『さよならのゆくえ』 -after story1-
pixivの続編希望をいただいたため、後日談というかその後の話(cv神谷 〇)。
もしかしたら人によってはこのafter storyはいらないと言う人がいるかもしれませんが、その場合は読まないようにお願いします!
それではafter storyです!
[after story]
「せん…ぱい?」
「…ハァ、ハァ…ったく、ひきこもりを走らせんな…」
わたしの腕を掴んでいたのは紛れもなく先輩だった。
「ど…して?」
「いいから来い」
そう言ってわたしは学校へと連れ戻されてしまった。向かう場所はもちろんあの教室。先輩はその教室の前に立つと不愛想にドアをノックする。
「どうぞ」
すると中から懐かしいあの綺麗な声が聞こえてくる。
「連れてきたぞ」
「………」
先輩はわたしの手を引いて中へと入る。
「一色さん…」
「いろはちゃん…」
そこには雪ノ下先輩と結衣先輩がいた。
「じゃあ俺はちょっと出てくるわ。平塚先生にも挨拶したいし」
「えぇ…」
「いってらっしゃい!」
そう言って先輩はわたしを置いて教室を出ていく。
「……」
急に連れてこられて何を話せって言うんだろう…
「とりあえず一色さんそこに座ってくれるかしら?」
「…はい」
雪ノ下先輩に促されるようにわたしはいつもの席へ座る。久しぶりの定位置はいつもよりもひんやりとした。
「紅茶で良かったかしら…?」
「あ…はい、ありがとうございます…」
いつもと同じように返事をしたいがなかなか調子が上がらない。
「どうぞ」
と雪ノ下先輩はわたしの前にあのイルカのマグカップに入った紅茶を差し出してきた。
「…ごめんなさい…あなたのマグカップ…ずっと渡したかったのだけれどなかなか渡せなくて…」
「い、いえ、わたしが片付けの時とか来なかったからですし、先輩方もそれから忙しそうでしたから」
「…そ、そうね…でも私は有難いことに推薦が決まっていたし、比企谷君もそうだったから。そう考えると忙しかったのは…由比ヶ浜さんのせいね…」
「たはは…」
苦笑いを浮かべ、頭のお団子を触る結衣先輩。話によると結衣先輩はあたしも大学に行きたい!と急に言い出し、親を納得させるために浪人だけはできないと勉強を頑張ったらしい。その甲斐あってか、結衣先輩は見事志望校に合格。その度はお世話になりましたと雪ノ下先輩に頭を下げている。
わたしはそれを見て調子を取り戻そうと話を切り出す。
「そうなんですねー。あ、そういえば結衣先輩!遅れましたけど合格おめでとうございます!」
「ありがとーいろはちゃん!いろはちゃんも来年頑張ってね!」
「はい!ありがとうございます!」
「…由比ヶ浜さん…あなたは一色さんの応援をしてる場合じゃないでしょう?」
「う…」
雪ノ下先輩の発言に苦虫を噛み潰したような顔をする結衣先輩。
「大学に入って一人暮らしもして、大変なのはこれからなのだから他人の応援をしてる場合ではないでしょう」
「う~…そこまで考えてなかったんだよぅ~…」
「あはは…」
この二人は相変わらずだった。
「まったく…っと世間話もこれくらいにしないと比企谷君を待たせてしまうわね」
「あ、そうだね」
二人は話を急に止めると視線をこちらに向け、姿勢を正す。先ほどより幾分か目が真剣だ。わたしもその目を見て姿勢を正す。
「一色さん。ここからが本題なのだけれど良く聞いてね?」
「…はい」
返事をすると雪ノ下先輩は一呼吸置き、
「私は比企谷君に異性として好意を抱いています」
その胸の内を明かしてくれた。そして
「多分バレてると思うけど、あたしもヒッキーが大好きなんだ」
結衣先輩も。
しかし話はそれで終わりではなかった。
「そして…私達は奉仕部が無くなったその日に想いを彼に告げた」
まさかもう告白までしていたとは…
「そう…なんですね…」
多分先輩はこの二人のどちらかを選んだのだろう…
「ゆきのんと二人で話して、いっぱい話して決めたこと。じゃないとあたし達は前に進めないと思ったから…」
「…前に…進むですか…」
「いろはちゃんもさ?あの日『本物が欲しい』ってヒッキーの口から多分聞いてたよね…?それでね?あたし達はあれからずっと考えてた…本物って何だろうって」
わたしも本物を結局てに入れれなかった…
「でね?言葉って伝えなきゃ分からない。伝えたって全部は分からない。でも伝えなきゃ分からない。なんて言いながらあたし達は一番大切な気持ちを伝えてなかった…」
結衣先輩は雪ノ下先輩に視線を送る。
「この感情がある限り、私は由比ヶ浜さんに対しても比企谷君に対してもどこか壁があった。でもなかなか勇気が出せなくてただただ無為な時間だけが過ぎていった。まるで私が一人でこの教室にいた時のように…」
「だから、二人で決めたの。告白しよう、どんな結果になろうとそれでそこから始めようって、前に進もうって決めた…」
二人は…大丈夫なんだろうか…先輩はどちらかと多分付き合っていて、必然的に片方は…そんなのわたしだったらすぐには割り切れない…大好きな親友だからこそ…すぐには…
「それで…それでね?あたし達実はフラれちゃったんだ」
「え…?」
わたしは驚きのあまり声を反射的にあげてしまった。
「『悪い。二人の気持ちには答えられない』ってさ!」
そんなはずない。でも一つだけ理由が考えられるとすれば先輩は二人のことを気遣ってどちらも選ばなかったのではないかとわたしは思った。
「でね?あたし達はそれで満足だったんだけどヒッキーはさ、ちゃんと言ってくれたんだ『俺には好きな奴がいるから』って」
え…?先輩達以外で好きな人…?
「それで今彼はけじめをつけに行っているの。その子に想いを告げるために」
…あぁそうか…二人でもない、もちろんわたしでもない。ということは多分先輩はあの子に…そう思っているとふいに携帯が震えた。誰かと画面を見ると
”メール 比企谷 八幡”
と先輩から一通のメールが届いていた。
内容は一文だけ。
”空中廊下に来てくれ”
とだけ。その様子を見ていた雪ノ下先輩は
「一色さん。私達はもう想いを告げた。それで私達はやっと前に進むことができる。でもね?一人だけ、一人だけまだ前に進んでいない子がいるの…」
と告げた。その表情には嬉しいような、慈しむような、悲しいようなとても複雑な表情を浮かべていた。
「その子はね?この奉仕部の4人目の部員で、一生懸命で強くて…でもなんかほっとけないんだ。いつからか、ちょっと目を離すと一人でなんでもしょいこんじゃうようになっちゃって、自分のことより誰かをって、誰かさんみたいになっちゃって…すごい心配だった…」
結衣先輩は雪ノ下先輩に続くように言葉を紡ぐ。
「きっとそれはその誰かさんのそばにその子がずっといたからでしょうね…その誰かさんはきっとあなたを待ってるのよ。一色さん。あなたを常に一番気にしていたのは…比企谷君だったんでしょうから…」
「そうだよ!いろはちゃん!行ってあげて?ヒッキーきっと待ってる。いろはちゃんが来るのを」
(自分が傷つくことで、誰かが傷つくということ)
いつか平塚先生が教えてくれた言葉だった。そんなことを忘れてわたしは先輩達のためと、勝手に思い込んでいた。この人たちはそんなことを喜んでくれる訳がなかった。そんな事よりわたしの正直な気持ちを打ち明けなきゃいけない。
「結衣先輩、雪ノ下先輩。わたし、二人の事大好きです。だから言います。わたしは先輩が…比企谷先輩が好きです…」
「えぇ…知っていたわ」
「バレバレだったよ♪」
「…っ…だから…わたし行ってきます…フラれるかもしれませんが、わたし先輩に想いを告げに行きます!」
わたしが立ち上がると結衣先輩はわたしの後ろに立ち、一度ギュッと後ろから抱きしめてそしてドアの方へと背中を押してくれた。雪ノ下先輩はドアを開けて
「「行ってらっしゃい!」」
わたしの大好きな先輩二人はわたしを彼の元へと送り出してくれたのだった。
-終-
いかがだったでしょうか!もちろんafter story1ということは2もあります!3は分かりませんがおそらく次が本当に最後の話です!
あと、更新が少し遅れて申し訳ございません…ちょっとプライベートで事件が発生しまして…
まぁそんなことは言い訳にしかなりませんが次はなるべく早くあげます!
さて、いろはの恋のゆくえは一体どこへと向かうのか。読者様はきっともう答えを知っていると思いますが…(笑)
最後まで飽きさせずに書ければなと思います!
ではまた次も読んでください!感想待ってます!ではでは!
このSSへのコメント