2018-07-26 02:17:02 更新

概要

10章です。この章ラストの【14ワ●:Fanfare. Frederica】まで投下完了です。


前書き

注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。

・わるさめちゃんと称しているだけの春雨駆逐棲姫の形をしたノリとテンションの女の子。

・明石さんの弟子をしているアッシーという短気で無礼気味な明石君。明石表記が明石君でお馴染みのほうが明石さん表記です。

※海の傷痕は設定として
【2次元3次元、特に艦隊これくしょんを愛する皆様の想いを傷つける最悪な言動】
をすると思います。相変わらずの作者の勢いやりたい放題力量不足を許せる海のように深く広い心をお持ちの方に限り、お進みください。

もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。


【1ワ●:どんちゃんな騒ぎ】

 

1

 

サラトガ・雷「……」ジーッ

 


提督「な、なんでしょう」


 

サラトガ・雷「男らしくない」

 

 

提督「……はあ?」

 

 

雷「あそこは抱き締めるとかしないと!」

 


サラトガ「あそこはGo for brokeです。絶対に押し切れていましたね」

 


提督「現状押し切ったところで無責任な結果になりますので」


 

サラトガ「む、いくじなしとも誠実とも受け取れます。これが日本男児の社会問題草食系なのですね」

 

 

雷「好きなタイプ、駆逐艦なんじゃないかしら。電みたいな子でしょ?」

 

 

サラトガ「日本人はみんなロリコンって漣さんがいってました。リアリー?」

 

 

提督「知りませんよ……」

 

 

雷「あ、じゃあ、第6駆の中じゃ、誰が一番タイプ?」

 

 

提督「電さん」

 

 

雷「まさかこの手の質問に即答してくれるとは意外ね……」

 

 

提督「素直になってゆくスタイル。そうですね、響さんは不思議なところがあって、観察していると面白いです」

 

 

雷「まあ、私達のなかで誰が不思議っ子かといわれると確かに響ね……」

 

 

提督「響さんはサラトガさんと似ているところがありますね。サラトガさんも見ていて不思議で面白いところがあります」

 

 

サラトガ「んー、そうかしら。私はむしろ日本で過ごした時間のほうが多いですよ。でも、日本の文化は面白いです」

 

 

提督「Japan and America see things differently、みたいな」



サラトガ「日本語でおk」

 

 

提督「サラトガさんは日本の若者文化に染まってるんですね」


 

サラトガ「尊敬している偉人は松尾芭蕉、趣味はアンテナショップ巡りです。なめんなよー、にゃー」

 


雷「司令官もなんか読書以外の趣味でも見つけたらどう? アウトドア系の趣味がいいと思うわ」

 

 

サラトガ「なら私の旅路に一緒にどうです? 私は鎮守府の皆とよく行くのですが、たまには違う鎮守府の方とも」

 

 

提督「それは面白そうですね。ぜひ」


 

雷「司令官のコミュ力が格段にあがっているわね」

 

 

提督「雷さんもついてくるんですよ。旅のともは道連れなので」

 

 

雷「え、私もいいの?」

 

 

サラトガ「もちろん。人数は多いほうがいいんです」

 


雷「じゃあ行くー!」

 

 

提督「ただこの戦争終わってからですね。海の傷痕を倒してから、です」

 

 

サラトガ「……」

 

 

サラトガ「大丈夫ですか?」

 

 

提督「No problem」


 

サラトガ「Cool!」ダキッ

 

 

提督「Oh、これが提督の役得ってやつですか、雷さん」

 

 

雷「そうねえ。司令官の表情に全く変化ないのはさておき、司令官が問題ないっていうのなら、大丈夫でしょって気にもなるのは本当よ?」

 

 

提督「……嬉しいことです」

 

 

提督「……、……」

 

 

雷「またなにか考えてる……」

 


2

 


 

間宮「……あ、あの」

 

 

ぷらずま「っち。司令官さん余計なことをいったのですね」

 

 

わるさめ「答えてやりなよ☆」

 

 

ぷらずま「うっとーしい。二回戦目は漣のやつに煽られてテメーが暴走したのが敗因なのです」

 

 

わるさめ「記憶改竄してんじゃねっス……!」

 

 

わるさめ「司令官絡みで煽られて暴走したお前をわるさめちゃんが止めに入って同士討ちからの隊列崩壊ダルオオ!?」

 

 

ぷらずま「……疲れているので、率直に答えます」

 

 

ぷらずま「全て真実なのです」

 


ぷらずま「ここには良い思い出も確かにありました。それとは比較にならないくらいの嫌な思い出も」

 

 

ぷらずま「今は『ここには戻ってきて良かった』とそう思えます」

 

 

ぷらずま「その点において、間宮さんのお陰でもありますね。だからそこのところは感謝しているのです」

 

 

ぷらずま「これで満足なのです?」

 

 

間宮「わ、私は間違えてなかったんですね。ちゃんと誰かのためになっていた、と……」

 

 

ぷらずま「節穴過ぎなのです……どう考えても誰かのためになってねーやつなんてこの鎮守府(闇)にいないのです……」

 


間宮「なら、よかったです。本当に……」

 

  

間宮「は、はい。昔みたいにこう、ぎゅーっとしても大丈夫?」

 

 

ぷらずま「大丈夫ではありません。私に対してそういうコミュを許可しているのは司令官だけなのです」

 

 

間宮「……提督さんですか」

 

 

ぷらずま・わるさめ「……」

 

 

わるさめ「間宮さん」

 

 

わるさめ「司令官に惚れた?」

 

 

ぷらずま「!?」

 

 

間宮「え……え、えっと」

 

 

わるさめ「顔真っ赤です、はい」

 


ぷらずま「待って欲しいのです。間宮さん、この鎮守府(闇)のルールは分かっているはずなのです」

 

 

間宮「あ、いや、そのお……」

 

 

わるさめ「つーかぷらずまお前、冷静だなー。てっきり十八番の発狂芸が炸裂して艤装展開するかと」

 

 

ぷらずま「私の発狂は十八番でも芸でもねーのです。それに誰が誰に好意を抱こうが、作戦に支障を来さない限りはそれ自体を咎めることはしねーのです。あくまで抱くこと自体は、です」

 

 

ぷらずま「妙な言動が表に出て、この過去最大の大事な時期に司令官に要らんこと考えさせるのはダメなのです」

 

 

間宮「あの、気持ちに整理できていないので、提督さんのことは、よく、分からないです……」

 

 

わるさめ「恋してたらー?」

 

 

間宮「……、……」

 

 

間宮「あの人のためにお料理作りますかね」

 

 

わるさめ「いつものことっスよね……司令官の性格的に間宮さんがそんな感じじゃ進展なくないー?」

 

 

間宮「えっと、わるさめさんと電ちゃんは、あの提督さんのこと好きなんですか……?」

 

 

わるさめ「好きだよー。まあ、でも私は間宮さんとはまた違うかな。あいつ戦争終ったらわるさめちゃんが巣立つまで面倒見てくれねーかなって」

 

 

ぷらずま「このぴんく空間、虫酸が走り吐き気を催すのです……」

 

 

間宮「えっと、電ちゃんは、あの人のこと異性として好きなんですか?」

 

 

ぷらずま「好きですよ。ただ異性も含めた人として、です。それほどのモノを私に与えてくれた人ですから。だからこう思います」

 

 

ぷらずま「あの司令官が誰かになびくとは到底思えねーのですが、間宮さんがあの司令官のことを気に入ったのならなによりです」

 

 

ぷらずま「仮に間宮さんが司令官と恋仲になろうが、構いません。間宮さんは私の『好き』を理解してくれる『理解者』です。なので、それはとても素敵なことだと思うのです」

 

 

わるさめ・間宮「え゛」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんシンキングターイム……」

 

 

わるさめ「お前、好きな男が他の誰かに奪られてもいいの……?」

 

 

ぷらずま「自分の好きな人が他の人に好いてもらえる。ならば、私とその人はお互いを理解し合えるでしょう」

 

 

ぷらずま「お友達になり得ます」

 

 

ぷらずま「私は別に結ばれたいわけではありません。好きだからこそ、ただただあの人の幸せを願っているだけなのです」

 

 

わるさめ「一夫多妻許容の精神かよ……」

 

 

間宮「す、すごいですね。これが真実の愛といわんばかりの懐の広さです……」

 

 

ぷらずま「……愛はそこにたどり着くものだと思うのですけどね」



わるさめ「じゃあライバルいないんじゃね。司令官、皆に好かれてるけど恋心持ってるやついねーし」

 

 

間宮「ええー、金剛さんとか秋月ちゃんとか……」

 

 

わるさめ「金剛のやつは本気のようで本気じゃねっス。あくまで提督としての好きがあんな感じになってるだけだと思うけどね……」

 

 

ぷらずま「そうでしょうね……あの人は気に入った提督ならあんな感じになる子供なのです……」

 

 

わるさめ「秋月のやつも好きは好きなんだろーけど、兄貴のアッシーや明石さん好きなのと一緒だと思ってる」

 

 

わるさめ「チャンスじゃね?」

 

 

ぷらずま「……分かってると思うのですが」

 

 

間宮「あ、大丈夫です。職場恋愛禁止は守りますから」

 

 

ぷらずま「そこもですが、あの人をどうやって落とすのです。間宮さんの最大の武器である料理では無理です」

 

 

わるさめ「それな。食事は栄養取れたらそれでいいのやつだしね。聞けば美味しいって答えても、だからなにって感じで何も変わらねっス……」

 

 

ぷらずま「そして色気でも無理です。あの人は恐らくネジを削ぎ落とした後遺症で男としての本能まで欠陥患っているとしか思えない程の鋼です」

 

 

わるさめ「そしてわるさめちゃんは前に『旦那さんならー』とかっていったことあるけど生涯独身宣言されたよ」

 

 

わるさめ「つーか、みんないってるよ。あの司令官は責任感はあるから逃げ場をなくすやり方しかないって」

 

 

わるさめ「つまり既成事実な☆」

 

 

間宮「それって、相手の気持ちを無視するってことじゃないですか。そんな風にするのは嫌です……」

 

 

ぷらずま・わるさめ「なら諦めろ」

 

 

3

 

 

卯月「ぴょんぴょんぴょーん!」

 

 

卯月「面白い話を聞いたぴょーん!」

 

 

霧島「卯月さん、ためらいもなく……」

 

 

比叡「すみません、盗み聞きするつもりはなく……」

 

 

榛名「通りすがりに偶然です……」

 

 

卯月「金剛型にラチられてきたけど、いい話が聞けてうーちゃん気分上々」

 

 

卯月「いーこと教えてやるぴょん♪」

 

 

卯月「明石さんのやつが前に艤装のメンテに来た時になー、司令官とお話してた流れで聞いたんだけど」

 

 

卯月「『恋愛に興味ないけど、家族は欲しいかな』っていってたぞー」

 

 

ぷらずま・わるさめ・間宮「!」

 

 

卯月「だから、可能性自体は現実的にあるぴょん!」

 

 

霧島「そもそもあの提督は意中の人もいないのでしょう? 間宮さんに好意を抱かれて、そうですか、で終わる独身男性がいるのが意外ですね」

 

 

比叡「ですねー……丙少将や乙中将でも嬉しがると思います」

 


榛名「それがここの提督なんです。戦争にすべてを捧げた代償は大きいですね。そんな提督も榛名は好きですけど」

 

 

わるさめ「男って間宮さんみたいなのに弱いのかなー……」

 


わるさめ「間宮さーん、後でわるさめちゃんにお料理教えて☆」

 

 

間宮「!」パアア

 

 

間宮「もちろんです!」

 

 

ぷらずま「卯月さん、金剛型を連れてさっさと演習場に行くのです」

 

 

卯月「いや、他鎮守府はお前らトランスタイプと演習やるんだし」

 

 

ぷらずま「私は疲れたのでしばしの休憩の後で。それまではわるさめさんをタコ殴りにでもするといいのです」

 

 

わるさめ「うーす……ということだから、ぷらずまと交代したら間宮亭に行くねー」

 

 

わるさめ「卯月と金剛型でわるさめちゃんには勝てねーけどな」

 

 

卯月「ほう。負けたら?」

 

 

わるさめ「1日下僕になってやるよ」

 

 

卯月「といってもなー……」

 

 

霧島「前々から思っていたんですけど、燃料弾薬自動補充のトランスタイプはクルージングに最適だと」

 

 

卯月「それだぴょん。ここ最近は訓練のし過ぎで資材が減ってるし。榛名、霧島、比叡、マジでやるぴょん」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんにそんなことさせようとか、マイクチェック番長と悪童うさぎめ。図に乗るなよー」


 

わるさめ「わるさめちゃんの艦隊に球磨型、入れるからな☆」

 

 

わるさめ「球磨型ー! 次はわるさめちゃんと同じ艦隊なー! ずいずいもだぞー!」

 


北上「木曾と江風とクマネコが残るけど、私と大井っちと漣は抜けまーす。あー、大鳳は?」



大鳳「あ、満足できたので入渠してから間宮亭に行きます」



北上「うちらもか。わるさめ、朧と曙と潮を鍛えてやってな」

 


わるさめ「もち」



北上「それじゃー、大井っちに大鳳、行こっか」


 

大井「どいつもこいつも子供みたいにハシャぐから疲れました……」

 

 

金剛「お待たせしたデース!」

 

 

阿武隈「うう、ラチされました」

 


卯月「お、アブーが来たかー」

 

 

比叡「金剛お姉様と阿武隈さんも入ってくれるのなら勝てそうですね!」

 


わるさめ「それじゃ8対8な」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんの攻撃はトラウマレベルだけど泣くなよー」

 

 

ぷらずま「間宮さんは戻らなくていいのです?」

 

 

間宮「そうですね。そろそろ間宮亭に戻ります」

 

 

ぷらずま「私はお姉ちゃんズのところに顔を出すのです」

 

 

卯月「あ、暁達なら長門と一緒にシアターのほう行った」

 

 

漣「この鎮守府そんなんあるのか! 映画好きな漣も行きまーす!」

 

 

北上「大井っち、うちらは間宮亭に戻ろー」

 

 

大井「そうですね。疲れました……」

 

 

4 駆逐寮にて

 

 

山風「……お腹減った」ムクリ

 


秋月「山風ちゃん! 目覚めましたか!」

 

 

山風「む、アッキー……は、演習していたんじゃ?」

 

 

秋月「金剛型の方達が来て3回目突入する前に抜けてきましたよ。2回目は漣さんが電さんを煽っての仲間割れから一気に瓦解しました……」

 

 

山風「その手があったか……」

 

 

秋月「お腹が空いたのなら間宮亭が鉄板ですが、実はこの鎮守府はやりたい放題でですね」

 

 

山風「それは、知ってる……」

 

 

秋月「間宮亭は食事処ですが、カラオケ設備ありますし、シックなberもありますね。映画館に、漫画の図書館に、ゲームセンターから、後はコンビニみたいなお店まであります。生活用品に必要なものということで電化製品、スポーツ用品なんかも置いたホームセンターもあります。輸送船に乗ってきた業者さんが持ってきて並べてくれていますね」

 

 

山風「フリーダムすぎだよ……」

 

 

秋月「というかどうしてこの部屋に」

 

 

山風「江風に連れてきてもらった。眠くなって……」

 

 

プリンツ「zzz」

 

 

秋月「山風ちゃん、そのベッド」

 

 

山風「なんか、よく眠れる……」

 

  

秋月「……棟を間違えましたね。ここ、アッシーの部屋です」

 

 

山風「!?」

 

 

5

 


不知火「甲大将が、か、かっこいい」

 

 

陽炎「なぜ女がそこまで上手くocean歌えるのか」

 

 

提督「これが性別行方不明キャラですよ。というか甲大将所属の方達、みんなお上手ですよね……」

 

 

大鳳「サラトガさんとグラーフさんもヤバいですよ。美声……」

 

 

北上「うちら基本的に遊び人が集まったような艦隊だからね。真面目なのグラと大井っち時々江風くらいだよ」

 

 

大井「私とグラーフさんが良心です。ブレーキは絶対に必要なので」

 

 

グラーフ「そうだな。丙少将のところのようなバランスが最も好ましい。公私がしっかりしているからこそ、世間での評判もいいということだ」

 

 

サラトガ「えー、丙少将のところもよく遊びに行くと聞きますが、大鳳さんそこのところどうなんです?」

 

 

大鳳「あ、よく街には遊びに出かけますよ。鎮守府にいる時は真面目な方が多いですね。キッチリしてます」

 

 

大井「見習いたいものですね……」

 

 

陽炎「私達のところは訓練にしても遊びにしても色々とアレよね」

 


大鳳「特殊なところみたいですしね……」

 

 

甲大将「准将、パース」

 

 

提督「む……なら、そうですね」

 

 

北上「お、准将さん、それ洋楽?」

 


提督「そうですね。好きな曲です」

 

  

不知火「意外な1面です」

 

 

サラトガ「!」


 

提督「♪」

 

 

不知火「どこかで聞いたことが……」

 

 

提督「Cheer up, Sleepy Jean.Oh,what can it mean.To a daydream believer And a homecoming queen♪」


 

グラーフ「良いセンスだ」

  

 

大鳳「これコンビニのやつですよねw」

 

 

サラトガ「wonderful! お上手です!」

 

 

北上「めっちゃ陽気に歌いやがるw」

 

 

陽炎「あー、セブンイレブンの曲かw」

 

 

大井「ふふ」

 

 

甲大将「大井を自然に笑わせるなんてなかなかやるなー」

 

 

6

 

 

伊勢「なんか上からコンビニのやつ聞こえてくるw」

 

 

日向「なんだ、ここの2階コンビニになってるのか?」

 

 

瑞鳳「カラオケ設備があるだけですって。提督が歌ってるだけです。すごい上手くて驚いてますけど」

 

 

瑞鳳「全ての設備がフルオープンしてるので色々ありますよー。この間宮亭の他にも映画館にゲームセンターに、berに、漫画の図書館とかホームセンター染みたところも」

 

 

伊勢「噂には聞いてたけど、本当に電ちゃんの王国ってやりたい放題なんだね……」

 

 

瑞鳳「そうですねえ。まあ、人が多い今こそフルオープンすべき機能です。普段はそんなに使っていないですし」

 

 

日向「演習場に残ったのはわるさめと球磨と多摩と木曾と瑞鶴か。それと金剛達、ラチられてきた卯月阿武隈鹿島、江風も来たっけか」

 

 

間宮「皆さんガンバりますね……」

 

 

伊勢「漣ちゃんと6駆は長門さんと映画館行ったって。7駆とゴーヤちゃんイクちゃんはゲームセンターに、berには明石さんと大淀さん、龍驤さんと丙さんもいるみたい」

 

 

日向「なんか雪風と秋津洲が中庭で犬と遊んでたのも見たぞ……」

 

 

瑞鳳「1航戦はここですね」

 

 

加賀「赤城さん、天国ですね」キラ

 

 

赤城「わざわざ来た甲斐がありましたね。間宮さんは相変わらずの腕前、そして嬉しいことに天城さん、瑞鳳さんという伏兵です」キラキラ

 

 

天城「間宮さんから教えて頂いたんですけどね。日々、精進は怠ってはいません」

 

 

瑞鳳「私もなんだかんだで間宮さんに色々教えてもらってたら、上達しました」

 

 

間宮「お二人は飲み込みが早かったです。私一人では回せないので、手伝っていただけるのは助かります」

 

 

日向「赤城さんと加賀は適性率高そうだよなあ」

 

 

赤城「適性云々ではなく、よく食べ、よく寝る。全ての兵法は胃袋から始まるんです」

 

 

加賀「腹が減っては戦が出来ませんから。私は腹ごしらえしたら、あの5航戦を絞めてきます」

 


赤城「あ、それと私は丙少将の鎮守府に異動になりましたのでよろしくお願いいたします」



日向・伊勢・加賀・天城「!」



加賀「さすがに気分が高揚します」


 

伊勢「珍しく加賀さんが嬉しそう」



天城「お二人は仲が良いですしね」



日向「じゃあ赤城さんは私達と一緒に明日に発つので?」

 

 

赤城「そうですが、私にはさん付けですか。堅苦しいですねー」

 

 

日向「そ、そうですね。すみま、すまない」


 

天城「なにかあったんですか?」

 

 

日向「いや、私が新米だった頃、何度も味方艦隊を窮地に立たせてしまって、この人に助けてもらったことが何度もあるんだ」

 

 

日向「その度にこういう風ににこにこと笑っているんだ。なんか色々といいたいことを凝縮しているように思えてきて、怖くなったんだ」

 

 

伊勢「懐かしい。あの頃の丙さんは少年っぽさがあって可愛げがあったなー……」

 

 

日向「明石のやつと似ている気がする」

 

 

伊勢「多分、似てると自覚するから丙さん怒るよ」


 

赤城「まあ、別に怒っているわけではないのに、日向さんはビクビクと震えてましたね。あの時からお変わりになられたのかしら」

 


日向「元帥からの直々の異動命令とはいえ、私達に1航戦を預けるとは、少し心配だな」

 

 

赤城「はい?」

 

 

赤城「そんな弱気な態度でこの戦いに挑む気ですか」ニコニコ

 

 

日向「まあ、こんな笑顔だよ」

 

 

間宮・瑞鳳・天城「なるほどー」



赤城「む、やりますね……」

 

 

赤城「踊らされてしまいました」

 

 

7

 

 

暁「私って、あんなに子供っぽい……?」


 

雷「あんまり変わらないと思うわ。暁も適性率90%越えでしょ。艤装もつけた瞬間からこなれてたし」

 


暁「私はその10%分だけレディーだから」

 

 

長門「あれが純度100%の第6駆逐だぞ」

 

 

響「長門さんにやけてたね。特にあの電は正しく電だ。電、あれが電なんだよ。純度100%電をどう思う?」

 


ぷらずま「『はわわ、ケンカしちゃダメなのですぅ……』」

 

 

ぷらずま「お腹が、あの汚れなき純度、何度見ても片腹痛いの、ですっ」ニタニタ

 

 

暁「電が電を笑ってる……」

 

 

ぷらずま「……ま、戦いに身を投じてあんな風に笑えるのなら、あれが兵士として理想の姿ではあるのです」

 

 

漣「つーか!」

 

 

漣「こんなん飽きるほど観ましたしおすし、せっかくのシアター設備なんだから他の観まっしょい」

 

 

ぷらずま「あんまりないのです。わるさめさんの要望による『ジョーズ』と私が好きな『ローマの休日』と瑞鶴さんオススメの『マイボディガード』と司令官さんが面白かったとかいってた『悪魔のいけにえ』くらいですね」

 

 

漣「なんか全体的に古いんすけどw」

 

 

長門「名作は色褪せないから問題ないんだよ。というか漣、お前けっこう実歳も若いだろ。観たことあるのか?」

 

 

漣「もちろん。こう見えても私は娯楽に秀でてますから。駆逐艦娘の日常は遠征行って飯食って風呂に入ったら映画観ながら爆睡するもんなんですよ」


 

響「駆逐艦のあるある」

 

 

暁「ローマの休日観たい!」


 

響「いつ見ても色褪せない名作」


 

雷「聞いたことあるくらいね。でも、オードリーヘップバーンは観たい!」

 

 

漣「行こう行こう! 白黒映画を映画館で観てみたかったー!」

 

 

長門(あー……来てよかった。駆逐艦に癒され疲れが抜ける……)

 

 

8

 

 

大淀「とのことです」

 

 

明石さん「え゛」

 

 

明石さん「海の傷痕と秋月ちゃんと弟子の家系が?」

 

 

丙少将「……海の傷痕、明石君に接触してくる可能性が高いんじゃねえの」

 

 

龍驤「でもあくまで似ているだけの話やろ。本人とは別やしなー」

 


明石さん「それでも弟子は『Rank:SSS』ですよね?」

 

 

初霜「それいったら私なんて『Worst-ever』ですよ……。よく分からないといった理由です。海の傷痕のそのランクの付け方はどうかと……」

 

 

初霜「……プラスの発想すると私や明石君、秋月さんが海の傷痕に接触すると、なにか情報を引き出せるかも?」

 

 

明石さん「たくましいですねー」

 

 

大淀「危険ですね」

 

 

丙少将「乙さんがなんか土産持ってくるだろ。あの人ならほぼ必ずだ」

 

 

大淀「優先的に出来ることなら『Srot1とSrot4の装備』ですね。それでなくともなにか……」

 

 

龍驤「それも気になるけど、海の傷痕が思いの外、人間らしくて驚いたわ。話聞いていた限り男っぽいけど、女なんかな」

 

 

丙少将「どちらでもない。女になりたがっている。話を聞いている限り、こんな感じだったがな」

 

 

龍驤「うちとしては、その心が隙やと思うんやけどなー。乙ちゃんがなにか持ってくるとしても相手が相手やし、なんか大事ないとええんやけど……」

 

 

初霜「乙中将なら大丈夫ですよ。情報を分析はここの提督のほうが1枚上手だと思いますけど、情報をつかみ取ってくるのは乙中将のほうが得意だと思います。なにかあれば私達だって力になればいいんですし」

 

 

明石さん「そうですね……信じる他ないですね」

 

 

大淀「と、落ち着いたところで、初霜さん、そろそろ行きましょうか」

 

 

初霜「そうですね。早く行って、早く帰って来なければなりません」

 

 

龍驤「行ってらっしゃい」

 

 

明石さん「そういえば初霜さん抜けた後の秘書官って誰がやるんですか?」

 

 

初霜「確かその場合は陽炎さんと不知火さんのお二人ですね」

 

 

丙少将「へー、まあ、あの二人は一時期、俺の秘書官やってくれてたな。あのコンビはけっこう働いてくれるぞ」

 

 

明石さん「なら安心ですね。初霜ちゃんもがんばってくださいね。その研究も乙中将と同じく大事ですから」

 

 

初霜「そうですね。気合い注入のために鉢巻き持って行きます!」フンスッ

 

 

9

 


元帥「……支援施設のほうにいたのか。間宮亭にいたと聞いていたが、いなかったから探していたぞ」

 

 

提督「……すみません」

 

 

元帥「ほれ、もらってきた。まだ冷えているぞ。酒は飲まないか?」

 

 

提督「いただきます。それで自分になにかご用が? ここは広いので館内放送を使うのが効率的かと思います」

 

 

元帥「あー、そんなんあったのか。というか、お前が暗い教室に一人だと幽霊に見えて怖いんだが……」

 

 

提督「特に意味はなく。ただ通りすがりにふとなんとなく座ってみただけです」

 

 

元帥「前の席に失礼」

 

 

元帥「小学校だろ。わしは45年近くも前。お前は15年前だ。その時の思い出はすでに色褪せたか?」

 

 

提督「困ったことに今日に色付いたのです」

 

 

元帥「思い出は綺麗だよなあ」


 

提督「……」

 

 

元帥「浮かない顔だな。まあ、分かるよ。伝えとくか」

 

 

元帥「実はな、海の傷痕の戦闘能力からして今のわしらでは逆立ちしようが『なにをどう策を練ろうが勝利不可能』と結論が出た」

 

 

元帥「要するに何でも出来るとすりゃそうなるわな。世界中に核をばらまくことも出来るなら、艤装どうのこうのの敵じゃねえわ」

 

 

元帥「だが、この戦争に関しての話は別だ。クリア可能に設定されているわけだからな。海の傷が用意するギミックを暴いて、どうのこうので勝てる可能性はあるはず。最もそれも希望的観測だが」

 

 

元帥「それにキスカでも海の傷痕は負けてる。要は勝利の可能性をどうやって引っ張って来るか、だろ」

 

 

元帥「当局のほうは此方love勢で、此方の目的を自分の生存を脅かしてまでも尊んでいる様子だよな」

 

 

丙少将「此方のほうは目的があり、その目的に沿って展開されているのがこの『艦隊これくしょん』だ」

 

 

元帥「ゲームクリア可能に設定されている以上、勝ちの目はあるどころかむしろ高いんじゃねえのってわしは思う」

 

 

元帥「まあ、この戦争が特殊に見えるのは、国家間ではなく、海の傷痕の個人によって運営されているので、一般の戦争と違って物理的な戦いでの勝利が彼女の益となるわけではないのかもしれん」

 

 

元帥「作戦だが、海の傷痕のメンテナンス時間に設定された決戦時刻に、機械的かつ効率的に仕事をするのならば」

 


元帥「【壊:バグ】への接触を優先する戦い方をしてくるかね。その場合は遠隔では直せない故の直接的接触、電、春雨、中枢棲姫勢力は海の傷痕の航行進路を制限する磁石のような役割を持てる」

 

 

元帥「海の傷痕の性格は故人、今人共通で強力な想【今を生きようとする想】により、成り立ち、それは海の傷痕の【今を精一杯生きる】の言動原理と設定されている」

 

 

元帥「古人の想の塊であるが、今を生きる人間から艤装に伝わる想を感知することにより、記録可能。【故人の想:今を未来に繋げる想】による応用。しかし、あくまで艤装が記録した想、であるから、艦娘の想は艤装を媒介とした観察、海の傷痕の個体による分析であり、齟齬が生じることも多い」



元帥「想は基本的にあやふやなもの。海の傷痕の思考能力はあくまで人間レベルであるため、万を越える人間の想の解読に時間がかかる」

 

 

元帥「時間がかかるだけで、未来的には可能。19世紀(過去)の想いが強いため、近代のモノは後回しになっていく傾向を持っており、なおかつゲーム運営管理妖精のため、実装よりもメンテナンスを優先する傾向があるが、海の傷痕には個性も含められるため厳密には【なるべく長引かせたい】が本音だ、と」

 

 

元帥「これが力を貸していただいている方が大本営での会話を分析して導きだした海の傷痕の追加の生態だ」

 

 

提督「……、……」

 

 

元帥「准将、海の傷痕の倒し方に見当がついたから、そんな浮かない顔しているのか。お前、思考癖直らないの?」

 

 

提督「……考えても」

 

 

提督「ぷらずまさんが死んでしまう危険が高い気がして」

 

  

提督「まず確実に海の傷痕は何でも即興で出来る魔法使いではありません。なぜならば目的を持って、この戦争を手段にしているのですから」

 

 

提督「『当局』と『此方』」

 

 

提督「此方は当局の自己に芽生えたものではなく、『当局の肉体』の『艤装が此方』であると思います」

 

 

提督「此方の正体は『本官さんを愛した自分』です。そして当局の目的は『此方を人間の女性にすること』です」

 

 

提督「なぜ当局は艤装に今を生きる人間の想を蓄えるのか。それは当局にとって女性は理屈でしか分からない。我々にも他の動物の気持ちは分からない。『感情を理論的に知ったかぶる』のです。だから、艤装適性者は明石君を除いて、女性オンリーなわけで」

 

 

提督「恐らく海の傷痕の目的は『この最終決戦で艤装適性者の想』を全て回収して『此方を人間の女性として産み落とす』ことです」

 

 

提督「その手段は『当局の肉体と此方の艤装』を利用した『反転建造』だと思われます」

 

 

提督「そうして海の傷痕は『人間殺戮の本能から解き放たれて、人間となる』のです。つまり、海の傷痕は」


 

提督「本官さんを愛して結ばれようとしているこの上ない一途な女性であると思われます。この戦争は」

 

 

提督「恋物語です」



元帥「なるほど。想い人と結ばれるために戦争始めるとか怖すぎだろ」

 

 

提督「ムカつきます……」


 

提督「あいつなら、深海棲艦をまた艦娘に戻せます。なぜならば想を構築し、あのようにフレデリカ大佐の姿を作り込めるのですから。その『艦娘→深海棲艦→艦娘』の輪廻を仕込んでいてくれたのなら、ぷらずまさんが死しても、深海棲艦からまた本官さんが艦娘に戻す仕事が出来るため、海の傷痕を倒す寸前に、わるさめさんとぷらずまさんは元に戻せます」

 

 

提督「そうして綺麗な身体に戻れるのです。中枢棲姫勢力も、です。無い物ねだりですが、策がかなり広がりました。海の傷痕:此方はそこを潰してきている」

 

 

提督「命は一度きり、だと」

 

 

提督「死んだものが甦るのはゾンビ、だと」

 

 

提督「これは現実なのだから、と」

 

 

提督「その現実さえも作り替えて深海棲艦から艦娘への輪廻があれば、ハッピーエンドもあり得た」

 

 

提督「全員生還こそ至高の手になり得ました。なんて綺麗な結末の戦争になり得たのか、と」

 

 

元帥「……それで続きは」

 

 

提督「皆が生きて帰るという意味の全員生還の視点ならば、ここから先が最難関、です」

 

 

提督「ぷらずまさんはわるさめさんとは違って、海の傷痕に直してもらう他ありません」

 

 

提督「普通に消し去るだけでは『ぷらずまさんが海の傷痕に勝利するとともに確実に死ぬ』のです」

 

 

提督「駆逐艦電に戻すためには」

 

 

提督「その場合、Srot3の妖精工作施設を残したままぷらずまさんと接触させなければなりません。妖精工作施設には女神妖精常駐のため、これを早期に破壊することが好ましいです」

 

 

提督「ぷらずまさんをメンテナンスし、駆逐艦電に戻す。これが意味するのは海の傷痕の戦闘能力を残したまま、こちらは最大戦力を失うということです」

 

 

提督「勝利に固執すれば、ぷらずまさんを犠牲に海の傷痕を倒してその他の命を救うことはできるかもしれません。けど、それでは」

 

 

提督「『1/5撤退作戦』と同じだ。大和さんの意思を受け継いだ今、同じ過ちは犯すわけには行かない」

 

 

提督「それをしたら、海の傷痕が腹を抱えて笑う姿が目に浮かびます」

 

 

提督「彼女はそれでもいいと必ず言いますが、自分は絶対に嫌です」

 


提督「確かに海の傷痕の口から発信された情報は鵜呑みに出来ないので、確定情報を軸に立てるのは当然ですが、難しいです、ね」



提督「自分も乙中将に協力するべきか」



提督「……と、そんなこと考えてました」

 


元帥「それが良さそうならそうしていたが、乙中将に任せたんだ。あいつを信用しろ。それでダメならわしがまた指示を送る」



提督「そうですね、自分が関わって変にこじらせては元も子もないです。あの海の傷痕は感情的な面もありましたから……それに自分では海の傷痕から情報は引き出す確定的手段が、思い浮かびません」



元帥「あの場で『殲滅:メンテナンス』の情報を手に入れるのは間違いだ、と?」



提督「そう、ですね。でも、ぷらずまさんのこと考えると間違いではありません。難しいです。少し頭も心もスッキリしておかなければ」



元帥「お前、変わってるようで変わってないよな。電1人が元に戻ったところでそんなに変わるか?」

 


提督「変わります」

 

 

元帥「じゃあそこで止まるな。その穴埋めを考えるのが俺達提督の責任だ」

 

 

元帥「って、丙少将ならいうぞ」

 

 

提督「……そうですね」

 

 

元帥「甲大将と丙少将、乙中将も使えるもんだ。この演習で甲と丙はさらけ出しただろ」

 

 

元帥「甲は、どうも細かいこと考えるのは苦手分野みたいだ。こいつんとこは単純に強い兵隊だよ。丙のやつは支援に回して『全員生還』の役割押し付けてやりゃいい。あいつんところはそれが最も効果的に運用できる」

 

 

元帥「そもそも海の傷痕との戦いは不確定要素多すぎだよな。必然的に現場の情報が錯綜するだろ」

 

 

元帥「だから、お前だ」

 

 

元帥「丙乙甲が元帥でもお前を選ぶ」

 

 

元帥「1/5作戦、わるさめちゃん襲撃、中枢棲姫勢力決戦、海の傷痕の大本営襲撃、そして今回の演習もそうだ。お前はいつだってそういう海を越えてきた。勝利で、だ」

 

 

元帥「次も同じだ。今更になってびびってんじゃねえよって」

 

 

元帥「やるしかないんだよ」

 

 

元帥「どんな犠牲が出ようが」

 

 

元帥「戦争だ。それも上手く行けば最後の戦いとなる。腹はくくらんとな」

 

 

元帥「まー、乙中将がなにか土産を持ってくる。それが『Srot1』か『Srot4』か『決戦時のギミック』だと助かるんだが」

 

 

提督「そうです、ね……」

 

 

元帥「……」

 

 

元帥「瑞穂ことスイキちゃんとフレデリカと先代の丁の准将についてだが」

 

 

元帥「わしはフレデリカは丁のやつに頼んで『瑞穂を直す手段』を模索していたと考えてる」

 

 

提督「フレデリカ大佐と瑞穂が仲が良かった、という情報ゆえですか。あの女提督はぷらずまさんやわるさめさんに対しても、そうです。表向きは、」

 

 

元帥「フレデリカはお前と本当によく似てる。あいつの末路はお前のifの未来だよ。早いか遅いかの違いだ。お前が早ければ、今わしと喋っているのはフレデリカのやつだったのかもしれないなって、わしは」

 

 

提督「どういうことでしょう?」

 

 

元帥「フレデリカも戦争終結に魂を捧げていた。お前もそうだっただろ。深海ウォッチング、あの作戦は電は死んでもおかしくなかった。この戦争の仕組みを解き明かす腹だっただろ」

 

 

元帥「人体実験でな」 

 

 

元帥「お前は深海ウォッチングの時は海の傷痕の存在に気づかずに『深海妖精に建造をさせないことで引き算していくことでの戦争の終結』を考えていたわけだ。だったら」

 


元帥「研究して、深海棲艦にならないバグ兵士を作りかねん。少なくとも解き明かし、自身が死んでも問題なく戦争が終わるまで禁忌の実験を進め、隠蔽しただろ。そこのところもお前は上手そうだ」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「可能性はあったかもしれません」

 

 

提督「少なくともそうならなかったのはすでに始まりから『瑞穂、春雨、電と中枢棲姫勢力のバグ』と『キスカの悲劇』と『鹿島艦隊の悲劇』が存在していることで『深海妖精発見と同時に海の傷痕にすぐにたどり着けてバグを作る必要がなかったから』ですね……」


 

提督「確かにひとことでいえば『フレデリカ大佐がいたから』です」

 

 

元帥「本当にお前はフレデリカに似ている。丁のやつにも似てるけどな。間宮さんもそういってたらしいし、フレデリカを知ってるやつはみんな1度は思ったはずだ。お前が丁のやつのもとに行ったのも合うからで、フレデリカが丁のやつと親交があったのも合うから、だ」

 

 

元帥「だとしたら、お前が先でフレデリカが後なら今ここで鎮守府(闇)で皆に好かれていたのはフレデリカのほうだったのかもなあ」


 

元帥「そんなこと思ったら」

 

 

元帥「フレデリカは、お前みたいに途中で気づいたんじゃないのかな、と。あいつにとっての瑞穂は、初期官であり、大層に仲の良かった『お友達』みたいだ。瑞穂:バグは、お前にとっての電:バグみたいなもんだったのかもしれん」

 

 

元帥「どうも春雨と電を犠牲にしてまでも異常:バグを研究し、瑞穂を直したかったっていう可能性も浮かんできてなあ」

 

 

元帥「この海に悪いやつなんていないんじゃないかなーとお花畑なことすら思う」


 

元帥「不思議な縁を感じるよ」

 

 

元帥「チューキちゃん達がいたあの場では言わなかったが」

 

 

元帥「鎮守府(闇)は」

 

 

元帥「スイキちゃんと腹割って話し合うことで、フレデリカを受け入れることで、初めてあの頃の闇を乗り越えるなにかが手に入るんじゃないかな」

 

 

提督「……、……」

 

 

元帥「丁のやつはフレデリカに気があったと思うんだよなー。これは大淀と明石ちゃんが言ってたんだけど」


 

提督「……」

 

 

元帥「丙乙甲にはすでに伝えてある。わしはな、わしより若い命に朽ちて欲しくないんだよ」

 


元帥「『生きて鎮守府に帰る』という意味の『全員生還』だ」


 

元帥「海の傷痕との決戦は誰一人として死なせない」

 

 

元帥「ま、異論はないはずだな。そうだろ」

 

 

 

 

元帥「提督の諸君」


 

 

元帥「なんちゃってな」

 

 

元帥「ま、話は終わりだ。わしは武蔵と先に帰る。それと、わしから准将への極秘任務だ。がんばってくれ」

 

 

元帥「とりあえずお前の頭をクリアにするためにスッキリしてきなさい。それじゃな」


 

提督「極秘、任務……?」ピラ


  

『愛とはなにか。友情、家族愛、恋愛。その三項目における想いについて理解を深めてください』


 

提督「」

 

 

10


 

チュンチュン


提督「…………寝落ちて」ムクリ

 

 

漣「キラークイーン提督おはようございます……」

 


朧「夜間警備、任務終わって」


 

曙「6駆に引き継いだわよ……」

 

 

提督「…………」

 

チュンチュン

 

朧「……夜間警備」

 

 

曙「終わったわよ……」

 

 

漣「ハッ、このループはまさか」

 

 

提督「!」

 

 

提督「これが我が第3の」

 

 

漣「バイツァダストきたコレ」

 

 

提督「ということで今度は今から指定する海域に」

 

 

朧・曙「黒っ!?」

 

 

漣「こら、漣達がどれだけ頑張ってたと思ってんだ寝かせなさいお願いします割とマジで!」

 

 

潮「漣ちゃんは寝る時間あったじゃないですか……」

 

 

漣「宴やってる時に寝ていられるかって話だよ」

 

 

提督「ご苦労様です。どうぞおやすみください。まあ、四時間くらい寝れば、甲大将がこの鎮守府から出られるので、護衛任務と洒落こむと思いますが」

 

 

朧「それでそこのソファにいるの電ですか……?」

 

 

提督「ええ」

 

 

提督「寝ていますね。昨日、酔った間宮さんにぬいぐるみのごとく扱われていたようで、助けを求めに来たまでは覚えているのですが、そこから」

 

 

ぷらずま「● ●」スヤスヤ

 

 

曙「眼、ガン開きで寝てるし。怖すぎでしょ……」

 

 

漣「爆発物ですし取扱い注意のステッカー貼っておきますね」ペタ

 

 

曙「そういえばなんか演習場とか色々なところで色々な人達が寝ていたけど……」

 

 

提督「間宮亭にもたくさんいましたね。皆さん、好き放題してそのまま好きなところで寝てくれているみたいでして……」

 

 

漣「あー、最後まで参加したかったなー……」

 


潮「とりあえずお風呂入ろうよお……」



朧「うん。それから」

 

 

曙「寝るわ」

 

 

漣「……」

 

 

漣「せやな」

 

 

2

 

 

間宮「あっ、おはようございます」

 

 

提督「おはようございます」

 

 

提督「これ、ボードゲームにテレビゲーム、皆さんわざわざ娯楽ルームから持ち出してここで遊んでたんですか……」

 

 

明石・丙少将「………」

 

 

提督「丙少将と明石君が死んでる……」

 

 

間宮「皆さんに囲まれて、ゲームに参加させられてましたね。負けたらポッキーゲームとかさせられて」

 

 

提督「この壁にある写真……」


 

間宮「丙少将と明石君がポッキーゲームやらされた時、わるさめさんが明石君の頭を押しまして。その、決定的な場面を卯月ちゃんが写真に」

 

 

提督「なんてひどいことを……」

 

 

間宮「伊勢さんと秋月さんがわるさめさんに制裁を加えてましたが……」

 

 

提督「ああ、だからわるさめさん、魔女狩りみたいに外で吊るされていたんですね」

 

 

提督「まあ、鼻から風船膨らまして盛大ないびきかきながら、気持ち良さそうに寝てましたけど……」


 

間宮「あはは……ずいぶんとにぎやかな夜でしたね」

 

 

提督「そうですね。執務室にいた自分のところまで楽しそうな声が聞こえてきましたよ」

 

 

提督「ところで間宮さんは、こんな早くから皆の朝餉の準備ですか。人数が多いですからねー……」

 

 

提督「寝ていないのでは?」

 

 

間宮「やりたいからいいんです。それに天城さん、鹿島ちゃん、瑞鳳ちゃん、秋津洲ちゃんが仕込みはやってくれていたので、そう時間はかかりませんから」

 

 

提督「手伝います。自分は一人暮らし長かったんで炊事は得意です」

 

 

間宮「でしたら、この具材を……」

 

 

提督「はい」

 

 

提督「……」トントン

 

 

間宮「あ、包丁捌きがお上手ですね」

 

 

提督「……む、そうなんですか。気にしたことなかったです」

 

 

間宮「…………」

 

 

提督「あの、間宮さん」

 

 

提督「手元が狂う恐れがありますので、自分の肩に頭を預けるの止めてもらえませんか……?」

 

 

提督「もしかして酔ってます……?」

 

 

間宮「大丈夫のはずです。ただ提督さんとあの話をしてから、少し確かめたいことが、できまして」

 

 

間宮「やっぱり、そういうことなんですね」

 

 

提督「……」

 

 

間宮「お願い、です」

 

 

間宮「私、今とても幸せなので」

 

 

間宮「なんとかがんばって?」

 

 

提督「……」

 

 

提督「間宮さん」

 

 

提督「とりあえず先程から降ろしていらっしゃるまぶたをあげてみてください」

 

 

間宮「……はい?」パチッ

 

 


 

 

 

 

 

翔鶴「 (〃ω〃)」



翔鶴「本日付で着任してしまいまして」

 

 

翔鶴「本当にすみません……」

 

 

翔鶴「5航戦正規空母翔鶴です……」

 

 

明石さん「ちなみに明石さんもいまーす……間宮さん見てから階段降りるのをためらってました……」

 


 

間宮「~~~~っ!?」

 

 

翔鶴「わ、私は皆さんを起こしてきますね」

 

 

3


 

明石さん「しっかし、ほえー……」

 

 

明石さん「どんな男からすり寄られても、イエスと答えない」

 

 

明石さん「この超身持ちの固い共同財産の間宮さんがねえ、へえー……」

 

 

間宮「…………」

 

 

提督「間宮さん魂抜けてますが……」


 

明石さん「というか、あの弟子と丙さんのキス写真なんですか……」

 

 

明石さん「あ、でも、そっちより間宮さんのほうの話を先にお願いします」

 

 

提督「昨日の話をしてから、といいましたから、恐らくあれでしょうね。間宮さん、話しても大丈夫ですか?」

 


間宮「ええ、どうせすぐに広まるでしょうし……」



カクカクシカジカ

 

明石さん「当事者なのにすごく事務的&客観的に話しますねー。そのお陰で内容はのろけなのに、いらっと来ないという」

 

 

明石さん「まあ、それは好かれても不思議ではないですね」

 

 

提督「…………は、はあ」

 

 

提督「まあ、好意を持たれるのは歓迎すべきことですね。今まで間宮さんには嫌われていた気はしていましたし」

 

 

明石さん「…………」

 

 

提督「この調子で他の皆にも好かれてもらえたらよいのですが……」

 

 

間宮・明石さん「……」

 

 

明石さん「提督も修理必要ですか」

 

 

間宮「間違ってはいないのですが、そういう風に解釈されましたか……」


 

間宮「もしかして私、駆逐艦の皆さんみたいに思われているんじゃ……」

  

 

提督「給糧艦ですよ」

 

 

間宮「いえ、そういうことではなく」

 

 

提督「間宮さん、いくつでしたっけ」

 

 

明石さん「ためらいなく女性に年齢聞いてくるとはさすがですね……」

 

 

提督「というか後ろに手が回るので止めましょう。間宮さん、非常に申し訳ないのですが、自分は鈍くはないので」

 

 

間宮「?」

 

 

提督「ごめんなさい。理由は独身希望なのでそういうのは無理です」

 

 

間宮「」

 

 

明石さん「すごいハッキリいいますね。それはそれでいいんですけど、間宮さんが真っ白に……」

 

 

間宮「……まあ、それでもいいや。なんとなく分かっていたことですし」

 

 

明石さん「まあ、そうですね……」

 

 

提督「自分、寮のほうで寝ている方のために館内放送でモーニングコール入れてきますねー……」

 


4


 

間宮「やってしまった。余計な気を遣わせてしまいましたね……こういうのは避けなければ、と思っていたのに」

 

 

明石さん「今の時期にそうしても難しいでしょうね……」

 

 

間宮「私のなにがダメなのでしょう……」

 

 

明石さん「間宮さんというか、誰でもダメでしょうね。あの提督さんはこの戦いに魂を売り払ってますから、とりあえず終わるまで待ちましょう」

 

 

明石さん「それからなら可能性は、と明石さんは思いますよ」

 

 

間宮「既成事実作ればー、とか専ららしいですけど、それは嫌ですから……」

 

 

明石さん「明石さんも形はともかく、伝えるのは言葉じゃないほうがいいと思いますね。ただ側にいてあげればいいんですよ。いつの間にか心に住んじゃえば勝ちだと思いますので」

 

 

明石さん「必要だから好きと思わせちゃえば、それもまた反転しちゃうもんです」

 

 

明石さん「むしろ提督さんは間宮さんみたいな人にしか落とせなさそう。独身の私がいってもアレですが」

 

 

間宮「……」

 

 

間宮「幸せの形は人それぞれですしね。なんか提督さんは明石さんみたいに楽しく独身ライフを送りたいみたいです」


 

明石さん「確かに独り身でも相当に楽しいですね。趣味さえあれば私は生きていけますし、結婚とか別に……」

 

 

明石さん「難しいですね……」

 

 

5

 

 

瑞鶴「……」ムクリ

 

 

翔鶴「あら、目覚めたのね。おはよう、瑞鶴」

 

 

瑞鶴「…………しょ」

 

 

瑞鶴「翔鶴姉じゃん!」


 

瑞鶴「今日ここに来るなんて提督さんから聞いてねえ。これはなんたるサプライズ」

 

 

翔鶴「本日付で着任したから。それより、色々とそのはしたない格好を直してきなさい。特にズボンとか脱げてるから男の人が起きる前にね?」

 

 

瑞鶴「はーい。つーかジャージ脱がしたの誰だ……」

 

 

瑞鶴「秋津洲か。ジャージから手を離せー……」

 

ホッペグニグニ


秋津洲「痛い、か、かも~……」


 

瑞鶴「みんなあちらこちらで雑魚寝してるなー。結局夜通しどんちゃん騒ぎしてたのかー……」

 

 

瑞鶴「翔鶴姉、聞いてよ。丙少将と」

 

 

瑞鶴「この甲大将の」フミフミ


 

瑞鶴「連合艦隊に勝ったんだ!」

 

 

翔鶴「聞いています」

 

 

翔鶴「瑞鶴も活躍したみたいで、自分のことみたいに嬉しかったです」ニコニコ

 

 

瑞鶴「あー、やっぱり翔鶴姉は女神だわ」


 

翔鶴「なんというか色々な意味ですごい鎮守府ですよね……」

 

 

翔鶴「そして瑞鶴、恐れ多いから甲大将を足蹴にするのは止めなさい?」


 

瑞鶴「いーのよ。こいつら割とフレンドリーだし目覚めるまでが無礼講ってことでー……」


 

翔鶴「全く……」

 

 

瑞鶴「……」クンクン


 

瑞鶴「あ、この匂い、間宮さんの飯の匂いだ。朝飯食ってから、歯は磨くか……」

 

 

翔鶴「そういえば瑞鶴、提督さんのことなのだけれど……」

 

 

瑞鶴「あー、大丈夫。あいついいやつだよ。まだ悪い噂流れてるっぽいから心配するのは分かるけど」

 

 

翔鶴「いえ、そうでなくて……」

 

 

翔鶴「いつから間宮さんと、その、お付き合いをしていらっしゃるのかしら」


 

瑞鶴「んー? そんなのここに着任してからでしょ?」


 

翔鶴「いえ、その男女としての交際、です。その、間宮さんとそのような関係なら、知っておいたほうがお二人に粗相をせずに済むと思うので……」

 

 

瑞鶴「?」

 

 

瑞鶴「提督と間宮さん、なにかしていたの?」

 

 

翔鶴「こう、一緒にお料理をしていまして、間宮さんが提督さんの肩に頭を預けて、幸せですっていってましたので」

 

 

瑞鶴「…………マジで?」


 

翔鶴「はい。えっと、そういう関係、なんですよね?」

 

 

瑞鶴「マジか―――――!!」


 

龍驤「!?」ビクッ

 

 

龍驤「なんやの! うっさいわ!」ムクリ

 

 

龍驤「ん、翔鶴……?」

 

 

瑞鶴「龍驤、聞くけどさ、提督と間宮さんがデキてたの知ってた?」

 

 

龍驤「あるわけないやろ……さすがの瑞鶴もこんなアホやないし……」

 

 

龍驤「なんや夢の中かいな……」

 

 

瑞鶴「ところで龍驤、吹雪並みに小豆色のジャージ似合ってるね」

 

 

龍驤「誰が特型駆逐艦やねん」ビシッ

 

 

瑞鶴「まあ、聞きなさいよ」

 

 

6

 

 

龍驤「まあ、翔鶴が嘘つくとは思えんし、本当なんやろな……」

 

 

翔鶴「その反応は……なるほど、どうやら私の誤解のようですね」

 

 

瑞鶴「でも秒読みじゃん。だって間宮さんだよ。間宮さんから攻められて落ちない男なんているわけが……」

 

 

龍驤・瑞鶴「……」

 

 

龍驤「……それがうちらの」


 

瑞鶴「……提督、か」

 

 

瑞鶴「正直すまんかった」

 

 

間宮「あのー、朝ご飯の支度ができますので、そろそろ起きて……」

 

 

瑞鶴「暁の水平線は遠そうだね。間宮さんファイト」バシン!

 

 

間宮「……とりあえず」

 

 

龍驤「あの手の男は色気とか胃袋とかでは落とせんやろー。詰ませるのが効果的やと龍驤さんは思うで」バシン!

 

 

間宮「ご飯、出来ていますので……」

 

 

翔鶴「す、すみません、こういうつもりでは……」

 

 

間宮「翔鶴さんは悪くありませんよ。私がTPOを弁えなかったゆえですから。というか、この話恥ずかしいのでやめましょう……」

 

 

翔鶴「そ、そうですね」

 

 

《お友達の皆さん起きるのです!》

 

 

間宮「あ、モーニングコールが」

 

 

陽炎「もう朝か……」ムクリ

 

 

不知火「ここで寝落ちてしまっていましたか」ムクリ

 

 

《追加でお知らせです。初霜さん不在なので、帰って来るまでは陽炎さんと不知火さん、秘書官でー》

 

 

不知火「!」シャキッ

 

 

陽炎「ええー、めんど……」

 

 

7

 

 

明石「この人は! 5航戦の見目麗しいほう……!」

 

 

瑞鶴「ケンカ売ってんのか」

 

 

翔鶴「明石君ですよね。瑞鶴からよく聞いています。翔鶴です。よろしくお願いいたします」

 

 

明石「よろしく。この清楚な美人が瑞鶴さんの姉とか信じられねーよなー……」

 

 

瑞鶴「同意するけど、うっさい。翔鶴姉に手を出したらお前の下半身を爆撃するからねー」

 

 

明石「お前らマジでさ、俺と戦う時に下半身を攻撃するの止めろよな。女には金的の痛みがわかんねーからそんなことが出来るんだ」

 

 

木曾「そんな弱点あるほうが悪ィんだよ」

 

 

明石「特にテメーだよテメー。金的さえなかったら昨日は俺が勝ってたわ」

 

 

山風「朝から下品だよ……それにアッシーだって、アッキーの兄とは思えないし……」

 

 

秋月「よくいわれます。アッシーが言葉を選ばないし、空気を読まないからですよ……」

 

 

秋月「でも確かに翔鶴さんは瑞鶴さんと雰囲気が違いますね! 優しそうです!」

 

 

瑞鶴「マジもんの女神だから」

 

 

龍驤「丙ちゃんと甲ちゃんのところは帰る準備しとけやー。朝飯食べたら帰るみたいやでー」

 

 

木曾「えー、翔鶴の着任祝いにもう1日くらいぱあっと騒いでもいいんじゃねえの」

 

 

翔鶴「今ここには戦力集まりすぎですから。深海棲艦は活動していますし、鎮守府に戻らないと」

 

 

龍驤「その通り。真面目なやつが来てくれてなによりやで」

 

 

木曾「色々と世話になったな。次に鎮守府で騒げるのは海の傷痕を消した後か」

 

 

明石「じゃー、すぐだな」

 


秋月「向こうでお兄さんが大将と少将とあいさつしてます。山風ちゃん、私達も行きましょう!」



山風「……そうだね」



瑞鶴「翔鶴姉もいこー」



翔鶴「そうですね。私は皆さんにあいさつして回りましょう」



【2ワ●:フーゾク街にてシャレコウベ 】

 

1

 

提督「……」

 

 

不知火「陽炎」

 

 

陽炎「なによ」

 

 

不知火「かれこれ一時間くらい、司令が書類を見つめてダンマリです」


 

陽炎「ほっときなさいよ……初霜いわく、執務中はよくダンマリ空間展開するらしいじゃない」

 

 

不知火「いえ、なにか違います」

 

 

不知火「解けない数式に向かい合う学生みたく困っているように不知火には見えます」

 

 

不知火「その、司令」

 

 

提督「……はい」

 

 

不知火「不知火は決して、退屈などしていません。いえ、構いませんよ」

 

 

提督「構います。初霜さんが遠征なので、お仕事ガンバってくださいね」

 

 

陽炎「司令、不知火の話聞いてた?」

 

 

提督「……」

 

 

陽炎「司令!」

 

 

陽炎「無視するな!」

 

 

提督「お二人にいくつか質問してもいいですかね。プライベート的な」

 

 

陽炎「別にいいわよ」


 

不知火「なんでしょう?」

 

 

提督「お二人は年頃の少女であり、青春まっただ中、さすがに兵役についてからは難しいとは思いますが、街にいた頃」

 

 

提督「恋をした経験はおありですか」

 

 

陽炎・不知火「…………」

 

 

提督「あれば始まった時からどのような心情を抱いたのかこと細かく教えていただきたいのですが」


 

陽炎「ホントにどうした司令」

 

 

不知火「職務の一環であるのなら答えるのもやぶさかではありませんが」

 

 

不知火「その書類、と関係が?」

 

 

提督「元帥直々に任務を渡され」

 

 

提督「これなんですが」ピラ

 

 

『愛とはなにか。友情、家族愛、恋愛。その三項目における想いについて理解を深めてください』


 

提督「家族愛なら、なんとなくこの鎮守府の皆さんと照らし合わせて分かるのです。愛情と友情も分からないことはないのですが、まだ自信が持てなくて」

 

 

陽炎「友情……司令の卒アルの寄せ書き、真っ白だったわね……」


 

提督「今だと何人か覚えはありますが、実際どうなのか。はあ、この歳なら一人くらい付き合いの長い友達いても不思議ではないはずなのに」

 

 

陽炎「泣いた」

 

 

不知火「しかし、元帥は一体何のために……」

 

 

提督「教えてもらえませんでしたが、この前にお話した感じ、あのじいさん結構、頭回りますね。この大事な時期に無意味にさせることとは思えず、真面目に取り組もうかと。自分も今ごっちゃで整理するためにも心身ともにリフレッシュしたいですし……」

 

 

提督「最終作戦のためにはなります」


 

提督「まあ」

 

 

提督「なんとなくですが、大事な要素ではあるように思えます」

 

 

陽炎「悪いけど、男友達ならともかく、恋愛経験なんてないわね。男女のそれなんて全く」

 

 

不知火「不知火は知ってます」

 

 

陽炎「あんたまさか街のほうに男いるの……?」

 

 

不知火「お父さん大好きです」

 

 

陽炎「あ、うん」

 

 

不知火「なにか落ち度でも」

 

 

陽炎「いや、ないけど」

 

 

陽炎「駆逐艦に聞くのが間違いじゃないかなー。この鎮守府でその手のことに経験ありそうなのは……」

 

 

不知火「……ありそうなのは?」

 

 

陽炎「そー言えば誰からも聞いたことないわね。寮でもそういう話はしたことあるけど、弾まないというか」


 

陽炎「まさか全員……」

 

 

不知火「交際経験がないのでは」

 

 

提督「まあ、この事は内密に。やはり自分でどうにかしてみます」

 

 

陽炎「どうにかって……まさか」

 

 

提督「どうか内密にお願いします」

 


5

 


提督「明石君、珍しく昼間から自室にいるのですね。ようやく休むということを覚えてくれましたか」

 

 

明石「姉さんに怒られたので。兄さんと違ってあの人は物理で来るので……入渠すると資材も消費しますし」

 

 

明石「お陰で今日は暇ですよ」


 

明石「なにか俺に用ですか?」

 

 

提督「夜の街についてきません?」

 

 

明石「もしかして例のスカウトみたいな? それとも飯の誘いですか?」

 

 

提督「いえ、女性を知りに」

 

 

明石「スンマセン、らしくない言葉が聞こえたんで、念のためにもう1度お願いできますか」

 

 

提督「風俗に」

 

 

明石「あれ兄さん昼間から飲んでます?」

 

 

提督「まさか。上から友情、家族愛、恋愛感情について理解を深めろ、と命令が来たのでそのために」

 

 

明石「なんすかその命令……」

 

 

提督「この時期にふざけているわけでもないでしょうし、なにかしら必要なことなのでしょう」ピラ

 

 

『まあ、行ったことないのなら風俗でも行ってきなさい』


 

提督「本意ではありませんが……」

 

 

明石「周りは可愛い子に囲まれてますしねえ。それに男は俺と兄さんだけですし、俺に声かけてきたのも納得」


 

明石「うーす、ご一緒しましょう。興味はありますからねー」

 

 

明石「正し、極秘事項で頼みます」

 

 

提督「無論です」

 

 

提督「元帥殿から」

 

 

提督「オススメをいくつか」

 

 

明石「あのじいさん確か65くらいだろ。なんで知ってんだよ……」

 

 

明石「まあ、でも助かるな」

 

 

提督「提督青山開扉」

 

 

明石「工作艦明石」

 

 

提督・明石「抜錨します」

 

 

2

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ガシッ

 

 

ぷらずま「待つのです」

 

 

ぷらずま「鹿島さんのスカウト以来の私服ですね」

 

 

ぷらずま「こんな暮の時に司令官と明石君、お二人で街にお出掛けなのです?」

 

 

提督「ええ、少し用事ができまして」

 

 

提督「ぷらずまさん、外も冷えてきたのでお花や虫を眺めるのもそろそろ止めて中に戻ったほうがいいかと」


 

ぷらずま「……、……」

 

 

提督「……」

 

 

ぷらずま「そうですね」

 

 

ぷらずま「行ってらっしゃい、なのです」

 

 

明石(どこに、とは聞かねえのか)

 

 

明石(俺らが出ようとすると外出許可はもちろんどこに行くかも問い詰められんのに)

 

 

明石(兄さん信頼されてんなー……)

 

 

ぷらずま「明石君が誘ったのです?」

 

 

提督「いえ、自分です」

 

 

ぷらずま「あ、そうなのです。苺みるくさんのご飯が切れてしまったので帰りに買ってきてもらえませんか?」

 

 

提督「了解です。それでは失礼」

 

 

明石「ケンカして物壊すなよー」

 

コツコツ

 

 

 

 

 

 

ぷらずま「● ●」

 

 

――――プルルルル


 

明石さん「はーい?」

 

 

ぷらずま「ぷらずまです。工廠の明石さんなのです?」

 

 

明石さん「明石さんでーす。どうかしたんですか?」

 

 

ぷらずま「司令官さんと明石君が今、一緒に街のほうに繰り出したのですが」

 

 

明石さん「仲良いですねー」


 

ぷらずま「聞きたいことがあります」


 

明石さん「なにかあったんですか?」

 

 

ぷらずま「男二人が」

 

 

ぷらずま「シャンプーの香りがするほど体を」

 

 

ぷらずま「綺麗にして」

 

 

ぷらずま「ビシッと」


 

ぷらずま「身だしなみを整え」

 

 

ぷらずま「香水までつけるほど」

 

 

ぷらずま「気合いを入れて」

 

 

ぷらずま「行くところは」

 

 

ぷらずま「どこ、なのです?」

 

 

明石さん「……あ、ははー……」

 

 

明石さん「どこですかねー……明石さんワカラナーイ……」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「どこだ」


 

明石さん「怖っ!」


 

明石さん「誰かに会う……いや、私達に内緒、男同士でこっそり遊びに行くなら恐らく女の子のお店だと思いまーす……思うだけですよー……」

 

 

明石さん「それでは失礼しまーす♪」


 

ツーツーツー…… 

 

 

ぷらずま「む、女の子の、お店とは」

 

 

ぷらずま「具体的になんなのです……」

 


ぷらずま「女の子の、お店」

 

 

ぷらずま「検索……」

 

 

ぷらずま「…………女がたくさん」

 

 

ぷらずま「分からない単語もたくさん。ですが、分かるのです……」

 

 

ぷらずま「……この時期に」

 

 

ぷらずま「はわ、はわわ!?」

 

 

ぷらずま「女遊び!?」

 

 

ぷらずま「誰! 誰!!」

 

 

ぷらずま「司令官さんをそそのかしたダボは誰なのです!?」

 

 

ぷらずま「50回は大破させないと!?」

 

 

ぷらずま「おっと、落ち着かなければ。まずは深呼吸するのです」スーハー

 

 

ぷらずま「……ま」

 

 

ぷらずま「発信器つけといて正解だったのです」

 

 

ぷらずま「間宮亭でご飯食べるついでに色々と探りますか」

 

 

3

 

 

ぷらずま「金剛さん」

 

 

金剛「ハイ、なんデスカー?」

 

 

ぷらずま「○○とはなんなのです?」


 

金剛「!?」

 

 

金剛「電ちゃん、どこでそんな単語を覚えたネ……!」


 

龍驤「金剛、駆逐艦相手に顔真っ赤にしてどしたん?」

 

 

阿武隈「どうしたんですかー?」

 

 

卯月「面白そうな気配を感じるぴょん」

 

 

ぷらずま「○○とはなんなのです」

 

 

龍驤・阿武隈「!?」

 

 

卯月「?」

 

 

龍驤「これやから駆逐艦にスマホなんて持たすべきやないねん」

 

 

ぷらずま「私は27年生きています。どんな感じかは想像できますが、どの程度のものなのかがいまいちなだけです」

 

 

龍驤「いずれにしろ分からんいうことはまだ電は子供ってことやしー。第6駆にはまだ早い早い」

 

 

金剛「その通りデース! 提督にいって、何とかしてもらいマース!」

 

 

ぷらずま「……」

 

 

瑞鶴「なになに、どしたの?」

 

 

翔鶴「なにやら不埒な言葉が聞こえた気がしますが……」

 

 

ぷらずま「もういいのです。グーグル先生に聞くのです」

 

 

龍驤「待て待て」

 

 

龍驤「どうしてそんなこと知りたい思たん?」

 

 

ぷらずま「司令官と明石君がこういったお店に行くために二人でお出掛けしたみたいなので」

 

 

金剛「信じられまセーン!!」

 

 

瑞鶴「うわー……」

 

 

阿武隈「明石君はチャラそうなので違和感ないですが、あの提督がまさか……信じられません」

 

 

金剛「秋月ー、明石君はこういうお店によく行くノー?」

 

 

秋月「はい?」

 

 

秋月「どうなんでしょう。アッシーの全てを把握しているわけでもありませんし……」


 

秋月「でもお兄さんが、まさか。なんか色々とショックですね……」

 

ガラッ

 

わるさめ「うーす、腹へった腹へったー飯寄越せ飯ー」

 

 

わるさめ「ん?」

 

 

瑞鳳「皆さん一ヶ所に集まってどうしたんです?」

 

 

卯月「司令官と明石君が二人で風俗に行ったみたいだぴょん」

 

 

わるさめ「●ω●」フム

 

 

わるさめ「新鮮なネタ仕入れてるね」


 

瑞鳳「そういうのは可哀想ですからそっとしておいてあげましょうよ……」

 

 

龍驤「うちも瑞鳳と同意見」

 

 

わるさめ「お前ら、ムカつかないの?」

 

 

わるさめ「逆に言えばわるさめちゃん達はどこの誰かも知らねー女どもより魅力がないということだ☆」

 

 

翔鶴「それとはまた違うのでは……」

 

 

瑞鶴「翔鶴姉のいう通り。あの提督のことだし、私達に手を出さないため、と考えたほうが自然じゃない?」

 

 

ぷらずま「断言します。明石君はともかくあの司令官さんが女体に興味ある人だとは思えないのです……」

 

 

阿武隈「それはそれで酷いですね……」

 

 

間宮「…………」

 

 

翔鶴「間宮さんが先程から微動だにしていません。口から魂が抜けているように見えるのは幻覚ですよね……」

 

 

龍驤「ドンマイ……」

 

 

瑞鶴「仕方のないことなのかもね……」


 

間宮「いえ、あの提督さんが、と」

 

 

間宮「電ちゃんと同じで、意外でしたので……」


 

間宮「逆に言えば可能性はあるのかなあ、と」

 

 

龍驤「! そこに気づくとは!」


 

ぷらずま「それはそうと」

 

 

ぷらずま「なぜ背筋を伸ばして」

 

 

ぷらずま「汗をかいているのです。陽炎さんと不知火さんは」

 

 

陽炎「あ、え? なんでもないから」

 

 

不知火「……ええ、なんのことか全く分かりません」


 

陽炎「不知火あんたお口チャーック!」

 

 

わるさめ「もう遅いっス……お前らなんか知ってるなー」

 

 

陽炎「陽炎、休憩入りまーす」

 

 

ガシッ

 

 

わるさめ「逃がさないゾ☆ 確か二人は留守にしているはっつんの代わりに秘書官やってたんだっけ」

 

 

陽炎「二人はもう出掛けたんでしょ。今更知ったところでもう帰って来るのを待つしかないわよー」

 

 

ぷらずま「なにか匂ったので、お二人には発信器をつけておいたのです♪」

 

 

陽炎・不知火「」

 

 

金剛「大丈夫。私達はそんなに理解のない女ではないから安心して話してくだサーイ」

 

 

ぷらずま「まあまあ、私と陽炎さんの仲ではないですか。なので、知っていることをお話するのです」

 

 


 

 

ガラ

 

 

榛名「えっと、皆さん! 提督がどこにいるか知りませんか!」

 

 

金剛「榛名、そんなに慌ててどうしマシター?」

 

 

榛名「乙中将から、れ、連絡がありまして、兵力を大至急、貸してもらいたいとのことで……」

 

 

龍驤「落ち着け。なにかあったん?」

 

 

榛名「う、海の傷痕が情報を賭けて乙中将とその艦隊のみなさんと街中で戦いを始めるそうです!」

 

 

瑞鶴・翔鶴「」

 

 

翔鶴「ま、街中で戦う?」



瑞鶴「警察とか陸軍にいいなさいよ……まあ、陸軍はそんなフットワーク軽くないか」

 

 

陽炎「そんなことより、どうするのよそれ。洒落にならないでしょ」

 


不知火「その通り、街中で戦いを始めるなんて乙中将の判断とは……」

 

 

榛名「鬼ごっこ、みたいです。海の傷痕を日が沈むまでに捕まえる、と」

 

 

陽炎・不知火「」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ホウ

 

 

わるさめ「●ω●」フム

 

 

ぷらずま「海の傷痕の位置情報を確認したのですが、司令官さんと明石君がそちらのほうに向かっている模様。嫌な予感がするのです……」

 

 

わるさめ「なにそれ。言い出しっぺは海の傷痕っぽいよね。タイミングにも意味があったら、海の傷痕の企みがあるかもしれないじゃん」

 

 

金剛「……乙ちゃんですし、だから救援を求めてきたと思いマース。ですが、この鎮守府(闇)から近いのも気になりますネー……」

 

 

わるさめ「司令官が使えねーと思ったの初めてだわ。こんな時に女遊びとか一生の不覚じゃんw」

 

 

間宮「間が悪いですね……」

 

 

卯月「こーいう時の龍驤だろー。早く指示出せし。電の様子見るに司令官とは繋がらねーみたいだぴょん。あの男二人は後でしばくとして」

 

 

龍驤「榛名、他には?」

 

 

榛名「鎮守府(闇)から6名の助っ人が許可されたようです。詳しいことは移動しながら、て。トランスタイプ一人と、手が空いていて鬼ごっこが得意な5名を貸して欲しい、とのことです」


 

龍驤「電は?」

 

 

ぷらずま「この間に街に行った時に改めて分かったのですが、体力には自信ねーのです……」

 

 

龍驤「わるさめは」

 

 

わるさめ「けっこう自信あるよ。任せろ。前のぶらり旅の件を挽回させろー!」

 

 

龍驤「金剛も体力あって卯月は走り回れるやろ。念のため、瑞鳳、こっちとの連絡の仲介&常識人枠としてゴー」

 

 

瑞鳳「はい、了解です」

 

 

金剛「私が常識人枠でないのが心外デース!」

 

 

龍驤「金剛も割と自制心ない時あるからなあ。覚えあるやろー?」

 

 

金剛「ぐ、提督の自宅に突撃した1件ですネー……」

 

 

卯月「ゴーヤを通信入れてこっちに送れ。あいつはめちゃんこ足が速いし、体力もべらぼうにあるぴょん」

 

 

ぷらずま「最後の一人は響お姉ちゃんがいいと思うのです。体力もあって、足も速いです。鬼ごっことかくれんぼは得意なのです」

 

 

龍驤「じゃあゴーヤと響やな」

 

 

龍驤「瑞鶴翔鶴と陽炎不知火、秋月は提督と明石君探しやな。こっちからも定期的に連絡入れるけど、どうも繋がらんみたいやし。見つけて酔ってたらボコってええから目を覚まさせてこい」

 


瑞鶴「おっけ」

 

 

秋月「分かりました。兄二人のため、私が挽回しなければなりません」

 

 

陽炎「がんばりますか。確か書面上でピックアップしてた店の名前もちらっと見て覚えているし」

 


不知火「今は私達が秘書官ですしね」

 

 

翔鶴「ねえ瑞鶴、ここはいつもこんな風にトラブル起きているのかしら」

 

 

瑞鶴「割と。翔鶴姉がいくら女神でも容赦ないと思うよ。そこら辺、合同演習時とあんまり変わってないから」

 

 

翔鶴「なるほど、ならば適応するために精進しなければなりませんね」

 

 

陽炎「まあ、足使うのは得意だし、がんばりますか」

 


不知火「今は私達が秘書官ですしね。責任を果たしましょう。司令と明石君を必ずや捕まえてきます」

 

 

ぷらずま「……皆さんお分かりかと思うのですが、海の傷痕は意味もなくこんなことするとは思えません」

 

 

ぷらずま「私が海の傷痕に陸で敗北したのをお忘れなきよう。気を付けるのです。特に新参の翔鶴さん」

 

 

翔鶴「……大丈夫です」

 

 

ぷらずま「では私は寮から響お姉ちゃんを連れてくるのです」

 

 

ぷらずま「わるさめさん、お分かりかと思いますが、図に乗ってはダメなのです。私を秒殺する相手、戦って勝てるとは思わねーことです」

 

 

わるさめ「分かってるから」

 

 

ぷらずま「では私は寮から響お姉ちゃんを連れてくるのです」

 

 

瑞鳳「抜錨ポイントで待ってますね」

 

 

卯月「艤装で行くのかー?」

 

 

瑞鳳「そのほうが早いですし、向こうの辺りにも抜錨ポイントはあるので、そこで艤装は外したほうがいいかと。今回は兵は神速を尊ぶってやつです」

 

 

龍驤「せやな。そのほうが速いわ」

 

 

翔鶴「では私達も参りましょうか」

 


瑞鶴「あの提督さんらしくないミスだけど、人間味が出てきたのかなー」

 

 

秋月「ちょっと嫌な人間味ですね」



不知火「まあ、半分くらい珍妙な任務を渡した元帥のせいですが、今更です。龍驤さん、外出の書類は頼みます」

 

 

陽炎「いざフーゾク街へー」

 


【3ワ●:海の傷痕:鬼ごっこ】

 

 

1 街中にて

 

 

海の傷痕【貴方達はずっと当局に付きまとって一体なにをしようというのだ。自由に街を散歩するのに付き添いが要るほど、当局は幼くはないぞ?】

 

 

山城「うるさいわね。これが任務なのよ……」


 

乙中将「本当はやりたくないよ。だから、なんか情報ちょーだい」

 

 

海の傷痕【貴方とオープンザドア君は1を渡したつもりが、どれだけぶんどられるか分かったものではないのである】

 

 

山城「鎮守府(闇)のほうに近いわよね。かれこれ4日は歩いているわよ……早く白露一同と見張り交代したいわ……」

 

 

海の傷痕【まあ、鎮守府(闇)といえば昨日に甲丙連合軍が敗北したのである】

 

 

山城「あのゲスの極み乙女艦隊が丙少将と甲大将に勝ったですって……?」

 

 

海の傷痕【かなり恥ずかしい内容の試合であるな。どいつもこいつも恥ずかしげもなく過去の傷を吠えおって】

 

 

乙中将「そういう趣旨の戦いだしね」

 

 

乙中将「というか、もう拉致が明かないから」

 

 

乙中将「大本営では深海棲艦と瑞穂とフレデリカのことについて意図的に隠したことがあるよね?」

 

 

乙中将「それなら答えてくれる?」

 

 

乙中将「ちなみにロスト空間がどんなところかは初霜さんの情報から分析して割り出せそう。丁准将とフレデリカ大佐は懇意だ。先代の丁准将は瑞穂:バグとの意思疏通でロスト空間を探っていた可能性がある。初霜さんと丁准将の違いは、時間的なこと」

 

 

乙中将「そして青ちゃんからの言葉が連絡来てる。海の傷痕の目的は『決戦で女性の想を艤装に溜め込み、反転建造システムにより、此方を産み落とすこと』だとさ」

 

 

乙中将「だとしたら、海の傷痕は『勝つ気がない』と僕は考える。だって、女性の想を回収するためにはわざわざ決戦をする必要はなく、電ちゃんを完封できるその力でどうとでも回収できるはず。やり方に確実性がないよね」

 


乙中将「青ちゃんがいう目的の他にもなにかある。それを踏まえると『決戦』という手段を設定しているんだと」

 

 

海の傷痕【……】

 

 

海の傷痕【それについて当局がなにか答えたところで信じるのか?】

 

 

乙中将「本当みたいだね。意外と顔に出る」



海の傷痕【……だから貴方は嫌いなのだ。プレイヤーでなければ消してやれるのだが】



海の傷痕【そうだな】



海の傷痕【情報交換ならば、当局が欲しいものはそちらになし。ならば勝ち取る他なかろうて。まあ、当局も無用に街にきたわけではない。決戦のための仕事に来ているのである。そうだな、先程手っ取り早くといったな】

 

 

海の傷痕【貴方はこのテーブルになにを賭けられる。金貨の類を乗せても当局は無反応であるが】

 

 

乙中将「想を乗せろってこと?」

 

 

海の傷痕【命】

 

 

山城「無理に決まってるじゃない!」

 

 

乙中将「いや、いいよ。正し」

 

 

海の傷痕【貴方とその部下以外だ】

 

 

乙中将「っ」

 

 

海の傷痕【ホームからだらだらと絶えず流れ出ている赤の他人の命にしようかな。少なくとも二人。それと引き換えにしてまで情報が欲しいというのならば考慮してやってもいいぞ?】

 

 

海の傷痕【●∀●】

 

 

乙中将(……、……なんで二人?)

 

 

海の傷痕【これは貴方の尻拭いであると気付いているかな。電やオープンザドア君を合同演習のままにしておけば、ここはすぐに頷いたのである】

 

 

海の傷痕【乙中将、貴方の余計なお世話によるところが大きい。乙中将、深海ウォッチング作戦で庇わなければ】

 

 

海の傷痕【いや、こういおうか】

 

 

海の傷痕【あなたが鎮守府(仮)の有用性にいち早く気付いておきながら、中途半端に肩を持ったせいだ。フレデリカと先代丁准将のようになれば】

 

 

海の傷痕【もう戦争は終結していた可能性が非常に高い】

 

 

乙中将「……」

 

 

海の傷痕【もう1つつけ加えるのなら丁の准将は戦争終結のために動いていた。魂を悪魔に売ってまでも、だ】

 

 

海の傷痕【犠牲を恐れて戦争が出来るものか。貴方達は軍学校で武器の扱い方を教えながら、人道を説く。それが正しいと証明もできないままで】

 

 

海の傷痕【百救うために一を切り捨てられないのは結構だが、時には理想論を掲げながらも、悪魔に魂を売り払ってみせたまえよ】

 

 

海の傷痕【さて重課金の乙中将】

 

 

海の傷痕【廃課金の領域に踏み込む】


 

海の傷痕【想はお持ちかな?】

 

 

山城「全く、『● ●』の顔が出来るやつの煽り性能は総じて半端ないわね」

 

 

山城「やってやるわよ」

 

 

乙中将「山城さん!?」

 

 

山城「それが任務ですから。賭けのテーブルといった以上、犠牲が出るのは勝負に負けたらの話です」

 

 

山城「勝てばいいだけですから」

 

 

海の傷痕【うむ、その通りである】



山城「鎮守府(闇)だけに美味しいところ持って行かれていますしね」

 

 

山城「あなたにはお世話になりましたから、ここらで山城はあなたに恩返し致します。勝たせて差し上げますよ」

 

 

山城「このどぐされ外道に」

 

 

乙中将「……そっか」

 

 

乙中将「この場所、山城さんの故郷だよね。海の傷痕が、ここに来たことにも意味があるはずだ。どんな勝負?」

 

 

海の傷痕【やるのだな?】

 

 

乙中将「うん」

 

 

海の傷痕【では、この銃を3丁くれてやろう。手を加えてある」

 

 

海の傷痕【ペイント弾だが、8発装填されている。ほら、ご丁寧に取扱説明書もつけてやるのである】

 

 

山城「なにをする気なの?」

 

 

海の傷痕【やれやれ、貴方は肝が座っているな。ヤンキーとはそういうものなのか、貴方が特別なのか】

 

 

山城「うるさいわね。人の黒歴史をつつくんじゃないわよ……」

 

 

海の傷痕【勝負の方法だが】

 


海の傷痕【『鬼ごっこ』である】

 

 

海の傷痕【当局が逃げるから、それを捕まえろ。直接的に身体で触れるか、その銃で撃ち、当てるか、で成功するとしよう。ペイント弾の補充はなしだ】


 

海の傷痕【鬼ごっこの範囲はここから三キロ以内だ。前はあそこの海の砂浜、後ろはあのデパート、右はあの鉄塔だな。左はあそこの20階建てのマンションまで。そして当局は攻撃はせず、想の力も使わずに、ただ逃げるだけだ。単純な鬼ごっこであるな】

 

 

海の傷痕【そうだな、山城のいう通り鎮守府(闇)は近いのである。そこから人数を借りてもいいぞ。6名、までだ」

 

 

海の傷痕【制限時間は暇潰しも兼ねて大サービスである。日が完全に沈むまで】

 

 

乙中将「いつから始める?」

 

 

海の傷痕【スタートしたら当局は逃げる。その15分後に追いかけてこい】

 

 

乙中将「分かった。それでなにを教えてもらえるの?」

 

 

海の傷痕【神に打ち勝つだけに相応の情報であるとだけ。対深海棲艦海軍にとって、オープンザドア君の削ぎ落としたネジクラスの価値だ】

 

 

乙中将「……了解」


 

乙中将(夕立と時雨は先の地点で待ってるか。それならあの二人と飛龍蒼龍も、参加してもらうかな……)

 

 

海の傷痕【まあ、貴方は最も相手にしたくないのだが、余興としては大変宜しい】

 

 

海の傷痕【1つアドバイスだ。この場所には様々な運命がたむろしている。それをかぎ分けて活用するといい】

 

 

海の傷痕【自然に愛された子よ、アイヌの狩猟民族の歴史を背負い】

 

 

海の傷痕【深海棲艦を誰よりも多く沈めたその牙と、よく利く鼻を持って、見事に獲物を狩ってみせるといい】

 

 

海の傷痕【決戦への序章である】

 

 

海の傷痕【●∀●】

 

 

 

 

 

【4ワ●:海の傷痕:鬼ごっこ 2】

 

1

  

乙中将「瑞鳳さん? 夕立が追ってくれているから、山城さんは飛龍に銃を1つ渡しに行くから、飛龍から受け取ってね」



乙中将「他の都合のついたメンバーは誰?」


 

瑞鳳「卯月さんと響さんゴーヤさん金剛さん、私とわるさめさんです。すみません、今、提督と連絡がつかなくて龍驤さんは出払えなくて。翔鶴さん瑞鶴鶴さん陽炎さん不知火さん秋月さんのメンバーで提督の捜索に当たっています」

  


乙中将「榛名さんは分かりませんって答えたんだけど、青ちゃんどこにいるの?」



瑞鳳「……大変申し上げにくいのですが、明石君と成人指定のお店に。連絡をシャットアウトしているのはこちらから完全に逃げ切るためだと思います。でも提督に電さんが発信器をつけたみたいで、場所はわかります」

 

 

乙中将「ええー……青ちゃんなにしているんだよ。いや、このらしくない感じはもしかして元帥さんの差し金か……?」

 

 

瑞鳳「みたいです。奇遇なことに、提督と明石君はその辺りのところに向かっているらしく」

 

 

乙中将「……分かった。それじゃ伝えたことをそっちのメンバーによろしく」 

 

 

神通「あの、白露夕立時雨には海の傷痕のことを伝えましたので、私も向こうと合流しますね」

 


乙中将「うん。一丁渡すけど、慎重にね。一応、龍驤さんに頼んで大淀さんに事情は伝えたけど、街中でこんなもの使うと大騒ぎになるからタイミングには気を付けて。海の傷痕は衛星監視されてるけど必ず尾行すること」

 

 

乙中将「以上の情報を踏まえて、監視も及ばず、人混みに紛れて身を隠しやすいあの大きなショッピングモールとか駅の地下辺りに入るかなー」

 

  

神通「了解です。それでは」

 

 

山城「乙中将、私もまずは飛龍のほうに向かいますね」

 

 

乙中将「うん。ところでここら辺は山城さんの故郷だよね。なんかさ、ここらで元帥さんが好きそうな風俗のお店知らない?」

 

 

山城「は? なに?」

 


乙中将「怖い顔しないでよ……ちょっと青ちゃんが遊びに出かけて、連絡もシャットアウトしているみたいで」

 

 

乙中将「山城さんがなにか知ってたら向こうの提督捜索隊に教えようって」

 

 

山城「そんなの私が知るわけないでしょ?」

 

 

乙中将「ですよねー……でも」

 

 

乙中将「山城さん、男の友達多いよね。扶桑さんと山城さんの後援会の名前がいかにも族っぽかったし、その辺のコネで探れないかな?」

 

 

山城「扶桑お姉様を連れて来るべきでしたね。故郷の交遊に関しては扶桑お姉様のほうが顔が利きます」

 

 

乙中将「扶桑さんは一番鎮守府の仕事できる人だから、仕方ないよ」

 

 

神通「それに山城さん、そんなことをいっている場合ではない上に時間も限られています。乙中将は向こうの提督に用があるから探すわけで、乙中将がそこらの街頭で聞き回る手間も省けます」

 

 

乙中将「……そうそう神通のいう通り」

 

 

山城「ああ、もう! 分かったわよ!」

 

 

神通「でもそういうのって、ネットのクチコミとかで探して当たればいいのでは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当てにならないんだよ。


 

 

 

神通「……乙中将、けっこう女遊びの経験がおありで?」

 

 

山城「不潔だわ……」

 


乙中将「そんな目で見ないで! 僕も元帥さんと丙さんに誘われて行ったことあるだけだよ! 男である以上は仕方のないことなんだよ!」

 

 

乙中将「というか元帥さんのススメってよく分からないんだよね。アブノの趣味は僕にはないから。丙さんは取っつきやすいところ連れてってくれるけど」

 

 

神通「……知りませんよ。語り始めないでください」

 

 

山城「聞きたくないですしね。それ以上その話を広げると蹴りますよ」

 

 

乙中将「スミマセン」

 

 

山城「そんなことより、海の傷痕を捕まえる作戦に時間を割くべきです」

 

 

神通「向こうは攻撃してこないんですよね。ただ逃げるだけです。それと情報も調べるとなると、私的に気になるのはトランスタイプ特有の再生能力の度合いです。わるさめさんと電さんにも違いがあっはずで、電さんのほうが再生能力は高かったはずです」

 

 

乙中将「……まさか」

 

 

神通「海の傷痕が逃げるのみの抵抗なし。私が確かめます。必要ならば骨を何本か砕いて、眼球もえぐります」

 

 

神通「そして大本営で海の傷痕は怒りかけたと聞いていますので、少し煽りもしてみます。冷静さを失えばなにか情報を口走るかも、です」

 

 

乙中将「神通、君ってやつは(震声」

 

 

神通「やりたいわけではありませんし、勝てないと乙中将が判断した場合、せめて、の手段です。任務上、ぶんどれるだけぶんどるべきですが」

 

 

山城「金剛も来るんですよね。あいつもこっちのほうにください。身体能力なら私より上ですから」

 

 

乙中将「そのつもり。あまり派手にやってはダメだよ。リスクある言動はなるべく避けて。攻撃してこないといっても信用できるかは微妙だし、身を守るためになにかしてくるかもだから気を付けて」

 

 

乙中将「鎮守府(闇)には伝えたけど、もう1度だけ。捕まえるのが無理そうならせめて指定の位置の辺りまで追い込んでね」

 

 

乙中将「艤装つけてる瑞鳳さんには教えてないし、待機している飛龍蒼龍はまだ艤装をつけさせてないから、海の傷痕には分からない」

 

 

乙中将「なんとか海辺付近の目的地に追い込んで」

 

 

乙中将「『艦載機で攻撃して隙を作る』」

 


山城「なるほど、よくもまああなたはこの短時間で奇策を思い付きますね」

 

 

乙中将「あ、二人とも、海の傷痕が二人犠牲にするっていったよね。なんで二人か気になったんだけど」

 

 

乙中将「ここが、肝だ」

 

 

 

乙中将「――――、――――」

 

 

山城「……」

 

 

神通「了解です。時雨さんには伝えますね」

 

 

神通「そろそろ時間です。山城さん、参りましょう」

 

 

山城「いいんですね?」

 

 

山城「例え人を見殺しにしても、この勝負に勝つ気なのですね?」

 

 

乙中将「……うん、ここから先の覚悟が、青ちゃん達のいるステージだ」

 

 

乙中将「戦争は、終わらせるさ」

 

 

2

 


海の傷痕【む、もう終わりか? 全速力で10分といったところである】

 

 

夕立「ぽ、ぽいぃ~……」グテ

 

 

白露「時雨ー、夕立と海の傷痕があそこにいるけど、どうする?」

 

 

時雨「このまま尾行するよ。夕立の身体能力であれじゃ真正面から無策で追いかけても無駄に体力使うだけだと思う」

 


白露「あたし達は艤装つけてないし、位置はバレないよー? 通りすがりに建物の影からすぱっと不意をついてタッチするのは?」

 

 

時雨「いいと思うけど、タイミングだよね。先回りしないといけないし」

 

 

時雨「山城さんと神通さんが来るから地図を見て道を制限してから袋小路にしよう。あえて逃げ出せるスペースを作るんだ。追い込み地点の方角に、ね。その上で罠を張ろう」

 

 

白露「うん、分かったよー。山城さんと神通さんも後2分くらいで合流するって!」

 

 

時雨「それじゃ尾行を再開。夕立、大丈夫? 立てるかい?」

 

 

夕立「うん。けど、海の傷痕、呼吸も乱れていないっぽい。フレデリカ大佐は運動能力ないって聞いてたのに……」

 

 

時雨「容姿はフレデリカ大佐だけど、運動能力とかは先代の准将なんじゃないかなあ。あの人、すごい体力あって頭もキレる文武両道で有名な人だったし」

 

 

時雨「それと現海界は建造システムによるもの。その素質に加えて僕達みたいに身体能力に強化がかかってるのかもね。まだ時間はあるから、そこまで読めただけでも収穫だよ」

 

 

夕立「役に立ったなら良かったっぽい……」

 

 

3

 

 

海の傷痕【む、三叉路である。後方から神通夕立。左前方から山城、右前方には白露か】

 

 

夕立「今度は! 捕まえるっぽい!」

 

 

神通「……逃がしません」

 

 

山城「こっちに来なさいよ」

 

 

海の傷痕【ま、神通と山城から殺気を感じるな。白露が案牌である】

 

 

白露「あたしの横は抜かせない! さー、張り切って行くよ!」

 

 

海の傷痕【……】

 

 

白露「正面から向かってくるんだね!」

 

 

白露「まいどありー!」

 

 

海の傷痕【そら、口を開けておいた】

 

 

白露「ゴミ袋投げてきた! 汚いっ!」

 

 

カサカサ

 

 

白露「な、なんか服に入ってきた……!」

 

 

海の傷痕【G君である】

 

 

カサカサ

 

カサ

 

カサカサカサ

 

 

G君「 癶(´益` 癶)癶」チャオ

 

 

白露「……」

 

 

 

 

 

 

 





 

 

きゃあああああああ!



 

 

 

 

 

海の傷痕【フハハ! 抜けたぞ!】


 

時雨「こっちに隠れておいて正解だね」


 

海の傷痕【む、猟犬のほうがそこの路地に隠れておったのか】

 

 

時雨「タッチさせてもらうよ!」

 

 

海の傷痕【甘いな! 連続バック転回避!】

 

スカッ

 

時雨「くっ! でもそのくらいなら追撃で!」ジャキン

 

パンッ


海の傷痕【とう!】

 

 

時雨「バック転からのジャンプで壁の上に乗るなんてなかなかデタラメだね……」

 

 

海の傷痕【当局がイッチバーン! である。おっと、壁に当たったペイント弾と散らかったゴミの掃除は任せたのである】

 


時雨「逃がさない……」

 

 

おばちゃん「あんた達なにしてんの! そこの落書きと、散らかしたゴミも片付けなさい! 後、その子泣いているじゃないか! 仲良く遊びなさい!」


 

時雨「く……この状況……」

 

 

乙中将「追い付いた。僕の出番だね」

 

 

時雨「乙さん、なにか作戦が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お片付けは任せろ!

 

 

神通「お願いします。心に傷を負ってしまった白露のことも、です」

 

 

山城「見ているこっちですらトラウマモノでしたから」

 

 

夕立「鬼ごっこー♪ 次こそ捕まえるっぽい!」

 

 

乙中将「夕立だけ純粋に鬼ごっこ楽しんでるね……」

 

 

時雨「調達してきたモノは、その袋に?」



乙中将「うん。かなり無理いってカツラも。時雨、後は任せたよ」



時雨「了解。白露のことも、お願いするね」



乙中将「うん。白露、大丈夫?」

 


白露「」

 

 

乙中将「屍じゃないか……ほら白露、G君は取ってあげたから」

 


G君「 癶(´益` 癶)癶」

 

 

白露「……」ブワッ

 

 

おばちゃん「いじめんな!」

 

ゴツッ

 

乙中将「そんなつもりじゃ……僕も泣きそうだよ……」


 

4

 

 

飛龍「とまあ、状況はこんな感じだね」

 

 

卯月「ぷっぷくぷw」

  

 

伊58「あっははー! 娯楽に乏しいど田舎で育ったゴーヤの得意分野でち!」

 

 

響「クウガ、モデルガンかな? 任せて欲しい。砲撃よりも銃撃のほうが得意だ」

 

 

響「しかし、なかなか出来がいいね。想の力はここまで再現できるのか」

 

 

金剛「作戦に従わなきゃだめデース。妙な方向に逃げてしまえば、面倒なことになりマース」

 

 

わるさめ「私がトランス攻撃で隙を作るからそこを撃つんだぞー。トランスするまでは探知されないから、不意打ちか拳銃砲撃で足を狙い撃つ」

 

 

蒼龍「瑞鳳さんは私達と一緒に追い込みポイントに待機で。艤装はギリギリまでつけないから」

 

 

瑞鳳「了解です。金剛さん、そっちの現場のことはお願いしますね」

 

 

金剛「海の傷痕の程度を測ってやりマース!」

 

 

4

 


神通「っ、見失いました」

 

 

山城「近くにいるはず。地下駅に潜り込んでも鎮守府(闇)の連中も出口に待機し始めたみたいだし、逃げ口は浜辺のほうの出口のみ、よ」

 

 

山城「しかし、足が速いわね……」

 

 

神通「……、……」

 

 

神通「……あそこの売店から出てきました、ね。突撃します」

 

 

山城「あいつ、お金も作れるの?」

 

 

海の傷痕【うむ。しかし、そんなこすいことはしないのである。先程、白露のポケットから、これをな】

 

 

神通「お財布をすったんですね……」

 


山城「十分こすいじゃないの……」

 


神通「ここで仕留めます」

 

 

海の傷痕【来たか。ま、ここらで少し相手をしてやるのである】

 

 

神通「……」

 


ドガッ

 

 

海の傷痕【んー、残念。拳を受け止めたのは電話帳なのでセーフである】

 

 

山城「それはどうかしら、ねっ!」

 

 

海の傷痕【!?】

 

 

海の傷痕【拳で電話帳を貫通させるなど、なんという馬鹿力……】クルッ


タタタ

 

神通「また失敗……耐えるのは得意ですが、さすがに自分が情けないです」

 

 

山城「足が速すぎ……あんたいちいちナイーブになるの悪い癖よね。早く追いかけないとまた見失うわよ」

 

 

山城「見失わなければいいのだけど、危ういわね……」

 

 

神通「乙中将の読み通りならば……」

 

 

山城「大丈夫よ。この駅のカメラ映像と私の昔馴染み連中も気取られないように海の傷痕を追跡してるし、出口にも張ってもらっているから。それに」

 

 

神通「どうも、変装してバレないように後を追いかけている時雨さんには気付いていない様子ですね」

 

 

5

 

 

海の傷痕【……】キョロキョロ 

 

 

海の傷痕【さて】

 

 

コツコツ

 

 

海の傷痕【●∀●】

 

 


 

 

 

 

 

 

 

時雨「……、……」

 

 

時雨(……消え、た)


 

時雨(乙さんが、ルール違反はしてくるはずだ、といっていたけど)

 

 

時雨(ロスト現象、かな)

 

 

……………………


……………………

 

……………………

 

 

 

海の傷痕【いいか貴方達、先程伝えたことを、忘れないで欲しいのである】

 

 

時雨(……アライズ現象)

 

 

時雨(しかも……)

 

 

時雨(……3人、いる?)

 

 

時雨(海の傷痕と、誰と誰だろ、う)

 

 

時雨(一人は男性かな……コートの帽子を被っていて顔が見えない……)

 

 

時雨(3人が、別々の出口の方向に……)

 

 

時雨「……、……ま」

 

 

時雨(指示された任務は完遂できた、ね)

 

 

………………

 

………………

 

………………

 


神通「時雨さん、こんなところにいたのですね。見失いましたか?」



時雨「バッチリだよ。ただ海の傷痕はロスト空間に飛んで、人間と思われる人を二人、連れて戻ってきた」

 

 

神通「……読み通りではないのですね。でもこれは+の誤算です、ね。乙中将は街にいる人間二人を資材に建造すると思っていましたから」

 

 

時雨「誰も見殺しにする結果にならなくてよかったよ」

 


神通「それで時雨さん、その3人の姿は?」

 


時雨「僕らが追っていた容姿の海の傷痕が一人」

 

 

時雨「そしてコートのフードをかぶっていた長身でがっちりした感じの男性が一人、そして」

 

 

時雨「黒髪のセミロング、かな。ポニーテールの女の子が一人、だ」

 

 

時雨「姿を隠すことを優先したから、この程度の情報しか……」

 

 

神通「いえ、よくやってくれました。了解です。すぐに通達します」

 

 

神通「その3名は重要な情報の塊でしょうし、全員捕まえましょうか」

 

 

神通「鎮守府(闇)の方もすでに来てくれて、出口を張ってくれています」

 

 

6

 

 

卯月「む、見失ったみたいだぴょん。でも出口は包囲しているから、まだ地下にいるか空けている出口から逃げたかのどちらかだぴょん」

 

 

金剛「神通から連絡ありましたし、もうすぐここに来るはずデース。見間違わないように。海の傷痕のデータは確認してあるー?」

 

 

伊58「容姿は送ってもらったデータから把握しているよー。フレデリカって人は聞いたことあるくらいだけど、提督さんと似ているから分かるでち」

 

 

卯月「……フレデリカと提督は見た目が少し似ているだけだぴょん。フレデリカのほうは見たくもないし」

 

 

卯月「で、包囲していない出口は?」

 

 

金剛「ここ山城さんの地元らしくてその友達が見張ってくれているみたいデスネ」

 

 

金剛「海の傷痕がそちらに行けば連絡はすぐに来るはず。なにやら3人に増えた、とか。その一人がこの出口に向かっているみたいデース」

 

 

卯月「……3人に増えた?」

 

 

伊58「あ、響でち」

 

 

響「増員の人に持ち場の見張りは任せて先回りしてきた。海の傷痕を追跡したけど、ここに向かってる。なんだか、すごく足が遅いよ。少し挙動不審だったし」

 

 

響「直に来るはずだ」

 

 

卯月「すぐ目の前は浜辺だぴょん。まあ、友永隊なら多少人がいても海の傷痕自体に狙いを定められるはず」

 

 

伊58「どのくらいの耐久値があるのかなー」


 

響「さあ。でもチートなのは間違いないだろうね。問題はすでにギミックを設定しているかどうか。その片鱗でも見えれば収穫は十分だ」

 

 

卯月「世界が味方している以上はなにか新規の情報が得られたのならそこからなにか分かるぴょん」

 

 

??【……】

 

 

金剛「……」

 

 

響「……こいつが倒すべき敵」

 

 

伊58「本当に提督と似てるでち。分かりやすい。逃が! さん!」

 

タタタ

 

??「へ?」


タタタ

 

 

金剛「……?」

 

 

金剛(写真で見た海の傷痕と姿は似ていても……雰囲気が違い、マース……?)

 

 

伊58「遅いでち! 捕まえ………!」

 

 

響「よし、当てられる」


パンッ

 

卯月「すぱしーば、響。当たったぴょん。これで終わりかー」

 

 

卯月「ゴーヤー! 念のためにそいつ取り押さえておけし!」タタタ 

 

 

金剛「ヘイ、ストップ」タタタ

 

 

??「は、離して、ください……」

 

 

伊58「あれー、非力でち。本当に攻撃してこないのは褒めてあげるよー」


 

金剛「離してあげてくだサーイ」

 

 

金剛「……ホントに海の傷痕?」

 

 

??「い、痛いし、苦しいじゃないですか。首を、締めない、で……」

 


金剛「っ! おっと、取り出そうとしたものは預からせてもらいマース!」

 

 

金剛「これは……」

 

 

伊58「小さいお人形?」

 


卯月「……、……」

 

 

卯月「――――!」

 

 

??「か、返してください……それがないと」

 

 

卯月「死ね!」

 

 

ドガッ!

 

 

伊58「ちょ、卯月! お前今本気で顔面蹴り飛ばし!?」

 


伊58「鼻血が出てるでち!」

 

 

??「ひ、ひぃ、暴力は」

 


金剛「卯月、少し落ち着いてくだサーイ!」

 

  

??「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。卯月さん、違うんです。キスカでは、私、混乱してて、見捨てるつもりなんて、なく、て……」

 


卯月「今すぐ答えろ」

 

 

卯月「海の傷痕か……?」

 

 

卯月「それともお前」

 

 

卯月「フレデリカか……?」

 

 

金剛「!?」

 

 

フレデリカ「こ、こずかた」



フレデリカ「不来方、フレデリカ」

 

 

卯月「卯月だ。あの時の小学5年生の容姿じゃなく、中学3年生だ。再建造して、伸びる髪は赤くなってきた」

 

 

フレデリカ「……、……」

 

 

フレデリカ「な、なんか、目が覚めた時、女の子が、いました。よく、分からないけど、甦った、のかな?」

 

 

フレデリカ「覚えて、ます。卯月さん、のことも。あの鎮守府のみんな、のことも……」

 

 

フレデリカ「瑞穂と、春雨と」

 

 

金剛「トランスタイプのこと……?」


 

フレデリカ「明るみになってる、のですね。そちらの、あなたは、響さん、かな?」

 

 

フレデリカ「電、生きて、ますか?」

 

 

響「……」

 


響「……、……」



ガゴッ!

 

 

響「私もまず一発」

 

 

フレデリカ「い、痛、けほっ」

 

 

伊58「お前らいい加減にしろでち! こいつのダメージ具合からして完全に人間だよ! 建造しているゴーヤ達が殴り続ければすぐに死んじゃうよ!」

 

 

響「死ねばいい」

 

 

伊58「響っ! そんな悲しいこといっちゃダメだよ!」キッ

 

 

響「構わないさ」

 

 

響「だって、こいつが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響「電をあんな風にしたんだろ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

伊58「ひ、響がキレてるでち……」

 

 

金剛「ゴーヤのいう通りデース。落ち着いて」

 

 

パシン

 

 

響「痛いな……金剛さんも、こいつのことを知っているはずだ」

 

 

響「わるさめさんや電だけじゃない」

 

 

響「雷も、電についていた頃、いつ死ぬか分からないくらい本当に辛そうだった」

 

 

金剛「海の傷痕が死人を完全に甦らせられるノ?」

 

 

金剛「恐らく持っているフレデリカの想を使ってなにかしたはずデス。私達の知っているフレデリカとよく似たナニカの可能性が高いネ」

 

 

金剛「そして情報の塊デース。私情はしまって欲しいネ。じゃなければ私は響と卯月を止めるため」


 

金剛「平手打ちでは済ませられなくなりマース」

 

 

響「……」

 

 

響「まあ、金剛さんの言う通りだね」

 

 

響「今は勘弁してあげよう。あなたには聞くことが山ほどあるから」

 

 

卯月「違法建造やキスカの件だけじゃねー。電もわるさめも鹿島も間宮も仲間だ。あそこでテメーがしでかした業はテメーが死んでからも傷が広がっていってる。もはや命じゃ償い切れん」

 

 

卯月「一時期の対深海棲艦海軍の評判を地に堕としたC級戦犯。生きて明日の朝日を拝めると思うなし……」

 

 

フレデリカ「ひ、ひぁ……」

 

 

卯月「人間を作っても心はー、とか聞くけど、海の傷痕という心のプロフェッショナルの技か……」

 

 

フレデリカ「み、瑞穂、助け、て……」ビクビク

 


卯月「本物としか思えねー作りだぴょん……」

 

 

 

7

 

 

夕立「ちょっと、乙さん! なにがなんだか分からないっぽい!」

 

 

わるさめ「ぽいぬ姉さん代われ☆」

 

 

夕立「あ、夕立をお姉さんって呼んでくれた」キラキラ

 

 

わるさめ「今思い出したー。そーいえば建造してからの春雨ちゃん時代、四番艦から上は姉さんって呼んでたっけか……」

 

 

夕立「っぽい!」

 

 

わるさめ「あー、夕立姉さん」

 

 

夕立「!」キラキラ

 

 

わるさめ「静かにねー………」

 

 

わるさめ「…………」

 

 

わるさめ「大丈夫だよ。確かにフレデリカは殺してえランキング2位のやつだけど、弁えてる。なにもしねーよ」

 

 

わるさめ「ちなみに1位は大差で海の傷痕だぞー。卯月と響は大破させても押さえといたほうがいいと思われー」

 

 

わるさめ「はい、切るよー」

 

 

わるさめ(づほからまだ連絡ねーし、司令官まだ捕まらねーのか……)

 

 

夕立「……」ガルル

 

 

わるさめ「ぽいぬ姉、威嚇してどーした? 向こうに天敵でもいたか……?」

 

 

??「……む」

 

 

わるさめ「……、……」

 




わるさめ「●ω●」

 


わるさめ「そこのかっこいいダンディ系のおじ様」

 

 

わるさめ「今晩、私達と遊びませんかー? 寝かさないぞー?」

 

 

??「申し訳ないが、女遊びは懲りているのである……」

 

 

??「フレデリカと瑞穂で遊びすぎたのが原因で我が身を滅ぼしたのでな」

 

 

わるさめ「……瑞穂とフレデリカ、ね。安心しろよ。今回に限って遊ばれんのはテメーだ」

 

 

わるさめ「フレデリカが現れたーとか聞いたからあり得るよね。その顔は知っているよーん」

 

 

わるさめ「拳銃砲☆トランス」

 

 

わるさめ「お縄につけや」

 

 

わるさめ「先代丁准将」

 

 

丁准将「トランス現象……No2の春雨か。どうやらこの出口はハズレであったようであるな」

 

 

丁准将「もしや近くに彼がいるのか?」

 

 

丁准将「要らん体力は使いたくないので、我が弟子の青山君を呼びたまえ」

 

 

丁准将「我輩は彼と話がしたいのである」

 

 

わるさめ「司令官がお前の弟子とか最悪の黒歴史でしかねーわ」

 

 

わるさめ「ま、お望み通り司令官のもとには輸送してやるゾ☆」

 

 

わるさめ「半殺しの状態でな!」ジャキン

 

 

丁准将「全く、やれやれ」

 

ガシッ

 

通行人A「え、へ?」


 

ドン!

 

 

わるさめ「あっぶね! ギリギリで砲口ずらせた! 人質とか汚ねえやい!」

 

 

丁准将「丸腰相手に拳銃を向けてなにをいう……」クルッ

 

タタタ

 

わるさめ「足速えな!」

 

 

わるさめ「ぽいぬ姉、追うぞ! この人混みじゃ不用意に撃てねっス……!」

 

 

夕立「了解!」ッポイ

 


【5ワ●:フーゾク街にてシャレコウベ 2】

 

 

陽炎「うーん、位置情報的にはこの辺りよね」

 

 

不知火「少し位置がズレていますね。正確なら二人は店ではなく、私達が今立っているところにいるはずですし……」

 

 

翔鶴「……な、なんだか」

 

 

瑞鶴「穢れなき女神の翔鶴姉には刺激が強いわね……というか秋月、明石君が好きそうな店はどこなわけ?」

 

 

秋月「さすがに性癖は分かりません。でも鹿島さんや翔鶴さんみたいな女性がタイプのはずです」

 

 

不知火「店名からするに色々な種類がありそうですが……」

 

 

不知火「不知火にはさっぱり分かりません。瑞鶴さん、どうなんです?」

 

 

瑞鶴「なんで私よ! 知るわけないじゃん!」

 

 

不知火「大学生はちゃらちゃら遊んでいるイメージがありますので」

 

 

瑞鶴「その手の趣味も知識もないわよ! ノーマルな女の私が女遊びするわけないし!」

 

 

陽炎「大体名前で分からない? あそこはキャバクラで、イメクラクラブって、なんかコスプレみたいな」


 

瑞鶴「詳しい駆逐がいるわね。むっつりか」

 

 

陽炎「ち、違うわよ!」

 

 

秋月「候補店の中からしらみ潰しより、乙中将の嗅覚に頼るのはどうでしょう」

 

 

瑞鶴「ナイスアイデア、それね」

 

 

プルルル

 

 

乙中将「はーい! 乙中将でーす! 青ちゃん見つかった? 今忙しいから出来る限り手短に!」

 

 

瑞鶴「瑞鶴です。うちの提督と明石君の捜索隊は現場のフーゾク街に到着したんですけど、あの二人どういうお店に行くと思います?」

 

 

瑞鶴「候補はあるんですけど、乙中将の嗅覚をここで、と思いまして」



乙中将「……、……」

 

 

乙中将「ピンサロはないね。断言しよう。イメクラ、いや……まずはキャバクラやオッパブからの可能性も捨てきれない」

 

 

瑞鶴「……」

 

 

乙中将「提督や明石君は恐らく初めてだから、少し飲む可能性が……」

 

 

乙中将「真実はいつもひとつ……おっぱいはふたつ……そして、確かにある活動限界。僕の勘だと飲みからのソープだ。そこらで丙さん元帥オススメのお店がある。そして、山城さんの昔馴染みからの情報で、艦娘のコスプレをしてくれる店が。そこのお店がヤバイんだよ。陽炎型の」

 

 

瑞鶴「見損ないました。聞くに耐えません」

 

 

瑞鶴「ごめん、切ってしまった」



瑞鶴「みんな、どうやら異動するなら甲大将一択みたいだよ。闇元丙乙の提督はアホだから」

 

 

翔鶴「あっ、瑞鶴、あそこのお店の前に……」

 

 

秋月「陽炎型の制服の嬢が……」

 

 

瑞鶴「陽炎不知火の心境やいかに……」

 


陽炎「複雑ね……」


 

不知火「……陽炎と同意見です」




ウィーン

 

 

翔鶴「あっ、あれは提督では……なにか歌を歌ってます」

 

 


 

 

 

 

提督「起きあが~れ~♪」


 

明石「起きあが~れ~♪」

 

 

提督「起き上がーれーマグナム~♪」

 

 

明石「息子ー叫べー♪」

 

 

提督「まだ絶望に沈む~悲しみ~あるなら♪」

 


明石「恐怖を~はらって~イケよーイケよーイケよー♪」


 

提督「うず巻く~血潮を~燃やせ~マグナ~ム♪」

 

 

明石「機能~停止~マグ~ナム~♪」

 

 

提督・明石「マグナム♪」

 

ウエイ!

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「最っ低な歌詞ね……」

 

 

不知火・秋月「これはひどいです」


 

陽炎「からくりねえ。くっだらないわー……これだから男ってやつは」

 

 

翔鶴「持っていたイメージと全然違います」



翔鶴「カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ」

 

 

陽炎「あの粗大ゴミ2つは酔っ払っているみたいだし、とりあえずボコっていい?」

 

 

不知火「視界に入っているはずなのに私達には気付いていないみたいですね」

 

 

秋月「なんかいってます……」

 

 


 

明石「しっかし兄さん、意外と楽しいもんですね。鎮守府がどれだけ生殺し職場なのか実感しましたよ」

 

 

提督「まあ、明石君なんか海で皆さんの大破見ますからねー……」

 

 

明石「ここだけの話、あの鎮守府けっこう兄さんに好意的な人が多いですよ。押せば行けると思うんですよね」

 

 

提督「過去に人から好かれた試しってあんまりないんですよね。割り切ったお付き合いのこの気楽さが」

 

 

提督「鎮守府の皆さん、初なうえ愛が重い傾向があるので。それに皆さん明石君のこともかなり好きなように見えますけどね。なんだかんだいって、良い鎮守府になりました」

 

 

明石「うーん、嬉しいですけど、俺はやっぱり胸部装甲の……特に阿賀野型に目覚めそうです」

 

 

提督「能代さんですね」

 

 

明石「俺も能代さん!」

 

ウェイ!

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「おい」

 

 

瑞鶴「阿賀野型と胸部装甲がどした? ん?」

 

 

不知火「……」戦艦クラス

 

 

秋月「アッシーはともかくお兄さんまで! 見損ないましたよ……!」

 

 

翔鶴「これはもう言い訳できませんし、フォローも不可能です……」

 

 

陽炎「そうねえ、私達は司令と明石君のこと好きすぎてたまらないから、拉致って愛を確かめさせてもらうわ」

 

 

瑞鶴「そこの人気のない路地に行こっか。土下座するまでSMしてやるからさ」

 

 

提督・明石「」

 

 

2

 

 

明石「頬がひりひりする。俺に妹方向の性癖がないのが悔やまれるな……」

 

 

秋月「まだいいますか……」

 

 

瑞鶴「そろそろ酔いは覚めた?」

 

 

提督「タイムです。なにをそこまで怒っているんです? いいたくはないですけど、女性一同。よく考えてもらいたいのです」

 

 

不知火「この期に及んで言い訳ですか」

 

 

提督「ご理解して頂きたい。あなた達にも三大欲求はありますよね……」

 

 

瑞鶴「いや、まあ、なくはないけど、建造影響で3大欲求は薄れてんのよ。知ってるでしょ」

 

 

翔鶴「そもそも提督、そういうことではなくて……」

 

 

提督「自分は明石君と少し息抜きしていただけなので責められる覚えはなく……とのことで」

 

 

提督「お許しを……」

 

 

陽炎「別にそれ自体を責めているわけじゃないから……」

 

 

提督「なにかありましたか?(震声」

 

 

不知火「乙中将がこの街で情報を賭けて海の傷痕と勝負を始めました。勝てば情報を、負ければ無関係の国民の二人の命が失われるそうです」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「街中、で?」

 

 

秋月「鬼ごっこです。海の傷痕を捕まえるだけで海の傷痕は想の力を使わず逃げるだけみたいですね」

 

 

瑞鶴「乙中将艦隊から神通山城飛龍蒼龍白露夕立時雨、それで鎮守府(闇)から6名の助っ人でわるさめ響ゴーヤ卯月金剛瑞鳳が参加してる」

 

 

翔鶴「日が完全に沈むまで、だそうです」

 

 

陽炎「そんな時にあんたら二人は連絡ガン無視して遊び呆けているからわざわざ探しに来たってわけ」

 

 

提督・明石「▂▅▇█▓▒ (’ω’) ▒▓█▇▅▂うわぁぁぁ!」

 

 

 

不知火「ちなみに司令、電さんに発信器つけられたみたいです」

 

 

提督「……了解、まさかこんな風に裏目に出るとは。ぷらずまさんに感謝せねばなりませんね……」

 

 

瑞鶴「タイミングが悪かったわね」

 

 

提督「あまり飲まなくてよかった。不幸中の幸いだ。少しお待ちを。乙中将と連絡を取ります」

 

 

………………

 

………………

 

………………

 


提督「わるさめさん……は大丈夫か。響さん卯月さんをこちらに呼びます」



提督「響さんと卯月さんには飛龍さん達が待機している海域内の哨戒に向かわせます。頭も冷やす意味も込めて」



提督「二人と入れ替わりで明石君と秋月さんは鬼ごっこに参加してください」

 

 

提督「瑞鶴さん翔鶴さん陽炎さん不知火さんは飛龍さん達のほうで」

 

 

明石「俺とアッキーで海の傷痕釣るのか? 俺達の家系にご執心なんだっけ?」

 

 

提督「ええ、気になることだったので、この機会に反応を」

 

 

秋月「体力にも足にも自信はあるので問題はないです。それではアッシー行きますよ」

 

 

明石「そうだな。それじゃ行くか」

 

 

………………

 

………………

 

………………

 

 

瑞鶴「それで?」



提督「そうですね、皆さんこの話はしておきますが、海の傷痕に漏れるので艤装は身に付けないでくださいね」

 

 

一同「了解」

 

 

提督「まあ、海の傷痕はロスト空間に消えたのを時雨さんが確認。海の傷痕とともにフレデリカ大佐と、先代の丁准将と思われる人物が現れたそうです。ロスト空間で海の傷痕が現海界したのと同じ仕組みだと思われます」

 

 

一同「!」

 

 

提督「負けたら国民の犠牲が二人。恐らくまだ誰か建造します。その場合は宣言通り人間2名を資材に建造するのかもしれません……」

 

 

提督「卯月さんと響さんが、かなり精神が不安定になっている様子で」

 

 

提督「一生の不覚です……瑞鶴さん、自分を殴ってください」

 

 

瑞鶴「了解!」

 

 

ドガッ!

 

 

提督「……ぐふっ」パタリ

 

 

提督「……く、フレデリカ、大佐は捕縛した、そうです。残るは丁の准将と」

 

 

提督「恐らく本来の姿に戻ったと思われる海の傷痕です」

 

 

提督「衛星監視はフレデリカ大佐のほうに外れているそうです。このままでは海の傷痕に逃げ切られます」

 

 

陽炎「もういっそのこと皆で海の傷痕を探すしかなくない?」

 

 

不知火「向こうはルール違反しているわけですしね」

 

 

提督「いえ、乙中将からこちらはルールを守りながら海の傷痕を捕まえる、と。この鎮守府からの参加はあくまで6名までです。違反すれば、海の傷痕を捕まえてもドローといわれてうやむやになるかもしれませんし……」

 

 

提督「負けた、と海の傷痕に認めさせることが重要なんです」

 

 

提督「海の傷痕は乙中将に任せます。大丈夫です。乙中将は大方そこまで読んでおられたみたいですので。我々は先代丁准将の捕縛にかかります」

 

 

翔鶴「確か先代の丁准将は提督の……」

 

 

提督「師ですね。あの人はぶっちゃけ身体能力も頭もかなりの人です。前までの機械的な思考回路を、褒めてくれた人でもあります」

 

 

提督「……」

 

 

提督「力付くならこのメンバーで十分可能です。瑞鶴さん陽炎さん不知火さんは肉弾戦もいけますね?」

 

 

陽炎「うん。不知火もかなり。でもあくまで駆逐にしては、だからね」

 

 

不知火「翔鶴さん、噂はかねがね」

 

 

翔鶴「……」

 

 

瑞鶴「あ、翔鶴姉は殴り愛なら私より遥かに強いわよ」

 

 

提督「マジか。よろしくお願いします」

 

 

翔鶴「ええ、金剛さんや山城さんに比べたらアレですけど、体術には覚えがあります」

 

 

提督「殺してはダメですよ。丁准将の持っている情報はまだ持っていないロスト空間である可能性が高く、初霜さんの出張期間も短くできるかも、です」

 

 

一同「了解!」

 

 

瑞鶴「あ、わるさめから連絡来たわ」

 

 

提督「……海の傷痕と会話させる目的で本官さんにも来てもらいますか。龍驤さんにも連絡を取らないと……」

 

 

提督(……丁准将、か)

 

 

提督(すでに墓地でシャレコウベと化した人と再会したくはないですね……)

 

 

提督(またネジが削がれる音がしなきゃいいけど……)

 

 

【6ワ●:フーゾク街にてシャレコウベ 3】

 

1

 

わるさめ「大丈夫! 司令官の指示通りに動いてる! そっちの辺りの道は先回りしてくれー!」

 

 

夕立「あそこの角を回ったっぽい!」

 


わるさめ「ぽ犬姉、後を追うぞ! 追い付いたら噛みついてやれ!」



夕立「っぽい!」

 

タタタ

 

夕立「先代丁准将が止まったっぽい!」

 


陽炎・不知火「通さない」

 

 

丁准将「む、陽炎と……不知火であるか」

 

 

陽炎「そういえば昔に丙さんとこで演習した時に会ったわね。今の所属は違うわよ。青山准将の鎮守府(闇)に異動しているからね」

 

 

丁准将「……、……」

 

 

不知火「不知火は媒体を通してしか。しかし、美丈夫な方ですね。確か享年は46歳でしたか」

 

 

丁准将「もう老体であるよ。体力はかなり落ちている。あの女、作り込むのも再現を重視して遊びがないな。気の利かないやつである」

 


わるさめ「観念しろやー」

 

 

丁准将「別に最初から逃げ切るつもりはないのである。あの後ろに見える春雨と夕立は話が通じないみたいでな」

 

 

陽炎「あんた、自分の立場把握してる?」

 

 

丁准将「もちろんである。夕立君、落ち着きたまえよ。お座りだ」

 

 

夕立「……」ガルル

 

 

丁准将「ここに折り畳み式のナイフがひとつある」チャキン

 

 

丁准将「私は自分が亡者であることもその価値も知っているゆえ、こういおう。あまり追い詰めると自害するぞ?」

 

 

陽炎・不知火「……」

 

 

丁准将「穏便に行こうではないか」

 

 

陽炎「ぷっ……あっはは」

 

 

丁准将「なにか?」

 

 

陽炎「追い詰められたら自らの価値を把握して盾にしてくる。こうも司令の読み通りだとね」

 

 

不知火「わるさめー、死体でもいいから問答無用で捕まえろ、と司令から」

 

 

わるさめ「ですハイ♪」

 


2

 

 

提督「皆さん、自分が許可を出すまではお口チャックでお願いします」

 

 

提督「お久し振りですね。まさか死人のあなたが現海界するとは。人類史の歴史的瞬間を目の当たりにしました」

 


丁准将「髪を切ったか? ずいぶんと雰囲気が柔らかくなったな。尖ったナイフの先端が丸くなったような」

 

 

丁准将「挨拶は省こうか。君の部下の話から君が私の後を継ぎ、鎮守府に着任したのは分かる」

 

 

丁准将「私が死んでからなにが起きたのか教えてもらえないだろうか?」

 

 

提督「ええ。ですが、こちらの質問に答えてもらい、それが真実であると判明したらの場合ですね」

 

 

提督「嘘をついたと自分が判断すれば、地獄へお戻り頂きます」

 

 

丁准将「丸くなっても切れ味は変わっていないのなら、用途が変わった訳ではないか」

 


丁准将「成長、したということか」

 

 

丁准将「それで聞きたいことは瑞穂か? ロスト空間か? フレデリカか? 深海の妖精か?」

 

 

わるさめ「瑞穂? そういえばお前のところに異ど、」

 

 

提督「お口にチャックといったでしょう。そういう情報からこちらのことがバレてしまいますから……」

 

 

丁准将「なるほど、明るみになっているわけではなく、一部しか知らないのか。それで知りたいのは両方か?」

 

 

わるさめ「ごめんなさーい……」

 

 

提督「丁准将、曖昧な答えは認めません。『あなたを現海界させたやつはどんな姿をしていましたか?』」

 

 

丁准将「1つ。現在の鬼ごっこの情報を与えてすぐに走り去ったのである」

 

 

丁准将「2つ、黒髪だ。髪型はなんといったかな。腰辺りまでの少し波がかかり、後ろで結んでいる」

 

 

陽炎「黒髪のポニーね」

 

 

丁准将「3つ、瞳の色が青……もっと具体的にいうと天色だったな。声色は少年のような高さがあった」

 

 

丁准将「服はそうだな、コートか。群青色の、帽子部分はふわふわとした毛並みだ。あれはなんという?」

 

 

不知火「群青色のダッフルコートですね」

 

 

丁准将「そんな感じだ。突然こんなところに産み落とされた身にもなってくれたまえ。我輩が死んでからなにがどうなっていて、そして我輩が生まれた時にいた男は誰なのだ?」


 

わるさめ「男かよ」

 

 

丁准将「中性的だな。我輩が男だと思うだけである」

 

 

丁准将「で、それが真実かどうかはどう確かめる?」

 

 

提督「まあ、お待ちください。皆さん、この人を見張っていてください。会話に応じないように。自分は少し電話で外します」

 

 

…………………

 

…………………

 

…………………


 

乙中将「フレデリカからの証言と一致するね。間違いなさそうだ」

 

 

提督「二人は知人であり、頭の出来からいって巧妙に合わせている可能性、海の傷痕に偽の情報を細工されている可能性も、と思うのですが」

 

 

乙中将「ないね。大丈夫、任せて」

 

 

提督「いかがなされるおつもりで……この2名は海の傷痕の想の力によるもので間違いはないでしょうが」

 

 

提督「恐らく、深海棲艦と同じ供給の仕組みですよ。容姿の整形と中身の精度からして比べると複雑ですけど、ね。恐らく想の供給を止めたら活動停止して消えるかな。ネジの巻かれた人形である可能性が高いと思います」

 

 

提督「なので海の傷痕を見つけて突き出してルール違反を咎めるにしても審判がいないのでなにかしらの方法で完全に隠滅されるかも、ですね。決定打に欠けます、ね」

 


乙中将「バッチリだよ。時雨が現場を確保したからね。今更消しても無駄だし」



提督「なら大丈夫、そうですね。しっかし、現場を押さえられるようなルール違反を犯したとなると、海の傷痕はもともと勝ち負けは気にせず、遊び気分で鬼ごっこしているような気も……」



乙中将「それでも勝つんだよ。抜錨ポイントのある簡易船舶場に2航戦と瑞鳳さんがいるから、今から街中に偵察機を飛ばして探す」

 

 

提督「むちゃくちゃやりますね……といいたいところですが、いい案です。日が暮れる前なら行けそうですね」

 


乙中将「艦隊司令部施設と飛行甲板つけた初霜さんと、妖精可視才持ちの龍驤さんがいないのは残念だけど」

 

 

乙中将「なんとかなるよ」

 

 

乙中将「勝つさ。最終作戦はどう考えても青山ちゃんのところに負担がかかるようにならざるを得ないだろ。少しでも負担を減らさないとね」

 

 

提督「自分は丁准将とフレデリカ大佐を見張っておきます。二人をその簡易船舶場まで連行し、拘束しておきます。それでよろしいですか?」

 

 

乙中将「そだね。よろしく。それといつ消えるか分からないなら、情報も引き出しておいて。そんで卯月さんと響さんがフレデリカにキレて手を出したみたいだね。落ち着けておいてー」

 

 

提督「了解です。二人は哨戒させて、頭を冷やすように、と。それでは」

 


乙中将「うん。また」


 

提督「……っと、丁准将お待たせしま、した……?」

 

 

丁准将「」

 

 

提督「なぜのびているんです……」

 

 

瑞鶴「いや、なにかしようと動いたみたいでさ、翔鶴姉がその手を取ってアスファルトにドカン、と」

 

 

不知火「実に見事な一本背負いでした」

 

 

陽炎「死んでないから大丈夫」

 

 

翔鶴「すみません……」

 

 

提督「いえ、グッジョブです。運びやすくて実に結構です」

 


夕立「っぽい。夕立はどうすれば?」

 

 

提督「夕立さんは時雨さんと合流して海の傷痕との鬼ごっこを継続です。今、丁准将のいった容姿の情報を忘れずに辺りをよく見ながら、です」

 

 

夕立「分かったっぽい! 残るは一人!」タタタ

 

 

わるさめ「で、フレデリカと丁准将はどうすんの。鎮守府(闇)にとっての爆弾だろー。特にフレデリカのやつなんて、全員がキレるだろ」

 

 

提督「……難しいところですね。とりあえず目的地に丁准将を輸送します」

 

 

提督「翔鶴さん、陽炎さんと不知火さんとともにフレデリカ大佐を連れてきてください」



翔鶴「了解しました」

 

 

提督「……ん、今度は瑞鳳さんから」

 

 

瑞鳳「提督です? 本官さんは提督の動画で撮影した命令を見てから、こちらに向かったそうです」

 

 

提督「あの人、直接的な指示しか聞いてくれないの面倒ですね……」

 

 

提督「こっちのゴタゴタは任せてください。瑞鳳さんは鬼ごっこに専念してくだされば」

 

 

瑞鳳「了解です」

 

 

3

 

 

フレデリカ「は、春雨さん? ひ」

 

 

わるさめ「まー、トラウマだよね。元気はつらつに頭を吹き飛ばしてやったからな」

 

 

フレデリカ「生きていたんですね……? 私がいなくなってから、用済みで殺されている、かと」


 

わるさめ「チューキちゃん達はお前とは違うんだよ」

 

 

わるさめ「テメーが外内そっくりな別人だとは知っているけど……」


 

わるさめ「気安く私の名前を呼ぶんじゃねっス。虫酸が走る」ギロ

 

 

フレデリカ「っ」

 

 

卯月・響「……」

 

 

提督「お噂はかねがね。お初に。あなたがいた鎮守府は再興し、今は鎮守府(闇)という名で活動しています。自分はそこで提督として着任している青山と申します。階級は、丁の准将ですね」

 

 

フレデリカ「あなたは、どんな魔法を使ったの?」

 

 

フレデリカ「春雨さんの雰囲気が、違う。一体なにが、起きたの。あなたは王子様で」

 

 

フレデリカ「春雨さんは白雪姫?」

 

 

提督「自分が眠りを覚ました王子様みたいな例え止めてください……」

 

 

提督「でも、まあ、あなたならこれだけ伝えればいいか」

 

 

提督「電さんと春雨さんはもう大丈夫です」

 

 

フレデリカ「……、……」

 

 

フレデリカ「現在は、暁の水平線、が見えたん、ですね?」

 

 

瑞鶴「すごいわね。その情報ですぐさまそこにたどり着けるのか」

 

 

陽炎「頭がいいやつ変人の法則」

 

 

不知火「しかし、本当にこのフレデリカさんは司令と似ていますね」

 

 

翔鶴「血の繋がりを感じざるを得ないほどのそっくりです。世界には自分とそっくりな人間が3人いるとはいいますが……」

 

 

提督「フレデリカ大佐、あなたの悪事は把握していますが、詳細には推定の部分があります。深海妖精を使って実験していたことの全てをお話ください」

 

 

提督「もうすぐ最終決戦が始まります。海の傷痕というこの戦争を始めた神様を倒す作戦ですね」

 

 

提督「戦争終結のために動いていたというのならば、お力添えを」

 

 

フレデリカ「了解、です。全てお話ししま、す。しかし、その前に1つ教えて欲しい、です」

 

 

フレデリカ「No.1の瑞穂は……」

 

 

わるさめ「……」

 

 

提督「先に全てを。もう腹割ってくださいね。嘘は分かりますから」

 

 

提督「例えば本官さんが情報を持ってないと、言の葉を濁したんですよね。あなたは瑞穂で試したはずだ」

 

 

提督「違法建造の解体可能の5種と、解体不可能の7種」

 

 

提督「その間の6種はどうなるのか」

 

 

フレデリカ「……分かり、ました」

 


【7ワ●:海の傷痕:鬼ごっこ 3】 

 

1

 

 

時雨「よかった、こっちで合ってた。見つけたよ」

 

 

海の傷痕【く、姿を眩ましたと思いきや、ここで……むちゃくちゃな方法を取りおって】

 

 

山城「いい加減、捕まりなさいよ!」

 

 

海の傷痕【防御はさせてもらうのである】

 


ドガッバキッ

 

 

山城「く、パイプ1つでふざけた強さね……海の傷痕、あんた絶対なにか想の力を使っているでしょ」

 

 

海の傷痕【使ったといえばルール違反になるのでな、使っていないのである。やれやれ、日常習慣恩恵の副作用で丁准将の語りが抜けないな】

 

 

海の傷痕【そちらこそいい加減にしたまえよ。変貌を遂げた当局を捜し出すために街中に艦載機を飛ばすとは馬鹿か。当局が想の力を使わないといったのは騒ぎを必要最低限にするためである】

 

 

山城「ルール違反じゃないでしょ」

 

 

海の傷痕【であるが、常識で考えろ、と。大空襲を想起させて国民の皆様を不安にしてどうするという。悪ノリで警報でも鳴らしてやりたくなるのである】



海の傷痕【損傷は中破であるな。貴女では逆立ちしても勝てん。人間のプロフェッショナルである当局が、人間の素質を加味して建造効果で強化のバランスを設定したのだ。製作者にとって手に負えなくなるレベルならばそれはバグの領域であろうよ】

 

 

山城「……」

 

 

明石・秋月「到着!」

 

 

海の傷痕【……っ!】

 

 

山城「あー、例の欠陥兄妹……」

 

 

海の傷痕【お、おい、此方、落ち着くのである。止めろ止めろ。おい、お前ら二人、当局に近づくな】

 

 

明石「兄さんのいった通り、俺とアッキーには反応するみたいだな」

 

 

秋月「やっこさん、冷や汗かいてます!」

 

 

海の傷痕【あ、あ……!】

 

 

海の傷痕【明石く――――ん!!】

 

 

明石・秋月・山城・時雨「!?」

 

 

海の傷痕【おい此方! いい加減にしろ! 当局の口からおぞましいことをいわせるでないわ!】

 

 

海の傷痕【あの時は真っ白で、人間とか原子記号程度にしか思ってなくて、ずっとずっとずっとずっとずっと神様は深海に向かって――――!】

 

 

海の傷痕【炎上した艦載機みたいに、墜ちてきたよ!】

 

 

海の傷痕【この海にいる彼女達の想を回収して、私は神様じゃなくなる! 神様を止めて人間になって!】

 

 

海の傷痕【あなたの血筋が凝縮された明石艤装の想を全て回収して!】

 

 

海の傷痕【私達は溶け合うように一緒、あなたの実を私が真に変えて、二人で真実! これでもう未来永劫離――――】

 

 

海の傷痕【ずっ友だよ♪】

 

 

海の傷痕【いい加減にしろ! 告知なしメンテナンスの実施である!】

 

ドガッ

 

海の傷痕【秋月ちゃんもね♪】

 

 

バキッ

 

 

秋月「一人二役……自分で自分を殴り始めました……」


 

海の傷痕【くっ……お見苦しいところをお見せしてしまったのである】

 

 

明石「お前の友達は俺じゃねえだろ。というか本官さんはお前が想の力で作ったじゃねえか。あいつにいえよ」

 

 

海の傷痕【落ち着いたか。なんたる醜態だ。このミスはプレイヤー様に顔向け出来ないレベルの不手際である】

 

 

海の傷痕【『緊急メンテナンスの御詫び』だ】

 

 

海の傷痕【その通りだ。しかし、気にするでない。お前は本当にあいつに似ているので此方が興奮するのである】

 

 

海の傷痕【気にするでない。無条件で気に入られているだけだ。爺婆が孫を愛するような、そんな感覚である】


 

明石「死ねって伝えといてくれ。お前らは殺しても殺したりねえって」

 

 

秋月「悲しいですが、ハッキリいいます! あなたは倒すべき敵です!」

 

 

海の傷痕【了解である。完膚なきまでに振ってくれたことは感謝しよう。これだからお前は『Rank:SSS』なのである】

 

 

金剛「隙ありデース! とうっ!」

 

 

海の傷痕【っ!】

 

 

金剛「シット! 外してしまった……聞いていたよりも身軽ネ……!」

 

 

時雨「……!」ジャキン

 

パンパンパン

 

時雨「……く」

 

 

明石「右左の壁を交互に蹴りあげながら上にのぼって行くぞ。どんな身体能力だよ。アクション映画か……」

 

 

山城「追うわ。もう時間がないのよ……!」

 

 

秋月「もうほとんど日が落ちていますしね……」

 

 

金剛「もう残り時間は5分くらいネ! みんなこっちに向かって来てマース!」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

海の傷痕【暮れの海も綺麗であるな。海を愛した当局ではあるが、初霜と比べるとどの程度なのだろうか】

 

 

山城「余裕ね……」

 

 

海の傷痕【さて、そろそろ残りは1分を切っているといったところか】

 

 

山城「……逃がさない」

 

 

海の傷痕【さらばだ。5階からの飛び降りである】

 

 

山城「……」タタタ

 

 

山城「逃がすか!」

 

 

海の傷痕【フハハ、一緒に飛び降りてきたか。闇雲でがむしゃらであるな】


 

山城「やかましい! 乙さんに勝たせてあげるっていった以上、諦める訳には行かないのよ!」

 


海の傷痕【気合いはいいのだが、飛び降り損に免じて、まあ、がんばったで賞である】

 

 

海の傷痕【もう日は完全に沈んだ】

 

 

2

 

 

夕立「や、山城さん、大丈夫っぽい?」

 

 

白露「いや、色々と曲がってはいけない方向に曲がってるよー……」

 

 

山城「大丈、夫……」

 

 

海の傷痕【ふむ、楽しかったのである。まあ、貴方達は敗北したとはいえ】

 

 

乙中将「やっと、追い付いた……体力はあるほうなんだけど……けほっ」


 

山城「すみません……捕まえられませんでした。どうせなら、捕まえて綺麗に勝ちたかった、です」

 

 

海の傷痕【その悔しさはぜひ決戦で発散して欲しいのである。それでは乙中将、当局はそこの海から抜錨して町から去るとするので、さよならである】

 

 

海の傷痕【勝利に浮かれるほど素人ではありません。勝って冑のなんとやら、です】

 

 

乙中将「……判定の時間です」

 


乙中将「ルール違反をしたね。フレデリカと先代の丁准将を建造した」

 


海の傷痕【ふむ、もう一度よく確かめてみるといい。それが真実かどうか確かめた上だ】

 

 

乙中将「どうせそれを咎められた時のために証拠は消せるようにしてあるんだろ。僕らからしたらあの二人が確保出来ただけでも儲けものだから、そこを咎めるのは賢くないのかもね」

 

 

海の傷痕【……】

 

 

乙中将「……時雨」

 

 

時雨「地下であなたがロストしたのを映像で撮影したよ。アライズして3人で出てきたところもね。これ妖精工作施設と海色の想による建造だね?」

 

 

乙中将「地下で見失った振りをしたけど、きっちりつけてたよ。本当に見失いそうになったけど、時雨の鼻が利いた」

 

 

海の傷痕【なるほど……幸運艦】

 

 

海の傷痕【嘲嘲:ケラケラ!】

 

 

海の傷痕【愉快痛快とは正にこのことである! 人を二人資材にした場合はどうするつもりだったのだ?】

 


乙中将「看過してた。変わらない」


 

海の傷痕【貴方は守るべき国民を見殺しにしたということであるな!】

 

 

乙中将「負けた場合、新たにも更に二人を建造する予定なら最悪死ぬのは4名かも、と」



乙中将「フレデリカと先代の丁准将の他に2名をセレクトするのなら」



乙中将「……、……」



乙中将「『大和』か『先代元帥』か『センキ』か『リコリスママ』か」



海の傷痕【センキとリコリスママだ。それで、最初から読んでいたのか?】



乙中将「まず海の傷痕は、自らの手で人を殺すのを躊躇う。キスカでも最低限の応戦に留めているから、艦娘でも、だ。そして殺すのは艦隊これくしょんの戦争ゲームのシステム内だけに留めていて、自ら手を下すのは極力しないはず、だと」

 

 

乙中将「海の傷痕がいった『無用にこの街に来たわけではない』って。なら何のために?」

 

 

乙中将「『鎮守府(闇)から6名の参加を許可する』だけど、これは偶然ではないと思う。海の傷痕がこちらが参加可能な位置まで来たわけだから」

 

 

乙中将「『決戦に向けてのなにかをするため』で『2名を犠牲にするは殺すというわけではないのかも』と思ったんだ」

 

 

乙中将「青ちゃんとも話し合って結論は出て」


 

乙中将「想を増幅させるのが目的。要は決戦に向けての盛り上がりの下ごしらえ」

 

 

乙中将「海の傷痕は人間を作れる。あの海の傷痕の容姿と性格は想の力で作り込んだんだろうし」

 

 

乙中将「鎮守府(闇)をわざわざ指定して来たのにも理由は必ずある」

 

 

乙中将「この街で2名の人間という資材を犠牲にして、誰かを作る可能性が高い、と。以上の情報からして決戦に向けて上質な想を与えるために、建造される可能性が高いのは」

 

 

乙中将「キスカの悲劇、鹿島艦隊の悲劇の殉職者から。または1/5作戦の丁准将、大和。そして中枢棲姫勢力のセンキかリコリス」

 

 

乙中将「ここからは勘だけど、瑞穂、フレデリカ大佐、先代の丁准将。そこから2名かな、と。瑞穂は思考能力付与機能の影響でほぼ深海棲艦として生きている瑞穂だから、違うと、外した」

 

 

乙中将「2名なら、フレデリカ大佐と先代の丁准将。鎮守府(闇)だけでけ、広範囲にかなりの因縁がある二人だから」

 

 

乙中将「だから、ルールは破ってくるって、考えて動かした。ゲームは、日の暮れ前に終わってる」

 

 

海の傷痕【そうだな。当局が勝った場合は、本当に二人を資材にまた他のやつを建造する予定ではあったな】

 

 

乙中将「……これは戦争だから」

 

 

乙中将「勝たなきゃお話にもならない」

 

 

乙中将「僕らの覚悟の、勝ちだ」

 

 

海の傷痕【狩られたのである。やはり相手にしたくない。オープンザドア君クラスにうっとおしくもあり、愛しくもある】

 

 

海の傷痕【しかし】


 

海の傷痕【いい顔だ。ヘラヘラした顔があの頃の青年将校のような顔つきになったな。いつから対深海棲艦海軍は腰から短刀をぶらさげなくなったのか】

 

 

海の傷痕【貴方のいう通りである】

 

 

海の傷痕【惨めに負けた相手は海を無様にのたまい、敗戦国の民はまるで路上の根なし草のように炊き出しに募る。それを眺め】

 

 

海の傷痕【勝利よりも一人の命、などと、声を大にするなど失笑である】

 


海の傷痕【自然そのものだ。犠牲を受け入れた貴方に対して当局の敗北を認めよう】

 

 

海の傷痕【おめでとう】

 

 

海の傷痕【貴方は今日から『廃課金』である】

 

 

海の傷痕【謝罪もしておこう。あなたの嗅覚は利きすぎたので、あの場では『フレデリカと瑞穂の全てを語らなかった』のである。フレデリカの裏の顔も大体、判明している】



乙中将「艦娘や深海棲艦でもない人の想を?」



海の傷痕【うむ。死んだ人間は当局へ、いや、ロスト空間へとその想が還る。そこから、フレデリカを見つけるのは難儀だった】



乙中将「そんなこと出来るのに、わざわざ艤装想を蓄積させる手段を?」



海の傷痕【欲しい想を持ち得るのが、艤装ごとの適性者なのだ。だから、艦娘は選んでいる。なので艤装から回収した想以外は要らん】



海の傷痕【無秩序に吸収しても、此方に妙な影響を与えて間違った育ち方をしてしまうのである】



海の傷痕【ま、あの二人は詫びである。直接、聞くといい。本来の二人の想を乗せて、知能も覚醒させてあるので、昔のことも覚えているはずである。全部、ではないがな】



乙中将「……その二人なら、ロスト空間のことも詳しく知ってそうだね」



海の傷痕【……それでは、報酬である】

 

 

海の傷痕【『艤装』と『ギミックの一部』について語ろう】

 


【8ワ●:海の傷痕:鬼ごっこ 終】

 


海の傷痕【艤装というのは軍艦の機能をコンパクトにした武装である】

 

 

海の傷痕【その艤装には世を去って当局の一部となった乗組員全ての想を詰め込んである。純度を保ったままだと、適性者の脳を破壊しかねないので限りなく薄めてあるが】

 


海の傷痕【その想は黒板のようなもので、まだなにもチョークで書かれてはいない。艤装は『真白:タブララサ』である】

 

 

海の傷痕【適性者の想を詰め込んで、色がつく。反転建造した際に、適性者の想を基本の要に、本能を形成する。軍艦の性質と人の強い想を原動力とする幽霊船こそ、深海棲艦である」

 

 

海の傷痕【艤装は生き物だ。当局の子供であるといってもいい】

 

 

海の傷痕【いいか、重要なことなので今一度、いうぞ】

 

 

海の傷痕【艤装は生き物だ。当局がお腹を痛めて産んだ子供である】

 

 

海の傷痕【課金度合いは探知、または当局の個人的な推測により設定した想の質で決定、そして、】

 

 

海の傷痕【『当局は決戦にてこの艤装を破壊し、想の還るべき器であるこの我が身に宿す』】

 

 

海の傷痕【『オリジナルの感情をベースにした当局の【艤装:此方】にその想と思考付与能力を与えることにより』】

 

 

海の傷痕【『此方を人間の女性として現海界させることが目的の1つ』】

 

 

海の傷痕【……である。まあ、オープンザドア君のつけた見当は間違いではない。あくまで目的の1つであるから、違う、ともいえる】

 

 

海の傷痕【分かるか?】

 

 

海の傷痕【決戦にて】

 

 

海の傷痕【当局は】

 

 

海の傷痕【貴方達を誰一人として】

 

 

海の傷痕【殺す気はない】

 

 

乙中将「!」

 

 

海の傷痕【艤装の命を奪うだけだ】


 

海の傷痕【あなた達を殺すつもりはない】

 

 

乙中将「誰も、死なない……」ホッ

 

 

 

 

海の傷痕【貴方達は今】

 

 

 

海の傷痕【当局の子供が死ぬといったのに】

 

 

海の傷痕【よかった、と思った顔である】

 

 

海の傷痕【当局の子供が死ぬ、といったにも関わらず】

 

 

海の傷痕【誰も死なないのか。よかった、と思っている顔である】

 

 

海の傷痕【ネジを削ぎ落としたのは】

 

 

海の傷痕【人類史のどこなのか。それとも初めからなかったのか】

 

 

海の傷痕【いやはや、だから】

 

 

海の傷痕【当局は、今を生きる人間と戦争をするのである】

 

 

海の傷痕【どうも当局が生を受けたことは肯定されたようであるな】

 

 

海の傷痕【戦争を始めて正解であると】

 

 

海の傷痕【心から再認識したぞ】

 

 

乙中将「――――っ!」

 

 

海の傷痕【ケラケラ】


 

山城「なによ、それ。そもそもあんたがその子供の艤装を作って自ら破壊する鬼親でしょうが。子殺しなんて、あんたは故人の想の塊とは思えない」

 

 

海の傷痕【還るのだ】

 

 

海の傷痕【帰投するのだよ。貴方達とは生死観が違う。貴方達にとって艤装が壊れるのは、ただのモノが壊れるに等しいであろうよ】

 

 

海の傷痕【当局は『本能として戦争を始めた』が、故に此方のほうは『貴方達に合わせて人命を尊重し、貴方達を尊重』したのだ】

 

 

海の傷痕【故人の想の塊であるというが、今を生きる貴方達の命も同じく】

 

 

海の傷痕【故人の想の向かう先であるのだよ。今を生きるということは過去を背負っているということである】

 

 

海の傷痕【海の傷痕は】

 

 

海の傷痕【本来ならば貴方達が背負うべきモノである】

 

 

海の傷痕【その全ての把握など、当局ですら大方といった具合だ。同感してもらえるとは思うのである】

 

 

海の傷痕【貴女は自分の細胞全てを数え、その身に詰まる想を全て把握しているのか?】

 

 

海の傷痕【卯月の『欠陥:ギミック』と同じだ。人間、最も騙しやすく目を背けやすいのは自分自身なのである】

 

 

山城「……」

 

 

海の傷痕【嘘と真の覚書を読めばいい。きっとその内容は呆れ返るほどのどうでもいい他人の啓蒙論であろうよ】

 

 

海の傷痕【今は当局を異端と呼べ。多数決的に都合よくなれば勝手に世論とするであろうよ】

 

 

海の傷痕【なぜならば今の貴方達は必ずや、第2の海の傷痕を産み落とすから】

 

 

海の傷痕【当局は、生まれるべく生まれた現象である】

 

 

海の傷痕【なにが戦争が終わる、だ。なにが暁の水平線だ】

 

 

海の傷痕【繰り返されるのならば少なくとも貴方達が戦争を終わらせるという想いは、集団的満足の伴うだけの虚しい快楽である】

 

 

海の傷痕【それでもいいじゃないか、とそこまで堕ちたのなら、それもそうであるな、と黄昏た物思いに耽るのみだな】

 

 

海の傷痕【当局にとって戦争は『共存し合えない故の最終的な外交手段』であるが】

 

 

海の傷痕【貴方達にとっては】

 

 

海の傷痕【『娯楽:エンターテイメント』に過ぎん】

 

 

海の傷痕【だから貴方達は当局が製作運営管理する『戦争ゲーム:艦隊これくしょん』の『プレイヤー:お客様』なのである】

 

 

海の傷痕【今は乙中将も片足を踏み込んできたが、まだ足りん。もう一踏ん張り、甲大将と同レベルであるな】

 

 

海の傷痕【鎮守府(闇)、海屑艦隊、フレデリカ、先代丁准将】

 

 

海の傷痕【本当にこの海で人生を投げ棄てるほど、戦争:課金をしているのはこのプレイヤー達だけである】

 

 

海の傷痕【最高のお客様は、当局にとっての愛しい人でもある】

 

 

海の傷痕【廃課金を集めてパーティーでも開きたいほどに愛しているぞ。ああ、フレデリカは例外だ例外。合わんやつはいる】

 

 

海の傷痕【その他は当局と戦う必要すらないのだが、それでも戦うしかない。踊るピエロを殺すほど道化師恐怖症ではない】

 

 

海の傷痕【腹を抱えて貴様らの不出来な芸当を笑ってやるのである】

 

 

海の傷痕【乙中将、次はギミックだ】

 

 

海の傷痕【ギミックの一環として決戦当日は、一部の妖精と鎮守府(闇)の所属を除いた妖精への想の供給を全停止する】

 

 

乙中将「妖精が消える……」

 

 

乙中将「知らせないと……世界の海の深海棲艦は活動、するんだよね?」

 

 

海の傷痕【無論だ。だが、深海妖精も消えるということである。双方が妖精なしで戦うことになるな。それまでに艦載機を込めた矢でも紙でも貯めておきたまえよ】

 

 

海の傷痕【一度、倒した相手はそのまま海からご退場願うつもりである】

 

 

海の傷痕【それではこのまま海へ抜錨し、おさらばであるが】

 

 

海の傷痕【そうだな、乙中将】

 

 

海の傷痕【『出血大サービス』だ】

 

 

海の傷痕【イエスかノーで答えろ。聞くのは1度だけで変更はなしだ】

 

 

海の傷痕【『とあるヒント』と『スロット1の装備』を知りたいかな?】

 

 

乙中将「……もちろん」


 

海の傷痕【●∀●】

 

 

海の傷痕【特別な艤装を設定してある。海外艦と設定している適性者には、その海外国で産まれた者に適性が出るようにしてあるのだが、しかし、いつの日か来るであろう決戦のため例外を用意している。これがヒントだ】

 

 

海の傷痕【そしてSrot1の装備は、嗜好砲、趣味砲、トラウマ砲、史実砲】


 

海の傷痕【当局の性格の悪さと、当局の存在の片鱗を表に出した遊びの装備である】

 

 

海の傷痕【1945年までをラインに設定してあり、それまでに撃沈、死んだ艦であること、当局が設定してある対象の艦に効果がある】



海の傷痕【ふむ、前方で艤装をつけている兵士がいるな。あの適性者で教えてやるのである】

 

 

乙中将「ま、待って! やっぱり教えなくていい……!」

 

 

海の傷痕【変更はなしといった。あなたの判断による犠牲であるが、得るものは大きい】

 

 

海の傷痕【無駄死にではないよ】

 


海の傷痕【あの飛龍】


 

【9ワ●:【Srot1:史実模倣砲、貴女が沈んだ日】

 

 

飛龍「んー、乙さんがなんかいってるけど、遠くて聞こえないや……」

 


響「飛龍さん、哨戒してきたよ」



飛龍「卯月は?」



響「まだ少し海を散歩して頭を冷やすって」



蒼龍「飛龍聞こえる!? 海の傷痕が飛龍のほうに向かってる!」

 


飛龍「響、蒼龍の言葉は聞こえる?」



響「……海の傷痕が来ているって」


 

海の傷痕【攻撃! させてもらうぞ!】

 

 

飛龍「マジか……」



響「……上等だよ。あいつには一撃入れてやらないと気が済まない。お相手しよう」



海の傷痕【……いや、飛龍のみ、だ】



海の傷痕【此方、そっちに転送するぞ。好きにするといい】

 

 

海の傷痕【Trance】

 


響「? 飛龍さんが……消え、た?」

 

 

 

 

 

 

飛龍「――――――え?」

 

 

飛龍「蒼龍は?」


 

飛龍「急に消えた……」

 


飛龍「……ここ、どこ?」


 

??「……」

 

ガガガガガ


飛龍「いつの間に……あんなに艦載機がたくさん…………」

 

 

飛龍「敵機と、私の艦載機……?」

 

 

飛龍「この光景、何度も」


 

飛龍「夢で見た」

 

 

飛龍「…………」


 

ガガガガガ

 ガガガガガ

ガガガガガ


 

飛龍「この風、この海、この焼ける匂い、この戦い」

 

 

飛龍「夢に見た軍艦飛龍の……」

 

 

飛龍「……この海域、海戦って」


 

ガガガガガガ

 ガガガガ

 

 

飛龍「っ、敵機からの機銃……避けられな」

 

 

飛龍「かくなるうえは飛行甲板盾っ!」

 

ガンガンガン!

 

 

飛龍「……!」クルッ

 

 

飛龍(なんでなんでなんで)

 

 

飛龍(この、私の回避の動きも……なにか、覚えがあるような……?)

 

 

飛龍「あ、操縦妖精ちゃんダメだって! 炎上した状態で、飛行甲板に戻ってこないで!」

 

ドオオオン!

 

飛龍「爆撃、機から」

 

ドオオオオオン!

 

飛龍「魚雷、にも、被弾……これって」

 

??「……」

 

 

飛龍「まるで、このやられ方」

 

 

 

飛龍「夢の終わり」

 

 

飛龍「ミッドウェーだ……」

 

 

 

 

 

 

海の傷痕【はい、です♪】

 


 

飛龍「誰……いや、海の傷痕……?」

 

 

海の傷痕【『本体:此方』です】

 

 

海の傷痕【アハハ】

 

 

飛龍「その顔、この記憶が私にとってどういうものなのか、お前」

 

 

飛龍「分かってやってるな……」


 

飛龍「ふざけないでよ……!」

 

 

飛龍「ふざけるなよお前!!」

 


海の傷痕【歴史の真実変更は不可能です。これはもう運命のごとくですね】

 

 

海の傷痕【飛龍適性者である限り、あなたがここで沈む最期は、変更不可能です】


 

海の傷痕【そういう風に】

 

 

海の傷痕【設定してあります】

 

 

海の傷痕【例外は私の理解の及ばない想の可能性】

 

 

海の傷痕【Worst-Everのみです】

 

 

海の傷痕【おはようございます】

 

 

海の傷痕【ロスト空間:貴女が沈んだ日へ】

 

 

海の傷痕【そして】

 

 

海の傷痕【おやすみなさい】

 

 

海の傷痕【貴女が沈んだ海へ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――おっと、敵対行動を。

 

 

 

――――殺させはしないのであります。

 

 

海の傷痕【……む、本官、さん】

 


2

 

 

海の傷痕【む、大破で戻ってきたか。まだ息がある】



響「……、……?」



響「なんで、飛龍さんが大破、に……?」


 

仕官妖精「ふう、間一髪でありますな」

 

 

海の傷痕【なるほど、貴方の仕業か。ようやく当局……いや、此方と敵対関係であると明確に示したのだな】

 

 

仕官妖精「ええ、役者もそろい、時代も整いつつある。貴方は消えるべきであります」

 

 

仕官妖精「生前の尻拭いは魂ある限り、するのであります」

 

 

仕官妖精「……が」

 

 

飛龍「……」

 

 

仕官妖精「間に合ったかは微妙でありますね……」

 


響「……?」



海の傷痕【ああ、仕官妖精がいる。響、貴様はその飛龍を連れて戻るのが吉だ。向こうの蒼龍の顔が見えるであろう?】



海の傷痕【それてもここで沈めてやろうか?】



響「……飛龍さん、大丈夫、かい?」



飛龍「……」



響「戻る、か……」


 

仕官妖精「惨いことをするのであります。艤装の想を増幅させたのですか」

 

  

海の傷痕【ロスト空間で自らの心に喰われたのであろうよ。夢であろうが現であろうが、そこで人は死ねるのであるから】


 

仕官妖精「過去の亡霊である我々が今の時代に口を出すべきではないのであります。例え思うところがあっても」


 

仕官妖精「我々の時代は終わったのでありますから」

 

 

仕官妖精「老兵は去るのみ、死者のお節介は年寄りの冷や水を通り越すのであります」

 

 

海の傷痕【貴方の場合は、な。当局はまだ生きている。だから止められないのである。当局の正体は戦争そのものである。恨むのなら人間を恨め】

 

 

仕官妖精「……やれやれ」

 


仕官妖精「海の傷痕、その傷口が化膿していることに気付かずでありますな」

 

 

海の傷痕【言の葉など無駄である。貴方とは語り尽くした。だから、貴方には特別な仕事をさせてやったのである】

 

 

海の傷痕【貴方は貴方の役割に励んでくれたまえよ。決戦は過ぎ去りし想い出であるお互いの関係に対しての決別でもあるのだから】

 

 

海の傷痕【貴方と結ばれるために戦争を始めた女は、もう恋する少女からは逸脱し】


 

海の傷痕【海の傷痕は棺桶を見つけ、今を生きる意味を見いだしている】

 

 

海の傷痕【当局はまだ仕事があるのでこれにて失礼するのだが、最後に1つだけ宣告しておくのである】

 

 

海の傷痕【次が最期だ】

 

 

海の傷痕【どちらかは消える】

 

 

海の傷痕【決別と試練の】

 

 

海の傷痕【最終作戦は、すぐだ】


 

仕官妖精「望むところであります」

 

 

仕官妖精「躊躇いはもはやない」

 

 

3

 

 

乙中将・蒼龍「飛龍っ!」


 

乙中将「ど、どうしよう! 入渠させたのに、目覚めない……!」

 


提督「落ち着いてください。生きてはいますから。眠っているだけです。あの消失の仕方はロストでしょうね……」

 

 

提督「フレデリカさん」

 

 

フレデリカ「お話した通り、です。丁准将の報告を聞く前に、私は退場しましたから。肝心の、丁准将は……」

 

 

丁准将「」

 

 

翔鶴「気絶したままですね。本当にすみません……」

 

 

フレデリカ「そちらの妖精、は」

 

 

提督「そうですね、本官さん、飛龍さんは大丈夫そうですか?」

 

 

仕官妖精「その前に乙中将にも本官を見えるようにします」

 

 

提督「ええ、あなた自分からもそんなこというんですね」

 

 

乙中将「これが、選奨の奇跡の妖精か……飛龍は、どうなんだい?」

 


仕官妖精「……大丈夫、といいたいところですが、目覚めるまで分からないのであります。艤装の想を増幅により、ショックが大きいであります。トランスタイプの精神影響程度のダメージ……いや、自分が死ぬ夢を叩きつけられたようでありますから」

 

 

仕官妖精「それ以上かもしれません」

 

 

乙中将「神通、僕にはよく分からないけど、終わりの再現ってそんなに精神にダメージ受けるものなの……?」

 

 

神通「悪夢の類ではありますが、そこまで精神的ダメージを受けるものかと問われたのなら、違います、ね」

 

 

神通「いえ、私は適性率が低いので、当てになりませんか」

 


蒼龍「精神的ダメージは受けるけど、廃人とかそこまでダメージは受けません」

 

 

神通「ましてや飛龍さんは今までいくつもの戦いを経てきていますし、私よりも余程精神的にはタフなはず……」


 

乙中将「……物理的な損傷以上に精神的な損傷をさせてくるってことかな」

 

 

乙中将「未知、の部分があるね」

 

 

乙中将「……」

 

 

乙中将「代償は高いね……」

 


提督「……、……」


 

乙中将「本官さん、ありがとう」

 


乙中将「あなたがいなければ、飛龍は、ロスト空間で死んでた」

 

 

乙中将「改めて実感したよ」


 

乙中将「青ちゃんが、1/5作戦で大和を囮に使ったのって」

 

 

乙中将「人を見殺しにするって、心が壊れそうになるんだね」ポロ

 

 

乙中将「この涙も、許されるものではないのも、辛い」ポロポロ

 

 

神通「……」

 

 

提督「気を確かに」

 

 

提督「『誰も死んでいません』」


 

提督「何事にも代えがたく大きいことですから」

 

 

わるさめ「海の傷痕に勝ったんだろー。つまり戦争に勝ったんだ」

 

 

わるさめ「喜んで笑ってないなら人間としてまともだと思うよ。そうやって泣くなら尚更ね」

 

 

わるさめ「まだお前は戦えんだろ」

 

 

乙中将「そう、だね。ありがとう……」 

 

 

乙中将「任務は終えた。鎮守府に戻ろう、か」

 

 

神通「……了解、です」

 

 

提督「響さんと卯月さん金剛さん秋月さん明石君以外の皆さんは乙中将と飛龍さんを乗せた連絡船の護衛任務です」

 

 

提督「乙中将、丁准将は警察に引き渡した後に元帥のほうに。フレデリカ大佐は、鎮守府(闇)へ来てもらうことになりました」

 

 

乙中将「大丈夫なの……」

 

 

提督「フレデリカ大佐もどきですが、うちの兵士が彼女と言の葉を交わす意味は大いにありますので。まあ、他の理由もあって上の許可ももらえました。准将の地位のお陰ですね」

 


卯月「大丈夫かそれ」

 

 

伊58「この響をキレさせるようなやつでち……」

 

 

響「ふとした拍子に消されてもおかしくない。最善手ではないと思う」

 

 

フレデリカ「……こ、殺されて、しまいます」ビクビク

 

 

提督「自分はみんな大丈夫だと思いますけどね。まあ、念のために」

 

 

提督「わるさめさん瑞鶴さん瑞鳳さん翔鶴さんゴーヤさん卯月さん金剛さん響さん明石君秋月さん。命令です。この人を守るように」

 

 

瑞鳳「龍驤さんには伝えましたか? まだなら状況を伝えて事前に向こうのみんなを落ち着けてもらえるよう」

 

 

提督「そうですね。お願いします」

 

 

金剛「……善処はしますケド、私も思うところがありマース」

 

 

秋月「……」

 

 

明石「ちなみにアッキーが黙りこむ時は大体怒ってる」

 

 

瑞鶴「まあ、おちびやわるさめのこと、キスカで艦隊の皆を見捨てたり、私はこの人のことをよく知らないけど、割り切れるほど簡単な感情じゃないかな……」

 

 

翔鶴「対深海棲艦海軍、引いてはこの国が、ですよ。フレデリカ大佐はそれだけのことをしましたから……」

 


提督「……」 

 

   

提督「まあ、皆さんのいう通りではあります。なのでフレデリカさん今からいう二点を守ってください」

 

 

提督「1つ、自分の側を離れないように。一人になれば、闇討ちされて殺される恐れはマジであるので」

 

 

提督「2つ、自分が許可なく鎮守府の皆さんと会話をしないように。あなたを生かしておく価値は聞き分けてくれても神経逆撫ですれば突発的にアウトすると思われる方が多いので」

 

 

わるさめ「アブーと間宮さんと電と鹿島っちはお前より自分を責めてる」

 


わるさめ「けど」

 

 

わるさめ「鎮守府にいる皆がお前をよく思ってねっス。私も要らんこと言われたら暴発するからな」

 

 

わるさめ「精々自らが作り出したフランケンシュタインに殺されないように言動にゃ気を付けなー」

 

 

フレデリカ「……」コクコク

 


仕官妖精「提督」

 

 

提督「なんです?」

 


仕官妖精「先程海の傷痕との会話を報告しておくのであります」


 

提督「……分かりました」

 

 

【10ワ●:イカヅチのカミナリ】

 

1

 

龍驤「響、卯月は頭を冷やすって、駆逐寮に直行したんやけど、みんな、気にかけたってな」

 

 

龍驤「右から順に宣誓の言葉を述べてみ。はい、榛名から」

 

 

榛名「フレデリカさんに危害は加えないとここに誓います」

 

 

秋津洲「フレデリカさんになにもしないとここに誓うかも」

 

 

龍驤「その艤装効果メンドーやね……」

 

 

秋津洲「うん……誓います」

 

 

龍驤「一応、明石さんにもお願いするわ」

 

 

明石「フレデリカさんになにもしないことをここに誓います♪」

  

 

龍驤「OK、さて鹿島も」

 

 

鹿島「……誓います。色々と思うところはあるのですが、立場は弁えてます」

 

 

龍驤「アブー」

 


阿武隈「キスカの皆が死んだことをあの人のせいにする気はありません。ただ当たりはキツくなると思います」

 

 

阿武隈「提督の命令である以上は、危害を加えないと誓います」

 

 

龍驤「間宮さん」

 

 

間宮「嫌です。というかあの人の顔は見たくありません。そんな突然、割り切れるほどの御方ではないです」

 

 

間宮「けど……提督さんのことだから考えがあってのことですよね。それを考慮しても善処する、としかいえません」

 

 

暁「同じ。こんなこといいたくないけど、どの面下げてこの鎮守府に来るのよ。私だったら恥ずかしくてそんなこと出来ないわっ!」プンスカ

 

 

雷「……」イライラ

 

 

龍驤「雷が珍しく怖い顔しとる……」

 

 

雷「龍驤さんには分からないわよ。あの頃の電のこと」

 

 

龍驤「まあ、うちが電と会ったのは合同演習の時やしな……」

 

 

雷「電だけじゃないわよ。電を大切に思う人全員、いいえ、この悲しい事件に心を痛めた人全員が被害者なの」

 

 

雷「この話が示談で済むなら、世の中はもっと平和に違いないわ」

 

 

雷「人をあれだけ傷つけることが出来る人間は救いようがないわね」

 

 

雷「綺麗事はなしで、死んだほうがいい人間、いえ、死ななきゃならない人間っていると思う」

 

 

秋津洲「雷ちゃんにここまでいわせるなんて……罪深い方かも……」

 

 

榛名「……悲しいです」

 

 

雷「響だって相当にキテたはずよ。響はあまり表に出すほうじゃないけど、かなり塞ぎ込んでたから」

 

 

龍驤「でもあのフレデリカはあくまでそっくりな別人らしいで」

 

 

龍驤「本人と提督いわく、活動期限は最長で深海棲艦と同じく決戦終わりまで。海の傷痕の想の力で稼動しとるだけやからね。そんなん人間て呼べんやろ。本来、怒りをぶつける相手はもうおらへん」

 


雷「……そう」

 

 

龍驤「なら割り切ろうや。割り切れられへんのやったら対話するチャンスやで。その怒りを物理でぶつけて仮に息の根を止めたとして、自己満足」

 

 

雷「分かってるけど! そんな簡単に割り切れないのっ!」

 

 

龍驤「……せやな。これ以上はいわれへんわ」

 

 

龍驤「電は?」

 

 

ぷらずま「フレデリカに危害を加えないことを誓います」

 

 

暁・雷・間宮「!?」

 

 

ぷらずま「お姉ちゃんズに間宮さん」

 

 

ぷらずま「フレデリカは情報の塊であり、過ぎ去った過去であり、そこに思うところがあるのなら決戦前に吐き出すべきです。現れるのが人形でも、です」

 

 

ぷらずま「私個人としてはどーでもいいのです。だって、もう私はこの身体を受け入れ、理解したのですから」

 

 

ぷらずま「司令官さんがフレデリカを連れてくるのならば、私はそれに従うまでです」

 

 

ぷらずま「『加害者のフレデリカも犠牲者の一人』と、かろうじてそう思えるほどに私は立ち直りました」

 

 

ぷらずま「息の根を止めたいのは『海の傷痕:戦争』のみなのです」

 

 

ぷらずま「わるさめさんは、フレデリカに指一本触れなかったそうですよ。あのわるさめさんでも、分かることなのです。それでも皆さんが誓えないというのならば、私は止めはしませんが」

 

 

ぷらずま「1つだけ」

 

 

ぷらずま「私を理由にしないで欲しいのです」

 

 

雷「電だけの問題じゃないのよ」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「司令官さんのお手を煩わせるつもりなら、相手が雷お姉ちゃんでも私が半殺しにするのです」


 

雷「……!」

 

 

暁「電っ!」

 

ポカッ

 

ぷらずま「ほう。暁お姉ちゃん、私を叩きましたね……?」

 

 

ぷらずま「私がなにか間違ったことをいったのです……?」

 

 

暁「いったから、お姉ちゃんとして愛の鞭を打ったのっ」

 

 

龍驤「ストップ。提督もかなーり心配しとった。海の傷痕との作戦も練らなきゃならんし、要らんことで疲れさせるの止めたろ? な?」

 

 

暁「うー……」



雷「私は会わない。あの人がいる間は駆逐寮に引きこもるから、そこには絶対に入れないで」

 

 

雷「じゃあね」タタタ

 

 

ぷらずま「……かなり危ないですね。雷お姉ちゃんがここまで聞き分けなくなるのは何気に初めてのことなのです」

 

 

暁「雷は研究施設の時に、電にずっとついていたんだから当たり前じゃない」

 

 

暁「私と響はお仕事があったから毎日は無理だったけど、あの時の電、本当にいつ死んじゃうか分からないくらいだったのは会ったから知ってる」

 

 

ぷらずま「雷お姉ちゃんは普段通りに接してくれていましたが」

 

 

暁「雷のことを見ていないのね。雷は電が思うよりも強くないわよっ」


 

暁「今だから打ち明けるけどね、2年も電に付きっきりだったのは、それは罪悪感によるところが大きいの!」

 

 

龍驤「それは雷の艤装効果か?」

 

 

暁「そう。雷の性格は知っているでしょ。それは、全世代の雷も同じ」

 

 

暁「私達の艤装は珊瑚で殉職した人達の艤装を修理して保管していたものなんだから」

 

 

暁「頼りにしていいのよ! っていいながら、全世代の暁と響を守れなくて、ただ電だけを残して死んだあの艤装に宿っていた想が分かる?」

 

 

ぷらずま「!」

 

 

龍驤「……」

 

 

暁「また電を守れなかったのよ。今度は気付くことすら出来なかった上に、生き地獄にいる電の側にいることしか出来なかったから」


 

暁「電のいないところで泣いてた。あの時の電と同じくらい酷く落ち込んでいたんだから!」

 


暁「響だってあの頃の電と雷を知っているから、絶対に怒ったはずよっ」

 

 

暁「あの時は乙中将が響と雷さんをなだめてくれてたけど」

 

 

暁「電は最後まで雷に酷いことたくさんいったみたいじゃない」

 

 

暁「『気持ち悪い』とか『消えろ』とか『偽物』とか」

 

 

暁「だから雷は電から離れることが電のためになると思って、鎮守府(仮)に行かずに乙中将のところに行ったんだから!」

 

 

暁「その雷を『半殺しにする』といったわね……!」

 

 

ぷらずま「……」ダラダラ

 

 

暁「司令官のことを考えるのもいいけど、あなたのことを大事に想う人はたくさんいるんだからね。私達は仲間なんだから」

 

 

暁「司令官を理由に後回しにするの?」

 

 

暁「そんなの立ち直ったのではなく、目を背けているだけじゃない。電が本当に雷のことを大切に思っているのなら、しっかり向き合ってあげなきゃ」

 

 

龍驤「レディーモードや……龍驤さん、なんもいわれへんよ……」

 

 

間宮・阿武隈・鹿島「……」ダラダラ

 

 

秋津洲「3名が……」

 

 

榛名「汗をかきながら目を背けてます……」

 

 

間宮「その当時この鎮守府にいながら」

 

 

阿武隈「なにも気付かなくて」

 

 

鹿島「すみません……」

 

 

暁「別に謝らなくていいわよっ! 阿武隈さんだって間宮さんだって鹿島さんだって、被害者なんだから!」

 

 

龍驤「……いったんストップや。そろそろ時間。会いたくないやつはとりあえずここにおればええよ。うちが提督に今の感じを話しておくから」

 

 

2

 

 

ぷらずま「本当によく出来たお人形さんなのです……」

 


龍驤「影のように提督の近くを歩いとるな……」

 

 

ぷらずま「司令官さん、お帰りなさ、」

 


フレデリカ「……」ビクビク

 

 

龍驤(あかん、電に気付いて提督の服の袖を、握っとる……)

 

 

フレデリカ「……」ギュッ

 

 

ぷらずま「● ●」

 


ぷらずま「おい。お前が、その人に」

 

 

ぷらずま「触ってんじゃねーのです!!」

 

 

フレデリカ「ひっ」

 

 

わるさめ「はいはい、わるさめちゃんが間に入りますー」

 

 

わるさめ「落ち着けないのなら大破させてまで黙らせてやるぞ?」

 

 

ぷらずま「は? 陸にあがった鮫がピチピチ跳ねるだけで私が倒せると?」

 

 

わるさめ「無理するなよ」

 

 

ぷらずま「あ?」

 

 

わるさめ「フレデリカ、怖いんだろ。さっきから見てりゃ手足が震えてることに自分でも気付けてねーご様子で」

 

 

ぷらずま「……」

 

 

提督「……ぷらずまさん、大丈夫そうですか?」

 


ぷらずま「私は問題ないのです。フレデリカ、テメーが大人しくしている限り、危害を加えないことを約束するのです」

 

 

フレデリカ「……」

 

 

ぷらずま「ま、それを信じるようなやつではねーのです。疑心暗鬼の塊ですからね。すぐにマイナス思考のドツボにはまって引きこもりますよ」

 

 

フレデリカ「……」

 

 

提督「……龍驤さん、皆さんの様子はどんな感じですか?」

 

 

龍驤「まあ、みんなキミの予想よりも大分聞き分けよかったよ。電と同じ感じやで。思うところはあるけど危害は加えん」

 

 

龍驤「でも、雷だけはあかんなあ。寮に引きこもるからそこに絶対にフレデリカ入れるなって」

 

 

提督「雷さん、か。なんとかします」

 

 

龍驤「で、フレデリカさん怪我しとるやん。そっちのメンバーの誰?」

 

 

提督「卯月さんと響さんが……暴行を加えたみたいで」

 

 

龍驤「あー、どうすんの。ここに連れてくる必要ないやん。喋るだけなら他のところに置いとくだけでもええやろ?」

 

 

提督「彼女だからこそ、会わせる意味も大きいと思ったのですが考え足らず、ですかね。元帥さんからはフレデリカは表に出ると面倒になるからここにぶちこんどけ、と」

 

 

龍驤「確かに先代丁准将は純粋な戦死扱いやけど、フレデリカさんの実験は表に出とるからなあ……」

 

 

龍驤「要らんゴタゴタ増やしたくないわな。どうせ隠しても海の傷痕さえ倒しとけば些事扱いやろーし。情報だけ抜くなら隠密が都合ええか……」

 

 

提督「近日に中枢棲姫さんが来訪します。正直、藁にもすがりたいので、彼女にも会ってもらいます。そして」

 

 

提督「自分と中枢棲姫さん、そしてフレデリカさんの3人で作戦を練りたいと考えていまして」

 


ぷらずま「信用できるのです?」

 

 

提督「自分はこの人の頭脳を買ってます。まあ、意見を出してもらうだけです。自分と中枢棲姫さんで煮詰めて行きます」

 

 

ぷらずま「まあ、司令官さんとチューキさんがいれば心配無用ですね」


 

ぷらずま「ところでその人形女がなにか喋りたそうな顔をしているのです。先にいっておきますが、間違っても謝るだなんて、真似はしないほうが身のためなのです」

 

 

提督「フレデリカさん、なにか」

 

 

フレデリカ「どうやら私がやってきたことは」

 

 

フレデリカ「完全なるミスではなかったみたい、ですね」

 

 

ぷらずま・わるさめ「……」

 

 


 

 


 

 

 

 

 

 

 

 


● ●


 

 

 

提督「ちょ、フレデリカさん!」

 

 

フレデリカ「いいです……死んでも……生きている必要もないです、から」

 

 

フレデリカ「どうやら、私のやってきたことは、戦争を終わらせるために役に、立ってます」

 

 

フレデリカ「悪だと断罪されても、誰かがやらなければならないことであったんだ、と」

 

 

フレデリカ「完全なるミスでは、終わってないはず、です。無駄死にではないですから……」

 

 

提督「頭痛が……なんだか少し前の自分を見ているようです……」

 

 

龍驤「本当にね……そっくりなのは容姿だけやなかったか。初めの頃に間宮さんがキミを嫌ってたのも分かるわ」

 

 

フレデリカ「彼と私は、違う、と思います」


 

フレデリカ「私、初めは本当に、皆さんを愛していた。駒のような人形みたいに、ですけど、私の中では最上位」

 

 

フレデリカ「なのに、途中で深海妖精が出口を連れてきて」

 

 

フレデリカ「その愛が、弾け飛んだ」



フレデリカ「変わる必要はないですはし、変われないです」

 

 

龍驤「ホンマに似とる……」

 

 

フレデリカ「地下室は、ありますか。あるなら、私はそこに、います」

 

 

フレデリカ「それと、ここにある全ての資料をお貸ししていただければ」

 

 

フレデリカ「必ず」

 

 

フレデリカ「海の傷痕に有効な作戦を導き出します……」

 

 

フレデリカ「今更皆さんとお話して謝っても仕方ないので、せめて悪びれて、それこそ廃かぶりのような日々に甘んじること……」

 

 

フレデリカ「それくらいですか、ね。私がやるべきことは……」

 

 

提督「龍驤さんわるさめさん、見張りをお願いしてもいいですか?」

 

 

龍驤「ええよ」

 

 

わるさめ「こいつ豆腐メンタルだけど、頭の出来自体はマジで良いからな」

 

 

わるさめ「ま、司令官とぷらずまは雷なんとかしてきなよ」


 

2

 

 

ぷらずま「とのことなのです……」

 

 

提督「そうですか。それは悪いことしましたね。あの雷さんのことすごく強い子だと思っていたんですけどよく見ていなかったな……」



提督「あの雷さん、電の適性も持ってたんですよね。雷の適性と相まって割と溜め込むタイプなのかも」

 

 

ぷらずま「そうだったのですか……私は雷お姉ちゃんのこと、あまり知らなかったみたいなのです」

 

 

ガチャ

 

 

暁「あ、司令官に電……」

 

 

響「……」ムスッ

 

 

ぷらずま「どうなのです?」

 

 

暁「クローゼットのなかに閉じこもって出てこないわね。棒かなにかで内側から開かないようにされてる……」

 

 

響「……司令官のミスだよ。あの人は連れてくるべきじゃなかった」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「雷さんがここに来た時、自分をなんとかしようとしたのは雷さんが初めてでしたね……」

 

 

提督「暁さんが自分に怯えていた頃です。普通、あの頃の自分みたいなやつに関わりたくないでしょうに」

 

 

提督「頼りにされたいとかよくいってますし、ダメなところを見ると、なんとかしたくなる彼女は少し変かなっては思ってはいたんですけど」

 

 

提督「最初からそんな性格であるわけないし、きっと性格を形成した過程があるんですよね」

 

 

ぷらずま「雷お姉ちゃんの世話焼きは艤装効果と、素質の子供の無邪気の一環ではないのです?」

 

 

提督「艤装による精神影響は方向性は似ていても、個々によって違いますから。それらを含めた艤装との相性の良さを表す数値こそが適性率。なので『素体と艤装効果の落としどころとして落ち着いたのが今の雷さん』かな」

 


提督「それに彼女は身体こそ幼くてももう19歳になるから、あの性格は子供の純粋さだけではない、と思う……」

 


ぷらずま「そういえばかなーり前に司令官さんのデータを見たのですが、カウンセラーの資格持ってましたよね?」

 

 

暁「え"」

 

 

響「む」

 

 

提督「思いきりお前みたいなやつが、カウンセラー? って顔だ……」

 


響「……司令官、あのフレデリカさんはここからどこかに移すべきだ」

 

 

響「これは暁から聞いたんだけど、『綺麗事はなしで、死んだほうがいい人間、いえ、死ななきゃならない人間っていると思う』と」

 

 

響「あの雷は間違ってこんな台詞をいわない。雷は海の傷痕にすらこんな悲しいことをいわない子なんだ」

 

 

提督「……」


 

提督「ぷらずまさん、あなたの言葉も重要だ。肝心なところはよろしく」

 

 

響「……司令官、私はあなたに従うけど、雷をなんとかしてくれないと」

 

 

響「嫌いになるから」

 

 

ぷらずま「なんとかすれば……?」

 

 

響「好きになるよ」

 

 

響「暁、雷、電、苺みるくさんに続く第6駆のメンバーだ」

 

 

提督「……まあ、出てくるまで扉の前で正座して待ってますよ」

 

 

暁(その返答……)

 

 

暁(サイコパス診断にあった気がする……)



3

 


ぷらずま「雷お姉ちゃん、さっきの言葉はあの、ごめんなさい、なのです」

 

 

ぷらずま「出てきて欲しいのです」

 

 

ぷらずま「フレデリカは地下室にいますから大丈夫です」

 

 

雷「その人がいなくなってから出る」

 

 

ぷらずま「戦争終結しちゃうのです……」

 

 

雷「ならそうなってから出る」

 

 

ぷらずま「なにを甘えたことを! 私もそろそろ発狂しますよ!」

 

 

ぷらずま「戦争に参加しないのなら、ここにいる意味もないのです!」

 

 

提督「……」

 

 

雷「そうよね……」

 

 

雷「電にとっては意味がないわよね……」

 

 

雷「電が落ち込んでいた時、私が側についていたことも電にとっては『意味がなかったこと』なのよね」

 

 

ぷらずま「そういうことじゃ……」

 

 

雷「そういうことでしょ。だって電はあの時にいったじゃない。『艤装をつける前にお友達だったわけじゃない。お手紙と少し会って喋っただけで、そこまで私を気にかけるのはただの姉妹艦効果に過ぎない』って」

 

 

雷「『だから』」

 

 

雷「『偽物だ、消えろ』って」

 

 

雷「この雷艤装の想から伝わる感情も知らないくせに。あなたを珊瑚で守って死んだ雷の想も、分からないくせに」

 

 

雷「別に艤装のせいだけじゃないわよ。私は艤装を身に付ける前から、困ってたり苦しんでる人を見捨てたりしなかったんだから」

 

 

雷「偽善とかそういうんじゃない」

 

 

雷「それが私の生き様なの」

 

 

雷「あなたのほうが私のことを知らないのよ。あなたが私を適当な理由で拒絶したんじゃない」

 

 

雷「私はそれでも、なにか力になれることないかなって、電の側にいたわ。仲良くなったり支えになったりするきっかけが姉妹艦効果だったとしても、それのなにが悪いの」

 

 

ぷらずま「……、……」

 

 

雷「死にたい死にたい死にたいって喚いて、戦争を終わらせるって、自殺するって」

 

 

雷「司令官もそう。死にたいって真剣に思ってたでしょ。心のどこかでそう真面目に思ってるから、戦争終結のために命を捧げるだなんていえるのよ」

 

 

雷「なにそれ、ダメダメじゃない」

 

 

雷「本当に、気持ち悪い。だから」

 

 

雷「私がいないとダメなのよ。私がいなかったら司令官はわるさめさん襲撃の時にきっと死んでいたわよ」

 

 

雷「司令官が変わったのは生きているお陰で、みんなのお陰なのよ。なのに、まだ勘違いしているわ」

 

 

雷「二人はきっと戦争を終わらせることが」

 

 

雷「皆のためになると思ってる」

 

 

雷「私は」

 

 

雷「みんなが生きているなら、戦争なんか終わらなくたっていいわ」

 

 

ぷらずま「違います。戦争のなかだからこそ笑おうとしているみんなの笑顔は、悲しい影があると思うのです」

 

 

雷「……終わったら笑えるの?」

 

 

雷「戦争が終わった時、『やった』とかいう喜びとか、『終わった』っていう充実感に満たされる幸福が訪れるのかしら」

 

 

雷「戦争は終わったとしても、爪痕が深すぎて、そんなスッキリとしたエンディングなんか迎えられないわ」

 

 

雷「続いても、終わらせても」

 

 

雷「虚しい悲壮感だけが残ると思うから」

 

 

提督「……」

 

 

雷「あの時、電は被害者でしかなかった。だったら悲しみが連鎖して傷が広がるのは当たり前のことよ」

 

 

雷「電をあんな風にした人を許せるわけないじゃない。だから、妥協して、あの人がいることを認めて、私はここにいることにしたの」

 

 

ぷらずま「フレデリカも断罪されるべきなのは疑いようはないのですが、そもそも海の傷痕が……」

 

 

雷「海の傷痕は人間から産まれ落ちたのよね。だったら、悪いのは私達ってことになる。そういう原因の話じゃなくて」

 

 

雷「違法建造をしたフレデリカさんの責任を海の傷痕のせいにするのは、強盗するのはお金が悪いっていうのと同じじゃない。そうじゃないでしょ」

 

 

雷「この海の全てはなんでもかんでも海の傷痕のせいじゃないわ。私達は、自らの意思でこの海にいて、海の傷痕は自らの意思とは無関係に人の殺戮本能を持って産まれ落ちた」

 

 

雷「海の傷痕は被害者だから」

 

 

雷「加害者なのよ。この海に化物なんていないわ。この海には人間しかいない。そういう物語だったんでしょう?」

 

 

提督「……」



ぷらずま「雷お姉ちゃんのいっていることも分かるのですが……司令官さんからもなにかいってあげて欲しいのです」

 

 

提督「どうやら、雷さんはすねているわけではないので、自分の口からあやす言葉はないですね」

 

 

提督「立派な彼女の選択です。むしろ引きこもってないで堂々としていればいいんですよ。それを責める人はいませんから」

 


雷「……」

 

 

提督「そうしないのは、罪悪感、でしょう」

 

 

雷「……っ」

 

 

提督「あなたが決めることです」

 

 

提督「ですが、負けないで。嫌いの感情よりも、あなたの好きの感情を優先して欲しいです。それがきっとあなたのためになると、自分は思います」

 

 

提督「電さんや他の皆さんのことも、嫌いではないのでしょう」

 

 

提督「あなたを想う人から差し伸ばされた手をただ振り払うだけでは、後悔すると思います」

 


提督「雷さんには自分のようになっては欲しくないです」

 

 

提督「どこに進んでも傷だらけになるでしょうが、あなたはきっとそれでも誰かのために進める人間です」

 

 

提督「そういう人間、今の時代に最も必要です。みんな自分のことで精一杯ですから」

 

 

提督「辛いときこそもう一踏ん張りです。苦しい時こそがんばれって。生きていればいいことあるさって」

 

 

提督「はは」

 

 

提督「なんだよそれ。ふざけんなよ。黙れよ。そうじゃねえんだよ。ンなこと分かってんだよ。やるしかねえんだから。って感じですよね」

 

 

雷「……」

 

 

提督「聞きますね。なぜ自分がフレデリカさんをここに置くことを認めたのか、分かりますか?」

 

 

雷「戦争終結のため以外にないわ」

 

 

提督「状況からして厳密には違います」

 

 

提督「海の傷痕との戦争が避けられないからです」

 

 

提督「自分一人だけの力では無理なんです。これは作戦を組むにおいて、です。海の傷痕との戦いは艦娘の皆さんに役割を渡しますが、作戦の詳細を話はしません」

 

 

提督「『やることだけを教えて、何のためにそうするのかは教えませんし、理解するのも難しい作戦を立てる』つもりです」

 

 

提督「艤装を通して作戦は海の傷痕に筒抜けになります。勝てる戦いも勝てなくなりますからね」

 

 

提督「どれだけ頭を捻っても相手はいまだ未知数であり、策をリアルに産み落とすには時間が足りません」

 


提督「暗闇の中を自分の示す針を信じてもらい、不透明な作戦を完遂してもらう。今回の作戦のあなた達は」

 

 

提督「軍艦のように舵を取られる」

 

 

提督「抜錨した全ての皆さんが暗闇を進み、その闇を抜けた時に誰も欠けていないような、そんな進路を示さねばならない」

 

 

提督「そのために自分は奢りませんよ。チューキさんにはもちろん、フレデリカさんにも助力を願いましょう」

 

 

提督「闇と向き合います」

 

 

提督「この鎮守府が抱え込む因果、きっとこうなるのは運命です」

 

 

提督「そのためにあなたを傷つけた自分を情けないと罵ってくれても構いません」


 

提督「それでも自分はあなた達を間違った方向に進ませる訳には行きませんからね。今更すぐに張りぼてだと分かる見栄は張りません」

 

 

提督「運の要素が出るのは不可避です」

 

 

提督「『艦隊これくしょん』において羅針盤こそが提督の最大の敵ですね」

 


提督「乗るか降りるか、みんなが各々で決めることです」

 

 

提督「フレデリカさんは、なんとか予定よりも早くこの鎮守府から丙少将の鎮守府に移しましょう。そこで作戦を組み立てることにします。だから雷さん、その間に考えて答えを出してください」

 

 

提督「ぷらずまさんは……」

 

 

ぷらずま「司令官さん」

 

 

ぷらずま「私は雷お姉ちゃんが元気になるまでずっとここにいるのです」

 

 

提督「……!」

 


提督「了解です」ビシッ

 

 

提督「自分も雷さんが元気になるまで、ここにいますね」

 

 

ぷらずま「司令官さんは、やらなきゃいけないことがありまくりなのです」

 

 

提督「まあ、大体の作戦は頭で出来上がっています。元帥にも伝えておけば、なんとかなりますから」

 

 

雷「……」

 

 

ガチャ

 

 

ぷらずま「……」

 


ぷらずま「出て来ないのです!?」


 

雷「司令官」

 

 

雷「あの人がいることで最後の戦いは、誰も死なないように、作戦は、組めるの?」

 

 

提督「下手なことはいえません。ただ覚えておいて欲しい」

 

 

提督「誰も死なせる気は毛頭ありません」

 

 

提督「ただ提督である自分を信じて愚直に戦って欲しいです」

 

 

提督「途中で誰かが死んでも」

 

 

提督「最後には、誰も欠けずに帰投する」

 

 

提督「そう、信じてください」

 

 

雷「そう。なら、いいわ」

 


ガチャ

 

 

ぷらずま「む、泣いていたかと思いきや、そうでもないのですね」

 

 

雷「そんなわけないじゃない。だって、誰も欠けていないもの」

 

 

雷「でももう少しだけここにいる。少し整理したいから。だから、司令官も電もやることをやりなさい」

 


ぷらずま「分かりましたが、いつまでもいたのなら、また来るのです」

 


雷「大丈夫」

 

 

提督「……それでは」



【11ワ●:響とВерный】

 

1


響「司令官、工廠に来たよ。私を改造して欲しい」

 

 

提督「本当に覚悟はいいですか?」

 

 

響「もちろん」

 

 

明石「Верныйか。なんかあった艤装だよな。うーん、ええっと」

 

 

明石さん「弟子よ、海上修理施設を使う以上は自分の鎮守府の仲間の艤装くらい完璧に把握しておいてくださいマジで」

 

 

明石「……はい」

 

 

響「大丈夫。必ずやモノにしてみせるさ」

 

 

秋月「なにか問題があるんですか?」

 

 

提督「不安要素は丙少将が、響さんを改造していない理由ですね」


 

提督「1度試して改造失敗しかけたから中断したみたいです。繊細な改造なので、適性者への影響が強いのです。失敗すると最悪壊れるから止めた、と」

 

 

響「Верныйになりたい。少しでも強くなりたいから」

 

 

提督「まあ、あなたが望むのであれば改造しますよ」

 

 

明石「なんでВерныйだけそんなに特別なんだろーな」

 

 

秋月「お兄さん、一般適性施設の時の知識でなにか知ってますか?」

 

 

提督「Верный艤装は響艤装の改二艤装なので、適性検査施設でもВерный艤装は測らない、というか測れないんですよね」

 

 

提督「適性施設では響艤装の適性とВерный艤装の適性は別であり、響適性者のなかでも更に適性者が限られるレアという見解ですね」

 


提督「この響さんはВерныйへの適性もありますが、改造してみないと正確な適性率は測れずなのです。改造失敗は艤装を身に付けられない響適性者と烙印を押されるので、通常は艤装をぶち壊してまた響艤装に戻します」


 

提督「以前に1度失敗しかけたのならばВерныйの適性は高くないのかと。艤装の扱いに不備が出る危険性があるので、問題はそれまでに馴染めるか、です」

 

 

秋月「なるほど……」

 

 

明石「無理する必要もないんじゃねえの。響でも戦えるだろ。今の時期に改造で兵士に自滅リスク負わせるのはどうなんだよ。ただでさえ全ての艤装が埋まってるわけでもねえし、近年は特にガキにしか適性でない駆逐艦艤装はあまりまくってる始末だろ」

 

 

響「それでもなるよ。使いこなせれば響よりもВерныйのほうが数値的に戦力になるから」

 

 

提督「一応伝えておきますが、艤装適性10%のあの神通さんは特別ですからね。あれは素質の才能ですから、同じようになれるとは限りません」

 

 

響「成し遂げてみせるさ。鹿島さんが協力してくれるっていってくれたし」

 

 

提督「では改造します。自分としても響さんにはВерныйへの道を歩んで欲しかったですしね」

 

 

響「うん。じゃあ始めよう」

 

 

2


 

提督「響艤装とВерный艤装って、求められる適性がまた別なのは工作艦的になにか思うところあります?」

 

 

明石「……ガッコにいた時に姉さんと話してた。響艤装はВерный艤装に改造できるんだが……姉さん頼む」

 

 

明石さん「Верный艤装とはまた別にコンバートしちゃえそうな艤装だなーってお話ですね」

 

 

提督「といいますと」

 

 

明石さん「魔改造によってДекабристとかにもなっちゃえそうです」

 

 

明石さん「それらの性能の影を残した響に戻れる可能性。まあ、この賠償艦が返還されたらって感じのifの未来ですか。この艤装の性質自体が魔改造に似てますね」

 


明石「ページに例えるのなら、書き込める余白が多いです。白です」


 

明石「そういう空白染みた艤装だから精神影響も大きくなってくるし、適性もまた別になってくるのかもって」


 

明石さん「今思うと海の傷痕はこの艤装に遊び心入れたんじゃないのかなって思ったり」

 

 

提督「そのような真似をするのは間違いなく此方による当局への意思疏通ですね。遊びなのか明確な目的があるかは不明ですが、今の時点では答えは出ませんね……製作秘話の類でしょうか」

  

 

明石さん「あー、でも精神影響の度合いの面で考えますと……」

 

  

明石さん「トランスタイプに似てますね。それほどじゃないですけど、ヴェルは強烈なほうでしたかと。面白いことにどうしてか性格はそんなに変わらないみたいですけどね」

 

 

明石さん「初霜ちゃんとは逆です。素体ではなく、艤装のほうが不思議」

 

 

提督「……、……」

 

 

陽炎「司令ー、通信が入ったわよ」

 

 

陽炎「チューキさん、もうすぐこっちに着くって。陸仕様にしてきたみたいだから中に入れるって」

 

 

不知火「指示通りに海の傷痕の鬼ごっこの件は伝えておきました」

 

 

提督「了解です。明石さん、響さんのことよろしくお願いします」

 

 

明石さん「お任せください♪」

 

 

【12ワ●:廃課金達による次作戦会議】

 

1

 

水母棲姫「チューキが陸仕様で戦闘能力激減しているからさー、一応ついてきたけど」

 

 

水母棲姫「今ここにはあいつがいるですって……?」

 

 

提督「瑞穂さんマジか。あなたも来るとは」


 

水母棲姫「その名で呼ぶんじゃないわよ。というか会わせて」


 

水母棲姫「フレデリカもどきに」

 

 

中枢棲姫「まあ、これはこれで。私はフレデリカさんとは直接的な面識はありませんでしたが、うちのスイキにとってはかなりの因縁がある相手ですから」

 

 

提督「というか、その情報広めてもいいのですか?」

 

 

中枢棲姫「構いませんよ。スイキにも納得してもらっています。ただ彼女はわるさめさんや電さんとは違い、深海棲艦ですので、気を遣ってもらいたいです」

 

 

わるさめ「……マジか」

 

 

わるさめ「スイキちゃんが、あの瑞穂、なの……?」

 

 

水母棲姫「なんかあんたに関しては今更よね。まあ、あの瑞穂が深海棲艦になって、中枢棲姫勢力にいるだなんて知ること知ってなきゃ分からないわよねー……」

 

 

わるさめ「……」

 

 

水母棲姫「止めなさいよ。そういう悲しそうな顔をするのは。私はチューキ達と一緒にいて救われたことのほうが多いんだから。それはあなたも同じでしょーよ。同情せずに」

 

 

水母棲姫「普段のあんたみたいに『わるさめちゃん、特に理由はないけど全裸になるゾ☆』とかいってはしゃいでいればいいのよ」

 

 

わるさめ「スイキちゃんの私のイメージってそんな風だったんだ……」

 

 

水母棲姫「お調子者の変態ね」

 

 

龍驤「今も割とそうやね」

 


わるさめ「わるさめちゃん、シンキングターイム……」


 

中枢棲姫「准将殿、フレデリカさんにも会わせてあげてもらいたい。ただやるべきことをやった後で結構です」

 

 

提督「そうです、ね。ただフレデリカさんのほうも瑞穂さんに会いたがっていた様子です。どんな反応するか分からないので、会議が終わるまではスイキさんのことは伏せますね」

 

 

中枢棲姫「……了解」

 

 

提督「スイキさん、ここでしばらくお待ちいただいても」

 

 

提督「なにか欲しいものがあれば龍驤さんとわるさめさんにいってもらえれば、です。お二人ともしばらくスイキさんと一緒にいてくださいね」

 

 

龍驤・わるさめ「了解」

 

 

水母棲姫「じゃあ、なにかアルコールと間宮さんになにかいってつまみ持ってきて。後はその他の連中を近づけないで。面倒な予感しかしないから」

 

 

龍驤「分かった。深海棲艦やしな、神経逆撫でするようなことは控えるわ」

 

 

わるさめ「スイキちゃん、よく発狂してたからなー……それも今思うと、いや、まあ考えないでおくね」

 

 

水母棲姫「あら、ずいぶん物分かりがよくなったのね」

 

 

中枢棲姫「スイキ、大人しくしておくのですよ」

 

 

水母棲姫「ガキじゃないっつの」

 

 

 

 

 

 

 

陽炎「えー、館内放送にて秘書官陽炎と」

 

 

不知火「不知火よりお知らせします」

 

 

陽炎「大淀さんからの指令第2弾」


 

提督「……」

 

 

不知火「友愛を知ろう」


 

陽炎「提督はお取り込み中だから、案だけ。友愛をご教授してもいいぞって方は放送室まで来てねー」

 

 

中枢棲姫「今の時期に意味不明でイラつくんですけど、なんですか?」

 

 

提督「すみません、ノータッチで……」

 


2

 


ガチャ ゴロゴロシュタッ

 

 

金剛「バニングラヴ!」

 

 

陽炎「はやっ……」

 

 

不知火「金剛さんはラブ勢イメージですし、友愛ではなく恋愛方面の適任者では」

 

 

陽炎「それはもう済んだけどねー」

 

 

金剛「ヘイ!」

 

 

金剛「そもそもその指令は恋愛、友愛、家族愛についての理解を深めるようにということデショ?」

 


不知火「ですね」

 

 

金剛「お友達からの付き合いから、恋人としてのお付き合い。ラストは苗字を同じに!」

 

 

金剛「ハッピーウェディング!」


 

金剛「この流れで一気に完全制覇デース!」

 

 

陽炎「一理しかないから却下で」


 

金剛「提督が構ってくれなくて寂しいデース!」

 

 

不知火「仕事柄そんなことはないはずです。出撃命令でも出してもらいましょうか?」

 


金剛「明石君みたいにテートクと一緒に街でデートしたいデース……!」


 

陽炎「明石君とはデートじゃないから」

 

 

陽炎「本題からずれてきてるわね」


ガチャ


暁「愛と聞いて」

 

 

暁「レディーとして呼ばれている気がして大至急来てあげたわよっ」

 

 

不知火「ありがとうございます」

 

 

暁「ずばりスポーツね!」

 

 

暁「スポーツを皆でやれば身心ともに成長できて、友愛だって芽生えて育まれると思う。どう?」

 

 

暁「素敵じゃない?」

 

 

不知火「素晴らしい」

 


陽炎「思ったよりも参考になる答えね……」

 

 

暁「失礼ね!」プンスカ


 

金剛「暁が昨日に読んでいた漫画の影響だと思いマース」


 

暁「らぐびー。マネージャーやってみたい!」

 

 

陽炎「うーん、悪くはないんじゃない?」

 

 

不知火「激しいスポーツしても怪我は入渠ですぐ治りますし、根性が鍛えられそうな気も」

 

 

金剛「面白そうデース」

 

 

金剛「戦艦のパワーを持って皆を鍛えて差し上げマース!」


 

不知火「なるほど、では海で艤装をつけてやりましょう」


 

不知火「乙中将との戦いで卯月さんが山城さんに体当たりしていたのを見てから」

 

 

不知火「不知火もやってみたいと」

 

 

陽炎「海上ラグビーね」

 

 

陽炎(……肝心の司令が行方不明になってるまま始まりそうだけど、まあいいか)

 

 

3

 


中枢棲姫「確かに抜錨する兵士は作戦内容を把握していれば海の傷痕にバレてしまいます。中には本当にギリギリで役割を教えたほうがいい人もいますね。理解しました」

 

 

提督「チューキさんの場合は特に、です。『壊:バグ』といっても近距離ならば探知は可能みたいですから」

 

 

中枢棲姫「お任せください。足並みは合わせます。私達に対してはどうします?」

 

 

提督「中枢棲姫勢力:海屑艦隊には鎮守府(闇)の艦隊として作戦に組み込ませていただきます。そのため決戦当日まで内容は教えません」

 

 

中枢棲姫「ええ、問題ありません。私達の命、あなたに委ねましょう」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

提督「そして現時点で伝えておくべき事項を」

 

 

提督「1つフレデリカさんはうちの全鎮守府の皆さんの反応からして限りなく本物に近いようでして」

 

 

フレデリカ「……」

 

 

提督「海の傷痕は鬼ごっこを終えて街から海へと抜錨する際に本官さんとの会話で『残る2名も』といったそうです」

 

 

中枢棲姫「……、……」

 

 

中枢棲姫「曖昧な消去法だと、可能性が高いのは『センキ』と『リコリス』、『大和』辺りでしょうか……」

 

 

提督「海の傷痕はセンキさんとリコリスさんだと」



中枢棲姫「……キレそうだ」



提督「なので中枢棲姫さんもしも海屑艦隊のメンバーが復活した場合の対処は戦力として機能しそうならば連絡を。恐らくうちの鎮守府のように、ゴタゴタが起きるでしょうが、自分が口を出すのは難しいのでお任せしたい」

 

 

中枢棲姫「了解です。我々は理性が強いといっても本質は凶悪。その二人を辱しめる行為は……」

 

 

中枢棲姫「我々はただ単にあなたという頭脳に従い、突撃するのみの強力な兵士にします」

 

 

中枢棲姫「海の傷痕はそれを承知なのでしょうが……」

 

 

提督「こちらもフレデリカさん、そしてスイキさんからの情報提供、そして丁准将と初霜さんの協力でロスト空間の裏付けも取れるでしょう。知りたい情報は全て知ることができます」

 

 

提督「初霜さんが帰投次第にそこから頭の中にある作戦を煮詰めます」

 

 

提督「まあ、こんなところですかね」

 

 

フレデリカ「青山さん、中枢棲姫、さん」


 

中枢棲姫「初めまして、ですかね。あなたに関しては私にも色々と思うところはありますよ。鹿島艦隊の件については、不毛なので遠慮願いたい」

 

 

フレデリカ「そう、ですね。時間のない今、語るべきことではありません」

 

 

フレデリカ「ここにある資料には新規の情報がたくさんありました。特に海の傷痕と、適性関連のこと。実に読みやすくて、助かり、ます」



フレデリカ「お陰様で」



フレデリカ「海の傷痕の攻略について私のなかでいくつか答えが出たので……」



提督「それはなによりです」


 

フレデリカ「それを私の意思表示として、あの頃の皆の前でお話させてはもらえないでしょうか……?」

 

 

提督「……、……」



提督「正気ですか。絶対にただでは済みません」

 


提督「なにがとはいいませんが、お分かりですよね?」

 


フレデリカ「私の知る限りのことは、お話しました。バグの8種類も6種のことも。今の時は私よりも多くの情報を獲得していたことに驚きましたが」

 

 

フレデリカ「私が導き出した海の傷痕への攻略法、これを皆の前でいうこと。それで私は終われば、いい」


 

フレデリカ「フレデリカは死んだ。ここにいるのは人形もどきです」

 

 

提督「まあ、そこまでいうのなら構いませんが、あの頃の皆さんが全員、召集に応じるとは限りませんし、そこに関して自分は皆さんに強制しません」

 

 

フレデリカ「構いません……」

 

 

フレデリカ「瑞穂が、いないのが、辛い、ですが……」

 

 

中枢棲姫「……」チラ

 

 

中枢棲姫「准将殿、耳を借ります」

 

 

中枢棲姫「スイキのこと、伝えてないのですか?」ヒソヒソ

 

 

提督「はい。そこまで教える必要はないかと思って。ただ瑞穂さんが生きているかどうかは聞かれたので、死んだ、とだけ教えました」コソコソ

 

 

中枢棲姫「いや、まあ、そうなのでしょうが……」ヒソヒソ

 

 

提督「まあ、でも、結果オーライですね。聞いてもらいましょうよ。スイキさんが瑞穂だと知らないまま、お話させてみましょう」ヒソヒソ

 

 

中枢棲姫「……まあ、瑞穂がいない今、瑞穂への想を正直にありのまま話してくれるかもしれませんね」ヒソヒソ

 

 

中枢棲姫「了解です」ヒソヒソ

 

 

中枢棲姫「私としても家族のためになるというのならば願ってもないこと」

 

 

フレデリカ「……3人しかいないこの場所でヒソヒソするなんて、わ、私を、いじめる、相談、ですか?」ビクビク

 

 

提督「さすがですね。その通りです」

 

 

中枢棲姫「さあ、外に出ましょう」

 

 

4


  

水母棲姫「ねえ、わるさめ」


  

わるさめ「なーに、スイキちゃん」


 

水母棲姫「あんた見てると分かるんだけど、あいつ、いい提督なのね」


 

水母棲姫「あんたが私達を裏切って、あの人の側についたの納得したわ」


 

わるさめ「だろー。でも、危なかったよね」

 

 

水母棲姫「なにが?」

 

 

わるさめ「もう少しで殺してたー」

 

 

水母棲姫「あー、あったわねえ」

 

 

わるさめ「あの時、レッちゃんから暗殺任務を聞いたんだよ。その時の内容さ」

 

 

わるさめ「『困った時は殺しとくのが確実なんだ。そんなことも知らないのか馬鹿め』ってセンキ婆がいったら」

 

 

わるさめ「リコリスちゃんが『し、知っていたし? 馬鹿にしないでもらえるかしら(震声』という流れでチューキちゃんが『わるさめさんに暗殺してくるように』って、レッちゃんから聞いていたけど」

 

 

わるさめ「全然違うじゃねーか!?」

 

 

水母棲姫「その組織すごいアホそう……あんたも信じてんじゃないわよ……」

 

 

水母棲姫「暗殺自体はちゃんとした考えがあってのことだけど、レッちゃんが肝心なところ以外にあまり聞いていなくてアドリブ混ぜたんだと思うわ……」

 

 

わるさめ「伝言ゲーム一人目から相当内容変わってるじゃん!」

 


水母棲姫「知らないわよ……」


 

わるさめ「組織運営は正直、チューキちゃんの働きが大きいよね。面倒見はリコリスママのが上だったけど」

 

 

水母棲姫「そうねえ……でも、もういないから。だからレッちゃんとネッちゃんはあんたに会えたこと、すごい喜んでたわよ」

 

 

わるさめ「私も嬉しかった。あの二人と遊んでると、子供でいられたから」

 

 

水母棲姫「……」

 

 

わるさめ「ところでスイキちゃん」

 

 

わるさめ「その、髪に差している可愛いお花は彼岸花?」

 

 

水母棲姫「チューキが、リコリスが死んだところからわざわざ持ってきたの。電のやつが、遺品だと、渡したらしいわよ」

 

 

わるさめ「決戦の時か……」

 

 

水母棲姫「ま、センキの屍も回収したわ。二人も海屑艦隊の仲間だからね」

 

 

水母棲姫「というかあんた決戦の時になにしていたのよ。姿見なかったけど」

 

 

わるさめ「江風と遊んでました」

 

 

水母棲姫「あんたねえ……」

 

  

わるさめ「ねえ、スイキちゃん。酷なこというかもだけど」

 

 

わるさめ「勝とうね」

 

 

水母棲姫「当たり前よ。こっちは死んだんだから死なせなさいよっ、て」

 

 

水母棲姫「盗んだバイクで走り出したい気分。そのまま轢き殺してやるわよガオー」

 

 

わるさめ「尾崎知ってるとかスイキちゃん……」

 

 

水母棲姫「過去は思い出さないようにしてるわ。虚しいだけだし」


 

水母棲姫「ところであの子達はなにしているのかしら……」

 

 

 

龍驤「陽炎! そのタックルあかんて!」

 

 

龍驤「もっと腰落とせやー!戦艦みたいな粗暴なガチムチは足狙え足!」



金剛「ヘイ龍驤! リピートアフタミー!?

おしとやかな女と書いて淑女なミーを粗暴なガチムチといったネ!?」

 

 

ぷらずま「●ワ●」スキアリナノデス


ドン!


鹿島「あ、えっと、今の電ちゃんのは反則、でしたっけ。ですよね。あのキックは……ああ、ラグビーのルールが分かりません……」



 

水母棲姫「球遊びしてるわね……」

 

 

わるさめ「海上ラグビーか。つーかぷらずまのやつ銃撃してるぞ。審判の鹿島さん機能してないっス……」

 


ワイワイガヤガヤ

 

ドオン!

 

 

水母棲姫「…………」

 

 

わるさめ「どうしたの? 混ざりたい?」

 

 

水母棲姫「まさか。鹿島もいるじゃない。無理よ」

 

 

わるさめ「……」

 

 

水母棲姫「あんな風に仲間と球遊びしてなにが面白いのかしら」


 

 

 

 

 

ワイワイガヤガヤ


 

伊58「ゴーヤ達は、勝つんでち!」

 

 

阿武隈「ええ、まだ負けてません!」


 

榛名「榛名! 500点! 取り返します!」

 

ワイワイガヤガヤ


 

 

 

水母棲姫「あんなに楽しそうに……」


 

わるさめ「ねえ、瑞穂も被験者見たいじゃん。No1は私よりも早くこの身体にされていたんでしょ。だけど、瑞穂には全然、気付かなかった」

 

 

わるさめ「私達のなかで、唯一納得してフレデリカの悪事に自らの身を捧げたとしか思えない。なんで?」

 

 

水母棲姫「……あの人は戦争を終結させたかった。私は、そんなあの人のこと、好きだったのよ。今、思うと」

 

 

水母棲姫「あのビクついた人間不信&社会不適合者は、私が力になってあげなきゃ。支えてあげないとって、そう思わせるような人だったのよ」

 

 

水母棲姫「気持ちは分かるから、力になってあげたかったの。善悪なんか、どうでもよかった」

 

 

水母棲姫「私もそんな性格で兵士になったからね……それだけよ」

 


水母棲姫「一生懸命に提督を支えていたけど、信じた人に裏切られて虫けらのようになった。その悲しみは深海棲艦化した時に強い憎しみになったわ」


 

水母棲姫「それと私は異動したんじゃないわ。8種は、人として崩壊するの。再生と自壊を繰り返す、妖精もどきになるみたい」

 

 

水母棲姫「壊れた私は丁准将のところに移送されたのよ。あいつは私を使ってなんかしていた。どのくらい経過したか分からないけど、ある日、私は動けるようになった。あの場に海の傷痕がいたみたいだから海の傷痕の仕業でしょーね」

 

 

水母棲姫「私はまず」

 

 

水母棲姫「私を道具として凌辱した丁准将をぶち殺したわ。それから先は覚えてない。多分、思い出せないようになってる」

 

 

わるさめ「……悲しいなあ」


 

水母棲姫「海の傷痕を倒すっていう時がすぐそこなのに、あいつらなにしてんのよって」


 

水母棲姫「あいつらは球遊びなんかに、あんな一生懸命に……」


 

水母棲姫「熱くなっちゃって」

 

 

わるさめ「スイキちゃん……」

 

 

水母棲姫「本当に」


 

水母棲姫「くだらない……」

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 


スイキちゃん「おいノックオンだろ今の――――!!!」

 

 

5

 


中枢棲姫「スイキ、今からフレデリカさんが来ますが、彼女はスイキが瑞穂であることを知りません」

 

 

中枢棲姫「その上で過去のこの鎮守府に言いたいことがあるそうです。海の傷痕に対しての意見をあの時の皆の前で述べたい、と」

 

 

水母棲姫「……」

 

 

わるさめ「ドッキリかよ……」

 

 

中枢棲姫「阿武隈さん、卯月さん、鹿島さん、間宮さん、電さん、わるさめさんが同席します」

 

 

中枢棲姫「そのフレデリカさんの話に准将殿と私が意見をいいますね。いいたいことはあるでしょうが、終わるまで聞いてください」

 


水母棲姫「なにそれ」

 

 

中枢棲姫「海の傷痕に対して有効な策を論ずる。過去の罪に対して謝罪にもお礼にもなり得ませんし、どうにもならないことは分かっているのかと。それでも思うところはあるのでしょう。せめて、の気持ちだと思います」

 

 

わるさめ「……了解」


 

阿武隈「……来ましたよ」


 

卯月「っち……」

 

 

間宮「今更……」

 

 

鹿島「……スイキさん」キッ

 

 

水母棲姫「にらまないでよ……あの時の記憶を持った2代目なんだから」

 

 

ぷらずま「皆さんいいたいことはあるでしょうが、とりあえずしばらくお口チャックなのです」


 

ぷらずま「司令官さんとフレデリカが来たのです」

 

 

提督「皆さん、ピリピリしてますね。仕方ないことです、ね。ではどうぞ」

 

 

フレデリカ「……」

 

 

フレデリカ「謝罪でもなんでもありません。私が資料を漁って導きだした海の傷痕について、有力であると思われる情報を今から提供します」

 

 

フレデリカ「青山さん、中枢棲姫さん、私の説に容赦なく反論してください」

 

 

フレデリカ「そうしてあなた達二人が異論はないとなった時、この情報が皆さんに真実であると認識されます」

 

 

提督「了解です。海の傷痕から最上位の天才と太鼓判を押されたあなたの、頭脳、全力で思考し、洗練していければ、と思う次第です」

 

 

中枢棲姫「ええ、私も持ち得る知識と思考で、その説が信じるに値するかどうか、議論に加わりましょう」

 

 

わるさめ「この二人と議論する度胸は褒めてやるよフレデリカ」

 

 

ぷらずま「だ・ま・れ?」

 

 

わるさめ「ごめーん……」

 

 

フレデリカ「……、……」

 

 

 

【13ワ●:想題Frederica:マリオネット】

 

 

フレデリカ「史実砲を使おうとした際に、『艤装をつけているやつで、適当な兵士は』と、海の傷痕はいった」

 

 

フレデリカ「響さんではなく、飛龍さんを選んだみたいですね」

 

 

フレデリカ「史実砲は」

 

 

フレデリカ「1945年、終戦をラインに設定されている。つまり終戦を生き延びた艦に対して史実砲は必殺の意味合いを持たないようにされている。海の傷痕の生態からしても違和感は、ありません」

 

 

フレデリカ「青山さん、その辺りの情報は、ありますか?」



提督「そうですね。伝えてませんが、乙中将からの情報では1945年がラインにしてあり、それまでに死んだ艦適性者に対しての必殺に設定してあると海の傷痕は教えたそうです」

 

 

フレデリカ「だから、スロット2は、全艦に有効な万能の経過程想砲」

 

 

フレデリカ「艤装を破壊する性能は、『殲滅:メンテナンス』の実施のためです、ね。『障害となる兵士の艤装を破壊し殺さないため、かつ、壊:バグに対しては効果的』なので『無力化』を優先した性能かと」

 

 

フレデリカ「そして、海の傷痕がキスカで使った攻撃は、あの海の捜査情報と、青山さんからの情報と照らし合わせて、海色の想と妖精工作施設の併用で産み出した比較的知能の高い深海棲艦と、経過程想砲、です」

 

 

フレデリカ「殺しを嫌う海の傷痕は、経過程想砲で艤装を破壊し無力化した」

 

 

フレデリカ「これを『最低限の応戦』としたことで、殺害自体は深海棲艦にさせたと、思われます」

 

 

フレデリカ「だから私があの艦隊に持たせたダメコンによる復活からの2度目の決死への対処が遅れた」

 

 

フレデリカ「『艤装の想や装備を軸に戦力を測った』ことで『素質の今を進化していく人間の力にしてやられた』のかと」

 

 

提督「……、……」

 

 

フレデリカ「青山さん、中枢棲姫さん、この説はどうでしょうか……」

 

 

提督「正解だとしか、思えません」

 

 

中枢棲姫「同じく。海の傷痕は、今を生きる人間の力によって、被弾した、と確かにいっていましたね」

 

 

フレデリカ「戦力を侮って出す全力の程度を見誤った」

 

 

フレデリカ「あの阿武隈さんの素質は最高峰であり、私がいた頃の最強です。加えて史実効果発揮のキスカ領域。海の傷痕は……」

 

 

フレデリカ「奇跡の艦隊を侮った」

 

 

フレデリカ「一杯喰わされる羽目になった、原因ですね」

 

 

フレデリカ「恐らく海の傷痕は、我々が予想しているよりもずっと弱いです。ですが、それをひっくり返せるのが、海の傷痕の本質の想の力です」

 

 

フレデリカ「それは、あなた達も同じです。あなた達と海の傷痕の戦力は同等かと」

 


提督・中枢棲姫「……、……」

 

 

フレデリカ「そして、もう1つ。存在している艤装のなかで特異な艤装が1つ、あります」

 

 

提督「……艤、装?」

 

 

提督「……、……そう、か」

 

 

提督「響、艤装ですね?」

 

 

フレデリカ「はい。あの艤装は『特別』です。改二になるにおいて『響とは違う適性も求められ、精神影響が強い』のは」

 

 

フレデリカ「『本来適性のない深海棲艦艤装を身に付け、強い精神影響を与えるTipe:Trance』の違法建造と工程自体は酷似しています」

 

 

中枢棲姫「……その響艤装のシステムがあるからこそ、電さんやわるさめさんのような違法建造は可能な技術となっていた、のでしょうか」

 

 

提督「そこを深海妖精を利用してついてきたのは、正しく海の傷痕にとって『プレイヤーが製作者の予想を越えた一手』ですね」

 

 

フレデリカ「響とは違う適性も求められ、精神影響が強いのは、逆説的に響の適性がなくとも艤装を身に付けられる可能性自体は皆無ではないということ、です……」

 

 

フレデリカ「そのカラーリングと同じく艤装自体が真白の適性と、同じ。精神影響が強いのは、過去の響適性者の証言からして、新造されたヴェルの艤装にはもともとの想がないからです」

 

 

提督「ならば精神影響はないように思えますが?」

 

 

中枢棲姫「いえ、響適性者は、その歴史に空白を差し込まれる故の影響、なのでは」

 

 

提督「なるほど……でも軍艦としての想が、艤装にないとは。海の傷痕は想を回収するための目的のため、艤装を製造したのでは……」

 

 

フレデリカ「海の傷痕が最初期に初めて実装した『海外艦』であり、『1945のラインを越えた艦』でもあります」

 

 

フレデリカ「時期を照らし合わせると『海の傷痕が生を受けた頃にまだ生存していた艦』であり、『艤装の根底に眠らせておく想がなかった状態で実装を試みた唯一の改二』であり」

 


フレデリカ「IFの艤装であると思われます」

 


フレデリカ「海の傷痕の個性が大きく影響していると思われます。鬼ごっこ、だなんてし始めるやつですから、そういった遊び心があってもおかしくはないです」

 

 

フレデリカ「それが製作秘話です」

 

 

提督「……、……」

 

 

フレデリカ「そして拝見させてもらった資料ですが、他と違って過去の響適性者は、殉職した響改二の艤装を使用した場合でも、全世代の適性者の夢を見たという記述はないみたい、です」

 

 

フレデリカ「響自体の適性者はレアでないにも関わらず、誰一人として」

 

 

提督「艤装に、適性者の想が溜め込まれない、真白を保ち続けると?」


 

フレデリカ「そう、なります。容姿のイメージと同じく白の兵士、です」

 

 

提督「何のためにそんな艤装を……いや、ゲームクリアのギミックの1つ、としてでしょうか」

 

 

フレデリカ「でしょう、ね。今の状況的に、海の傷痕が設定した自身への有効艤装かと」

 

 

フレデリカ「史実砲自体は榛名さんや雪風さんといった艦娘にも必殺の意味合いを持たない装備だとは思いますが」

 

 

フレデリカ「経過程想砲は有効です」

 

 

フレデリカ「しかし……」

 

 

フレデリカ「その両方が効かない兵士が、います」

 

 

フレデリカ「史実砲と、経過程想砲の両方が通用しない艦娘が1名」

 

 

フレデリカ「終戦以降に名を変えられ、史実砲の対象外で」

 

 

フレデリカ「その想が艤装になく」

 

 

フレデリカ「また適性者の想が溜め込まれない白のため」

 

 

フレデリカ「想を探知し繋いで送る。想を質量化することで損傷を与える経過程想砲すら無効化します」

 

 

フレデリカ「最終決戦の、イベントにて」

 

 

フレデリカ「導き出される『想の軍艦:海の傷痕』の特攻艦、は」

 

 

フレデリカ「素体に艤装を身に付けるという手段でIFの未来を歩む」

 


フレデリカ「賠償艦でありながら、その過去の想を艤装自体が持ち得ない。そうして史実とは異なる今を有することで」

 

 

フレデリカ「対海の傷痕において信頼できる軍艦となる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレデリカ「『Верный』」

 



 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

フレデリカ「というルビを振られた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレデリカ「『響改二』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2

 

 

中枢棲姫「異論はありません」

 


水母棲姫「……」

 

 

卯月「おい司令官はどうなんだ」

 

 

提督「信用できますね」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

提督「作戦に組み込もうと思います」

 

 

阿武隈・卯月・間宮「!」

 

 

提督「さて、フレデリカさんに1つ聞いて欲しいことがあります。先日に、元帥から自分は」

 

 

提督「『お前が先だったら、フレデリカになっていたのはお前だった』といわれました」

 

 

提督「『今のお前があったのはフレデリカがいたからだ』と」

 

 

阿武隈「それは違います! 提督は絶対にそんな道を進みませんっ!」

 

 

提督「腹を割りますね。自分はわるさめさんが加入した辺りまで『戦争終結のために、皆さんを死なせること自体に躊躇いはありません』でした」

 

 

提督「むしろ、殺してまでも戦争を終結させてやるという気概でした」

 

 

提督「フレデリカさんが残した情報がなければ、もしかしたら、電さんやわるさめさんのような存在を作っていたのは自分であったのかもしれません」

 

 

阿武隈「っ」

 

 

ぷらずま「今は違うので安心して欲しいのです、と念のためにフォローを」

 

 

提督「そして元帥さんはこういいました。『フレデリカはお前と同じで途中で気付いたのではないかな』と」

 

 

提督「瑞穂を壊してしまってから、気付いた。彼女をなんとかするために、春雨や電を犠牲にしてまでも取り戻したい人だったんじゃないか、と」


 

水母棲姫「――――!」

 

 

提督「フレデリカさん、自分には分からなくて。どうなんでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

フレデリカ「多分、」

 

 

 

 

 

 

フレデリカ「違い、ます」

 

 

3

 


「人間を人形のように扱えました。人間は、自分の意思で生きていると思っても、その根本にあるのは、幼き頃に叩き込まれた教育という名の洗脳」

 


「教育という糸のついたマリオネットのようなものです」

 

 

「そんな風に、人間を見てました。だから、私は提督に適性があった。そういった役割を担う誰かは戦争には必要不可欠だからです」

 

 

「そんな私が提督としてこの新造の鎮守府に着任が決まった時に」


 

「瑞穂が、秘書官を名乗り出てくれました。彼女とは何度か授業の模擬で、指揮を執ったことがありました」

 

 

「瑞穂はいいました」

 

 

「『あなたは昔の私と似てます、ね。人の顔色伺うみたいにびくびくして。あまり人間がお好きじゃないでしょう?』と、なぜか私のこと」

 

 

「見透かしてた」

 

 

「他に秘書官候補を探すのも面倒だし、彼女は知的に分類されていたので彼女にお願いした」

 

 

「優秀だ、天才だ、と持ち上げられた私は異例で、新米中佐にも関わらず、新造される鎮守府に提督として着任することになりました」

 

 

「期待には、応答しないといけません。その責任を感じて、またびくびくと怯えました」

 

 

「瑞穂は、そんな人形を抱き締めている変な私を、秘書官として支えてくれました」

 


「私はある日、書物を読み漁り、妖精の二面性に気付いた」

 

 

「そうして装備妖精、艦載機の操縦妖精に当てをつけ、陸地に誘うことに成功し、深海妖精を発見した」

 

 

「その時、深海棲艦建造のシステムを見抜き、深海妖精との意思疏通により、深海棲艦艤装を艦娘にまとわせる可能性に気付いて、試しました」

 

 

「極秘に行ったのは、戦争を終わらせるためとはいえ、非人道的な人体実験となるからです」

 

 

「戦争を終わらせる目処が立つと説明すると、瑞穂は、いいですよ、といってくれた」

 

 

「戦争終結のための貢献、その期待にどんな形であれ、応えなければ、と私は必死でした」


 

「瑞穂に7種を投与した際に解体不可能となり、その先は、死の危険が漂っていた。まだまだ、です。色々な深海棲艦艤装を投与して、試さなければならない。どの深海棲艦艤装も組み込めるのか。どの組み合わせが強いのか。精神影響のメカニズムは?」

 

 

「もっと調べるために新たなサンプルがいる」

 

 

「そこで目をつけたのが」


 

「大人しく、引っ込み思案で、母の治療費を稼ぐためにこの海にいなければならない。丸め込みやすかった」

 

 

「駆逐艦、春雨」

 

 

「口先で騙して、無理やりにトランス型にした。それから先の彼女は、精神影響が瑞穂と違った」

 

 

「でも、彼女を丸め込むことは、なんとか出来、」

 

 

 

 

 

ドガッ!

 

 

わるさめ「聞きたくねえよ。黙って聞いてたけど限界だ」

 

 

わるさめ「有効な情報を、提示したから黙って聞いてあげたけどさ」

 

 

わるさめ「ふざけんなよ。あの時、私は、お母さんのために、って思って戦ってたのに」

 

 

わるさめ「もう一人の私が責めるせいで、死にたくてしょうがなかったんだよ! これがどれだけ悲しいことか、今の私は昔以上に理解したよ!」

 

 

わるさめ「私のことを考えてくれて、この町の英雄だからって、応援してくれていた人が故郷にいたから!」

 

 

ドガッ!

 


「痛っ」

 

 

「瑞穂も春雨も電も、私の戦争を終わらせるための駒の域を出ていません」

 

 

「私は、人形しか、愛せないイカれたやつです。周りはそれでもそんな私を賢いと、天才だと持ち上げた方もいますが、違います」

 

 

「この鎮守府に来て、驚いた。一目見ただけで」

 

 

「春雨さんも、電さんも」

 

 

「卯月さんも、阿武隈さんも、間宮さんも、鹿島さんも」

 

 

「雰囲気が、変わってる。乗り越えたんだって、思った程に」

 

 

わるさめ「卯月にアブー、お前らからも、この厚顔無恥な女になんかいってやれよ」

 

 

卯月「おいもどき、フレデリカだと思って対話してやろう」

 

 

「私は、間違えたんですね」

 

 

「だから、心から思います」

 

 

「卯月さん、ごめんなさい」

 

 

卯月「――――っ!」

 

 

ドガッ!

 


卯月「なんで謝る! 謝ってどうなるんだ! 許されるとは思ってないはずだ。なら、お前の自己満足だろーが!」

 

 

卯月「それなら、うーちゃんも」

 

 

卯月「自己満足のために」

 

 

卯月「いってやる……!」

 

 

卯月「あの時、お前は海の傷痕の存在に気付いていたくせに、うーちゃん達を見捨てたんだろ……!」


 

フレデリカ「その、通りです。私はまだ可能性の1つとしてしか見てなかった神の存在を、キスカで察しました」

 

 

フレデリカ「海の傷痕によって、上手く隠していた悪事が全てが明るみになってしまうかもしれない、とびくびくして」

 

 

フレデリカ「あなた達全員が死んでいる時間に、隠蔽に勤しみました」

 

 

卯月「お前が、お前が、必死になって、その情報を踏まえて、艦隊のために、その頭を回せば」

 

 

卯月「全員助かってたかもしれない」

 

 

フレデリカ「いいえ」


 

 

フレデリカ「助かってました」

 

 

卯月「っ!」

 

 

フレデリカ「だって私はその時、あなた達の最期の通信を聞いて、海の傷痕の進路がこの鎮守府の方向に進んでいる、と気付きましたから」

 

 

フレデリカ「狙いは、鎮守府にいる 『私』か『壊:バグ』だと気付きましたから。だから、『交戦せずに海の傷痕の進路から外れた航路で全員撤退』と指示を出せば『阿武隈艦隊は海の傷痕の存在を確認しなかった』ので、『海の傷痕は自ら交戦はせずに深海棲艦を押し付けるだけに留まった』と思います」

 

 

フレデリカ「ならば、私はあの時、ほぼ確実に現実的な全員生還の指揮を執ることができました」

 

 

卯月「っ……う、あ…」

 

 

フレデリカ「あなた達が死んでくれれば、と。もしかしたら阿武隈の奇跡の力で、と、そもそも阿武隈の奇跡の力がこの神を呼んだのでは。ならば、阿武隈のせいだ。そんなこと考えて」

 

 

フレデリカ「私は隠蔽に勤しみました。あなた達の命は眼中になかった」

 

 

フレデリカ「ごめんなさい」

 

 

卯月「ふざけんなし……」

 

 

卯月「面倒見が良くて、うーちゃんがついた嘘でこじれた仲を、取り持ってくれた、由良さんも」

 

 

卯月「普段はかっこつけて強がっても、鎮守府に帰ると、実は怖かったって、泣きそうになってる菊月も」

 

 

卯月「うーちゃんに、戦い方を教えてくれて、いっつも前に出てくれた勇敢な長月も」

 

 

卯月「うーちゃんの初めての友達、軍学校の時からずっと一緒にいてくれた弥生もっ」

 

 

卯月「どこにも、いないんだ」

 

 

卯月「どこにも、いないのにっ」

 

 

卯月「この鎮守府にいると、ふと」

 

 

卯月「視線が無意識にっ」

 

 

卯月「みんなを探してるんだよ」

 

 

卯月「いるはずが、ないのに」

 

 

卯月「他のことやってたから、撤退の指揮を執りませんでした、とか……」ポロ

 

 

卯月「死ぬのを承知で、進ませた、とか」

 

 

卯月「うーちゃん達は、なんなんだ……」ポロポロ

 

 

卯月「見捨てないでよ……」

 

 

ドガッ

 

 

「ご、めんなさい」

 

 

卯月「謝るならっ」

 

 

卯月「返せよ」

 

 

卯月「みんなを返せよ!」

 

 

卯月「お願いだから……ひぐっ」

 

 

 

卯月「返して……!」

 

 

卯月「アブーもっ」

 

 

卯月「このクズにいってやれし……!」


 

阿武隈「……いいたいことは卯月ちゃんがいってくれました」

 

 

阿武隈「あの時の旗艦のあたしは、あなただけに責任を押し付けるつもりはありません」


 

阿武隈「あの時、あたしにもっと、能力があれば、何度も何度も何度も」

 

 

阿武隈「考えてっ」

 

 

阿武隈「みんなが死んだからって理由で、逃げた、あたしの弱さから目を背けて……」

 

 

阿武隈「今度はもう違います。こんなふざけた戦い、終わらせます。これ以上の痛みは歴史に刻ませません」

 

 

阿武隈「ここまで連れて来てくれたのは、あたしの中に燃料があると、ここまで歩かせてくれたこの鎮守府(闇)を信じて」

 

 

阿武隈「海の傷痕を、倒しますっ!」

 


阿武隈「そうしてこそ、この皆からもらった命という勲章は最高の輝きを帯びますから!」

 

ドガッ!

 

 

阿武隈「だからこの1発は、最期の戦いに備えて私情である迷いを吹っ切るためです」

 

 

ドガッ!

 

 

提督「痛っ! ちょ、阿武隈さん……?」


 

阿武隈「気づきませんでした! 深海ウォッチング辺りの提督も、フレデリカさんと同じだったとか!」

 

 

阿武隈「あたしは提督を信じていたのにっ! ムカついたので1発です!」

 

 

中枢棲姫「……ふふ」

 

 

阿武隈「間宮さんもこの機会に!」

 

 

間宮「では遠慮なく」

 

 

パシン

 

 

「っ」

 

 

間宮「あなたに提督の才能なんてありません。賢いと評価してあなたを褒めるような人も最低ですっ」

 

 

間宮「提督さんのことですっ!」

 

 

バキッ

 

 

提督「痛っ、自分ですか!?」

 


卯月「ったく、空気読めし……鹿島は?」



鹿島「……私はこの会が最後まで終わってから1つだけ」



中枢棲姫「では、スイキ」

 

 

中枢棲姫「いや、瑞穂さん」

 

 

中枢棲姫「フレデリカさんに、なにかいうことはありますか」

 

 

「――――っ」

 

 

阿武隈「ええ!?」

 


卯月「ちょ、ちょっと待て」

 

 

水母棲姫「……うーん、混乱するわよね。私は丁の准将のところで海の傷痕に捕まって深海棲艦にされたみたいなのよ。そうよねチューキ」


 

中枢棲姫「ええ、思考機能付与能力により深海棲艦であっても、知能が覚醒し、瑞穂の頃の記憶があります。艤装に貯まっていた想の記憶ですが」

 

 

水母棲姫「覚えてるわよ。あなたに実験材料のために、この身を捧げたことも、罪のなにもかもを」

 

 

水母棲姫「あなたの誕生日のために、お料理を間宮さんから教えてもらって、作ったこともね……」

 

 

水母棲姫「お料理は出来たけど、フランス料理は作れなかったから……」

 

 

間宮「あ、え、私もその時のこと覚えてますっ! 本当に瑞穂さん!?」

 

 

水母棲姫「そうね。でも今は見ての通りの水母棲姫スイキちゃんなの」

 

 

水母棲姫「フレデリカさん、だからもうあなたを支えてあげられないです」

 

 

「……」

 

 

水母棲姫「でも戦争に操られていたあなたは今、糸が切れたマリオネットみたいに地べたに這いつくばってます」

 

 

水母棲姫「成長してランクアップしたのだと思います」

 

 

水母棲姫「人形から、クズに」

 

 

水母棲姫「知ってて止めなかった私も同罪ですね。だから、こんな風な末路を辿るのも因果応報なのでしょう」

 

 

「ち、違……瑞穂は、悪くない」

 

 

水母棲姫「そんなこといえる、優しさがあるって私は知ってたのにね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ごめんね。

 

 

 

――――私はあなたを、

 

 


 

 

 

 

 

 

 

――――止めてあげられなかった。

 

 

 


 

 

 

――――秘書官じゃなくて、

 

 

 

 

 

 

 

 

――――道具に甘んじてました。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

――――まあ、神様はいましたから

 

 

 

 

 

――――ちゃんと私達に

 

 

 

 

 

 

 

 

――――罰をくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――瑞穂は、ずっとずっと、誰かに道具として扱われて生涯を終えましたから。

 

 

 

 

 

――――お互い、直に消えますね。

 

 

 

――――深海棲艦から死んだら、また人間へと産まれ落ちるのでしょうか。

 

 

 

――――今の私は罪深いことに、それを信じて空しく生きています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――地獄で、会いましょう。

 

 

 


 

 

 

 

 

――――ま、

 

 

――――やっぱり愚かな女であることを改めて自覚しました。

 

 

――――あなたを憎んでいますが、

 

 

 

――――瑞穂ことスイキちゃんは、

 

 

 

 

――――それでも、やっぱり。

 

 


 

 

 

 

――――ずっとずっとずうっと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――大好きな提督の、味方です。

 

 



 


4

 

 

水母棲姫「まあ、こんなもんね」


 

「――――青山さん」

 

 

提督「フレデリカさんのお話を聞いて全ての謎は解けました。フレデリカさん、あなたはこの後に及んで」

 

 

提督「隠している」

 

 

提督「この話を聞くまで自分は、あなたのことを『戦争終結のために悪魔に魂を売った天才』と認識していた」

 

 

提督「……人形しか愛せない、その心理のメカニズム、自己愛の流れ着いた目的のために、この戦争を利用し始めた」

 

 

「見当を、つけるのがお上手ですね」

 

 

「いった通り、瑞穂も、春雨も、電も、可愛い人形、でしかないのです」

 

 

提督「艤装そのものが普段は消失しており、彼女達の想により現界するトランス現象」



提督「かつて自分が考えていた深海棲艦を建造させない方法。兵士の輪廻を封じることにより、神に反逆する兵士の建造を目的としていた」



提督「違いますよね。あなたは海の傷痕の存在に気が付いていた風だ。戦争終結ならば、行き着くのは『海の傷痕を見つけ出すこと』と『抹殺』に焦点を合わせることにならなければおかしい」

 

 

提督「阿武隈艦隊が奇跡の力で遭遇した海の傷痕に食い付くべきだ。交戦させるのはいい。ただそれこそ、通信をこまめに入れて、海の傷痕の情報を入手に固執するべきなのに」



提督「隠蔽に走った。ただそれは阿武隈艦隊の殉職から組織のガサ入れを恐れてのこと。丁の准将と手を組めば、まあ、あなた達なら現実的に欺く策は捻り出せるでしょう。実際、その時でなくても海の傷痕を追い詰める手段があり、保身を優先したのかもしれません」

 


提督「ですが、あの時に全員生還の指揮を取っていれば、そのガサ入れを回避できるどころか、海の傷痕の情報さえ、手に入る。まあ、キスカの件はあなたにとっても予想外なのでしょうが……」



提督「艦隊を切り捨てた違和感……」



提督「さあ、フレデリカさん」

 

 

提督「そこの辺り、どうなのでしょう」

 

 

提督「と聞く前に1つ脅しておきます」

 

 

提督「あなたが深海妖精を調べて、海の傷痕まで辿り着いたのにも関わらず、その記録を執拗に隠蔽することが、どれだけ戦争終結に遠退くことか分かるはず。深海棲艦が艤装ベースなのも、想のことも気付いた上で」

 

 

提督「『戦争終結』よりも『壊:バグ』の研究を進めていた」

 

 

提督「あなたは『壊:バグ』に何を求めていたのでしょう」

 

 

「どうやらあなたは、賢いけれど、賢人ではない。頭が回るだけです」

 

 

提督「馬鹿みたいな過ちを犯し続けた人生ですよ……」

 


「深海棲艦の肉体は、艦娘のものである必要がないのも、どうせ知り得ているはずです。ならば」

 

 

「『艦娘艤装』と『深海棲艦艤装』の適性は別だと分かるはず、です」

 

 

「そして、深海棲艦の肉は、中枢棲姫さん達との情報のやり取りで肉体改修ができると知った時」

 

 

「『艦娘艤装適性のない人間が、深海棲艦艤装により、深海棲艦と戦う力を得ることが可能』であることを導き出した」

 

 

「……以上、です」

 

 

提督「なるほど、よく分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「あなたという人はこの後に及んで隠蔽するんですね……?」

 

 

わるさめ「お、おい、司令官がキレかけているぞ……」

 

 

提督「……そう見えますか」

 

 

提督「まず最初から嘘をついてる。自分が『瑞穂を治すためにバグの研究を進めた』と聞いた時に『違います』と答えた。それが、嘘」

 

 

提督「隠したいのなら『違う。瑞穂は、悪くない』と、いうべきではなかった。最後まで瑞穂さんにも隠すべきだった。だから、自分は」

 

 

提督「これから、あなた達に」

 

 

提督「最悪なことを言わなければならなくなりました」

 

 

提督「こちらから、真実を語らなければ、自分の口からいうことも出来ないというのなら、いいます」

 

 

提督「深海棲艦艤装は、艦娘の想が詰め込まれた艤装です。その深海棲艦艤装を艦娘艤装適性のない人間がまとうことが出来る」

 

 

提督「そして、あなたの人形しか愛せないその性格……」

 

 

提督「最初から瑞穂を、深海棲艦にするつもりだったのでしょう」

 

 

提督「妖精になる、のではなく、深海棲艦になる、と見ていたのでしょう」

 

 

「はい。深海棲艦化していく、と見ていただけに8種を調べた時に妖精化していっていると気付いた時は動揺しました」

 

 

提督「なら8種で瑞穂が自壊したことは、予想外の事態だったと。だから、初めて一人の研究を止め、リスクを承知で丁准将と手を組んだ」

 

 

提督「なぜなら『瑞穂が艦娘でも深海棲艦でもない状態では、目的が達成できない』からです」

 

 

提督「治さなければなりませんよね」

 

 

提督「常に人形を持ち歩くほどの異常性癖」

 

 

提督「あなたの目的は」

 

 

提督「『瑞穂を艤装という人形』にして『自分の肉にまとう』ことで『一体化する』ことなのですから」

 

 

「――――っ」

 

 

提督「そりゃ隠蔽しますよね……」

 

 

提督「目的を達成したあなたは戦争の中でしか生きられない命ですから、戦争終結へと続くレールは残さない」

 

 

提督「中枢棲姫勢力が欲しがる海の傷痕の情報を濁し続けますよね」

 

 

提督「この戦争を終わらせたい気持ちなど、深海棲艦のシステムを知った時から失せていたんですから」

 

 

提督「むしろ、戦争が続いていたことのほうが都合がいいのですから」



水母棲姫「……」

 

 

提督「違いますか?」



「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――それのなにが、悪いの?



5

 

 

ぷらずま「……あー、やっぱりフレデリカはフレデリカですね。こんなオチだとは思っていたのです」

 

 

ぷらずま「瑞穂さん、まだ庇うのです?」

 


「黙って、ください」

 

 

ぷらずま「っ、石を投げますか」

 

 

提督「……」

 

 

「あなた達に突き付けて差し上げます」


 

「空しさを」

 


「鎮守府(闇)」

 


「春雨、電、卯月、阿武隈、間宮、鹿島」

 

 

「あなた達がいるから、この鎮守府(闇)は、私が提督だった頃の鎮守府と」

 

 

「本質はなにも変わっていません」

 

 

卯月「なんだと……」

 

 

わるさめ・阿武隈「……」

 

 

「結果を最重要視してきたあなた達です。勝利に固執するために、どんな手も使ってきた」

 

 

「その壊:バグの身体で苦しみがあった? 最悪? そう吠えるのであれば」

 

 

「『壊:バグ』の力を利用しているのは、決定的な卑怯です」

 

 

「今のあなた達がいるのは、鎮守府(闇)があるのは、この提督を信頼しているのは、私という」

 

 

「存在があったからこそ」

 

 

「私の全てを否定するというのなら、その恩恵に預かって、笑い、喜び、絆を深めたあなた達は」

 

 

「全員、この場で命を絶つべきです」

 

 

「いつもそう。人間は自分のことばかり。自分が傷ついたことばかりを叫び、傷つけたことは声を大にしない」

 

 

「醜い……」

 

 

「春雨、その身体にした私を殴りましたが、ではなぜまたその身体にした提督は殴らない?」


 

「それは、事情が変わったから。お前の、自分勝手な」

 

 

「感情でしかありません」

 

 

わるさめ「っ」

 

 

「いうなれば」

 

 

「私は詐欺師で、青山さんは手品師」

 

 

「騙すのは同じ。しかし」

 

 

「通報とスタンディングオベーションの違い。人間の人間による人間のための洗脳教育の賜物ですね」

 

 

「いや、やっているマジックの種は私のほうが高度ですらあります」

 

 

「責めるのは、私自体ではなく」

 

 

「行為であるべきなのに」


 

「取扱う人間の自己責任とすることで、根源を取り除くことをしない」

 

 

「交通事故を起きるからという理由で、車は、なくならない」


 

「人形師の私の母と同じだ」

 

 

「父は交通事故で死んで、こんなことなくなるべきだ、といいながら」

 

 

「翌日は車に乗って、店へと向かう」

 

 

「人間は、マリオネットだ」

 

 

「分かりますよね? 分からないはずがない。違法建造(改造)が取扱い注意の非人道的手段であるのは」

 

 

「ねえ、春雨さん」

 

 

「あなたは電と違って力が手に入って、それを受け入れましたよね?」

 

 

「姫や鬼を倒して、お母さんにとって、自慢できる娘になれるかもしれなかったから」

 

 

わるさめ「――――っ!」

 

 

「なのに怒る。そしてまた建造したという。あなたの怒りは都合が良すぎる。自分勝手で滑稽すぎる」

 

 

「糸のついた人形にしか、見えない」

 

 

わるさめ「……、……」

 

 

「その糸は、母親に孝行していた卯月へと繋がっていたのは見えてます」

 

 

「原因が因果の糸を繋ぎ、今ここがある。本当に0から自分の意思で人間が人生を歩むのはあり得ないこと」

 

 

「保証されている自由は、嘘っぱちだ。自らの意思で誕生を決定した赤ん坊がどこにいる。そして生まれたと同時に選択の余地なく国の文化を叩き込まれる」

 

 

「その中で青山さん」

 

 

「あなただけは人形ではなく」

 

 

「薄っぺらい紙切れに見える」

 

 

「大層な知識をお持ちでも、あなたのような人間に本は本当の知識を与えない。心が薄っぺらく見えるのは、あなたはきっと私と同じような人間であるから。どこか人として出来損なっていたからです」

 

 

「赤ん坊に本を与えても、それを読み聞かせる母親役が必要だ」

 

 

「その赤ん坊は本を読まずとも、内容に見当をつけられたという悲劇。だから、あなたの言葉はどこか知ったかぶりで薄っぺらい」

 

 

「本の知識は、読み手に確かな歴史がなければ、その真実を糧として読者に与えない」

 

 

「だから、あなたという知識とお話していると、こう思う」

 

 

「自らが手に取って開いたわけでもない本のお喋りを聞くのはうんざりする」

 

 

提督「――――っ!」

 


ぷらずま「……」

 

 

ドガっ!

 

 

ぷらずま「いわせておけば……!」

 

 

「い、たい、です」

 


ぷらずま「お前と司令官さんは違う。お前の頭脳は『救世』を成しても、その犠牲に伴わなければならない『救済』を他人に押し付け、拭わせたのです!」


 

ぷらずま「私やわるさめさんの身体には、兵器としての価値が存在しなかった。深海棲艦は私達を見て、戦争を止めないのですから! 海の傷痕がいる以上、深海棲艦は消えないのですから!」



ぷらずま「兵器が降らす血の雨は抑止力と、軍需による潤いをもたらせなければ、それこそ」



ぷらずま「『化物』じゃないですか……!」



ぷらずま「絶望と壮悲を撒き散らしてなお、『フレデリカによる戦争終結に繋がる新発見の功績』を私達が利用したから、否定するべきではないというのなら……」

 

 

「否定するべきでは、ないのです」

 

 

ぷらずま「まるであの頃の私なのです! ならば核兵器を打ちまくって人類殲滅して戦争に終止符を打つ行為を肯定しなければならなくなります!」

 

 

「必要ならば笑えないほどの現実を甘受する。それが本当の、覚悟だ」

 

 

ぷらずま「お前の『人道を伴わない文明の悪用は、国家反逆罪』です!」

 

 

フレデリカ「『結果的に革命の狼煙』だ」

 

 

ぷらずま「目的のためにそうしたのではなく、生粋の魂で人を人形として扱うC級戦犯が……!」

 


「人形であることは、罪に直結しない。その過程の糸による因果でしかない。段々と、線が曲がってきています」



ぷらずま「お前とこの鎮守府(闇)は違います! どちらも闇を抱えていても水と油であり、どこまでも交わらない平行線なのです!」

 

 

「ほら」

 

 

「感情で吠えるから、」


 

 

 

 

 

「ズレる」


 

 

 

「ズレてしまったから、」

 

 

 

 

 

 

 

 

「平行線は交わる」

 

 

「私は自分が誰よりも愚かだと知っている。だから、誰よりも賢くあれたのでしょう」

 

 

「誰よりも賢くあれたのは、私が人間の知能を有した人形だったから」


 

 

「あなた達の多数決で決まっただけの自己満足であり、人間殺戮の本能を持つ海の傷痕とは『共存共栄は不可能』というだけはありますね」

 

 

「なるほど」

 

 

「『心』に『欠陥』という『粗悪』」

 

 

「青山さん、中枢棲姫さん、あなた達はその頭脳を買われているようですね」

 

 

「海の傷痕の目的が分かりますか?」


 

提督「想を集めて、海の傷痕:此方を人間として反転建造により産み出すことが、最大の目的であるということ」

 

 

提督「ですが……」

 

 

中枢棲姫「私も、同じですね。他に目的があるのかも、というのはありますが、定かではありません」

 

 

「全然、違うと思います」


 

「私が整然な資料に目を通して導き出したのはキスカの真実そして対海の傷痕においてのВерныйの有用性」

 

  

「そして海の傷痕の『怒り』です」

 

 

提督・中枢棲姫「……!」

 

 


 

 

「『想題:海の傷痕の第1の目的』」

 

 

 

 

 

 

 

――――私と討論をしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

――――私の功績を利用しながらも、私を間違いといい、

 

 

 

 

――――鎮守府(闇)は正しいと、

 

 

 

 

 

――――あなた達は答えた。

 

 

 

 

 

――――ならば、私は世界でも敵に回しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

――――人生とは、理不尽をかわして生きていくこと。

 

 

 

 

――――私は間違いではない。絶対的に正しかったことがある。

 

 


 

――――じゃないと、それを証明しないと、

 

 

 

 

――――『死んだ瑞穂』が報われない。

 

 

 

――――失って初めて愛したことに気付いた人のため。

 

 

 

 

 

 

「ねえ瑞穂、あなたはこんな私でも」

 

 

「『大好きです』といってくれました、ね」

 

 

「私なりに、応え、ます」

 

 

「応えてきたつもりではありますが、そうじゃなくて」

 

 

 

 

水母棲姫「……」

 

 


――――伝えても伝わらなければ、意味が、ないもの。

 

 

 

 

「1歩間違えば、青山さんは私だったという、ギリギリでありながらも、平行線であると」

 

 

「交わらないと、まるで盤面の紙切れを眺めて、私達の平行線は交わらないと」

 

 

「例えこの戦争における私達のレールが平行線であっても、曲面球体に置かれたここでは、遥か遠くでその線は交わるのです」

 

 

 

 

――――海は、真っ直ぐを否定する生き物ですから。

 

 

 

 

――――ここの海から引いた『平行線:人間艦』は、


 


 

――――波風に揺られ、

 

 

 

――――完全に真っ直ぐに進むことが出来るはずがないのですから。

 

 

 

――――直線に進み続けた1次元など、この海にあり得ない。

 

 

 

 

――――なぜならば、終結しない戦争など、ありはしないから。

 

 

 

引かれたレールはここから見える、

 

 

 

遥か彼方の暁の水平線で、

 

 

 

収束するという事実こそ真なのですから。

 

 

 

 

 

 

 

――――最上位の天才と、

 

 

 

――――神からそう評された私が、

 

 

 

 

 

 

――――お二人に逆ネジを食わせて差し上げます。

 

 

 

 

――――私は間違っていたのかもしれないけれど、

 

 

 

 

 

 

――――私を信じたあなただけは闇から、救い出します。

 

 

 

――――私という提督の幽霊船をいまだ肯定するあなたに、

 

 

 

――――死んだ『Frederica:人形』と『瑞穂:道具』へ。

 

 

 

この無機質で虚ろな硝子玉が映した鎮魂論を、



捧ぐ。



 

さあ、進んでみましょうか。

 

 

 

 

 

 

 


――――必ず、交わりますから。

 



 

 

 

 

 

その地点の存在証明までの言の葉の音が、

 

 

瑞穂と私の、

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 

 

――――『Fanfare:祝福』、だ。

 

 

 


 

 

 

 

 


 

 


【14ワ●:Fanfare. Frederica】

 


「海の傷痕は」

 

 

「自らを墓に入れたがっているのですよね?」

 

 

提督「ええ、本官さんこと仕官妖精はご存じですよね。資料の通り、深海妖精可視の才能を配っている特別な妖精であり、あなたも自ら確認したのかは知りませんが、確実に会ったことがあるはずです」

 

 

提督「彼いわく『海の傷痕は自らの入る棺桶を探している』とのことです」

 

 

「お二人は『決戦にて想を回収してそれを此方の感情とし、吸収した後に反転建造にて此方を産み落とす』といいましたが、何故でしょうか」

 

 

提督「まず1つ、当局の此方の溺愛振りは凄まじいです。海の傷痕の生態に関して、此方の為に融通を利かし、本能に矛盾する部分がこの『艦隊これくしょん』には多すぎます」

 

 

提督「大本営での海の傷痕の言葉ですが……」



提督「『この戦争形式にしたのはな、当局の本能に此方が抵抗したことが起因する』」



提督「『友がいた』」



提督「『その友が此方を生んだ』」



提督「『愛している、のかな。それ故だ。おかしなものよな。愛など当局には備わっていないものなのに此方はなによりもそれを欲した』」



提督「『人間として生を受ければ人間として生きてゆくが、貴方達にも名前があり、個人としても生きてゆく。それと似たようなものだと認識してくれていい』」



提督「『当局が本能のままに生きれば、この戦いは今のような形をしてはいなかった。それこそ大戦火に人を殺し続けていた悪霊だったろうて』」



提督「『当局は人間を殺戮する悪霊の権化ではあるが、此方は人間を愛する想の塊である』」



提督「『そんな本能もないのに、此方は母性本能と少女の心を欲しがったのだ。だから艤装に蓄える想は女性からのものであり、10~20代の歳の女が建造可能にしてある。成長が止まるのは老化による手間を省くため。当局が船に対して女性的なイメージが多いのも、ある。適性率のブレはそこらの調整がシビアだからである』」

 

 

提督「ここから導きだした結論です。この『艦隊これくしょん』において、この戦争形式の至るところに此方の願いが散りばめられています」

 

 

提督「人間の殺戮本能を人間が受け入れられないからこそ、海の傷痕は共存不可能でありながらも、愛した此方を社会に適応させる手段を編み出すとなると」

 

 

提督「海の傷痕という生物から解き放し、『想の力を扱えない生物として産み落とす』ことだけが此方を我々と共存させる手法です。そして、それは現状、上手く行っています」

 

 

提督「海の傷痕を消すことで想の力は消えて通常の反転建造という手段では此方は想を命としている深海棲艦に過ぎず死亡してしまいますが、思考機能付与能力といった諸々の細工で人間自体に近づけることは可能」



提督「当局が死ななければ済む話です。もしも、当局が死んでも此方が生きていける手段があれば、それを達成するのが当局の目的と化してもおかしくありませんね」



提督「我々の決戦は海の傷痕を消すことですから此方も、消します」



提督「海の傷痕の存在は我々人類の未知であり、舌なめずりをする人は多いです。なのに抹殺第1と決まったのは、制御不可能である点が大きく影響しています。空想1つで人類が滅ぶほどの力ですから。しかし、人類としては海の傷痕の持つ想の力は」

 

 

提督「時代を遥か彼方に超越させる『人類史に例を見ない宝箱』です」


 

提督「この発見だけで、対深海棲艦海軍における功績は税金の元を取れるリターンです。日本は海の傷痕と戦いに指定されている。人間の都合も含めると……」



提督「海の傷痕であった此方は殺す必要はなく、むしろ『海の傷痕の抹消、そして可能ならば此方の鹵獲』が最大の戦果かとなりますね」

 

 

提督「その欲は勝ちが遠退きかねませんが」



提督「此方を女性として産み落とすことが目的ならば、当局にとって『艦隊これくしょん』の運営はなるべく長引かしたいが本音、であるというこちらの結論にも『ゲームクリア:海の傷痕打倒』に設定されているのも、矛盾はしません」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「………、………」

 

 

提督「最終決戦は艤装に蓄えた総を回収して、その『海の傷痕此方の誕生のため』の総仕上げです」

 

 

提督「当局は此方を愛しているのは疑いようもなく、そして此方さえ生存できたのなら我が身の生死をいとわない。正しく懇親の愛といえましょう」

 

 

中枢棲姫「……フレデリカさん、海の傷痕は我々中枢棲姫勢力のバグを放置しておいたのは」

 

 

中枢棲姫「『貴女方は異常ではあるが、別に放置して構わない存在だと判断した故である。家族ごっこやっていろ、当局の慈悲である』と」

 

 

中枢棲姫「そして我々が怒りを見せた時に、このような想へと成長するから放置しておくのも悪くはない、といっていましたから」



中枢棲姫「……想に関するナニカが目的であるとは、現情報からしても間違いはないと思います」

 

 

中枢棲姫「それが回収とするのならば決戦という舞台をこしらえるのは効率的です。なので海の傷痕当局の生態からも外れてはいません。我々は総力をあげて潰しにかかり、戦場に役者は全てそろい、戦争をしますからね」

 

 

中枢棲姫「その決戦で海の傷痕の目的を考慮した最有力の説は、此方の現海界です」

 

 

中枢棲姫「海の傷痕という生態から分離し、産み落とされた此方が『ただの上質な人間の女性ならば確保し、持ち得る情報を解析する流れ』は目に見えます。『海の傷痕:此方』はそうして人間の輪に入ること自体は可能ですから」

 

 

中枢棲姫「それが海の傷痕当局の入る棺桶であり、海の傷痕此方の生の獲得。そう解釈するのが妥当であり、自然なのでは」

 

 

「そうですね、そもそも此方を産み落とす方法は反転建造だという根拠はなんでしょう」

 

 

提督「失礼。先程の鬼ごっこでの新規の情報なのですが……」

 

 

提督「『当局は決戦にてこの艤装を破壊し、想の還るべき器であるこの我が身に宿す。オリジナルの感情をベースにした当局の【艤装:此方】にその想と思考付与能力を与えることにより此方を人間の女性として現海界させることが目的の1つ』だと」


 

提督「艤装に思考付与能力を、与えることにより人間の女性として現海界させる。これは反転建造システムです」



「反転建造によって産み落としても、艤装が核の深海棲艦生態です。想を管理している海の傷痕を倒せばその此方も死ぬのでは?」

 

 

提督「いや、出来ると思われます。人間の身体を用意することは可能ですから。フレデリカさん、あなたの存在で確証となり得ます。身体は深海棲艦ではなく、人間ですよ。海の傷痕の想の力を燃料にしているので、妖精と人間の間、といったところでしょうか」

 

 

提督「そこに想を入れて起動させたのなら、感覚は身に付いていく。ただの妖精ならば知っての通り、役割に忠実ですが、あなたは妖精とは違いすぎる。あなたが自分の言葉を喋るように、想は始まりの役割を担っている。生きた歴史は、海の傷痕の想の力から分離されます。それこそオリジナルの人間と化すギミックでしょう」

 

 

「なるほど、オリジナルの感情を欲すなら、その方法で適性者を作らないのも頷けますね。しかし」

 

 

「反転建造にて現海界させる時点で『人間の女性』ではありません」

 

 

提督「なにを以てして『人間の女性なのか』という議論は不毛かと。人間の女性に含まれた意味は『人間として生きていく』ということであり、それこそが、人間しかいないこの戦争の現れから伝わるニュアンスでもあります」

 

 

提督「海の傷痕の殺戮本能を除去することで相互理解はより面倒な経過が短縮され、共存は可能になるのです」

 

 

提督「あなたの造った『壊:バグ』がそれを証明してもいます。わるさめさん、電さんは我々と共存しているのですから、そのままでも人間として生きていくことは可能です」

 

 

中枢棲姫「私からも付け加えることと、反論がありますね」

 

 

中枢棲姫「フレデリカさんは、反転建造によって産み落としても想を管理している海の傷痕を倒せばその此方も死ぬ、といいましたが」

 

 

中枢棲姫「死なない方法はあります」

 

 

中枢棲姫「それこそが『壊:バグ』です。わるさめさんの解体可能な身体、そこから海の傷痕を倒して想の力が消えて深海棲艦艤装から解き放たれても」

 

 

中枢棲姫「『違法建造が解体可能な艦娘は、死なずに浄化作用を受け、人間に戻るのです』」

 

 

中枢棲姫「なぜそうなるのか」

 

 

中枢棲姫「違法建造の壊:バグは深海棲艦化ではなく、妖精化していくからです」



中枢棲姫「そうならないことが電さんの7種から。これこそ壊:バグが深海棲艦艤装の投与によって想の塊である妖精化していくという証明の裏付けです」

 

 

中枢棲姫「つまり、此方を壊:バグとして産み落とせば、当局が消えて想の力が途絶えても、此方はそれで人間となれるのです」

 

 

「此方を人間として産み落とすことが目的ならば、当局が死亡して想の力を亡くすことまでが、過程です。当局の死によって此方は完成するのですから」

 

 

「だから、当局が潔く死なないというのはおかしい。当局が我が身の生死をいとわないほど此方を愛しているのなら尚更です」

 

 

「いや、お二人は海の傷痕と当局のほうに焦点を合わせ過ぎていますね」

 

 

「此方の目的は何だと思います?」

 

 

提督「……人間として産み落ちること、ですかね」


 

提督「当局と此方の折り合いをつけた方法こそが、この戦争ゲーム、では」

 

 

「それは『仕官妖精とたもとを別つまでの目的』かと。視点を変えて見ると、違和感が浮き彫りになります」

 

 

「此方の目的は、何なのか」

 

 

「『なぜ海の傷痕はその最終決戦において、兵士の艤装を破壊して蓄えた想を回収しなければならないのに、ペラペラとその効率を下げてしまう装備や生態の情報を漏らすのか』」

 

 

中枢棲姫「『個性』、『我々をなめている』、『それほどまでの強敵であることは疑いようもない神』です。私からしたら違和感はありません。そして勝機になり得る点です」


 

提督「です、ね。それが『ゲームクリアの調整の一環』であるのかと。海の傷痕にとってはこちらに勝機を与えてなお、想の回収を行わなければならないリスクこそが『人間でいうところの不完全とならざるを得ない、弱点』です、かね。まあ、そのお陰でこちらの勝利は不可能ではなくなります」

 

 

「少し突飛な論、です。当局のみで捉えたのならば、そうなりますが」

 

 

「此方の目的も人間として生きることなのでしょうか」

 

 

「上質な想、つまるところ『良い女である此方が、自分のなかで結論を出して自分のことしか考えていない』ということになりませんか?」

 

 

提督「……そこに焦点を合わせると、人によって変化し、曖昧になります。難しいところですね」

 

 

「この違和感こそ、この疑問の親なのですが」

 

 

「人間となり、人間として生きていくこと自体が目的ではないから『海の傷痕は自分が死ぬかもしれない戦い:ゲームクリア可能』に設定したのではないのでしょうか」


 

提督「……、……」

 

 

「私の愛は歪でも、真実で渾身です。だから、私の視点では、海の傷痕の愛に関して、全く別の見解を導き出すのです」


 

「突発的な未知現象、人間による工作の賜物は、戦争妖精を産み落とし、その海の傷痕は」

 

 

「仕官妖精こと、本官さんによって、その本能を目的のための手段に変えた。此方が本官さんを、当局が此方を愛する故です」


 

「自らの棺桶を探すようになったのも『当局と此方の目的の一致』でしょう」


 

「人間を愛し、人命を尊重する此方が全力で成し遂げなければならないことが1つだけあります」

 

 

「海の傷痕が唯一、どんな手段を用いても完全に制御するのは不可能である現象があります、よね?」

 

 

提督「……あ、」

 

 

提督「トランス、現象」

 

 

中枢棲姫「……、……!」

 

 

「発生原因は人間(mother)の想によるもの。ゆえに『海の傷痕の存在発生原因は人の想に質量が与えられた未知の生命体』でしたか」

 

 

「海の傷痕すらも、自らの意思で誕生を決定したことのない赤ん坊」

 

 

「その海の傷痕を産み落としたのは母である人間の想そのもの。トランス現象は人の想そのものが起こした災い。海の傷痕は我々の因果の結晶。あなた達は必ず第2の海の傷痕を産み落とすでしょう」

 

 

「繰り返すのでしょう」

 

 

「確かに、海の傷痕の存在は人類が戦争を起こせば、人類が意図しない巨大な戦争が誘発されてしまう。それは世界政治が変革されていかざるを得ない理由とはなり得ます」


 

「ですが、その政治を行うために」

 

 

「『人間の価値観に変革をもたらす過程が必要不可欠』です。国家を揺るがしかねない根底の部分にメスを入れていく必要があり、今の体制では」

 

 

「どのくらいの時間がかかるのか」

 

 

提督「……、……」

 

 

「青山さん」

 

 

「海の傷痕の再出現の阻止についてのお考えは?」

 

 

提督「大本営で応答した通りです。『再出現の阻止』は海の傷痕を倒すだけでは達成されず、想を生む源である人間自体に革命を起こす必要があり『再出現阻止はもはや不可能』に近い、ですね」

 

 

「ならば」

 

 

「海の傷痕は怒って当然でしょう」

 


「棺に入りたい。しかし、入ったところで」


 

「あなた達が彼を呼び覚ますのだから」



提督「……!」



「海の傷痕は自分のことを熟知している。『本官さんではなく、人間を愛する此方ならば、海の傷痕という存在は毒であると理解できる』のです」

 

 

「いえ、誰もが理解できますね。だから我々は海の傷痕と戦争しているのですから」

 

 

「『人類に第2の海の傷痕を産ませない』」

 

 

「それが『人命を尊重し、人間を愛する此方』の『目的と棺』です」


 

「海の傷痕は、人間(mother)の想こそ誕生原因、ならば」 


 

「海の傷痕は、第2の新たな海の傷痕を阻止すること自体は可能です。人類を根絶すればいいだけです。しかし」

 

 

「此方には『人命を尊重して人間を愛している』そして『なるべく人を殺さない傾向』がありますね。だから『人類を消滅させるという確実な方法』を取らない」

 

 

「この説からも此方は『人類のために第2の海の傷痕を人類に産ませない』こととなり、優しい人格を持つことは証明できる」

 

 

「その手段に『本能である戦争を利用していることで当局と共存している』のです」


 

「海の傷痕当局が人命を尊重している理由について、聞いてみたいです」

 

 

提督「此方を尊重する故です。当局自身は人間の殺害に躊躇いはないです」

 

 

中枢棲姫「同意見です」

 

 

「仕官妖精は海の傷痕を倒す優しい想の持ち主を、探して深海妖精の可視を与えていたのでは?」

 

 

提督「ええ、確かに本官さんがそういっていました、ね」

 

 

「海の傷痕がその役割を許可したのですから、海の傷痕が自らを消し去れる可能性を持つ者の選別です」

 

 

「あなた達は」

 

 

「提督および艤装適性者は選抜された人類の代表者です。最終決戦にて『未来を良き方向に切り開く可能性』を、海の傷痕は確かめようとしている」

 

 

「そして海の傷痕は、先祖の魂はあなた達を信じているから、艤装を壊す、だけに留めようとしている。しかし、それは現状のお話」



「もしも今を生きるあなた達が」

 

 

「19世紀からなにも学んでいなければ、此方はあなた方に愛想を尽かす危険性があります」

 

 

「『第2の海の傷痕を産み出さない』」

 

 

「不可能を可能にするために海の傷痕は挑戦している」

 

 

「『Live myself to the fullest:今を最大限に精一杯生きている』」

 

 

「此方の手段は人命を尊重している」

 

 

「その此方が不可能を受け入れた時、つまりあなた達が最終決戦で過去の心に敗北した時」

 

 

「海の傷痕はその時」

 

 

「本来の怒りを発露するでしょう」

 

 

「此方の人命を尊重している手段で目的が達成できなかったのならば」

 

 

「次は」

 


「当局の手段に入れ替わる」


 

「当局はその人間殺戮本能が機械的かつ効率的に猛威を振るうでしょう。これが惨劇どころでは済まないという点は論議にすら値しない」

 

 

「人間殺戮によって目的を達成するのならば、想定されるターゲットは今を生きる人類全てへと移るからです」

 

 

提督・中枢棲姫「……、……」

 

 

「第2の海の傷痕を誕生させないために、想の力で人間が『改装』される危険すらある」

 

 


「異論は、ありますか」

 

 

 

提督「いいえ、此方の目的はそれでしっくり来ます、ね」

 

 

提督「此方を産み落として生存させることは、ケースバイケース、ギミックの1つとして見るべき、ですかね」

 

 

「細かいところは海の傷痕から聞かないとそれもまた推測なのですが、目的は第2の海の傷痕の誕生の阻止で間違いないと思います」

 

 

ぷらずま「し、司令官さん……」

 

 

わるさめ「マジかよ……司令官とチューキちゃんの上を行ったのか……」

 

 

中枢棲姫「……」


 

ぷらずま「こいつの論なんかを」

 

 

「電、議論するにおいて向かい合う論者に個人的な感情を含めた批難や否定をする時点で」

 

 

「私は馬鹿です、と主張しているのと同じです。賢者は淡々と意見を延べることで、整合性を求め、結論を導き出すのですから。個人的な怒りは今の議論において、生産性を脅かすだけです」

 

 

「テレビ番組ではあるまいし、そんなパフォーマンスは不要、です」

 

 

ぷらずま「……っ、ならば私から。反論はあるのです」

 

 

「……なんでしょう」

 

 

ぷらずま「それでは海の傷痕は何のために艤装の想を回収するのです。なぜ、女性のみなのです」

 

 

ぷらずま「その想の回収が『人類に変革をもたらし、第2の海の傷痕を誕生させないこと』と、どう繋がりが?」

 

 

「当局の目的に関しては、青山さんと中枢棲姫さんの説を推しますね」

 

 

「『なぜこの戦争は海の戦いなのか』」

 

 

「それが海の傷痕の個性によるものだというのに異論はありますか」

 

 

ぷらずま「ないのです」

 

 

「当局は此方とは違い」

 

 

「あなた達だけで、それが出来ると考えてはいないのです」

 

 

「そこが『当局』と『此方』の決定的な違いとなります」

 

 

「当局は此方を産み落とします。それが目的の1つなのでしょう。中枢棲姫さんのいう通りです」

 


「当局は此方を死なせたくはないのだと思われます」

 

 

「『上質な人間の女性ならば、確保し、持ち得る情報を解析する流れ』は目に見えます。『海の傷痕:此方』はそうして人間の輪に入ること自体は可能ですから、と中枢棲姫さんはいいました」

 

 

「そうなった此方は想の能力から切り離された海の傷痕です。此方の持つ情報と思考が『第2の海の傷痕を産ませない目的』に貢献するのは、疑いようがないですから」

 


「なぜ女性なのかは今更説明するまでもありませんが、『この戦争を始めた当初は海の傷痕当局は此方を女性として産み落とす目的しか持っていなく、人間として産み落とす際に男女のどちらかを選ばなければならないので、適性者は女性のままで進行して差し支えない、または新たな調整を行う労力を避けられる』からです」

 

 

「当局が殺戮によって人類を矯正したのならば、此方を王とするのが、自然でしょうか。用途は多数にあります」



ぷらずま「……、……」

 

 

ぷらずま「司令官さん、そうなのですか……?」

 

 

提督「最初の辺りにいった『オリジナルの感情をベースにした当局の【艤装:此方】にその想と思考付与能力を与えることにより此方を人間の女性として現海界させることが目的の1つ』」



提督「あくまで目的の1つ……と海の傷痕はいったそうですから」

 

 

中枢棲姫「まあ、そこに関してのフレデリカさんは少し暴論なところがありますが……大した意味は持たない、で構いません、かね」

 

 

「そうですね。海の傷痕当局の個人的な目的なので、艤装の女性の想を回収するという点から突破口は見つけられないと思います」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「フレデリカさん、嬉しそうですね。ケタケタ、といった幻聴の笑い声が聞こえそうな表情、です」

 

 

提督「……、……」

 

 

「そういう、あなたは」

 

 

「反論を探すのに、必死そうだ」

 

 

 

「なんてまともな愛情でしょう」

 

 

 

――――噛み締めた唇から血が出てます。

 

 

 

 

 

提督「ええ、悔しいです。あなたの説は、あなたの業を憎む皆さんにとって、残酷ですから……」

 


提督「もちろん、自分も、です」


 

「そう、ですね。電に春雨」


 

「深海棲艦と人間は分かり合える存在です理解出来ることは可能。しかし」

 

 

「殺し合いを目的のための手段として行使せざるを得ない沸点の状態。そこで起きる現象こそ人類の戦争」

 

 

「海の傷痕が産まれた戦争を亡くすために理解する必要があるのは、私達そのものです。そうでなければ現実的な解決策は見当違いの形で産み落とされます。この戦争に例えれば裏表の『理解』です」

 


「これに異論はありますか?」


 

わるさめ「……ないよ。チューキちゃん達のことも分かるから」

 

 

ぷらずま「深海棲艦の想も、理解できます。表裏を理解出来る。それがっ、強さと優しさであるとも、私は思いました……!」

 

 

わるさめ「でも、お前の罪が赦されるわけではない!」

 

 

わるさめ「適当な理屈でごまかせるところじゃないだろうが!」

 

 

ぷらずま「その通りなのです。あなたが正当化される理由とは別です」

 

 

「仕官妖精は海の傷痕を倒す優しい想の持ち主を、探して深海妖精の可視を与えたということに、青山さんは肯定しました」

 

 

「私も、選ばれたのですよ?」

 

 

「優しい想の持ち主として。実際、私の研究は、戦争を終わらせることに貢献している」

 

 

「この海では」

 

 

「私の優しさは、仕官妖精と海の傷痕にとって廃課金である青山さん、中枢棲姫さん、電さんと同格なのです」

 

 

わるさめ「でも、でも……」

 

 

「私が犯罪者である事実が変わらないのは最もであり、誠心誠意の心で認めさせていただきたく」

 

 

「ヒューマンシップに則り、反省しています」

 

 

「本題からそれましたが、伝えておきたく、この通りの土下座を行うことすら恥ずかしく思います」

 

 

「……しかし、私が論ずることが許可された場なので続けさせて頂きたい」

 

 

「罪と罰は法律という形で決定しており、もう制御できないところまで来ています」

 

 

「あなた達は教育を手放すべきなのです。あなた達に足りない相互理解こそ、お互いを赦し合う唯一の方法なのですから」

 

 

「法に触れたから間違っているのではなく、その法に触れる行為はなぜ悪いのか、まずはそこから見つめなければ」

 

 

「再発阻止には至らない。これこそ、あなた達が海の傷痕の再出現を阻止できないのと同じです」

 

 

「心で理解出来ていないから」

 

 

「過ちを犯さないと気付かない人が多すぎるから」

 


「今のあなた達の否定言動に先走っている感情が晒しているのは『受け入れられないから、理解を放り投げている己の器の程度』です」

 

 

「あなた達がそれでは海の傷痕に、敗北すると私は思いますが」

 

 

ぷらずま「あ、あ……」

 

 

「壊:バグの身体は」

 


「建造状態の艦娘が、深海棲艦艤装と一体化することで、細胞自体が変質します。人間の血液に含まれる血球の40%以上が、深海棲艦特有のモノと化して、なおあなた達が人間の形を留めて生命活動を保てるのは『海の傷痕』のお陰です」

 

 

「『ぷらずまさん』」

 

 

「あなたの抱える海の傷痕、その身体」

 

 

「深海棲艦を血肉としている。そこで人間の部分を象徴するのは」

 

 

 

「血漿(けっしょう)、でしょうか」

 

 

「医学的にはこうも読まれます」

 

 

「『血漿:プラズマ』と」

 


 

 

ぷらずま「この身体を受け入れることが出来たのは……」

 

 

わるさめ「理解出来るように、なったのはっ……」

 

 

ぷらずま・わるさめ「……」ギリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――この身体になったお陰。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦と一体化するという、

 

 

 

 

あなたの全てを否定することは、

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

――――『鎮守府(闇):私達』を否定することに、繋がる。

 

 

 

 


 

 

ケタケタ

 

 ほら、

 

ケタ、

 

 

 

交わった。

 

ケタケタケタ。


後書き










【●ワ●:10章終】
ここまで読んでくれてありがとう。

【1ワ●:異議ありです♪】

【2ワ●:響とВерный:два】
 
【3ワ●:ロスト空間と】

【4ワ●:Fanfare.Fredrica Ⅱ】
 
【5ワ●:決戦間近】

【6ワ●:最初の約束、覚えてますか】

【7ワ●:ちょこっとブリーフィング】

【8ワ●:決戦直前】

【9ワ●:暁の水平線に勝利を刻んでください!】

【10ワ●:想題当局:リヴァイアサン】


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