一色いろはの波乱な誕生日2
いろはの誕生日を題にしたssです
シリーズの第2話です。
ここから八幡視点といろは視点で移り変わる事があります。ご注意ください。
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さて、部室を出て外へ行こうかと重い足を動かしていた所で意外な顔に出くわした。
隼人「いろは、丁度いいところに。」
いろは「葉山先輩?部活中ですよね?」
そう、俺とは対極と言ってもいい存在である葉山だ。何故こんなところにいる?
隼人「実はマネージャーがかなり休んでしまっていてね。代わりに出てくれる子を探していたんだが…」
いろは「あー…そういう事ですか。」
隼人「比企谷といるって事は何か用事があるんだろう?」
いろは「えーっと…」
隼人「…」
何故2人して俺を見る?そんなに見つめられると芽生えちゃうだろうが。
主に悪い感情が。
八幡「俺が決める事じゃねぇよ。」
隼人「確かにな。いろは、どうする?」
一色は悩んでいるようだ。悩む要素ある?俺と出掛けるより葉山といた方が良いだろうに。
まぁ、こいつの事だから働きたくないだけなのだろうが。ただ遊びに行くってのでは断る理由としては弱い。何か言い訳を考えてるんだろうな。
いろは「分かりました。出ます。」
隼人「いいのか?」
いろは「はい。パパッと終わらせます。」
隼人「ああ、そんなに長くはかからないはずだから。助かるよ。」
行くんだ。意外な気もするが正しい判断だろ。
さて、俺はどうしようか。どうせなら時間かかる仕事なら俺が解放されて嬉しかったが…
いろは「先輩!帰らないでくださいね。クラスで待っててください!」
八幡「はいはい、そんなに急がなくていいぞ。丁寧に慎重に細かくやってこい。」
いろは「何で時間かけさせようとしますかね?嫌です!40秒で終わらせます。」
隼人「ははっそりゃ速すぎるよ。比企谷にはせめて3分間は待ってもらわないと。」
八幡「いいからさっさと行け。クラスで待ってればいいんだろ。」
いろは「はい!では葉山先輩行きましょう!」
隼人「頼む。じゃあ比企谷、いろはをちょっと借りて行くよ。」
八幡「借りるも何も俺のじゃねぇし。そもそもお前らのマネージャーだろ。」
隼人「どうかな…」
ぼそっと呟いて一色の後を追って行った。
はぁ面倒な事になったな。時間潰すか。
ていうか葉山があの人のネタを使ってくるとはね。驚いたわ。リア充にすら浸透してるのか?
まぁいいや、クラスに行こう。どうせなら奉仕部室でも良かった気もするがクラスと言われてしまったから仕方ない。
約束破ると後が怖いからな。何十分か何時間か分からんが大人しく待とう。
無人のクラスへ入り自分の席に座る。
誰もいない教室は静かで結構好きだ。なんか世界から切り離された気がする。
まぁ俺はいつも集団から切り離されてるが。
誕生日に働かされるとはあいつも不運な。そして待たされる俺も不幸だ。
ぐだっとしたのが最後だった。穏やかな春の陽気はあまり関係ない夕方だが俺は完全に寝てしまったのだった。
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せっかくの誕生日なのに仕事させられるなんて予想外だなぁ。
どうやら流行りの風邪?で女子マネがダウンしているこの時にいろいろと仕事が重なったらしい。
私の他にも駆り出されたのだろうマネ達が数人働いていた。
まぁしょうがないよね。一応マネージャーだから流石に断りづらい。
しかもただ遊びに行くってのは理由に出来ないしね。先輩待っててくれるかなぁ…
ていうかもし勝手に帰ってたら泣くよ?
そんなこんなで働いてる所は省略。30分くらいかな。もう少し仕事あったっぽいけど葉山先輩が気を利かせて解放してくれた。
ちなみに葉山先輩はプレゼントをくれた。
でもはっきり言ってそれどころじゃない。今は先輩が最優先だからね。
葉山先輩は私の狙いが移った事を既に分かってるらしい。
おめでとう、の一言とプレゼントをあっさりと渡して比企谷の所に行ってこいって。
私はプレゼントを開けることもなく鞄にしまって先輩の所に直行。
しかけたけど汗掻いちゃったから少しお化粧直してから先輩のクラスに突入した。
いろは「せんぱーい!遅くなりま…した…」
あ、あれ?もしかして先輩寝てる?突っ伏しちゃってるしこれ完全に寝てるよね?
あ、やばいかも。これってもしかして据え膳ってやつ?
あの最強のお兄さんですら監視カメラが無ければ○草先輩を食べちゃうんでしょ?
なら私も先輩の据え膳頂いてもいいよね?ね?
なーんてね、流石にそれはダメっていうかここ教室だしあのお二人もいるし…
何よりそんな強引な事したら嫌われちゃうのは必至だからやらないけど。
先輩は腕を枕に横向いて完全に寝てるみたい。
隣の席に座って寝顔を見れば超イケメン。先輩は目さえ普通ならカッコいいんだ。
今は目を瞑ってるからイケメン度9割増。逆を言えば目のせいでガタ落ちしてるって事だけど。
はぁ…仕事してよかった!こーんな貴重な経験無いよね!
先輩ガード堅いから無防備な所見せてくれないもん。写真撮っとこ。
角度を変えて何枚か。その後私もぐだっとして目線を合わせてみる。
襲いたい。
じゃなかった、眠りたい。仕事したからか私も凄く眠い。今寝たらダメなの分かってるんだけどなぁ…
穏やかな春の陽気はほぼ関係ない日の落ちそうな時間だけど私は完全に寝てしまった。
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肩を揺すられて俺は重い瞼を持ち上げた。
目に飛び込んできたのは何故か知らんが葉山だった。
何だよ、ちっともラブコメに発展しねぇ。はやはちはいらないんだって。
そろそろ芽生える感情も顔に出そうだ。
あくまでどんな感情かは明言しないが。
八幡「あ?…何で葉山が…、てか寝てたか…」
隼人「そろそろ最終下校時刻だ。」
時計の方に顔をのろのろ向ければ確かにそんな時間だ。随分寝ちまったな。
あれ?やばくね?
八幡「一色は?」
と訊くと、葉山が苦笑しながら横にどいた。
八幡「げっ」
目に飛び込んできたのは一色の寝顔だった。
これはこれで何故か知らんがラブコメに発展しそうもない。
せめて逆の立場ならなぁ…
八幡「何で一色まで寝てやがるんだ…」
隼人「1時間程前に君の所に戻ったんだけどね。寝ている君につられたってところか?」
欠伸は移ると言うがこれはどうなんだ?
隼人「働かせてしまったからな。疲れたんだろう。悪い事をしたな。」
しかしこいつならすぐにでも俺を叩き起こして外に連れ出しそうなものだが。そんなに疲れてたのだろうか?
あ、俺こいつに寝顔見られた?
やだそういうのはもっと親密な関係になってからにしてくださいごめんなさい!
隼人「俺はもう帰るよ。君もいろはを起こして早く帰るといい。まぁいろはが帰してくれるかは分からないけどね。」
八幡「ならお前がこいつに付き合ってやれよ。もう部活終わったんだろ。」
そうだ。ここで葉山に押し付けよう。俺にとっても一色にとってもWIN- WINだ。
葉山からしたらいい迷惑かもしれんが知ったことではない。
八幡「俺よりお前といる方がいいだろ?」
しかし葉山は特に表情も崩さず、
隼人「残念だけど俺はプレゼントを渡したからね。君は埋め合わせの為に出掛けるんだろう?俺が代わる事は無いよ。」
八幡「埋め合わせはいつだっていいだろ?今日お前といる事に意味があるんじゃないのか。」
押し付けたい一心でなんかロマンチックな事を言ってしまった気がする。やだ恥ずかしい!
しかし葉山には呆れ顔をされた。
隼人「本気で言ってるのか?」
八幡「あ?当たり前だろ。」
すると少しの沈黙。そして扉の方に体を向け、
隼人「俺が言うのも変だが、君はもっといろはに向き合った方がいい。俺は部活で疲れているから帰らせてもらうよ。」
そのまま出ていった。
向き合うって何だよ。本当にお前には言われたくない言葉だ。
さて、と。あいつとの問答は別にどうだっていい。それより一色だ。とりあえず起こすか。
しかしこいつの事だ。起きたら開口一番寝顔がどうだの近いだのきもいだの言われかねん。
結果触らず近づかず、机と机の距離を維持したまま少し大きな声で起こすという無難な策をとることとなった。
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