2017-03-08 00:27:28 更新


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――…五年前、スクールアイドルだった私はある日突然宇宙人との殺し合いに巻き込まれてしまった

私は星人がたくさんの人を殺している姿を目の当たりにして、怖くて何もできなかった

ただ、泣くことしかできなかった


何回かミッションをやっていく内に、戦う決心のついたメンバーが増えていった

私も何度も戦おうと思ったが、それは出来なかった




『私が戦うから無理をしなくていいよ』『かよちんは安全なところで待っていればいいにゃ』


そんな言葉を言われて、内心ホッとしていた

私が戦う必要は無い、痛い思いをしなくていい

それが何より嬉しかったからだ

今思えば、本当に最低だったと思う…



そんなある日、私を庇って海未ちゃんが死んだ

この部屋に来て初めてメンバーが死んでしまったのだ


何もしていない、役立たずの私を庇ったせいで


――私は自分の弱さを呪った




今度のミッションでは凛ちゃんとにこちゃんが私を逃がす為に犠牲になった

そこまでして生かされたのにもかかわらず、私も星人に殺された



薄れゆく意識の中、心の底から強くなりたいと生まれて初めて思った


――誰かに守られるだけではない、誰かを守る力が欲しいと




暫くして、穂乃果ちゃんに生き返らせてもらった

穂乃果ちゃんの友達でなければ、こんな役立たずが生き返らせてもらえる事は無いだろう

本当に感謝している


このままではいけない…

私はすぐに園田家の道場の門を叩いた


大切な人を守る強さを手に入れるために…


その為なら海未ちゃんの厳しい修行にも耐えられた

辛いと感じた事はあっても、辞めたいと思った事は一度も無い


弱い自分はあの時に死んだのだ






目の前の敵は今まで戦って来た中で最も強いだろう

恐らく二人が生き残るのは不可能だ

どちらかが犠牲にならねばならない


死ぬのは今でも嫌だ

でも、自分の無力さで仲間が死ぬのはもっと嫌だ


大切な人を守る為なら、命だって惜しくない

死ぬのだって怖くない




花陽(――…もう私のせいで仲間を殺させはしない……今度は私が仲間を守る番だ)




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千歌「本気で言ってるんですか!? 危険すぎます!」


花陽「大丈夫。絶対に当たらないように注意するから。千歌ちゃんはタイミングをミスしないようにしてね。多分チャンスは一度きりだから」


千歌「…っ。それに関しては問題ありませんが……」





花陽の作戦はこうである



まず、花陽が先行して敵に接近して、敵の針による突き攻撃を誘発させる

武器を手放し両手を自由にして星人が攻撃を繰り出した腕をそのまま掴み取ることで一時的に動きを封じ、その隙に星人の死角から千歌が飛び出して星人を切り倒す


持っている武器を手放すタイミングを誤れば針で体を貫かれるし、早過ぎれば攻撃の意思が無い事が見抜かれて千歌の攻撃は回避されて戦闘は長期化するだろう


花陽は自身に残された時間が少ないことは分かっている

何としてもこの作戦を成功させ、目の前の星人を倒す必要があった




花陽(大丈夫…全身痛くてたまらないけど、身体はまだ動く。私に倒す力が無くても、千歌ちゃんにあれば問題無い。これで確実に星人を仕留めるっ!)



花陽「――…行くよ、千歌!!」ダッ!


千歌「はいっ!!」




作戦通り、花陽が先行し星人に接近する

五メートル…四メートルと近づき、あと一歩で刀の届く距離になろうとしていた




花陽「っ!!!?」グサッ!




その瞬間、星人は予想外の攻撃を仕掛けてきた


まだ針の届かない距離にもかかわらず、素早く左拳を突き出す

その勢いで針先を発射させた


しかし花陽は回避も防御もしなかった。その針は右わき腹にグサリと突き刺さるが構わず突っ込んだ




そして最後の一歩を踏み出し、星人へ斬りかかる


後は武器を手放すタイミングだけだったが……




星人が最小限の動きで繰り出される最速の攻撃は人間の動体視力で捉えられる速度を超えていた


その拳は掴む間もなく、花陽の腹部に直撃する


口元や傷口から血が溢れ出る




花陽(…やっぱり見えないですよね。針を飛ばしてくるとは思いませんでしたが、急所に当たらなければどうでもいい…最初からこの瞬間を待っていましたよ!!)ガシッ




花陽は引き抜こうとしている腕を掴み取った


驚愕の表情を見せる星人に花陽は不敵な笑みを浮かべた





花陽「ふふ……捕まえましたよ? これで…終わりです」ニコッ





――グサッ!





花陽の背後から飛び出した千歌が星人の腹部に刀を突き刺した




千歌「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」




刺したまま捻じ曲げて刃を上に向け、そのまま一気に斬り上げた


後ろに倒れた星人の頭部をXガンで破裂させ、完全に沈黙させた





千歌「はぁ…はぁ……。やった、やりましたよ花陽さん! 二人の力で倒せたんですよ!! ……花陽さん?」


花陽「……っ」ボトボトッ




もう、限界だった

致死量を遥かに超える毒と内臓を傷つけられたことによる大量出血で立っている事すら出来なかった


先ほどまでの激痛はいつの間にか消えていた

あらゆる感覚が徐々に消えていく…


千歌が必死で何か叫んでいるのが薄っすらと見えるが、聞き取る聴覚は既に失っていた





花陽(ああ…私、また死ぬんだ。三回目だけど、この感覚は慣れないものだね…。覚悟していたからそこまで怖くない…かな?)


千歌「――――っ!!! ――!!!」ポロポロ


花陽(そんなに泣かないで? 遅かれ早かれ毒で死んじゃう事は分かっていたからこんな無茶したんだよ。千歌ちゃんだって私の様子を見て薄々分かっていたよね?)


花陽(この前、凛ちゃんにあんな事言ったばっかりなのに…。きっと悲しむだろうなぁ……ごめんね、凛ちゃん…私はダメだったけど、きっと生き残ってね?)


花陽(――…ただ………もう一度だけ……凛ちゃんに逢いたかったな。暫く居なくなる……けど…、元気で……い………て欲し…い……な)




花陽「」ガクン


千歌「う…そ……花陽……さん。死なないでよ…置いて行かないで下さいよ……うぅ」ポロポロ


千歌「ぅぁあぁ…あああああああぁぁぁぁ!!!!」






―――小泉 花陽……死亡






~~~~~~




凛「か……はぁ……」ドサッ


希「凛ちゃん!?」




力尽きた凛はその場に倒れた


希が確実にYガンを命中させられるようにする為、重症を負いながらも一人、囮役として戦い続けていた


しかし、痛み止めは傷を治す薬ではない

折れた肋骨により、まともに呼吸が出来なかった


ほぼ無呼吸状態での戦闘など長く続くわけも無く、星人を二体転送した時点で動けなくなった


痛み止めも効き目が薄く、痛みと呼吸困難で意識は朦朧としている




希(このままじゃマズい…星人を全員ウチに引き付けなあかん!!)


希「凛ちゃん! しっかりしい!! そのままだと死んじゃう!!」


凛「」






――――――――――

――――――――



あー、しんどい

どうして凛はこんなしんどい思いをしながら戦っているのさ?


そもそも肋骨を砕かれているんだよ。ちょっと動いただけ、息するだけでも死ぬほど痛いのに痛み止めまで注射して戦うとか頭おかしいでしょ!?


凛は一体何を考えているのか…自分でも分からないにゃ



…しかもその痛み止めすらあんまり効果が無いし

真姫ちゃん絶対許さないにゃ


あーあ、折角生き返ったのにまた死んじゃうのかー

死ぬならこんなに苦しまないで、もっと楽に逝きたかったなー…




『…凛ちゃん?』



にゃ? この声は…かよちん??



『凛ちゃんに訊きたい事があるんだけど、いい?』



これは…一昨日の会話だね

ええっと…何を話したんだっけ?




――

――――

――――――



凛『どうしたの?』


花陽『あのさ…この前貸した心理学のノートはどうなったの? ちゃんと写した?』


凛『あ…すっかり忘れてたにゃ』ダラダラ


花陽『やっぱり…必修科目なんだからちゃんとやらなくちゃダメだよ。ただでさえ留年しているんだから後が無いんだよ』


凛『ぐっ、耳が痛いよ…あの教授の授業は必ず眠くなるからなぁ』ムムム


花陽『だから私が代わりに全部ノート書いているんだよ。一緒に授業受けてるの凛ちゃんしかいないんだから頑張ってよ? 一人で授業受けるのなんて寂しくて辛いんだからね…』グスン


凛『わ、分かってるよ! もう かよちん 一人で授業受けさせないから泣かないで!?』アワアワ


花陽『お願いだよ? 訓練が厳しいのは分かるけど本業は勉学なんだからね。ノート早く写して返してよ』


凛『はーい。今日中に写すからもう少し待ってて!』





――――――

――――

――



――…あー、そう言えば かよちん とそんな会話してたな

しかもノートまだ書いてないし…って、なんでこのタイミングでこんな事思い出しているの? もっと他の事思い出そうよ…


このまま凛が死んじゃったら、かよちんは一人で講義を受けるんだよね

また寂しい思いをさせちゃうのか……



――それは嫌だな

凛が死んでいた期間、何度も泣いていた事は千歌ちゃんから聞いている

これ以上、凛のせいで かよちん を悲しませるわけにはいかない

かよちん にはいつも笑顔でいて欲しいんだよ


それに借りてるノートだって返さないと かよちん が困っちゃうもんね?

だから、こんな所で死ぬわけにはいかないにゃ!




凛(原点を思い出せ…。凛は、かよちんの笑顔を守る為に強くなろうと決意した。だからこんな星人さっさと倒して、合流するんだ!!)




――――――――――

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凛「……ん…かはぁっ……」パチッ




再び意識を取り戻した凛の目に入って来たのは、星人の巨大な爪に挟まれている希の姿だった


凛の時とは異なり、脇腹ではなく、両腕で押しつぶされないよう必死に抵抗している

スーツは通常時の数倍膨れ上がっており、表面には無数の筋が浮かび上がっていた

フルパワーで抵抗しているにもかかわらず、徐々に爪が体の方に近づいている




凛(このままじゃ希ちゃんが死んじゃう!? 何とかしなくちゃ…)グググ


凛(痛っ~~~!!!? さっきよりすごく痛い! 少しでも力を入れるとダメだ…)


凛(…こうなったら、真姫ちゃんから貰ったこの薬を使うしか……)ゴソゴソ




――――――




真姫『いい? この薬は痛み止めより強力なものよ。投与すれば瞬時に全身の痛覚神経のみを完全に停止させるわ。お腹に刃物が刺さろうが、四肢をもぎ取られようが痛みを感じる事は無くなる』


凛『ふーん…そんなに凄い薬なんだねぇ』


真姫『ただし効果は数分間のみ。効果が切れれば本来感じるはずだった痛みが一気に襲ってくるし開発されたばかりの新薬だから副作用もどんなものが発症するか予想も出来ない』


凛『なら使わなきゃいいんでしょ? 前に貰った痛み止めもあるし、こんな薬いらないよ』


真姫『痛み止めだって必ず効くわけじゃないわ。急いで逃げなくちゃいけない場面で痛くて動けませんじゃマズいでしょ? そんな時に使うのよ』


凛『なるほどね~』


真姫『分かってるとは思うけど、戦闘続行の為に使うのは駄目よ。傷を治す薬じゃないんだからケガをしたまま無理をすればその分の代償は大きい…最悪死ぬことだってあるんだからね!』


凛『分かってるよ。痛くて戦えない時は素直に大人しくしてるにゃ』




――――――




凛(危ない薬なのは分かってる。でも、このまま何もしないで二人とも死ぬくらいなら……)




――プシュ




希「ぐっ…ぐうううぅぅぅぅ!!」キュイィィィン!!


希(な、なんちゅう力や!? 全力を出しているのに押し返せない!!?)


希(スーツも壊れる寸前や…ここでウチは死ぬの?)



凛「――んにゃああ!!!」グシュッ




凛は希を拘束していた星人の眼球に指を突き刺した


全身を硬い甲殻で覆われているが、目は守られていない

凛の不意打ちの目潰しに怯み、拘束が解かれる




希「凛ちゃん!? どうして動けるん!!?」


凛「そんな事はどうでもいい! Yガンはどうしたの!?」


希「あの星人の足元や!」




それを聞き、凛はYガン目がけて駆け出した


痛みは薬により感じていないが、相変わらず正常な呼吸が出来ない

酸素不足で頭はくらくらするし、吐き気も酷い


それでも凛は止まらなかった


星人の攻撃をスライディングで回避しつつ、Yガンを回収

射撃が苦手の凛でもほぼゼロ距離ならば外さない


射出したワイヤーで拘束し、すぐさま転送を開始した




凛「はぁ…はぁ…。これで最後だよね…?」


希「う、うん。それよりどうして動けるの? こう言っちゃ悪いけど、死にかけの状態だったよ…ね?」


凛「これを使ったんだよ」スッ


希「え?! それって…本当に使っちゃったの!?」ゾワッ


凛「……」


希「凛ちゃん?」




凛(あー…目がぼやけてきたにゃ。頭もクラクラするし、これが副作用ってやつかな? 意識も…だんだん……とお……く………)バタッ


希「え、えっ!? しっかりして!! 凛ちゃん!! 凛ちゃんってば!!」ユサユサ




―――星空 凛……戦闘不能





~~~~~~



絵里(ぐうぅぅ…胸が、心臓が痛い。腕も明後日の方向に折れ曲がったし…本格的にやばいわね。っていうか、時間の流れがやけに遅いわね。直撃した鉄球が中々落っこちないし)


絵里(この、なんて言うか思考が加速しているこの感覚…これで二度目ね。間違いなく死ぬわね)


絵里(もう…真姫もにこも、そんなに悲しい顔しないでよね? これは命懸けの戦いなんだから死人が出るのは当たり前。今回は私だっただけなんだから)


絵里(ただ、このままやられるのも何だか癪ね。今、正確に敵の位置を把握しているのは私だけ)


絵里(胸を潰されて呼吸が出来ない…さっき叫んじゃったからもう声を出すほど息が残っていない。どうやって伝えるか……)




絵里「――――っ」パクパク


真姫「っ!!?」



絵里(ふふ……伝わったかしら?)


真姫(前方のタワー屋上!? あんなところから攻撃しているの!!?)




絵里の口の動きを読み取り、敵の大体の位置を知った真姫はすぐに銃を構える

スコープに映った星人は腕の下から羽が生えた鳥の様な姿をしていた


鉄球を握り締め、既に次の攻撃の準備に入ろうとしていた




真姫「間に合えええぇぇぇぇ!!!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!




真姫の放ったXショットガンで仕留めた頃には星人は持っていた鉄球を投げ終わっていた

それが一体何を意味するのか…




真姫(だ、大丈夫よ…星人は素手で投げていたんだから必中なわけがない。あの投球は絵里に当たっていない…)ガタガタ


にこ「ま…真姫……ちゃん。え…えり……絵里が…」


真姫(な、何を言ってるのよ……真姫ちゃんが速攻で狙撃したのよ? 間に合わないハズが無い。絵里は無事よ…そうでしょ?)チラッ




真姫は銃を下し、ゆっくりと絵里の方を向く


絵里は薄っすらと目を開けたままその場に立ちすくんでいた

ただ、その胸の中心部…ちょうど心臓がある位置にぽっかりと大きな穴が開いていた

星人の投げた鉄球は寸分の狂いも無く、絵里の心臓を貫いたのだ


絵里は真姫達の方へ顔を向け、弱々しく微笑むと…膝から崩れるようにその場に倒れ込んだ




真姫(う…うそ……絵里が死んだ? 間に合わなかったの? なら私のせいで絵里は死んだ?? どうしよう…どうしようどうしよう――)ポロポロ


にこ「真姫!!!」


真姫「っ!?」ビクッ


にこ「敵がまた来てる。逃げるの? 戦うの? どうするのよ!?」


真姫「え、ええっと……その…」ワナワナ


にこ「いい? 絵里が死んだのは真姫ちゃんのせいじゃない!! 絵里の為に今できる事はこの戦いで生き残る事だけよ。ここで私達が死んだら、誰が絵里を生き返らせるのよ!?」


真姫「にこ…ちゃん」


にこ「しっかりしなさい。私一人じゃ生き残れない…真姫の力が必要なのよ」


真姫「……そうね。絵里の犠牲を無駄にする訳にはいかない。こいつら全員倒してみんなと合流するわよ!!」


にこ「了解よ! 援護は任せた!!」ダッ!






―――絢瀬 絵里……死亡




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『海未 vs キマイラ星人(ベース:ハナカマキリ)』




海未は穂乃果の腕を斬り落とした星人を前にしているにも関わらず、自分がとても冷静に戦えている事を自覚していた


スーツを容易く切り裂く鎌を刀で正確に弾き続ける

一撃でも食らえば即死という極限の緊張感の中、海未には攻撃の軌道がハッキリと見えていたのだ




海未(不思議な感覚ですね…穂乃果を傷つけられて怒り狂うと思っていました。星人も私と同じ二刀流。とても激しい攻撃ですが…っ!!)




――スパッ!




海未の一太刀で星人の片方の腕を斬り落とす

星人は堪らず後ろに飛びのいて距離を取ったが…




海未「逃がすと思いますか!!」ダッ!


星人「っ!?」ゾワッ




一瞬で距離を詰め、トドメを刺しに行く




~~~~~~



『穂乃果&ことり vs キマイラ星人(ベース:アシダカグモ)』




この星人の特徴は何といっても圧倒的な瞬発力、反射神経、筋力である。そして体と顔には空気の僅かな変化から敵の動きを先読みできる体表の毛と8つの目が備わっている


穂乃果達と遭遇する直前までアメリカチームの手練れ二人を相手し、無傷で倒すほどの戦闘力を誇っている


対する穂乃果は先ほどの奇襲により、左腕の肘から先を失っているので本来の力を十分に出せる状態では無かった


無いハズだったのだが…




穂乃果「うりゃあぁぁ!!!」ブンッ!


星人「!?」ブシュッ!




星人の棍棒による攻撃を全て片手に握った刀で受け流し、足による格闘術を交えながら着実にダメージを与える


片腕を失った人間が行える動きでは到底ない


援護に向かった ことり だったが、今の穂乃果に対してそれは足手まといにしかならない事をすぐに悟った


とは言え、もしもの為に備えてZガンでロックオンし続けており

いつでも援護できる態勢は一応整えている




ことり(だ、大丈夫なの…? 止血はしたけれど、傷口を塞いだわけじゃない。無理して動き続ければまた出血しちゃうよ)アワアワ




――ヒュン




星人「!!」グサッ!


穂乃果「うおお!? 何だ!!?」ギョッ




突如、星人の頭部にガンツソードが突き刺さった

飛んできた方向を向くと、ゆっくりとこちらに歩いて来る海未の姿があった




穂乃果「ちょっと海未ちゃん! いきなりあんな物投げつけないでよ!! 私に当たったらどーするのさ!?」プンプン


海未「当たらないタイミングで投げたんですから問題ありません。そもそもなんで穂乃果が一人で戦っているのですか? まともに戦える体じゃないでしょう!」


穂乃果「だって銃が当たるタイプじゃ無かったんだもん。接近戦ならことりちゃんより私の方が強いから任せてもらったんだよ」


海未「だとしても、ことりと協力して戦いなさい! 出血死したいのですか!?」


ことり「穂乃果ちゃんはケガ人なんだから、今回は大人しくしておこう?」


穂乃果「むぅ…でもさぁ――」




――バリバリバリ!!




ことり「きゃああ!!!?」バンッ!


穂乃果・海未「「!!?」」




電撃が直撃し、ことりが持っていたZガンがいきなり大爆発した

スーツは故障しなかったが、武器は使い物にならなくなった


三人の前方には攻撃をしたであろう星人が立っていた


その見た目は今までの星人と異なり、金髪で白人の様な風貌で人間と区別がつかない程である


突き出した指先からはバチバチと電気が帯電しており、もう片方の手には大きな両手剣を携えている






海未「大丈夫ですか!?」


ことり「だ、大丈夫! 100点の武器は壊れちゃったけど…」



星人「No way….I was surprised to defeat him」


穂乃果「流暢な英語だね…。地球の言語を理解できるタイプの星人となると相当厄介だね」


海未「電気を操る能力ですか。それに、あの武器…間違いなくスーツでは防げないでしょうね」


星人「33? Xzgjw@kiy:@sfbsf@t@at@4kt」


穂乃果「え? 今なんて言ってた??」


ことり「全然分からないよ…?」


星人「jw…3……あー、発音はこんな感じか? 伝わっているか?」


海未「…日本語も理解しているのですね」


星人「一応訊くぞ? 抵抗しなければ楽に殺してやるけど、どうする?」


ことり「…だってさ。どうしよっか?」


海未「宇宙人でも面白い冗談を言う方がいらっしゃるんですね」カチャッ


穂乃果「取り敢えず二人で斬り込もうか。ことりちゃんは援護をお願い」シュッ


ことり「任せて! ……二人とも気を付けてね」





『ことほのうみ vs キマイラ星人(ベース:???)』




先に仕掛けたのは星人の方だった

一瞬で距離を詰め、穂乃果の首筋目がけて剣を振り抜く



海未「――っ!! 穂乃果!!!」


穂乃果「――――ッウ!!」ギリッ!




――ギギギギッ!!




穂乃果は真正面から受け止めるのではなく、刀で滑らすように軌道をズラして防御する


初撃を防がれ、星人に隙が生れた

海未はすかさず斬りかかる



海未と穂乃果の巧みなコンビネーション攻撃に星人は感嘆の声を漏らした




星人(あの二人を倒しただけの実力はあるな。特に片腕の女…俺の斬撃をここまで正確に捌くとはな。少しでもタイミングを外せば軌道をズラせずに真っ二つにされるというのに、当たり前のようにやってのけていやがるぜ)キンッ!ガキンッ!


星人(二刀流の方も巧いな。俺でも“今は”二刀をここまで操れない。こりゃ、無傷で勝つのは厳しいかな?)ギギギッ!



穂乃果「ッ!! 海未ちゃん!!」


海未「とったあぁぁ!!」シュッ!




――ザシュッ!




海未の渾身の一太刀が星人の体を切り裂いた


手応えは十分であり、刃先は心臓まで確実に達している深さであった


――…しかし




星人「――ほぉう」ニヤッ


海未「うっ!!?」ゾワッ


穂乃果「海未ちゃん!!」ドカッ!




星人は海未の斬撃をものともせず、剣を振り下ろす


予想外の攻撃に硬直した海未を穂乃果は蹴り飛ばす


直撃は避けられたものの、剣先が左目を掠めた




海未「ぐぅ…! め、目が……」ボタボタ


穂乃果「ごめん! 間に合わなかった…」ギリッ


海未「いえ、おかげで死なずに済みましたよ。ありがとうございます。…それよりもあの星人ですが」


穂乃果「再生するタイプだね。しかも、傷が入った瞬間に即時再生する」


海未「確かに心臓を切り裂きました。それでもダメならば頭を斬るしか――」




――バン!




穂乃果「えぇ!? いきなり頭が破裂した!!?」


ことり「あれ…当たっちゃった?」アワアワ




ことりの狙撃により、星人の頭部は破裂

随分とあっさりとした幕引きだった




ことり「ええっと…横取りした感じになっちゃってごめんね?」


穂乃果「構わないよ~。倒せちゃえば何だって良かったんだし。むしろ早く決着がついて助かったよ! ありがとう、ことりちゃん」ニッ


海未「……いいえ、まだ終わっていませんよ」




頭を失った星人が未だに倒れない

それどころか、握っていた剣を地面に突き刺して腕組までしだしたのだ


そして、グジュグジュと奇妙な音を立てながら徐々に損傷部位が再生されていく




星人「はぁ~…やってくれたな。頭を壊されたのは本当に久しぶりだ」グジュグジュ


ことり「う、うそ……」


穂乃果「今ので死んでくれたら楽だったのにな」ハァ


海未「なら、次は再生出来ないほど細切れに切り刻んでみましょうか…」カチャッ


星人「それじゃ足りないなぁ。俺を殺すなら肉片一つ残さないように消滅させなきゃ何度でも再生するぞ?」ニヤリ


穂乃果「へぇー…殺し方を教えてくれるなんて随分甘いんだね?」


星人「なーに、教えても問題無いから言ったまでさ。何故なら……」


穂乃果「?」


星人「こっからは…俺も本気で殺しに行くからなぁ!!」ダッ



穂乃果「くっ!?」ガキンッ!


海未(さっきより速い!? 動きも格段に巧くなっています!)キンッ!


ことり「このっ!」カチャッ



星人「邪魔をするなあ!!!」バチバチッ!!


ことり「きゃっ!!?」バチンッ!


海未「ことり!?」


星人「よそ見していいのか?」ブンッ


海未「!!? 痛っっ~~~!!!」ブシュッ!


穂乃果「一旦下がるよ!!」


海未「分かりました!」ダッ


星人「何だ? また作戦会議か? 何度やってもここで死ぬのは変わらないぞ」ヤレヤレ




穂乃果「海未ちゃん、さっき斬られた傷は大丈夫?」


海未「ええ、そこまで深く斬られていません。戦闘続行に支障は無いでしょう」ズキズキッ


穂乃果「ことりちゃんは? スーツ壊れてない?」


ことり「大丈夫だよ!」


海未「さて…スーツと同等か、それ以上の力に再生と放電能力を兼ね備えたあの星人をどう倒しましょうか」


ことり「Xガンや刀で攻撃しても直ぐに再生しちゃうんじゃ、このまま戦っても勝ち目は無いよね…」


海未「奴の言う通り、一撃で肉片も残さずに倒せる武器となると――」


穂乃果「……Zガンだね。奴を倒せる武器はこれしか無い」


ことり「そっか、だから真っ先に壊しにきたんだね」


穂乃果「二人とも通信機はまだ使える?」


海未「いえ、さっきの戦闘で壊れてしまいました…」


ことり「私も…電撃を受けた時に壊れちゃった」


穂乃果「…なら、メンバーを呼ぶには直接行かないといけないって事だね」




穂乃果「……ふぅーーーーーっ」スッ


海未「穂乃果?」


穂乃果「――…私が出来るだけ時間を稼ぐ。その隙に二人はみんなを見つけてZガンを手に入れてきて。きっとアメリカチームが落としたZガンがその辺に落ちているハズだから」


ことり「ちょっ…何言ってるの穂乃果ちゃん!?」


海未「そうです! あんな星人をたった一人で相手出来るハズがないでしょう!? 死ぬ気ですか!!?」


穂乃果「そんなわけないじゃん。まあ、心配してくれるなら早く見つけて戻って来てよね?」


海未「でしたら! 私も一緒に残ります!!」


ことり「ダメだよ! ここは私が残る!」


穂乃果「…この中で一番強いのは私だよ。それに、正直言って一対一の方が戦いやすいから、一人で残った方が時間も稼げるし、生き残る事が出来るメンバーも増えるでしょ?」


ことり「で、でも…」


穂乃果「何? 私の指示に従えないの?」ギロッ


ことり「っ!」ビクッ


海未「ほ、穂乃果…」


穂乃果「もたもたしている時間は無いよ。分かったなら早く行って」


ことり「……」ギリッ


穂乃果「――…行って!!! グズグズしないでよ!!!」


海未「…ことり、行きますよ」グイッ


ことり「い、いや…嫌だよ!! 穂乃果ちゃん!!!」ジワッ


海未「このまま戦えば三人とも死にます! 今は知りうる情報を仲間に知らせるのが先決です!!」



星人「おいおいおい!! 見す見す逃がすと思うか!!」ダッ!




――ガキン!




星人「!?」


穂乃果「あんたの相手は私だ。暫く付き合ってもらうよ?」キュイィィィン!!


星人「ほう…その鬼気迫るその表情、これなら楽しめそうだ」ニヤッ


穂乃果「このっ…余裕かましてるんじゃ、ねええええ!!!!」ギンッ!


星人「さーて、目標は三分…いや、二分持てば合格だ。精々頑張るんだなぁ」


穂乃果「おおおおお!!!!」ブンッ!




――キンッ! キンッ! キンッ!




星人「あははは! いいぞ! その攻めの姿勢は評価してやる。俺が戦って来た原住民の中で貴様は頭一つ抜けているだろう!」


星人「――…だからこそ、惜しいな」ガキンッ!


穂乃果「ぐっ! ぐうぅぅぅ…」ギギギッ!


星人「やはり片腕では受けきれないか。鍔迫り合いになれば完全に力負けする。万全な貴様と戦ってみたかった」グググ


穂乃果「こ…の……っ! まだ負けてないでしょ!!」ドゴッ!


穂乃果「ふぅ…ふぅ…ふぅ……」カチャッ


星人「どうした? まだ一分も経っていないのにもう息切れか?」


穂乃果「……!」ギロッ


星人「…いい眼だ。さあ、かかって来いよ」クイクイ


穂乃果「舐めないでよ!!!」ダッ!




――ヒュン!




星人「残念。ハズレだ」シュッ


穂乃果「んな!? しまっ――」ゾワッ




――ブシャッ!!





~~~~~~



千歌「――…希さん!」


希「千歌っち…無事やったんやね」フゥ


千歌「は、はい…“私は”無事でした」ウツムキ


希「……」



真姫「みんなここに居たのね」


にこ「ふう…まあまあ残っているみたいで安心したわ」


希「…凛ちゃんはまだ生きていよ? かなり大怪我を負ってるから比較的安全な場所に置いてきたんよ」


希「えりちは…どうしたん?」


真姫「……」


にこ「…死んだわ。私達を庇ってね」


希「…そっか」


千歌「花陽さんも…」


にこ「もういいわ」


千歌「!!」


にこ「過ぎた事を悔やんでも仕方ないわ! 死んだメンバーの為にも、このミッション必ず生き残ろうじゃない!」


希「にこっち…」


にこ「この辺りの星人は真姫ちゃんと一緒に大体片付けたわ。後は穂乃果達ね」


真姫「片腕を斬られた時は焦ったけど、あの三人なら大丈夫でしょ」


にこ「花陽が倒されたのは痛いけど、希と穂乃果が今回100点に達したハズ。これなら、死んだ二人も生き返らせられるわ」


千歌「そ、そっか! 良かった…」ホッ


にこ「まだ気を抜くんじゃないわよ。転送が始まるまでは終わっていないんだから」


希「穂乃果ちゃん達から連絡はあったん?」


真姫「いいえ無いわ。三人ともオフラインになってる…故障しているみたいね」


千歌「大丈夫…なんですよね?」


真姫「穂乃果達を信じられないの?」


希「心配しなくても大丈夫や。ウチらは奇襲に備えながらここで待っていればいいんよ」


にこ「時間的にもそろそろ終わってもいい頃よね」




海未「――…っ!! 皆さん、ここに居ましたか!!」


ことり「良かった…! 結構早く合流できた!」


にこ「ほらね? 無事に帰って…って海未!? その目はどうしたのよ!? それに体中切り傷だらけじゃない!!?」


海未「そんな事はどうでもいいです! それよりも、Zガンを持っていませんか!?」


真姫「え? 私は無いけど…」


希「ウチのはさっき星人に破壊されてもうたよ」


千歌「っていうか、ここにいる全員持っていませんよ?」


ことり「ど、どうしよう…このままじゃマズいよぉ」アセアセ


にこ「それより穂乃果はどうしたのよ!? 何で一緒じゃないの!?」


海未「それは――」




「おや? まだ仲間がこんなに沢山いたのか。まあ、全員女なのは少々ガッカリだったな」




海未「んな?! どうして…」


ことり「あ…あの星人が……持ってる腕って………」ガタガタ


星人「ん? ああ、これか。いわゆる戦利品ってやつだな。首でも良かったんだが…一応配慮したんだぜ」プラプラ


にこ「ど、どういう事よ!? 穂乃果はどうなったのよ!?」


海未「私達があの星人の情報を皆さんに伝える時間を稼ぐ為に、一人で戦っていたのです。……ですがっ!!」ギリッ


真姫「あなた達でも勝てない星人だったの…?」ゾワッ


ことり「あの星人は放電能力と異常なまでの再生能力があるよ! 倒すには一撃で体を消滅させる威力があるZガンが必要なの!!」


海未「今度は私と ことり が時間を稼ぎます! 皆さんは早くZガンを見つけてください!!」



星人「逃がすと思うか?」ビュン!





――ザクッ!




希「……え?」ドクドクッ


千歌「の…希さん!!?」


にこ「真姫! すぐに手当して!!」


真姫「あ…あぁ……」ガクガク


星人「もう遅い。正確に心臓を貫いた。苦しまないで死ねる事に感謝するんだな」



希「ぐ…は……」バタッ


にこ「希…のぞみいい!!!」


千歌「イヤ、嫌だよぉ……希さん! 希さんってば!!」ポロポロ



海未「自ら武器を手放すとは…どういう事か分かっているのですか?」


星人「勿論だ。あの片腕の女が一番強いんだろ? だったら貴様らなら素手で十分だ」ニヤッ


海未「……舐められたものですね」プツンッ


ことり「他のみんなは早く探しに行って! 正直何分稼げるか分からないから!!」


千歌「グスッ……わ、私も残ります!」


海未「千歌!?」


千歌「射撃なら真姫さんと にこさんに任せた方がいい。私は海未さんと同じでこっちの方が得意ですから」カチャッ


海未「何を馬鹿な事言っているのですか!? 千歌の実力じゃ手も足も出ません!! 師匠の私が言うのですから間違いないです!!」


千歌「……それでも、時間を稼げるならっ!」



星人「ごちゃごちゃうるさいな…今ここで全員ぶっ殺して――」




――スパッ!




星人「あ?」



クルクルと星人の首が空中を回る

この場にいる全員が何が起こったのか理解できなかった


ぼとりと首が地面に落ちる


その近くには少し短めのガンツソードを口に咥えた、両腕の無い女性の姿があった――





―――東條 希……死亡





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2017-03-20 13:49:33

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