2016-11-16 19:21:09 更新

概要

続きです。今回は全部投稿しました


四章



静岡駅周辺で発生した無差別大量死傷事件

死傷者は今現在判明しているだけでも100人を超え

三年前の新宿の事件に次ぐ被害である


どの局のチャンネルもこの事件の概要や速報で持ち切りである




「おねーちゃん! 明日の仕込み始めるよー。早く来てよ!」




妹の呼び出しを聞き、居間のテレビでニュースを見ていた彼女は電源を切る



この事件の犯人が誰なのか

事態を終息させたのが一体誰なのか


彼女には見当がついていた




???「静岡チームも中々やるね。結構強い人が多いのかな?」




新宿の事件を経験した彼女にとって被害規模から犯人

いや、星人がどれほど強いか分かっていた


家族も多くの知り合いも

彼女が長年ある戦いに参加していることを知らない




「もう! 早くしてよーー!!」



「―――今行くよーー!」



サイドテールのその彼女は妹のいる調理場へ向かった――





――――――

――――

――


千歌(あの戦いの翌日、内浦は大騒ぎになった)


千歌(行方不明だった曜ちゃんと果南ちゃんが帰ってきたのだ。警察や先生に呼び出されて凄く忙しそうだったな)


千歌(今は放課後。今日はもう学校には来ないと思ったんだけど――)




曜「うぅ……めちゃくちゃ疲れたぁ」ガラガラ



千歌「曜ちゃん!」


梨子「お疲れ様。放課後だからもう来ないと思いましたよ?」


曜「あはは……ちょうど近くまできたからね。待っててくれてありがとう」


千歌「なんで梨子ちゃん、曜ちゃんに敬語なの? 同じクラスメイトなんだから普通にしゃべろうよ!」


曜「そうだよ! 千歌ちゃんの友達なら私の友達だよ?」ニコニコ



梨子「そ……そう? なら普通にしゃべります……しゃべるね?」


曜「その調子! よろしくね梨子ちゃん♪」




果南「お? 三人揃ってるね」ガラガラ


曜「あれ? 果南ちゃんももう終わったんだね」


果南「まあね。誤魔化すのにホント苦労したよ」アハハ


千歌「確かに……二人ともどうやって説明したの?」



曜「うーん…旅に出てたってゴリ押した」


千歌「えー、それは無いでしょ」ジトッ


果南「正しくは“覚えてない”でゴリ押したんだよね」




ダイヤ「――ここにいましたか」


鞠莉「オウ! 曜ちゃん、シャイニー☆彡」


善子「なんだ、結局学校で揃っちゃうのね」



気が付くと教室に部屋のメンバーが全員揃っていた




千歌「――なんか不思議な感覚だな」


ルビィ「千歌さん?」


千歌「だって最初は作戦会議も訓練も善子ちゃんと二人だけだったのに、今は9人もいるんだよ?」


善子「……仲間が多いとやっぱり心強いものね」



曜「私と果南ちゃんが復活したからにはもう大丈夫だよ! 大船に乗ったつもりでいてね」エッヘン


花丸「うーん……大船かぁ…」


果南「最近まで死んでた人に言われてもね…説得力が無いよ?」苦笑


曜「ぐふぅ……ごもっともです……」ズーン


千歌「アハハ……そろそろ行こうか」







~黒澤家~


ダイヤ「――早速ですが昨日の事について話して頂けますか?」



今回集まったのは千歌が曜に対して“ただいま”と言ったことについてである

今後の戦いに関して影響がある訳では無いが、その言葉の意味について

やはり全員気になるものがあった



千歌「えーと……何と言えばいいのか――」


曜「それについては私が説明します。千歌ちゃんはほとんど覚えて無いと思うから…」



曜「――千歌ちゃんは元々あの部屋の住人だったんです。この中では一番ベテランになりますね」



果南「私が初めて参加した時にはもう曜がいたけど、それよりも前にいたんだね」


曜「私は一年前、ちょうど中学を卒業した春休み中に事故に遭ってあの部屋に…」


曜「メンバーは私を含めて6人、その中に千歌ちゃんはいました」


曜「千歌ちゃんは中学二年生の時から参加してるって言ってました」



鞠莉「なるほど、だから三年前の事件を覚えてなかったのね」


梨子「解放される際、記憶は全て消されるものね」


曜「その時の千歌ちゃんは…それはもう強かったですよ? チームのリーダー的存在で……今まで私が知ってた千歌ちゃんとは別人でした」


曜「その時のミッションで100点を取った千歌ちゃんは一番を選んで解放されたんです」



善子「意外ね。千歌さんの性格なら曜さんが解放されるまで一緒にいると思ったのに」


曜「千歌ちゃんも最初はそうしようとしてたよ? でもこんな戦いをもう繰り返して欲しくなかったから私が無理やり選ばせたの」


曜「だから再生されて時、目の前に千歌ちゃんがいたのは本当に驚いたよ……」



果南「千歌があの時、武器の使い方が分かってたのも昔の感覚を体が覚えてたからなんだね」


千歌「武器を握ったら不思議と分かったんだ」


千歌「思い出したのは鞠莉さんの話を聞いたときだよ。新宿の事件を全く覚えて無かったから変に思って……いろいろ考えてたら少しだけ思い出したんだよ」




梨子「ねえ、千歌ちゃんが参加していたときのメンバーに黒澤姉妹や鞠莉さんはいなかった?」


千歌「うーん……思い出したのは昔あの部屋にいた事とメンバーに曜ちゃんがいた事だけだからな」ウーン


曜「私が来たとき、ダイヤさん達はメンバーにいなかったよ?」


梨子「そう……」


ダイヤ「千歌さんが指名されたのはあの部屋の卒業生だったからのようですが、私達の場合が説明できませんね……」



果南「指名?」


ダイヤ「善子さん以降のメンバーはガンツに指名されてあの部屋に転送されたんです。まあ花丸さんは違いますけど」


曜「ガンツに? でもそれって……」



梨子「――私が殺したの。家族を人質にとられてね……」


果南「!?」



梨子「私も昔似たような部屋のメンバーだった。場所は東京だったけどね」


曜「東京にもあるんだ…」




千歌「あのさ、東京チームには穂乃果さんがいたんだよね?」


ルビィ「穂乃果さん!? あのミューズの!?」グワッ


ダイヤ「本当なのですか!?」グワッ


梨子「うえぇっ!?」


花丸「二人ともミューズの大ファンだからね~」


千歌「この前調べたんだけど、今は実家の和菓子屋を継いでる。だからお店に行けば会えるはずだよね」


曜「会いに行ってどうするの?」


千歌「えーと……どうするって訳でもないんだけど、今後のミッションについて何かアドバイスをもらえないかなー……なんて」


梨子「確かに長年戦ってた人から話を聞けたら参考になりそうだけど…」ウーン


鞠莉「戦っていたのは三年も前よ? 今生きていたとしてもとっくに100点取って解放されてるでしょ」


千歌「私もそう思ったけどさ……私や梨子ちゃんみたいにもう一度呼び出されてるかもしれないし」


果南「でもどうやって確認するの? もし違ったらガンツに消されるんだよ?」



千歌「そこは大丈夫。でも…もしもの時の為に聞きに行くのは私一人で行くね」



ルビィ「ええ? 一人で行くんですか!?」


ダイヤ「……ガンツの判断基準が分からない以上、全員で聞きに行って違った場合、最悪全滅する可能性があるというわけですね?」


善子「それはちょっとリスク高いわね……」



花丸「でも、話をしに行くなら桜内さんがいいんじゃないかな? 昔同じメンバーなら顔を見た時の反応で分かるんじゃないかな?」



千歌「そうだね……でもいいや。一人で行くよ」


曜「………」



千歌「明後日が休みだからその日に行くね」


果南「まあ、気を付けて行ってきなよ?」


梨子「………」




――――――

――――

――


~翌日 浦女~


梨子「――こんな所に呼び出してどうしたの?」


曜「ごめんね? 昼休みに屋上まで来てもらってさ」アハハ…



梨子「それで? 場所を変えたってことは千歌ちゃん関連の事でしょ?」


曜「……昨日の千歌ちゃん、どうして梨子ちゃんを連れて行こうとしなかったと思う?」


梨子「………」


曜「花丸ちゃんの言う通り梨子ちゃんを連れていけば、ほぼノーリスクで有無が確かめられるよね?」


梨子「そうね……いくら何でも不自然だった」


曜「今朝聞いてみたんだけどさ、わざわざ数人で行く必要は無いとか、交通費が勿体無いとか無難な事しか答えてくれなかった」


曜「梨子ちゃんだったら何か分かるかと思ったんだけど……どう?」


梨子「普通に考えれば私に聞かれたくない事を聞くってことだもんね…」


梨子「あれから色々考えてみたんだけど…心当たりが全く無いのよ」ウーン


曜「そっか~…考えすぎなのかな??」ムムムッ




千歌「ああ! 二人ともこんな所にいた」ガチャ


曜「千歌ちゃん!?」


千歌「ひどいよ! 気づいたら二人ともいなくなってるんだもん!」プンプン


梨子「ご…ごめんなさい」アセアセ


千歌「――まあいいや、お昼食べよ!」




結局、千歌が何故誰も連れて行こうとしなかったのか

梨子と曜は分からないまま昼休みが終わってしまった


――当然である

千歌はウソをついている


そもそもいくら議論したところで

分かるハズがないのだから――






~放課後 松月~


花丸「んん~~美味しいずらぁ」ウットリ


善子「よくもまぁ毎回食べる量が多いわね…太ったんじゃない?」ジトッ


花丸「いつもの訓練で動いてるから大丈夫ですぅー」モグモグ


ルビィ「でも……授業終わってすぐにのっぽパン食べて、それからロールケーキも食べるのはちょっと多いんじゃ……」


花丸「むぅ、ルビィちゃんまでマルが太ったって言いたいずらか?」ムスッ


善子「まあ、後で困るのずら丸なわけだし~? 体重計に乗った時に『ウソずら~~!?』って絶叫しないことね」ニヤニヤ


花丸「ああ! なんか今の言い方、ちょっと馬鹿にしたね!」プンプン


ルビィ「ふふ…アハハハハ」


花丸「もう! 笑い過ぎだよ~」


ルビィ「アハハ……ごめんごめん。何だか幸せだなって思っちゃってさ」


善子「?」


ルビィ「だってね、いつ死んじゃうか分からない戦いを繰り返してるのに、こんな風に大好きな友達と楽しく過ごせるんだもん。これ以上の幸せは無いよ…」



善子「…普通の女子高生でこのやり取りに幸せを感じる子は稀でしょうね」


花丸「あんな部屋が無ければもっとよかったのに……」



善子「それは困るわ」モグモグ


ルビィ「ええ!? 善子ちゃんはあの部屋好きなの?」


善子「違うわよ。二人と違って私の場合、普通に事故で死んでるからあの部屋が無かったら今こうしてあなた達に会えてないの」


花丸「そっか……」



善子「それに……千歌さんや梨子さんの話じゃ、解放される時に消される記憶は部屋に初めて参加した時から解放されるまでの範囲みたいじゃない?」


善子「そうなると…みんなと一緒に過ごしてきた記憶も消されちゃう……そんな目に遭うくらいなら私はずっと戦い続ける覚悟よ」


ルビィ「善子ちゃん……」



花丸「……善子ちゃんはおバカさんなの?」


善子「はあぁ!?」


花丸「忘れるのが分かっているなら、ノートにメモを取るとかいくらでもやり方はあるでしょ?」ハァー…


善子「あ……その手があった」


花丸「――それに、記憶が無くなったって私達ならまた友達になれる。そこから思い出も新しく作り直せばいいずら♪」



善子「……そうね。なら花丸達にはキチンと迎えに来てもらわないとね。全部忘れちゃったら多分私から話しかけるなんて性格的に無理だと思うし」フフ


花丸「了解ずら!」ニコッ




ルビィ「よーし! 今日は追加でもう一個プリン食べちゃお」


花丸「マルも食べるー!」ワーイ


善子「ちょっ…あんたは流石に控えなさいよ……」






~同刻 生徒会室~


果南「――だあぁ! 課題が多すぎるよぉ……」グデーン


ダイヤ「仕方ないでしょ? 三か月近くも休んでいたのですから。遅れを取り戻す為にもしっかりやってもらわねばなりません」


果南「わかってるけどさー…でも少し休憩してもいいよね? 何だかんだ一時間近くやってたし」


ダイヤ「たかがその程度で休憩? 片腹痛いですわ!」グワッ


鞠莉「まあまあ、別に今日中に終わらせなきゃいけないものでも無いんだしー、そんなに怒らなくてもいいんじゃない?」


果南「ほらー! 鞠莉理事長もこう言ってるわけだしー」ブーブー


ダイヤ「くっ…! 仕方ありませんね」ぐぬぬ……



鞠莉「というわけで、二人にはおやつのプリンを持ってきましたー♪」


果南「おお! ありがとう鞠莉!」ニコッ


ダイヤ「これは…とてもおいしそうですわね」キラキラ


鞠莉「ふふーん! かなりいい店のプリンだもの?」ドヤァ




ダイヤ「ふう……満足ですわ~」ウットリ


果南「ホントに美味しかったよ!」


鞠莉「……よかったわ、本当に」


ダイヤ「? 鞠莉さん?」


鞠莉「果南が突然いなくなった時は…もうどうしていいか分からなかった。どれだけ調べても決定的な手がかりが見つからないんですもの」


ダイヤ「――まさか、奇妙な部屋でつい最近まで死んでたなんて思ってもみませんでした」ヤレヤレ


果南「あ…あはは……申し訳ない」



果南「――思ったんだけど、今まで死んでた私が奇跡の蘇生を遂げたのに二人とも意外と冷静じゃない?」


ダイヤ「そうですか?」キョトン


鞠莉「な~に? もしかして果南は私達に感動的で情熱的な反応をしてほしかったの?」ニヤニヤ


果南「……///」テレッ




ダイヤ「冷静と言えば、千歌さんの反応も意外と冷静でしたね?」


鞠莉「そう? 私達と違って涙も流していたじゃない」


果南「そうだ…私は泣いてすらもらえなかったんだ……」ズーン


果南「…まあ確かに意外だったな。千歌にとって曜は家族みたいなものだから再生されたときにもっと取り乱してもおかしくないよね」ウーム


鞠莉「それに、やっと会えたっていうのに最初の休日に一人で東京に行く? 私だったら一日中果南と過ごすわ~」


ダイヤ「どのような心境なんでしょうね……?」







~同刻 千歌の部屋~


曜「うだあぁぁぁ!! 終わらない! この量は終わらないよおぉぉ!!」ウガー


千歌「曜ちゃんうるさーい。愚痴っても何も変わらないよ」ペラッペラッ


梨子「そうよー早く今日の目標まで終わらせないと」ポチポチ


曜「へいお二人さん、漫画読んだりスマホいじったりしてるなら手伝ってくれてもいいんじゃない?」


千歌「えー、今いいところだから後でねーー」ゴロゴロ


梨子「まあ…その課題は曜ちゃんの為のものだからね」アハハ…


曜「ぐぬぬ…ごもっともです」



千歌「でもさー、二人とも今日泊まっていくんでしょ? だったらもう終わっていいんじゃない?」ゴロン


曜「確かに!」グワッ


梨子「はいはい、後もう少しなんだから終わらせよ?」


曜「むぅ…」ストン







曜「――よっしゃ終わったぁ!!」


梨子「お疲れさま。千歌ちゃん終わったみt……」



千歌「………zzz」



曜「ありゃ、寝ちゃったか……」ナデナデ


梨子「……こんなに可愛い寝顔の子があんなに強いんだから驚きね」




曜「そういえば梨子ちゃんは私と入れ替わりで転校してきたんだよね! 私がいなかった頃の話が聞きたいな!」


梨子「そうねー…多分私より善子ちゃんの方が色々知ってると思うんだけど――」





――――――

――――

――



千歌(――あれ? ここはどこ? 真っ暗でわかんないよ??)



『―目とも――――る……出―も多―』『い―――下が――! 時――――わ!!』『――かりして!! ――ない――歌ちゃん!!』



千歌(何…なんて言ってるの? 体も動かないし……どうなってるの?)




――――――

――――

――


千歌「―――はっ!?」ガバッ



千歌「ここって……ガンツの部屋」キョロキョロ


千歌「制服が畳んであるって事は…私はミッションが終わって帰ってきたってことだよね?」


千歌「ミッション中の記憶が無い…何と戦ってたんだっけ?」




――チン!



GANTZ『それぢは、ちいてんをはじぬる』




千歌「―――――……は?」



ガンツは採点を始めようとする

しかしこの部屋に帰ってきたのは千歌だけである


これが意味するものはたった一つである――




千歌「ちょっと待ってよ……みんなは? みんながまだ帰ってきてないじゃん!!」


千歌「――私だけ……私だけ生き残ったの?」ゾッ




ガンツは答えない

この球にそんな機能が備わっていないことは重々承知している


しかし、ガンツは普段とは異なる表示を出してきた



GANTZ『選んでくだちい

1. 記憶を消して解放される

2. このまま戦い続ける』





――――――

――――

――



千歌「――――……っ!?」パチッ


曜「お? 千歌ちゃんやっと起きたね」


梨子「途中で少しうなされていたけど、怖い夢でもみていたの?」



千歌「え? 夢? うーん……見ていたような見ていなかったような」ムムムッ


曜「お姉さんがご飯出来たって呼んでたよ!」


千歌「あ…なら行こうか」




このまま夢の内容を思い出すことは無く

三人は一夜を過ごした



翌日

千歌は二人に見送られながら

朝の早い時間の電車で東京、穂乃果がいる“穂むら”へ向かった








~正午前 穂むら前~



千歌「――……ここだね。このお店に穂乃果さんがいる」



入口の戸に手をかけるが千歌にとってそれは容易な事ではない

千歌には予感がしていた


もしこの店に本人がいて尚且つガンツの事を知っているならば

千歌にとって今後を左右する話を聞く事になる予感が


彼女の“記憶”がそう告げる




千歌(覚悟は……できてる)ガラガラ




店員「! いらっしゃいませ!」




店に入るとそこには可愛らしい女性の店員が迎えてくれた

顔を確認するがどうやら穂乃果ではない




千歌「あの…このお店に“高坂 穂乃果”さんはいらっしゃいますか?」


店員「穂乃果ですか? 少々お待ちください」



店員「おねーちゃん!! お客さんだよーー!」




店員は店の奥に向かって呼び出す


『今行く』という声が帰ってきてからしばらくすると

彼女が姿を現した




鞠莉から見せられた写真やスクールアイドル時代とは違い

トレードマークであるあの髪形はしておらず

髪も少し伸びている


何より活発的で元気全開な雰囲気だった当時とは一変

落ち着きのある大人の女性へと変わっていた




穂乃果「一体誰が来たって――!?」




千歌の顔を見た穂乃果は驚愕していた


千歌にとってこの反応は

穂乃果がガンツの事を

少なくともあの日のから今日までの記憶が確かにあるという

何よりの証拠であった




千歌「……“お久しぶり”です。穂乃果さん」






~穂乃果の自室~


穂乃果「――何年ぶりだっけ?」


千歌「新宿のミッション以来ですから…三年ぶりくらいですね」



穂乃果「あの時はまだ中学生だったんだよね……それがまあ立派に成長したね」ジロジロ


穂乃果「それに…“いい目”になったね。それなりの修羅場も仲間の死も経験してる」


千歌「…復帰したのは割と最近ですけど…昔よりも厳しいミッションばかりでしたからね」




穂乃果「それで? 何しにわざわざ私の所まで来たの?」


千歌「………」




千歌はメンバーに黙っていたことがあった

思い出した内容は一部ではない

本当は今まで消されていた内容の全てを思い出していたのだ



梨子は覚えていないが

あのミッションには千歌達のチームも参加していたのだ


その時、千歌はある質問を穂乃果にしていた

穂乃果はその質問に対し

「それを知る必要は無い、聞けばあなたは一生戦うことになる」

と答えていた




千歌「――あの時の質問の答えを聞きに来ました」






千歌「何故、私達は星人との戦いを強いられているのですか?」




穂乃果は千歌の眼を真っすぐに見つめる



穂乃果「覚悟は…出来ているみたいだね? なら…どこから話そうかな」ウーン




穂乃果「――あの黒い球が日本中に存在していることは知ってる?」


千歌「見た事はありませんが…沼津と東京にもあるくらいですから、予想はしていました」




穂乃果「なら、日本だけじゃなくて世界中に存在しているのは?」


千歌「!? 本当ですか!?」


穂乃果「長い事ミッションに参加してると他のチームと合同で戦うこともあるんだけど、アメリカや中国、ドイツのチームと一緒になったことがあるの」


穂乃果「ドイツのチームに黒い球に詳しい…いや、開発関係者がいてね。いろいろ教えてもらったんだ」


千歌「開発…あれって人間が作った技術なんですか!?」



穂乃果「そう。あの球や武器はドイツのとある企業が開発したもの。なんでも宇宙から設計に関する情報が送られてきたそうだよ」


千歌「宇宙…なら私達が今まで戦ってきた星人って……」


穂乃果「紛れもない、本物の宇宙人だよ。かなり前から地球に住んでいたみたい」



千歌「なら…私達はその宇宙人に侵略されない為に戦っているって事なんですか?」


穂乃果「違うよ。この戦いはあくまでも予行練習、訓練に過ぎないの」


千歌「あれが……訓練?」


穂乃果「近い将来、全人類を巻き込んだ大きな事件が起こるの。それが戦争なのか災害なのか、はたまた宇宙からの侵略なのか……」




穂乃果「彼らはこの日を『カタストロフィ』と呼んでいた」



千歌「…そのカタストロフィはいつ頃に来るの?」


穂乃果「残念ながら分からないの…明日かもしれないし一週間後、来年かはたまた数十年後かも」




千歌「そんな……」



穂乃果「でもね、これは最近知った事なんだ。あの時に話そうとした内容とは違うの」


穂乃果「――カタストロフィなんかより現実的でこれから起こる可能性が高い事実だよ」




――――――

――――

――


曜「そーいえばさ、梨子ちゃんもあの部屋で昔戦っていたんだよね? どんな星人がいたの?」


梨子「ええーと…実は思い出したって言っても、あの部屋にいた事とメンバーに穂乃果さんがいた事しか思い出せてないのよ。後は戦い方くらいしか……」


曜「そっか……沼津では魚っぽい星人が多いんだよね。だから東京ではどんなのが現れるか気になったんだけどなー」


梨子「確かに。千歌ちゃんもそんな事言ってた」


曜「あーあ、なんで私達を連れて行かなかったのかなー? 私達もこれから向かっちゃう?」


梨子「…見送ったばかりだしこれから準備すれば……」


曜「…やっぱ止めようか。きっと理由があるんだろうし…今日は梨子ちゃんとの親睦を深める日にするよ♪」


梨子「そうね。私も曜ちゃんと仲良くなりたいな!」ニコッ






――――――

――――

――



千歌「どういうことですか?」


穂乃果「“戦いを強いられている理由”に関してはさっきの話が有力。でもあの時はまだ違ったの」



穂乃果「千歌ちゃんが初めて部屋に来たとき、どうやって生き残った?」


千歌「それは…私より前から参加していた人から色々教えてもらって……」



穂乃果「――なら、その前から参加していた人は誰に教えてもらったの?」


千歌「そ……それは…あれ?」ムムムッ



穂乃果「つまりあの部屋には必ず一人は経験者がいるようになっているの」


穂乃果「その人数が下回りそうになると、解放されたメンバーに小さい黒い球が送られて、指定された人間を抹殺させる。全員の抹殺が完了すると持ち主も部屋へ転送させられる」



千歌「ターゲットにされる基準とかはあるんですか?」


穂乃果「話によれば、元メンバーや現メンバーのモチベーションを上げる人、知り過ぎた人なんかが該当するかな?」



千歌(ダイヤさんや鞠莉さんが選ばれたのはそういう理由なんだね)



穂乃果「このルールを覚えていてね? あの部屋では、不定期に緊急ミッションが実施されるの。頻度はかなり少なくて私もまだ二回しか経験していない」



千歌「普通のミッションとは何が違うんですか?」


穂乃果「まず敵がかなり強い。油断したら一瞬でやられる程にね。それをクリアすれば倒した人だけでなく生き残った人もとある二択を迫られるの」


穂乃果「“解放”か“残留”の二択をね」



千歌「緊急ミッションをクリアすれば全員が解放されるんですね! ならこの先も生き残ってさえいれば……」




穂乃果「でもね、黒い球に選ばれた一人の人間は強制的に残されるの。強制ミッション後は100点メニューからも一番が無くなっている」


千歌「え……つまり…一生戦い続けなきゃダメって事?」


穂乃果「そうなるね。死ぬかカタストロフィを迎えるまではあの戦いを繰り返す羽目になる」



千歌「………」


穂乃果「選ばれる基準は分からない。でも必ず一人は残される。この一人が生き残っている限り解放者からの再招集は無くなるよ」





千歌「…どうして当時は教えてくれなかったのですか?」



穂乃果「……あの時の千歌ちゃん、正義感が凄く強かったからね…誰かがやらなきゃダメなら自分がやるって感じだった。まだ中学生なのに死ぬまで戦いに参加する選択を選んでほしく無かった」


穂乃果「でも今は違う。一生を左右する選択はもう出来るはずだと思う…私がそうだったようにね?」




千歌「――私は…」


穂乃果「今決める必要は無いよ。もしかしたら緊急ミッションを経験しないまま解放される事だってあり得るからね。ただ頭の隅っこには置いておいてほしい」





穂乃果「――重い話はここまで。せっかく沼津か来てくれたんだから穂むらの和菓子をごちそうするよ!」ニコッ


穂乃果「雪穂―! 和菓子の在庫ってどのくらい残ってる?」ガラガラ



千歌「ふふ…大人な女性になったと感じたのは気のせいだったかな?」クスッ



千歌(緊急ミッションか…この話をみんなが知ったらどうするんだろう?)




解放を求めて戦っている人にとって必ず誰かが残らなくてはならないこの事実は

とても酷な選択となる


どのような順番で選択を迫られるのか

もし、どちらも解放を望むメンバーが最後の二人に残ってしまったら?


いくら仲が良くても争いが生れるだろう

罪悪感に襲われる者もいるはず



伝えるべきか否か

この選択は今後を左右する――






穂乃果「お待たせ! 取り敢えず“ほむまん”持ってきたよ」ドサッ


千歌「こんなに沢山! いただきま――!?」ゾクゾク




穂乃果「え? まさか…」



千歌「呼び出しみたいです…まだ数日しかたってないのに」ブツブツ



穂乃果「このタイミングなら残党狩りだと思う。前回の星人並の強敵は現れないとは思うけど油断はしないでね?」


穂乃果「お饅頭は箱に詰めておくから持って行ってね」


千歌「あ…ありがとうございます」アハハ…




千歌「帰りの交通費が浮いて良かったです。高校生にはちょっと痛い出費だったので」


穂乃果「あはは。ずいぶん前向きだね? さっきも言ったけど油断はしないでね」




――ジジジジ




千歌「転送始まりましたね……今日はありがとうございました」


穂乃果「うん。またね」フリフリ






――――――

――――

――



千歌(穂乃果さんに会いに行ってから一か月が過ぎました)


千歌(あの後ミッションは穂乃果さんの言っていた通り、まさしく残党狩りだったね。曜ちゃんと果南ちゃんの復帰戦のつもりで大体の星人の相手をしてもらったんだけど……)


千歌(二人は『リハビリどころか準備運動にもならなかった』って言ってたよ…どんだけ強いんだよ)アハハ…



千歌(穂乃果さんから聞いた話はみんなにしていない。緊急ミッションが来る前に100点を取ってもらうことにした。カタストロフィの方も…いつ来るかも分からない事を話すのは良くないと思ったからこっちも話してないよ)



千歌(今日は放課後に生徒会室に全員集まってるんだけど――)






曜「――ねえ千歌ちゃん、やっぱり何か隠してない?」


千歌「と……突然どうしたの?」ギクッ


曜「だって、東京から帰ってきてからずっと考え事してるじゃん? 表情だって暗い事が多いし……何かあったとしか思えない」


ダイヤ「前回も戦闘中、それに最近の訓練中だってボーっとしている事がありましたものね」


花丸「穂乃果さんから…本当は何を聞かされたの?」



千歌「前にも言ったけど、ガンツが日本だけじゃなくて世界中にあって宇宙人の侵略を防ぐために戦ってる事だけだよ?」アセアセ



鞠莉「………」



果南「ならさ、最近の異変はどういう事なの?」


千歌「それは…体調があまり良くないだけだよ。仲間が増えて気が抜けちゃったんだと思う。ごめんね?」



梨子「ホントに体調の問題なんだね?」ジーッ


千歌「……そうだよ」


ダイヤ「そうですか…どうやら私達の思い過ごしだったようですね」




ルビィ「じゃあさ! 今日はみんなで松月行かない? 今までみんな揃って行ったことないし……どうかな?」


花丸「行こう! 絶対に行くべきずら!」キラキラ


千歌「それじゃ、準備してみんなで行こうか」







善子「――ちょっといい?」


千歌「ん? どうしたの??」



善子「千歌さんが“何でもない”って言うならそれを信じるわ」


善子「この際だからはっきりと言うけど、私は千歌さんの判断なら絶対に従う。囮になれって言われればそうするし、死ねって言えば迷わず死ぬ」



千歌「ちょっ!? 本気で言ってるの?」


善子「……ちょっと盛った。流石に死ねって言われても死なない。ただね…千歌さんがあの部屋にいる限り私も一緒に戦うつもりでいるって事だけは伝えておく」



千歌「なら…次に100点取ったら私は一番を選ばないとね」フフフ


善子「頼んだわよ! 二番なんて選ばないでよね!!」




曜「二人ともー! 早くしないと置いて行っちゃうよーー!!」オーイ



千歌「……行こっか?」


善子「ええ」ニコッ






~夜 千歌自室~


千歌「やっぱ話すべきだったかなー」ウーン



千歌はベッドの上で寝転ぶ

松月で曜と果南の復帰を祝ったプチパーティーも終わり

9人の絆はより深まっただろう

……梨子と花丸はまだ溝があるが

これから仲良くなって欲しいと願う



この関係を崩したくは無い

失うわけにはいかないのだ



千歌「――なら、私は……」




――ゾクゾク!




千歌「……来たね。そろそろだと思ってたよ」




転送が始まる前にいつものスーツに着替え

準備は整った


各メンバーがあの部屋へ転送されてゆく――







~GANTZの部屋~


果南「千歌も来たね。これでいつものメンバーが揃ったけど…」


ダイヤ「今回も追加メンバーはいないようですね」



曜「まあ、9人もいれば十分だよ。あんまり多いと点数も稼げないし」グイグイ



準備運動をする曜と果南

落ち着きなく部屋をウロウロするルビィ

腕を組んで壁に寄りかかり目をつぶっている善子


それぞれが緊張をほぐすため何かしらやっている



そして、ガンツからいつものように音楽が流れ

今回のターゲットが表示された





GANTZ『てめえ達は今から

この方をヤッつけてに行って下ちい

天狗星人 特徴:つよい 好きなもの:うちわ 血 口くせ:ほーほー』




果南「今回は結構強そうな見た目だね」


千歌「関係ないよ。いつものように油断しないように戦おう」



ダイヤ「分かっているとは思いますが、危ないと思ったらすぐに下がりなさい! 決して一人で戦おうとはしない事。いいですね?」


花丸「了解ずら!」




――ジジジジ





転送が始まる――






~???~


曜「――ここは……どこだ?」



曜が転送された場所は見覚えのない場所であった

少なくとも内浦でも沼津でも無い

高い建物がたくさんある



千歌「――…うそ……ここって…」




気が付くと千歌も転送されていた

何かの看板を見て驚いている


しかし、他のメンバーが見当たらない

いつも全員同じ場所に転送されるはずなのに…



曜「千歌ちゃん? ここがどこだか分かるの?」




曜も千歌が見ている看板に目を向けた


その大きな黄色い看板には赤い色で『ラジオ会館』と書かれていた




千歌「――ここは…秋葉原なの?」







~秋葉原 神田明神~


善子「あれ? 鞠莉さんだけ?」


鞠莉「どういう事? みんなとは別々の場所に転送されたの?」



善子「そんな…今までそんな事なかったのに……」ゾッ


鞠莉「見た所…ここは神田明神ね。まさか静岡県から遠征するなんてね」




善子「……鞠莉さん」カチャ


鞠莉「……ええ」




もう既に二人は気が付いている

周囲には大量の星人が潜んでいる事に…




鞠莉「――二人で乗り切るしかないって事ね♪」グググッ



鞠莉は拳を強く握りしめる――






~音の木坂学院 教室棟三階~


ダイヤ「ルビィ! 構えなさい!!」カチャ


ルビィ「おねぇちゃん! この数を二人で相手するの!?」




黒澤姉妹も星人と対峙していた

人型や猛獣型の妖怪のような星人であった




ダイヤ「まずは…退路を作ります!!」ギョーン!ギョーン!








~UTX高校前~


花丸「――どうして桜内さんと二人だけなんですか」ムスッ


梨子(…非常に気まずい! どうして仲の悪い二人を一緒にしたのよガンツ!!)ダラダラ



梨子「そう言われてもね――っ!?」ゾワッ




梨子は花丸の背後から何かが振り下ろされようとしているのに気付いた


間一髪、花丸を突き飛ばす

気付くのがあと一瞬遅れていたら真っ二つにされていただろう




花丸「え? えぇ??」ドクンッドクンッ


梨子「文句は後で言って! もう囲まれてる!!」シュッ!




ガンツソードを構える梨子の目の前のには

両手に鎌を付けたヘビのような怪物が二匹


それが前後に現れたのだ――







~中央通り 末広町駅付近~


果南「――参ったなぁ…私だけか」ポリポリ



果南は大通りのど真ん中に転送されていた

しかもそこには大小様々な妖怪星人が退路を妨げるように居座っている

客観的に見ても一人で何とかできる数ではなかった


しかし、なぜか果南は不敵な笑みを浮かべていたのだ――




果南「うーん、少し大変そうだけど…“リハビリ”には十分かな?」ニヤッ




ソードを展開しゆっくりと軍勢へ歩みを進める


星人は果南から発せられえる独特な雰囲気に圧倒されていた





果南「――かかって来なよ? 来ないならこっちから行くよ!!」ガッ!





それぞれの場所へ、イレギュラーに転送された彼女達の

生き残りをかけた戦いが始まる――






――――――

――――

――


~ガンツの部屋~


とあるマンションの一室

この部屋にも黒い球が置かれている


ただし、ここは沼津ではない

東京である



ここでも今夜、星人討伐のミッションが開始されようとしていた


メンバーの召集は完了済みでターゲットの表示もされていた



???「天狗星人か……強そうだね」




ここには千歌達同様、9人の女性がいた



彼女達の中には千歌達の部屋には無い

黒い大きな武器を携えている者もいる


すでに準備はできていた




――ジジジジ




???「――さあ、行こうか」




9人の転送が始まった――






―――五章へ


後書き

Part5を読んで頂きありがとうございます!

会話のみの章でしたがいかがだったでしょうか?
次回は別々の場所での戦闘になるのでどこで誰が戦い、どうなっているのか
きちんと分かりやすく書き表せられるよう頑張りたいです

では、次の話も読んで頂けると幸いです!


p.s このシリーズを書くに時、終わり方を決めてから始めたのですが
今や三パターン程思いついてしまって……困った(汗)


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2017-03-25 21:39:06

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1: SS好きの名無しさん 2016-11-13 23:13:27 ID: 7P5q4N4t

待ってました!続き楽しみです!

2: SS好きの名無しさん 2016-11-14 02:54:48 ID: s6WWz-eq

だんだん世界観が広がって来て、回が進む毎にワクワクしっぱなしです
次回はついにあのチームの活躍が見れるんでしょうか
全く以て目が離せません!!!

3: SS好きの名無しさん 2016-11-17 22:49:15 ID: MWl1pzLD

三パターン全部やってくれても、ええんやで(ニッコリ

4: SS好きの名無しさん 2017-02-20 01:58:24 ID: kDAkL7J1

次も期待


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