2020-07-28 15:53:40 更新

概要

一色を中心としたssです。


思い出


この言葉から人は何を連想するだろうか?


遠足、旅行、動物園、卒業式、デート etc…


時速20km以下でとか言われても40kmくらいで抜けちゃうやつ。


たまにゲートの反応悪くて急ブレーキしたり。


あ、これetcじゃなくてインターチェンジだ。


いや、話が逸れたな。


思い出といえば普通は楽しかった記憶やその写真などを思いつくだろう。


思い出とはつまり楽しく、素晴らしいものだ。


と、結論付けるのはいささか軽薄である。


例えば、40を超えた人が高校の時のアルバムを見た時、どう思うだろうか。


「あぁ〜この頃は良かったなぁ…」


そう、これである。


少なくとも学校生活を当たり前に過ごしてきた人間なら、楽しかったな、と思うものだ。


だが、『この頃は』という限定語付きである。


これは相対的に今は楽しくないと言っているのと同じだ。


わざわざ今の自分を、今を生きる自分をより悪く感じさせる。それは本当に素晴らしいものなのか?


思い出とは、つまり過去への執着。人に後ろを向かせてしまう余計なものなのだ。


ならば、逆に考えよう。


人に前を向かせ、背中を押してくれるようなものは一体何か?


そう、それは思い出とよく似ていて、そして全くもって反対のもの。


そう、黒歴史である。


トラウマでもいい。簡単に言えば嫌な記憶だ。


これには思い出とは逆の作用がある。


黒歴史と比べれば、『今の方がまだマシだ。』と自分を慰める事ができる。


失敗は成功の母と言う言葉もある。


悪い記憶はつまり見たくない、振り返りたくないものだ。


だから人を無理にでも前を向かせる力がある。なんなら背中を押す、というか全力で蹴り飛ばしてくれる。


楽が舞子くんを蹴り飛ばしたようにな。


結論。


黒歴史を忘れるな。トラウマを捨てるな。青春の一言で片付けるな。


醜さを愛せ。


違う、これは弁護士さんのセリフだった。


と言うわけで、いきなり何を語ってんだと思われてるだろうけど。


今日はみんなに俺の黒歴史の1つを語ろうと思う。


この黒歴史もまた、思い出したくもない記憶である。


が、今の俺を形作る大切なトラウマだ。


なので、それを今話そう。


時間はそうだな、10年以上は遡るだろうか。俺が、俺たちがまだ高校3年だった時の事だ。


………


今日も今日とて暇な1日である。


もう6月、小町も無事に総武高に入学し、俺たちも無事に3年に進学。


由比ヶ浜よかったな。


でも6月だってのにこの部活はいつまで続くんだ?先生も何も言わないから解散のタイミングが分からない。


普通の部活なら大会や発表会なんかで区切りをつけるだろうが、それが無いからなぁ。


まぁたまに小町が遊びに来るから全然良いんだけどな。あと戸塚とか戸塚とか。


すると、奉仕部のドアが開いた。噂をすれば小町か?


いろは「こんにちは〜」


結衣「いろはちゃんやっはろー!」


雪乃「一色さんこんにちは」


お前か。テンションガタ落ちだ。


雪乃「今日こそは依頼かしら?それとも今日も暇つぶしかしら?」


いろは「雪ノ下先輩意地わるです。まぁ今日も、なんですけど」


雪乃「はぁ、まぁいいわ。紅茶を淹れるわね」


相変わらず甘いな雪ノ下も。俺にもこの10分の1くらい優しくしてくれてもいいのに。


結衣「いろはちゃんもクッキー食べる?」


いろは「市販ですか?」


結衣「即確認!?残念だけど市販だよ」


いろは「じゃあ頂きます!」


結衣「じゃあって酷い!」


雪乃「一色さんが正しいわ」


結衣「ゆきのんまで〜」


何だろう、この総攻撃。ただし由比ヶ浜が陥落することはない。サイパン島とは違う。真珠湾とも違う。


まぁそれほどこいつの料理はヤバイのだが。


どこぞのツンデレ金髪赤リボン娘かよ。声似てるぞ。


いろは「あ、せんぱーい」


八幡「あ?何だよ?」


いろは「今度一緒にディスティニーランド行きません?」


は?


八幡「は?ディスティニーランド?俺と?」


いろは「はい!」


雪乃「本気かしら一色さん?」


結衣「な、何でヒッキーと?」


いろは「いえいえ、大した事では無いですよ。ただもう会える機会も少なそうなので思い出作りといいますか」


八幡「いらねぇよそんな思い出は。大体もう行ったことあるだろ」


いろは「あれは別ですー」


結衣「で、でもその、2人だと、デートみたいって言うか…」


雪乃「正気とは思えないわね」


いろは「あ、いえ、2人ではないです。小町ちゃんにも来てもらいます」


八幡「は?小町も?」


いろは「まだ小町ちゃんと全然話せていないので親交を深めるのも目的の一つです」


八幡「なら俺いらんだろ」


いろは「ペアチケットともう一枚チケットが手に入りましてー。タダですよタダ!なのでせっかくですから」


八幡「パスだ、他当たれ」


結衣「そ、そうだよ。ヒッキーあんまり好きじゃないもんね」


八幡「いやまぁそうだが…お前が言うか?」


結衣「え?…あっそっか約束…」


おいおい、また行きたい、みたいな事言ってたのお前だよな?


いろは「なんの話ですか〜?」ニコッ


八幡「あ、いえ、何でも」


いろは「ふーん、まぁ良いです。仕方ないので先輩の代わりには川崎t」


八幡「ちょっと待て、行ってやっても良い」


結衣「え!?」


いろは「えー?行かないんですよね?だから大s」


八幡「ダメだ。分かった行くよ行かせてもらうよ」


いろは「そうですか!良かったです〜」


結衣「ヒッキー…」


雪乃「見事に釣られたわね」


仕方なかろう。あれに小町を近づけるわけにはいかないからな。


八幡「日にちは?」


いろは「今週の土曜で」


八幡「分かった、空けとく」


いろは「どうせ予定無いですよね?」


八幡「うるせぇ関係ないだろ」


はぁ疲れるなぁ。休日に遊ぶとか何のための休日だよ。


休まないなら休日じゃないじゃねぇか。


ま、約束しちまったのは仕方ない。タダで行けるんだ、得したと思っておこう。ただし後で請求されないと決まった訳ではない。


いろは「ディスティニーランド久し振りですね〜。楽しみですか〜?」


八幡「全く。どうせ3人じゃ俺1人と同じじゃねぇかよ」


いろは「1人好きなくせに。実は今まで強がってたんですか〜?」


八幡「ちげぇよ、俺行く意味無いから気が乗らないんだよ」


いろは「だから川s」


八幡「いや、行きます行かせて下さい」


結衣「ヒッキー嫌がりすぎ!」


雪乃「相変わらずシスコンね。しかも鬱陶しく思われるタイプよ」


八幡「ほっとけ」


いろは「じゃあ、そういうことでよろしくで〜す」


八幡「お前、これ言いに来ただけかよ」


雪乃「余程暇なのかしら?」


いろは「だけじゃないですよー。紅茶もお菓子も食べてます」


結衣「もっとダメじゃない!?」


いろは「あと、キョドる先輩を見て楽しんだり」


八幡「最低だ」


雪乃「そうね」


結衣「そうだね」


いろは「雪ノ下先輩程じゃないです」


………


雪乃「一色さん?何と言ったのかしら?」


いろは「ひっ」


結衣「あーあ…」


この時、俺は思った。


こいつ死んだな。


雪ノ下に堂々と喧嘩をふっかけるとは。


あえて言おう、カスであると!!


空気が凍っている。多分全世界が凍りついてるんだろう。


どっかの銀髪少女の結晶石に入ってる猫か?


マナ全て食い尽くすのか?


いろは「あの、えと、もう…帰ります…」


雪乃「あら、今日は早いのね。仕事でも思い出したのかしら?」


いろは「は、はい…働きます…ではこれで…」


雪乃「また…来て良いのよ?」ニコッ


ユキノシタはぜったいれいどを使った!


いろは「ひぃっ、しっ失礼しました!」


結衣「あーあ、行っちゃった」


八幡「大分怯えてたな。気分が晴れた」


雪乃「私は笑顔でしかも今までで1番優しくしてあげただけよ」


結衣「みんなヒドい…あんまいじめちゃダメだよ」


雪乃「何もしてないじゃない」


八幡「優しさが恐ろしいって珍しいよな」


雪乃「何か言ったかしら?」


八幡「何も。さて、ディ○ニーか。疲れるな全く」


結衣「ディスティニーランドでしょ?ディ○ニーって何?」


八幡「おっと失礼、つい次元を超えてしまった」


結衣「…」


雪乃「…」


八幡「何でもありません。はい終了!ナレーション挟んで日が変わります!」


コンチハ!呼ばれて飛び出てナレーションの八幡です!


と、言う事で日にちは過ぎ、週末へ。


ちなみに一色に誘われた時点で既に小町は誘われていたらしく、帰った途端ハイテンション小町が待っていた。


さて、俺は今ディスティニーランドにやって来ている。


案の定5分程遅れてきた一色にマジ待った宣言をし、今来たとこって言えと文句を言われ、小町に冷たい視線を向けられた。


いや、あれだから、お決まりのパターン的なやつだから。そんな目で見ないで!


お決まりパターンできるほど一緒に出掛けたこと無いけど。


とまぁそんな感じで午前は特に話すこと無し。基本小町と一色が喋ってたから俺は3歩程後ろを付いて行くだけ。


今はもう日は高く昇り、既に昼飯は食べ終わった後である。飯食ってすぐ絶叫系に乗ったせいでちょっと気分が悪い。


時間は見てないが、14時前くらいだろうか。俺は一色と2人でバカ長い列に並んでいた。


………


お分りいただけただろうか?


一色と2人で並んでいた。一色と2人で!!


そう、今この場に小町がいないのだ。


何故かって?気になる?じゃあ教えてやる。


少し時間を遡る。


先程飯食ってすぐ絶叫系に乗ったと言った。その時小町が


小町「ちょっと気分が悪いので小町は少し休んでますー」


と言い出した。勿論俺は側についてるつもりだったが、一色と遊んでろバカボケナス八幡!(意訳)みたいな事を言われたので仕方なく他のに並んだ。


そして戻るとあいつはいなかった。


いなかった!?


慌てて連絡しようとスマホを開くと小町からのメールがあり、


『たまたま同級生の集団に会ってね、奇数で丁度良かったから混ぜてもらった!お兄ちゃんは一色さんと遊んでね☆






すぐ帰ったりしたら1ヶ月ご飯作らないから。』


という脅迫メールが届いていた。


などという経緯を経て、今に至る。


全く、由比ヶ浜の誕生プレゼントを買いに行った時や、初詣、雪ノ下の誕生日プレゼントを買った時に加え、今回もインビジブるんだから困ったもんだ。


インビジブるってなに?何か透明になったみたいじゃん。


小町を含めた3人という時点で警戒すべきだったが、まさかディスティニーでやるとは。


もはや友達と出会ったという話ですら怪しい。


たまたま俺らが来た時にたまたま奇数の同級生群が来ててたまたま小町と出会うとかどんだけだよ。


たまたま生まれた双子がたまたまどちらもオカマでタマタマいらずだったレベルの天文学的たまたま率だよ(by腐れ副長)


まぁ小町の飯が食えないのは死活問題なので従っている、という訳だ。


いろは「ちょっと先輩、聞いてます?」


八幡「おう、久し振りだな」


いろは「いやずっと隣にいましたけど」


何だそのセリフ。お前が言うと怖い。


八幡「ちょっと小町の回想入ってて。お前の出番久し振りでな」


いろは「あー小町ちゃんがインビジブるのは驚きましたね」


何だよインビジブるって。透明マント?


え?誰かさんがさっき言ってたって?知らん。


八幡「小町の飯は俺の生活に欠かせないから仕方ない」


いろは「私がご飯作りに行っても良いですよ?」


八幡「断る」


いろは「即答ですかそうですか」


ブツブツと文句を言ういろはすを横目に列の先の方を見る。


やっと乗り場が見えてきた。


まぁ意外といろはすは大人しいもんで、俺が思っていた程大変ではなかった。


割と話を振ってくるが適当に返してればいい。もはや『お前話振れよ』とも思わないのだろう。


八幡検定3級とれるぞ。


てな訳でカット入ります。もう日も沈もうという時間。どうやらそろそろ城のライトアップやら花火やらがあるらしい。


俺たちもそこに向かっている。


プロジェクションマッピングというのだろうか?まるで城そのものが変化しているように見える。昼間やったらさぞ滑稽だろうに。


などと思っていると、一色が話しかけてきた。


いろは「先輩先輩」


八幡「ん、何?」


いろは「先輩現国得意でしたよね?」


八幡「まぁそうだな」


いろは「じゃあ問題出します」


八幡「え?なんで?」


いろは「これは心情を読み取る問題です。得意ですよね?あ、いや、対人だと苦手でしたっけ?」


俺の話は無視ですかそうですか。


八幡「いや、別に苦手じゃねーけどさ、いきなり何なの?」


いろは「出題意図を読み取る力も試されます」


やっぱり無視か。


八幡「分かったから、花火始まるぞ」


いろは「問題です。デデン!」


何だそれ可愛いーなお前。


いろは「今私達は男女2人きりでディスティニーに来ています」


八幡「そうだな」


いろは「しかも今から一緒に綺麗な花火を見ようとしてます」


八幡「ああ」


いろは「では、このシチュエーションを踏まえて、花火が打ち上がっている間に先輩が私に対して取るべき行動は何でしょう!」


八幡「は?」


いろは「マーク式でも記述式でもなく、行動式です。先輩自身の行動で答えて下さい」


八幡「えー俺何かした?公衆の面前で土下座しろとか言いたいの?」


いろは「シチュエーションを踏まえてと言ったじゃないですか…」


シチュエーションか…


今の俺たちの状況で最も相応しい行動ねぇ。


いろは「制限時間は花火が終わるまで」


と言ったタイミングで花火が始まり、歓声も同時に上がる。


一色は花火に視線を向けた。


さぁ考えろ。無回答で許されるほど甘い相手ではない事は分かっている。


男女2人、ディスティニー、夜、花火…


しかも俺にさせるという事は…


やはりあれなのか?でもこいつがそれを俺に求めるはずは無いのだが…


勘違いするな俺。今までどれ程の黒歴史を重ねたんだ。


しかし、他に思い付かない。


答えられない俺を見かねたのか、


いろは「じゃあヒントをあげます」


と花火を見上げたまま言った。花火と人でうるさく聞き取るのがやっとだった。


八幡「ああ、頼む」


気持ち大きめの声を出す。


いろは「先輩は一度、その答えを見てるはずですよ」


やはり声が小さく聞きづらいはずだが、何故かはっきりと聞き取れた。


答えを見ている。


決定的な一言。


がしかし、決定的であるからこそ自信が持てない。


そんな筈はない、ありえないと否定する自分がいる。


もう花火が終わる。結論を出さねば。


八幡「一色…」


いろは「はい」


少しこちらを向く。


八幡「お前俺の事好きなの?」


………


後書き

次に続きます。


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