千歌「……GANTZ?」 Part1
1, Aqoursのメンバーは登場しますがグループは結成されません。
2, キャラクターの死亡描写がある場合あり。
3, 時系列は出来るだけアニメに寄せます。
ssを書くのは初めてです。温かい目で見守って頂けると幸いです。
プロローグ
~某日とある東京のマンションの一室~
???「………100点」
マンションの一室に置いてある黒い球体。そこには私の顔写真、名前と100点という表示。ここまで稼ぐのにどれだけの時間と犠牲を払ったことだろうか…
画面が切り替わりそこには100点を獲得した者が選べる3つの特典が提示された。
100点メニュー
1. 記憶を消されて解放される
2. より強力な武器を与えられる
3. メモリーの中から人間を再生する
やっと…やっとこの戦いから解放される。今までの怖くて、痛くて、悲しい記憶が走馬灯のように流れていった。
???「お疲れ様…その年でよくここまで来たね。後のメンバーは……私が何とかするから心配しないで!」
???「リーダー…ホントにいいんですか?」
そう……今回のミッションで8人もの犠牲を払ったのだ。
全員リーダーととても親しかったメンバーだけにショックも大きい。
私が抜ければ…リーダーは一人で戦わなくてはならない。
それでも彼女は
???「大丈夫っ!今までみんなに助けられてばっかりだったんだもん……今度は私の番。あなたにはあなたの人生があるんだから!……ファイトだよ!」
もう…こんな時に無理して明るく振る舞わなくてもいいのに。
でも、そんなリーダーが背中を押してくれるんだ…なら私の答えは――
???「1番…私を解放してっ!」
一章
~3年後、内浦~
千歌「明日はついに入学式かぁ~、先輩って呼ばれるんだね!」
曜『そうだね!…まあ千歌ちゃんは部活やってないから呼ばれる機会は少ないんじゃないかな?』
千歌「うぅ…そうだよね…やっぱり部活に入らないとダメだよねぇ……」
入学式を翌日に控えた夜、私と曜ちゃんは電話でおしゃべりをしていた。そう…それはいつも通りの会話だった。
千歌「部活かぁ…入りたい部が無いからどうしようもないんだよね」
曜『入りたい部活が無いんだったら作っちゃえばいいんじゃない?千歌ちゃんがやるんだったら私も……っ!?』ゾクゾク
千歌「??どうしたの曜ちゃn」
曜『ごめん千歌ちゃん!!急用思い出しちゃった!!!もう切るね!』
まただ…高校生になってから時期は一定じゃないけど、夜におしゃべりしたり出掛けたりしてると突然用事を思い出して終わらせようとするようになった。
千歌「もうまたぁ~用事があるなら仕方ないけど…じゃあまた明日ね」
曜『……うん、また明日。明日…絶対会いに行くからねっ!』
そしてこんな時は必ず…必ず曜ちゃんは悲しそうに、でも覚悟を決めたような口調で会話を終わらせる。
今回もそうだった。
……ただ、今回違っていたのは翌朝、待ち合わせの時間を過ぎても曜ちゃんが来ることは無かった――
果南「曜が行方不明になってからもう3日たったんだよね…少しは落ち着いた?」
私は幼馴染で3年生の果南ちゃんの家にいた。
曜ちゃんがいなくなったあの日、警察や学校総出で探したけど手がかりは一つも見つからなかった。
今も捜索は続いているけどこのまま何も見つからなければ捜索は打ち切られてしまうらしい…
千歌「曜ちゃん…本当にどこに行っちゃったんだろう……」
果南「…電話では急用だって言ってたんでしょ?ならまだその用事が済んでないから帰って来ないんじゃないかな?」
千歌「連絡も無しに?そんなの絶対おかしいよ!…それに曜ちゃん明日絶対会うって言ってたんだもん…」
果南「千歌……」
千歌「今日も曜ちゃんを探しに行こうよ!もしかしたら…今日なら……」
果南「千歌…大丈夫だよ、私が必ず…どれだけ時間がかかっても曜を連れ戻すからさ……千歌は安心して待ってなよ」
千歌「……果南ちゃん?」
私はこの時、曜ちゃんとの最後の会話と同じ感覚を覚えた。
もしかして果南ちゃんも突然いなくなってしまうんじゃ…そんな気持ちが顔に出ていたことに気付いた果南ちゃんは優しい表情で
果南「そんな顔しないの。心配しなくても大丈夫だよ!私は“強い”からね?」
果南ちゃんの家か帰る頃にはすっかり日が暮れていた。
果南ちゃんはああ言っていたけどやっぱり曜ちゃんを早く見つけたい…
千歌「今日はどこを探そうかな…時間も遅いしあんまり遠くまで行けないけど、明日は休みだし……うーん」
???「……あなたがタカミ チカさん?」
考え事をしながら歩いていた私の前に誰かが立っていた。
右手を後ろに隠し、フードを深く被っていて顔はよく分からないけど身長や体つき、声色か考えて女の子だということはわかった。
千歌「確かに私の名前はそうですけど…どちら様ですか?」
私は答えるがその子は何も反応しない。
早く行きたいんだけどな~なんて思っていた私はそのまま立ち去ろうとその子とすれ違おうとしたまさにその時、
ザクッ――!
腹部に鋭い痛みを感じた。
千歌「えっ…はっ?……えっ………?」
あまりにも突然の事で何が起こったのか直ぐに理解できなかったが、痛みのする方に目をやるとそこにはその子の右手と握られていた包丁が深々と刺さっていた。
包丁を引き抜かれると私の体を巡っていた赤い液体が滝のように溢れ出し、崩れるようにその場に倒れた。
千歌(…よ…う……ちゃん…果………南…ちゃん……)
薄れゆく意識の中、二人との思いでが頭の中を駆け巡った。
そんな私が最後に目にしたものは綺麗な長い赤髪をした女の子の泣き顔と「ごめんなさい」という言葉だった。
そして、私の意識は冷たくて暗い闇へと落ちていった――
千歌「――――イヤアア!!!??」
再び私が目を覚ましたのは見知らぬ部屋の一室だった。
千歌(えっ!?えっ??私っ…道で刺されて??お腹からいっぱい…でも生きて……なんでっ?)
何が起こったのか私には全く理解できなかった。
千歌(誰かが救急車を呼んでくれたの?でもここって病院じゃ…ないよね??)
???「な…何で……何で千歌がここにいるの!!!??」
絶賛混乱中の私の両肩を力強く抑えながら酷く動揺した口調でいきなり問い詰めれれた。
――その人物は私がよく知ってる人物であった。
千歌「果南ちゃん!!?」
――私は果南ちゃんと別れた後、つまりこの部屋で目覚める直前に何が起きたのかを説明した。
果南「―――なるほどね。じゃあ千歌はその子に刺されて死んだからこの部屋に来たって事だね」
千歌「えっ?でも私こうして生きてるよ??心臓も動いてるし足もあるよ」
果南「違うんだよ千歌…この部屋に来たってことはみんな一度死んでるんだよ。…もちろん私もね?」
理解……出来なかった。
果南「私は半年くらい前に、ダイビング中の事故でね?あのときの私も今の千歌と同じ反応だったな~。でもね……」
千歌「ちょっと待って!?ホントにみんな死んでるの!!?ここにいる全員!?」
見渡すとこの部屋には私と果南ちゃんの他に3人の女の子がいたのだ。
一人は隅っこで膝を抱えてすすり泣いていて、一人はブツブツ独り言を言いながら部屋を行ったり来たり、そしてもう一人はとても落ち着いた様子でいて、グレーのパーカーを着たとても可愛らしい子で下に黒いぴちぴちした服を着ている。
よく見ると果南ちゃんも同じもの着てるな…
果南「そうだよ…他の“二人”にはもう状況は説明したんだけど…まあそう簡単には受け入れられないよね」
果南「…それと、もう隠してる必要が無くなったから言うけど実はね、よ……」
黒い球『あ~た~~らし~い~あ~さがっ来た』
5人「「「「「!!?」」」」」
突然部屋の端にあった黒い球からラジオ体操?の音楽が流れ始めた。
この部屋に来てから理解できないことが多すぎる…
果南「そっか、今回はこれで全員なんだね」
千歌「どういうこと?毎回違う人が集まるの??」
果南「ちょっと違うね。前回生き残ったメンバーに毎回新しい人が集められるんだよ。集まる人数は日によって違う。今回は結構少ないかな…」
果南ちゃんが説明し終わると同時に黒い球から流れていた音楽も終わり表面に文字と機械的な音声が流れ始めた。
黒い球『てめえ達の命は、
無くなりました。
新しい命を
どう使おうと
私の勝手です。
という理屈なわけだす。』
千歌「なに…これ……?」
果南「この球はGANTZ(ガンツ)っていうの。」
千歌「ガンツ?」
また表示が切り替わった
GANTZ『てめえ達は今から
この方をヤッつけてに行って下ちい
こだいぎょ星人 特徴:少し強い、生臭い 好きなもの:人間 口くせ:ぎょぎょぎょ』
果南「そう。私より前に居た人がそう呼んでたんだ。……っと、そこの君!危ないから一旦こっちに来て!」
隅っこに座っていた子に果南ちゃんは注意した。
何が起こるんだろうと思っていたら突然ガシャン!とガンツの両端が勢いよく開いた。
千歌「これは…銃なの?おもちゃみたい」
果南「使い方はあとで説明するから!初参加のみんなはこの球から自分の名前の書いてあるケースを持って!」
果南ちゃんの指示通りケースを探すと、「みかん星人」と書かれたケースを見つけた。
千歌(多分これだよね?他のは私要素無いし…)
果南「みんな見つけた?なら…」
果南ちゃんが言い終わる前に一人の女の子が悲鳴をあげた。
驚いてその子を見ると両腕が徐々に無くなっていった。
そして一人また一人と体が徐々に消えてく。
果南「っ!!もう転送が始まった!千歌!早くケースに入ってる服を着てっ!!!」
千歌「ちょ…え?待ってよ!わけわかんないよ!!!」
そうこうしてるうちに窓ガラスを見ると私も頭の先が無くなり始めている。
果南「千歌お願い!!早く着替えて!!」
すでに果南ちゃんは口とお腹しか残っておらず、他の人はすでに消えてしまった。
パニックになりながらも言われた通り着替え終わった頃には、手足の消失も始まっていて頭もおでこまで消えていた。
消失が目まで達したとき私は見覚えのある場所に自分が立っていることに気が付いた。
千歌「ここは…沼津港?」
そこは店もすべて閉まった誰もいない夜の沼津港だった。
~沼津港 夜~
パーカーの子「へー、この子はちゃんとスーツ着たんだね。あの二人とは大違いだよ」
果南「んな!?何でスーツ着てないの!!?それにもう一人の子は…」
泣いてた子「ひぃ!あの時…び…びっくりしちゃって…それで落として……もう一人は家が近いって…」
果南「くっ!早く連れ戻さなきゃ!!」
パーカーの子「ほっときなよ果南さん!説明はしたんだよ?そこまで世話する必要はないはずよ」
果南「でも…」
千歌「あの…果南ちゃん?」
果南「ん?あぁごめんね…説明しなきゃだよね」
そう言って果南ちゃんは手首に付いていた小さな機械を操作した。
すると画面には沼津港周辺の3Dマップが表示された。
果南「いい?青い丸で表示されてるのが私で敵が現れると赤い丸が表示されるの」
千歌「敵?私たちこれから戦うの??」
果南「あー…うん、そうだよ。戦うんだよ…でも今回千歌は戦わなくていいよ?」
千歌「えっ、なんで?」
果南「だって千歌は今回が初めてだし…それにあんまり運動神経がいいイメージもないし…」
パーカーの子「つまり戦いに参加しても足手まといってことよ」
果南「ちょっと!そこまでは言ってないでしょ!?」
千歌「あはは…そうだよね~」
パーカーの子「まあ、囮とかには役に立つんじゃない?」
果南「………」ギロッ
パーカーの子「ははっ、……ジョーダンよ」
果南「はぁ…でも千歌も一応武器は持っておいてね」
千歌「?これってあの部屋にあったおもちゃの銃??」
果南「“おもちゃ”なんかじゃないよ?これはね」
パーカーの子「――果南さん」
さっきまでのおちゃらけた話し方とはうって変わった声で名前を呼び、真剣な眼差しで先ほどの機械を見ている。
果南「…レーダーに映ったんだね。二人は物陰に隠れてて!」
私たちは少し離れた所に身を隠した。スーツを着ている私にも果南ちゃんが持っていたレーダーが付いていたので操作してみると、複数の赤い丸が表示されていた。
千歌「敵だ…奥の方にいるんだよね??」
辺りは真っ暗、街灯の光だけが頼りなので遠くのものはハッキリと見えない。
…でもわかる。
100m先にいるのは決して人ではない何かである。
徐々に近づいてくるそれは、大きなサメのような外見で人間の手足のようなものが付いている。
50mを切ったところで、奴が手に何か持っているのがわかった。
隣の子は目が悪いみたいで分からないみたいだけど、私には分かった。…正直分かりたくなかった……
千歌(さっき部屋にいた子の頭だ……)ゾワッ
街灯に照らされた奴らは皆口元が真っ赤になっていた。間違い…あの子を食べたのだ。
千歌(二人とも……本当に大丈夫なのかな……)ブルブル
~数分前~
果南「……二人ともちゃんと隠れたみたいだね」
パーカーの子「…フゥー……フゥー……フゥー……」ブルブル
果南「……まったく、あなたもまだ“新入り”なんだからカッコつけなくてもいいのに」
パーカーの子「そうだけどっ!……それでもあの二人と違って私は一回経験してるんだから……安心させる義務というか、責任というか――」
果南「……やっぱ“善い子”だね?」
パーカーの子「うっさい!!そもそもなんで前回から3日でもう次のミッションなの!?話がちがうじゃない!!」
果南「そんなの知らないよ……私だってこんな短期間に次が来たこと無かったし……」
パーカーの子「何よ……それ」
果南「――でも、好都合だよね?」ニヤ
パーカーの子「は??」
果南「こんな短期間でミッションが続けば100点まであっという間だってこと」
パーカーの子「ちょ……本気で言ってるの!?あんの繰り返してたらいくら果南さんでも……」
果南「――大丈夫だよ、私は強いからね?」ニコ
パーカーの子「……果南さん」
果南「……っと、おしゃべりはここまで。敵も大分近づいてきたね。数は5……6体だから一人頭3体だね」
パーカーの子「えぇ!?一人で3体も相手するの!?」
果南「文句言わない!!ほら構えて!!」カチャ
サメの姿をした6体の星人が果南たちに一斉に襲い掛かってきた―――
星人との距離が10mを切ったタイミングで果南は構えていたハンディサイズの太い円筒形の銃を二発発射した。
しかし、星人に変化は無く勢いそのまま果南目がけてその鋭い牙で噛みつこうとしていた。
千歌(――果南ちゃん!!)
果南は全く動じない。
星人が噛みつこうとしたその瞬間
バンッ――!
星人の頭と胴体が突然破裂した。
付近の星人もその現象に驚いている。
果南「もう一体っ!!」
ギョーンという独特な発砲音と共に見えない弾丸を発射する。
しかし、星人は素早く横へかわす。
果南「へー、魚なのに陸でも意外と速いんだね……」
果南と二体となった星人は一定の間合いのまま睨み合った。
その一方
パーカーの子「くっ……この!この!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!
パーカーの子も銃の連射で応戦している。
が、全く当たらない。
三発目を発射したところで発砲音がしなくなった。
その隙を見逃すはずもなく――
ドゴッ――!
パーカーの子「ぅぐあっ……!!」
体当たり攻撃をまともに食らった。
衝撃でノーバウンドで数メートルも飛ぶほどである。
並の人間、ましてや女の子なら無事なはずがない。
……だが――
パーカーの子「このっ!油断した!!」
なんとすぐに立ち上がり銃を構えた。
無傷だったのだ。
あんなに吹っ飛んだのにも関わらず。
千歌(この黒い服のおかげ……なのかな?)
千歌は無意識のうちに自分が着ているスーツに目を向けた。
――いくら隠れているとはいえ、戦闘中に敵から目を離すことは命取りになる。
果南「――!?千歌!!避けてぇぇぇ!!!!!」
スパッ――
千歌(……えっ?)
遮蔽物ごと少女が真っ二つに引き裂かれた―――
~数十秒前~
果南(参ったな……今回の星人は思った以上に賢いみたい……)
銃を構えたまま近づくと、星人も後退して距離を保ってくる。
果南(この銃の射程がだいたいバレちゃってるね……こんなことなら“大きい方”も持ってくるべきだった)
星人の一体の頬が急激に膨らんだ。
果南(んな!?何か来る!!!)
星人は自分の足元に口からビームのようなのを発射した。
そのまま果南目がけて振り上げる。
果南(マズッ!?ギリギリ避けられるか!!!?)
紙一重で回避。
しかし、この延長線上に何があるのかを思い出した果南は青ざめた。
果南(まずいっ!この方向は!!)
果南「――!?千歌!!避けてぇぇぇ!!!!!」
果南の叫びも空しく星人の攻撃は二人のいる遮蔽物を切り裂いた――
―――千歌には何が起きたのか分からなかった。
誰かが叫んだと思ったらいきなり真っ二つにされたのだ。
隣にいた女の子がやられた。
辺りの赤い水溜りと無残な姿になり果てたその子を認識とき、直感で分かってしまった。
“次は私の番”だと
パーカーの子「ヤバッ! 一体そっち向かった!!」
果南「!? こっちも手一杯だよ!?」
そんな千歌に向かって猛スピードで襲い掛かて来る――
千歌(ちょっと!?コッチ来てる!!?)
千歌の手には先ほど果南から渡された武器がある。
しかし、不幸にも使い方は教わっていなかった。
果南(早くこいつらを倒さないと!でも……)ギョーン!ギョーン!ギョーン!
パーカーの子(連携が凄い!進路が完全に塞がれる!!)ギョーン!ギョーン!
まだ戦いなれしていない人が目の前の敵以外を考えれば、隙が生れる。
敵の片方の予備動作を完全に見落とした。
スパッ――!
パーカーの子の右肘から下がボトッと落ちた。
パーカーの子「っっっうあぁぁあああぁぁあああ!!!!!!!」
あまりの激痛でその場にうずくまる。
傷口からの激しい出血。
敵はとどめを刺そうと再びビーム攻撃の予備動作に入る。
果南「このっ!!」バキッ!
間一髪、果南の右ストレートが決まりビームは明後日の方向へ。
怪我人を抱え距離を取る。
果南(やっぱりあの攻撃はスーツで守れない……このままじゃこの子が死んじゃう)
果南(千歌……!?千歌はどうなった!!?)――
――とっさに銃を構えた千歌は今までの動揺がウソのように無くなっていた。
千歌(引き金は二つ……上を押し込んで起動、下も押し込めば発射……三発連射するとエネルギーチャージが始まって撃てなくなる………射程は――)ブツブツブツ
千歌(――スーツを着ていれば素手でも奴を倒せる……射程がバレてるから銃じゃ難しいから………)ブツブツブツブツ
不思議な感覚だった。
このままじゃヤラレル、戦わなくっちゃダメなんだと自覚してから明らかに“何か”が変わった。
――いや違う、変わっただけで初めて扱う物の使い方が分かるか?
自分がなぜ武器の使い方が分かっていたのか、今の千歌は疑問にすら思っていなかった。
生き残る為。
目の前の敵をどう排除するかで頭がいっぱいだったのだ。
星人はビームの予備動作に入る。
もちろん銃の射程外。
千歌は――。
千歌「いっっっけええええぇぇ!!!」
構えていた銃を思い切り投げつけた。
普通の女の子の肩なら大したことは無い。
……が、スーツの力が加われば?
銃は星人の目に直撃した。
うめき声と共に大きく怯む。
千歌はそのまま間合いをつめ――
ギョーン!ギョーン!ギョーン!――
突き刺さったまま引き金を引いた。
若干のタイムラグの後、星人は内側から三回破裂した。
果南「―――……千歌」
星人の返り血で染まった千歌の姿は、果南が見てきた千歌とはまるで違って映った。
その姿はまるで。
散っていったかつての仲間の姿と被ったのだ――
果南(千歌……あなたは一体………)
千歌「っ!? 果南ちゃん!! その子は!!!?」
こっちに気が付いた千歌はいつもの千歌だった。
果南(まあ、かなり特殊な環境だけど……これはいつも通りの千歌かな?)
千歌「果南ちゃん!!腕が!!!早く病院に連れて行かないと!」
果南「落ち着いて千歌。大丈夫だから」
千歌「大丈夫って……腕が無くなってるんだよ!?」
果南「あのね、このミッションを終わらせれば……つまり敵を全滅させればあの部屋に帰れるの」
千歌「……帰れる?」
果南「そう。その時に“生きて”さえいればどんな大ケガをしてても治る」
果南「……ただ、この子の出血が止まらない。このままじゃ死んじゃう」
千歌「だったら……やることは一つだね?」
果南「そう…残り三体の星人を私たちで倒すしかない」――
果南が二体、千歌が一体倒し残りは三体となった。
千歌の奇策はすでに見られていのでもう使えない。
距離を開けるとスーツを貫通するビーム攻撃がくる。
となれば……
果南「素手の格闘戦しか無いよね?」
千歌「うぅ……生き物を殴ったことないよぉ」
果南「千歌……さっき銃で倒したじゃん?殴るよりよっぽど過激なことだと思うよ?」
千歌「そうだけど……」
果南「……まさか初回から千歌と共闘するなんて思ってなかったよ」
果南「――覚悟はできてる?」
千歌「……もちろんだよっ!」
傷ついた仲間を救うため。
またあの日常に帰るため。
二人の少女は立ち向かう―――
―――星人はパワーこそないものの、素早い動きでこちらの攻撃をかわす。
そして確実に二人のスーツにダメージを与えていく。
千歌「っうう!全然攻撃が当たらないよ!?」シュッシュッ
果南「……仕方ない、千歌!合図したら思いっきり上に飛んで!!」
千歌「!?わ…わかった!!」
どうやら果南には策があるようだ。
千歌(よくわからないけど、果南ちゃんに任せるしか無いよねっ!)
敵の攻撃を防ぎながら時を待つ。
果南にはまだ敵に使用していない武器がある。
それは果南が最も使いこなせる武器であったが……。
果南(チャンスは一瞬、パンチが当たらない以上“この武器”も無理。最低でも一体は仕留める!!)
青く光っていたスーツが点滅し始める。
スーツの耐久が限界まで近づいているのだ。
早くしないとヤラレル……
――その瞬間、果南の正面に星人三体が並んだ。
チャンスが、来た―――
果南「――飛べ!!千歌!!!」
果南は腰に付けていたブレード展開し、水平に薙ぎ払った。
スパッ――!!
――三体の星人の上半身と下半身は切り裂かれた。
合図を聞いた千歌は力の限り上に飛んだ。
着地したときには星人は皆切られてバラバラに転がっていた。
千歌「それって……剣?」
果南「うーん、形状的に刀だとおもうな?切れ味が凄いから倒せるのは分かってたけど……私の剣術じゃ当たらないと思ったからね。チャンスを待ってたんだよ」
千歌「もう……ダメだとおもったよぉ」グスッ
果南「はは、ゴメンゴメン。でもまとめて倒せたからいいでしょ?」
千歌「まあね……これならあの子も助かるね!」
果南「そうだね!もうすぐ部屋に転送されるはずだけど――!?」
―――前にも言ったが戦闘中に敵から目を離すのは命取りである。
腰から下を切り落としただけではすぐには死なない。
不運にもまだ絶命していない星人は千歌の方向に上半身が向いていた。
一矢報いるため最後の力を振り絞り、ビームを放った―――
―――それは反射的だった。
千歌の後ろにいた星人が攻撃するのが目にはいった。
このままでは千歌がやられる。
千歌を横に押しのける事は出来た。
ただ、千歌に向けられた攻撃は……果南の心臓を貫いた―――
千歌(――……えっ?)
果南の胸を何かが貫き、崩れるように倒れる。
千歌「か……な……イヤ………イヤアアアアアァァ!!!!!」
星人は追撃する力はもう残っていなかった。
千歌は必至で呼び起こす。
千歌「いやだよ!!果南ちゃん!!!しっかりして!!!!!」
果南「………ち……か、よか……った………」ドクドク
千歌「っっ!?そうだ……もうすぐ戻れるんだよ!!戻れば治るんだよね!!?」
果南「はは……千歌……きい………て……」
千歌「もうしゃべらないで!!」
果南の体がどんどん冷たくなっていく。
目の焦点も合っていない……
果南「あの………ね……よ………う……も………ひゃく……て……――」
――そのまま果南は動かなくなった。
うっすらと目を開けたまま……
その瞳孔は大きく開いていた。
千歌「うそ……うそでしょ!?起きて!!起きてよ!!」ボロボロ
果南「………」
転送が始まった。
泣きじゃくりながら果南に呼びかけ続ける。
まだ生きているはず。
まだ間に合う。
千歌は叫び続ける――
――だが、その日果南が転送されることは無かったのだった。
千歌は
また
大切な人を
失った……
~GANTZの部屋~
パーカーの子「………果南さんは?」
千歌「うぅ……果南……ちゃん………」ボロボロ
あの部屋に戻って来られたのは二人だけ。
千歌の様子を見て、彼女も察するのは容易だった。
パーカーの子「っあのバカ!あとちょっとで100点だったのに!!死んじゃったら意味ないじゃない……」
千歌「ぐすっ……100点?」
チン!という昔の電子レンジの音がGANTZからした。
今までの制限時間の表示が消え、新たな文字が浮かんだ。
GANTZ『それぢは、ちいてんを
はじぬる』
パーカーの子「今回のミッションの採点が始まるのよ。」
千歌「採点?」
パーカーの子「そう。倒した敵の数と強さに応じた点数が貰える……らしい」
GANTZ『堕天使(笑) 0点 TOTAL 10点』
パーカーの子「ほらね?今回は誰も倒せなかったから0点」
GANTZ『ミカン星人 10点』
千歌(10点……私は一体倒したんだもんね……)
パーカーの子「あの星人10点だったのね……今回生き残ってれば100点だったのに!!」
千歌「ねえ、この点数って何なの?100点取るとどーなるの??」
パーカーの子「えーっと……果南さんが言うには……いや、見てもらった方が早いか」
パーカーの子「ガンツ!100点メニューを見せて」
その子の呼びかけで再び表示が切り替わる。
100点メニュー
1. 記憶を消されて解放される
2. より強力な武器を与えられる
3. メモリーの中から人間を再生する
パーカーの子「今日みたいなミッションをこなして100点を取ると、この中から一つ選べるらしいの。……実際に見たこと無いからホントか分からないけど」
千歌「一番を選べば……もうあんな戦いをしなくてもいいって事だよね?」
パーカーの子「そうでしょうね……果南さんは三番を選ぼうとしてたけど」
千歌「!?そっか!!私が100点を取れば果南ちゃんは生き返るんだね!!」
―生き返る。
また果南に会える。
ほんの僅かだが希望があった。
千歌「果南ちゃんは……誰を生き返らせようとしたの?」
パーカーの子「あぁ、あなたは知るはず無いか。多分、前回までリーダーをやってた人だと思う。」
千歌「え?果南ちゃんがずっとリーダーだったんじゃ無いんだ」
パーカーの子「私も3日前の前回が初めてだったからよく分からなかったけど……果南さんもその人の指示に従ってたから多分そう」
パーカーの子「その人も普通の女の子だったのに滅茶苦茶強かったな……」
千歌「ならなんで……」
パーカーの子「果南さんをかばったのよ……即死だったわ」
千歌「そんな……」
パーカーの子「果南さんもかなりショックだったみたいでね……『私のせいで大切な幼馴染の親友を死なせてた』って言っていたわ」
千歌「大切な幼馴染の……親友??」
―千歌は何かが引っかかった。
3日前……親友の失踪……この部屋………前リーダーの死……果南ちゃんの幼馴染……
ほとんど分かっている自覚はあった。
しかし……聞かずにはいられなかった。
千歌「――前のリーダーの名前って……分かる?」
パーカーの子「えぇ、確か――
“曜ちゃん”って呼ばれてたわ?」
――千歌は今までの曜の妙な異変の原因がやっとわかった。
千歌(曜ちゃん……一年前からこんな戦いに参加してたんだね。いつ死んじゃうか分からないこんな夜を何度も――)
――曜との最後の電話に込められた思い。
絶対に明日千歌ちゃんに会う。
千歌ちゃんとおしゃべりをする。
千歌ちゃんと遊ぶ。
千歌ちゃんと……
どんな事を思っていたか、全部は分からない。
でも、あの夜。
曜は確かにここにいた。
姿は無いけれど、確かに曜を見つけた――
涙は出なかった。
自分がどうするべきか。
その答えが見つかった――
パーカーの子「そういえば、私たち自己紹介がまだだったわね?」
千歌「え?あぁそうだったね!すっかり忘れてたよ……」アハハ
千歌「私は高海 千歌。浦の星女学院の二年生だよ!!」
パーカーの子「えぇ!?同じ学校の先輩だったの!!?この学校の生徒率たっかいわね……」
パーカーの子「私も今年、浦の星に入学したの」
千歌「そうなの!!後輩なんだぁ」
パーカーの子「まぁそうなるわね。名前は―――」
善子「―――津島 善子よ」
―――二章へ
沼津チーム最高やんけ