2016-11-22 00:02:58 更新

概要

part6の後編です


後編



千歌「―――曜ちゃん! そのままことりさんをこの場から離して!」ダッ!




穂乃果と千歌は天狗との距離を詰める

曜は千歌の指示通り、ことりを担いで離れる



先ほど転送された装備によりかなり重厚な姿になった穂乃果だが

その見た目とは裏腹に、未着用時と全く変わらないスピードだった


千歌が天狗の初撃を刀で防ぎ

穂乃果が顔を地面に叩きつける




――ドゴ!!





通常のスーツでは考えられない威力だった

腕に付いたジェット噴射装置により加速されたパンチは

天狗の頭蓋骨をアスファルトごと粉砕する




一瞬の静寂――




しかし、頭部が破壊されたまま立ち上がる天狗

飛び散った頭部の破片が元の場所に集まり再構築されていく




天狗「いいパンチだ! まさか一撃で砕けるとはなぁ!!」



穂乃果「――再生するタイプか…厄介だな!!」ドゴッ! バキッ!




穂乃果は何度も拳を天狗の体に食らわせる

天狗の全身の骨はボロボロ

たまらずひざまずく


穂乃果は肘に付いた鋭利な刀で首を落とす

落ちた頭に手の平を向ける


そこには発射口があり対象を削り取る光線が発射される

光線により天狗の頭部は完全に消滅した




千歌(凄いな……私、必要無いじゃん)




千歌の言う通り、圧倒的な強さで天狗を追い詰める穂乃果に対し

加勢はむしろ邪魔になるだろう

穂乃果の方も、もはや千歌は意識の外にあるようだ



しかし、天狗はなおも立ち上がる

消滅した頭部も粉々となった全身の骨も治っている




天狗「面白い装備だな? 多用な武器が内蔵されているようだが……今ので全部か?」


穂乃果「…頭を潰しても消し去ってもダメ……なら全身を消滅させる!」




天狗と穂乃果は再び衝突する――






~~~~~~


学院の校庭ではルビィ、絵里と一体の星人が睨み合っていた

鷲のような風貌をした人型この星人は今回のボスでは無いが

それに近い強さを秘めているのは嫌でも感じ取れた



絵里「――ルビィさん…この星人を二人で倒すのは厳しいわ……増援が来るまで生き残る事だけ考えなさい」


ルビィ「………」ダッ!




絵里の指示を無視しルビィは犬神に突っ込む




――ビュオオォォ!!



辿り着く前に後ろに吹き飛ばされた


星人が手を横に薙ぎ払うことで生み出した風圧だけで

人が吹き飛ばされたのだ


余波で校舎の窓ガラスも全て割れる




絵里「くっ!!? ルビィ! 無事なの!?」


ルビィ「――大丈夫です! あの手には当たらない方がいいですね……」


絵里「…もう勝手に突っ込まない事。戦うなら二人でやる方がいい」


ルビィ「……増援が来るまで逃げるんじゃないんですか?」



絵里「そうしたいけどね……星人は私達を逃がさないでしょうね」




星人は二人に襲い掛かる

ルビィはXガンで応戦するもこのレベルとなると中々当たらない


絵里のガンツソードも全て回避される




「――――っ!!」シュッ!



星人の鋭い突きがルビィに突き刺さる

スーツの防御力により体に穴が開くことは無かったが

耐久値を一気に削り、無力化された


星人はトドメの手刀を繰り出すが絵里により防がれる

ルビィを担ぎ、一旦距離をとる




ルビィ「っ!! すいません……」ギリッ!


絵里「仕方ないわ…一撃でやられなかっただけ運がいい」




星人にはまだダメージは無い

絵里一人では手に余るが……





――ズドドドン!!




突如、星人が押しつぶされた

絵里が振り向くとそこには希達が増援に到着していたのだ




希「間に合ったみたいだね…ケガは無い、えりち?」


絵里「ええ…来てくれて助かったわ……」フゥー



善子「痛っ! とんでもなく痛いわ……」


鞠莉「ここにはルビィがいたのね……他に一緒にいたメンバーはいる?」


ルビィ「………っ」


鞠莉「ん? ルビィ??」



にこ「――にしても凄まじい威力ね? 見事にぺっちゃんこじゃない」スタスタ




にこは無意識の内に倒れた星人に近づいていく

いつもならあの銃を食らったほとんどの星人は死ぬ

希は念を入れて三発撃ち込んでいたので

間違いなく倒したと思っていた



――星人の指先がピクリと動いたのを善子は見逃さなかった



善子「――っ!!? 近づいちゃダメぇぇぇ!!!!?」



にこ「……は?」




善子は叫ぶがもう遅い

星人は右腕を振り上げ鋭い衝撃波を放つ


その威力はスーツの耐久を無視し

にこの左腕と少し離れていた希の右腕を肩から切り落とす




絵里「希!? にこ!!!?」ゾワッ



死んだと思った星人はよろよろと立ち上がる

全身血まみれとなっていたが

その表情は怒りに満ちている


あまりの激痛にうずくまる にこ

星人はもう一度右腕を振り下ろす――





――バキッ!





――凛の拳が星人の右腕をはじき、軌道をずらす

花丸がにこを抱えるのを確認し二人はみんなの所まで下がる




絵里「希! しっかりしなさい!! 今止血する!!」キュッ


希「うぅ……油断したわ……まさか生きてるなんて…」ドバドバ



にこ「全く……助けに来た二人が最初にやられるなんてね……」ハァーハァー


凛「花丸ちゃんも止血お願い!!」




怒り狂った星人は絵里達のもとへ襲い掛かる――






~~~~~~


曜はことりを建物の中に避難させた

消滅した足首の止血を済ませ、急いで戻ろうとする




ことり「――ちょっと待って! 曜ちゃんは誤解してるの!!」


曜「……誤解ですか?」



ことり「…穂乃果ちゃんは仲間を大切にしない人じゃない、むしろ凄く仲間思いな子なの

……」


曜「………」



ことり「昔の穂乃果ちゃんは凄く明るくて笑顔の素敵な子で……ミッションで誰かがケガをするたびに涙を流す優しい子だった」


ことり「でも…あるミッションで穂乃果ちゃん以外のメンバーが全滅したことがあったの……」



ことり「しばらくしてから私は穂乃果ちゃんに再生された。私は泣いて喜んだよ? また大好きな穂乃果ちゃんに会えたんだもん……でも穂乃果ちゃんは表情一つ変えなかった」



ことり「その後に再生したメンバーに対しても同じ……それどころか目つきも冷たくなっていた…」




ことり「――穂乃果ちゃんの心はあの時に壊れちゃったの……大好きだった人達を一度に全員失った悲しみに耐えられなくてね…」



曜「……だったら解放を選べば…部屋での記憶は消されるんでしょ?」


ことり「私達はあの部屋に行く前から友達だった。解放を選んでもメンバーを忘れることはできない……」


ことり「それに……穂乃果ちゃんの100点メニューに一番の選択肢が何故か無くなっていたの」



曜「選択肢が無い!? 人によっては無くなる選択肢があるんですか!?」


ことり「それは分からない……無くなっていたのはまだ穂乃果ちゃんだけだから。……あなたに想像できる? 大切な人を失い、この地獄からの解放も選べない……仲間が死んでは再生を繰り返していた穂乃果ちゃんの気持ちが…」



曜「………」


ことり「全部……私達が悪いの…私達が弱いばっかりに――」




曜「――だとしても、再生されるなら仲間ごと撃っていい理由にはならないし、そもそもそんなの仲間だとは思わない」


曜「穂乃果さんが辛い思いをしていたのは分かった。こんな地獄を五年間も経験していることも知ってる……」



ことり「よ……曜ちゃん?」


曜「本当に心が壊れたのなら今日まで生き残っていないし、そもそも仲間を再生したりしない……」



曜「――仲間ごと撃つように言ったのはあなた達ミューズのメンバーですね?」


ことり「!?」



曜「確かに穂乃果さんは強い、多少の犠牲を払ったとしても確実にミッションが成功するためには戦法として間違ってはいない……あの時は感情的に怒っちゃったけど、昔の穂乃果さんの性格からして最初から抵抗無しに仲間ごと撃つなんて出来るはずが無い」




曜「……本当に壊したのはあなた達だった、違いますか?」


ことり「それは……!」




曜「――まあいいです、私達には関係ないことですから。私は千歌ちゃんの所に行きます。ことりさんは待っていて下さい」


ことり「………」


曜「……穂乃果さんがどう思っているか、しっかり話し合ってください」




曜はそう告げ、建物を後にした







~~~~~~



真姫「――穂乃果から聞いたけど、私が死んだミッションの時に100点取ったらしいわね? あの戦いに生き残ったなんて流石ね」


梨子「…いえ、運が良かっただけです。あの時、皆さんがいなかったら今ここにいません」



真姫「私達もあれから色々あったわ……ずいぶんと長い事戦い続けてる。まあ穂乃果程ではないけどね?」


梨子「…私はあの時解放を選んで本当に良かったんでしょうか? 私が残っていれば……」



真姫「さあね? そもそも解放は穂乃果に勧められたんでしょ? ならあなたが気に病むことでは無い」


梨子「………」




真姫「あなたのチームの千歌ちゃん……少し気にかけた方がいいかもね?」


梨子「どういう意味ですか?」


真姫「あの子この前、穂乃果の所に行ったでしょ? 多分その時に何らかの重大な話を聞いているはずよ?」


真姫「――恐らく、今後あなた達も関係するであろう“何か”をね」



梨子「どうしてそう思うんですか?」


真姫「それは―――!?」ピピピッ




真姫の手首に付いた端末が鳴り出した




梨子「? それは何なの?」


真姫「ああ、ミッション中でも連絡が取れるように作った腕時計型の端末よ。いつも戦闘中に壊れちゃうからあんまり使えないんだけど……」



真姫「……梨子さん、ちょっとここにいて。今から建物の屋上に行ってくる」


梨子「屋上?」



真姫「―――援護要求がきたんでね?」カチャッ





~~~~~~


果南「――いやーー、あなた凄いね! 素人でも分かるくらい綺麗な剣術だったよ!!」


海未「いえ……むしろ、あなたの動きに驚かされました! 本当に我流なのですか?」




果南と海未により刀持ちの星人は倒されていた

海未の剣術と果南の圧倒的な運動神経の前に星人は太刀打ち出来なかった




果南「えへへ……取り敢えずここら一帯の星人は殲滅したけど…どうする?」


海未「……駅の方で大きな音がしていましたね。そちらには穂乃果とことりが向かっていましたが……私は一応そちらに向かいます」


果南「なら私も行くよ! あなたとは相性が良さそうだし」


海未「はい! では行きましょう!」ダッ!







~~~~~~



穂乃果「―――…ハァー……ハァー…ハァー…」



穂乃果は未だ天狗と交戦中であった

もう確実に十数回は殺しているが、その度に再生し立ち上がる

それどころか再生するたびに体はより筋肉質になり

今では出現当初より二回り大きくなっていた




天狗「うーむ……さすがに体力切れか? そろそろ刈り取ってもいいかのぉ?」


穂乃果「刈り取るだって? 散々私に殺されてるくせに……ずいぶんと上から目線じゃない?」イラッ



千歌(あれだけ倒しても復活する……再生制限は無いんだね)




千歌もただ二人の戦闘を見ていた訳では無い

天狗の攻撃パターンや再生速度等

様々な情報を分析し、撃退の手がかりを模索していた




千歌(急所への攻撃も、頭部の完全消滅も無意味……殺傷は無理って事?)




―――ゴシャ!





二人の拳が衝突する

ただ、まだ穂乃果の威力の方が強い

天狗の腕はグシャグシャになり後方に吹き飛ぶ



天狗「ほう! まだ力負けするのか」



穂乃果「――いい加減に倒されてよ!!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!




手の平から光線を連射する

星人はかわす素振りすら見せずに攻撃を食らう


光線は天狗の心臓や顔、腕を貫くがすぐに再生される





天狗「……さて、そろそろ頃合いかのう」




天狗は穂乃果に接近する




穂乃果「何度やったって同じだよ!!」



もう一度拳が激突する

…が、今度は穂乃果が力負けし腕がはじかれる




穂乃果「んな!?」


天狗「ほらほらぁ!! まだ終わらんぞぉぉ!!!」




チャンスとばかりに怒涛のラッシュ繰り出す


穂乃果の装備は通常のスーツより耐久性がはるかに高い

スーツでは一撃で機能が停止する攻撃もこの装備なら

余裕をもって耐えることが出来る


穂乃果も応戦するも徐々に装備の損傷が増す




――バキン!





穂乃果の顔を覆っていたマスクが壊される

その顔には多少の焦りの表情が浮かんでいた




天狗「―――トドメだ」




天狗の渾身のストレートを両腕でガードするも

耐久値の限界を超えた腕は崩壊し

穂乃果は後方の建物に突っ込んだ




千歌「穂乃果さん!!?」



天狗「……さて、次はお前なわけだが…あの女と同じ装備は無いのか?」


千歌「……生憎持ってないんでね。あるのはこれだよ」シュッ!




千歌はガンツソードを構える

天狗は少しがっかりした表情を見せた



天狗「やれやれ…せめて一瞬で倒され――!?」




突如、Yガンによるワイヤーにより拘束される



曜「よし!! このまま……」




しかしそう簡単にはいかない

力を込めた天狗は自力でワイヤーを千切り

拘束から解放される



天狗「ハァ!! 惜しかった――!?」



この一瞬を突き、千歌は天狗の右腕を切り落とす

天狗の蹴りは食らったものの

まだ無事である




曜「ごめん千歌ちゃん!! 少し遅くなった…」


千歌「大丈夫……それよりも穂乃果さんがやられた!」



曜「!? 死んだの!!?」


千歌「分からない……あの装備ごと中のスーツも壊れてた…あいつの本気パンチを食らった終わりだよ!!」



天狗「…さっきいた女か……逃げずに帰ってきたことは誉めてやろう」ニヤリ



曜「それはどうも! 絶対に逃げないから安心し……?」


千歌「――!?」




千歌と曜はある違和感に気付いた

穂乃果が強すぎるが故に見落としていた天狗の特徴

二人は目を合わせる




曜「……千歌ちゃん、あいつって再生する星人なんだよね?」ボソッ


千歌「そうだよ…曜ちゃんも気が付いた?」ボソッ



曜「だよね? なら確かめる必要がありそうだね!」


千歌「うん! 曜ちゃんは足止めお願い!!」ダッ!







~~~~~~



絵里「――さて、どうやって戦いましょうかね……?」シュッ!



鞠莉「銃なんか使わないでぶん殴って倒す!!」パシンッ


凛「あの羽……引き千切ってやるにゃ!!」



絵里「……見事に脳筋しか残ってないわね…」ヤレヤレ




先ほどの攻撃で腕ごと希の持っていた銃は壊されてしまった

三人の両足のホルスターにはガンツソードとXガンが入っており

絵里はガンツソードによる戦闘が得意だが

残りの二人はスーツによる格闘を得意とする



絵里「いい? あいつはかなり動きが早いわ。私の攻撃がかすりもしなかった……手刀による攻撃には気を付け――」




絵里が話し終わる前に二人は飛び出した

腕による攻撃に注意し

足や胴に少しずつダメージを与えていく


遅れて絵里も参戦

星人にとって打撃よりも刀の攻撃の方が致命傷となる

絵里の攻撃が二人の格闘攻撃をより生かす



――星人の裏拳が凛の顔面を捕らえた



凛「――っ!!!?」



大きく吹き飛ばされる凛




鞠莉「―――っ!!」バギッ!



鞠莉は凛を吹き飛ばした方の腕をへし折る


星人は一旦距離をとった





絵里「凛! 無事なの!?」


凛「ぐうぅぅ……大…丈夫……スーツは壊れちゃった…」




これで残るは二人

徐々に追い込まれていく……


――星人は翼を広げ鞠莉と絵里の頭上を越えていく




絵里「え!? なんで!?」ゾワッ


鞠莉「花丸! 善子! 気を付けて!!!」




星人は後ろにいる負傷者を先に仕留める事にした

そもそもこの星人にとって絵里達はどうでもよかった

ターゲットはただ一人

自分に大ダメージを与えた希だけだった




花丸「き…きたずら!!?」


ルビィ「花丸ちゃん! 武器を構えて!!」


希「あいつの狙いは多分うちや!! ケガ人連れて早く逃げて!!!」





「――大丈夫です。任せてください」





背後から声が聞こえてくる

振り返るとそこには――



ルビィ「――花陽さん!?」




花陽は腰のホルスターに手を置いている

まるで居合斬りのような構えで星人を待つ


星人との距離が2mを切ったとき――

星人は花陽から放たれる殺気に気付く




花陽「―――っ!!!!」シュッ!!!




目にも止まらぬスピードで繰り出された花陽の抜刀は

星人の両足を切り落とす

あと一瞬、感じ取るのが遅れていたら胴体が真っ二つにされていただろう


Xガンで追撃するも射程よりもはるか高い所まで飛んでしまった

どうやら上空で回復を待つらしい



鞠莉「あんな高さまで!? どうすんのよ!?」


花陽「………」


絵里「とにかく構えておきなさい! 次こそ仕留めるわ!!」スチャ





花陽「――もう大丈夫です。もう倒しましたよ」


鞠莉「……へ?」キョトン



花陽「10秒…経ちましたから」ニコ




上空で星人の頭部が破裂する音が校庭に響いた――






~~~~~~



真姫「――ふぅ、何とか当たったわね」




真姫はビルの屋上に立っていた

構えていた武器はXショットガンである


以前、善子が遠距離からの狙撃に使用したこの銃は

遮蔽物が無い限り着弾までに時間はかかるが数キロ先まで狙撃が可能である

真姫が立っているこの場所は校庭の上空を飛ぶ星人をギリギリ狙える

ただ一つの場所であった



花陽から連絡を受けた真姫はすぐさま狙撃ポイントに急ぎ

ひたすらその時を待っていたのだ


そして星人の姿がスコープに映った瞬間に狙撃

見事頭を撃ちぬいたのだ




真姫「多分誰かの手柄を横取りした形になったかもしれないけど……ま、いいか」




一仕事終えた真姫は梨子のもとへ戻る――







~~~~~~



絵里「――なるほど、真姫に連絡して狙撃してもらったわけか」フゥー


鞠莉「狙撃!? どっから狙ったっていうの!?」キョロキョロ


花陽「真姫ちゃんは凄いからね! 止まってる“的”なら数キロ先からでも狙い撃ち出来るんだ!」エッヘン



凛「何でかよちんが自慢してるのー?」アハハ


ルビィ「……おねぇちゃんはどうしたんですか? そばにいるって言ってたじゃないですか!」


花陽「ルビィちゃん……あのね――」





再び校庭に星人の群れが出現した

数はどんどん増えていく



絵里「……話は後ね。もうひと踏ん張りよ!!」







~~~~~~


穂乃果(体が……動かない…)



天狗によって吹き飛ばされた穂乃果は全身打撲と両腕の粉砕骨折という重症を負っていた

このミッションで再び戦うのはもう不可能であった



穂乃果(倒されれば倒された分だけ強くなるタイプだったか……多分倒そうとして戦うと一生勝てない)


穂乃果(私達のチームに“あの銃”を持っている人はいない…頼んだよ……千歌ちゃん――)







千歌「―――はああ!!!」ズバッ!




千歌はもう片方の腕を切り落とそうと刀を振る

しかし天狗は刀の軌道に自らの急所をねじ込んだ


当然、天狗は死ぬが―――




天狗「いかんいかん……つい足を滑らした。死なないと分かっていると動きが雑になる」



すぐさま再生

千歌の与えたダメージは全て治る


だが、今の再生で二人の違和感は確信に変わった




曜「―――千歌ちゃん!!」


千歌「うん! もう大丈夫……次で終わらせるよ!」



天狗「ほほーう…終わらせるか? 言っておくが、今のわしの攻撃を一発でも食らえば即死だが……分かっているのか?」ニヤリ



千歌「…そうだね。また再生させちゃったからより強力になったもんね……でも、当たらなければ問題無いよね?」フフ





天狗は二人との距離を一瞬で詰める

パワーだけでなく当然スピードも強化されている


――が、このスピードは想定内

二人は初撃をかわす



曜は後ろに下がりつつYガンを連射

今の天狗にはすぐさま壊される事は分かっていたが

少しでも動きが止められれば良かった


一発だけ命中

ワイヤーが天狗の体に巻き付く





曜「――そんな!?」ゾワッ




天狗は腕に少し力を込めただけでワイヤーを破壊した

もはや一瞬の足止めにすら役に立たない





天狗「――まずは一人」グワッ!



天狗に斬りかかろうとした千歌の刀を弾き

拳を千歌の腹に叩きこむ――



千歌はそのまま後方に吹き飛んだ




千歌「―――まだだ!!」ビュン!




後ろに飛ばされながらも持っていた刀を天狗の太もも目がけ投げつける




――グサッ!





見事命中、左の太ももを貫通した



天狗「はっ! ギリギリで後ろに飛んで威力を殺したかぁ!! だが、手応えはあったぞ!!!」




天狗の手応えは正しかった

即死は回避したものの、スーツの防御力を大きく上回る攻撃は

千歌の内臓に深刻なダメージを与えていた




千歌「ぐふっ! まだスーツは壊れて無い…まだ戦え――」ボタボタ




――グサ!




――天狗の右足の甲にガンツソードが投げつけられ

深々と突き刺さり地面と固定する

完全に不意攻撃にさすがの天狗も一瞬硬直した


千歌の背後から二人が猛スピードで駆け抜けた





果南・海未「「――――っシュ!!!」」




二人は天狗とすれ違いざまに両腕を切断

勢いそのまま、地面に体を引きずった



果南「――今だ! 撃って曜!!!!」



曜は二人が両腕を切断すると同時に発射していた

もうワイヤーを壊す腕は無い



天狗「!? この女どもがぁぁぁ!!!!」




千歌(穂乃果さんが……すぐにトドメを刺しちゃうから気が付かなかったけど…あいつの再生には特徴があった)ハァーハァー


穂乃果(恐らく…あいつに再生回数に限界は無い。何度だって生き返るだろう……倒すにはYガンによる転送しか方法は残っていなかった)




曜「――あんたが再生出来るのは“死んだ時”だけ。だから邪魔な腕は先に落とさせてもらったよ?」ニヤリ



曜は今度こそYガンの上トリガーを引く

断末魔と共に天狗の転送が始まった




海未「どうやら…役に立てたようですね?」


果南「着いたと途端、凄い形相で腕を斬ってって言われた時は何事かと思ったよ」フー



海未「――っ! 果南! もう一人の仲間の様子が!!?」






曜「――千歌ちゃん! もう倒したよ!! しっかりして!!」


千歌「……ハァー…ゴホッ! よ…曜ちゃん……やった……ね…」ニコ



曜「どうして転送が始まらないの!? 早くしないと千歌ちゃんが!!」ポロポロ


果南「千歌!? そんな……!?」ゾワッ



海未「……すいません、私は穂乃果とことりは……どうなったのですか…?」


千歌「大丈夫です……二人とも無事です……うぅ…」


曜「もうしゃべらないで! ガンツ!! 早く始めてよ!!!」





――ジジジジジ




果南「よし! 始まった!」


曜「!? 千歌ちゃん! 私達は先に帰るね! 待ってるから絶対に帰ってきてね!!!」ポロポロ



千歌「………う……ん」ニコ




手を握っていた曜が転送され

支えを失った千歌の手は力なく地面に落下した――






――

――――

――――――



~ガンツの部屋~



絵里「――今回はかなりの強敵だったわね…まさかZガンで倒せない敵がいるなんてね?」


希「まったくや……武器の過信は命とりやね」


にこ「ハァー…もうあの痛みは味わいたく無いわ…」




花陽「真姫ちゃん! 助けてくれてありがとう!」ニコ


凛「真姫ちゃんお手柄にゃ~」スリスリ


真姫「ウエェェ!? ま……私にかかれば何て事ないわ!」プイ




海未「二人共無事でしたか! 駆け付けた時にいなかったので心配しました…」


穂乃果「そっか……あの二人が倒してくれたんだね」


ことり「………」




曜『――だとしても、再生されるなら仲間ごと撃っていい理由にはならないし、そもそもそんなの仲間だとは思わない』


曜『……穂乃果さんがどう思っているか、しっかり話し合ってください』





ことり「――ねえ、穂乃果ちゃん…」


穂乃果「ん? どうしたの?」



ことり「――私と組んだ時に強い星人と戦う事になったら私ごと撃ってもいいよって提案したよね? あの提案…聞いた時に穂乃果ちゃんはどう思った?」


穂乃果「………」


海未「ことり!? あなたはそんな提案を出していたのですか!?」



穂乃果「――…別に、いい案だと思ったよ? じゃなかったらあの時撃ってないよ」


絵里「ちょっ…撃ったの!? ことりごと!?」


穂乃果「うん。だってことりちゃんが命懸けで作ったチャンスだったんだよ? あそこでためらったら…ただの犬死になってた」


穂乃果「それにもし…もしことりちゃんが私のせいで死んでも私が再生すれば問題ないよね。今までだってそうしてきたわけだし」



希「穂乃果ちゃん……」ゾッ


凛「確かにそうだけど……それって…」


真姫「………」




穂乃果「星人を倒さなきゃミッションは成功しない。その為にはどんな手段を用いても倒すしかないんだよ! ……だからことりちゃんの提案を採用した、それだけだよ」



ことり「……わかった、ならもう一つ聞くね?」




ことり「――穂乃果ちゃんが私に向けて撃った時、どう思った?」


穂乃果「は?」



ことり「私ね…穂乃果ちゃんに再生してもらった時、凄く嬉しかったの。穂乃果ちゃんの為なら、穂乃果ちゃんの役に立つなら自分の命を捧げてもいいと思ってた。だからあんな提案をしたの」


ことり「穂乃果ちゃんの心を壊したのは……私だったんだよ」



穂乃果「な…何を言ってるの? さっき言ったよね? ミッションの為ならどんな手段も……」


ことり「今はミッションとか義務感とか全部考えないで答えてほしい……穂乃果ちゃんの“こころ”を教えて欲しいの」





今まで見た事のない真剣な眼差しで見つめることり



穂乃果「それは……だから…――」



にこ「正直に答えなさい。隠さないで……全部しゃべっちゃいなさい」


真姫「そうよ。穂乃果は自分の気持ちを抑えすぎなの…このままだと本当に壊れて廃人になっちゃうわ!」



穂乃果「…いや……だからね……」



凛「教えてほしいにゃ! 穂乃果ちゃんの本当の気持ちを!!」


花陽「お願い穂乃果ちゃん!!」





穂乃果「………だから……」



希「…私達は仲間でしょ?」


海未「聞かせて下さい……あなたの心を」









穂乃果「―――――――――…いじゃん」




穂乃果「―――撃ちたいなんて思うわけないじゃん!!!」


穂乃果「だってことりちゃんは穂乃果の大切な親友だよ!? 生き返るからって自分の手で殺せるはずが無い!! 他のみんなだってそう! 撃てるはずが無いんだよでも仕方ないじゃん!!! 誰かがやらなきゃいけないんだもん!!倒さなきゃ終わらないんだもん!!! ほかに手が無いならやるしかないんだよ!!! だって穂乃果が……穂乃果がこのメンバーで一番強いんだから!! だから!!! ……だからぁ………」グスッ







穂乃果「――――――――――…穂乃果もう……戦いたくないよぉ……」ポロポロ




ことり「………」


海未「穂乃果……」



絵里「私達は…穂乃果に頼り過ぎていたのかも……ね?」


希「そうやね…何度も100点を取っているから慣れてると思い込んでた」


花陽「穂乃果ちゃんには……お休みが必要だと思う」




凛「あ! 穂乃果ちゃんの採点が始まっているよ!!」





ガンツ『ほのか 75点 TOTAL155点』



100点メニュー

1. 記憶を消されて解放される

2. より強力な武器を与えられる

3. メモリーの中から人間を再生する




穂乃果「え? どうして……」



海未「今まで消えていた一番が復活してます! 穂乃果…分かっていますね?」


ことり「一番だよ……穂乃果ちゃんはもう戦わなくていいんだよ…」



にこ「あんたがいなくてもこのメンバーなら大丈夫よ。…長い事地獄に拘束して悪かったわね……」


絵里「私達も今回のミッションで100点を取っているハズだから、穂乃果も一緒に解放されましょ?」



穂乃果「………ふふ、みんな…ありがとう」







穂乃果「―――二番、今すぐに用意しておいてね?」


ことり「穂乃果ちゃん!? どうして二番なの!!?」



穂乃果「……私は戦わなくちゃいけないの…」


真姫「説明してくれるわよね?」



穂乃果「この話をしたら……みんなも一番を選べなくなるかもしれない」


穂乃果「―――その覚悟があるの?」





――静寂が続く

穂乃果は全員がその覚悟があると理解した



穂乃果「わかった……これから話すのは近い将来起こる『カタストロフィ』についてだよ」








―――最終章へ


後書き

part6後編を読んでいただきありがとうございます!
前後編に分けたのですが、いかかだったでしょうか?
個人的には18人のキャラクターそれぞれに見せ場を作れた事に満足しています(笑)

この作品は予め結末を決めて書き始めたのですが…書き進めていく内に色々思いついてしまったんですよ
今回変な所で終わっているのは一応分岐出来るようにする為なんです!

これを投稿して少ししたら最初に考えていたエンディングを投稿します
…需要があればもう一つも書きますね


では、次の作品も見ていただけると幸いです!


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1: SS好きの名無しさん 2016-11-22 19:38:46 ID: WpxmmfiU

最終章がまちきれないよ!早くだしてくれ。


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