車二課の任務だよー?」


ゴモヨ 「話は聞いていたけれど…」


パゾ美 「まさかこれ程とは…」


そど子 「こんなんで本当に任務遂行出来るわけ?」


淵山 「ふんっ!…風紀委員ともあろう者が、まさか環境維持を軽んじる発言を行うとは…貴様達はその性根を根本から叩き直さねばならんようだな?」


そど子 「な、何よ?」


淵山 「じゃあ聞くが、今日の昼、お前たちが何を食ったか思い出してみろ」


華 「…軽く大盛チャーハンと麻婆豆腐、ギョーザ三人前に味噌ラーメンと言った所でしょうか…」


優花里 「チャーハンがご飯、麻婆豆腐が味噌汁、ギョーザがおしんこみたいに、一汁一菜感覚で言わないで下さい?!」


沙織 「華?あんたはちょっと黙ってよう?話がややこしくなるから」


華 「心外です!」 ガーン


淵山 「後で見てろよ?…それはともかく、こんな地の果てに出前しようなんて物好きは、上海亭一軒のみ。それも平日の昼間だけだ。一番近くのコンビニですら、車で往復45分…」


みほ 「ううっ…実はⅣ号持ってきて良いか後藤隊長に相談したんだけど、断られちゃったの…」


優花里 「一応、聞いてはみたんですね?」


華 「その理由は?」


沙織 「聞くまでも無いじゃん?!」


みほ 「整備班の皆さんには受けるかもしれないけど、警察に戦車はさすがに置けないって」


麻子 「そりゃそうだろ」


淵山 「ただし、コンビニは高く付く上に、品数がどうしても不足になる。結局は自給自足の道を模索するしかないわけだ」


沙織 「どれだけ辺境なの…?あー花の東京ライフとか浮かれてた自分に腹が立つ…!」


華 「反省して下さいね?」


沙織 「華…怒るよ?」


シゲ 「米、乾麺類 保存の利く主食は良いとして、タンパク質及びビタミン、ミネラルの確保だ。ビタミンに関しては、第二小隊隊員が独自に開発したトマトをはじめとする各種野菜畑で一応の決着を見たが、問題なのはタンパク質だ…ニワトリ小屋 20羽のニワトリが産む卵だけで、需要が満たせると思う?」


そど子 「思ってないわよ、最初から」



ミャー…ミャー…ミャー…


ザザア…


ボーッ!ボーッ!



整備班員共 「頼むぞー!」


整備班員共 「生きてかえってこいよー!」


整備班員共 「目標達成まで帰ってくるなー!」



みほ 「あれは…」


シゲ 「…最近始めた沿岸漁業の切り札、整備班の誇る高速艇さ。目の前に拡がる東京湾は、海産物の宝庫。これを有効利用しない手は無い!」


沙織 「もう、勘弁して…」


淵山 「…ここじゃ任務より先に日々生きていく事が戦いなんだ。それが『ここでのやり方』。特に飯の問題を甘く見ると痛い目を見るぞ?」


優花里 「…なんか、仮宿の大洗とあんま状況変わりませんよね?」


華 「むしろ生徒会と風紀委員の皆さんの仕事ぶりは、もっと評価されて良いと思います」


麻子 「桃ちゃん先輩には、戻ったらもう少し優しくしてあげよう」


そど子 「…ウサギさんチームに厳重注意なんかせず、サバイバル生活のコツを聞いておけば良かったわ…」


ゴモヨ「…確かに規則なんて、生きていく上には何の役にも立たない」


パゾ美 「…私たちのアイデンティティーが、今まさに音を立てて崩れ落ちてる…」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)内



沙織 「私、ここで上手くやってく自信が持てなくなってきたよ…」


麻子 「どんまい」ポンッ


みほ 「…(後藤隊長、ここにもいないみたい…)」キョロキョロ


整備班員共 「…何だ、またハゼの干物か…」


整備班員共 「たまには他の飯が食いてえなあ…」


シゲ 「贅沢抜かすな!」


沙織 「…何コレ?!ハゼの干物、生野菜、最低限の出汁が出た味噌汁、生か茹でた玉子、魚はただ焼いただけ…なのに、こんなに味が良いなんて!」


華 「絶品ですよ?」 モグモグ


淵山 「す、すげえ…この女、ココじゃ一番の大食いの俺の遥か上を行きやがる…負けた、ぜ…」 ズズン


麻子 「そして口程にも無いな、この副長は」


沙織 「絶品なのは分かってるの!勿体ないって言ってるの。ちゃんと料理してあげれば、もっと美味しい『ご飯』になるのに…」


淵山 「ふん…そんな暇も人手も無いわ」


麻子 「そして、復活も早いな」


淵山 「雇い入れた料理人員は何故か次々と辞めていって長続きせず、何だかんだと特車二課員が任務と平行して交替制の持ち回り!贅沢をぬかす余裕は無い。体力を維持できる『エサ』であれば、もはやそれで良いんだ…」 フッ


沙織 「それだ!貴方たちに感じる違和感はそこよ。エサ?『ご飯』の大切さが本当の意味で分かってない!本当に美味しいご飯は生きる上での活力、ここで言う『士気』に影響してくるの!何で中途半端に諦めてんの?!」


ゴモヨ 「そうだ、そうだー!」


そど子 「どーせさっきみたいに、食への不満を直接料理人さんにブツけちゃうから、嫌になってここから居なくなっちゃうんでしょ?」


パゾ美 「自業自得」


淵山 「やかましい!これだけの大人数に対して変化のある料理を短時間に出して見せるだけのスキルが、男だらけの俺たちにあるわきゃ無えーだろ!…」


沙織 「あー?それって今セクハラ物の発言ですよ?!…」



ギャーギャー



榊 「おうおう…喧しいのにかしましいのが合わさって、活気が出てきたじゃねえか…シゲ?この場の仕切りはお前に任せるぞ」ニヤニヤ


シゲ 「…は、はいっ!」



沙織 「分かりました…そこまで言うのなら、明日の朝からこの私が『ご飯』を担当させて頂きます!」


淵山 「…ほう?練習と『うちのやり方』をやりながら、特車二課全員分の満足出来るメシを用意しようって言うのか?」



麻子 「…沙織のメシはうまいぞ?」


麻子 「うちの沙織さんの『ご飯』を、あまり舐めないで下さい!」 モグモグ


沙織 「あー…ややこしくなるから、あんた達はちょっと黙ってて!」


五味岡 「武部さん?彼らも悪気があって言ってる訳じゃないんだ。実際、淵山さんも言ってる通り、これだけの人数を満足させる食事を提供するのは至難の技だ。無理しなくても…」


沙織 「!(やっぱ素敵!私のために助け船を…でもここは、女の意地の見せ処よね?)…大丈夫です!必ず美味しい『ご飯』を皆さんに届けてみせますから!」


そど子 「…面白いわね!コイツは何かと言い方が気に食わなかったのよね?」


麻子 「いやだから、お前たちも似たようなもんだってば」


そど子 「ちょっと冷泉さん?!変な噂たつような事言わないでくれる?私は優しいほうでしょ?朝起こしにも行ってあげた事もあるのに…」


沙織 「…へえー?園さんも麻子の事起こしに言ったことあるんだー」ニヤニヤ


麻子 「うん。確かに意外と優しい」


そど子 「…っんなっ///!…ま、まあ良いわ。武部さん分の『うちのやり方』とやらは、私たち大洗風紀委員が受け持つわ!」


ゴモヨ 「受けて立つわ。やってやろうじゃない」


パゾ美 「武部さんは、存分に料理をして頂戴?」


沙織 「あ、ありがとう!風紀委員の皆。シゲさんも淵山さんも、それで異存は無いですね?!」


シゲ 「ぼ…僕ぁ元々、正直どうでも良いのですが…」



沙織・そど子 「「どうでもいい?!」」



シゲ 「い、いえ!ぜひお願いします、ハイ…」



淵山 「お、おう…やれるものなら、ぜひ、やってもらおうじゃないか!」



優花里 「…結局これって、何の争いなんでしょうかね?」


みほ 「あはは…さあ、何なんだろう」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮 二階 宿直室



リー…リー…リー…



zzz…


ムニャムニャ…

ワタシハ,フードファイターデハアリマセン…

ドウセナラ,ガレージシタニドールガアルトクライイッテクダサイ…

オバアガ…オバアガ…

ミンナヲ,イブクロカラ,コウリャクスルノヨ…

ミナ,コノワタシニヒレフシナサイ!…

グーグー…



みほ 「…(今日は色々あって疲れてるはずなのに、眠れないな…お水でも飲んでこようかな…)」ムクッ



キイッ…パタン



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮~中央棟 渡り廊下



ペタペタ…



みほ 「…そういえば、今日隊長とは朝会ったきりだったな…さすがにこの時間はいないよね…あ」



-----------------



--特車二課棟内 2階 隊長室



コンコン…



後藤 「んっ… 」メノアイダオサエ



キイッ…



みほ 「失礼しまーす…後藤隊長!?こんな時間に、まだお仕事されてたんですか?」


後藤 「…おお西住。お前こそどした?こんな時間に」


みほ 「あ、あはは…。何だか眠れなくて。お水頂こうと思って来てみたら、電気が付いてたから…」


後藤 「ふうん…何だ、パジャマじゃないんだな」


みほ 「おあいにく様っ…一応課外活動中なのでジャージです!パジャマじゃなくてすいませんでしたねっ」 プイッ


後藤 「…怒るな。ただの冗談だよ」 ハァ…


みほ 「あ、あの…私、コーヒーでも入れてきましょうか?何だかお疲れみたいですし…」


後藤 「うん…そういやお前さん、ココアとか好きか?」


みほ 「?普通に甘いのは好きですが…」


後藤 「…今日はもう締めようかと思ってたんだよ。だから、ホッとする飲み物が良くてな…良かったら、少し付き合わないか?」


みほ 「分かりました!あ、私の分も入れてきますね?少し待っていて下さいっ!」



パタパタ…



後藤 「…フム」 ガリガリ



-----------------



--特車二課棟 屋上



カン,カン,カン…


ゴォォ…ッ…



みほ 「…あ、飛行機の音…」


後藤 「深夜発着便だな。空港が近いんだ…ここなら落ち着けるだろ」



ギイッ…



みほ 「…わあ」



後藤 「向い岸と東京の街光で、結構明るいだろ」


みほ 「綺麗…」


後藤 「そうか?むしろ辺境の地なのを嫌が応にでも思い知らされて、いつも泣きそうになるんだが」



みほ 「…」ムゥ


後藤 「?何で少し不機嫌そうなんだ」



リー,リー,リー…



みほ 「この時間だと、さすがに涼しいですね…」 フー.フー…


後藤 「海沿いだからな。良い風が来るんだ…今日は悪かったな。おかげで良い物を見せてもらえた…皆、喜んでたろ?」 フー,フー…


みほ 「…酷いですよ隊長。すっごく恥ずかしかったんですからね?何時の間にかいなくなっちゃうし…」 ズズッ…


後藤 「色々立て込んでてな。すまなかった…で、皆と話してどうだった?」


みほ 「皆、戦車道に詳しくてびっくりしました。佐久間教官みたいに知らない人ばかりかと…」


後藤 「佐久間は『継続』推しだぞ?」ズズッ…


みほ 「…はい?」


後藤 「だから、佐久間は継続…」


みほ 「繰り返さなくて良いんですが、どうして黙ってたんですか?」


後藤 「講師として、あくまで中立の立場でいたかったんだと。独自性が高く、意外性が実は利に叶ってる所が気に入ってるらしい」


みほ 「隊長さんがスゴいんです、あそこは」


後藤 「あと、武部が山さんと派手にやらかしたって?何やってんだか…ったく」 ズズッ…


みほ 「あはは…何か熱くなっちゃったみたいで。でも沙織さんは料理で相手をもてなしたい人だから、きっと皆さんに喜んでもらえる『ご飯』を作ってくれますよ?」


後藤 「…まあいいさ。多少のイザコザも、互いの『居場所』を確保するためには必要な事だからな」



リー,リー,リー…



みほ 「…ひょっとして残業されてたのも、先週ずっと私たちの面倒を見てくれてたからですか?」


後藤 「違うよ。俺が一週間サボってたのが悪いんだ。てっきり忍さんが片付けといてくれるかと思ったんだけどな…」ヤレヤレ


みほ 「…忍、さん?」


後藤 「ああ、言ってなかったっけ?第一小隊隊長の南雲警部補の事。ちなみに彼女は『隠れグロリアン』だ」


みほ 「何です?その言い方」


後藤 「彼女、意外とお嬢様なとこあるからね。戦車道も嗜みの一つで知ってたんだろうけどさ」


みほ 「あはは…そう、ですか…」



後藤 「…何か、あったのか?」



みほ 「…どうして、そんな事聞くんですか?」



後藤 「朝からどこか心ここに在らず、という様に見えた」


みほ 「…コンビニが近くに無かったから…あとⅣ号もダメって言われましたし?」 チラ



後藤 「…」 フー…



みほ 「…ごめんなさい…」 ズズッ…



後藤 「…良かったら話してみないか?何も知らない奴の方が、後腐れなく愚痴れる物だぞ」


みほ 「何ですか?それ…」 フフッ



後藤 「…」 ズズッ…


みほ 「…」ズズッ…



ゴォォ…ッ…



みほ 「…私の家は、旧くから戦車道に関わる西住家。姉も私も、何の疑問も持たず戦車道へと進みました。


『撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心』…それが、西住流。


ただ、勝利という『結果』のみを追い求めるその姿勢に私が疑問を持ち始めた時に、あの『事件』が起きました。


…黒森峰にとっての大事な記録が掛かった決勝戦で、私は味方車両を助けるために戦車を飛び出し、その隙に撃破されて敗北してしまったんです。


…私は皆が、『仲間が一番大切』なんです。ですが、仲間の救出という『過程』は無視され、話すら聞いてもらえなかった…。私の戦車道は否定されました。だから私は、戦車道から逃げ出した。


でも私は、大洗という『過程』で、私は再び『自分の戦車道』を手に入れることが出来た。優勝と言う『結果』も手にいれました。


大洗の件は…きっかけはともかく、私が決めて仲間が後押ししてくれてやれた事なんです。そういう『過程』で得た『結果』なんです。


でも、約束は果たされなかった。皆で得た『結果』は無かったことにされた。もちろん『過程』も…」



リー,リー,リー…



後藤 「例の文科省の、約束反故の件か…」


みほ 「はい…。『過程』も『結果』も否定されてしまっては、私には立つ瀬がありません」


後藤 「…まあ、確かに。話は分かる」


みほ 「この前実家に帰りましたが、『過程』も『結果』も無くしてしまった私は、どうしても母に会えなかった…」


後藤 「… 」ガリガリ


みほ 「…実は今回の事もそうなんです。小さい事なんですが、私が決めて皆が後押ししてくれて、やっている事なんです。…それを隊長は、子供だからとバカにせず、対等に話をしてくれました」


後藤 「そりゃお前さん…親しくない仲は礼儀前提。だからだよ」


みほ 「…そうかも知れません。でも後藤隊長が、私たちの『過程』と『結果』を認めてくれた上で『居場所』を示してくれたのは事実」


後藤 「…」



みほ 「それに救われた気持ちがしたのも、また事実なんです…」



後藤 「…だからあの時、ここにいてもいいのか?なんて事を聞いてきたのか…」


みほ 「はい…」



後藤 「ん~…お前さん、まだ子供なのに難しく考えすぎだ」 ガリガリ


みほ 「…そうですか?」


後藤 「今から話すのは俺の独り言。まだ周りには話さないで欲しいんだが…去る筋からの情報によると、大洗復活のために西住流家元が文科省に直談判したそうだぞ?」



みほ 「…え?お、お母さんが?嘘…」


後藤 「本当さ。詳細は不明だが、お前さんとこの例の生徒会長から依頼を受けてな?」



みほ 「…どうせ、来年の大会で雪辱を果たしたいだけですよ…」


後藤 「それにしても、だ。当の文科省から、戦車道プロリーグ設置委員会の委員長に打診されている者の、本来やる事じゃあ無い…」


みほ 「私が拒んでいるだけって!…お母さんに壁を作っているだけって…そう、言いたいんですか?隊長は、西住流を知らないから…」


後藤 「勘違いしないで欲しいんだが、今すぐ無理に仲直りしろなんて無茶な事を言うつもりは無いんだ。…ただ、一方的な思い込みだけで思い悩むのは、お前さん自身のためにならんだろ」


みほ 「でもっ!私は…」


後藤 「西住。…頼むから、大人の『子供じみた見栄』を勘違いしないでくれよ?」



みほ 「お母さんの…見栄?」


後藤 「…考えても見ろよ。長年の苦労を重ねて、ようやく西住流家元にまで上り詰めたお方だ。そんな方が、ただ雪辱を果たすなんてチャチな理由だけで本気で文科省に楯突くと思うか?」


みほ 「…」


後藤 「その苦労を、『過程』を、お前さんはむしろずっと見てきたはずだろ?そして、きちんと『結果』を見てみろよ。…お母さんは、お前さんの『居場所』を守ろうとしてる。反対する理由は他に無い」



みほ 「…お母さんが…」


後藤 「安心しな?少なくとも家元の中では『大洗』の件、お前さんの『過程』も『結果』も十分認められてるよ」


みほ 「…」


後藤 「『過程』も『結果』も認めないんじゃ、お前さんの嫌いな大人と同じじゃないか」



みほ 「…どうしたら良いんですか?私…」


後藤 「だからお前さんは、良い大人になりなさい。そうすれば、少しは相手を許せる…いや、諦められるぞ?しょうがないかな、ってね」


みほ 「…私はまだ子供だから、言ってくれないと、分からないです…。隊長もそうですもんね?大事なことは言わないの」


後藤 「大人はね?言葉に責任を持たなきゃいけないの。だから迂闊に言葉にはしないのさ。言いたいことも言えんのよ。察してやんなさい」


みほ 「はい…」



後藤 「まあそう落ち込むな。今回頑張ってくれたら、大洗復活のために俺も及ばずながら力になってやるから」


みほ 「…本当ですか?」


後藤 「ああ、約束だ」


みほ 「…そこは『言い切る』んですね?」


後藤 「子供との約束だからな?」


みほ 「ふふっ…ひどい」



リー,リー,リー…



後藤 「…さ。こんだけ話したら、いい加減眠気も来ただろ?子供はもう寝なさい」



みほ 「ん~…もう少し、かな?」


後藤 「甘えんじゃないの。もう子供じゃないんだから」


みほ 「…さっきまで子供扱いしてたのに」ムゥ…



後藤 「そこまで言うなら、寝るまで『添い寝』でもしてやろうか?」


みほ 「『添い寝』って…ひゃあっ///?!そそそそ、そんなっ、そんな事して頂かなくても一人でちゃんと寝れますからっ///!あ、ありがとうございましたっ!お、お休みなさいっ!」アワワッ



パタパタパタ…カン,カン,カン…ガタッ、キャッ?!



後藤 「ぅおぃ!?慌てなさんなよ!」



ハ,ハァーイ!…ガチャッ…パタン



後藤 「やれやれ…」 ズズッ…



リー,リー,リー…



後藤 「…甘。…さ、もう一頑張りするか…」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮 二階 宿直室



リーリー,リー…



みほ 「…///(…別の意味で寝れないよう…っ)」ゴロゴロ



zzz…


ムニャムニャ…

スー…スー…

ンンッ…

クウ…クウ…

ンンッ…


グーグー…



みほ 「…叱られちゃった。私、まだまだだ…」 フフッ



リー,リー,リー…



みほ 「…」 スー…スー…



リー,リー,リー…



-----------------



~九日目



特車二課棟 訓練場(棟前広場急拵)



カッ…!


ンジーワッ,ジーワッ!ジーワッ!ジーワッ!ジー…



チュイイインッ


麻子 『目標を前にして…基本動作「迫る」「掴む」「押し込む」を一定時間内に入力。すると…』ガピー


ガチャ,カキッ,グイッ…!


ズシュンッ…ガキッ、ズパッ…!!ズズンっ


華 『くっ!』ガピー


バシンっ!



ギシュウンッ!



麻子 『…これが「体落とし」発動…』


ギュインッ


華 『…ふ~っ。「受け身」も手動では無く、ある程度はオートで対応してくれるようになりましたね』


榊 『受け身を取る時は、周辺状況に気を付けてな?充分な余地が無えと、周りの建物まで受け身の巻き添え喰らっちまうからな』ガピー


キシュウンッ


華 『あら?じゃあ私にはそのままやられろと?』


榊 『警察の建前上、被害甚大で良いとは言い辛えだろうが。気を使えってこった…でもま、呉々も怪我だけはしねえでくれよ?ああいうのは、本人より見てる方が辛えんだ…』


華 『…まあ。ご心配ありがとうございます。建前でも嬉しいですよ?』 ニコッ


榊 『へっ!こきゃあがる』 ニヤッ


シゲ 『冷泉ちゃんはそのまま『特殊動作』入力の練習を続けてくれる?まあ傍目から見るとただ踊っているだけにも見えるけど、ま、仕方無いよね?』ガピー


ギッチョンッ


麻子 『了解。…よ。…よ、と』


…ギシュウンッ!…ギシュウンッ!



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



シゲ 『あと五十鈴ちゃんは続けて『動きの効率化』の応用編だ。メインモニター横の『GUN』てボタン押してくれるかな?』ガピー


チュイイインッ


華 『今までは全てスティックやペダルでのアナログ操作が主でしたから、この辺りのオプション類は使った事があまり無いんですよね…これですか?』ガピー


パチッ…ピロロッ


華 『あら?中央モニターに「射撃モード」が四つ程表示されました…「データ302」?』


シゲ 『「データ302」てのは、来るべき第三小隊用に用意していた仮データ領域なんだ。第三小隊の二号機だから「302」って事。あんこう二号機はデータ上では「302号機」って事にしてるからね』


華 『なるほどー…じゃあ麻子さんの「あんこう一号機」は「301号機」という事になりますね』


シゲ 『そうなるね。んで、今までは全て手動で「射撃姿勢」をとってもらってたんだけど、五十鈴ちゃんの動作経験データと202号機の射撃動作データを合わせて、三つのモードを用意してみたんだよ』


チュインッ


華 『どのような利点があるのでしょうか?』


シゲ 『論より証拠。まずはパネル上の『モード1』を押してみてよ』


華 『はい…これですね?』


ピピッ…


バシャッ,ガッキッ,ジャコンッ,ギュインッ


華 『まあ…銃を持つ所から、立ったままの両手構えまで、全て自動でやってくれました!』


シゲ 『そのまま好きなように動いてみてくれる?』


華 『はい…!』


ズシュン,ズシュン,ズシュン…チュイイインッ


華 『立ったままの両手構えを維持しながら、ある程度自由に動けますね!』


シゲ 『そういう事。いちいち操作しなくても、一連の動きをパターン化して、ある程度自動で出来るようにした訳。その分、照準合わせに集中できるでしょ?』


ジュインッ


華 『はい!…利口なんですね?この子』


榊 『教えたら教えた分吸収してくからな、コイツは。練習毎にデータディスクはきちんと持ってきな?バックアップとシステム同調を行うから』


華 『はい♪…「モード2」は片膝で座りながらの射撃…戦車と同じ感覚です!「モード3」は…寝そべっての射的スタイルなんですね!』


チュイイインッ…ヂュインッ…ガキッ…ジャコンッ!


榊 「…ご機嫌で動かしてるのは見てて微笑ましいんだが…シゲよ、あの『ガニ股での構え』だけは何とかならねえのか?本人は見えて無いから気が付いてねぇみたいだが…」


シゲ 「202号機の癖ですよ。ただあの姿勢が、射撃の衝撃に最も耐えうるってデータが出てるんで、迂闊にそこだけ消す訳にもいかんのです」


榊 「『あのバカ』の悪い癖が出てるって訳だ。俺たちはともかく『戦車道の乙女』ってイメージじゃ無ぇぞ?ありゃあ」


ヂュインッ


華 『…そういえば、この『モード4』っていうのは何ですか?』ガピー


シゲ 『「モード4」は、何かしら誤動作を起こしたり、強制的に「通常操作」に戻したい時に用意した空データ。つまり射撃モードの「強制リセット」ボタンと考えて?』ガピー


ジュシュンッ


華 『確かに動作が元に戻りますね。これはこれで便利です!…実質的に、射撃モードは三つという事ですね?分かりました!』



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ギャキャアッ!


ジャリィッ…



淵山 『おらキャリア組!運転で無理矢理「こじる」んじゃねえよ!』ガピー


そど子 『やっかましいわね!こちとら誰もやった事ないのやらされてんだから、黙って見てなさいよ!』ガピー


淵山 『なあにい!?』ガピー


そど子 『何よっ?!』ガピー


ゴモヨ 「…相変わらず」


パゾ美 「あの二人、仲が悪いよね…」


ダダダッ!ズザーッ…


シゲ 「まーまーまーまー!御両人、ここはま、この私の顔を立てて、ま穏便に、穏便にお願い致しゃす!よござんすねー?」


淵山 「ちっ…!」


そど子 「べ、別に好きでケンカしてる訳じゃ…」


シゲ 『そんな君たちに、ちょいと面白い機能を提案しに来たんだよ。園ちゃんに後藤ちゃん?メインモニター横の「ACTION」てボタン押してみてくれるかな?』ガピー


ゴモヨ 「ちゃん付けって…」


パゾ美 「パゾ美とかゴモヨとかそど子って呼ばれ方の方がまだ馴染む気がする…」


パチッ…ピロロッ


そど子 『あら?中央モニター上に「オートバランサーVer.up」の文字が表示されたけど…』ガピー


シゲ 『そのまま、さっきと同じように動かしてみてくれる?』ガピー


ゴモヨ 『やってみる』ガピー



ズギャアッ!キキーッ,ズザーッ!



ゴモヨ 『あ…あれ?凄く操作しやすくなってる…』


パゾ美 『端から見てても、動きの安定感が今までと段違いだよ?!』ガピー


淵山 「なるほど!荷台の基部に、レイバーのオートバランスシステムを搭載してるって聞いてやしたが…」


シゲ 「おうよ!試しに、レイバーの基礎運用蓄積データだけ抜き出して放り込んでみたら、これが大正解って訳!!」



ギャキャアッ!



そど子 『ありがとうシゲさん!これならキャリアをもっとブン廻せるわ!!』


シゲ 「今でも大分粗っぽいよ?程ほどにねー…。ソフト黙って弄ると、ほんとはメーカー保証利かないんだよね?ま、返却時に元に戻しちゃお」テヘペロ


淵山 「…さっすがシゲさん!相変わらず公僕とは思えねえ、超ヤベえお人だぜっ…」ゾクウッ



-----------------



--特車二課棟 ハンガー内 二階 レイバー連絡通路上



ドカカッ


グイイーンッ…



麻子 「…朝早くて…枕が変わって、眠りが浅い…」…グウ…zzz



…コンコン!コンコン!



華 「麻子さん?大丈夫ですかー、麻子さーん?」


榊 「おう。嬢ちゃんがどしたい?」


華 「…あ!榊さん。麻子さんが中から出てこなくて…朝早かったし練習密度が高かったから、恐らく中で寝てしまっているのではないかと…」


榊 「…安全規定上、レイバーの胸部の左右二ヵ所に必ずある、大型の『ー(マイナス)ネジ頭』状の『コクピット緊急開放レバー』。こいつを捻ると…」



ガコンッ…バシュウムッ…



麻子 「…スー…スー…」


華 「やっぱり寝てた…麻子さん?」


ユサユサ…


麻子 「んんっ…」zzz…


榊 「良く寝てらあな。…そうかい、そうかい。いいよ、先に汗流してきな。『ここでのやり方』も残ってんだろ?起こしてそっち行くよう伝えておくからよ」


華 「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせて頂きますね?


榊 「ああ…そうだ。ちと立ち入った事を聞くが…」


華 「はい?何でしょう」


榊 「この嬢ちゃん、上手く言えねえんだが…お前さん方と比べて、誉められて嬉しそうな度合がちょいと高いのが気になっててな?」


華 「…榊さんだからお話しておきますが…麻子さんは早くに御両親を亡くされて、今の肉親はお婆さんだけなんです」


榊 「そいつぁ可哀想に…」


華 「元々親しい人には甘えてくれる所があるんですが、学校が無くなることもあって、いつも以上に皆のそばに居たがっているような気がします…」


榊 「そうか…誉められて嬉しそうにしてんのはそのせいか…おっと!辛い質問して悪かったな?」


華 「いえいえ…気にして頂けて、むしろ感謝しています。麻子さんには、この話をした事は…」


榊 「言やあしねえさ…分かった、こっちも気にかけとく。悪かったな?引き留めちまって…さ、行きな」


華 「…はい。麻子さんの事、よろしくお願い致します。では…」



カン,カンッ…



榊 「…さて、と…こんな狭え所で丸まっちまって…猫みてえな子だな」



ユサユサ…



麻子 「んんっ…」zzz…


榊 「おい、こんな所で汗かいたまま寝てると風邪ひいちまうぞ?」ユサユサ



麻子 「あ…うん…おじい…もうちょっとだけ…」ムニャムニャ


榊 「…おじい?ははっ、お祖父ってか?!」


麻子 「ハッ!…さ、榊、さんっ…ご、ごめん…」ナサイ…



榊 「…フッ」 グシャグシャ


麻子 「???」 グラグラ



榊 「…いいさ。構わねえよ?お前さんの呼びやすい呼び方で」


麻子 「…あ…」



ギュウッ…



榊 「おうおう」グシャグシャ


麻子 「…ありがと。おじい」グラグラ



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮 一階 風呂場



カコーン


パシャッ…


ザーッ…



沙織 「…あれ、麻子は?」


華 「朝早かったのと訓練の疲れからか、コクピットで寝てしまって…今、榊さんが起こしてくれてます」


沙織 「仕方無いなあ…ま、榊さんなら問題無いか」


優花里 「最初は怖い方かと思いましたけど、良い方ですよね?」


沙織 「抜群の安定感と安心感があるのよねー?お人柄からなのか、年の功なのかは分からないけど」


優花里 「でも今日初めて、総合指揮車のシミュレーション訓練に武部殿と参加させてもらいましたが…」


沙織 「そうそう!後藤隊長の厳しさにはちょっとビックリしたよー?!みぽりん、よく今までやってこれたね?」


パシャッ…


みほ 「そうかな?いつもあんな感じだけど…」


優花里 「シミュレーション後、西住殿がボコボコになってるのも納得しました…」


みほ 「あはは…私は大丈夫だから、二人とも気にしないでね?でも二人ともスゴい。隊長に良くなった所、一杯褒められてたもの…」


優花里 「そうですかあ?それ以上に注意された気もしますが…」


沙織 「あー。…さては、みぽりん?後藤隊長に誉めてほしいのかな?」


みほ 「そうかな?そうなのかな…よく分かんないの」 アハハ


バシャッ…


沙織 「…うん!みぽりんが落ち込んで無いようで良かったよ。ゆかりんと先に出てるねー…あ、麻子!遅いよー…」



みほ 「…あ、うん!」



パチャ,パチャ…



ザーッ…



みほ 「…(不思議…いつもは後藤隊長にボコボコにされると落ち込むのに、今日はすごく素直に話が聞けた…やっぱり、昨日お話をきちんと聞いてもらえて落ち着いてるからかな…)」



…パシャッ…



みほ 「…(誉めて欲しいわけじゃない…ううんっ!?いや誉めてもらえたら、それはきっとスゴく嬉しいと思うけどっ…) 」ブンブンッ



…ザーッ…


…キュッ!


パシイッ!



みほ 「…多分私は、皆が後押ししてくれて、やっている事を認めてほしいんだ…今までの『過程』を見てくれた後藤隊長の前で『結果』を出して。…だから、頑張る。ボコみたいに!」…グッ!



パシャッ



麻子 「いや。ボコになっちゃダメだろ」


華 「ですよねー?」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)裏敷地内



麻子 「ごめん皆、遅くなった」


華 「ああっ!麻子さん、まだ髪が乾いてないのに…」


沙織 「ごめんねー華?麻子の世話させちゃって」


そど子 「そうよ。今日もこれから『ここでのやり方』って奴で、あの淵山をギャフンと言わせなきゃならないんだからっ!」


麻子 「妙なやる気を出してるな?そど子」


沙織 「みぽりんはまた総合指揮車でシミュレーション?」


みほ 「うん!…沙織さんは『ご飯』の準備。カモさんチームは農作業と鶏の世話諸々。他の皆は603ね?お昼ご飯は各々で取るから…じゃあ晩ご飯の時にまた会いましょう!」


優花里 「それじゃあ、午後からも皆さん頑張りましょう?!」



あんこう小隊 「「おーッ!」」



アハハハッ…



-----------------



--特車二課棟 裏敷地内



カッ…!


ンジーワッ,ジーワッ!ジーワッ!ジーワッ!ジー…



優花里 「…それにしても相変わらずの暑さですねー!」 ボタボタ



ザック,ザック,ザック…



華 「やってもやっても終わりません…」 ボタボタ



ザクッ,ザクッ,ザクッ…



麻子 「…~♪」



優花里 「冷泉殿は何だかご機嫌です」


五十鈴 「…そういえば、みほさんも朝からやる気でした」


優花里 「後藤隊長って、西住殿にあんなに厳しいとは思っていませんでしたよ。でもさすがは西住殿。すぐに対応されてました」


華 「そうだったんですか…。でも元気が一番ですよね?私も朝から沙織さんのご飯が食べれて幸せです!」


優花里 「整備班員の皆さんも、武部殿の『ご飯』にはびっくりしてましたよね?あれは見てて痛快でした!」


華 「朝からカマシてましたからね。夕飯も楽しみです」


優花里 「まだお昼食べたばっかりでありますが?!」



麻子 「…こらあ。話してばっかいないで手を動かせー」


優花里 「淵山殿の真似でありますかあ?」


華 「ちっとも似ていませんよ?」 クスクス


麻子 「…カモさんチームは、沙織分も含め別作業中か…」


優花里 「また夕方の808で合流できますよ、きっと」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)裏敷地内 ビニールハウス&鶏小屋&日干し小屋



…コケーコッコッコッ…



ンジーワッ,ジーワッ!ジーワッ!ジーワッ!ジー…



そど子 「…堪らないったらないわね! ボタボタ


淵山 「おらサボるなよ?『ハゼの干物』の一番のキモは、この『アラ』を使った秘蔵のタレに半日漬け込んで、手早く日干しにするこの工程なあるんだからな?」


そど子 「だからこれって警察本来の仕事じゃないでしょ?!何で副業にそんなに本気になってんのよ…アンタこそムダなウンチク披露する暇があったら、チャッチャと手を進めなさいな!」



淵山 「んだとぅ?」


そど子 「何よぅ?」



ザック,ザック,ザック…



パゾ美 「… ポリポリ」


淵山 「…ああっ?!パゾ美、お前収穫途中のキュウリをつまみ食いするんじゃねーよ!



コケーコッコッコッ…



ゴモヨ 「… スッ…」


淵山 「ゴモヨ!手前のメシだけ卵かけご飯にしようと卵ギッてんじゃねえ!」



そど子 「何遊んでんのよ。ほら?並べ終わったわよ!」


淵山 「うるっせーな?次は808用意、装備104で海岸沿いに集合だバカ野郎!」


そど子 「分かってるわよ、おバカ!…いい?バカって言う方がバカなのよ!!たまには誉めたってバチ当たんないわよっ?!」


淵山 「ぐっ…へらず口ばっか叩きやがって!」


そど子 「やる事やってんだから、文句無いでしょ?…ゴモヨ、パゾ美。今日の収穫物を武部さんに届けてから向かうわよ!」


パゾ美 「…808は、釣りや投網、拾得による海産物の回収…」


ゴモヨ 「104は釣り道具ね…ややこしいたらありゃしない」



ゾロゾロ…



淵山 「…ったく!あれで口うるさくなけりゃまだ褒めてやれるんだがな…」 ガシガシ



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)内



ワイワイ…ガヤガヤ…



沙織 「…シゲさん、渕山さん!今日の夕食で用意したメニューです。試してみて下さい!!」


シゲ 「お、おう!」


淵山 「…今回の献立は?」


沙織 「まず私と言えばコレ!忘れちゃならない『沙織風 肉ジャガ』!豊富な野菜類をこれでもかと投入した『ごろごろ豚汁』!生野菜には全9種類の『特製ドレッシング』から、好きな物を選んでお好みでっ!

そしてメインは、ハゼの干物をベースに新鮮な魚介類を天ぷらで合わせ武部特製ダレでまとめた『ハゼ丼スペシャル』!」



整備班員共 「「「おおおーーっ!」」」



沙織 「…さあっ召し上がれっ?!」



パクパク


モクモグッ…



淵山 「むうっ…こ、この味はっ?!」 カッ!


シゲ 「へいっ、野郎共!」 クワッ!


整備班員共 「「「おうっ!」」」



ザンッ!



整備班員共 「「「武部のアネサンっ!、頂きますっ!」」」



沙織 「ヤダモー♪」



榊 「ヘヘッ。難癖のあるウチの連中を、たった一日でねじ伏せやがった」


五味岡 「武部さん、お見事!美味しいよ?このハゼ丼」


沙織 「本当ですか?あ、ありがとうございます!」



優花里 「武部殿、モテモテです」


みほ 「うん。でも…マドンナというよりは、おっかさんて感じ?」


優花里 「西住殿が意外と辛辣でありますよ?!」


沙織 「整備班員の人達、最初は怖い人ばかりかと思ってたけど、話してみたら純粋で内気で素直で、意外と可愛い所があるんだよねー♪」


麻子 「舞い上がりすぎて、話を全く聞いてない」


華 「そんな中で、沙織さんが一押しなのはどなたなんですか?」


沙織 「やっぱ五味岡さんかなー?あの落ち着いた大人の包容力を感じさせてくれる所が良いのよねー?」


麻子 「そして、なぜ敢えて無理目を狙うのか」


みほ 「五味岡さんって、絶対結婚してるよね?」


優花里 「お子さんがいても驚きません」


華 「この残念っぷりこそ、沙織ズムですよね」 モグモグ


沙織 「華…そのどんぶり鉢、取り上るよ?」



ずずんっ…



淵山 「ぐうっ…や、やっぱ五十鈴さんにはか、勝てなかった…ぜっ…」 ズシャアッ!


そど子 「負けるって分かってるなら張り合わなければ良いじゃないのっ!」



-----------------



--特車二課棟 旧社員寮 二階 宿直室



リー…リー…リー…



沙織 「…そういえば、ご飯用意している最中に、手伝ってくれた整備班員の人が教えてくれたんだけど…」


麻子 「早速、特車二課内の情報収集経路を確保したな」


沙織 「男を落とすには、何と言っても、まずは周辺情報からだよー」


優花里 「何事もまずは情報収集からなんですねー」


華 「五味岡さんのお話ですか?」


沙織 「ううん。そこはこれからなんだけど…後藤隊長の噂話を聞いたんだ」


みほ 「後藤隊長の?!」



沙織 「…食い付くねえ、みぽりん…何でも昔は「カミソリ後藤」って呼ばれてて、『切れすぎ』た余りに、レイバー隊に流されてきたんだって」


華 「…今時の若者のように『すぐ切れる』という意味でしょうか?」


沙織 「何でよ?!…華も今時の若者でしょうに…」


麻子 「『切れ者』。頭が冴えてるやり手って意味だ」


みほ 「シミュレーション時の隊長は、ほんと切れ者だよ?私、全然ダメだったもの…」


優花里 「西住殿がでありますか?でもそれは、戦車戦じゃ無いからじゃ…」


沙織 「ちなみに、今は『昼行灯』って呼ばれてるんだって」


麻子 「そっちの方が納得だな」


華 「分かります」



みほ 「…(…そういえば隊長、お母さんの件、どうやって情報収集したんだろう…)」



-----------------







後書き

長文乱文、お読み頂き、誠にありがとうございました。

以下、
【ガルパン】西住みほ「特車二課 あんこう小隊、です!」【パトレイバー】 ~第六章へと続きます。


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2017-08-28 01:00:24

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