一色いろはの波乱な誕生日7
いろはの誕生日を題材にしたssです。
シリーズ7作目
[link_sstoko: SS投稿速報作品URL ]
え?なに?私にケーキ?
いろは「これって…」
八幡「いや、なに、誕生日ケーキだけど。まぁサイゼのだけどな。」
これサプライズだよね?先輩からのサプライズバースデーケーキだよね!?
八幡「ほら、今日1日付き合わされたけどおめでとうって言ってなかったろ。」
いろは「あ…たしかに…」
八幡「今更ただ言うだけってのも変な感じだからケーキ付けただけだ。いらないならおれがたべる。」
いろは「え?いえ、貰います食べます美味しかったです!」
八幡「それは食ってから言え…」
気が動転して変な事を言っちゃった。
やばい、嬉しすぎるーーー!
まさか先輩がケーキ買ってくれるなんて!
もうホントにこの先輩は…
いろは「ずるいです…あざと過ぎます…」
八幡「何か言ったか?ってお前目…」
いろは「な、泣いてないです!これは…花粉で目が痒いだけです!」
八幡「あ、ああ?そうなのか…大変だな。」
どうやら私の苦しい言い訳を信じたらしい。
花粉症持ちじゃないけど。
てかこんなの我慢出来るわけないじゃん!完全に予想外。
サプライズとか期待するだけ無駄だと思ってたのに…
ケーキ美味しい…
数百円の小さいケーキだけど過去最高のバースデーケーキだった。
あーあ、私が先輩を掌で転がしてるはずだったのにな。最後の最後で立場逆転、先輩の手に私が優しく包まれた感じ。
なにこれさいこー!
ふう、ちょっとテンション上がり過ぎ。落ち着こう。
落ち着いて冷静になるんだ。
冷静になると現状をはっきり認識できるから逆に嬉しさがこみ上げてきた。
でも取り敢えずケーキ食べて誤魔化してた緩みっぱなしの顔は引き締まった。
いろは「ごちそうさまです。凄く美味しかったです。」
八幡「そりゃ良かった。」
いろは「じゃあ出ましょう。予想以上に遅くなっちゃいましたし。」
八幡「了解。」
私達はお会計をして店を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はぁ、やっと店出れた…
俺は安堵しながら店を出た。
これでやっと落ち着ける。
と思っていたのだが、また一色がくっついているので全然落ち着かない。
引き離そうとも思ったがこいつが凄く幸せそうな顔してるのと握力が凄いので離せない。
まぁいいか…
さっきのも一色は喜んでくれたみたいだし。
一色に一矢以下略。
まぁ一矢報いたところであと79999矢は報いないと同等にはなれないだろうし。
なにそれ無理ゲーじゃん。
この素晴らしい八幡にチートアイテムを!
一回死ななきゃじゃん。
いろは「せんぱーい!」
八幡「あ、なに?」
ぼーっと下らない事を考えてたから反応が遅れた。
いろは「今日の誕生日デートの得点を発表しまーす!」
八幡「また採点すんの?」
いろは「もちです!」
八幡「はいはい。」
いろは「まずは葉山先輩じゃないので−10点。」
八幡「まぁ変わらねぇな。」
いろは「言動もろもろ−40点。」
八幡「変わらねぇな…」
いろは「女の子の誕生日を忘れるあたり−50点です。」ボスッ
八幡「いて!変わらねぇな本当に。てか忘れてなきゃ出掛けてもいないだろ。」
いろは「でも減点です!」
八幡「理不尽な…てか0になっちゃったしさ。」
いろは「でもカラオケが凄くカッコよくて楽しかったのと、ケーキがとんでもなく嬉しかったのでおまけで100点あげます!」
八幡「は?100点?マジ?」
いろは「の予定でしたがケーキくれた時『女子なんて甘い物あげれば良いだろ』みたいな顔してたので減点して99点です。」
八幡「そんな顔してた?」
いろは「はい。触手生物なんですから表情に気をつけて下さい。小町ちゃんにそんな顔したら嫌われますよ?」
八幡「いや、触手無いし。」
いろは「あーあ、せっかく完璧満点のはずだったのにもったいない。凄く残念です!」
八幡「いや、充分なn「残念ですね!」…はい、すいませんでした。」
いろは「次は変な減点が無いように!」
八幡「次があるのか…」
いろは「100点取れると今回分かったので容赦なく100点取れるまであります。」
八幡「マジかよ…」
最悪な宣言と超満足そうな笑顔の後輩。
あのケーキすら一色のいいように利用されてしまった。最後まで俺はあいつに歯が立たなかった。
全く、恐ろしいこの後輩は。
下手したら小町より俺の扱いが上手い。
小町も散々俺を振り回すが、最後に見せる笑顔をだけで全てを許してしまう。
振り回された甲斐があった、と思わされてしまう。
そしてこの一色いろはも。
甲斐があったとまでは思わないが、少なくとも嫌な気分にはならない。
こうやってこいつの本物の笑顔を見てると全ての労力に意味があった、と思える。
何故、と訊かれると答えられないが。
まぁ俺がどれだけ振り回されたところで葉山に近づける訳ではない。
ディスティニーランドの一件があるから気がひけるところはあるだろうが。
まぁこいつのペースってのもあるだろう。俺から関わり合うのは避けたい。
まぁどうせ付き合わされるんだけどな。
八幡、諦めモード。対抗する労力の方がよほど無駄に思える不思議。
なんて考えていたら駅前に着いていた。
いろは「ではでは、今日はありがとうございました。」
八幡「おう、楽しめたなら良かった。」
いろは「またカラオケしましょう!」
八幡「勘弁してくれ…」
いろは「じゃあさよなら!」
八幡「気ぃつけて帰れよ。」
と2、3歩歩いた所で一色が止まり振り返った。
いろは「忘れてました。」
と言いながら俺に抱きついてきた。
え?
八幡「お、おい一色!?」
しかし無言、でも力はさらに強まった。
いろは「8月8日…」
八幡「え?」
一色が抱きついたまま顔を上げた。
その顔は真っ赤だった。
そのままタタッと後ろに下がると、
いろは「せっかくの夏休みなので8月8日また一緒に遊びましょう!」
八幡「俺受験生なんだけど…」
いろは「1日分くらい何とかなりますよ。予約入れましたからね!他の用事入れたら怒りますよ!」
捨て台詞?を吐いて改札へ駆けて行く。
そして一度振り返り手を振ってきたのでこちらも軽く振り返す。
満足そうな笑顔を最後に見せて駅の中に消えた。
さて、チャリ取りに行くか…
さっきの温もりの残った体に少し冷たい風が当たる。
一瞬取り乱したが、何というか、くっつかれるのに慣れてしまったのかすぐ冷静になれた。
嫌な慣れだ…
歩き出すとポケットに違和感を感じる。
探ってみるとそれはゲーセンで撮ったプリクラ。
街灯の下で見てみると、殆ど何も加工されてなかった。
何だよ、なら金払う意味無いじゃん。
とも思ったが、描かれているのもあった。
いくつかのハートと『来年も』『よろしくです!』の文字。
来年って卒業してんじゃねぇかよ。
学校離れてもまだ振り回されるのか?
また誕生日がどうこう言われるのか?
そんな恐ろしい未来を想像して明るい笑いが漏れた。
すれ違った人が不審者を見る目つきをしてた。どっとテンションが下がる。
変な笑い方してないと思うんだけどな…
まぁいいや。ここで今までの俺なら溜息しか出なかっただろう。
俺も少しは変わったのかな…
8月8日、それは俺の誕生日だ。
教えた記憶は無いが多分、というか絶対小町だ。
毎年小町と一緒に過ごす日だったんだがなぁ。予備校とかで逃げられないか?
結局小町と一緒にいれないじゃん。絶望。
まぁきっと小町と共謀するだろう。一色の事だ、外から埋めてくるに違いない。
家族以外に誕生日祝ってもらうって初めてなんじゃないか?
誕生日が長期休みの間だとなかなかね。
え?元々祝ってくれる奴いないだろって?
今更分かりきったことを。
何故葉山ではなく俺にこだわるのか。
それは今俺が勝手に考えた所で意味がない。また黒歴史を増やしかねないからな。
だがあいつが祝ってくれるというなら素直に喜ぶべきなのだろう。
せいぜい振り回してやる。
なんなら採点もしてやろう。
波乱な誕生日は今日だけでは終わらなそうだ。
と、いい感じに締めたいのだが家に帰った後にも一波乱あった。
そう、小町だ。こいつのテンションの高さと質問の雨あられ、というかもはや落雷。
根掘り葉掘り今日の事を訊かれ、全て吐かされた。(といってもカラオケのデュエットと抱きつかれたのは言っていない。)
さらに8月の事を言った途端に小町のテンションは数段上がった。
挙句に8月の予定や服装の話をし始めた。
気が早すぎる。なんだこいつは。
疲れた。小町はほっといてさっさと風呂入ろう。
そのまま布団でカラオケ思い出して悶えた後寝よう。
このSSへのコメント