第1巻 第105話 ナマエデ
天駆高原での出来事からはや13ヶ月、楽は小咲にあの時10数年の思いを込めた告白を無言で断った過去の自分に対して謝り、それを無言で許して千棘の元に送り出してくれた小咲に対する礼を13の月を超えて改めてした。
そしてそんな、過去に蔑(ないがし)ろにした自分の告白に対して返事をしてくれた楽だからこそ、恋人になれなくても友人として再び、幼少期と同じ下の名前で呼んだ。
小咲 「えへへ………やっぱり恥ずかしいな、楽君って呼び方。高校1年の時、千棘ちゃんの16歳の誕生会の前に、「秘密の場所」を教えた時以来だね。」
楽 「そうだな………でも、13年前のあの夏は小野寺も「らくくん」って普通に呼んでたよな。」
小咲 「そうだね。でも………やっぱり恥ずかしいから、普段は今まで通り「一条君」って呼ぶよ。
それでいて時々「楽君」って呼ぶ、それでいい?」
小咲 (ホントは私が照れるだけじゃなくて、今の楽君の恋人は千棘ちゃんだから………それもあるんだけどね。)
楽 「ああ、勿論いいぜ!小野寺がそうしたいなら全然。」
楽 (そういやあ……………千棘も肝試し以降は「楽」、橘も感情が高ぶると「らっくん」、
羽姉(ユイねえ)は再会した時から「楽ちゃん」だったのに、小野寺に下の名前で呼ばれたのだけは、子供の頃と千棘の16歳の誕生日前だけだったな。)
小咲 「あ!私、そろそろ次の講義が始まっちゃうから行かなきゃ………
じゃあね、一条君、千棘ちゃん。
新しい鍵とペンダント、ありがとうね。」
楽 「ああ、じゃあな小野寺。」
千棘 「バイバイ、小咲ちゃん!」
タタタッ
楽と千棘に別れを告げると、小咲は佐張(さわり)大学の講義室のある建物の方に歩いて去って行った
千棘 「じゃー楽、私達も行く?」
楽 「ん?ああ!そーだな!俺もそろそろ午後の講義始まる時間帯だし。
スクールバスって、確かあっちだよな?」
楽は自分達が今立っている位置から見たら右の並木が植えられた歩道を右手の人差し指で指差した
千棘 「うん。来る時、私達あっちから来たし。行こーよ、楽。」
スッ
千棘は楽に左手を差し出した
楽 「ああ」
ギュッ
楽は千棘が自分の方に差し出した左手を自分の右手で握り返した。
スタスタ
そのまま、楽と千棘は佐張(さわり)大学のキャンパスの並木道を手を繋ぎながら歩いて行った
千棘 「……………ねぇ楽、あの13年前の約束に関係があったのって、私とあんた以外だと、小咲ちゃんと万里花とあと……………、羽(ユイ)さんだよね?」
楽 「ん?ああ!そうだよな!?
羽姉(ユイねえ)はまだ星獣は見た事無いけど、やっぱり星神みたいだし。
星神でも無い小野寺が反応したんだから、
きっと反応するよな?」
千棘 「そーだよねー。じゃあどーすんの?羽(ユイ)さんにも会いに行って、残った4組の鍵と錠のどれかが光るか試してみる?」
楽 「いや、それが実はな………」
その頃、楽と千棘と別れた小咲は………
第105話 完
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