番外編 女神を追いかける少女たち④
スクールアイドルについて絵里から亜里沙はそのすべてを聞く。
お姉ちゃんからμ'sに入る前の話を聞きました。
お姉ちゃんもいっぱい悩んで、迷っていました。
でも、お姉ちゃんの周りにはμ'sの皆さんがいた。
私の大好きなμ's。大好きなお姉ちゃん。
もっともっと知りたいです。
亜里沙「お姉ちゃん、早く話の続きを教えて!」
絵里「焦らないの。ここからは少し暗い話にもなっちゃうから、聞きたくないときは言ってね」
亜里沙「大丈夫。私はμ'sに何があったか知りたい。だってどんなことがあってもμ'sは学校を廃校から救って、ラブライブ!で優勝したスクールアイドル。そんなμ'sがどうだったのか教えてほしい」
絵里「亜里沙は本当にμ'sが好きなのね。そこまで言うのであれば、私の話を聞いた後に亜里沙がどう思ったか教えて頂戴ね」
それを聞いて私は大きく頷きました。
絵里「私と希がμ'sに入って9人になった後、合宿をして、まずはμ'sから先輩後輩を無くしたの。後輩のみんなはだいたい「ちゃん」付けで呼んできたけど、海未だけは呼び捨てしてくれたわ」
絵里「まあ呼び方はそこまで重要じゃなくて、μ'sの9人が一体となってこれから活動していくことの第1歩としたかったのよね」
絵里「合宿も終わってこれから廃校を無くすために頑張ろうって団結していた。その後の最初のライブが文化祭での屋上ライブね」
絵里「あの時は講堂の使用許可抽選に外れてしまって、それで屋上でやることになったの」
文化祭屋上でのライブ・・・穂乃果さんが倒れた時のライブだ。
絵里「その頃から私たちはあまり周りがみえていなかったのかもしれない。廃校を無くすため、皆で歌って踊るため、それだけしか考えていなかった。だからこそことりの変化に気づけなかった」
亜里沙「ことりさん?」
絵里「文化祭より前の段階で、ことりには海外から服飾の勉強の誘いが来ていたの。ことりも今後のために服飾の勉強はしておきたいけど、行くかどうか悩んでいたみたい。海外に行ったら高校生活はすべてそちらで過ごす、スクールアイドルも穂乃果達との生活もできなくなってしまうの」
絵里「ことりはずっと穂乃果に言おうとしていた。穂乃果なら何て言ってくれるか、穂乃果ならって。でもその時の穂乃果はライブだけを見据えていて、ことりも話を切り出せなかったの」
絵里「結局穂乃果は無理をしすぎて倒れてしまった。ことりのこともそうだけど、私は穂乃果が頑張りすぎていることに気が付けなかった」
絵里「穂乃果が倒れてしまったこと、無理をしてまでラブライブに参加することは出来ない。その判断でラブライブのエントリーを止めた。そんなタイミングで来年度の生徒募集が決まったの」
絵里「穂乃果も初めは自分のせいだと思ってたみたい。でも廃校が無くなって穂乃果は目標をひとまずは達成した。私たちはいつまでも沈んでられないと廃校阻止記念会を開いたわ。といっても部室でのちょっとした食事会なんだけどね」
絵里「そこで先延ばしにしていた問題にぶつかった。ことりの留学を海未が皆に話した。知っていたのは海未だけ、私もそこで初めて知ったの。もちろん驚いたけど、1番動揺していたのは穂乃果だったわ」
絵里「どうして言ってくれなかったの?と穂乃果は言った。ことりは穂乃果がラブライブに夢中で、スクールアイドルに夢中でずっと言い出せなかった。穂乃果にはずっと聞いてほしかった。穂乃果は1番最初の友達だから聞いてもらいたかったに決まってる。そう言って飛び出していった」
絵里「ことりのこと、ラブライブのこと、穂乃果は自分が気づけなかったから、自分が1人で無理したからとその責任を1人で背負おうとした。ことりのためにライブをしようとしても、廃校は阻止できたから意味がないなんて言葉が穂乃果の口から出てきたわ」
絵里「だから私は聞いたの。穂乃果はどうしたいのって。そしたら穂乃果は・・・」
お姉ちゃんは少し俯きながら、震えている
亜里沙「お姉ちゃん?」
絵里「ごめんなさい。あの時のことはちょっと私にとっても辛いことだから・・・」
亜里沙「なら無理に話さなくてもいいよ・・」
絵里「大丈夫」
そう言ってお姉ちゃんは話し続ける。
絵里「スクールアイドルを辞めます。穂乃果はこう言った。私は何が起こったか分からなかった。そう言い残して立ち去ろうとする穂乃果に何もできなかった。でも、1人だけ穂乃果を掴んだ人がいたの」
絵里「気づいた時には屋上に穂乃果の頬がはたかれた音がしていたわ。その時穂乃果の前にいたのは海未よ」
亜里沙「海未さん・・・・」
絵里「海未はその時穂乃果に最低ですと言い放った。そんな人だとは思っていなかったと。ことりとも穂乃果ともずっと一緒にいた海未だからこそ、その時の穂乃果は見ていられなかったのだと思う」
絵里「その場はそのまま解散になって、ことりもずっと留学の準備で休んでいた。μ'sも一時的に活動を休止して、今後どうしていくべきなのを考え始めた」
絵里「μ'sは9人でμ's。ことりがいなくなって、穂乃果までいなくなってはそれはもうμ'sじゃない。廃校も阻止できたからこそ、今後どうしていくべきなのか考える分岐点だったの」
絵里「μ'sを休んでいた間、穂乃果が何を想っていたかは私には分からない。ただ穂乃果に私は素直な気持ちを伝えた」
絵里「穂乃果がいたから、あの時私に手を差し出してくれたから私は変わることを恐れないようになれた。それは穂乃果のおかげなの、だから穂乃果も変わることを恐れないで」
絵里「この時は本当に本心で話していたわ。穂乃果自身が考えどうするか。私はそのために自分の思っていることを伝えただけ」
絵里「穂乃果は自分に嘘をついていたの。全部自分のせいにして、無理だって言い聞かせて、目的がないことを盾にしていた。でも本当は違った。これは海未から聞いた話」
絵里「穂乃果は廃校を阻止しようと始めたスクールアイドルが大好きになっていた。目的なんかなくても、ただ歌いたい、ただ踊りたい、μ'sの皆とスクールアイドルがやりたいってその気持ちだけだって言ったみたい」
絵里「海未も穂乃果が嘘をついていることが許せなくて穂乃果に手をあげた。自分の知っている穂乃果はそんな穂乃果ではないって言いたかったみたいね」
絵里「穂乃果がやりたいのはμ'sが全員いないと出来ない。だから出発直前のことりを穂乃果は無理を言って引き留めた。一緒にいたいとことりに言った」
絵里「ことりの心は初めから決まっていた。ただ穂乃果に止めてほしかった。行かないでって言ってほしかった。ことりが留学を断る理由はそれで十分だった」
絵里「そこからは亜里沙も見た通り講堂でのライブ。それが私たちの、μ'sの本当のスタートだったのだと思うわ」
絵里「流れとしてはこんな感じ。スクールアイドルというのはラブライブに優勝するという目標もあるけれど、私は違う部分もあると思う」
絵里「自分たちが一緒にやりたいことに向かって真っすぐに進む。それが出来る仲間と一緒に限られた時間のなかで一生懸命に努力する。やりたいことをやりきる。それが出来るのがスクールアイドルなの」
絵里「たくさん悩んで、たくさんぶつかって、たくさん笑って、たくさん泣いて。そんな色んな感情を共有する」
絵里「全員でするダンスにも、全員で歌う曲にも想いがあって、その想いこそが全員が今までしてきたことすべての集大成」
絵里「何一つ無駄なことなんてない。私がμ'sに入る前にしてきたことも、μ'sに入ってからしたことも、全部が繋がっている」
絵里「最高の仲間と最高の時間を過ごせる。何かのためではなくて自分の、自分たちのために」
絵里「それがスクールアイドル。亜里沙がこれから始めるものなのよ」
自分たちのためにやりたいことをやるために、それがスクールアイドル。
キラキラしたステージで誰かに勇気を与えるだけじゃなくて、
そこで踊っている自分たちも勇気をもらえる。
そのためにたくさん努力したり、時にぶつかったり、
それがスクールアイドル。
私は雪穂とまだ見ぬ仲間とそう思えるのかな。
ううん、そう思えるようになりたい。
亜里沙「お姉ちゃん!ありがとう!!」
亜里沙「私はやっぱりμ'sが大好き。私もそう思ってもらえるようになりたい」
絵里「亜里沙なら出来るわ。やりきった後の景色はあなた達にしか見えないもの」
亜里沙「穂乃果さんも言ってた。やりきった後の景色の話、やりたいことを見つけてくださいって!」
絵里「あら、穂乃果も私みたいな生徒会長になってきたのかしらね」フフ
亜里沙「私頑張る!スクールアイドルを通じてやりたいこと絶対見つけるよ」
絵里「頑張ってね。そのためにも、アイドル研究部の皆から色んなことを聞きなさい」
絵里「穂乃果、海未、ことり、花陽、凛、真姫。1人ひとりをしっかりと理解してみなさい」
絵里「時間は待ってはくれないわよ?」ニコ
亜里沙「うん!!」
μ'sは私の目標。
でも、私たちはμ'sにはなれない。
だったら、私たちがやってきたことを堂々と言えるようなスクールアイドルになりたい。
まずは雪穂と。
ううん、雪穂と穂乃果さんたちと。
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