さよならのゆくえ:前編3
さよならのゆくえ:前編の続きです。
お待たせしました!
さよならのゆくえ:前編
の続きです!
[微笑ましい光景]
先輩の胸で泣いたあと、わたしはお化粧直しをしていた。無論そこは恋する乙女、以前に女子高生だ。ちゃんとTPOはわきまえている。少し曇った鏡に泣きはらした目をした女の子がいた。いやわたしだった…
(はぁー…いっぱい泣いちゃったなー…しかもまた先輩達の前で…)
だって嬉しかったから。あんなに人との関わり合いを軽薄なものだと思っていたわたしが奉仕部の仲間だと心から認めて貰えていることがどうしようもなく嬉しかった。
(それにしても…先輩にハグしてもらえたぁ~…えへへ///なんかいい匂いしたなぁ…)
そう。小町ちゃんの提案とはいえ、あの先輩が女の子を、ましてやわたしを抱きしめてくれるとは思わなかった。しかもなんとなでなで付き。
(頭撫でてもくれた…なんというかすっごい心地よかったなぁ…)
先ほどまで泣いていたわたしも、嬉しい事がいっぱいでいつの間にか頬が緩みっぱなしになっていた。
(そろそろ戻らなきゃ心配かけちゃう…)
―ガラガラ
「あ、いろはちゃん!大丈夫?」
「もう大丈夫です!ご迷惑をおかけしました!」
と深々と頭を下げる。
「いいのよ。一色さん。元はといえばそこの…ひき…ひきた?…くんが悪いのだから。」
「ねぇ雪ノ下さん?ほんとに忘れたのそれ?ってか名字を忘れるってことは小町のも忘れてるってことになるんだけど?
「何を言っているの?私が可愛い後輩の名字を忘れるわけないじゃない。ねぇ?比企谷小町さん?」
「はい!ニカー」
「おい。小町ちゃんもそんないい笑顔で元気よく返事しなくていいからね?何?小町と俺は家族じゃないの?血つながってないの?……って待てよ?それあるんじゃ…」
「ある訳ないでしょ。ごみぃちゃん」
「ふふふっ」
そんな微笑ましい光景を見てつい笑ってしまっていた。
「…やっと笑ったな…」
(あ、なるほど。先輩達気つかってくれてたんだ。やっぱ好きだなーこの人達)
「なんですか。ちょっとわたしが微笑んだからって俺のこと好きなんじゃないかとか少し考えが甘いので出直してきてくださいごめんなさい」
「はいはい…それ言えればもう大丈夫だなってかまたふられんのかよ…」
(ふふっこのやり取り大好きです♪先輩とわたしだけのやり取りみたいで♪)
「はい。一色さん紅茶のおかわり」
と、先ほど座っていた場所に雪ノ下先輩はマグカップに入った紅茶を出してくれる。
「ありがとうございます。…先輩もありがとうございました!これ大切にしますね?」
「おう。まぁ…その…なんだ?使ってやってくれ…」
「はい!えへへ///」
「いろはちゃんってそんな顔もするんだ…!」
結衣先輩がこちらを向いて目をパチクリさせている。
「え!?ど、どんな顔ですか///!?」
「い、いやなんか…見たことない顔だったなー…って思って。あははー…」
つい口から出ちゃったみたいな顔をしてる結衣先輩
(まさか…勘づかれてないよね…?)
「あ、そ、そういえばさ!知ってる?なんか男子の間で極秘でやってる校内可愛い子ランキングって!」
「あ、小町知ってます!小町も見ました!」
「わたしも見ました!」
(そういえばマグカップの事で忘れてた…)
「校内…ランキング?何なのかしら。それは」
「これだよゆきのん!あたしもたまたま拾ったんだけどさ!校内で可愛いと思う子を学校中の男子全員で投票するの!ランキングは五位までしかないんだけど」
「…下らない…人を外見だけの優劣だけで順位を決めるだなんて」
「だ、だよねー!でもさちょっと気になるよね!」
「そうかしら。私は特に…」
(あらあら雪ノ下先輩も素直じゃないな~)
「先輩は~誰に入れたんですか~?」
ちょっと爆弾を投下してみました(笑)
「は?」
わたしがそれを言った瞬間全員の視線が先輩に向かう
「お兄ちゃん?誰に入れたの?小町に教えて?」
きゃぴるん♪とする小町ちゃん。ほんとわたしを見ているみたい…
「いや、バカ。ぼっちにそんなもん来るわけないだろ」
「でもここ男子全員分の投票数になってるよ?」
「そうね。丁度合っているわ」
それを聞いて顔をひきつらせる先輩
「ぐっ……まぁもちろん小町だ。それ以外に入れる訳がない」
「「「「…はぁー…」」」」
一斉にため息をつく私たち
「な、なんだよ」
「まぁ先輩ですもんね…」
「うんヒッキーだし…」
「ごみぃちゃんだ」
「シスコンも大概ね…」
「う、うるせっ」
ふて腐れたように読んでいた小説に目を落とす先輩。
「でもさ!この一位の四扇 栞って子どんな子なんだろうね!一年生でゆきのんより上って事は相当美人ってことだよね!!」
「あ、その子わたしの同じクラスの友達なんですよ~」
「え!そうなの?どんな子どんな子!?」
(う…そうぐいぐい近づかれると結衣先輩のおっぱいの圧力が半端ない…)
「えっと、一言で言うと超絶美人です。わたしから見てもあれはやばいです」
「いろはちゃんがそこまで言うって相当だね…!」
「そうなんですよ~。あ、ていうか~この前話した先輩がナンパしてたのってその子なんですよ~」
―ピシッ
その瞬間そんな音が聞こえるくらい空気が凍った。気がした。
(あれ?寒い…間違って冷房でも入ったかな?)
「比企谷君」「ヒッキー」
(あ、寒さの原因はここでしたか!テヘッ☆)
「ち、違うんだ…い、一色ぃ~!!お、お前ぇ~!」
その後先輩を見た者はいなかったという…
あれ?デジャブ?(笑)
―――――
[最初で最後の依頼]
放課後。最近出来た友達と駄弁りながら廊下を歩いていると、
『生徒会一色いろは職員室まで来たまえ』
わたしにも関係の深い先生から呼び出しをされた。
「ごめん。なんだろ?行ってくるね!じゃあまたね!」
「「「まったね~」」」
みんなとお別れし、生徒会長たるもの廊下は走れないので早歩きで職員室へ向かう。
「失礼します」
ここには何度も来ているがこの独特の雰囲気はいまだに慣れない。まぁあまりいい思い出もないので。
「来たか。こちらへついて来たまえ」
近くにいた平塚先生から声がかかる。この先生は見た目はとても美人だし、スタイルも抜群だ。ただ、なんというか…性格が残念というか、とても言動とかカッコイイんだけど、それのせいか未だ独身である。
「何か言ったかね」
「い、いえ…」
(こ、こわっ…心読めるの!?)
生徒指導室に連れて行かれ、わたしと平塚先生は向かい合わせに座っていた。
「何か飲むかね?」
「い、いえ。お構いなく」
「そうか。なら話を始めよう。突然呼び出してすまなかったな。」
「い、いえ」
「ふむ。…何か懐かしいものがあるなこの感じは」
と言いながら平塚先生はぷっと噴き出していた。
「へっ?」
「いや、すまない。つい一年前の事を思い出してしまってな。丁度このくらいの時期だったんだよ。彼を奉仕部へ入れたのは…少し話してもいいかね?」
(彼…奉仕部…というと先輩のことだ。)
「はい…」
「ありがとう…きっかけはなんだったかな。確か…そう。授業で出した課題だ。」
「…課題?」
「あぁ。『高校生活を振り返って』というテーマのな。それはもう酷かった。青春を謳歌していないものの方が正義だの、リア充爆発しろだのとな」
「ぷっ、先輩らしいですね」
ほんとに先輩らしい。今でも言いそう(笑)
「あぁ。それで奉仕部へ連れて行った。丁度もう一人問題児がいてな」
「雪ノ下先輩ですね?」
なんとなく想像はつく
「あぁ。彼女は比企谷と違い、素行、学業は優秀だったが、その性格がな…」
「雪ノ下先輩はキツイ時ありますもんね」
ほんとに怖いときは怖い…マジ氷の女王って感じ
「雪ノ下は孤独だったからな。なまじ姉の背中を追いかけるが故に周りにかまける余裕がなかったのだろう」
確かにあのなんでも出来そうなはるさん先輩が姉なら、プライドの高い雪ノ下先輩ならそうなるだろう。
「だから今の奉仕部を見ているとあの時の選択は間違えていなかったのだと思う。あの子たちは変わった。今のあの子たちを見ているとつくづく思うよ。」
感慨深そうに話す平塚先生。
「いや、根本的な部分は何も変わっていないのだろうな。変わったのは関係性と他人に対する考え方だな」
(関係性と他人に対する考え方…)
「人を傷つけるという怖さ。自分を傷つけるという怖さ。自分を傷つけることで他人が傷つく怖さ、とかな。恐らくこれは比企谷が一番学んだことなんだと思う。だから彼は人を変える。雪ノ下も由比ヶ浜も恐らくクラスの連中も。葉山あたりは特にその傾向が強い。」
(確かに。この一年で葉山先輩は大きく変わった気がする。あれも恐らく先輩の影響なんだろう。特にマラソンの時なんかは二人で話していたらしいし…)
「そして一色。君もな…」
平塚先生はこちらを向き、とても優しい目をしてわたしに告げた。
「…はい」
「いい返事だ。自覚していたようだな。まぁここ最近の君の行動を見ていると特にそう思うよ。クラスにも友達ができたそうじゃないか」
「はい。おかげさまで」
普通のことなのに、人に話すと少し照れくさい感じがした。
「良かったな。大事にするといい。友人は一生ものだからな。」
「はい」
「それと…君にとっても奉仕部は今や大事なものの一つなんだろうなと思う。」
「…わかりますか」
「あぁ…正直部活動をほっぽり出してまで行くのは関心しないが、まぁそれは私の知ったことではないからな。管轄外だ。」
「…すいません」
「ふふ…そんな嬉しそうな反省はいらないよ」
「それで…ここからが本題だ。」
真剣な目に変わる平塚先生。
「いつかは終わらせなければいけない。今年で彼らはもう三年生だ。時期を見て文芸部員だろうと部活は引退してもらう。」
「…はい」
「…驚かないんだな。…まぁ君のことだ。わたしがここへ呼んでこんな話をした時から薄々気づいていたんだろう。」
今年で先輩達は三年生。何かと受験で忙しいし、部活動に気を取られていては学業に支障が出る。総武高校は進学校だしなおさらだ。
「彼らが引退するということは自動的に奉仕部は廃部になるだろう…元々あの二人の更生の場だったんだ。その二人が引退すれば必然的に奉仕部は必要がなくなる。」
「はい」
「正直私も奉仕部を廃部にするのは辛い。まさかあの場が君たちの大切な場所になるとは思っていなかったからな…」
恐らく平塚先生に取っても奉仕部は特別なのだろう…
「今はまだいい。ただ覚悟はしておいてくれ。厳しい事を言うが、いつまでも先輩達に甘えてばかりでは先輩達も安心して卒業できない。卒業式の日、君が今年も会長を務めるかは分からないが、送辞で彼らを安心させて送り出してあげてくれ。それが…」
「君への、奉仕部の新たな一員への、最初で最後の依頼だ」
ー終ー
読んでいただきありがとうございます!いかがだったでしょうか!今回最初はオリジナルキャラの栞ちゃんを使ってストーリーを進めようと思っていたのですが、
小町が入学して間もない➡春➡丁度一年前くらいがオレガイルの始まり
という構想が出来てしまって…
って事でいろはと平塚先生の話にしました!
会話文が多いため少し見づらいかもしれませんがご容赦を。
次回からは後編スタートしていよいよオリジナルキャラを使ってストーリーを進めたいと思います!のでどうぞ最後までお付き合いください。よろしくお願いします。
このSSへのコメント