2020-07-28 16:14:12 更新

花火が終わった。なのに一色からの反応が無い。


うん、何であんなこと言ったんだろう俺…


「うそ!今の声に出てた!?//」みたいな美少女のセリフを鼻で笑ってた自分が恥ずかしい!


案の定一色はキレるを超えて、呆れるも超えていた。


いろは「さよなら」


一言言うと出口の方に向かいだした。


八幡「やっべ…」


完全にやらかした。急いで後を追う。


言い訳をするが一色は反応すらしてくれない。


普段なら勝手に離れてくれるのはありがたいのだが、今回はダメだ。


何とか機嫌取らないと。


八幡「本当に本当に悪かった」


ひたすら謝り続けるが、足は止めず、顔すら向けない。これは本格的にやばい。


すでにゲートは抜けて、駅に着こうとしていた。


八幡「な、なぁ、何とか機嫌直してくれないかな…」


ダメだこりゃ。こうなったら最終奥義…


八幡「何とか許して貰えないか?何でもするからさ…あ、いやもちろん俺に出来る範囲でだけどさ、頼む」


これで無視されたらどうしようもない。何なら20年後くらいになって、なんでもするって言ったよね?とか言われて有り金むしり取られる未来が見える。


が、そこで一色の足が止まり、マリアナ海溝より深いため息をついた。


いろは「お腹空きました」


八幡「あ、あぁそうだな、飯にするか。もちろん奢るぞ」


と言うわけで、近くのフードコート?ぽいところ。たくさん店が集まってるやつ。


そこで2人無言のまま夕飯を食べた。


片付け終わったところで一色が口を開いた。


いろは「先輩本当に最低ですねぇ」


八幡「本当すまん…」


いろは「謝られましても。救いようが無いです」


仰る通り。黒歴史がまた1つ増えてしまった。


ほんと、何であんなこと言ったんだ?頭の中にあったのは違うものだったはずなんだが…


いろは「まぁ良いですよ。もともと、正解を期待してはいなかったので」


八幡「え、そうなの?」


いろは「先輩がしそうにない事でしたので。どちらかと言うと、どんな変なこと言うか楽しみでした。こっちが質問してるのに質問で返すとかバカですよね。それでも現国のヒキガエルと呼ばれた先輩ですか?」


八幡「そんな不名誉な呼ばれ方に覚えは無いが、俺もさすがにあれはないと思うわ…ホント何だろうな…」


いろは「知りませんよ。良かったですね、私が先輩に全く期待してなくて」


八幡「あぁ、まぁ何か複雑だな…」


いろは「勝手に期待して、勝手に失望するのは筋違いですもんね」


八幡「…」


理想の押し付けは嫌いだ。こいつの言う事は正しい。まぁ今回に関しては理想どころか最低レベルの行動してしまったが。


いろは「私心広いですね〜。これが普通の女の子ならチケット代、ご飯代、交通費と髪の毛むしり取って帰ってましたよ」


八幡「交通費までむしり取るのか…」


普通の女の子をそんな風に見てるのか。だから同性の友達いないんだろ。髪の毛については触れません。怖いから。


え?ホントにむしり取られるの?僕ぼっちだから分かんない。


いろは「あ、そういえばですね先輩」


八幡「えっ何?」


いろは「実はこんなものが」


と言って取り出したスマホ。少しいじってこちらに向けてくる。


『一色

はい

お前俺の事好きなの?』


え…


八幡「お前…録音してたのかよ!」


いろは「わー花火で聞こえないかと思いましたが意外にちゃんと撮れてますね!」


八幡「お前何でこんな…」


いろは「いえいえ、どうせ変なこと言うと思ったので録音して、後でゆすr…からかおうと思いまして」


八幡「ゆするって言おうとしやがった…」


死んだ。俺死んだ。なーにが何でもするだ。そもそも一生逆らえないじゃねーか。奴隷じゃねーか!


いろは「まぁ…そうですね。これは先輩の人?蛙?としての尊厳に関わりますので周りには流さないようにしましょうか」


八幡「流す気だったのか…」


恐ろしや一色いろは。恐ろしや俺のあの時の思考回路と口と舌。


人権?蛙権?何それ美味しいの?


と思っていたのだが、何故か特に何か命令してくるわけでも無かった。


いろは「帰りましょうか」


と一言言って俺たちは人の殆どいない電車に乗り込んだ。


そして電車内で、


いろは「先輩さっき何でもするって言いましたよね?」


八幡「あぁ…言った…」


やはり忘れてないよなぁ…


いろは「なら先輩、またクイズに答えて下さい」


八幡「え、また?それが命令?」


いろは「問題は今先輩が私に対してすべき事は何か、です」


八幡「俺が今すべき事か…」


いろは「次の次の駅に着くまでです。心情と出題意図大事ですよ。今度はよく考えろ!!この愚か者め!」


怒られた。


答えはたくさんあるように思える。


が、もう間違えられない。どうする?


時間が迫る。迷ってられない。


悩んでも仕方ないので、シンプルに俺は今自分がすべきだと思う事を言った。


八幡「さっきの問題、答え直させてくれないか?」


いろは「さっきの、とは?」


八幡「花火の時のやつ」


いろは「…それが先輩のすべき事ですか?」


八幡「分からん。だから俺が今したいと思う事を言った」


いろは「そうですか…」


少し考えてるようだったが、


いろは「まぁ、60点ってとこですね。先輩にしては上出来じゃないですか」


八幡「そっか…ありがとうな」


いろは「で、どうするんですか?」


時間をかけても意味ないと思った。どうせ考えれば考えるほど俺は間違った方向に向く気がするから。


八幡「今リベンジして良いか?」


いろは「今ですか?まぁそうですね…人いないからいっか」


ふぅ、と一息。頑張れ俺、あっさりと行け。


八幡「俺は、一色が好きだ」


………


いろは「40点」


八幡「な、何点満点?」


いろは「もち100です」


八幡「やっぱ低いよね…」


やっぱダメか…これは黒歴史に黒歴史を重ねてしまったんだな。


いろは「いえいえ、答え自体は正解ですよ。驚きました」


八幡「え…やっぱそうなの?」


いろは「シチュエーション的に他ありますか?大体私が葉山先輩に告白したの見てたんでしょう?」


やっぱ答えを知っている、と言うのはその事か。


まぁ頭には浮かんでいた。ただ、それを言うのが嫌だったのか、怖かったのか、ありえないと勝手に決めつけていたのか…


何にしても俺はそれを言葉に出来なかったのだ。


八幡「えーと、じゃ何で40点?」


いろは「シチュエーションが大事なんですよ。そもそも花火の間が前提の問題ですし」


八幡「あー…確かにな…」


いろは「電車内は減点です。高得点取りたいなら、今度先輩の奢りで私とディスティニー行って、同じシチュエーション作った上で答えないとですよ。」


八幡「それはキツイな…」


いろは「小町ちゃんにさっきの音声送りますよ?」


八幡「えっやめて?下手したら小町が妹じゃなくなる。正確に言うと俺が比企谷家の人間じゃなくなる」


つまり、俺は小町と結婚できる!なお、親の許可は出ない模様。駆け落ち?dash fallingしちゃう?


いろは「じゃ、また遊びに行きましょうね〜」


と言うと、スマホいじりを始めた。


八幡「了解…」


逆らえない。もし雪ノ下や由比ヶ浜、小町辺りに音声が流されたら俺はどうなるだろうか?


やっぱり人として生きる事は難しそうだ。


いろは「ねー先輩」


一色がじっと俺を見つめながら訊いてくる。


八幡「ん?」


いろは「さっきの告白、本気ですか?それともただの解答ですか?」


八幡「あーそれは…」


どっちなのだろう。


最初の時は言えなかったが、さっきは割とすんなり言えた。


ただの言葉だからすんなり言えたと理解はできる。


が、本気だからこそ迷わず言えたとも解釈できてしまう。


俺は一色が好きなのか?好きとは何だ?


駄目だ。考えれば考えるほど…


八幡「すまん、分からない」


いろは「そうですか。まぁそんな感じだと思いましたよ。ほんとダメですね先輩は」


八幡「返す言葉がねぇよ」


反論の余地が無い。


八幡「逆に訊いてもいいか?」


いろは「いいですよ〜」


八幡「お前何で俺に告白なんかさせたんだ?」


いろは「そりゃ先輩が好きだからですけど」


あぁそう…


あっさり言うのね…


八幡「葉山は諦めたのか?」


いろは「諦めたって訳ではありませんよ。ただ、先輩を好きになっただけです」


ぐはっ!何こいつ超可愛いんだけど…


いろはすがキラキラしてみえる。俺の腐った目がきら☆きらフィルター発動しちゃってる。


八幡「えーと、とても訊きにくいというか、どこぞのロリコンアホ毛吸血鬼もどきとキャラ被るから言いたくないけど、好きって何?」


いろは「こいつのガキ産みたいって思ったら、それが好きって事なんじゃないですか?」


八幡「待て、それは大きい方の妹の考えだろ!せめて小さい方の妹の純粋な価値観にしてくれ」


あざとさ忘れないでいろはす!それに俺は子供産めないし。顔が見たいとかなら分かるけどさ。


いろは「冗談です。つまり、あれですよあれ」


八幡「どれだよ…」


いろは「先輩ってダメダメじゃないですかー。もうホント色々と。今日証明されたように」


八幡「そ、そうね、ダメダメだな…」


いろは「はい、もう葉山先輩と比べるのも失礼なくらい。スーパーブルーブラッドムーンと私がこの前叩き潰したGの残骸くらいの差がありますよね」


八幡「そこまで…」


今まで蛙だの何だの言われてきたが、それは流石に傷つく。


いろは「でも、それでも好きだなぁって思えるから好きなんです」


八幡「えーっと、イマイチ掴めないなぁ」


いろは「葉山先輩は完璧ですし、イケメンで、サッカー上手くて、爽やかで、背が高くて、優しくて、イケメンですけど!!」


八幡「2回も言ったよこの子」


いろは「でも実際は目立って優れた面を見ているだけで、実際は完璧超人な訳ではないですよね」


八幡「まぁそうだな」


いろは「例えば葉山先輩の悪い所を知ってしまった時、私はきっとそれを見なかった事にして完璧なままにしようとするんです」


八幡「なるほど」


いろは「結局、自分の中にある理想的な葉山先輩が大事だったんですよ。イメージの投影と言うか、押し付けですね」


トレースオン!ごめんなさいにわかが適当なこと言いました。許してください何でもs


八幡「まぁ葉山の周りの奴は大抵、あいつに期待してるからな」


葉山は勝手に期待され、そしてそれにいつも応えている。


とても厳しいだろう。要するに結果を先に、他人に決められて、それに沿うように動かなければならない。


なにそれゲイボルク?因果逆転の呪い受けてんの?ごめんなさいにわかが以下略。


とにかく、人は葉山をただのスクリーンとしてしか見ていない。自分の定めた理想の葉山隼人を映すための。


そう、まるで


いろは「葉山先輩はディスティニーでみたお城みたい」


プロジェクションマッピングねぇ。まぁ面白い例えだけど割と納得できるな。


核となるものが何であれ、外から勝手にかっこよく、可愛く、美しく、華々しく、輝くような理想的存在として眺める事ができる。


その時、その核自体を見ている者はいない。


それこそ核が見えてしまったら意味なし。


いろは「やっぱりそれって偽物だと思うんですよ。結局見たいようにしか見てない、存在する妄想ですよ。カッコいい響きですけど」


八幡「字面は良いな」


いろは「ここに存在しない実体が1人いますけどね。字面も含めてカッコ悪いです」


八幡「存在してるから。意識的に消してるだけだ」


いろは「へー。で、つまり先輩はいわばお城ではなく廃墟ですよ。もう映像を写せないくらいスッカスカの」


さらっと流された。


八幡「廃墟ね…」


いろは「ダメな所を知って、ダメだとしっかり認識した上で、それでもその廃墟が好きなら、それが本物なんじゃないかなって」


八幡「弱点の許容って事か」


いろは「今日を耐えきった私ですよ?余程のことが無ければ先輩を嫌いにならない自信あります」


八幡「うん、ごめんね今日は本当に」


いろは「でも私の考え方の裏付けにもなったでしょうし、悪くはなかったですね」


本当にそうだ。どう考えても嫌われて当然だと自分でも思うほど、どうしようもない俺。


それでも好きだと言ってくれるこの後輩には本当に感謝しかない。


いろは「で、どうなんですか?本気ですか?ガチですか?本気と書いてガチですか?」


選択肢無いじゃねーか。


どうしようもない俺が出す答えは何だ。


八幡「…ごめん、時間をくれないか?」


やっぱりダメダメだった。


いろは「やっぱりダメダメですね」


八幡「…」


いろは「良かったですねー私が相手で。もちろん先輩を待ちますよ。そういうのを含めて、ちゃんと好きでいたいので」


八幡「ありがとな…」


いろは「でも…」


一色ががいきなり袖を強く引っ張る。俺が体勢を崩したところで、俺の耳元で囁く。


いろは「あんまり待たせちゃ、ダメですよ?」


そして俺を引きずり込むような笑みを浮かべる。


以前のモノレール内での時を思い出すが、感じ方はあの時とは全く違っていた。


さて、みなさん電車内時間がなげーーーよって思ってる?安心して下さい、もう終わります。


てな訳で俺は一色を送り、家に帰ってきた。もう大分遅い時間だった。


疲れた。風呂入ろ。


後書き

次に続きます。


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