『東方幸紡記』[第一章:第四話"記憶"]
外の世界でサラリーマンとして働いていた普通の男性が幻想入り
彼が幻想郷で紡ぐ幸せとは
このssは、東方Projectの二次創作です。
また、筆者はこの作品が処女作となります。
至らぬ点も多いとは存じ上げますが、以下の点にご容赦いただける方は、ぜひ観覧していっていただければと思います。
【注意点】
・筆者はにわか東方ファンかもしれません。原作設定を無視してしまっている可能性があります。
・展開がベッタベタです。(鈍感主人公・どこかで見た展開)そうならないように注意してもそうなってしまう不思議
・直接的な性描写はありませんが、ちょっと匂わせるような展開があったりするかもしれません。一応R-15くらいです。
・一応長編にするつもりで書いてます。現在18話ぐらいまでは書き溜めているので、続きが読みたい!という奇特な方がいらっしゃれば、評価なりコメントなりをしていただけると筆者は大変喜ぶと思います。
以上の点について、何卒ご了承の上、観覧いただければと思います。
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幻想郷は博麗神社の母屋にて…
「ところで紫さん」
「あら?なにかしら?」
「とりあえずいままで色々聞けなかったことを質問してもいいでしょうか」
「…いいでしょう」
「まず、あなたが俺をこの幻想郷に連れてきたのは間違いないんですよね?」
「その通りですわ」
「…なんで、ですか?」
この『なんで』には、なんで俺を連れてきたのかだけでなく、なんで俺なのかを含めている。
多くを語らずとも、紫さんならなんとなく察してくれている気がした。
それに、なんで連れてきたのかについては、俺自身も元の世界を離れたいと願ったわけだしね。
「…一つは、あなたの能力が幻想郷という世界をより良い方向に変えていってくれると思ったから」
「…」
それに関しては、俺からは何も言えない。
なんて言ってもついさっき初めて自分の能力なんてものを聞いたのだ。
なんなら、なかばまだ本当にそんなものがあるのか自覚できない部分もあるぐらいだ。
「そして、もう一つはあなたが本当に辛そうだったからよ。
あのまま外の世界であなたが能力を無意識に使っていたら、もしかしたらあなたは他人の幸せの踏み台となって潰れてしまっていたかもしれない、それは私としても避けたい事態だったの」
むう、こっちの理由がよくわからない。
現代の日本で、辛い思いをしながら生きている人なんてきっとたくさんいる。また、それに押しつぶされてしまった人だってたくさんいるはずだ。
なら、なぜその中から俺が選ばれたのか、それがわからない。
でもなぁ…なんか引っかかるんだよなぁ。
「…まぁ思い出せないわよね、私が記憶の境界を操作したのだから」
「…もしかして」
「そうね、霊夢の方は別にそんなことしてないんだから、覚えててもおかしくはないわよね」
まぁまだ小さかったしねぇ、と紫さんは続けた。
…どゆことだ?
「…それにしても霊夢ったら…」
紫さんが、なんというかいや~な笑顔をした。
「ちょ、紫!いったんストッ…」
霊夢さんがあわてて止めに入る。
「昔は『お兄ちゃんお兄ちゃん』て幸祐の後をつけてばっかりだったのに、さっきから『幸祐さん』だなんて…あの頃とのギャップが凄くて笑っちゃいそうだったわ」
「…は?」
「…へ?」
「…あぁ…」
魔理沙、俺、霊夢さんが同時に反応した
なんか霊夢さんはがっくりしているが
「お兄ちゃんって…霊夢、なんだ?幸祐の妹だったのか?」
「…違うわよ、でもそうねちょっとだけど思い出したわ…まだほんの小さいころによく遊んで面倒を見てくれた、お兄ちゃんみたいな人がいたの」
「それにしても、霊夢お前…お兄ちゃんて…」
「…なによ。小さい頃だったんだからしょうがないじゃない。それに当時は本当にお兄ちゃんが出来たみたいに思ってたのよ」
霊夢さんが魔理沙を睨む。おおぅ…こええ…
「いや、いいんだけどさ、あの霊夢がなぁ…ってな」
だというのに魔理沙のやつニヤニヤしおって…これはあれか?とばっちりを食らわんためにも退避した方がいいやつじゃないのか??
「…魔理沙、弾幕ごっこがお望みみたいね」
「いやー悪い悪い!」
というかちょっと待て。
「えーと…霊夢さんと俺は昔会ったことがある…ってこと?」
「…そうね、改めてお久しぶり。おに…ゴホン…『幸祐さん』」
「別に『お兄ちゃん』って昔みたいに呼んでもいいのよ?」
紫さん…そんなニヤニヤしてあおらんであげてください…
「というか俺、覚えてないんだけど…どうゆうことなんですか?」
いや、正確には違和感みたいなものは紫さんにも霊夢さんにも感じていたんだが。
「それはそうね。さっきも言ったけど、私があなたの記憶の境界を操作したのよ」
「なんでまた…」
「当時のあなたはまだ子供だった、でもなんのきっかけか幻想郷に迷い込んでいたところを私と幼い霊夢がみつけたのよ」
…やっぱり覚えてないな。
「それでちょっとの間だけど、ここにいたの。その時にあなたはよく霊夢と遊んでくれたり世話してくれたりしてたのよね」
「でも、それと記憶を消すのには特に関係ないんじゃ…」
「そういうわけにもいかないのよ。いずれあなたは外の世界に戻してあげなきゃいけなかったしね。
そしてその記憶を持ったまま大人になったなら、幻想郷のことを外の世界で漏らされる危険もある」
「…」
「もちろんあなたなら大丈夫だとは思ったのだけれどね。『幻想であれ』という幻想郷の概念を守るためには、必要なことなの…」
ごめんなさい、と紫さんは頭を下げた。
「いえ、前にも聞きましたけど、幻想郷は紫さんの大切な場所なんですよね?
なら…しょうがなかったんだと思います」
うん、自分が覚えてない過去があるのはちょっと気持ち悪い気もしないでもないが、現状なにか影響があるわけじゃないし、そこまで気にもならない。
「…というわけで、私はその後もあなたのことを気にかけてたのよ。それで、あなたが外の世界で押しつぶされそうになっていたから、こちらに連れてきた、というわけ」
「なるほど…なんとなくだけど理解できました」
なるほどな、紫さんなりに俺のことを考えてこちらの世界に連れてきてくれたのか。
ちょっとだけすっきりした。
「ところで幸祐さん」
「うん?どうしたんです霊夢さん?」
「…いや、その前にまず霊夢でいいわ。あと敬語も必要ないから普通にしてちょうだい。」
「お兄ちゃんにそんな他人行儀にされたら悲しいも…っいて!」
霊夢が魔理沙の頭をはたき倒した。魔理沙よ、いまのは完全に自業自得だぞ…
だいたい昔会ってたとはいえ、霊夢だって覚えてなかったくらい前のことだ。そんなどこぞのギャルゲーみたいな感情は霊夢にだってあるはずがないんだよなぁ。
「…話を戻すけど、幸祐さんはこの後どうしてくの?」
「どうしてくって…?」
「さっきの話じゃないけど、いつまでもアリスの家にいるわけにもいかないでしょう?」
「うーん、まぁそれはそうだよなぁ」
アリスの家は居心地がいいけど、さすがにそれはアリスにも悪すぎるし、なにより大人の男としてどうなんだって感じだ。
「うん、まぁ近いうちには生計を立てられる手段を考えて、一人で生活できる目途をつけるよ」
「…だ、だったら…この神社に来ないかしら?この広さに私一人しかいないから、部屋も結構余ってるし、それに掃除とか手伝ってほしいこともあるしね」
「…え?」
あれ、それってあんまり今のアリスの家に住んでるのと状況変わってなくないか?
てっきり人間が住んでるところで一人で生計を立ててく方向に話が進んでくと思ったんだが…
「いや、それは霊夢にも悪いからいいよ。なんとかここでも俺が出来る仕事を探して、人里で暮らせるようにしてみるつもりだし」
「別に…悪いなんてことはないんだけど…そうね、無理にとは言わないわ」
「残念だったなぁ霊夢、『お兄ちゃん』と一緒に暮らせな…って痛い痛いって!」
おーおーコブラツイストかけられとる。
てーかだからそーゆうんじゃないって魔理沙…たぶん霊夢も純粋に心配してくれただけだろう。というか魔理沙も懲りないなぁ。
「あ、そうだ紫さん」
「あら、なにかしら?」
「うちの猫も一緒に連れてきたのはなんでですか?というかアイツ喋ってるんですけど…」
忘れかけてたけど、これも気になってたことだしな、聞けるなら聞いとこう。
「だってあの子だけあなたのおうちに残してきたらあの子がかわいそうだし、あなたも身近な存在がいた方が安心するでしょう?」
たしかに、それはその通りだな。というか俺だってアイツを一人置いてきて新しい生活を始めるわけがないから、むしろ連れてきてくれて本当にありがたい。
「まぁ実はあの子を連れてきたのにはもう一つ理由があるのだけれど、それはいまはまだいいでしょう」
もう一つの理由?なんだろう、さっきの以外に特に理由が思い浮かばないが…
「ああ、それとあの子を喋れるようにしたのも私ですわ。あの子の人との言葉の境界をなくしました。」
「ええ…さらっとすごいことしますね…」
「まぁこれについても必要だったのよ。さっきのもう一つの理由に関係してね」
なるほど、わからん。
「そうね。でもこのもう一つの理由についてもそのうち話すから、いまは気にしないでちょうだい
…ところで、霊夢、魔理沙?いいかしら」
「なによ?」
「なんだ?」
「幸祐の能力のことだけど、これに関しては絶対に他言無用よ。
いいわね?」
「…わかったわ」
「いいけど…なんでなんだ?」
「この幻想郷でなら大丈夫だとは思うけど…幸祐の能力はさっきも言ったように悪用できる。
知られたら悪用しようとする輩が現れる可能性があるわ」
えぇ…さすがに自分の力とやらを悪用されるのは俺も嫌だな…
「なるほどな、そうゆうことならわかったぜ」
「私も言わないわ」
「ということは俺も言わない方がいいんですよね?」
「あなたに関しては、あなたが本当に信頼できると感じた人にならいいと思うわ。この幻想郷では能力の有無は結構大事な要素だったりもするからね」
そうかぁそういう意味だとアリスには言ってもいいのかなぁ、信頼っていうか普通にいい子だと思うし…
折を見て話しておこう、うん。
「さて、もうそろそろいい時間ね。…幸祐いいのかしら?もう夕方よ、アリスが心配するんじゃない?」
「え?」
うお、本当だ、気づいたら外が暗くなりだしてる…アリスが心配する…ってこたないと思うが、
それでも居候させてもらってる分際で遅くに帰ってくるのはよくないよな。
「ま、魔理沙、つーわけだしそろそろ帰ってもいいかな?」
「んーそうだなぁ…本当はもっと連れてきたい場所がたくさんあるんだが…しょうがない。
それは後日また、だな」
どうやら魔理沙の幻想郷ツアーズはまだ初日の行程を終えたばかりのようだ…
「じゃ、私はこーすけをアリスの家に送ってそのまま帰るぜー。邪魔したな」
「おに…幸祐さんのこと頼んだわよ」
「へいへい」
魔理沙にやにやすんな、ばれるぞ。
「幸祐さんもまたね、いつでも遊びに来て頂戴」
「わかった。またくるよ。紫さんもいろいろ教えてくれてありがとうございます」
「いいのよ。いずれ伝えるつもりだったしね」
「よし、ほんじゃそろそろ行くぜ。こーすけ、行きほど飛ばしはしないが、しっかりつかまってろよー」
ちょっと恥ずかしいが箒にまたがり魔理沙に抱き着く。む、なんか霊夢に睨まれた気がするが…気のせいだよな…
「じゃぁ行くぜ!またなー!」
と、魔理沙が勢いをつけて宙に浮いた。
こうして俺達は博麗神社を後にしたのだった…
「お兄ちゃん…」
幸祐と魔理沙がいなくなった後の博麗神社で、霊夢がつぶやく
「あらあら?昔のこと思い出して寂しくなっちゃったのかしら?」
「紫…まだいたのね」
霊夢がジト目で紫を睨む
「冷たいわねぇ。そんな怒らなくてもいいじゃない」
「…いいけど、お兄ちゃんのことどうするつもり?」
「どうもしないわよ、外の世界で押しつぶされそうになっていた彼を救いたくて、この世界に連れてきたのは本当だもの」
なにか怪しい…嘘はついていないみたいだが、全部は話していない感じがする。
「まぁいいわ。何かあっても、私がなんとかするから」
「あらあらうふふ」
一回しばいたろか、霊夢はそう思ったが、そう思うとと同時に紫は「ば~い」と言ってスキマに消えてしまった。
「…はぁ」
今度こそ誰もいなくなった神社で、霊夢はため息をつく。
「お兄ちゃん…大丈夫かな…」
一人夕暮れの中でつぶやいた霊夢の言葉は、今度こそ誰の耳にも入ることはなかった
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