飛龍「やっぱり、好きだなぁ……」
【飛龍とのケッコン未だ為さざる提督諸氏は閲覧注意】
背景の説明に文量を取られ過ぎてしまいましたが……これは短編なので多めに見てください。
また、本SSは概要と上記要素以外の以下の注意を含みます。ご了承ください。とは言っても、どちらも軽微なものだとは思います! まずは読んでみてください!
・飛龍のクーデレ要素
・蒼龍のヤンデレ要素
私に課せられた「役目」は、鈍重なものだった。いやいや、それはない? ひとに依る? そんなのどうだっていい。これは私の話。
私には重い、と言うより、やりづらい。艦隊の主力になって、味方を引っ張っていくご大層な存在なんか、私には不似合いだ。事実、力不足な局面も何回と数えるまでなくあったし、そもそもそういう設計がされているわけでもない私だ、土台がなっていないのさ。
でもそれも、提督に言うことだけは憚られた。だってあのひと、限りなく信頼の念のようなものを敷き詰めた目をして言うんだもん。いつからかは忘れたけど、そんな提督になんとか応えようと思うようになっていった。でも結果はさっきの通り。理性も結果に後押しされていた。
なのに私の欲が、本能が、身体が、提督の役に立とうと必死にあがいてやまなかった。だから私はそれに力を尽くした。いつの日だったか、私は蒼龍に続いて「第二次改装」にあやかり、また最強の雷撃隊を手に入れた。私は更に出撃の機会を与えられた。
この第二次改装を経て、私は明確に蒼龍を「ライバル」として意識するようになった。蒼龍は少なくとも、私と同じ境遇にあったことは変わらない。違っていた点はと言えば、恐らくだけど「想いの丈」なんだと思う。蒼龍はきっと、その役目を精力的に務め上げてきたからこそ、第二次改装に先んじて至ったんだ。違ったとしても、こう思えばこそ私の足は前へと向かった。負けるな、勝ち抜けと言わせんばかりに。
私がこの内なる「想い」に気が付き始めたのは、蒼龍が「ケッコン」を果たしてからだった。さっき、想いの丈に違いがあったから、なんて言ったけど、私と蒼龍に差があったのは、蒼龍はもっと早くから提督に想いを寄せていたからだったんだろう。
「こないだ、『烈風』ってのを開発したら提督に抱きしめられちゃった……んん」「ほらほら! 見て、この写真! 二人で撮っちゃった」「ふゎ、眠い……あ、飛龍。提督が呼んでたよ、出撃がんばれぇ」「————ぁ。——————ん! 飛龍? おぉい? ————?」
例を挙げたらキリがないわね。蒼龍はとかくノロケたがるから、「チョンガー」の私は聞くたびに取っ組み合いを仕掛けていったけど……契機はやっぱり第二次改装のあとから。それから、私は対抗心を燃やすようになった。幸いにも、私は放蕩者のきらいがあるとみんなには思われていたから、提督にちょいちょいとちょっかいをかけるようにした。それで私の心が異常に満たされていって、反対に蒼龍は気を悪くしていたなぁ。
私はそれまで、どうだろう————たぶんだけど、奉仕すると言う意味で役立とうとしていた。艦娘が深海棲艦を打倒する最たるもの、それは意志であり遺志。撃ち滅ぼすことの方に比重を置いたもの。
これが逆転して、私の意志は「提督のため」という私的なものに書き換わった。なんでだろうか、そうなったあとの方がより多くの戦果を挙げられるようになった。「友永隊」のおかげかな? それともケッコンした蒼龍が秘書艦任務に専念するようになったから? たぶんどっちとも。それが結果として、私と提督の距離をもっと近しいものにしていった。それがたまらなく嬉しかったし、蒼龍への対抗心を更に強いものにしていった。
私が優先していたものは、もしかしたら提督への想いを果たすことより、蒼龍への対抗意識だったのかもしれない。これは未だに心の中で決着がついていない。まあでも、過程はどうであれ、私は今が好きだ。ああ、私はどっちとも好きなんだろうって、そう結論づけようかな。
蒼龍「————飛龍。提督が呼んでるよ」
飛龍「——ゎ、わ。ビックリしたぁ。急に何さ? 私は非番でしょ?」
まったく間が悪い。狙った? なんて恐ろしい、ケッコンユビワの効能なの?
蒼龍「うん。 だ か ら でしょ。早く行ってきなよ」
飛龍「…………えぇ」
今の間といい、すごみといい、今日の蒼龍は目に見えておっかないなぁ……私が何をしたってのさ。
*
惰性で流されて、私は見慣れた執務室の扉を目前にした。
そう。見慣れた扉。でもさっきまで考えていたことがことだから、少し気恥ずかしさを感じてる。
えぇい、臆するな。「私」は、これで怖気づくような者じゃない!
私はこれを振り切るように、ノックも無しに部屋に入った。
提督「——あぁ。来たか、飛龍」
飛龍「えぇ、まぁ。でもよかったの? 蒼龍とお楽しみだっただろうに、私なんか呼んじゃって」
提督「語弊を招くような言い方を……いいんだ。お前を呼ぶ理由があったから呼んだのだし」
飛龍「…………理由?」
それまで部屋の窓から外を見ていた提督は、この言葉を皮切りにして動き出した。変に解釈するな。ただ机に向かっただけじゃないか。そう、話とやらをするために腰を落ち着けたいんだ。
提督「そうだ」
椅子に腰かけ……ない。机の引き出しを開けた。その段は、蒼龍がよくノロケた時に話題に出す、ぁ————
途端に溢れてきた。好きだって感情が。
そう——私のこれは、確かに有ったものだったのね…………そう……。
提督「これをお前に、渡そうと思って」
これからは、私にもそうしてくれるのね。
飛龍「————私にも、くれるのね」
提督「それは、まぁ、な。蒼龍を想うのと同様、お前のことも想っているからな」
————その笑顔。
蒼龍によく見せていた、その気恥ずかし気な笑顔。
飛龍「もう一回、見せてよ」
提督「……え?」
飛龍「その笑顔。もう一回、見せてよ」
提督「………………」
飛龍「…………そう、それ。好きだなぁ」
飛龍「やっぱり、好きだなぁ……」
海軍隠語で「ノロケ」は「エヌ」って言うんだって。「チョンガ—」は「独身」。(まめしば)
ラブコメ書けないんでうらやましいです。これからも楽しみにしています。頑張ってください。
≫1
ありがとうございます!
自分もラブコメなんて書けてませんよw 好きになる過程とかモロにすっぽかしていますし…見よう見まねで書いてみたらいかがですか?
二航戦こそ至高…!
汚れた心が浄化される
≫3
改めてケッコンボイスを聞いてみたらヤバかったですね///
だがカープには負けない(小並感)
≫4
浄化……w シリーズというわけではないのですが、もうしばらく続けてみますね!