2016-12-19 12:03:39 更新

概要

徐々に幻想郷での生活に慣れてきた幸祐。。
アリスに倣い、空を飛ぶための練習をすることになるが…

※東方幸紡記の第六話から第十話です
一話ずつ投稿するのもどうなのかと思い五話分をひとまとめにして投稿させていただきます。
続き物となっておりますので、ぜひとも序章および第一話から第五話までも、ご覧いただければと思います。


前書き

このssは、東方Projectの二次創作です。

また、筆者はこの作品が処女作となります。
至らぬ点も多いとは存じ上げますが、以下の点にご容赦いただける方は、ぜひ観覧していっていただければと思います。

【注意点】
・筆者はにわか東方ファンかもしれません。原作設定を無視してしまっている可能性があります。

・展開がベッタベタです。(鈍感主人公・どこかで見た展開)そうならないように注意してもそうなってしまう不思議

・直接的な性描写はありませんが、ちょっと匂わせるような展開があったりするかもしれません。一応R-15くらいです。

・一応長編にするつもりで書いてます。現在18話ぐらいまでは書き溜めているので、続きが読みたい!という奇特な方がいらっしゃれば、評価なりコメントなりをしていただけると筆者は大変喜ぶと思います。

以上の点について、何卒ご了承の上、観覧いただければと思います。


[第六話]

"練習"











アリスの家の前にて、俺とアリスが向かい合うように立っていた。

ちなみに上海と吉はベンチに仲良く腰かけている。どーでもいいけどかわいいな、おい。


「さて、じゃあ昨日も言ったように、今日からは空いた時間で飛ぶための練習と自衛手段を考えるわよ」

「…りょーかい」

ういーすと手をあげて応える。


「…なによやる気ないわね。せっかく自由に動けるようになりたいだろうからって思って教えるのに」


「いや…やる気ないわけじゃないんだよ、それに感謝もしてる。けどなぁ、いまだに俺がそんなこと出来る気がしなくてな」

半信半疑どころではない。そもそも、この前紫さんに言われた自分の能力とやらだって実感できていないのだ。


「大丈夫よ。師匠を信じなさい。それに、実は前から思ってたけど、私たち魔法使いが使う魔力はほぼないけど、霊力は人並み以上に持ってるのは見えてたからね」


「まじで?」

えー…俺にそんなとんでも能力があったなんてなぁ。


「もっとも、それ自体はそんな珍しいことじゃないわ。大体の人は持ってるものだしね。

あとはその大きさ、多さの違いと、それを使ったり放出したりできるように練習したかの違いだけよ」

ふーむ、なるほどな。つってもアリスは簡単に言ってるけどそんな簡単に飛べたりなんか出せたりするもんでもないだろう。


「わかった。とりあえずせっかくアリスが師匠になって教えてくれるんだし、頑張ってみるよ」


「よろしい」

なんか満足げだなアリス、それにちょっと楽しそう?


「んで、まずは俺はどうしたらいいのかな?」


「そうね。まずは魔力…幸祐の場合は霊力ね。それを一か所に集めるところから始めましょうか」


「おーけー。で、どうすればいい?」


「うん、えっとまずは体に力をいれてみて。

で、それをお腹の下あたりに集めるイメージで、全体に入れている力を一か所に集めるの」


えーとまずは力をいれてっと…

「ふんっ」

「うん、ここまではいい感じ。さっきまでより霊力が強まったわ。

で、今度はそれをお腹の下に集める感じね」


ふむふむ。

「よっ…こう…かな?」

「違うわね。それじゃただ全身にいれてる力をさらに強くしようとしてるだけよ」

むむむ…








さっきから同じところをかれこれ30分くらいやっている。

「むぅ…やっぱ結構難しいな…」


「まったくもう…いい?」


「え?」

なんかアリスが後ろにまわってきた、って近い近い近い!なんかいい匂いするし、ちょっとやわらかい感触が当たってるし!


「ここに力を入れるイメージよ」


「お、お、お、お、おおう」

おいおいおい!

たぶんわかりやすいように手を当ててくれてるんだろうけど、そこは位置的にも今のこの体勢的にもいろいろマズイって!


「ほら、なにしてるの。ちゃんと集中しなさい」

できるか!しかしこの体勢は色々とマズイ、なにがなんでも成功させにゃあかんぞ…


「なにくそ~!」


「…なによその掛け声…でもそうね、出来たじゃない。いい感じで集まってるわ」

た、耐えた。俺は耐えたぞ…


「あらあら仲がいいわね」

「…ふーん」


あん?なんか声がしたな…

「あれ?紫さんに霊夢じゃないか。どしたの?」

「なっ…!」

うお、アリスがすごい勢いで離れた。

ちくしょう、なんだかんだ言いながらも役得ではあったんだがな…


「そうね、私は霊夢のところに遊びに来てたんだけどね。そしたら魔理沙が来て、アリスと幸祐がなんか霊力の使い方の練習してるみたいだって教えてくれたのよ。で、それなら私からも伝えなきゃいけないことがあるから来たってわけ」


「なるほど…で、霊夢は付き添い的な?」


「…霊力なら私も使うからなんか手伝えるかと思ったんだけどね。

…どうやらお邪魔だったみたいだけど」


…あれ?なんか霊夢さんトゲがありません??


「そ、そうなんだ?まぁそんな邪魔なんてことないから…教えてくれると嬉しいなぁ…なんて…あはは…」


「…そ。まぁいいけど」

よくわからんけど耐えた…のか?


なんだかわからん緊張を味わっていたらアリスと霊夢の目が合った

「霊夢…久しぶりね、元気にしてた?」


「お久しぶり。アリスこそ元気みたいでなによりだわ」

あ、そっかここも普通に知人?か、友人だもんな。

うんうん綺麗な女の子が並んでて絵になるなぁ。


「ところで…仲良くしてるみたいね、よかったわ」


「べ、別に普通よ…」

お、なんかアリス恥ずかしがってるっぽい。ちょっと珍しいなぁ。


「そうなの?『とっても』仲良く見えたけど…でもそうね」


「?なにかしら??」


「…『お兄ちゃん』も男の人だから何かと大変でしょう?」


「…は?」

ん…?なんかいま変な単語が紛れてたぞ?

あと俺の危険を知らせる信号がビンビンきてますよ!


「…幸祐…?」

…アリスがゆらりと幽鬼のようにこちらに振り向いた…

ア、アリスさん。その振り向き方は僕ちょっと怖いかなー?なんて…


「な、なにかな?アリス?」


「…私の記憶が正しければね?この幻想郷において霊夢には兄なんていなかったハズなの」


「ほ、ほー。なるほどそーなのかー、霊夢は一人っ子だったのか、そうかーなるほどなー」


「…でもね?さっき霊夢は『お兄ちゃん』って言った気がするの。私の聞き間違えかしら?」


「いやーそうだなーどうだろうなー俺は聞こえなかったから聞き間違えじゃないかなぁ?」


「…そうだったらよかったんだけどね?どうやら聞き間違えじゃなさそうなのよ」


「そっそっかー…あははは…」


「…でね、幸祐…私が聞きたいのはね?あなたがいつの間に霊夢に『お兄ちゃん』なんて呼ばせる程仲がいい間柄になったのかってことなんだけど…答えてくれるかしら?」

れれれ霊夢さーん!なんで昨日は普通に名前で呼んでたのに急に呼び方変えるん?!

てーかそもそもそれで怒られる理由もわからんのだがね?!


「え、えーとそれはな…?話せば長いんだがな?」

ど、どうする?!どうすればこの状況を打破できるんだ!


「まったくもう…あなた達はなにをしているのよ…」

「ゆ、紫さん!」

へるぷー!へるぷみー!


「しょうがないから私が説明してあげるけど…幸祐はね、昔子供のころ幻想郷に紛れ込んだことがあるのよ。

で、その時にまだ小さかった霊夢と遊んでくれたり、世話をしてくれたから『お兄ちゃん』ってわけ。

もっとも私が幻想郷の存在を守るために、幸祐を外の世界に戻す時に記憶の境界を操ったから、幸祐はその時のことは覚えてないんだけどね」


「…ふぅん。なるほどね」

お、アリスも落ち着いたみたいだ…また耐えたぜ俺…

てーか最近こんな風にギリギリ耐えること多すぎない?


「まぁ霊夢も昨日は『幸祐さん』って呼んでたんだけどね、どうやらさっきのアリスと幸祐の…」

「紫!」

うお、今度は霊夢が怒った!


「…はいはい。まぁそーゆうこと、わかったかしら?」

ええ…俺はあんまわかってないんですが…まぁ落ち着いたならいいの…かな?


「と、ところでさ?魔理沙はどうしたの?いないみたいだけど?」

ちょ、ちょっと露骨な話題転換過ぎたかな…


「魔理沙は博麗神社の留守番にしてきたわ。

『なんで教えてあげた私が留守番なのぜー』って喚いてたけどね」


「えぇ…」

なんていうか…金髪の子かわいそう…


「そんなことより幸祐、霊力の扱い方に困ってるみたいね」


「ああ…ええまぁそうなんですよ、ようやくアリスに教えてもらって霊力とやらを一か所に集めるのはできたみたいなんですけどね」

「なるほど、ならちょうどよかったわ

…残念だけど幸祐、あなた一人だとそこまでが限界なの」


「は?」

えーそうなの…?まぁもともと出来るのかなーって思ってたところはあるが…

せっかくアリスに教わってるんだし頑張ってみたかったんだがな。


「ちょっと、どうゆうこと?」

アリスが紫さんを問い詰めた。


「幸祐にはね、霊力や魔力を一人では放出できない要因があるのよ。

…これは私がちゃんと調べたことだから確かよ」


「そんな…」

あ、アリスがちょっと悲しそうにしてる…そうだよなぁ…師匠だって張り切ってたもんな…


「…紫さん?それってなんとかならないもんなんですかね…?俺、がんばってみようと思うんですけど…」

うん、アリスのためってほどのことでもないけど、せっかくアリスがやる気になってくれてたんだ。

簡単にあきらめるようなことは、俺もしたくない。


「話はちゃんと聞きなさい。私は一人では…って言ったのよ」


「…というと?」


「あなたにはこの世界でもう一人…というか一匹、外の世界で暮らしてた時からあなたに近しい存在がいるでしょう?」


ん?てーと…

「え?吉のことですか?」


「そうよ。猫ちゃん、ちょっとこっちに来てくれないかしら」


「ん?あたし?なに?」

上海の隣であくびをしながら日向ぼっこをしていた吉が、紫さんに呼ばれてこっちにきた


「ちょっとあなたに協力して欲しいのよ。幸祐がこの世界で生きていくためにね」


「まぁそうゆうことなら…主人の為だし協力するけど」


「ありがとう。じゃあ幸祐、今度はあなたが猫ちゃんをだっこしてあげて」


「いいですけど…これでいいですか?」

吉をだっこするのは外の世界にいた時からしょっちゅうやっていたから慣れっこである。

だっこしたついでに撫でてやったら吉もゴロゴロと喉を鳴らした。

こいつ相変わらずだっこされるの好きだな。


「なぜあなたに猫ちゃんをだっこさせたかっていうとね、さっきも言った通りあなたは一人では霊力を使ったり放出したりすることはできないの。

で、そこであなたの猫ちゃんの出番ってわけ。彼女には…いわゆるデバイスの役割を担ってもらうわ」


「デバイス…?」

えーと、装置とかそういう意味か…?


「つまりは彼女を通して霊力を使ったり放出したりするということよ。

あなたと彼女は霊力的にリンクしてるからね、まぁもっと簡単に説明するなら、彼女が戦闘機のエンジンや武器で、あなたが燃料ってとこね」

なるほど、最後の説明はわかりやすい。

つまり俺の霊力とやらを使って、吉に飛んでもらったり攻撃してもらったりするわけだな。


「なんとなくだけど、わかりました」


「そう。じゃあ早速だけどさっきアリスに教わったように、まずは力を一か所に集めてみて」


「は、はい。むむむ…」

お、一回できたからか割とすんなりできた気がするぞ。

なんかお腹の下あたりが熱い気がする。


「出来たみたいね、そしたら今度はその力を猫ちゃんに通すイメージをして頂戴。

そうね、いまは抱いているから、その抱いている手を通して移すイメージね」


「む、むずかしそうですね…」


「そんなこともないわよ。

まぁでも、そうね。ほら、そこで牽制しあっている二人、いつまでもそうしてないで幸祐にコツを教えてあげなさい。」


なんか微妙な空気を出しているアリスと霊夢が、紫さんに呼ばれて凄い勢いでこちらを向いた。

…さっきから君らどうしたん…


「えーと、ごめんちょっとどうやったらいいもんかと思って…

悪いんだけどアリス、霊夢、教えてくれるかな?」


「そ、そうね。まぁ私は幸祐の師匠だしね。

しょうがないから私が見てあげるわ」


「待ちなさい。アリス、あなたが使うのは魔力でしょ、ここは普段から霊力を使ってる私の方が適任じゃないかしら」


「扱い方に関しては似たようなものよ。それに霊夢はいつも感覚で使っているでしょう?

こういうのは最初はちゃんと覚えた方がいいものなの」


「いきなり小難しいこと言われたってお兄ちゃんだってわからないわよ。

最初は感覚で覚えていった方がいいの。だからアリス、どきなさい」

…なにを君らは争ってるんだね…


「えーと…霊夢、悪いんだけど…とりあえずアリスに教えてもらうよ。まぁアリスが俺の師匠だからさ」


「!」

アリスが一瞬嬉しそうな顔した気がするが。

まぁ、最初からアリスが教えてくれるって言ってたしな、アリスも張り切ってたしこれが筋だろう。


「…そ。わかったわ。」

…まぁ霊夢は残念そうななんとも言えない表情なので、これはこれで心が痛まないわけではないのだがね…

そうだなぁ…


「その代りってわけじゃないけど…

ある程度基礎を教えてもらったら霊夢からも色々教えてほしいから…

今度博麗神社に遊びに行ったときに教えてもらってもいいかな?」


「…ま、まぁいいわよ。昨日いつでも遊びに来なさいって言ったしね」


「ありがとう。そん時はよろしくな」


ふぅ…なんとか切り抜けれた…かな


「…主人にしては珍しく上手くやったわね」

やかましいぞ吉。









「そうそう、それでそのまま腕に力を移していって…」


あの後、アリスに基本的な霊力の扱いのコツを教えてもらい、なんとか溜めた霊力を移動するところまで来た。


「こんな感じかな?」


「うん、そうね。で、あとはその力を吉ちゃんに向けて流してみて」


「よし。吉、いくぞ?」


「…う、あたしもちょっと怖いけど…大丈夫よね?」

吉もさすがにちょっと怖いみたいである…まぁそらそうだよなぁ…


「俺もわからんが…紫さんやアリスもいるし大丈夫だろ…」


「…わかったわ。やっていいわよ」


「…よし、いくぞ」

手のひらまで持ってきた力を吉に流していく感覚をイメージする。

すると、手のひらの熱が徐々に抱かれている吉に移っていっているのがわかった。


「できたわね。これでいまあなたの霊力は吉ちゃんに受け渡されているはずよ」

おお、できた…ってあれ?これからどうすんだ?


「できたみたいですわね」

ここまで静観していた紫さんが声をかけてくる。


「あ、紫さん。はい、なんとかできたみたいです」


「よかったわね。そしたら猫ちゃん、今度はあなたがその力を使うのよ」


「…うん、わかったわ。なんとなく上手く言えないけど…よくわからない力が今あたしにあるのはわかる」


「それが幸祐が渡した霊力ね、たぶん今回上手くできたから今後は抱っこした状態じゃなくても簡単に受け渡せると思うわ」

…抱っこじゃないってなんだ…肩に乗るとかか?…それじゃまるで俺が往年のロボットみたいだな…


「じゃあ猫ちゃん。まずは自分が空に飛んでいくのをイメージしてみて。

たぶんこの辺は動物の感覚で人間よりもすぐに出来るはずだわ」


「わかったわ。…えい!」

「うわ?!」


吉が力を入れると同時、俺は地上10メートル近くまで飛び上がった。

っていうかいきなりでだいぶびっくりしたわ。


「うおー…浮いてるよ俺ら…」

「そうねぇ…でも意外とこれ、簡単そうだわ」


え?まじで、やっぱその辺は動物のが感覚的に優れてんのかね…


「上手くできたみたいね」

「あ、紫さんにアリス、霊夢も」


三人が俺たちについてくるように同じ高さまで飛んできた。

てゆーかやっぱ飛べんのね…いや聞いてたけど実際見るとさ…


「じゃあつぎは空中での移動ね、幸祐、猫ちゃんに指示を出してみて」


「あ、はい。じゃあ吉、まずは…そうだな、前に進んでみるか」


「わかったわ」


吉が了解すると同時に体が前方へすーっと動いていく

おお、すげえなこれ…


その後も横移動、後退、上下への移動と繰り返し、一通りの動きが出来ることを確認した。


「すごいな吉、完璧じゃんか」


「そうかしら。意外と簡単よ、それに使ってるのは主人の霊力?みたいだしね」


「まぁ、だとしてもすごいって」


「ありがとう主人。…ところで…ちょっとあたしの思うように自由に動いてみていい?」

ああ、それもそうか。今までずっと俺の指示通りに動いてきたしな…自分でも自由に飛んでみたいんだろう。


「ああ、そんぐらい全然いいぞ?」


「やった!よーし」


…ん?待てよ?猫の自由な動きって…あれ?結構やばくない?


「いくよ!」

「あ!吉ちょっま…」


俺が吉に静止をかける前に、吉は飛び始めてしまった…俺と一緒に。


「うお?!ぐえ、うおぉおお!」


「あはは!これ楽しいわね!」


二人は空中をアクロバットに駆け巡る、急発進急停止、前転後転etc…


直線的な速さだけならこの前の魔理沙の箒のが速かったが…

これは…動きが曲芸じみててキツイ…


「き、吉、ちょ、きもち、わる、たんま」


「…あ」

ようやく吉が止まってくれた…うう、気持ち悪い…


「すごい動きだったわねぇ…」

「ちょっと…幸祐大丈夫?」

「お兄ちゃん平気…?」

紫さんが関心し、アリス、霊夢が心配してくれた


「ご、ごめん主人…ついつい楽しくて…」

「い、いいけど今度からはもうちょいやさしめにな」


「…でもそうね、いまの動きの速さ…相当なものだったわ」

「そ、そうですね…」

「…なるほどねぇ…」

なにがなるほどなんだろうか


「さて、飛べるようになったことだし、次は弾幕の練習ね」

弾幕…?ってなんだ?ああ、昨日魔理沙がやってたみたいなやつかな…

…ってか


「あ、あの紫さん」

「ん?どうしたのかしら?」

「いや、さすがにちょっと気持ち悪くて…少し休憩してもいいですかね…?」

「…まぁそうね、いまの動きは慣れてない人間がするにはちょっと厳しかったかもね。

いいわ。その間私と霊夢は弾幕の出し方を猫ちゃんに教えてるから、ちょっと休んできなさい」


「あ、ありがとうございます。よし、吉、じゃ降りるか」

「うん…主人ごめんね…?」

「大丈夫だって。それに、いずれあれぐらいの動きにも慣れなきゃいけないかもだしな…」

そんな日が来るのかはわからないがな…


…この時、まだ俺は『そんな日』が意外と早く来ることを知らなかった…






---------------------------------------------------------------------

[第七話]

"弾幕"









アリスの家の外に置かれているベンチに腰掛け、紫さんと霊夢に弾幕とやらについて教えてもらっている吉を眺める。


「どう?気持ち悪いの少しは良くなった…?」

と、アリスがいつの間にか隣に腰かけ心配してくれた。


「うーん…だいぶマシになったけど…まだちょっとクラクラするかな…」

「まったく…貧弱ねぇ」

「うう…面目ない…」

いや…さすがにあれは人間の動きじゃないし…

「まぁでもそうね。たしかにすごい動きしてたから、無理もないかもね」

「あはは…」

「…よ、横になった方がいいんじゃない?その方が楽よ?」

「うーん、たしかにそうかも…」

でもアリスにどいてもらわないとスペース的に無理だしな。

と、考えていると。


「だ、だから…ほら、ここに…」

と、アリスが自分の太ももをポンと叩いている。


「…へ?」

なにこれ、膝枕ってこと?え?いいの?


「え…?いいの?」

「…別にそれぐらいなんとも思わないわよ」

うーん、そんなもんなのかなぁ…なんとも思われないのはそれはそれで…なんだが


「じゃ、じゃあ失礼しまーす…」

「ど、どうぞ」

うわ、なにこれやわらかっ!

うーん程よい肉つきで気持ちがいいし、何だかいい匂いがするし、これはまずいですよ!

と、アリスの膝枕を堪能していると、不意に頭をなでられる感触がした。


「アリス?」

「…ごめんね」

ん?どうしたんだろう?


「ごめんて…どうしたのアリス?」

「ううん…今日の練習だって、そもそも私が半分ぐらい強制でやらせたみたいなものだし…」


いや、そんなことはないと思うが…俺もがんばってみようと思ってたしな。


「いや、そんなことは…」


「それに…昨日あなたが自分で生活するって言った時も…怒っちゃったし…」


「あー…あれな…」

あれはまぁたしかにびっくりしたけど…まぁ俺も悪かったしな。


「そうだ、俺もアリスに言わなきゃと思ってたんだ」


「え!な、なに?」


「えーとな…」


「う、うん」


「昨日のことな…さすがにこんだけ世話になってるのにいきなり出ていくとかいったら怒るよな、と思って。

だから、失礼なこといきなり言って、俺もごめんな?」


「……はぁ」

え、そこでなんでため息?いまのいいシーンじゃないん?


「ま、いいわよ。私も怒りすぎちゃったのは確かだしね」


「う、うん?ありがとう?」

あれ?なんかおかしなことになってるが、気のせいかな?


「そ、それで…蒸し返すわけじゃないけど…ここを出て行きたいの…?」


「え、いや全然そんなことないけど…てかなんで?」


「…だって急に一人で生活するとか言うから…」


「ああ、それはまぁいつまでも世話になっててもアリスに悪いな、と思ったからね。

うん、それ以外に他意はないよ」


「そ、そう。ならいいけど。

…それに別に悪いなんてことないわよ。まだちょっとの間だけど、いろいろ手伝ってもらって結構助かってるとこもあるし…」


「そう言ってもらえると俺も嬉しいかな」


「そ、それに…一人で暮らしてた時より…その…あなたといると…毎日楽しい…し」


「…へ?」

え?なんて?


「…幸祐は…外の世界にいたときの方が楽しい…?私といて…楽しくないかしら?」


「い、いや…それは…その…俺もアリスといる時のが楽しいよ、うん」


「そ、そう」

なんかアリスのいまの『そう』はちょっと嬉しそうだった気がする。

てーかなんだろこれ、膝枕状態でお互い顔が見えてないからちょっと大胆になってません?!


「な、ならまだ出て行かなくてもいいわよ。家のこと手伝ってもらえるのも助かるし…」


「食事当番もまるまる一ヶ月あるしな」

ちょっと笑って言ってみる


「そ、そうよ!…そ、それに別に一ヶ月後だって…いてくれていいわよ」


「うん、ありがとう。でもそれだとあれだなー居心地良くなりすぎて出て行かなくなっちゃったりしてな」

なんて冗談を言ってみると。


「わ、私は別に…ずっといてく…」


と、その時突然ベンチの前に巨大な球がドーンと落ちてきた。

「うわ!びっくりした!」

「な、なによ、急に…」


「…お兄ちゃん…?」

「れ、霊夢…さん?」

訳もわからずさん付けになってしまった


「そろそろ休憩も十分だと思うんだけど…どうかしら?」

ん?なんかこの光景今朝も見た気がするぞ?!あんときはアリスだったがね!


「そ、そうだな!うん!もうバッチリかな!」


「そう。じゃあ早く始めましょう。私もヒマなわけじゃないの」

えぇ…昨日は相当暇そうにしてた気がするけど…


「…なにか文句ある?」


「イエナンデモナイデス」

なんだよお前ら皆エスパーかよ!










さて、霊夢に叩き起こさ…もとい、呼ばれて練習を再開したわけだが…


さすが野生の勘?といったところなのだろうか。霊力を吉に流すと、この子いとも簡単に昨日魔理沙が撃っていた玉を空中に出現させた。


「…お前すごいな…」


「ふふん。まぁ主人がイチャついてる間に霊夢と紫からしっかりコツを聞いてたからね」


イチャついてのあたりでまた霊夢が睨んできた…だからこえーって…

というかイチャついてない!…あれ?イチャついてないよな?なんかあんま否定できない気もしてきたぞ…


「さて、じゃあ次は幸祐が猫ちゃんにどんな弾幕を撃つか指示してみなさい」

紫さんに言われ考える。

「うーん…」

頭に思い浮かぶのは昨日の魔理沙が撃っていた弾幕、さすがに俺が星形ってのはメルヘンすぎるから…そうだな…

男の子だったらやっぱレーザーだろ!


「よし吉、俺らの周囲に5個玉を作ってみてくれ」


「りょーかい、えい」

吉が掛け声をするとほぼ同時に、俺達の周りに5個の青白い球体が出てきた、おお…すげえな。


「おお…そしたらそれぞれの球体から…レーザー!ってー!」

「えーい!」

さっきつくった玉から5本の細いレーザーが前方に向かって発射された。

すげえ!完璧イメージ通りだ!


「ってちょっと待てよ…」


「どうしたの?はじめてにしては、中々見事だったわよ」


「いや紫さん、質問してもいいですか?」


「なにかしら」


「いくら俺が指示してるって言っても玉を作ってるのは吉なんですよね?」


「そうね、それがどうかしたの?」


「いや…それにしてはずいぶんとイメージしたものがそのままできたなぁ…と」


「…良く気付いたわね。変なところで鋭いというかなんというか…」


「なんか馬鹿にされてる気もしますけど…どういうことなんです?」


「それには実はカラクリがあってね、あなたが指示すると同時にあなたのイメージしている弾幕の形が霊力を通じて猫ちゃんに伝わっているのよ」

な、なるほど?

「あ、だからなんとなくこうやれば良いってのがわかったのね」

吉が納得する、そんな簡単に納得できるもんなんかね。

まぁでもこれは確かに便利かもしれんなぁ、これからそんなにこんな物騒なもん使うことがあるとも思わないけど…


「さて、じゃあ飛び方も一通り覚えたし、弾幕も撃てるようになった。

ということは次は実戦形式での練習ね」


「…まじですか紫さん」

なんとなくはそうなるんじゃないかって思ってたけどさ…


「それはそうですわ。いくら形を覚えたところで、実際に使ってみないことには覚えませんもの」


「まぁそれはその通りかもしれませんが…」


「というわけで…霊夢、出番よ」

紫さんに呼ばれ、霊夢がこちらに飛んできた。


「霊夢、言っとくけどちゃんと手加減するのよ。

いくら飛び方を覚えて弾幕を撃てるようになったからって、彼は普通の人間なんだから」


「わかってるわよ。…でもそうね…手加減ねぇ」


「あー、紫さん?というかアリスはどこ行ったんですかね?さっきから見当たらない気がするんですが…」


「…アリスならお昼ご飯をつくりにいってもらってるわ。途中まで心配そうに見てたけど、安心したのかしらね。

それより幸祐…あなた少しは間というものをね…」


間…?間ってどういうことで…


「…ふ…ふふふ…」


「あれ…霊夢…さん?」

なんかすごい量のお札やら針やらが霊夢の周りに浮いてるんですが…


「人の心配する余裕があるぐらいなら…手加減は…いらないわよねぇ!」

ぎゃーーー!






---------------------------------------------------------------------

[第八話]

"褒美"









…体が痛い…

霊夢との実戦形式の練習で、俺はそれはもう速攻叩き落された。


ま、でもあちこち痛い程度ですんでるんだからなんだかんだ手加減してくれてたんだろう、たぶん、きっと。

…なんで怒ってたのかはよくわからんが…


そしていまはアリス、霊夢、紫さんと俺と吉で、アリスの作ったサンドイッチを食べつつ休憩している。


「お兄ちゃん弱すぎ、あんなんじゃ雑魚妖怪にもすぐ落とされちゃうわよ」

俺を落とした張本人はすまし顔でサンドイッチを食べながら追撃してきた。


「う…」

つってもなぁ、さすがに初めてなわけだし…


「まぁたしかに避けるのもおぼついてなかったしねぇ…反撃なんてほとんど出来てなかったし」

アリスまで…さすがに男としてちょっと情けなく思えてきた。


「面目ない…」

がっくり肩を落としていると。


「で、でも初めてだったんだししょうがないわよ。これから練習しましょ?」

と、アリスに励まされた。…うう…アリス…ありが…


「甘いわよアリス。妖怪連中に初めてだからとか練習中だからなんて関係ないの」

アリスの優しさに浸っていたら霊夢にぴしゃりと言われてしまった。


「そうね。多少の私怨が入ってる気はするけど…これに関しては霊夢に同意だわ」

「そうですか…うーん…」

紫さんにまでそう言われるとさすがにこのままじゃいかん気もするな…

強くなりてぇ!なんて漫画の主人公みたいなことは思わないが、せめて情けない姿は見せないようにはなりたい。ほら、男の子としてもね。


「じゃあそんな幸祐に、私からアドバイスしてあげましょう」


「アドバイス…ですか?」


「そう。幸祐、あなたは弾幕を避けることを考えるのはやめなさい」


「…へ?」

えぇ…頑張って避けようとしてたさっきでさえあんなに簡単に落とされたんだから、それはいくらなんでも無謀じゃ…


「わかってないわね。あなた達はせっかく二人分の思考力があるわけでしょ?なら、それをそれぞれに使えばいいのよ」


「…つまりどういうことですか?」


「つまり、猫ちゃんには自分の判断で回避に専念してもらって、あなたは攻撃指示に専念するってこと」


「…なるほど」


たしかに言われてみるとさっきの練習の時も、吉に回避の指示を出すので精いっぱいで、攻撃のことを考える余裕がなかった。

そう言われるとその方が効率がいいのかもしれない。


「それにそれぞれ個々で見ても、猫ちゃんに自由に動かせた時の動きは中々すごかったわ。さすが動物といったところかしら。

あと、幸祐の弾幕も初めて作ったにしてはそれなりに的を射た形にはなってたわよ、こっちは単純にセンス…かしらね」


ふむ…

「紫さん…ちょっと試してみてもいいですか?」


「少し…やる気になったみたいね。いいわ、今度は私がお相手しましょう」

「え、紫さんが相手…なんですか?」

そ、それは聞いてないんですが…なんていうか紫さんてすごいラスボス感あるし、絶対強い気がするんだよな…

そんでもってその勘は間違いなく当たってる気がする。


「そうよ。霊夢はさっき相手したし、アリスだと手心を加えそうだしね」


「…わかりました」

うん、せっかく皆が協力してくれてここまでこれたんだ、ここで弱気になってたら、男が下がる。


「…へぇ…いい顔するじゃない」

紫さんがなんかエロ…もとい妖艶に舌をぺろりと出す。

う、もともと美人なのもあってエロ…げふんげふん


「まぁさすがにハンデは大幅にあげますわ。

まず私はスキマ空間は使いません、そしてあなたは私に防御させるか、五分間私の弾幕を避け続けれたら勝ち、としましょう」


おお、すげえハンデっぽい…スキマ空間ていつも紫さんが飛び出してくるアレだよな…

たしかにアレで自在に移動されたらどうにも出来ない気がするしな。


ふと、横から声をかけられる。

「幸祐…がんばってね。もし勝てたら今日は夕飯の時にとっておきのワインを出してあげるわ」

と、アリスから励まされた。ワインかぁ…いいね楽しみになってきた。

「がんばってねお兄ちゃん。昔みたいにかっこいいとこ、見せてね」

霊夢からも励まされる

さて、さすがにこんな美少女二人に応援されたら男として気合いいれないわけにゃいかんわな。

「おう。ちょっと頑張ってみるよ、二人ともありがとう」


「…なんか私が悪者みたいね。いいわ、もし勝てたら私からもご褒美をあげましょう」

ご、ご褒美とな?!な、なんかさっきのエロい感じみてたら変な想像が…


と、そんな俺の様子を見てか、紫さんはニヤリと笑うと…

「何を期待したのかしら…うーん、そうねぇご褒美は…か・ら・だ?がいいかしら?」


…は?!

「ごほ!げほっ!」

何も飲んでないのに咳こんでしまった…ふぅ危ない危ないこんなことで俺は動揺しないぜ…ほんとだよ?

でもなぁ…あの巨乳…いかんいかん!


「主人…顔やばいよ。あとアリスと霊夢の顔も別の意味でやばいよ」

「ひっ!」

吉に言われアリスと霊夢を見ると、二人とも般若のごとき顔になっていた

いや、だって!俺だって健全な男だしね!しょうがないやん?!


「さて、じゃあそろそろ始めましょうか」

「は、はい。吉、頼む」


紫さんに促され二人で宙にあがる。


「…吉」


「ん?なに主人?」


「今回は回避は全部お前に任せる、だから自由に避けて動いてくれ」


「わかったけど…いいの?さっきみたいに気持ち悪くなるかもよ?」


「長くても五分の勝負みたいだからな、なんとか気合いで耐える…それと」


「それと?」


「もし攻め込むチャンスがあったら、ここぞという時だけ指示するからそん時は従ってくれ」


「りょーかい」


「攻撃のイメージと指示は俺の方で全部やる。よし、じゃあいくぞ!」


「おっけー!」


紫さんと同じ高さ、5メートルほど手前で対峙する。

「…準備はいいみたいね」

「はい」

「そうね…これで勝てれば、まぁ雑魚妖怪に簡単に落とされるってことはないと思うわ。がんばりなさい」

「わかりました」

了解の言葉と共にお互い距離を開ける。


「じゃあ…いくわよ」

紫さんがそういうと同時に、紫さんの周囲に大小合わせて100…いや200個はあるんじゃないかという弾幕が展開される。


「吉、任せたぞ!」

「おっけー!ネコ科の瞬発力!なめんじゃないわよ!」

俺が吉に指示を出すと同時に、紫さんが展開した弾幕がこちらに向かってくる。

あるものは直線的に速く、あるものは弧を描くようにゆっくりと、またあるものはこちらを追尾するように不規則に。


そしてその弾幕を吉が動かす俺の体が横に躱す縦に躱す回転して躱す、とにかく躱す。


なるほど…たしかにこれはすごい。俺が指示してから吉に動いてもらってたらこうはいかないだろう。

…で、でも…

「うぷっ…やっぱ気持ちわる…」

「ええ?!主人早すぎるよ!まだ一分も経ってないよ!」

「だ、だいじょぶ…気合いでなんとかする」

嘔吐感を無理やり飲みこみ紫さんの様子を見る。どうやら紫さんは弾幕を出すだけで、いまのところあそこから動くつもりはないみたいだ。

まぁ俺が攻撃できてないからその必要がないだけなんだけどな。


「…うん、ちょっとだけ慣れてきた。でもやっぱ5分は持ちそうにないから…勝負にでるぞ吉」

「いいわよ!」

「よし!こっちも弾幕展開だ!」

吉に頭の中で思い描いてた弾幕のイメージを送る

すると俺たちの周囲に20個ほどの弾幕が出来上がった。

…本当はもっと多くの弾幕をイメージしてたんだけど、たぶんこれが俺と吉の限界なんだろう。

でも、これでも俺のイメージ通りなら、十分いける…はず。



「撃て!」

紫さんが撃つ、雨あられのごとく降り注ぐ弾幕を回避しつつ、用意した弾幕から4本のレーザーを放つ。

が、紫さんはさも来るのがわかっていたかのごとくすべてのレーザーを紙一重で躱していった。


そしてまた弾幕を避けながら次、またその次とレーザーを4本ずつ放つが、紫さんはそのすべてを最小限の動きで躱していく。

「同じことばかりしていても、何も変わりませんわよ!」


…よし、次が勝負だ…

弾幕の隙間を縫ったタイミングでまた4本のレーザーを紫さんに向けて放つ。

「だから同じことだと…!」

と、また紫さんが紙一重で躱したタイミングで…

「ここだ!」

放った4本のレーザーが紫さんに躱されたあと、鉤爪のような屈折をし、再度紫さんに向かう。


よし!できた!

あらかじめこの4本だけは屈折させる軌道をイメージして弾幕を発動させていた、ほんとに曲がるかは賭けではあったが…


「なっ?!」

さすがの紫さんも少々驚いたのか、いままでの紙一重での避け方から一転、上方に急上昇して回避する

「…いまのはなかなか良かったわよ幸…」

「まだです!」

鉤爪状のレーザーが紫さんに向かうと同時に吉に指示し紫さんの上方に急上昇、その後紫さんに向かって急降下する

そして残りの弾幕を一本のレーザーに収束して、紫さんに向かいながら…放つ!

「くっ!」

紫さんが慌てて手に持つ扇子でレーザーを弾く、さすがに急回避したあとの至近距離からのレーザーには防御せざるをえなかったようだ。


「よっしゃ!…って吉ストップ!ストップ!」

「わわ!そんな急に言われたって!」


紫さんに向かって猛スピードで向かっていった体は急には止まれず…


「ふがっ」

「きゃっ」

俺の体は何かやわらかくて大きいものにぶつかって止まった


…はて?暗くて何も見えんぞ。それに両手に広がるこの幸せな感触はなんぞや…

両手をにぎにぎと動かしてみる。


「あんっ…もう」

…ん?紫さんの声?つーことはもしやこれは…というか実は半分ぐらいわかっていたんだが…


顔をあげてみると、俺の両手は紫さんのその豊満な(ここ大事)胸をわしづかみにしていた。


「もう…確かにご褒美をあげるとは言ったけど…早すぎないかしら?それに、霊夢やアリスの前でだなんて…幸祐もなかなか大胆ねぇ」


「あっ!いやすいません!」

…正直名残惜しいが、さすがにいつまでもわしづかんでるわけにもいかないので慌てて手放した。


すると紫さんが耳元に口を寄せ

「…途中から気づいて触ってたでしょ…?」

と、ささやいてきた。


「い、いやーそんな馬鹿な」


「…ふふ、まぁいいけど」

いいんか?!ってーかさすがラスボス、お見通しってわけですね…


「それより…中々いい動きだったわ、あなたの勝ちね」


「あはは…まぁめちゃくちゃ手加減してもらって…ですけどね」


「それはそうよ。でも、考え方はよかったと思うわ。ちょっと驚いちゃった」


「そう言ってもらえると俺も嬉しいです。吉もありがとな」


「どーいたしまして。いやぁさすがに動き回って疲れたわ。」


「俺もさっきほどじゃないが若干気持ち悪い…」

そう、あの回避方法は俺の体が持たない。それに今回は完全な奇襲で勝ちを拾えたに過ぎないしな…もっと色々考えなきゃ…


「ところで…勝負には勝ったわけだけど…幸祐、あなたこの後は負けが確定してるわよ」

紫さんが地上を扇子で差しながらそう言う


ハハッ、ヤダナー紫さんてば…意識しないようにしてたのになー…


そして俺は地上で鬼のような顔をしている二人に呼ばれ、自ら断頭台に向かうのだった…






---------------------------------------------------------------------

[第九話]

"我儘"









紫さんとの勝負が終わり、アリスと霊夢に一通りボコされた後、

霊夢と紫さんは「さすがにあんまり長く神社を空けれないわ。」と帰っていった。


いわく、魔理沙に留守番させているとはいえ、やはり巫女が神社を空けたままにしておくのはあまり良くないらしい。


…去り際に紫さんが「あ、勝負のご褒美は…さっきあげたからいいわよね?」なんてニヤニヤしながら言ったもんだから、

また二人に睨まれたが…


そんなこんながあって…いま俺は、自室でゴロゴロしていた。


本来なら夕食の準備をしている頃なのだが、アリスが「今日は疲れてるだろうし、私がやるわ」と言ってやってくれることになった。

まぁたしかに霊夢に落とされたり、二人にボコされたりで体は疲労困憊なのだが…

はて…今日の昼食といい俺、食事当番になってからほとんど当番してない気がするが、いいのかね?


「外の世界の方が…か」

「…どうしたの主人?」

腹の上で寝そべっている吉に問いかけられた。


「いや。昼間アリスにさ、外の世界にいた時の方が楽しかったか…って聞かれてさ」


「…で、なんて答えたの?」


「ん?今の方が楽しいって答えたよ」

正確にはアリスといる生活のが楽しいだが…まぁそこはいいだろう。


「そう…でも、あたしもきっとそうなんだと思うわ」


「??なんでだ?」


「だって主人、外の世界にいた時より、今のがいい顔してるもの。

ずっと見てたあたしが言うんだから、間違いないわよ」


「…そっか」


「外の世界にいた時の主人は…なんていうかいつも何かに押しつぶされそうになりながら生きてた気がするの

いつも辛そうな顔で起きて、仕事行って、帰ってきて、寝ての繰り返し。あたしは、そんな主人を見てるのが嫌だった。

だからあたしは…この世界に来て、毎日ドタバタしながらも楽しそうな主人を見れて、嬉しいの」


「…うん、ありがとな吉」

なでてやると、吉は気持ちよさそうにゴロゴロと鳴いた。


…がんばろう、今度こそ押しつぶされないように。









コンコン、と、ドアがノックされる音で意識が呼び戻される。


「…幸祐?起きてる?」

どうやらアリスが呼びに来たみたいだ。

あの後いつの間にか寝てしまっていたらしい。窓の外を見てみるとすでに真っ暗だった。


「ごめんアリス。起きてるよ」

アリスが扉を開けて入ってくる。


「おはよう。よく休めた?」

「おはよう…ってのも変だけど。うん…ごめん、もしかしなくても寝すぎてたよね」


時計を見てみるとすでに20時をまわっている、いつもの夕飯の時間はとっくに過ぎた時間だ。

「いいのよ。一回、夕方部屋に来たんだけど…二人とも仲良くよく眠ってたから、そのまま起こさないでおいたの」


「ごめん、気使わせちゃったみたいで…」


「もう、謝りすぎ!『ごめん』って、さっきから三回目よ?いいって言ってるんだからいいの」


「うん…じゃあ、ありがとう」


「どういたしまして。それで、ご飯できてるけど、食べる?」


「そうだね、さすがにお腹空いたし、いただくよ。

アリスはもう済ませちゃったよね?」


「…私もまだよ」


「え?!ホントに?!ごめん…先食べててよかったのに」


「…嫌よ…だって…約束のワインだって用意しといたし…」


あ、ホントに用意してくれたんだ


「…それに、最近ずっとあなたと吉ちゃんとの三人でご飯食べてたじゃない…

だからなんとなく…せっかく頑張って用意したのに…一人で食べるのは寂しくて嫌だったんだもん…」

アリスがポツポツと小さい声で言う


…oh


なにこの可愛い子。だもん、て、なんだそれ俺を殺す気か。

え?これこのままベッドに引っ張り込んでいいやつだよね?違う?あ、ダメ?そうですか違いましたか。


と、わけわからん妄想をしながら黙っていると。

「さ、さぁ!じゃあ食べましょ!いま暖めなおすからリビングで待っててね!」

恥ずかしかったのか、慌てた様子のアリスに押されてリビングへ向かうのだった。










さて…どうしてこうなった…


「なぁアリス…ちょっと飲みすぎじゃないか?」

「…ぜーんぜんそんなことないわょう」


嘘だ、すでに顔は真っ赤だし、さっきから呂律もまわっていない。

アリスこんな酔い方するタイプじゃないんだけどなぁ。


アリスの家に厄介になってから、お互いワインが好きってこともあって、ちょくちょく二人で飲んだりはしたが、こんな風に酔ってるアリスを見るのは初めてだった。


…そりゃまぁ、今飲んでるワインでボトル5本目だ。二人でボトル4本も空ければ酔いもするだろうが…

ちなみに俺もアリスほどではないが結構酔ってはいる。

あと吉はワインなんて飲めないので、ご飯を食べたら「さすがに疲れたし眠いからもっかい寝るわ…」といって早々に部屋に行ってしまった。


「な、なぁ?そろそろいい時間だしさ?今日はもうお開きにしよう?な?」

「…やだ」

えぇ…どうすんねんこれ…


「…なによ…幸祐なんか、あんなスキマ妖怪の…その…おっぱい触ってデレデレしてたくせに…」


「…ん?」

なんかいま変なセリフが聞こえた気がするぞ?


「それに霊夢にもお兄ちゃんとか呼ばれて喜んでたし…」


「いやいやいや!それは喜んではないって別に!」

誤解だ!別に呼ばれることは嫌ではないけど、俺に妹属性萌えはない!


「いま『それは』って言った!じゃあやっぱりおっぱい触ってたのはデレデレして喜んでたのね!」

顔を真っ赤にしたアリスにまくしたてられる。


もうなんなんだこの酔っ払い!


「そ、それは言葉のあやでな…?」

「…幸祐の変態」


グサッ

へ、変態はちょっと言い過ぎなんじゃないかな~?


「…だからまだ飲むの!」

えぇ…全然だからになってないよアリスさん…

と、とりあえずボトルはもう没収して…


「アリス…ほら俺もさすがにもう眠いし…部屋戻ろう?な?」


「…歩けない」


「え?」


「…歩けないから部屋まで連れてって」


「わ、わかったよ」

まぁ確かにこんだけ飲んでるし、転んだりしたら危ないからな…


「じゃあ肩貸すからつかまって」

アリスのそばにいってしゃがむ、が、アリスは動こうとしない。


「…アリス?」


「それじゃやだ」


「それじゃって…じゃあどうすればいい?」


「…部屋までお姫様抱っこして連れてって」

はい?


「…ええ?!いや、それはさすがに…」


「じゃなきゃ動かないから」


…本当にどうしたんだろう今日のアリスは…いつもはこんなワガママ言うような感じ全くないんだが…

とはいえ、お姫様抱っこは無理だ。なぜなら俺が恥ずかしい!…でもなぁ、じゃあどうするか…


「…よし」

アリスの座ってる横に来て後ろ向きにしゃがむ。


「お姫様抱っこは俺も恥ずかしいから無理だけど…おんぶならしてやるから、これでガマンしてくれ…な?」


「…むぅ」

後ろを向いているからわからないが、どうやらアリスもしぶしぶ納得してくれたみたいで、肩に手をかけてくる。

あれ?待てよ。これはこれで色々まずいんじゃないか?


そう思った瞬間背中に重みがかかり、同時にやわらかい感触が当たる。

あ、あかん!これは迅速に運んでしまわないと俺の理性がもたんぞ!

「ア、アリス?乗ったか?じゃあ立つからな?」


「…うん」


アリスのふとももに手をかけ立ち上がる。かっるいなぁアリス…

というかそんなことより、背中の…その…胸の感触と、手のふとももの感触が、あわわわわ!


と、そんなことを考えていると、背中のアリスが強くしがみついてきた。む、胸の感触があぁ!


「ア、アリス?あ、あの背中にその…」


「…ワガママ言ってごめんなさい…」


「…」

突然、アリスに謝られる。昼間のことといい、どうしたのだろうか。


「…ごめんね…」

アリスがもう一度謝る。


「い、いや、アリスには本当に感謝してもしきれないくらい世話になってるし、このぐらいなんともないんだけど…

突然どうした…?」


「…ここ2日でね…いろんなことが起きたじゃない」


「まぁ…そうだな」

魔理沙と霊夢と出会い、俺の力とやらと幻想郷に連れてこられた理由を知り、そして弾幕や空を飛べるようになった。

そう考えると確かにたった2日にしてはめまぐるしい変化だ。


「…あなたが私の家で住むようになって…最初は、ちょっとしたら人里か霊夢のところに送ろうと思っていたの…」


「…うん」


「…でもね、あなたとの生活は、思ってたのとは全然違ったの」


「違った?」


「うん、最初は人間の、それも男との生活なんて面倒だな…ぐらいにしか思ってなかった。

けど…なんていうか、あなたは優しくて、暖かくて…ちょっと助平だけど、とっても良い人で…

だんだんと、いままで一人で暮らしていた時より、幸せだな…って思うようになった」


「…」


もし、アリスがそう感じていたとするならば…それは紫さんの言っていた俺の能力とやらのおかげであって、

俺自身がそうさせているのではないだろう。


だからかはわからないが、アリスに言われたことは嬉しいのに、手放しに喜ぶことは出来なかった。


「本当に毎日楽しいと思ったわ…でも…だから、あなたが魔理沙や霊夢と出会って、飛べるようになって…

これからどんどん、この幻想郷の色んな人と出会っていったら、どこかに行ってしまう気がして…怖くなったの」


「…アリス…」


「そしたら…なんだかあなたに甘えたくなって…ワガママになっちゃった…だから、ごめんなさい…」


「…謝る必要なんてないよ。さっきも言ったけどアリスにはお世話になってるから、全然気にしてないし…

その…ちょっと困ったことは確かだけど…なんていうか、ワガママ言うアリスも新鮮で…可愛かったしさ。

それに、昼間も言ったけど…俺もアリスと暮らしてて楽しいから、どこかへ行こうなんて考えてないよ」


…いやいやいや、何を言ってるんだ俺は。うわー!うわー!恥ずかしい!酔ってるのか?俺も酔ってるのか?

いやしかし喋っていること自体は本音なんだがね!


背中のアリスがもう一度ぎゅっと抱き着く。

「…そう。…ありがとう…」





そんなやり取りをしているとアリスの部屋についた。

「アリス?部屋着いたけど…その、入っていいか?」


「…うん」


片手でドアを開け部屋に入る。アリスの部屋はシンプルだけど、ところどころに女の子らしい感じもあって、ついでになんかいい匂いがした。

…そういやちゃんとアリスの部屋に入るのは初めてだったな…


「ベッドにおろせばいいか?」


「うん…ありがとう」


「どういたしまして」


「…ねぇ幸祐…降ろしてもら前に…一つだけいいかしら」


「ん?どうした?」


「最後にもう一つだけ…ワガママを聞いてほしいの」


「…俺に出来ることならいいよ」

うん、まぁアリスももう落ち着いてるし、さっきみたいに無茶は言わないだろう。


「ありがとう…じゃあ降ろしてくれる?」


「??りょーかい」


と、アリスをベッドに降ろしてアリスの方を振り向くと、突然ベッドの上のアリスに手を引っ張られた。

「って、おわっ!」


…アリスに覆いかぶさる形で俺もベッドに倒れこんでしまった。

は?いったいなにがはじまるんです?


と、とりあえずどかないと…

「ア、アリス、いきなり何を…ってかごめん、すぐどくか…」


言い終わらないうちにアリスに抱きしめられる

ちょっ!さっきは背中だったからまだしも正面からこれはまずいって!


「…もう一個だけのワガママね…今日は…その…朝まで一緒に寝てほしいの」


…なんですと?


「い、いやーそれはさすがにまずいんじゃないかな?ほら、年頃の男女が一緒に寝るってのは色々とさ?」

それよりなにより俺の理性がもたんぞ!


「…お願い」


アリスにもう一度お願いされる、うう…ええい!


「…わ、わかった…でもとりあえずこのままの体勢ってわけにはいかないから、横に行くな?」


「…うん」


アリスの横に移動すると、アリスはぴっとりと俺にくっついてきた。

うぅ、まぁまださっきよりかは密着してないが…いろいろ当たってるんだよなぁ。


「じゃ、じゃあ毛布かけるぞ?」

足元から毛布をとり、アリスと自分にかける。


「…寒くないか?」


「ううん…あったかい…幸祐はやっぱり…優しいね」


「…普通だって」


「…お願い…聞いてくれてありがとう…おやすみなさい」


「おやすみ、アリス」

アリスの頭を軽くなでると、アリスはすぅすぅと寝息を立てて寝始めた。


…ふ、ふふ。なんだかここだけ見ればいい感じで終わったがね。

さて、俺は朝まで理性を保っていられるのだろうかね…






---------------------------------------------------------------------

[第十話]

"女子"









…チュンチュンと小鳥がさえずり、朝日が窓からやわらかく差し込む。


「…朝か…ほとんど寝れなかったな…」

…だが俺は勝った、勝ったよお母さん。


隣で俺の腕に抱き着き、すぅすぅといまだ寝息を立てるアリスを見る。うーん可愛い。


…可愛いのはいいんだが…昨日は結局アリスが寝た後も悶々としたまま朝方まで寝ることが出来なかった。

おかげで完全に寝不足である。


まぁアリスの寝顔を見れただけで、寝不足の対価としては十分…なのかな…?


「さて、朝飯の準備でもするかな…」

アリスの頭を軽くなで、起きないように気を付けて腕を外してベッドから出る


そのままアリスの部屋を出て、昨日は二人とも飲みすぎたから今日は和風に味噌汁でも作るかな…とリビングに顔を出すと…


「それでなー!にゃんこ聞いてくれよ!霊夢と紫ってばひどいんだぜ!

せっかく教えてやったってのにさぁ、私のこと留守番扱いしやがって」


「昨日、霊夢と紫から聞いたわ。いいじゃないの、のんびりできて。こっちはこっちで…って主人おはよう、アリスはまだ寝てるの?」


うちの飼い猫と白黒の魔法使いが談笑していた。


「おー、こーすけおはよう!いや~仲良くやってるみたいで私も嬉しいぜ」

魔理沙にニヤニヤ顔で言われる。あぁこれはアレだ、めんどくさいことになるやつだ。


「おはよう吉、魔理沙。…そして魔理沙、おかえりの玄関はあちら、だ」

玄関を指刺し魔理沙に言う。こいつ、朝っぱらから何を人の家でくつろいでんだ…まぁ俺の家でもないわけなんだが…


「まぁまぁ、そういうなって。昨日は私は何にも出来なかったからな、だから今日はこうして朝早くから出向いてやったわけじゃないか」

…誰も呼んでないんだが…いやそれよりも


「吉、アリスが起きてないのに普通の魔法使いを勝手に家に入れたらダメだろ」


「うーん、まぁ魔理沙ならアリスの友人だし、待っててもらうくらい大丈夫でしょ」

う、それはそうなんだが…今日はその…タイミングが…


「そんなことより、だ」

魔理沙が俺と吉の間に入ってくる。


「こーすけぇ~…なんだ、上手くやったみたいじゃないか」


「…仰られている意味がよくわからないのですが?」


「ったくしらばっくれるんじゃないぜ。なぁにゃんこ」


「まったくね。前からすっとぼけたこと言ってたから大丈夫かなと思ってたけど、ちゃんと分かってたみたいで安心したわ」


…こいつらが使っている言語はどこの国の言葉なのだろうか。ああそうか、猫語か、そう考えると魔理沙もどことなく猫っぽいしな。


「…言っとくけど、お前らが考えているようなことは何もないからな」


「おいおいこーすけよ。それは通らないぜ。

一緒に寝といて何もなかったなんて、そんなのお天道様が許しても私が許さない」


じゃあお前は何様だってんだ。


「残念ながら、本当に、何も、ない。昨日はアリスが飲みすぎたから、部屋まで運んであげて、疲れと酔いもあって俺もそのままそこで寝ちゃっただけだ」

アリスの名誉のためにもちょっとだけ嘘をついておく。何もなかったのは本当だしな。


「…」

「…」

魔理沙と吉が顔を見合わせ、こいつ何言ってだ、というような顔をする。


「…じゃあシてないのか?」


「してない」


「いろいろ触りあったり揉んだりくらいしたろ?」


「なにを、なのかはあえて聞かないが、してない」


「じゃあチューは?!これくらいしたろ!」


「だから何もなかったって言ってるだろ!してないって!」


「…」

「…」

魔理沙と吉がもう一度顔を見合わせ、見たことのない生き物を見るかのような目で俺を見る。こっち見んな。


「…」

「…」

「…ホモなのか?」

「違う!」

なんて言いぐさだ!


「大体だな魔理沙。アリスと俺も出会った頃から比べたらたしかに仲良くなったよ?

でもな、そーいうのは男女の仲になった時にすることだろ。少なくとも、今のところアリスと俺にそーいう考えはないから」


…そりゃ俺はアリスのことを可愛いなとは思ってるし、ドキッとしたりすることも多々ある。

でもアリスからは、たぶん俺は従兄のお兄さんぐらいにしか思われていないだろう。うん、拗ねたり甘えたりするのも年上のお兄さんに対する一般的な感情だ。だからそこに恋愛的な何かは生まれていない…はずだ。たぶん。


「…おいおいにゃんこよ。こいつ本格的にやばくないか?」

「…あたしも相当だなとは思ってたけど…まさかここまでだとは思わなかったわ」


二人してなんかボソボソ話してやがる。

というかこいつら好き勝手言いやがって…


と、そんな話をしていると、アリスが部屋から目をこすりながら出てきた。


「…幸祐?お、おはよう…ご、ごめんなさい昨日は…でもそのうれしかっ…」

…そしてリビングの魔理沙を見て固まる。


「ようアリス、お邪魔してるぜ~いやぁ仲良くしてるみたいで何よりだよ」


「な、な、なんであんたがいるのよ?!」


「昨日は私は何にも出来なかっ…」


「それはさっき聞いた。アリス、どうやら昨日一人だけハブられてて寂しかったみたいだ。

適当に歓待してあげてくれないか?俺は顔洗ってから朝飯作ってくるからさ」


魔理沙も食うか?と聞いたら、食う!と返ってきた。遠慮のない奴め。


「…わかったわ。ごめんね幸祐、よろしく頼むわ」

あいよー、と手をあげて応える。

さて、胃に優しめの和朝食でも作りますか…









「で、だ。アリスよ」


「な、なにかしら」

幸祐がいなくなった後のリビングで、女子(内一匹は猫)が固まって話し合う。


「さっきも言ったが、仲良くやってるみたいじゃないか」


「ふ、普通よ」


「普通の男女は一緒に寝たりしないと思うんだが…」


「なんでそれを…?!」


「そりゃ幸祐がアリスの部屋から出て来た時からいたからな」


「それにあたしが朝まで自室にいても主人は帰ってこなかったからね、あぁそういうことか、と。で、魔理沙に教えたわけ」


「吉ちゃんあなたね…」


「まぁまぁアリスいいじゃないか。何も私もにゃんこも悪いようにしようってんじゃないんだ。

場合によっては相談にだって乗ってやれる」


「その通りよ」


「まぁいまはアイツもいないことだし、女子会トークといこうじゃないか」


「…わかったわよ…」


「で、だ。早速だが、さっきこーすけにも聞いたんだが…一緒に寝て本当に何もなかったのか?」


「そこよ。主人たら何もなかったの一点張りなんだもの!

アリスみたいな可愛い子と一緒に寝て、さすがにそんなわけないと思ってるんだけど…そこんとこどうなの?」


フンスフンスと鼻息荒く魔理沙と吉がアリスに近寄る


「か、可愛くはないわよ…でも、本当に何もなかったわ…というか、その…何も…してくれなかった…というか…」

魔理沙と吉がため息をつく


「はぁ。アイツはほんとになにやってんだ…」


「ここまでとは思ってなかったわ…主人てば…」


「…一応その…アピール的なのはしてみたんだけどね…」


「まぁいい…その辺は今後に期待しよう。…で、だ。

いまの口ぶりから察するに…つまりはそーいうことでいいのか?」


「…どうなのかしら…でも、まだわからないけど…そういうこと…なのかも」

アリスが顔を赤くしながら答える。


「ほーほー」

「へ~」

魔理沙と吉がニヤニヤと笑う。


「ま、まだわからないけどね!」


「まぁまぁ。でもアリス、いまんとこだが霊夢もそういう意味だと怪しいぞ、昨日もなんか無駄に張り切ってたしな」


「う…それはなんとなく昨日の様子でわかってたわ」


「そうか。まぁ私はどちらとも友人だからな。

どちらかだけを応援することは出来ないが、相談ぐらいならいつでも聞くさ」


「あたしはアリスの味方よ。遊んでくれたりするから、主人の次にアリスが好きだしね」


「ふ、二人ともありがとう…」


魔法使いと猫の女子会は、幸祐が朝食を持ってくるまで続けられた…


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください