2016-11-08 13:21:52 更新

概要

part3の続きです。
章の最後まで投稿しました


前書き


今回も前半部分を最初に投稿しました。(11/8 後半部分を追加)



三章



部屋に帰った彼女はそのまま自室のベッドへ倒れこんだ。

制服から着替えたり晩御飯を食べたりする気力はすでに残っていなかった……

そのまま彼女は夢の中へ――



――奇妙な夢だった。

彼女は夜の街に立っていた。


自分の容姿は今より少し幼い

……中学二年生くらいだろうか?



周りには自分より年上だと思われる女性が九人……

全員同じ黒い独特なスーツを身にまとっていた。




全く覚えがないはずのこの光景に

彼女は懐かしさを感じていた。



夢の中の女性が彼女に話しかけてきた。

何を言っているのかほとんど聞き取れなかった

彼女は一体何と言っていたのだろう





――――――

――――

――



千歌(ダイヤさん、ルビィちゃん、花丸ちゃんが参戦してから一か月以上が過ぎた)


千歌(その間にあの部屋に一回呼び戻され、追加メンバーもいなかったけど、幸いなことに犠牲者は出なかったのだ)


千歌(訓練のおかげでダイヤさん達もそれなりに点数を稼げるまでに戦えるようになったのだ!)


千歌(ダイヤさんはもう一人でも十分戦えると思うけど……ルビィちゃんと花丸ちゃんは危なっかしい場面が多くてひやひやするよ……)


千歌(けどルビィちゃんはダイヤさんが、花丸ちゃんは善子ちゃんがフォローしてくれているから大丈夫かな?)



千歌(今では普通の学校生活を送りながら、週に三回は夜に学校近くの森に集まって戦闘訓練をしている。なんだか部活動みたいだったよ!)




千歌(――今は昼休み、みんなで一緒にお弁当を食べているんだけど……)






千歌「――ダイヤさんが理事長に呼び出された?」


善子「確か……小原家の人だよね? 家がホテルを経営してる学生理事長の」モグモグ


ルビィ「そうだよ。『鞠莉さんに呼ばれたから先に生徒会室に行ってなさい』って言われたんだけど……」


千歌「けど?」


ルビィ「なんだかその時の顔が……とても怖かったんです……」


花丸「ダイヤさんの怖い顔かぁ、あまり見たくないずらねー」


千歌「あはは…怒ると凄く怖いもんね」



善子「……大丈夫なんでしょうね? うっかりあの部屋のことを話したりしたら、もれなくあの世行きよ?」




果南のノートによれば、あの部屋についての話を他人に漏らしたり、武器を目撃されるのはタブー。


基準は分からないが、ガンツに発覚すると即抹殺されるらしい。




花丸「それは無いんじゃないかなー? あのダイヤさんだよ?」


ルビィ「そうだよ。それにあの部屋の話題が出る事なんてそうそう無いよ」


千歌「でもダイヤさん以外に抜けてるところあるからなー。この前の訓練だって、Xガンは二つのトリガーを引かなきゃダメなのに、上側しか引いてなくってさ――」




ダイヤ『あら? なんで撃てませんのぉぉぉ!!!?』カチカチカチ




善子「――確かそのまま地面に叩きつけてたよね? さすがにあれは無いわ~」ケラケラ


ルビィ「普段武器は使ってないからね……ド忘れしちゃったんだよ」アワアワ


花丸「実践だったら命取りずら」モグモグ


善子「ずら丸だって人のこと言える? 崖から飛び移る訓練の時『無理ずらぁぁ!! 怖いずらぁぁ!!』って言ってずっと泣きわめいてたじゃない?」ニヤニヤ


花丸「んな……/// あれは初めてだったから/// そもそもあんな高さなんだから怖いのは当然ずら!!」


千歌「でもルビィちゃんは大丈夫だったよね?」


ルビィ「何度も落っこちてましたからね……さすがにもう馴れました」ズーン


善子「つまりあんたはルビィよりビビりって事よ」ニヤニヤ


花丸「むぅ……善子ちゃんのばか」プイ




ガラガラ――




ダイヤ「戻りましたわ……」


千歌「お帰りなさい! 結構早かったですね」


善子「先に食べ始めてるわよー。ダイヤさんも早く食べましょ?」



ダイヤ「……千歌さん、鞠莉さんが、理事長がお呼びです。放課後に理事長室に向かってください」


ルビィ「次は千歌さんがお呼びだし?」


善子「なんか悪いことでもしたんじゃない? 理事長呼ばれるなんて」


花丸「善子ちゃんが言える事じゃないずら。むしろなんで呼び出されないのか不思議なくらいずらよ」ジトー



千歌「別に何もしてないんだけどなー? なんだろう??」


ダイヤ「分かりません……ただ気を付けてください」


千歌「?」



ダイヤ「“あんな顔”をした鞠莉さんはだいたい予想も付かないことを言いますから―――」






~放課後 理事長室前~


千歌(うぅ……ダイヤさんがあんな事言うから緊張するよぉ……)



早く話を済ませて帰りたい千歌はすぐに理事長室の扉をノックした。

中から『どうぞ~』という何とも明るい声が聞こえたので部屋に入る。



鞠莉「チャオ♪ 初めまして高海さん。いや、親しみを込めて“ちかっち”って呼ばせてもらうわ!」


千歌「はぁ……」



鞠莉はニコニコしながら千歌に話しかける。



鞠莉「いや~前からちかっちとはお話ししたかったのヨ。突然呼び出してゴメンなさい」


千歌「それはいいんですが……要件は何ですか?」



鞠莉「……そうね、勿体ぶっても仕方ないから単刀直入で聞くわね?」



今までの雰囲気とは一変

真剣な眼差しで千歌の眼を見つめる。





鞠莉「―――ガンツって知ってる?」








―――千歌には鞠莉が発した言葉を理解するのに時間がかかった。

なぜ彼女からその言葉が出てきたのか?

まさか……ダイヤさんが――



鞠莉「……“どうして知っているのか”って顔をしているわね? 取り敢えず、私が今まで調べて得た情報を元に話を続けるわ」


鞠莉「あぁ、ちかっちは“何も”答える必要は無いわヨ? まあ、答えられる事は答えてもらえると助かるけど」


千歌「………」



鞠莉は話を続ける。



鞠莉「最近、沼津市内で謎の破壊事件が多発していることは知っている?」


千歌「……ハイ。テレビのニュースでよく流れていますから」


鞠莉「そうね。ここ最近なら『沼津港』と『市内の高校』なんかが特に被害が大きいわネ」




どちらの場所も千歌が戦闘慣れしていなかった時期の戦場である。




鞠莉「この他にも被害の規模は小さいけど、道や民家の壁なんかが何者かによって壊されている場所が多く存在している……」


鞠莉「実はね――沼津市内だけじゃなくてこのような破壊事件が全国的に起きているのよ。そして、そんな破壊事件の前日には必ず行方不明事件も発生している……」


千歌(全国? 私たちと似たようなことをしている人が他にも……?)



鞠莉「これには諸説あってね……破壊に関してはただのイタズラ、同時に行方不明者が発生しているのも偶然。私も最初はそう思っていたわ……」


鞠莉「――ネットでこのサイトを見つけるまではネ♪」




鞠莉は机の上にあるノートパソコンの画面を千歌に見せる。

そこに書かれていたのは――



千歌(『謎の部屋にある黒い球~GANTZ~』っ!?)




そのページには、あの部屋での出来事が大まかに書かれていた。


外部に漏らせば死んでしまうルールのはずなのに。




鞠莉「『死んだ人間が謎の黒い球のある部屋に連れていかれ、黒いスーツを身にまとい、怪物と戦いを強いられる』――誰が書いたか分からないけど、普通に考えればこんなのはただの妄想……」


鞠莉「でもこのサイトのリンクに五年前と三年前に起きた事件が貼られていてね、この妄想に信憑性を持たせているの」




鞠莉はページをスクロールさせリンク先のURLをクリックした。


そこには東京の高速道路で発生したバスの爆発事故の記事の抜粋と

とあるスクールアイドルの都市伝説が載っていた。




鞠莉「この事故は乗客40人を乗せた静岡行きの高速バスが居眠り運転をしていた大型トラックと衝突し炎上、その火が漏れ出したガソリンに引火して爆発。運転手も乗客全員が死亡した大事故よ……」


鞠莉「ただね……消火した後にバスの中の乗客人数を確認すると、確かに乗っていたはずの乗客の遺体が何人か無くなっていたのよ」


千歌「遺体が……無くなった?」


鞠莉「そう。百歩譲って炎で完全に炭になったと仮定しても……消えた遺体は9人。明らかに多すぎる」


鞠莉「さらにこの消えた9人はちょっとした有名人でね、『ラブライブ』って言うスクールアイドゥの全国大会で優勝したグループメンバーだったから事故発生直後のニュースではかなり大きく取り上げられていたのヨ」


千歌「スクールアイドル……」



鞠莉「―――グループ名はμ’s(ミューズ)。音の木坂学院のスクールアイドゥデース」





――

――――

――――――

彼女は徐々に思い出す。

夢で見た光景は紛れもなく自分が過去に経験したことだと。


自身が誰と出会い

あの場所で何をしていたのか。


もうじき全てを思い出すだろう―――




――――――

――――

――




千歌「ミューズですか? メンバーの顔と名前は知っていますが……」


鞠莉「当時はかなり話題になっていたみたいよ? あのバスに乗っていた彼女達全員のあるはずの遺体が消えたんですもの」


鞠莉「――そして翌日の早朝、9人とも何事も無かったようにそれぞれの自宅に帰っているのよ」



千歌「ただバスに乗っていなかっただけじゃ……?」


鞠莉「いいえ。バスの乗客リストにも停留所近くの防犯カメラにも、確かにミューズのメンバーは爆発したバスに乗っていた」


鞠莉「なら仮にバスに乗っていなかったとしても、彼女達は早朝まで一体何処にいたのかしら?」



千歌「……だとしても、これだけではその妄想話が本物だって言うには無理があると思います」


鞠莉「その通り。この記事だけではまだ足りない……最も重要なのは、都市伝説の方の記事ヨ」




鞠莉はもう一つの記事までページをスクロールした。




鞠莉「これは三年前に新宿で起きた大規模な虐殺事件に関する記事よ。かなりの大事件だったから覚えているでしょ?」



千歌「……? こんな事件ありましたか??」


鞠莉「あら? 覚えていないの……まあいいわ。この事件は突如現れた人型の化け物がそこにいた大勢の通行人を無差別に殺害していった。ここ最近で発生した事件の中でも最悪な事件ヨ」


千歌(そんな大事件があったんだ……何で私は覚えてないんだろう??)



鞠莉「警察や自衛隊も出動して化け物を倒そうとしたのだけど、全員返り討ちにあって止めることは出来なかった」


鞠莉「――そんな時にこの人たちが現れたの」




鞠莉は一枚の写真を千歌に見せた。


――その写真には10人の女の子が千歌達と似たような黒い格好、武器を持ち

化け物と戦っていたのだ。




写真は拡大加工したもので全員の顔はハッキリとは分からなかったが

先頭に立っていた人の顔だけは何とか判別できた。


オレンジ色の髪色に片側だけをリボンで結んだ独特な髪形の女の子。

それは千歌も知っている人物であった……





鞠莉「――高坂 穂乃果さん、μ’sのリーダーだった人よ。本人はこの写真について否定したみたいだけどネ」


千歌(この顔に髪形、間違いなく穂乃果さんだ……本当にμ’sも同じ経験を?)



鞠莉「判別できない人も髪形や人数から考えて恐らくμ’sのメンバーがでしょうネ。バスの事故以来、メンバーが夜になると一時的に行方不明になったことが多々あったみたいだし、この時もそうだった。これら全てが事実だとするなら……」





鞠莉「――メンバーはバスの事故で死亡し、あの部屋の住人となった。と考えられない?」





千歌「……」



鞠莉「そ・し・て、同じような部屋が日本中に存在し、それが沼津市内にもあるとするならば、行方不明のまま見つからない子の手がかりが見つかると思わない?」



千歌「仮に……仮にそんな部屋が存在したとして、何で私にそれを聞くんですか?」




この質問に鞠莉はニヤリと笑い



鞠莉「――だってちかっち、少し前に行方不明になったわよネ?」




千歌「んな!? どうして!?」


鞠莉「小原家の情報網は伊達じゃないのよ♪ この学校で行方不明になったことのある生徒には“全員”話を聞いているの」



鞠莉「ただ、全員最初の質問の反応で分かるし人数も大していなかったから時間はそれほどかからなかったわ~♪」



千歌「……昼休みにダイヤさんを呼び出したのも?」


鞠莉「ウーン……ダイヤのは少し違うかな?」


千歌「え?」


鞠莉「ダイヤの場合、質問するまでも無かったわネ! ちなみに、ちかっち以外のメンバーは既に三人検討は付いているのよ?」


千歌「っ!?」


鞠莉「ああ……ちかっちが“あの部屋のメンバー”だとも決まったわけでも無いし、そもそも“まだ”あの部屋があるとは確定したわけでも無かったわネ」アハハ


千歌(どうして知ってるの!? もしかして訓練を見られた? でも…だったらこんな回りくどい話はしないか)ブツブツ



鞠莉「取り敢えず、話は以上デース」


千歌「え? 終わりですか?」


鞠莉「ええ。こっちはいろいろ話したけど、ちかっちは何も話せないみたいだし…まあリアクションでどの位合ってるかわ分かったけどね」ニヤリ


鞠莉「時間を取らせてごめんなさいネ! 戻っていいわよ~~」フリフリ



千歌「……失礼します」



千歌は理事長室から出ようとした。

その直前――




鞠莉「――果南が今いないのは、やっぱり“そういう”ことなの?」




弱々しい声で千歌に質問してきた。

千歌は一瞬足を止めたがその質問に答えることは無く

そのまま部屋を後にした――





千歌(結構ガンツのことバレてたけど、死んでないって事はセーフなんだとね?)



部屋からでた千歌は自分がガンツに抹殺されなかったことに安堵していた。

μ’sが昔、自分達同じ戦いを強いられていたことには驚いたが、


正直言って今の千歌達には関係のない事だった。



千歌「穂乃果さんみたいな経験者が仲間だったら心強いけど、三年前の話じゃなー……とっくに100点取って解放されてるか、やられてメモリー内だもんね」ウーン



千歌(そもそもなんで私はあの事件を覚えてないんだろう? 三年前でしかも大事件だったらいくら私でも覚えてるはずだよね??)


千歌(――あれ?? よく考えたら三年前の私って何やってたんだっけ?)




中学二年生の学校での思い出、世間のニュースなどなど


いくら思い出そうとしても全く分からない。


まるでその時の記憶がすっぽり無くなってしまっている


必死に思い出そうとしていると…




梨子「千歌さん? こんなところで何してるの?」


千歌「梨子ちゃん! いやー、理事長に呼び出されててさ…」


梨子「理事長に? 何か悪いことでもしたんだ」ジトッ


千歌「ち、違うよぉ!アセアセ 単純に“おしゃべり”がしたかっただけみたい。ほら、理事長もこの学校の生徒だし?」



梨子「ふーん……なら理事長は今部屋にいるのね?」


千歌「うん。ついさっきまで話してたからいると思うよ?」


梨子「ならいいわ。わたしも理事長に用事があるから……」


千歌「梨子ちゃんも? 意外だねぇ……何悪い事したの?」ニヤニヤ


梨子「“わたし”が理事長に用があるの! 千歌ちゃんと一緒にしないで」プンプン


千歌「私だって悪い事なんてしてないもん! まあいいや。早く終わるなら待ってるよ? 一緒に帰ろうよ!」


梨子「うーん……止めておく。結構時間が掛かるから先に帰ってて?」


千歌「そっかぁ。残念」ガッカリ


梨子「ごめんなさい……また誘ってね?」


千歌「うん! また明日ね! 梨子ちゃん!!」


梨子「えぇ、また明日……」フリフリ




――――――

――――

――


鞠莉「――どうやら、あの部屋は本当に実在しているようね」


鞠莉「ちかっちには話さなかったけど、学校で私見ちゃったのよねー……。その前からあの部屋の事は結構調べていたけれど、自分の中で決定的なものが欲しかったところで“あれ”を目撃出来たのは――」



ゴソゴソ――



扉の前で何か物音がする。

鞠莉にはこれが何なのか、おおよその検討は付いていた。


ただ、確証は無かった。


気のせい、考えすぎ、痛い妄想

そんな事が頭の中を巡っていたが万が一この後、自分が考える展開になった場合

最悪、聞きたい事を聞けないままこの世を去ることになる。



鞠莉「――中に入って来なさい。私は逃げなから安心しなさい?」



――ガラガラ


しばらくの沈黙の後、扉から少女が入ってきた。

千歌やダイヤ達を殺害したときと同じ服装に凶器を携えて……




鞠莉(……来ちゃったか。覚悟はしてたケド)


鞠莉「聞いてもいいかしら? 私がこれから殺されるのは、あの現場を見ちゃったから?」


???「!? 見たんですか!!?」


鞠莉「あら? ち……違うの?? ちょっと予想外」



???「あの現場を見たのに……なんで通報しなかったんですか?」


鞠莉「そうねぇ…最初は通報しようと思ったんだけど、あの現場で不思議なものを見たの」


???「不思議なもの?」


鞠莉「そうよ、――あなたが殺したダイヤ達の死体が消えていったのよ。まるでどこかに転送されるよな、そんな感じの消え方だった」



鞠莉は千歌に見せた写真をともう一枚別の写真を彼女に見せた。


千歌に見せたものとは異なり被写体が二人だけであった。

一人は高坂 穂乃果の後ろ姿

もう一人は―――





鞠莉「これ、あなたよね? 桜内 梨子さん―――」



今より顔が少し幼くて髪も短いが、確かにそれは梨子の姿だった。




梨子「――あなたも“元”あの部屋の住人だったんですか?」


鞠莉「いいえ。“元”って事は今はもう違うのね?」


梨子「私も……つい最近まで全く覚えていなかったんです。東京でも普通に暮らしていたんですが、内浦に引っ越してきたその日にポストにこんな球が入っていたんです」



梨子はポケットから小さな黒い球を取り出し、鞠莉に見せた。

そこには『オハラ マリ』の殺害命令が表示されていた。



梨子「最初に千歌ちゃんの殺害を命令されました。その時は引っ越してきたばかりだったし、ただのイタズラだと思って無視していたんです」


梨子「――次の日、母が腕の骨を折るケガをしたんです。原因が転倒とか事故とかでは無くて……私と話している最中にいきなり折れたんです」


鞠莉「………」


梨子「何が起きたのか分からなかった……そんな時この球がしゃべったの――

『指示に従わないなら次は殺す』ってね………」


梨子「それから命令された通り……千歌ちゃんを……」



鞠莉「ダイヤ達をやったのも命令で?」


梨子「そうです。でも千歌ちゃんもダイヤさん達も次の日学校に登校してきた時は驚きました……黒い球にはミッション完了の文字があったのに」


梨子「その頃から……同じ夢を見るようになった…ちょうどその写真みたいな場所のね?」


鞠莉「ならやっぱりこの写真に写っているのは……」



梨子「ええ、確かに私よ。その写真を見たおかげで全部思い出せた……」フー



大きく息を吐く


梨子は悲しそうな目で鞠莉を見つめた。



梨子「――鞠莉さんには申し訳ないけど、これからあなたを殺さなければいけません」


鞠莉「……でしょうね? じゃなきゃあなたは家族を失うんですもの」


梨子「安心してください、十中八九あの部屋に転送されるはずですから……出来るだけ痛みが無いようにやります」


鞠莉「転送されなくちゃ困るわ~、きっとあの部屋に果南がどうなったかの手がかりがあるはずですもの。確実に送ってもらうわよ?」


梨子「フフ…おかしな人ですね」



梨子は握りしめていた包丁を鞠莉へ―――





――――――

――――

――

ダイヤ「――千歌さんを待たなくてよかったんですかね?」



ダイヤ達四人は沼津のカフェにいた。

この前善子が千歌に紹介しようとした店であの後、定期的に通うようになっていた。



善子「仕方ないじゃない? どれだけ時間が掛かるか分からなかったし、先に行ってて~とも言われたしね~」モグモグ


ルビィ「メールも送ってるし、終わり次第きっとこっちに来るはずだよね」ハムハム


花丸「心配する必要はないずらー」ズズズ


ダイヤ「……鞠莉さんとどんな話をしたのか、非常に気になりますわ」ムムム


善子「そんなの千歌さんが帰ってくればすぐに分かる事じゃない? こっちから聞かなくたって千歌さんから話してくれるわよ……多分」


花丸「善子ちゃん、自信がないからって最後に『多分』って付けるのは卑怯ずら!」


善子「卑怯って……」ヤレヤレ



いつも通りの日常、ありきたりな放課後、ごく普通の会話

そんなひと時は一瞬にして変貌する―――




ゾクゾク――!




全員は独特な寒気を感じた


再びあの部屋に転送される日が来たのだ




善子「……そろそろだとは思っていたけど、今回は夕方なのね」


ダイヤ「本来なら前回みたいに夜中に呼びだされるはずなんですよね?」


善子「そのはずなんだけど……まあいいわ、取り敢えず準備しましょう」




四人は会計を済ませ、人の目が少ない路地裏へ移動


数分後、順番に転送が始まった―――






~GANTZの部屋~


千歌「おっ、みんな来たね~」



ダイヤ達より先に千歌が部屋にいた。

制服は畳んで隅に置いてあり、スーツの着替えを済ませている。



ダイヤ「またこの日が来てしまったのですね……」ハーッ


ルビィ「分かってはいたけど、やっぱり馴れないよ……」


善子「いい加減受け入れなさい? 嫌ならさっさと100点取るしか無いんだから」


花丸「……ちょっと言い方が冷たいずら」ムスッ


善子「何よ? 事実なんだから仕方ないでしょ?」カチン



千歌「まあまあ二人ともケンカしないの! そんなことより早く着替えなくっちゃ」



千歌が仲裁に入るがまだ善子と花丸は睨み合っている


そんな中、ガンツから新たな人間の転送が始まっていた



ルビィ「あれ? 誰か転送されてきてるよ??」


千歌「ホントだ……前回は追加されなかった新メンバーだね」


善子「聞き分けのいい子だといいわねー、変な人だと最悪ですもの」


花丸「知り合いだったら……ちょっとショックだな」



胴体の転送が完了――



ダイヤ「この服装は……」


善子「また浦女の生徒!? ちょっと多すぎでしょ」ドン引き


千歌(あれ? なんか見覚えが??)



全身の転送が完了した。




???「――どうやら無事にこの部屋に来られたみたいデース♪」



後ろ姿なので顔はまだ分からないが


派手な金髪に片側に輪っかのある独特な髪形をした彼女は


まさしく千歌が先ほどまで会話をしていた人物だった




千歌「ま……鞠莉さん!!? 来ちゃったんですか!?」



千歌の声に反応し、振り返った鞠莉は満面の笑みを浮かべた



鞠莉「シャイニー☆彡 来ちゃったわ!」ニコ






千歌が驚くのは当然だが、意外にもクラスメイトのダイヤは冷静だった。



ダイヤ「やはり来たのですね……つまりあなたは――」


鞠莉「そうよ。私はあなたに話したように殺されたのよ」


千歌「話したようにって……どういう意味ですか?」



ダイヤ「わたくしがこの部屋に来る前、どのように死んだのかは以前話しましたわよね?」


千歌「はい。生徒会室で……殺されたんですよね………」


ダイヤ「ええ、その時の私達の死体と殺した犯人を鞠莉さんが目撃したようで……その事で近いうちに自分の身に何が起こるか分からないと話されたばかりだったのです」


鞠莉「そうそう♪ ちかっちとはさっきまでこの部屋について色々話してたのよね~。まさか本当にこんな部屋があるなんて驚きだわ」キャッキャッ


ルビィ「え……この部屋がある事を知ってたんですか!?」


善子「さすが小原家……」


花丸「――また誰か転送されてきてるずら」



花丸が気付いた頃には、ほとんど転送が完了していた



善子「ん? 随分赤い斑点の多い服着てる子ね……って下にまた浦女の制服着てるじゃない!」


千歌「ちょっと待ってよ……この服装は!?」ゾッ


ダイヤ「んな!? なんでここにいるのです!!!?」




転送が完了したその子は血まみれのパーカーを着ており


フードは顔が見えたいほど深く被っていた。



見間違えるはずがない


間違いなくこいつは、千歌やダイヤ達を殺害した殺人鬼だった。




千歌とダイヤが身構える中

意外にもその殺人鬼に襲い掛かったのは花丸だった



素早く殺人鬼に接近


胸倉をつかみ、そのまま足が付かない高さまで持ち上げた。



ミシミシと音を立てながら首元を締め上げる花丸は激怒していた。

花丸「お前が……お前がルビィちゃん達を!! ……お前がぁ!!!」



温厚そうな彼女からは想像もつかない恐ろしい表情で殺人鬼を締め上げる。




???「があ……ぐうぅ……あがあぁ……」ギチギチ



必死に抵抗する


しかし、スーツの力もあり凄まじい力で首元を締め上げられ


徐々にその抵抗も弱くなっていく




鞠莉「――す……ストップ! ストップ! 一回落ち着いて!!」


花丸「ずら!?」



鞠莉の制止により花丸は我に返る

そのまま手を放して解放する。



ドサッ!――



床に落とされ、そのままうずくまる


???「ゴホッゴホッ――ま……鞠莉さん、止めなくていいんです。私はそれだけの事を彼女達にしたのですから……」



落下の衝撃でフードが外れていた


その顔に千歌は驚愕する



千歌「ええ!? り……梨子ちゃん? 梨子ちゃんだよね!?」


鞠莉「そうよ。この子はちかっちのクラスメイトの桜内 梨子さんデース……驚いた?」


千歌「驚くも何も……じゃあ梨子ちゃんが……え?」アセアセ


梨子「……きちんと説明します」



梨子はもう一度なぜ千歌達を殺さなければならなかったのか、自分は何者なのか


鞠莉に話した通りに事情を説明した――





梨子の説明が終わり、各々は梨子に対し複雑な思いを抱いていた



ダイヤ「―――事情は分かりましたが……」


花丸「納得いかない! もしかしたらマルはあのまま死んじゃってたかもしれなかったてことでしょ!?」


梨子「ええ…だから花丸さんには本当に悪い事したと思ってる」


花丸「っ!? このっ―――」



思わず掴み掛ろうとするが



善子「止めなさい花丸。今この人に死なれちゃ困るわ」


鞠莉「100点達成の実力者を失うのはデメリットしかないものね?」


ルビィ「そうだよ花丸ちゃん! ルビィだって梨子さんと同じ立場だったら……同じ事をしてたかもしれない…」


花丸「ルビィちゃん……」




善子「そもそも、なんで“このメンバー”だったんでしょうね? 私は事故でこの部屋に来たけど、経験者が欲しいだけなら梨子さんだけ転送すれば良かったのに……」



鞠莉「確かに……花丸さんは善子さんと同じ理由と考えても、ガンツに指示されたちかっち達はなんで選ばれたのか」


ダイヤ「………」


千歌「………」



――心当たりはあった。


初めて戦った時の違和感


最近見る夢


もしかしたら自分も昔は……



そんな考えもガンツから流れる音楽によってかき消された。





GANTZ『てめえ達は今から

この方をヤッつけてに行って下ちい

うちっちー星人 特徴:つよい 好きなもの:海 肉 口くせ:しゅーしゅー』




鞠莉「オウ……まさかあのうちっちーが星人だったなんて」


ダイヤ「そんな事よりさっさと着替えなさい? この部屋の事を知ってるなら手助けは必要ないでしょ?」


鞠莉「もう! ダイヤったら冷たいんだから!!」プンプン



千歌「梨子ちゃんも着替えよ? スーツとか武器の使い方は覚えてる?」


梨子「ええ、覚えているわ。戦力にはなると思うから安心して?」


花丸「……なってくれなきゃ困るずら」


千歌「花丸ちゃん! 気持ちは分かるけどさ……」アセアセ


花丸「………」プイッ



梨子「いいの千歌ちゃん。悪いのは私だから……」





不安要素を残しながら


戦場への転送が始まったのだ――






~静岡駅東口前~



鞠莉「随分と遠いところに転送されたわね」キョロキョロ


ダイヤ「ちょっと……かなりマズいんじゃありませんか?」ゾッ


善子「? 私達の姿は見えて無いんだから大丈夫よ」


ダイヤ「そうじゃありません!! こんな大勢の人がいるこんな場所で戦ってみなさい、何人の犠牲がでるか!?」



花丸「でもマル達から教えることも出来ないし……」


鞠莉「仕方ないでしょ? 出来るだけ被害が無いように素早く倒しまショーウ」ガチャ


千歌「レーダーを見る限り、今回は広範囲に星人が散らばってるみたい。ひとまず3グループに分かれよう」



鞠莉「なら、私はダイヤと!」ダキッ


ダイヤ「くっつかないでください!」グイグイ


ルビィ「る……ルビィもおねえちゃんと…」



善子「ならずら丸、行くわよ」


花丸「ずら!」



梨子「千歌さんも善子さん達のグループに加わって?」


善子「え? 何でよ??」


梨子「私は…ほら経験者だし、ひとりでも大丈夫だから」


ダイヤ「梨子さん……しかし」




千歌「――ダメ、梨子ちゃんは私と来て」ガシッ


梨子「千歌ちゃん? でも……」


千歌「ここでは私の、リーダーの指示に従ってもらうよ。勝手な行動は許さない」


梨子「………」



花丸「あれ? いつから千歌さんがリーダーになったずら??」


千歌「ほぇ?」


ダイヤ「確かに、経歴で言えば善子さんの方が長いわけですし……まあ、かと言って善子さんはリーダーの器ではありませんけど」ヤレヤレ


善子「さりげなく悪口言わないでよ!」





最終的に梨子は千歌とペアを組み、敵の密集地へそれぞれ向かった




~チームA 新静岡駅前~


ダイヤ「レーダーだとこの辺りに密集しているはずですが」



<ガヤガヤ



ルビィ「普通の人しかいないよ?」


鞠莉「でも、あれがそうなんでしょ?」




鞠莉が指をさす先にはスーツを着た男性がいた


どう見ても帰宅途中のサラリーマンであるこの人間が星人なのか?



間違えたでは済まされない


慎重な行動を求められる場面だが


鞠莉はためらいもなくXガンの引き金を引いた




ダイヤ「何してるんですの!?」


鞠莉「だってレーダーは星人だっていってるんでしょ? 先手必勝よ!」




サラリーマン頭が破裂した



本来、ガンツの住人と同様に星人も一般人には認識できない


彼が星人の場合その法則に従い、彼の死はダイヤ達以外には認知されない




通行人「!? ひぃぃ!!」


通行人「いきなり頭が破裂したぞ!?」


通行人「誰か警察呼んで!!!」



ルビィ「え? なんで見えてるの?」アセアセ


ダイヤ「どうやら一般人も星人の方は見えているようですね」




一般人が星人の死に驚く中


見えないはずのダイヤ達を無言で凝視する者がいる


一人二人では無い


その数、十人以上

さらに数は増えている


その見た目はみるみる変異し、上半身が異常なまでに筋肉が膨張した


半魚人のような姿となった



突如、化け物が大量に出現し何も知らない通行人はさらにパニックとなる



半魚人はそんな通行人へ攻撃を開始した




ダイヤ「ちょっ!? なんで!?」ゾワッ


鞠莉「どうでもいいでしょ! 早く倒さないと!!」ギョーン!ギョーン!





~チームB 伊勢丹周辺~


善子「こいつら! 無差別に攻撃しすぎじゃない!? それに数も多すぎ!!」ギョーン!ギョーン!


花丸「マルの腕じゃ誤射しちゃうよ!」アワアワ


善子「何でもいいから倒しなさい! このままじゃ犠牲が増える!!」




星人は手の平から水滴を飛ばして攻撃してくる

その速さは拳銃の弾丸に匹敵し生き物の体を容易に貫く


最悪なことに精度が悪い為、周囲の通行人に被弾し


辺りは激痛に苦しむ人であふれ返っていた



二人もXガンで応戦するが

人が多すぎるので思うように狙いが定まらない


星人の何体かは二人を無視し通行人を襲い続けている




善子「――どうすればいいっての!?」





~チームC 江川町通り~


当然こちらも逃げ惑う人で大パニックだった


Xガンでの攻撃は適さないと判断した千歌はガンツソードで星人の殲滅を試みた



梨子も同様に戦っているが――



千歌(――梨子ちゃん凄いな、久しぶりの戦闘のはずなのに私より強いかも…)




梨子は完璧に星人の動きを見切っていた


一瞬の隙を見逃さず


確実に仕留めていく



恐怖など微塵も感じないその戦いぶりに千歌は驚愕していたが

そんな梨子に対し安心感を覚えると同時に危うさも感じていた



千歌(確かにこれなら一人でも大丈夫そうだけど…なんだかそれはダメな気がする……)




梨子「千歌ちゃん! こっちは全部片付いたよ!」ズバッ


千歌「こっちも終わった! 次の場所に急ごう」






――――――

――――

――



ミッション開始から一時間が経とうとしていた

新静岡駅前は静寂に包まれていた


周辺には多くの通行人と星人が倒れている



そんな中、半魚人の怪物と黒いスーツを身にまとった“二人”の少女が睨み合っていた



この半魚人は他の個体と異なり、スピードに特化していた

逃げ惑う通行人をこの個体が最も多く虐殺したのは言うまでもない


しかし犠牲になったのは通行人だけでは無い




ルビィ「ヒュー……ヒュー……ヒュー……」ブルブル



ダイヤと鞠莉が他の雑魚を相手にしている間、運悪くルビィがこの個体のターゲットにされていた


ルビィでは相手になるハズもなく、二人が気付いた時にはルビィはこの怪物により倒されていた


顔面は血まみれ、左腕はねじ曲がった姿で倒れており

はたから見たら生きているかも分からなかった




ダイヤ「このっ!! よくもルビィを!!!」グワッ


鞠莉「落ち着きなさい。無暗に突っ込んでもルビィの二の舞になるわ」ガシッ


ダイヤ「しかし! 奴を倒さなければルビィが!!」


鞠莉「二人で同時に撃っても当たらない程のスピードよ? 接近したところで袋叩きにされるのがオチよ」



鞠莉「それにダイヤ、あいつの動きを目で追えてなかったでしょ?」


ダイヤ「……やけに冷静ですね? まさかこのまま逃げるなんて言いませんよね?」ギロ



鞠莉「笑えないジョークね。ダイヤが逃げるって言ったって私は戦う」




鞠莉は手に持っていたXショットガンを捨て怪物の方へ足を進める

その手は力強く握りしめられていた



鞠莉「親友の大切な妹をあんな姿にしたあいつを……絶対に許さない」


ダイヤ「鞠莉さん…?」



鞠莉「――私がぶん殴る!!」






――合図は無かった



怪物は右へ、左へ、前へ、後ろへ


人間の反応速度を遥かに超えるスピードで鞠莉を囲むように移動する




ダイヤ(っ!? こんなのどうやって!?)




ダイヤには全く捉えれれない


恐らく相手がダイヤだったとしてもルビィと同じ結果となるだろう


ましてや今回初参加の鞠莉が相手になるはずがない


ダイヤは鞠莉を一人で向かわせた事を今になって後悔する



だがもう遅い

怪物は鞠莉の背後から頭部目がけて襲い掛かる――




ゴキャ――!!




何かが潰れる音が響く



だが、鞠莉の頭が潰れた訳ではない


彼女の肘が怪物の顔面を完璧に捉えていた



鞠莉にとって軽い肘打ちであったが

星人のスピードが相まって

その破壊力は絶大であった



勢いそのまま空中で半回転し仰向けに倒れる




鞠莉は力強く握りしめた拳を


倒れた怪物の顔面に叩きつけた――!




グシャ――!




アスファルトに穴を開ける程の威力

怪物の頭部は完全に潰れた





ダイヤ「……あの動きが見えていたのですか?」


鞠莉「いいえ。全く見えなかった」


ダイヤ「んな!? だったらなんで!?」



鞠莉「パパの知り合いに武道の達人がいてね、教えてくれたの。『速い敵は点では無く線で捉えろ』ってね♪」


ダイヤ「えぇ……」


鞠莉「そんな事より早くルビィの手当てよ!」




急いでルビィのもとへ


意識はあるが余りにも酷いケガである

本来なら後遺症が残ってもおかしくない



鞠莉「これ……本当に治るの?」


ダイヤ「わたくしの腕が溶けた時も治りましたから大丈夫だと……」



鞠莉「頭を打ってるかもしれないから動かすのはダメそうね…ダイヤはここでルビィと待っていて? 私はちかっち達と合流する」


ダイヤ「その方が良さそうですね……頼みましたよ?」



鞠莉「任せて♪ パパッと終わらせて、みんなで一緒に帰りましょ!」ニコッ






~同刻 チームB~



善子「――避けなさいずら丸!」



先ほどまで花丸がいた場所に止めてあった車がグシャリと潰れた

上から3mを超える星人が落ちてきたのだ


今までの雑魚より更に筋肉質な体つき


鞠莉が戦ったのがスピード特化ならば

こちらパワー特化だろう




花丸「危ないずらね!!」ギョーン!ギョーン!




すかさずXガンを発射する


今まで同様に内部から破裂し倒せるはずだった



しかし、当たった個所が風船のように膨らむだけで

すぐさま元通りになった



花丸「き……効いてない!?」ギョーン!ギョーン!ギョーン!


善子「とにかく撃ち続けて!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!




頭、腕、胴、足

様々な部位に打ち込むがどこも効き目が無い


星人も善子との距離を詰め、殴りかかる



身をかがめて回避



――バキン!



背後にあった標識が星人の拳により吹き飛んだ

善子はゾッとしたが、星人の胴体目がけて殴りつける


――効き目は無かった



善子(うそ……でしょ? 硬すぎでしょ!?)



この動揺が回避を遅らせた

星人の拳が善子の腹部に直撃した




善子「カ……ハッ……!」ミシミシ



スーツの防御力を上回る衝撃が善子を襲う

後方へ吹き飛び、後ろにあった店の壁を突き破っていった



花丸「善子ちゃん!!」



――返事は無い

星人はターゲットを花丸に切り替えた




花丸「………」



不思議と恐怖は無かった


大丈夫、一人でも戦える



その為に訓練してきたのだから




花丸「――かかってくるずらぁ!!!」









~数分前 チームC~


既に周辺の星人は全て倒しており

救急隊や警察による怪我人の搬送等が始まっていた



千歌「この辺はもう大丈夫そうだね。次の場所に行こう!」



レーダーを見ながら次の場所を探す千歌だが




梨子「……国木田さんの所に行きましょう」


千歌「? もう星人の数は少ないから大丈夫なんじゃない?」


梨子「なんだか行かなきゃダメな気がするの……胸騒ぎがする」



千歌「……わかった。急いで向かおう!」





――――――

――――

――



善子「う……うーん……」



善子は瓦礫の山となった店の中で目を覚ました


かなりの衝撃ではあったがスーツはまだ壊れていない



善子(どのくらい気絶してたの……?)



時間にして1分も経ってはいなかった


銃の発砲音が聞こえない

戦闘は終わったのだろうか?





――ズドン! ――ズドン! ――ズドン!




奇妙な地響きが聞こえる

まるで何かを叩きつけているような音だった


善子「ずら丸は…どうなったの?」



痛む腹部を抑えながら善子は店から出る



外には先ほどの星人の後ろ姿があった

―――誰かに馬乗りになっている後ろ姿だ



その人物に何度も何度も何度も

その拳を叩きつけている




善子(ずら丸は逃げたの?)



――違う



善子(千歌さんに助けを呼びに行ったのよね…?)



――違う



善子(そうに決まってる。間違い……ないわ)



――違う





受け入れるわけにはいかなかった


認めたくなかった




でも、見間違えでは無かった


一目で分かってしまった



――奴の股下から見える黒いスーツの足が一体誰なのか






善子「―――あ………あああぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!



効き目が無いのは分かっている

とにかく奴の攻撃を止める


たとえそれが無味だったとしても



善子の攻撃に気付いた星人は攻撃を中断

直ちに襲い掛かってくる



パワーはあるがスピードはそれほどでは無い


捕まったら死

一定の距離を空け、撃ち続ける




――バンッ!




十数発撃ち込んだところでやっと胴体が破裂

星人は完全に動かなくなった




善子は星人が殴り続けていた場所に向かった



――そこには人間だったモノが倒れていた


腰から上は原型を留めていない

個人を判別するのが不可能な程に


それは肉塊と化していた





しかし、善子には分かる

この亡骸が“国木田 花丸”だという事が



善子「――何してるの? 早く起きなさいよ…」


善子「まだ……ミッション中なのよ? そ…そんな所で、ね……寝てる場合じゃないでしょ?」ポロッ





梨子「――津島さん……」



梨子と千歌、少し遅れて鞠莉が合流した



千歌「………」


善子「あ…千歌さん、千歌さんからも言ってよ……ずら丸ったら返事……しないんだよ」ヒックッ


善子「あぁそっか、ここに倒れてるのは……ずら丸じゃないんだ。だって……こんなの……あんまりじゃない」ポロポロ



梨子「――早く終わらせましょう。死を惜しんでいる時間は無いわ」


善子「……何ですって?」ギロ


千歌「梨子ちゃん!?」




心無い梨子の発言に善子の怒りは爆発した




善子「そもそもあんたが!! あんたのせいでずら丸がこんな戦いに巻き込まれたんじゃない!!! それなのに惜しんでる時間は無いだって? ふざけるな!!!」


梨子「………っ」


鞠莉「落ち着きなさい。りこっちの言っている事は正しいわ」


善子「ああ!!?」ギロッ


鞠莉「ルビィが瀕死の重傷を負っているの。急がないとそのまま死んでしまうわ」


善子「!? なんですって!!?」



鞠莉「花丸の事は…確かにショックだけど、あなたはまだ助かる大切な友達を見捨てるつもり?」


善子「………」



千歌「――行こうか。残るはボスだけだよ」






~静岡駅前~


星人による大量無差別殺人により、駅前は警察や機動隊が多く出動していた


千歌達によりほとんどの星人は殲滅されており事態は終息に向かっていたかのように見えた



機動隊員A「おい、あそこにいる着ぐるみは何だ?」


機動隊員B「あれって……“うちっちー”じゃないですか?」


機動隊員A「なんだと? あの水族館のマスコットキャラのか? なんでそんなのがここにいるんだよ」




突如道の中央にうちっちーの姿が現れた

勿論ただのうちっちーではないが、彼らが知る由もない




機動隊員A「そこのお前! こんな状況でふざけた格好をしてるんじゃない!」


うちっちー?「………」


機動隊員A「無視するつも――」



グシャリと何かが潰された


隊員Aの頭が握り潰されたのだ



その姿はすでにうちっちーの原型は留めておらず、完全に化け物と化していた



機動隊員B「この!? 化け物がぁ!!!」バババババ




装備していたマシンガンを撃ち尽くした

しかし弾丸は星人の皮膚を少し傷を付けただけでダメージは皆無


星人による虐殺が始まる――










――――――

――――

――


ルビィ「……お…ねぇちゃん……」


ダイヤ「気が付きましたか。どこが痛みますか?」


ルビィ「左腕が……凄く…痛い。頭も……ガンガンする」ハァハァ


ダイヤ「っ! お姉ちゃんが側にいながら妹をこんな目に合わせるなんて……!」ギリッ



ルビィ「ごめん……なさい……ルビィが…弱いから……」ハァハァ




――ゴソゴソ




ダイヤの目の前で何かが立ち上がった



ダイヤ「――頭部を潰すだけじゃ倒せないとは」



鞠莉によって倒したはずの星人が再び立ち上がったのだ


先ほどとは違い動きがぎこちないが


ダイヤの方へ向かってくる



ダイヤ「ルビィ、少しだけ待っていて下さい。すぐに戻ります」スクッ


ルビィ「……おねぇ…ちゃん?」


ダイヤ「安心してください。何も心配しなくていいのですよ?」ニコ




動きを見切れた鞠莉はいない


頼れる仲間も側にいない


大切な妹を守るため



姉はその拳を握りしめる――






~同刻 静岡駅前~


千歌達が到着した時には決着がついていた


機動隊と警察は壊滅

生き残りも完全に戦意を失っていた




梨子「――私が切り込む。バックアップお願い!」ダッ


千歌「ちょっ!? 待って!」



千歌の制止を無視し単独で切り込む

星人も気配に気づき応戦している



鞠莉「私たちも行くよ!」


千歌「分かってる!」カチャ



千歌と梨子はガンツソードを展開し、鞠莉は素手で殴りこむ




星人の動きは今までの雑魚とは別格だった


スピード、パワー共に特化型ほどでは無いが

それに近いものを持っていた


千歌と梨子の斬撃や鞠莉の打撃は全てかわされる



逆に星人の攻撃は確実にヒットし

ダメージは蓄積されていく



鞠莉「――っ!!」バキッ



鞠莉の拳が星人の右足にヒット

すかさず胴体、顔と連打


が、顔面への攻撃で腕を捕らえられる




――パキン!




まるで木の枝のように鞠莉の腕をへし折った



鞠莉「っ!!? あがああぁぁああ!!!!?」



女の子が耐えられる痛みではない


鞠莉はそのまま投げ飛ばされ近くの店に突っ込む




千歌(鞠莉さんがやられた!? 掴まれてもアウトなの!!?)ヒュン!ヒュン!



千歌の顔面を星人の指先がかする


掴まれたら死

その恐怖心が千歌の動きを鈍らせる


不意のヘッドバットが千歌を襲う



千歌「ぐはっ!?」グラッ




致命的な隙だった


星人の手は千歌の頭を捕らえた――






――――――

――――

――


ダイヤ「くっ! 速すぎます!!」ドゴッドゴッドゴッ



ダイヤはスピード特化の星人と戦っているが

鞠莉が言っていた通り、袋叩きにされていた



ダイヤ(先ほどよりスピードは落ちていますが……わたくしの反射神経では!)



ぐずぐずしているとスーツの耐久限界が来てしまう

それはダイヤの死を意味する


自力で乗り切るしか方法は無い



ダイヤ(――『点では無く、線で捉える』、でしたね)


ダイヤ(奴の動きは直線的、方向転換の際に一瞬だけ制止する。そこから次の動きを予測するには……)



ダイヤ(つま先の方向に全神経を集中させる!!)




スーツの耐久的にも次の一撃で壊れる

一か八か、全神経を集中させる





ダイヤの正面で一瞬の制止後――


つま先はダイヤの方向を向いていた



ダイヤ「!! はああっ!!!」



方向が分かれば後は簡単だった


軌道に合わせて拳を突き立てる



ダイヤの拳は星人の腹部を貫いた

同時にスーツも壊れ、メキメキと鈍い音たてながら

突き立てた腕の骨が砕かれる



ダイヤ「痛っ……! ギリギリでしたわね」フー



激痛に耐えながらも

ホルスターからXガンを抜き取り

今度こそ止めを刺す



星人「ガガ……ゴガ………」


ダイヤ「ふっ……冥土の土産に一言申しますわ」



ダイヤは星人を背に、ルビィのもとへ歩みを進める




ダイヤ「―――黒澤家にふさわしいのは常に勝利のみ。覚えておきなさい」




バンッ! という音がダイヤの後ろで響いた





――――――

――――

――


千歌の頭を星人が捉える


千歌(――やばっ!? 死……!)




――スパッ!




ギリギリのタイミングで梨子が星人の腕を切り落とす

解放された千歌は一旦距離をとる



梨子「千歌ちゃん大丈夫!?」


千歌「ハァ……ハァ…大丈夫。ありがとう」




度重なるダメージで二人のスーツも限界が近い



梨子「これ以上はもう食らえない。時間的にも決着をつけよう」スチャ


千歌「そうだね……行くよ!!」




――二人同時に切りかかる


タイミングは完璧

回避は不可能だった



星人は切り落とされた片腕で千歌を薙ぎ払う



千歌「んな!?」バキッ



梨子の斬撃をもう片方の腕で軌道をずらし致命傷を避ける


体勢を崩した梨子を足で地面に叩きつけ

腹部を踏み潰す



――グチャ!



梨子「ぶはぁ!!」ベチャベチャ



スーツは壊れ、内臓は完全に破裂した

――致命傷である



千歌「!? 梨子ちゃん!!?」



千歌も助けに入ろうとするが

瓦礫の破片が足に刺さり動けない


千歌「いや! 梨子ちゃん!!!」




星人は勝ち誇った顔で梨子を見下す


鞠莉も千歌も梨子も

チーム屈指の戦闘力を持つ三人を倒したのだ

邪魔するものはもういない



星人の勝利―――







―――梨子は不敵な笑みを浮かべた


梨子(――今よ……津島さん!!)






――――――

――――

――



梨子『津島さん、ちょっといいかしら?』


善子『……何ですか?』ギロッ


梨子『津島さんには遠距離からの狙撃をお願いしたいの』


善子『はあ? 狙撃なんて出来ないわよ。弾速が遅すぎて当たらない』


梨子『止まっている的なら…問題ないよね?』


善子『それなら大丈夫だけど…止められるくらいならあなた達で仕留められるでしょ?』



梨子『もし、三人ともスーツが壊れてどうしようもない状況になったら、私が何としてでも奴を止める。そしたら、あなたは転送が始まるまで奴を撃ち続けてね―――』




――――――

――――

――


~建物 屋上~


善子「終われぇぇぇぇ!!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!



善子(梨子の捨て身の作戦を無駄にする訳にはいかない! 気に入らない人だけど…でもあんたにはまだまだ言いたい事があるのよ!! 勝手に死なせないんだから!!)ギョーン!ギョーン!



善子によるXショットガンによる遠距離狙撃は酷いものだった

ほとんどが道や建物に被弾


梨子や千歌の真横に当たったものもある


しかし一発、たった一発だけ当たればいい

幸運にも最初に放った一発が星人の頭を見事に被弾


頭部は破裂

完全に息の根を止めた




最後の星人を倒したことで

部屋への転送が始まった――






~GANTZの部屋~


ルビィ「おねぇちゃん! みんな帰って来たよ!!」


善子「ルビィ! よかった……間に合ったのね」


ルビィ「うん……おねぇちゃんと鞠莉さんが助けてくれたの。その時のおねぇちゃんの決めゼリフがカッコよくて――」


ダイヤ「んん!? 余計な事を言わなくていいです!」アセアセ


鞠莉「ほほーう、相当痛いセリフを言っちゃったんでしょうね」ニヤニヤ


ダイヤ「やかましいですわ!! そもそも鞠莉さんがキチンと仕留めないから――」ガミガミ




梨子「私……生き残ったのね」


善子「全く、何としてでも止めるって言ってたけど…もっと他の手は無かったわけ?」


梨子「まあ…私がどうなろうと別に構わないと思ってるし、津島さんだってそうでしょ? 私があなたの友人を巻き込んでしまったから……」


善子「確かに事情はどうあれ、ずら丸達を巻き込んだ事は許せない。でもね……あなただってもうこの部屋の住人でしょ? “リーダー”の方針で住人はもれなく大切な仲間なの」


梨子「仲間……」


善子「仲間が傷つく姿なんて見たくないの。自分の事はどうでもいいなんて言わないで」


梨子「うん……」


善子「それに、ずら丸達がこの部屋から解放されるまでサポートしてもらわないとね。責任とってきちんと生き残りなさい! ……梨子さん」プイッ


梨子「そうね、分かったわ……善子ちゃん」





ルビィ「――そういえば、花丸ちゃんは? まだ帰って来ないけど……」キョロキョロ


善子「っ!?」


千歌「………」


ダイヤ「確かに遅いですわね。他のメンバーはもう揃っているのに」




――チ~ン♪




ガンツから終了を知らせるベルの音がなった

“全員”の転送が済んだのだ



ルビィ「え……待ってよ。花丸ちゃんがまだだよ? なんで終わっちゃうの?」ポロッ


ダイヤ「そういう事……ですか」


ルビィ「どういう意味? なんで……なんで花丸ちゃんが……」ポロポロ



GANTZ『小原家

29点』



千歌「今回は星人の数が多かったから100点までいったメンバーも多いかもね」


鞠莉「100点になると解放されるんだったわね?」


千歌「そうです。自分の自由を諦めれば……死んだメンバを再生できる」




GANTZ『ピギィ

14点

TOTAL 19点』



鞠莉「再生……果南にもう一度会える……」


ダイヤ「………」




GANTZ『堕天使(笑)

45点

TOTAL 102点』




鞠莉「オウ!! 100点越えですネ!!」


ルビィ「善子ちゃん……自由になれるんだね」



善子「………」



画面が切り替わる



100点メニュー

1. 記憶を消されて解放される

2. より強力な武器を与えられる

3. メモリーの中から人間を再生する




善子(私はこの部屋から解放される為に戦ってきた。いつ死ぬか分からない戦いはもう続けたくないよ……でも――)



千歌「――……一番だよ、善子ちゃん」


善子「!?」


千歌「花丸ちゃんを再生するか迷ってるんだよね? 多分私も100点を超えてるはずだし、もし違っても次のミッションで達成してみせる」


千歌「私が必ず花丸ちゃんを再生させるから安心して」ニコ



ルビィ「ダメだよ! 千歌さんには生き返ってほしい人がいるんでしょ!? 花丸ちゃんはルビィが生き返らせてみせる。だから善子ちゃんには自由になって欲しい」


鞠莉「どうする? 善子ちゃん」



善子「……ふふふ」


ルビィ「?」



善子「ルビィが100点までいくのに、どれだけ時間が掛かるのよ? 仮にずら丸を再生できてもあんたが解放されるまでにそこから一年は必要でしょうね?」


ルビィ「うりゅぅ……」シュン


善子「千歌さんだって次回も生き残っている保障はどこにもない。現に今回だって危なかったわけだし」


千歌「ぐぬぬ……」


善子「だからさ……私の答えは決まってる」フー






善子「――三番、ずら丸を……国木田 花丸を再生しなさい!!」




――ジジジジ




善子の選択を聞き入れたガンツは

転送時に放出されるレーザー光線を照射する


レーザーは徐々に人を形成していく



―――そして





花丸「―――ずら? なんで二人とも泣いてるの??」




ルビィ「うあぁぁぁん!! よかった!! 良かったよぉぉ!!」ダキッ


花丸「ルビィちゃん!? 何があったの!?」アセアセ



善子「ずら丸、あなたどこまで覚えているの?」グスッ


花丸「えーっと、善子ちゃんが吹き飛ばされて…一人で戦おうと決心した後……あれ? その後は覚えてないよ??」


善子「そう……」




GANTZ『堕天使(笑)

2点』



GANTZ『ずら丸

0点』




花丸「え? 0点?? 善子ちゃんも2点になってるよ?」



ダイヤ「花丸さんは今回のミッションで死んでしまったのです。100点を取った善子さんが自らの自由と引き換えにあなたを再生させたのですよ」


花丸「!? 善子ちゃん……なんで」


善子「別に……あんたを今再生しないとルビィが解放されるまで数年はかかるから仕方なく選んだまでよ!」


ルビィ「さっきより期間が長くなってる!?」ガーン


花丸「そっか……マルは死んじゃったのか……善子ちゃん、ありがとうね」ニコ


善子「っ!?ウルッ つ……次は無いんだからね!!」プイ




本当に死んだメンバーが再生された


これほど嬉しいことは他に無い

採点待ちのメンバーも内心そわそわしていた




ダイヤ「次はわたくしですわね」




GANTZ『硬度10

35点

TOTAL 101点』




ルビィ「おねぇちゃんも100点だ!!」


善子「どうするつもり?」


ダイヤ「わたくしはどうするか始めから決めています。ルビィが解放されるまではこの部屋に居続けるつもりですから」



梨子「なら、二番を選ぶんですか?」


ダイヤ「いいえ。鞠莉さんには悪いですが――」






ダイヤ「――三番。松浦 果南さんを再生しなさい!!」




――ジジジジ




果南「――……? どうなってるの……千歌は?」



千歌「か……果南ちゃん!」ポロポロ


ダイヤ「全く……勝手にいなくなるんじゃありません。どれだけ必死に探したと思っているのですか!!」


鞠莉「もう! 私が再生しようと思ったのにぃ!! これから何を理由に戦えばいいのよ」プンプン



果南「ちょっ……なんで二人がこんな所にいるの!?」ゾッ


千歌「果南ちゃんが死んじゃってから結構時間がたったんだよ。その間に色々あってメンバーも増えたんだ」


善子「ベテランが全員いなくなった時は……ホント終わったと思ったんだから!!」


果南「千歌…善子……ごめんね? 私がもっと強ければ…」



鞠莉「果南は一人で頑張り過ぎなのよ。ちかっちも善子も誰かを守るだけの力を既に持っているわ」


果南「そうだね……仲間も多くなったみたいだし、私が死んじゃってた間にずいぶん成長したね」ニコ


善子「当然よ! 私だって100点を取るまで強くなったんだから!!」ブイ


果南「ふふ、ならこれからは善子に守ってもらおうかな?」




ガンツの画面が切り替わり採点が再開される




GANTZ『ちかっち

45点

TOTAL 112点』




千歌(ついに……ついに100点を超えた)


果南「おお、千歌も100点越えか!」


花丸「おめでとうございます!」


鞠莉「ま、当然っちゃ当然の結果よね」



善子「……やったわね、千歌さん」


ダイヤ「これであなたの願いも……」



最初は自分をかばって死んだ果南を生き返らせる為だった


もう一人の親友もここで死んだ事を知ってからは


二人を生き返らせると誓った



果南が仲間によって再生された今


千歌の選択は決まっていた――





千歌「――曜ちゃんを、渡辺 曜を再生してください」





――

――――

――――――


(あれ……なんで倒れてるんだっけ?)


果南『曜! しっかりして!! こんなところで死ぬわけにはいかないでしょ!!?』


善子『果南さん! まだ襲ってきます!!』ギョーン!ギョーン!



(ああ……そうだ、果南ちゃんをかばったんだっけ)


果南『くっ! 血が止まらない!! お願いだから目を開けて!!』


(よかった……果南ちゃんは無事だったんだね)



(――声も出ないし、体も動かないや。転送まで…間に合いそうもないか)





(もうすぐ100点だったのになぁ…うまくいかないもんだね)






(千歌ちゃん……ごめんね。明日…一緒に登校できそうに無いや……)







(千歌ちゃん…きっと心配するだろうな……)








(――――ずっと一緒に………いたかったな)











――

――――

――――――




―――ジジジジ





「う……うぅ……」ポロポロ



(――あれ? ここは……あの部屋だ。間に合ったの?)



「久しぶりね。曜さん……」


「また会えて嬉しいよ」


「この方が千歌さんの親友ですか」


「すごく……可愛いです!」


「ずらぁ~」



(果南ちゃんに善子ちゃん……残りのメンバーは知らないぞ?? どうなってるの?)





「――もう……もう二度と会えないんじゃないかって……凄く怖かった」ポロポロ



(え? この声って……まさか―――)








曜「―――千歌……ちゃん?」


曜「どうして……どうして千歌ちゃんが“また”この部屋にいるの!?」





千歌「………」グスッ


梨子「――え?」




千歌「曜ちゃんお帰り……そして―――“ただいま”」ニコ






―――四章へ


後書き

コメント、応援、評価ありがとうございます!
楽しみにしてくださる方がいるのはとても嬉しいです!!

さて、物語も三章が終わりメンバーもやっと揃いました
章が進むに連れて段々と分量が多くなってしまうのは何故だろう(笑)
そろそろプロローグで登場したキャラクターを出したいかな?

では、四章も読んで頂けると幸いです!


このSSへの評価

3件評価されています


SS好きの名無しさんから
2016-11-08 19:13:32

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2016-11-13 23:01:50

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2016-11-03 11:26:46

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2016-11-08 19:13:37

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2016-11-05 00:35:01

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2016-11-03 11:26:48

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-11-03 11:27:22 ID: uupv_KZ6

とても面白いです。いつも楽しみにしています。

2: SS好きの名無しさん 2016-11-08 19:15:04 ID: 3C0RgrLv

カタストロフィ編まで期待しとるで!


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