いろは童話
ちょっと八色のファンタジーを書きたくなり、書きました。二番煎じかも…
こんにちは!nikehideです!
さよならのゆくえの途中ですがちょっと思いついてしまって…書きました。すいません…どちらも最後まで書くつもりなのでぜひ読んでいただければ嬉しいです。駄文ですがよろしくお願いします。
[お伽の物語]
それはいつもの放課後。いつものように奉仕部の部室で本を読んでいるとそこに来客を知らせるノックが響く。
「どうぞ」
いつものように雪ノ下がノックに応対する。
「せんぱ~いやばいんですやばいんです絶対やばいんです~!」
「げっ」
ドアが開けられ、突然来訪した客に口がひくっとしてしまう。なぜならこの客はろくな事を運んでこないからだ。
「なんですか~!そのあからさまに嫌な顔~!先輩目が腐ってるんだからそんな顔したら更にキモいですよ!」
むぅ~!とあざとく頬を膨らませたその客の名前は『一色いろは』。総武高校の現生徒会長。それでいてサッカー部のマネージャーもしている。亜麻色のサラサラとした肩くらいまでのショートヘアーで、目はパッチリしていて肌も綺麗。二年生では他を寄せ付けないくらいの容姿で、それでいて男を篭絡するすべも身に着けているから厄介だ。おかげで学年を問わず男子からはモテていて、女子からはとてもじゃないが好かれてるとは言えない。
俺も普通であれば関わる事はないくらいの上位カーストの人間。だがひょんな事から彼女と関わり、それ以来何かあれば面倒事を持って来てはあれこれ理由をつけて手伝うはめになってしまった…
「お引き取りください」
来るなり罵声を浴びさせられてはいそうですかと歓迎するほど俺は人間出来ていない。まぁ元から歓迎してないけどね。
「うわうわ、冗談ですよぉ~!怒らないでくださいよぉ~」
「ふん」
「それで今日はどうしたのかしら?一色さん」
入れていた紅茶に一つ口をつけ、まるで何事もなかったかのように依頼の内容を促す雪ノ下。
「えっと~…依頼というかまたお手伝いお願いしたいんですけど…」
依頼者が座る席にいつの間にか座っていた一色はどこか言いづらそうに雪ノ下に答える。ってかマジいつの間にそこに移動したんだよ…
「お手伝い?」
「はい!今度海浜総合高校がまた何かイベント一緒にやらないかって言われてて~」
「またやるの?」
由比ヶ浜が疑問を投げかける。
「そうなんですよ~…わたしも前回の事がありますし、やりたくないんですけど平塚先生が受けちゃったらしくて~…」
「またあの人が絡んでいるのね…」
こめかみに手をあててやれやれと言いたそうな雪ノ下。
「それで前回使ったコミュニティセンターを使って、わたしたちがやった劇みたいな事をやることになってるらしいんですよ~」
前回とはクリスマスにやったイベントの事で、あれ以来こうして一色は何かと奉仕部に来るようになった。
「あぁあれね!最初はどうなる事かと思ったけど結果的にはすごいいいイベントになったもんね!」
「それで今度こそ僕たちは音楽を担当するから脚本とかは任せるよみたい感じで言われてるんですよ~…」
心底めんどい…と言いたそうに机にうなだれる一色。
「つまりミュージカルのような形にするということかしら?」
「あ、はいそんな感じです!」
「ミュージカルとかすっごいね~!」
なにそれすっごーい!といった感じで目をキラキラさせる由比ヶ浜。君ちゃんとわかってるのかしらん?
「だがミュージカルだったら結構難しいだろ。時間とかは大丈夫なのか?」
「あ、はい!一応企画脚本作りで一ヶ月、練習曲合わせで一ヶ月くらい貰ってます」
「随分とスケールのでかい催し物ね」
「なんか、地元の協賛もあって結構マジにやるみたいなんですよ~…それで最初は自分たちで頑張って考えてたんですけど決まらなくて…」
なるほど。地元を挙げての一種の町興しイベントのようなものか。
「それで具体的に私たちは何を手伝えばいいのかしら?」
雪ノ下に促されようやく本題に入る一色。
「あ、はい。えっとですね…まず企画というか劇のネタを考えるとこからなんですけど…」
「そこからかい」
「だってこの話聞かされたの昨日ですし…」
昨日聞かされて今日泣き寝入りってどんだけ根性ないんでしょうか…この会長…なに?現代っ子に懸念される会社入って一週間とかで辞めちゃう子なの?あーゆうのって会社も悪いらしいけどな。入って間もないのにほとんど何も教えずに仕事やってみろとか言われて、いざやって失敗したら怒られるわ、分からない事質問すると、今手を離せないから違う人に聞けとかちょっとキレ気味に言われて、違う人に聞いても同じ感じのループで。ほんとどんな無理ゲーだよ…。ソースはバイトの時の俺。ほんと働きたくねぇなぁ…
「で、ちょっと雪ノ下先輩と結衣先輩には違う仕事をお願いしたいので先輩にお願いしたいんですけど!」
「いや、俺はほら、あれだ。忙しいから」
「大丈夫よ。一色さん。あれはいつでも暇だし、私たちも事前に仕事する日と内容を教えてくれれば依頼引き受けるわ」
俺の意見は無視ですか…
「え?そんな簡単に引き受けてくれるんですか?」
「まぁ今回の依頼は前回のクリスマスイベントの延長みたいなところがあるしね」
「あ、なるほど。ありがとうございます」
「でもヒッキーだけでいいの?」
「あ、はい!結衣先輩と雪ノ下先輩には後でご迷惑をかけるんで最初は先輩だけで大丈夫です!」
いやいや俺の意見は…なんて言ってもどうせ丸め込まれるだけだからやめておこう…
「じゃあ先輩借りていきますね~♪ほら行きますよ!」
と一色は俺の腕を掴んで廊下へ連れていく。
「は~い♪いってらっしゃ~い♪」
「わかったから手を離せ」
「いいから行きますよ~♪」
一色と俺は生徒会室ではなく、図書室に向かった。
「おい。生徒会室じゃないのか?」
「さっきも資料集めに行くって言ったじゃないですか~。図書室ならそれっぽいものありそうですし!」
ということで図書室で物語系の本を探して、それを少し改編して劇の物語にするらしい。
「せんぱ~いそっちにいいのありました~?」
放課後ということもあり、今日は図書室には俺と一色以外誰もいなかった。
「せんぱ~い?」
まぁ俺も本来であればこんなところに来ないで、帰りたいところなんだが…
「先輩!」
「うぉ!びっくりした~!」
いつの間にか一色が近くにいて俺の腕を引っ張ってきた。
「なんで無視するんですか~!」
「いや、ちょっと考え事をな」
「むぅ~。あ!あれですか?可愛い後輩をどうやって襲おうとか考えてたんですか?そうやって二人っきりになったからって、襲おうとかちょっと場所がロマンチックじゃないですし、まだ学生の身なので出直してきてくださいごめんなさい!」
「いや、ちげぇから。ってかまたフラれんのかよ…」
「う~ん…あんまりめぼしい本ないですね~…」
「無視かよ…まぁ学校の図書室だしな…」
「ですよね~。…あ!じゃあ明日休みじゃないですか~」
「嫌だ」
「むぅ~…まだ何も言ってないじゃないですか~…」
「あ、すまん。反射的に」
「先輩の反射ってどうなってるんですか…で、明日なんですけど街の図書館一緒に行って資料探しません?」
「いや「先輩わたしどっかでこんな単語聞いたことあるんですよ~。『ほんも』」よし、一色明日何時だ?」
くそっ!このゆるふわビッチめ!
「あ♪じゃあ明日の朝9時千葉駅前でお願いしま~す♪」
「はぁ…」
こうして俺の休日は一日潰れたとさ…
時変わって土曜日の朝9時10分前及び千葉駅前。今日も今日とて休日出勤である。ってか一色来てから休日出勤多くない?なに?あの子ブラック企業のまわしもんなのん?
「すいませ~ん!お待たせしました~」
駅から一色がいつものようにあざと~くこちらへ走ってくる。周りの男どもも一色の方をちらちらと見てることからして、一色のあざとさは狙い通りだろう。ってかそんな手を振ってこちらに走ってくるな。恥ずかしいだろう!ほらあそこの人たちとか相手誰だ、え?あんな男と?みたいな顔してるじゃん!
「いろはすおっそ~い…」
「いや、そこは全然待ってないよって言うところだって前教えたじゃないですか!しかもなんですか!いろはすって!どうせならすを抜いて呼んでください!」
ぷんぷんって言いたそうに頬を膨らましてあざといったらありゃしない。
「あ、そうだっけ?すまんすまん忘れてたわ。全然待ってないよ!ということで帰ります」
「ちょっ!なにナチュラルに帰ろうとしてるんですか!」
「冗談だよ。んじゃ行くか」
「いやちょっとマジでしたよね?まぁいいですけど…じゃあ行きましょう!…て思ったんですけどわたし図書館とか行かないんで先輩どこに図書館あるか知ってます?」
「知らないんかい…まぁいいけどよ。じゃあ近くの大きい図書館に取りあえず行くか」
「はい!」
場所変わって大型図書館内。
「う~ん…なんかピンとこないんですよね~…」
「まぁいっぱいあるしな。気長に探そうぜ」
「はい」
「せんぱ~いちょっと疲れましたし休みましょう…」
「まぁいいけどよ。」
と読書専用の椅子に二人で腰掛ける。
「なんかいい感じの物語ないですかね~?」
「まぁあるとしたらグリム童話とかなら結構みんなに知られてるし、いいんじゃないか?」
「グリム童話?」
「え?知らんの?」
「?」
「まぁ本を読まない人はそんなもんか。あ、でもこれなら知ってるだろ。白雪姫とかヘンゼルとグレーテルとか」
「あ!名前くらいなら聞いたことあります!」
「内容は知らんのかい…あれならいいんじゃないか?」
「そうですねー。じゃあそれにしますか!」
「おう」
目的の本は決まったので係員の人にどこの本棚にあるか聞きに行ってみた。
「すいません。その本は現在貸し出し中になってますね…普段なら普通にあるんですが…つい昨日全巻借りていってしまった人がいまして…」
え、なんだよ…その奇特な人…ってかこのタイミングでって不自然すぎんだろ…
「…わかりました。すいません」
「どうしましょうか?」
「うーん…あ、そういえばもう一つ図書館みたいなところあったっけか」
「あ、じゃあそっち行ってみますか!」
ということで大型図書館を出て、目的の場所へと向かう。
「え?先輩ここが図書館なんですか?」
一色が疑問に思うのも無理はない。外から見ればどう見てもただの古びた建物。伸びたツルが建物に巻き付き、ちょっとしたお化け屋敷みたいな感じにしか見えない。
「あぁ。俺と小町が小さい頃に遊んでいて雨が降ってきたからここで雨宿りしてたんだ。そしたらここのお爺さんに中でお茶でも飲まないかい?って言われて入ってみたらどうやら図書館だったみたいでな」
「へ~。でもまだやってるんですか?」
「わからん。ちょっと入ってみるか」
珍しい洋風テイストの木製のドアを開けるとそこはどこか神秘的な雰囲気の図書館。少し薄暗い感じで高いところにある窓から入ってきている陽の光と、これまたアンティークなデザインの電球が一定の間隔で天井からぶら下げられている。
「すいませ~ん!」
と俺は係員の人を呼ぶ。すると奥の方からもう80になろうかという感じのお爺さんが出てきた。
「はいはい。お、これは珍しい。こんな若い子がうちに迷い込むなんて」
迷い込む?聞き間違いか?
「あの~グリム童話が載っている本を探しているんですけど…」
「ふむ。グリム童話だね?じゃあそこの梯子を上った二階にあるから探してみるといい。君たちの目当ての物語が見つかるはずだよ」
「あ、ありがとうございます。よし一色行くぞ」
「は、はい」
と俺と一色は目当ての場所へ丈夫そうな木でできた梯子へと向かう。すると後ろから
「梯子から落ちないようにね。あと物語と語らうときは心して。大切なのはお互いを信じることだよ」
そう言ってお爺さんは奥へと引っ込んでいった。
「なんか不思議なお爺さんですね…」
一色はお爺さんのいなくなった方を見て怪訝そうな顔をする。
「あぁ…まぁとりあえず探そう」
「はい」
二階に上り、目当ての本を探す。二階はまるで本棚の迷路みたいになっており、外観からは分からなかったが結構な奥行きのある建物らしい。
「意外と広いですね…なんか迷子になりそうです…」
無意識か、一色は俺の服の袖を掴む。
「だな…」
しばらく歩くと本棚から落ちたのか、俺と一色の前に一つの本が落ちていた。
「落ちたのかこれ?ん?」
拾って表紙を見てみるとそこには何も書かれていなかった。月日が経って擦り切れた訳でもなく新品のような触り心地なのにタイトルがない。
「なんだこれ?」
俺は疑問に思い本を開く。その瞬間-
「うわっ!なんだこれ!?」
「きゃっ!眩しい!!」
本の中から目を開けてられない程の光が俺と一色を襲う。
「くっ…うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「きゃあああああああ!!!!」
光と同時に俺たちを訳の分からない浮遊感が襲う。その瞬間俺の意識は途絶えた…
いかがだったでしょうか?といってもまだ物語の序盤なのですが、次回はファンタジー展開です!ちょっと前置きが長いと思われるかもしれませんがすいません…
では次回も頑張って書きますのでよろしくお願いします!さよならのゆくえも同時進行で書いていきたいと思います!
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