2017-01-13 00:51:58 更新

概要

千歌「……GANTZ?」 part6からμ'sをメインとして展開、追加ストーリの最後につながる話となります



~カタストロフィ ガンツの部屋~



穂乃果「――…ガンツ、沼津チームと繋げてくれる?」





――ブウゥゥン…





ダイヤ『あら? 通信ですか…って穂乃果さん!?』


穂乃果「あなたは…ダイヤちゃんだね? でも、まだ一度も会って話した事無いはずじゃ……」


ダイヤ『わたくし、μ’sの大ファンなのです! 年齢を重ね、大人びた顔でも一目で分かりますわぁ!!』キラキラ


穂乃果「あはは……それは嬉しいよ」




穂乃果「そこに千歌ちゃんは居る?」


ダイヤ『………』


穂乃果「ダイヤちゃん?」


ダイヤ『千歌さんは…三年前に亡くなりました。理由を説明すると長くなるので省きますが、本人の希望により再生はしていません』



穂乃果「……そっか、ごめんね?」


ダイヤ『お気になさらず。代わりにわたくしが伺います』



穂乃果「うん、お願いするね。――単刀直入に聞くけど、敵の宇宙船内部のマップデータってもう手に入れた?」


ダイヤ『んな!? そんなものが既に出回っているのですか!!?』


穂乃果「その反応じゃ、まだ持ってないみたいだね。実は知り合いのアメリカチームのメンバーからデータを送って貰えたんだよ」


穂乃果「宇宙船の弱点も捕らわれた人々が収容されている座標も分かってる」



ダイヤ『なんと……』



穂乃果「私達のチームは他の国と合同で迎撃に向かうつもり。データはこれからそっちに送るから、どうするかはあなた達で決めて?」


ダイヤ『分かりました。貴重なデータ、ありがとうございます』




穂乃果「……後ね」チラッ


「………」ソワソワ



ダイヤ『穂乃果さん?』


穂乃果「――…私のチームから一人、そっちのチームの応援に向かわせようと思うんだけど…問題ないかな?」



「っ!!」



ダイヤ『本当ですか!? 人手は多い方が助かるので大歓迎なのですが……よろしいのですか?』


穂乃果「まあ……この子は本来そっちのチームの子だからね」


ダイヤ『はい?』



穂乃果「ただ、暫く時間が掛かるから準備が出来次第、応援の子はこっちから転送するね」


ダイヤ『そうですか、分かりました』


穂乃果「じゃあ切るね。検討を祈るよ」





――プツン…





「ほ…穂乃果さん!? 私このタイミングで帰るんですか!!?」


穂乃果「だって帰りたいでしょ?」


「でも……」


穂乃果「これを逃したら、もう一生曜ちゃんやみんなに会えないかもしれない…それでもいいの?」


「………」



穂乃果「まあ、最終的に決めるのは自分だからさ。よく考えてね……“千歌ちゃん”」






――

――――

――――――

――――――――



~三年前 9月~



穂乃果(秋葉原で沼津チームと合同で行ったミッションから暫く経った。星人との戦闘で荒れ果てた街も徐々に復興し、ほぼ元に戻った)


穂乃果(ミッションの後、部屋でみんなにカタストロフィの事を話したけど…各々複雑な顔をしていた)


穂乃果(解放を目指して戦っていた にこちゃん、花陽ちゃんは特に険しい表情だったけど、大切な人を守るためにこの先も残る決断をしてくれた)


穂乃果(この件については話すかどうか散々悩んだけど、みんなは訊けて良かったと言ってくれた)


穂乃果(今は休日、私の家には凛ちゃんと花陽が来ているんだけど――)





穂乃果「――…それってどういう意味?」


凛「いや…あれ? ちょっと怒ってる??」アセアセ


穂乃果「あ、ごめんごめん。別に怒ってないから安心して」アセアセ



花陽「いきなり『本当に何十回も100点取ったの?』なんて疑ったらそりゃ怒るよ」


穂乃果「だから怒ってないってば!」




凛「――…でもさぁ、穂乃果ちゃんは凛達が全滅してから一人で全員再生させて、強化装備もハードスーツまで持ってるわけでしょ?」


穂乃果「まあ…」


凛「凛を再生してもらったのが二年前で、その時は海未ちゃん、ことりちゃん、絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃんがいたにゃ」


花陽「その次が真姫ちゃんで最後が花陽だったんだよね?」


穂乃果「三回連続で高得点の星人が大量に出てきたミッションだったから短期間で100点が取れたんだよ」



凛「で、凛より先に再生されたメンバーに誰が最初に再生されたか訊いたの」


花陽「それでどうだったの?」



凛「――…海未ちゃんとことりちゃん、絵里ちゃんだった」


花陽「三人? 三人同時に再生されたんだね」


凛「でも、それっておかしいよね?」


花陽「?」


穂乃果「………」




凛「だってさ、一回のミッションで獲得できる点数は100点までだよ? だから再生出来るのは一人だけなんだよ。他に仲間がいるなら別だけど、海未ちゃん曰く穂乃果ちゃんしかいなかったみたいだし…」


花陽「あっ」



凛「――…ねぇ、穂乃果ちゃんはどうやって三人も同時に再生できたの?」






穂乃果「うーん…どうしてそんな事知りたいの?」


凛「だって、一気に三人も再生出来る方法があるなら連続してやらなかったのは何でかなーって思っちゃって……」


花陽「もしかして……話すと命が危ない…とか?」ビクビク



穂乃果「……まぁ、隠す必要は無いかぁ」ポリポリ


穂乃果「そうだよ、私は数十回も100点は取って無い。みんなが生きている時に間違って二番を選んだ1回と凛ちゃん達の再生に5回、武器の選択で3回だから計9回だね」



凛「やっぱりにゃ」ウンウン


花陽「9回でも凄すぎると思うけど…」




穂乃果「それで、三人同時に再生出来た理由なんだけど――」






――――――

――――

――



~翌日 都内大学 中庭~



真姫「――…なるほどね、過去にそんな事があったの」


凛「そうだにゃあ……衝撃だったよぉ」ズーン


花陽「穂乃果ちゃんにまだこんな隠し事があったなんて…」




真姫「ただまぁ、今後もあるかもしれないわけでしょ? その…緊急ミッションってやつ」


花陽「うん…ここ数年間無かったからいつ来てもおかしくないとは言ってたよ」


凛「でもなんであの時にこのミッションについても話さなかったのかにゃ?」


真姫「戦力が整ってきたから、わざわざいう必要が無いと思ったんでしょうね」


花陽「それに全員残るって決めたから、緊急ミッション後の事も問題無いし」



凛「誰か一人だけ100点メニューから一番が選べなくなるってやつ? 確かにそうだね」



真姫「来たら来たで戦うまでね。覚悟だけは今のうちからしておくわ」ガタッ




花陽「もう授業?」


真姫「ええ、午後からは死体の解剖なのよ~。じゃあね」ヒラヒラ




凛「…行っちゃった、昔の凛なら死体の解剖なんて見れないと思うけど…今はもっと凄いの見てるからへっちゃらだろうけどね!」ニヤリ


花陽「私も見ながら御飯食べられる気がするよぉ」アハハ…






~~~~~~



~夜 秋葉原~



希「お! えりちや~ん」フリフリ



絵里「希? こんな時間に女の子が外出?」ヤレヤレ


希「まだそんな遅い時間じゃ無いやろ? そんな事言ったらえりちも一緒やん」ケラケラ


希「――…まぁ、そろそろ来る頃かなと思って最近は心の準備をしとるんよ」


絵里「そうね…」





絵里「あなた程経験を積んでも、やっぱりまだ怖いものなの?」


希「うーん、別に怖くは無いよ。これはウチが昔から転送前にやってるルーティーン…みたいな?」


絵里「なるほどね。……あら? あそこでからまれてるのって…音ノ木の子じゃない?」


希「うん? …ほんまや」




二人が話している場所の少し先

裏路地に続く入り口付近で三人の少女が話している

一人は音ノ木坂学院の制服

もう二人はこの近辺では見ない制服を着ていた


見るからにガラの悪そうな二人

どうやらカツアゲの真っ最中であった





生徒「――…で、ですから……持ってないんですって」


チンピラA「そりゃ無いっしょ? あんたどう見ても裕福そうな家の子じゃん」


チンピラB「ウチらの力、見たでしょ? あんたの骨なんて小枝みたいにポキポキ折れるんだよ~」ニヤニヤ




希「へー、それは凄いなぁ。女の子なのに馬鹿力やん?」


チンピラA「あん? あんたら誰だよ!!?」グイッ


絵里「………」チラ





仲裁に入った希は襟元を強引に掴まれる

穏やかな状況では無いが希は全く動じない





希「おーお、いきなり掴み掛らなくてもええやん?」


チンピラA「やけに余裕じゃん? 本当に潰されたいのか、ああ!?」イラッ


生徒「や…止めてて下さい! その人たちは無関係じゃないですか!」


希「かまわへんで~」ヒラヒラ



絵里「(首元のメーター……手にしている黒い手袋、手首には首元と同じメーターが付いているわね)」


絵里「希、間違いないわ」


希「そっか、ほな……――」



チンピラA「何コソコソ話してんだよ!!」バキッ!


希「っ!?」バタッ





しびれを切らした少女は希の顔面を殴り飛ばす

絵里と希はもう分かっているが、この少女はスーツを着用している

恐らくもう一人も同様だろう


スーツを着た人間は常人の何倍もの身体能力を得る事が出来る

その力で人の顔を殴れば大怪我じゃ済まない

実際、殴られた希はそのまま倒れて全く動かない




チンピラB「バッ…!? それはヤバイって!!」ゾワッ


チンピラA「あ……いや、だって……」ビクビク





少女は自分のした事を酷く後悔した

ちょっと脅して小遣い稼ぎをしよう

そんな軽い気持ちでカツアゲをしていたのに…

その場の感情で一般人を殴り殺してしまった





生徒「あ……あぁ…きゅ、救急車ぁ!! 警察も…」ガクガク


チンピラA「ちょっと……それは――」




絵里「――…その必要は無いわ。希もいい加減悪ふざけは止めなさい」ヤレヤレ


希「えー、でも殴られたんよ? “ぼーこーざい”で警察呼んでもらわな」ムクリ


チンピラB「は? え……なんで…?」



絵里「見た所、あの部屋に行ったのはまだ最近ね。初めてのミッションを運良く生き残ったみたいだけど、くだらない使い方しないできちんと訓練した方が身の為よ?」


希「ウチが死ななくてラッキーやったな♪」




絵里「希、音ノ木の子と一緒に表に出ていて。私はこの子達と少しお話があるから」


希「分かった。ほな、行こうか?」


生徒「あ、はい。ありがとうございました」ペコリ





絵里「――…さてと、あんた達は一体どこのチーム? 少なくとも東京では無いわね」


チンピラB「か、神奈川…です。ここには遊びに来ただけ……です」


絵里「そう。じゃあ、こんな事は今まで何回もやってきたの?」


チンピラA「……はい。スーツの力見せつけて色んな奴から巻き上げました」



チンピラB「あの…やっぱり警察に……」


絵里「そうね、本来ならそうする所だけど…今回は見逃してあげるわ」


チンピラB「………」ホッ




絵里「――…ただ」ゴソゴソ





そう言って絵里はカバンから何かを取り出した

右手に握られたそれは、スカーフが被さっていて何か分からない


それを彼女に突きつけると…





――ギョーン! ギョーン! ギョーン!





チンピラA「ちょっ…ええ!!?」キュウゥゥゥゥン…





彼女達もその独特な音で絵里が握っていたものが分かった

Xガンである

突然の発砲に驚きと恐怖を感じた二人は思わず腰を抜かす


そんな二人を絵里はまるで“ゴミ”を見るような目で見降ろしていた





絵里「今度、希を殴り飛ばすようなふざけた事してみなさい? 同じスーツ組でも問答無用でぶっ殺す」


チンピラA「あ……あ…」ガクガク


絵里「これに懲りたら、今後悪さする事は控えることね。……いいわね?」ニコ



チンピラA・B「「……はい」」






~~~~~~



希「えりち…何したん?」


絵里「え? 別に何もしてないわよ」


希「ふーん……あの子達、凄い勢いで去っていったけど?」


絵里「まぁ、“ちょっと”強めに叱っただけよ♪」


希「ちょっと……ねぇ」ジトッ



絵里「そんな事より、気が付いた?」


希「うん、そろそろ転送が始まるね……」


絵里「それじゃあ、転送が始まる前にもう一度あの裏路地に行きましょうか――」







~~~~~~



~ガンツの部屋~



ことり「あああ……デザインの提出期限が近いのにぃぃぃ」


にこ「…ことりはどうしたわけ?」


穂乃果「なんか学校で出された課題の期限が近いんだって。気分転換にウチでやってたら転送されちゃったの」


にこ「それはお気の毒に」ヤレヤレ




ことり「今も考えるしかない…紙とペンさえあれば……」ブツブツ



海未「諦めなさい、ことり。考え事しながらこなせる程甘くないですよ」


ことり「うぅ……分かってるよぉ」グスン





花陽「はむ……はむ…」モグモグ


真姫「今回は何おにぎりを持ってきたの?」


花陽「今回は昆布、おかか、鮭の三種類です! 転送の知らせを感じてから具入りのおにぎりをついに三種類も握れるようになりました!!」エッヘン


凛「初めは形の崩れたおにぎりしか作れなかったのに、今はキレイな形をしたのが三つも作れるなんて……かよちん、成長したにゃあ~」ウンウン


花陽「これで花陽はいつもの三倍は戦えます!!」ゴゴゴ


真姫「………」ヤレヤレ




希「お! もうみんな来てたんやね」ジジジジジ


絵里「私達が最後か」ジジジジジ



穂乃果「絵里ちゃん、希ちゃん!」


海未「これで全員揃いましたね」


ことり「今回も追加メンバーは無しかぁ」


にこ「ここ何年も追加されないから9人が最大なんじゃない?」


凛「今さら新人が増えてもお互いやりにくいにゃ」



真姫「――…音楽が始まったわ」





ガンツからはいつものようにラジオ体操の音楽が流れる

そして定型文が表示された後

今回のターゲットが表示された




ガンツ『てめえ達は今から

この方をヤッつけてに行って下ちい

さむらい星人 特徴:つよい 好きなもの:刀 火薬 口くせ:ござる、ござる』





絵里「これはまた…ずいぶんと人間に近い星人ね」


花陽「おでこに二本の角が無ければ星人だって分からないです……」


にこ「侍か、わざわざ剣で挑もうなんて事する人はいないわよね?」チラッ



穂乃果・海未「「!?」」ドキッ


にこ「……呆れた、どうしてご丁寧に敵の得意分野で戦おうと思ったわけ!?」


海未「私も得意です! 得意分野で戦うのは正しい選択なのでは?」


にこ「海未は結構。問題は穂乃果よ! あんたは銃でもやれるでしょ!?」




穂乃果「い、いやー…今度海未ちゃんと剣道勝負をする事になって、その練習を……なんて…あはは」


ことり「穂乃果ちゃん……」


にこ「あ…ああ……私の理解の次元を超えていたわ…」


にこ「あんたにとって、ミッションはもうそのレベルにまで下がったのね。前回までの殺戮マシーン穂乃果はもういないわけですか!」


穂乃果「殺戮マシーン!!?」


にこ「点数に貪欲だったあの穂乃果はもう死んで、今やミッションはお遊びなのね。そーですかそーですか」プンプン


絵里「まあまあ、そんなに怒らないの。穂乃果がミッションで気を抜く何てことは無いから大丈夫よ」


希「そうそう。今までが殺伐とし過ぎただけやん? これくらいのユルさがあった方が落ち着くよ♪」


にこ「絵里…希……」



真姫「くだらない喧嘩はそれくらいにしなさい。転送始まってるわよ?」ジジジジジ


凛「よーし、今回は100点まで行くにゃあ!!」パシンッ


花陽「ふぅ……頑張るぞ!」グッ





穂乃果「――…よし、行こう!」キリッ







~~~~~~



~地下鉄 車内 最後尾~



にこ「ちょっと…ここ電車の中じゃない!? しかも、普通に乗客いるし!」


真姫「とんでもない場所に転送されたわね。……それに」チラッ




乗客「なーにあの人達…いきなり現れたわね」「変な格好…コスプレイヤー?」「あれ? あの中にいるツインテの子、にこちゃんじゃない?」「マジ!? なら撮影か何か?」




凛「なんか……普通に見えてるみたいだよ!?」


花陽「み、見られたら私達殺されるんじゃ…」ゾワッ



穂乃果「大丈夫だよ。最近ミッションから周りの人にも見えるようになったみたい」


ことり「そうなの?」


穂乃果「アメリカでは一か月前からだそうだよ。日本も最近星人との戦闘で大きな痕跡が残るようになっちゃったからね…隠しても無駄だって判断したんじゃないかな?」


穂乃果「ただ、このまま写真とか撮られると後で面倒だからステルスを使おう」スゥゥ


真姫「りょーかい」スゥゥ




乗客「え、消えたぞ!?」「すげー…どうなってんだ?」「写真撮りたかったのに」





希「……この人達どうするん?」


穂乃果「説明したところで信じてもらえない。ここで戦闘になったら出来るだけ助ける努力はしよう」


ことり「………」


海未「まあ、敵の素早い殲滅が最善の策だと思います」


凛「仕方無い…よね」





絵里「――…敵が来たわよ」カチャ





向かいの扉からぞろぞろと星人が現れてきた

見えるだけで5体

奥の方にも何体かいるようだ


さむらい星人というだけあって

腰に全員日本刀を携えていた


乗客も星人の登場にざわつき始めている





穂乃果「向こうから現れてくれるなんてね」シュッ


にこ「Zガンは邪魔になるわね…いつも通りの二丁スタイルで行きますか」カチャ


ことり「…あれ何?」





星人の一体が何やら細長い物を肩に担ぎ片膝立ちになり

こちら側に向けてきた

ことりや何人かのメンバーには見覚えが無かったが

希にはそれが何か一目で分かり、同時に驚愕した


名前を聞けば誰でも知っている

だが実際に見た物は恐らく日本には余りいないその兵器の名は……





希「――…ロケットランチャーや!! こんなところでなんちゅうもんぶっ放そうとしてるんや!!!」ゾワッ


絵里「はあ!?」





希が叫んだ瞬間

星人はロケットランチャーの引き金を引いた

発射された弾頭は真っ直ぐ穂乃果達に向かってきた


回避したところで狭い車内では逃げ場が無い

スーツの防御機能で生き残る可能性はあるが

周りの乗客は即死だ



海未と穂乃果は希が叫ぶほんの一瞬早く飛び出していた

手には展開済みのガンツソードが握られている

穂乃果よりほんの少し前に出ている海未は

弾頭に対して下から斬り上げるように――




――スパッ




海未は飛んでくる弾頭を寸分の狂い無く

縦に真っ直ぐに切り裂いたのだ


二つに分かれた弾頭はそのまま側方の窓を突き破り

外へ飛び出した





海未「――…一歩、遅かったですね? 穂乃果」クスッ


穂乃果「ちぇ、あんなに綺麗に斬っちゃってさ…海未ちゃんが先で良かったよ」ヤレヤレ



にこ「……一体どんな反射神経してるのよ?」アゼン


絵里「伊達に長年ツートップやってないって事よ」



海未「ふふ…拳銃の弾丸程度までなら斬って見せましょう」カチャ





ロケットランチャーを打ち込んだ星人とその周りの奴らは

懐からまた何か取り出し穂乃果達に向ける

それはオートマティック拳銃に長いマガジンが付いた外見をしていた

恐らくマシンピストルと呼ばれるものだと海未はすぐに分かった





海未「――…あー、それ使っちゃいます? 流石にそれは無理ですね…」アハハ…





五人の星人は一斉に撃ち始めた

車内に大量の銃弾が飛び交う

穂乃果達は慌てて座席の端に身を隠すが

何が起こっているのか理解できない乗客は次々に被弾する





にこ「何なのよあいつら! “侍”のくせにさっきから近代兵器ばっかり使いやがって…そこは火縄銃でしょうが!!」


真姫「ずいぶんと余裕じゃない? ツッコミが冴えわたってるわよ」


絵里「パニックになら無いのは流石 にこ ね」


花陽「ど…どうするの?」





穂乃果「真姫ちゃん、聞こえる?」


真姫「なに?」


穂乃果「この銃弾の中でもあの距離狙える?」


真姫「はあ!? 私に被弾しろっていうの!!?」


穂乃果「このスーツなら対物ライフルの弾も防げるから大丈夫だよー。それで、狙えるの? 無理なの?」




真姫「――…仕方ないわね!!」ダッ





穂乃果の無茶な指示通り、真姫は飛び出し瞬時に構えた

そもそも命中精度の高くない銃なので思ったほど当たらなかった


構えてから撃つまで一秒弱

その間、右足の付け根と左肩に被弾したが

真姫は正確に星人の銃を撃ち抜いた




銃の破壊を確認した穂乃果、海未は星人に突っ込む

他のメンバーも同様に距離を詰める


二人が斬り合う中、残った星人は後ろの車両へ逃げて行った





穂乃果「何体か逃げた! 誰か追って!!」


にこ「私が行く! 花陽、凛、来て頂戴!!」ダッ


花陽「はい!」


凛「了解だにゃ!!」






~~~~~~



にこ、凛、花陽は車両を移動しながら星人を撃退いていく

日本刀を抜く暇さえ与えず、正確に急所に一撃を与えて怯ませ

確実にトドメを刺す凛


この数年、園田家に通い続けて習得した剣術で圧倒する花陽


素早い身のこなしで斬撃を回避し、Xガンで仕留める にこ



三人は知らないがこの星人、一体20点の強敵である

高校時代の彼女達ならば三人がかりでやっと倒せるレベルである





凛「やっぱり人型は手応えが無いね」


にこ「バカ言ってんじゃないの。楽に倒せるに越したことないでしょ?」


花陽「人が少ない…奥に逃げたのかな?」


にこ「ここは倒したから次の車両に行きましょう」





三人は車両を移動する


そこには顔を包帯で覆われた細身の星人が立っていた

腰には他の星人同様、日本刀を下げており

銃は持っていないようだった


――…にこ達はこの星人を知っている

三年前、新宿でのミッションで遭遇しているのだ





にこ「……まさかこんなところで会うなんて」


花陽「………」


星人「ああ? どっかで会ったか?」



にこ「三年前の新宿って言えば分かるかしら?」


星人「三年前だぁ…あー、あの嬢ちゃんか。お仲間に再生されたのか」




星人「そこの嬢ちゃん達を逃がす為にツインテのあんた一人立ち向かったんだったなぁ…まぁ、すぐにぶっ殺してやったが」


にこ「………」


星人「結局すぐに追いついて二人も瞬殺したっけな」


凛「………」


星人「あの時はハンター狩りの手伝いだったが…今回は俺らがターゲットって訳だ」


花陽「………」




星人「これでも、今までハンターとは何十人も戦って来たんだ。相手の強さなんてニオイですぐに分かる……」






星人「――…嬢ちゃん達、本当にあの時と同じ人間か? 全く別の生き物になってるじゃねぇか」


にこ「…誉め言葉として受け取っておくわ」ニヤッ



星人「前は遊び半分で戦ったが、今回はマジだ」ギロッ


花陽「そうですか」カチャ



星人「一応訊くが…いいか?」


にこ「?」





星人「――…一人ずつ順番に来ないか? そうすりゃ、長く遊べて嬉しいんだがな…」





凛「……って言ってるけど、どうする?」


にこ「はは、笑える冗談ね。……三人で仕留めるわよ」カチャ


花陽「そういう事ですので、覚悟してください」




星人「だろうな…かかって来やがれ!!!」






~~~~~~



ことり「――…せい! おりゃあ!!」キン! ズバッ!


星人「っ!?」ブシュ!


ことり「私の見た目で油断したね? こう見えて強いんだよぉ」



絵里「ことり、片付いたならこっちも手伝って!!」グググ


ことり「任せて!」





穂乃果と海未が前で斬り合っている中

その少し後方でことり、希、絵里が戦っていた


元々戦闘能力の高い ことりは少々手こずったもの

星人の撃退に成功した

残る敵は、絵里と希が相手をしている二体だけだった





真姫「………」ギョーン!ギョーン!



絵里「うおっ!? 爆発した!!?」


希「真姫ちゃん!? ウチの点数がぁ……」ズーン


ことり「あらら、真姫ちゃんが全部倒しちゃったの?」



真姫「全く…どうしてわざわざ同じ刀で戦おうとするのよ。距離取ってXガンで撃った方が早いじゃない!」ムスッ


絵里「それはあなたの射撃が正確なのと、今の星人が私達に手一杯だったからでしょ?」


ことり「この狭さじゃどこを狙ってるかバレバレだし…星人の動きもかなり速かったからXガンだと簡単にかわされると思うな」


真姫「……なるほど」



希「点数を横取りされたのはショックだったけど、無事に終わったからいいか」





真姫「――…んで、あそこの二人はいつまで遊んでいるわけ?」ジトッ


希「そうやね、なんか話しているみたいだけど?」


絵里「油断するなって にこ に言われてるのに……」


ことり「あははは……」






穂乃果「――…え? 沼津のチームが何だって?」キン!ガキン!


海未「あのチームにいた果南さんという子がかなり筋が良くて…是非手合わせ願えないかと」シュッ!キン!


穂乃果「果南? ああ、最後に天狗の腕を斬り落としたあの子か。千歌ちゃんに連絡すればいいんだろうけど、連絡先知らないんだよね」ガキン!


海未「そうですか、だったら直接沼津に行ってみるしか……」



星人「こ、こいつら!! 俺たちを相手に喋りながらだと!!?」




海未「………!」ズバッ!


星人「がはぁ!!?」ブシャー!!


海未「さむらい星人っと言われたので期待したのですが…拍子抜けです。剣術に関しては私達地球人の方が上だった、というわけですね」




星人「んな!?」


穂乃果「よそ見しない!!」グサッ!


星人「ごオオ!!?」





穂乃果と海未にとってこの星人は全く相手にならなかった

適当に斬り合った後

あっさりと倒す


これがこの東京チーム、μ’sのミッションでよく見る光景である

二人で喋りながらは今回が初めてだったが

前回の秋葉原戦のような強敵以外はもうこのメンバーの敵にはならない





穂乃果「それで? ミッションが終わったら本当に沼津に行くの?」


海未「まさか、流石にドン引きされますよ」フフフ


穂乃果「良かった…ついに戦闘狂になったのかと思ったよ」ハァ




絵里「それを穂乃果が言う?」


穂乃果「ええ!?」


真姫「あんた達、もう少し真面目に取り組もうと思わないわけ? こっちは命懸けでやってるのに…バカみたいじゃない」ヤレヤレ



ことり「にこちゃん達の方はどうなったのかな?」


希「一応応援に……あれ?」ジジジジジ




穂乃果「あっちも終わったみたいだね――」






――

――――

――――――

――――――――



~さらに三年前 新宿~




花陽「――…あ…腕が……腕がああああぁぁぁぁ!!!!」


凛「かよちん落ち着いて!! すぐ止めるから!」



星人「おいおい、たかだか腕を斬っただけじゃねぇか。いちいち騒ぐなよ?」ヤレヤレ


にこ「このっ!」ギロッ




星人「そもそも嬢ちゃん、慣れない刃物を使うもんじゃ無いよ。それは素人が触っていい代物じゃ無い」


花陽「ハァ……ぐうぅぅ…痛い……」ズキッズキッ



星人「きちんと剣術でも教わっていたら…もう少し楽しめたんだがなぁ」





凛「に…にこちゃん、ヤバイよ! 何か作戦とか無いの!?」


にこ「そうね…一つだけ残っているわ」


凛「!? 早くそれをやろう!! 凛はどうすればいい?」






にこ「――…穂乃果か海未が呼べればベストだけど、誰でもいいから遠距離で戦えるメンバーを連れて来なさい」


凛「……は?」


にこ「こいつは私が相手をするから花陽を連れて助けを呼びに行けって言ってるの。バカなあんたでも分かる簡単な作戦でしょ?」



凛「あんな化け物一人で相手出来ると本気で思ってるの!?」


にこ「当然よ。勝つのは無理でも、“負けない戦い”なら出来るわ」


凛「でも……」




にこ「いい? このまま戦っても三人とも死ぬだけよ。でも一番動ける凛がすぐに助けを呼べれば逆に全員助かる」


凛「………」


にこ「分かったらさっさと行きなさい!! あいつの親切にいつまでも待っててくれないわよ!!!!」



凛「……うん、すぐに呼んでくるから……待ってて!!」ダッ!





にこ「……待たせたわね?」


星人「気にするな。ただ……あんなのが遺言で本当に良かったのか?」




にこ「遺言? 面白い冗談を言えるのね」フンッ


星人「その度胸だけは認めてやる。嬢ちゃん、名前は?」ニヤ






にこ「――…“矢澤 にこ”よ、よーく覚えておきなさい!!!」ダッ







――――――――

――――――

――――

――




星人「(あー…やっと思い出した。弱いハンターはすぐに忘れるんだが、こいつらは弱い癖に度胸だけはあったからな…記憶に残ってたんだな)」


星人「(確かあの後、矢澤は秒殺。逃げた二人にもすぐに追いついてぶっ殺してやったけな……今思い出しても本当に弱っちい奴だった)」


星人「(それが――)」





花陽「――…ふっ!!!」シュッ!





花陽は星人の刀による攻撃を全て捌き

空いたボディに凛が正確に打撃を与え

隙間から にこ のXガンが襲う


Xガンと刀による攻撃は絶対に受けるわけにはいかない

やむ追えず喰らう凛の打撃がじわじわと効いていた





星人「(合図も無いのになんつう連携だ!? それぞれがどんな攻撃をするのか完璧に分かっていやがる!?)」


星人「(このままじゃジリ貧だ……なら、遠距離から鬱陶しい攻撃をする矢澤から仕留める!!)」





花陽の斬撃を弾き、凛の痛打を歯を食いしばって耐え

にこ目指して素早く距離を詰める





にこ「……焦ったわね?」ニヤリ


星人「っ!!!?」グイッ





何かを感じ取った星人は強引に身体を横にする

その瞬間、星人の身体があった場所にガンツソードが飛んできた


先ほどまで花陽が握っていたガンツソードを投げつけたのだ

その弾道は正確に心臓を貫いていた

悔しさで顔を歪ませていた花陽が星人の目に映った





星人「(強引過ぎたか!? だがこれで奴は武器を失った。矢澤を倒せば次は――)」





――ガシッ!





星人「は?」チラッ





突如、腰に凛の腕が回された


花陽が刀を投げつけたと同時に

身を低くして星人に急接近したのだ


凛は背後から星人の脇下に頭を入れる

両腕で相手の胴に腕を回しクラッチして持ち上げ

そのまま後頭部を床に叩きつけた





凛「にゃああああぁぁぁ!!!」グオッ!





――ドゴ!!





星人「ゴはぁあア!!!?」





凛のバックドロップが決まり、星人は動けなくなった

花陽と にこ も近くに寄る





にこ「私がトドメを刺す。いい?」カチャ


花陽「うん。にこちゃんがやるべき事だと思うよ」


凛「早く終わらせてよね」




星人「あー待て、一言だけいいか?」


にこ「何?」



星人「刀の嬢ちゃん、しっかり剣術を学んだじゃねぇか。あの時とは別人だったぜ?」




花陽「当然です! 今日の花陽はいつもの三倍強いですから」エッヘン


星人「――…そうか、そりゃ勝てるわけ無いな」フフフ





――ギョーン!






~~~~~~



~ガンツの部屋~



ことり「――…なんか、拍子抜けだった気がする」


穂乃果「前回が強すぎたんだよ。今回だって決して弱くはない星人だったよ?」


海未「ええ、星人が私達を甘く見ていただけです」



にこ「あんたらが言っても説得力無いのよ!」


凛「でもことりちゃんの言う事も分かるにゃ。因縁の相手だった星人も大したこと無かったし…」


花陽「そうかな…花陽は余裕が無かったけど……」



にこ「そうは見えなかったわよ? 花陽だったら一人でも倒せたでしょうね」


凛「うんうん、かよちんは昔とは比べ物にならない程強くなってるよー」ニコニコ


花陽「そ、そうかなぁ…えへへ」





希「今回は誰も倒せんかったわ…無得点かぁ」ガッカリ


絵里「そうね、誰かさんが横取りしたせいでね?」チラッ


真姫「……悪かったわね」プイッ





全員の転送が完了し

ガンツが採点を始めた




ガンツ『ねこ(偽) 20点 TOTAL 98点』




凛「あの星人20点もあったんだね」


花陽「一体で20点の強敵だったってことなんだ」





ガンツ『白米さん 20点 TOTAL 88点』





花陽「…ふぅ」





ガンツ『にこ 50点 TOTAL 120点』





希「お、にこっち100点越えやん!」


真姫「どうするの?」




にこ「どうするって、再生する子もいないことだし二番しか無いでしょ? ガンツ、今すぐ用意しておきなさい」





ガンツ『まきちゃん 40点 TOTAL 113点』





希「あーあ、今回は稼げるミッションやったねー」ブーブー


真姫「もう! さっきから謝ってるじゃない!! 二番を今すぐ用意して」





ガンツ『エセロシア人 0点 TOTAL 97点』


ガンツ『ドム 0点 TOTAL 91点』





希「……ほーう、今回はドムかぁ。機嫌が悪いときに限ってそーいうあだ名をつけるか…」プツン…



絵里「ちょっ!? こんな所でZガンを撃たないでええええ!!!!」ガシッ


穂乃果「やばっ!?」ガシッ


にこ「抑えなさい!」ガシッ



希「放せえええ!!! 今回ばかりは許せんのやああああ!!!!!」ジタバタ





ガンツ『(・8・) 20点 TOTAL 98点』





ことり「毎回思うんだけど、これってなんて読むんだろう…」





ガンツ『園田師範 20点 TOTAL 101点』





海未「師匠の次は師範ですか。そんな器では無いのですがね。二番でお願いします」





ガンツ『ほのか 20点 TOTAL 75点』





穂乃果「これで全員終わったね。じゃあ帰ろっか」



ことり「そうだね! 急いで帰らなきゃ」


花陽「あぁ、そう言えば課題が終わって無かったんだっけ?」


ことり「そうなの!! お先に失礼しますぅ」バタバタ




凛「着替えないで行っちゃった…本当に焦ってるんだね」ギチギチ


希「痛い痛い痛いいい!!凛ちゃん絞まってる! 完全に決まってるからあああ!!」



絵里「見事なコブラツイストね…スーツで関節技が防げないのは驚きだわ」


にこ「……凛って最近、プロレス技にハマってるの?」


花陽「テレビで観てから色々練習してるみたい。誰で実験してるか分からないけど…」


真姫「………クシュッ」





ことり「――…あ、あの……」ヒョコ


海未「ことり? 忘れ物ですか??」


ことり「違うの。なんか、ドアノブが触れないんだけど…」


にこ「触れない? ミッションが終わったんだからそんな事あるわけ無いじゃない」


真姫「早く帰りたいのにそんなウソつくわけ無いでしょ」



穂乃果「………」


絵里「じゃあなんで――」






その瞬間、ガンツから再びラジオ体操の音楽が流れ始めた

今までに無いイレギュラー

ガンツの画面には『緊急』という文字が大量に表示されていく





希「な、何これ……」


海未「“緊急”ですか」



凛「これって……穂乃果ちゃん!?」


絵里「穂乃果は何か知っているの?」




穂乃果「うん、私は知ってる。これはみんなが居ない時に私が一人で二回経験した“緊急ミッション”だよ」




――part2へ続く


後書き

ここまで読んで頂きありがとうございました!
μ'sを主人公にした今作ですが、Apoursメンバーとは違った雰囲気が表現出来ていたでしょうか?
(希さんには悪い事をしちゃいましたが、決して嫌いなわけではないのでご了承ください…)

では、次回も読んで頂けると幸いです


このSSへの評価

3件評価されています


SS好きの名無しさんから
2017-01-29 00:12:47

SS好きの名無しさんから
2017-01-24 21:52:51

SS好きの名無しさんから
2017-01-24 05:59:07

このSSへの応援

3件応援されています


SS好きの名無しさんから
2017-01-29 00:12:49

SS好きの名無しさんから
2017-01-24 21:52:54

SS好きの名無しさんから
2017-01-24 05:59:01

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください